説明

光ファイバテープ心線の製造装置と製造方法

【課題】光ファイバ心線間の配列間隔を一定に保持して一括被覆された光ファイバテープ心線の製造装置と製造方法を提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバ心線11を予め設定した所定の間隔Pをあけて紫外線硬化樹脂で一括被覆12する樹脂塗布装置17と、複数本の光ファイバ心線を一括被覆した紫外線硬化樹脂を硬化する紫外線照射装置18とを備え、紫外線照射装置の直後に複数本の光ファイバ心線を所定の間隔に保持する心線保持ローラ19を配置する。なお、心線保持ローラ19は、複数本の光ファイバ心線11の位置変動を抑制する複数の環溝を有する一体型のローラで形成され、また、心線保持ローラ19に、光ファイバテープ心線10が接触角20°以上で巻付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバを所定の間隔をあけて平行一列に並べて、紫外線硬化樹脂より一括被覆してなる光ファイバテープ心線の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバテープ心線は、複数本の光ファイバ心線を互いに接するように蜜に平行一列並べて、紫外線硬化樹脂よりテープ状に一括被覆したものが一般的である。この光ファイバテープ心線は、一括被覆の外面が均一で平坦に形成されているので、コンパクトに集線して高密度実装がしやすく、また、一括融着接続の作業性もよいという利点がある。
【0003】
一方、光ファイバテープ心線を機器間や機器内の光配線に使用する場合、光ファイバ心線間の光接続間隔が広かったり、単心に分離して光接続することがある。このような場合の光ファイバテープ心線として、例えば、特許文献1に開示されるように、複数本の光ファイバ心線が互いに接することなく所定の間隔をあけて平行一列に並べられ、また、各光ファイバ心線が分離しやすいように、隣り合う光ファイバ心線の連結部の厚みを薄くした形状のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−231183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3(A)は、複数本の光ファイバ心線が互いに接することなく間隔をあけて平行一列に並べた光ファイバテープ心線の一例を示す図である。この光ファイバテープ心線4は、ガラスファイバ1aを保護被覆1bで被覆した光ファイバ心線1の複数本を、平行一列に並べて紫外線硬化樹脂(UV樹脂)からなる一括被覆2によりテープ状とされたものである。そして、隣り合う光ファイバ心線1の配列間隔Pは、光ファイバ心線1の外径より大きく、光ファイバ心線1同士は互いに接することなく離間した状態とされ、一括被覆2による連結部3は、厚みが薄くされている。
【0006】
上記の光ファイバテープ心線4は、所定の配列間隔Pを保持した状態で樹脂塗布装置によりUV樹脂からなる一括被覆2が施された後、樹脂硬化のための紫外線照射が行われる。この場合、UV樹脂の塗布直後の未硬化の状態から、紫外線照射による硬化に至る段階で、UV樹脂の収縮等により光ファイバ心線の配列間隔Pが変動する。特に、製造線速が速くなるにしたがって、その変動が顕著になるが、製造線速が100m/分を超えるころから、この現象が生じ始める。
【0007】
具体的には、図3(B)に示すように、UV樹脂の収縮等により矢印で示すように、連結部3’が縮小変形し、光ファイバ心線間が狭められて配列間隔P’となり、全体的に内側に向けて光ファイバ心線1の位置が変動し、設計値とは異なる光ファイバテープ心線4’となってしまうという問題がある。
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、光ファイバ心線間の配列間隔を一定に保持して一括被覆された光ファイバテープ心線の製造装置と製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光ファイバテープ心線の製造装置は、複数本の光ファイバ心線が互いに接することなく間隔をあけて平行一列に並べられ、紫外線硬化樹脂により一括被覆してなる光ファイバテープ心線の製造装置であって、複数本の光ファイバ心線を予め設定した所定の間隔をあけて紫外線硬化樹脂で一括被覆する樹脂塗布装置と、複数本の光ファイバ心線を一括被覆した紫外線硬化樹脂を硬化する紫外線照射装置とを備え、紫外線照射装置の直後に複数本の光ファイバ心線を所定の間隔に保持する心線保持ローラを配置したことを特徴とする。
なお、前記の心線保持ローラは、複数本の光ファイバ心線の位置変動を抑制する複数の環溝を有する一体型のローラで形成され、また、心線保持ローラに、光ファイバテープ心線が接触角20°以上で巻付けられることが好ましい。
【0009】
