説明

光ファイバケーブル

【課題】曲がりの方向性がなく、かつ、低い摩擦性と高い曲げ剛性を有し、管路通線が容易に行え、また、管路を出た後の余長の収納などの使い勝手が良い光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】外径0.25mmの光ファイバ1と、光ファイバ1に並列された抗張力体2、または、外径0.4mm乃至0.7mmの鋼線2と、肉厚が0.7mm乃至1.0mm、摩擦係数が0.2以下、ショアD硬度が60以上のポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなり光ファイバ1及び抗張力体2を覆う外被3,4とを備え、外径が3.0mm±0.5mmであって、曲げ剛性が6.0×10−4N・m乃至10.0×10−4N・mである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを外被(シース)で被覆した光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に使用される光ファイバケーブルとして、図4に示すように、光ファイバ101、抗張力繊維102、外被103から構成されたものがある。このような光ファイバケーブルは、可撓性が良く(外被が軟らかく)、曲がり易くなっている。
【0003】
このような光ファイバケーブルを使用するにあたっては、必要に応じて布設形態を変更できるように、建物の新設の際に壁面内に管路を設置しておき、後から管路内に光ファイバケーブルを通すこと(管路通線)が行われる。
【0004】
このような管路通線を行う場合には、図5に示すように、外被103内に、鋼線や曲げ剛性の高い抗張力繊維等の抗張力体104,104を2本並列に配置し、その間に光ファイバ101を実装した光ファイバケーブルを用いるのが一般的である。
【0005】
特許文献1には、外層体の中心部に光ファイバを配置した光ファイバケーブルであって、全体の曲げ剛性及び外周形状が、管路内に光ファイバケーブルを通すための通線工具の曲げ剛性及び外周形状と略同等に設定し、布設作業の簡略化を図った光ファイバケーブルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006‐163209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したような可撓性の良い光ファイバケーブルは、管路への通線は想定されておらず、通線はほとんど不可能である。また、複数の光ファイバケーブルが輻輳した場合には、他の光ファイバケーブルに絡まってしまい、目的の光ファイバケーブルを取り出せないことがある。
【0008】
また、2本の抗張力体104,104の間に光ファイバ101を実装した光ファイバケーブルは、曲がりの方向が限定されるため、管路を出た後の余長の収納などにおいて、使い勝手が良くない場合がある。
【0009】
特許文献1に記載された光ファイバケーブルは、全体の曲げ剛性及び外周形状を通線工具の曲げ剛性及び外周形状と略同等に設定しなければならないため、曲げ剛性及び外周形状が限定されてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、曲がりの方向性がなく、かつ、低い摩擦性と高い曲げ剛性を有し、管路通線が容易に行え、また、管路を出た後の余長の収納などの使い勝手が良い光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る光ファイバケーブルは、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0012】
〔構成1〕
外径0.25mmの光ファイバと、光ファイバに並列された抗張力体と、肉厚が0.7mm乃至1.0mm、摩擦係数が0.2以下、ショアD硬度が60以上のポリオレフィン系熱可塑性樹脂材料からなり、光ファイバ及び抗張力体を覆う外被とを備え、外径が3.0mm±0.5mmであって、曲げ剛性が6.0×10−4N・m乃至10.0×10−4N・mであることを特徴とするものである。
【0013】
〔構成2〕
外径0.25mmの光ファイバと、光ファイバに並列された外径0.4mm乃至0.7mmの鋼線と、肉厚が0.7mm乃至1.0mm、摩擦係数が0.2以下、ショアD硬度が60以上のポリオレフィン系熱可塑性樹脂材料からなり、光ファイバ及び抗張力体を覆う外被とを備え、外径が3.0mm±0.5mmであって、曲げ剛性が6.0×10−4N・m乃至10.0×10−4N・mであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光ファイバケーブルは、構成1、または、構成2を有することにより、光ファイバケーブル自体を管路へ押し込んでの通線が可能である。また、複数の光ファイバケーブルが輻輳している場合でも絡まりにくい。
【0015】
すなわち、本発明は、曲がりの方向性がなく、かつ、低い摩擦性と高い曲げ剛性を有し、管路通線が容易に行え、また、管路を出た後の余長の収納などの使い勝手が良い光ファイバケーブルを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係る光ファイバケーブルを通線している状態を示す平面図である。
【図4】従来の光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【図5】抗張力体を有する従来の光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【0019】
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルは、図1に示すように、光ファイバ1を合成樹脂材料からなる外被内層3及び外被外層4によって被覆して構成されている。
【0020】
光ファイバ1は、外径が0.25mmであり、石英系ガラスファイバの外周を紫外線硬化型樹脂などからなる被覆材により被覆して構成されている。外被(シース)は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂材料からなり、外被内層3と、この外被内層3を被覆した外被外層4とからなる。
【0021】
外被内層3には、光ファイバ1とともに、繊維強化プラスチックからなる抗張力体(テンションメンバ)2が内包されている。この抗張力体2は、光ファイバ1の周囲を囲む円筒状に形成され、光ファイバ1に並列されている。
【0022】
外被内層3及び外被外層4からなる外層は、肉厚が0.7mm乃至1.0mm、外周面の摩擦係数が0.2以下、ショアD硬度が60以上となされている。
【0023】
そして、この光ファイバケーブルは、外径が3.0mm±0.5mmであって、曲げ剛性が6.0×10−4N・m乃至10.0×10−4N・mとなっている。
【0024】
この光ファイバケーブルは、曲がりの方向が限定されることがなく、また、外周面が低摩擦であって、かつ、高剛性の光ファイバケーブルとなっているので、管路への通線を容易に行うことができる。
【0025】
〔第2の実施の形態〕
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【0026】
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルは、図2に示すように、抗張力体2に代えて、外径0.4mm乃至0.7mmの鋼線2を用いて構成してもよい。この場合には、鋼線2は、円柱状に形成されており、光ファイバ1に並列されて、外被内層3内に内蔵されている。
【0027】
この光ファイバケーブルにおいても、外被内層3及び外被外層4からなる外層は、肉厚が0.7mm乃至1.0mm、外周面の摩擦係数が0.2以下、ショアD硬度が60以上となされている。
【0028】
そして、この光ファイバケーブルは、外径が3.0mm±0.5mmであって、曲げ剛性が6.0×10−4N・m乃至10.0×10−4N・mとなっている。
【0029】
この光ファイバケーブルは、曲がりの方向が限定されることがなく、また、外周面が低摩擦であって、かつ、高剛性の光ファイバケーブルとなっているので、管路への通線をさらに容易に行うことができる。
【0030】
〔実施例〕
図3は、本発明に係る光ファイバケーブルを通線している状態を示す平面図である。
【0031】
以下の〔表1〕に示すように、本発明に係る光ファイバケーブルの実施例及び比較例1乃至比較例3を作製し、図3に示すように、2箇所の曲がり部202,203を有する模擬配管201へ押し込んで通線を行った。模擬配管201への押し込みは、図3中の矢印Aで示すように、模擬配管201の端部より、光ファイバケーブル5を押し込むことによって行った。
【表1】

