説明

光ファイバケーブル

【課題】 引き裂き性を保持しつつ蝉の産卵による光ファイバの損傷を防止するとともに、クロージャに収納した際に気密性を保持することができる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】 外被切り裂き用のノッチ20部分に蓋部材21が設けられているので、光ファイバケーブル10Aの断面形状は略矩形状となる。このため、クロージャのシール部分と光ファイバケーブル10Aとの間の気密性を保持することができるとともに、蝉の産卵に対しても、ノッチ20部分の外被13が他の部分と同様に厚いので、産卵管が貫通して光ファイバ心線11を傷つけるのを防止することができる。また、ノッチ20は従来と同様に設けられているので、切り裂き性を保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバケーブルに係り、例えば光ファイバを加入者宅まで引き込む直前の電柱間に仮設する架空集合ドロップケーブル等に用いることができる光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば架空集合ドロップケーブル等に用いられる光ファイバケーブルとしては、図6に示すようなものが知られている(例えば特許文献1参照)。
図6に示す光ファイバケーブル100では、中心にある光ファイバ心線101を挟んで両側に2本のテンションメンバ102が設けられており、光ファイバ心線101およびテンションメンバ102を一括して外被103により被覆している。外被103は全体矩形状をしており、上下面の中央には光ファイバケーブル100の長手方向に伸びる断面V字状のVノッチ104が設けられており、このVノッチ104から外被103を引き裂いて光ファイバ心線101を容易に取り出すことができるようになっている。
【0003】
ところで、前述したような光ファイバケーブル100を架空して用いる際に、Vノッチ104の形状からVノッチ104の底部に蝉が産卵管を突き刺して光ファイバケーブル100に産卵する場合がある。この場合、Vノッチ104の底部では外被103が最も薄くなっているため、産卵管が光ファイバ心線101に達して損傷を与えるという事故が発生したことが確認されている。このため、図6に示すように、光ファイバ心線101を保護するために、例えばパイプ等の保護部材105を設けることが行われている。
【特許文献1】特開2002−90591号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、前述したようなVノッチ104を有する光ファイバケーブル100をクロージャに収納して地中に埋設する際に、クロージャのシール部分とVノッチ104との間で空間ができ気密性が低下するという不都合があった。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、引き裂き性を保持しつつ蝉の産卵による光ファイバの損傷を防止するとともに、クロージャに収納した際に気密性を保持することができる光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明にかかる光ファイバケーブルは、光ファイバ心線とテンションメンバとを外被により略矩形状に一括被覆し、前記外被の対向する外側面に長手方向に沿って外被切り裂き用のノッチが各々形成された光ファイバケーブルであって、前記ノッチの外側に当該ノッチを埋める形状の蓋部材が設けられていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された光ファイバケーブルにおいては、外被切り裂き用のノッチ部分に蓋部材が設けられているので、光ファイバケーブルの断面形状は略矩形状となる。このため、クロージャのシール部分と光ファイバケーブルとの間の気密性を保持することができるとともに、蝉の産卵に対しても、ノッチ部分の外被が他の部分と同様に厚いので、産卵管が貫通して光ファイバ心線を傷つけるのを防止することができる。また、ノッチは従来と同様に設けられているので、切り裂き性を保持することができる。
【0008】
また、本発明にかかる光ファイバケーブルは、前記蓋部材の外側面が、前記外被の他の部分の外側面よりも外側に突出していることを特徴としている。
【0009】
このように構成された光ファイバケーブルにおいては、蓋部材の外側面が、外被の他の部分の外側面よりも外側に突出しているので、外側から外力が作用した際にノッチと蓋部材との隙間を生めて、クロージャのシール部分との間の気密性を保持することができる。また、ノッチから光ファイバケーブルを切り裂く際に、蓋部材を容易に外側に取り除くことができる。
【0010】
また、本発明にかかる光ファイバケーブルは、前記ノッチの断面形状が、V字形状をしていることを特徴としている。
【0011】
このように構成された光ファイバケーブルにおいては、V字形状のノッチから外被を容易に引き裂いて、光ファイバ心線を取り出すことができる。
【0012】
また、本発明にかかる光ファイバケーブルは、前記ノッチの断面形状が、前記外被の外側に向かって広がる台形形状であることを特徴としている。
【0013】
このように構成された光ファイバケーブルにおいては、台形をしたノッチから外被を容易に引き裂くことができるので、特に複数本の光ファイバ心線が並んで幅が大きい場合に好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ノッチ部分に蓋部材が設けられているので、光ファイバケーブルの断面形状は略矩形状となる。このため、クロージャのシール部分と光ファイバケーブルとの間の気密性を保持することができるとともに、蝉の産卵に対しても、ノッチ部分の外被が他の部分と同様に厚いので、産卵管が貫通して光ファイバ心線を傷つけるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の光ファイバケーブルに係る実施形態を示す断面図、図2は本発明に係る光ファイバケーブルの製造に用いるダイスの断面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態である光ファイバケーブル10Aは、中心に光ファイバ心線11とテンションメンバ12とを外被13により略矩形状に一括被覆し、外被13の対向する外側面13a、13bに長手方向に沿って外被切り裂き用のノッチ20が各々形成されている。そして、ノッチ20の外側には、このノッチ20を埋める形状をした蓋部材21が設けられている。