また、本発明による光ファイバテープ心線の製造方法は、複数本の光ファイバ心線が互いに接することなく間隔をあけて平行一列に並べられ、紫外線硬化樹脂により一括被覆してなる光ファイバテープ心線の製造方法であって、樹脂塗布装置により複数本の光ファイバ心線を予め設定した所定の間隔をあけて紫外線硬化樹脂で一括被覆した後、紫外線照射装置により複数本の光ファイバ心線を一括被覆した紫外線硬化樹脂を硬化し、紫外線硬化装置の直後に配した心線保持ローラにより複数本の光ファイバ心線を前記所定の間隔に保持することを特徴とする。なお、光ファイバ心線のそれぞれに、1N以上の張力がかけられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紫外線硬化装置の直後に配した心線保持ローラにより、光ファイバ心線の位置の変動が抑制され、光ファイバ心線の配列間隔を一定に保持して一括被覆することができ、均一な光ファイバテープ心線を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光ファイバテープ心線の製造装置および製造方法の概略を説明する図である。
【図2】本発明の実施に用いられる心線保持ローラの具体例を示す図である。
【図3】従来技術の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図より本発明の実施の形態を説明する。図1(A)は、本発明により製造される光ファイバテープ心線10の一例を示し、複数本の光ファイバ心線11を予め設定された所定の間隔(ピッチともいう)Pで平行一列に並べ、紫外線硬化樹脂(UV樹脂)からなる一括被覆12により、テープ状に一体化されたものである。光ファイバ心線11は、例えば、標準外径125μmのガラスファイバ11aの外周を、外径255μm前後の保護被覆11bにより保護したものである。なお、本発明における光ファイバ心線11には、線引きで保護被覆が施された光ファイバ素線と呼ばれているもの、また、保護被覆の外面に識別用の着色塗料を塗布したもの等も含むものとする。
【0013】
一括被覆12は、一定または所定の間隔で並べられた複数本の光ファイバ心線11を、連結部13によりテープ状に保持するとともに、外被としての機能も備えるもので、厚さ25μm程度の被覆厚さで、テープ厚さより薄い連結部13を介して連結一体化している。なお、連結部13を薄く形成することにより、光ファイバ心線11を単心に分離して使用する場合は、該連結部13を目安に容易に分離することができる。
【0014】
図1(B)は、上述した光ファイバテープ心線10の製造装置の一例を説明する図である。複数本の光ファイバ心線11は、供給ボビン14から個別に繰出され、それぞれガイドローラ15aを経てダンサローラ16により張力を調整され、次いでガイドローラ15bを経て集線ローラ15cにより集線される。集線ローラ15cでは、複数本の光ファイバ心線11が互いに接することのない所定の間隔、例えば、図1(A)で説明した所定の間隔Pで平行一列に並ぶように集線させる。
【0015】
平行一列に並べられた複数本の光ファイバ心線11は、樹脂塗布装置(UV塗布装置)17によりUV樹脂が塗布される。UV塗布装置17は、成形ダイス出口で複数本の光ファイバ心線を予め定められた所定の間隔Pに保持して、UV樹脂を図1(A)の一括被覆12のテープ形状で塗布成形する。そして、UV塗布装置17の下流には、紫外線照射装置(UV照射装置)18が配置されていて、光ファイバ心線に塗布成形されたUV樹脂が硬化される。
【0016】
本発明においては、UV照射装置18の出口の直後に心線保持ローラ19を配したことを特徴とする。この心線保持ローラ19は、図1(B)のように、2つを対にして用いるようにしてもよく、図1(C)に示すように単一のものを用いるようにしてもよい。この心線保持ローラ19の具体例については後述するが、平行一列に並べられた複数本の光ファイバ心線11がUV照射装置18のダイスで予め設定された所定の間隔Pに保持するように形成されている。
【0017】
この心線保持ローラ19を経て引き出された光ファイバテープ心線10は、案内ローラ20を通って、巻取りボビン(図示省略)に巻きとられる。
心線保持ローラ19を用いることなく、UV照射装置18を出た光ファイバテープ心線10を、そのまま案内ローラ20を経て巻きとると、製造線速や巻取りの引き取り張力等も関係するが、図3で説明したように一括被覆12の硬化時に、連結部13の縮小変動が生じ、光ファイバ心線11間の間隔Pが所定値より狭くなる虞がある。
【0018】
光ファイバ心線間の間隔に変動が生じるのは、UV塗布装置17の出口からUV照射装置18を経て心線保持ローラ19に至る区間Lの間である。この区間Lがあまり長いと、心線保持ローラ19に至る前に光ファイバ心線間の間隔変動が生じる虞があるので、心線保持ローラ19は、UV照射装置18の出口の近く、すなわち、UV照射装置18の直後に配されることが好ましい。例えば、UV塗布装置17の出口から心線保持ローラ19までの区間Lは、1m前後とするのが好ましく、UV照射装置18の出口から心線保持ローラ19の位置(ローラ中心位置)は、100mm〜200mm程度とするのが好ましい。
【0019】
また、心線保持ローラ19には、光ファイバテープ心線を覆う一括被覆12がしっかり接触して、複数本の光ファイバ心線11のそれぞれの位置が変動しないように保持されていることが必要である。このため、光ファイバテープ心線10の心線保持ローラ19に対する巻付け角θは、20°以上とするのが望ましく、さらに、図1(C)より図1(B)のように2つの心線保持ローラ19を用いるのが好ましい。
【0020】
また、UV塗布装置17の出口から心線保持ローラ19までの区間Lで、光ファイバ心線に加わる張力を大きくすることで、各光ファイバ心線11の位置の変動を抑制することが期待できる。なお、各光ファイバ心線11に対する張力は、集線ローラ15cと心線保持ローラ19との間に加わる張力となるが、この張力が1N/本以上あるのが好ましい。