【0032】
なお、実施例及び比較例1の光ファイバケーブルは、外径が3.0mmで、外被の肉厚は0.9mmである。
【0033】
模擬配管201への通線性は、実施例の光ファイバケーブルでは良好(○)であったが、比較例1乃至比較例3の光ファイバケーブルでは不良(×)であった。この結果より、配管への通線性には、光ファイバケーブルの曲げ剛性、外被のショア硬さ、外周面の摩擦係数の要素が影響していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、光ファイバを外被(シース)で被覆した光ファイバケーブルに適用される。
【符号の説明】
【0035】
1 光ファイバ
2 抗張力体(テンションメンバ)
3 外被内層
4 外被外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径0.25mmの光ファイバと、
前記光ファイバに並列された抗張力体と、
肉厚が0.7mm乃至1.0mm、摩擦係数が0.2以下、ショアD硬度が60以上のポリオレフィン系熱可塑性樹脂材料からなり、前記光ファイバ及び前記抗張力体を覆う外被と
を備え、
外径が3.0mm±0.5mmであって、曲げ剛性が6.0×10−4N・m乃至10.0×10−4N・mである
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
外径0.25mmの光ファイバと、
前記光ファイバに並列された外径0.4mm乃至0.7mmの鋼線と、
肉厚が0.7mm乃至1.0mm、摩擦係数が0.2以下、ショアD硬度が60以上のポリオレフィン系熱可塑性樹脂材料からなり、前記光ファイバ及び前記抗張力体を覆う外被と
を備え、
外径が3.0mm±0.5mmであって、曲げ剛性が6.0×10−4N・m乃至10.0×10−4N・mである
ことを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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