【0017】
図1に示されている光ファイバケーブル10Aでは、ノッチ20は断面V字形状をしている。このV字形状を覆うようにV字形状の蓋部材21が設けられており、蓋部材21の一端部は外被13と一体的に連続している。従って、蓋部材21とノッチ20との間には、L字形状をしたスリット22が形成された形となっている。
また、蓋部材21の外側面21aは、外被13の他の部分の外側面13aよりも外側に突出している。すなわち、例えば光ファイバ心線11から蓋部材21の外側面21aまでの高さをL1とし、光ファイバ心線11から外被13の外側面13aまでの高さをL2とすると、L1>L2となっている。
【0018】
次に、前述した光ファイバケーブル10Aの製造方法について説明する。図2には、前述した光ファイバケーブル10Aを製造する際に用いることができるダイス30の断面が示されている。ダイス30の中央には光ファイバケーブル10の外形に対応した略矩形状をした穴31が設けられており、蓋部材21とノッチ20との間のスリット22に対応するL字形状をしたスリット形成部32が穴31に突出して設けられている。なお、蓋部材21の外側面21aが外被13の外側面13aよりも外側に出っ張るように外被13を形成するために、蓋部材21に対応する側の穴31aの方が外側に突出して形成されている。
【0019】
従って、光ファイバ心線11およびテンションメンバ12を、ダイス30の穴31の所定位置を通過するように供給し、押出成型器から溶融状態の樹脂をダイス30の穴31に供給して、光ファイバ心線11、テンションメンバ12を一体的に形成するとともに、蓋部材21も同時に形成する。このとき、スリット形成部32に対応する部分には樹脂が供給されないので、スリット22が形成されることになる。
【0020】
以上、前述した光ファイバケーブル10Aによれば、外被切り裂き用のノッチ20部分に蓋部材21が設けられているので、光ファイバケーブル10Aの断面形状は略矩形状となる。このため、クロージャに収納した際にシール部分と光ファイバケーブル10Aとの間では、蓋部材21が存在するので気密性を保持することができる。また、蝉の産卵に対しても、ノッチ20部分の外被13が他の部分と同様に厚いので、産卵管が貫通して光ファイバ心線11を傷つけるのを防止することができる。また、ノッチ20は従来と同様に設けられているので、切り裂き性を保持することができる。
【0021】
また、蓋部材21の外側面21aが、他の部分の外被13の外側面13aよりも外側に突出しているので、外側から外力が作用した際にノッチ20と蓋部材21との間のスリット22を生めて、クロージャのシール部分との間の気密性を保持することができる。また、ノッチ20から光ファイバケーブル10Aを切り裂く際に、蓋部材21を容易に外側に取り除くことができる。
【0022】
なお、本発明の光ファイバケーブル10Aは、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態においては、蓋部材21を形成するスリット22の配置を光ファイバケーブル10Bの中心である光ファイバ心線11に対して点対称に設けた場合について説明したが、図3に示すように、上下対称に設けることもできる。なお、図1において前述した光ファイバケーブル10Aと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0023】
また、前述した実施形態においては、ノッチ20の断面形状としてV字形状のものを例示したが、図4に示すように、この光ファイバケーブル10Cでは、外被13の外側に向かって広がる台形形状のノッチ23を設けるようにしてもよい。すなわち、スリット24を図4に示すように設けて、蓋部材25を台形に形成するが、蓋部材25の外側面25aが外被13の他の部分の外側面13aよりも外側(L1>L2)になるようにするのは同様である。この場合には、特に、多心(例えば4心)の光ファイバ心線11のように横に広く配置されている場合に適する。
【0024】
さらに、図1、図3、図4においては、いわゆるドロップケーブルの本体のみについて説明したが、図5に示すように、抗張力体14を外被15で被覆したケーブル支持線16が一体的に設けられている場合にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光ファイバケーブルに係る実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る光ファイバケーブルの製造に用いるダイスの断面図である。
【図3】スリットの配置を変えた変形例を示す断面図である。
【図4】蓋部材の形状の変形例を示す断面図である。
【図5】ケーブル支持線が設けられている場合を示す断面図である。
【図6】従来の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10A、10B、10C、10D 光ファイバケーブル
11 光ファイバ心線
12 テンションメンバ
13 外被
13a、13b 外被の外側面
20 ノッチ
21、25 蓋部材
21a、25a 蓋部材の外側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線とテンションメンバとを外被により略矩形状に一括被覆し、前記外被の対向する外側面に長手方向に沿って外被切り裂き用のノッチが各々形成された光ファイバケーブルであって、
前記ノッチの外側に当該ノッチを埋める形状の蓋部材が設けられていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記蓋部材の外側面が、前記外被の他の部分の外側面よりも外側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記ノッチの断面形状が、V字形状をしていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記ノッチの断面形状が、前記外被の外側に向かって広がる台形形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−30909(P2006−30909A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213524(P2004−213524)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】