【0021】
図2は、心線保持ローラ19の具体例を説明する図である。そして、製造される光ファイバテープ心線10の最終形態が、図2(A)に示すような、ガラスファイバ11aと保護被覆11bからなる光ファイバ心線11の外径より大きい配列間隔Pで、隣り合う光ファイバ心線間が互いに接することなく、厚さの薄い連結部13を介して、UV樹脂からなる一括被覆12で一体化されるものであるとする。
【0022】
図2(B)に示す心線保持ローラ19aは、光ファイバテープ心線10の一方の表面形状に一致する形状の複数の環溝21と環壁22を有するローラで形成される。すなわち、環溝21は、光ファイバ心線11の外面を覆う一括被覆12の形状に倣う断面半円状の凹溝21aで形成され、環壁22は連結部13に倣う凸部22aで形成され、凹溝21aのピッチQは、光ファイバ心線の予め設定される所定の配列間隔Pと同じとされる。
【0023】
図2(C)に示す心線保持ローラ19bは、図2(B)の光ファイバテープ心線10の一方の表面に接する形状の環溝21を、断面V字状の凹溝21bで形成し、環壁22を隣り合う凹溝との境を示す凸部22bで形成し、凹溝21bのピッチQは、同様に光ファイバ心線の予め設定される所定の配列間隔Pと同じとされる。この形状の心線保持ローラ19bは、光ファイバ心線11の外面を覆う一括被覆12の円弧面の2箇所が、凹溝22bの2面に線接触で接する形態となる。このため、光ファイバテープ心線10との接触面積は少なくなるが、各光ファイバ心線11の位置確保が容易で、精度も高い。
【0024】
図2(D)に示す心線保持ローラ19cは、図2(B)の光ファイバテープ心線10の一方の表面に接する形状の環溝21を、断面平坦状の凹溝21cで形成し、環壁22を隣り合う凹溝を仕切る凸部22cで形成し、凹溝21cのピッチQは、同様に光ファイバ心線の予め設定される所定の配列間隔Pと同じとされる。この形状の心線保持ローラ19cは、光ファイバ心線11の外面を覆う一括被覆12の円弧面の一部が、凹溝21cの平坦面に線接触で接する形態となる。このため、光ファイバテープ心線10との接触面積は少なくなるが、各光ファイバ心線11の位置確保が容易で、ローラ形状もシンプルで安価に形成することができる。
【0025】
上述した心線保持ローラ19a〜19cを、光ファイバテープ心線の製造に際して、UV照射装置の直後に配することにより、UV樹脂の硬化時に光ファイバ心線間が狭まるのを効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0026】
10…光ファイバテープ心線、11…光ファイバ心線、11a…ガラスファイバ、11b…保護被覆、12…一括被覆、13…連結部、14…供給ボビン、15a,15b…ガイドローラ、15c…集線ローラ、16…ダンサローラ、17…樹脂塗布装置(UV塗布装置)、18…紫外線照射装置(UV照射装置)、19〜19c…心線保持ローラ、20…案内ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ心線が互いに接することなく間隔をあけて平行一列に並べられ、紫外線硬化樹脂により一括被覆してなる光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記複数本の光ファイバ心線を予め設定した所定の間隔をあけて紫外線硬化樹脂で一括被覆する樹脂塗布装置と、前記複数本の光ファイバ心線を一括被覆した紫外線硬化樹脂を硬化する紫外線照射装置とを備え、
前記紫外線照射装置の直後に前記複数本の光ファイバ心線を前記所定の間隔に保持する心線保持ローラを配置したことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項2】
前記心線保持ローラは、前記複数本の光ファイバ心線の位置変動を抑制する複数の環溝を有する一体型のローラであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項3】
前記心線保持ローラに、光ファイバテープ心線が接触角20°以上で巻付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項4】
複数本の光ファイバ心線が互いに接することなく間隔をあけて平行一列に並べられ、紫外線硬化樹脂により一括被覆してなる光ファイバテープ心線の製造方法であって、
樹脂塗布装置により前記複数本の光ファイバ心線を予め設定した所定の間隔をあけて紫外線硬化樹脂で一括被覆した後、紫外線照射装置により前記複数本の光ファイバ心線を一括被覆した紫外線硬化樹脂を硬化し、
前記紫外線硬化装置の直後に配した心線保持ローラにより前記複数本の光ファイバ心線を前記所定の間隔に保持することを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項5】
前記光ファイバ心線のそれぞれに、張力1N以上をかけることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−208311(P2012−208311A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73766(P2011−73766)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】