説明

光ファイバホルダ及び光ファイバ融着接続装置

【課題】 裸ファイバの露出の割合が異なる場合においても、裸ファイバが傷つくことを抑制しつつ光ファイバを保持可能な光ファイバホルダ、及びその光ファイバホルダを備える光ファイバ融着接続装置を提供する。
【解決手段】 光ファイバ融着接続装置1は、光ファイバを保持するための光ファイバホルダ3を備えている。光ファイバホルダ3は、ベース10と蓋体20と連結部30とを有する。ベース10は、その長手方向に沿って光ファイバFが載置される載置面11を有している。蓋体20は、載置面11に載置された光ファイバFを載置面11に対して押さえ付けるための押さえ部23a〜23cを有している。連結部30は、蓋体20をベース10に対して開閉可能に、かつ、ベース10の長手方向に沿って移動可能に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを保持する光ファイバホルダ、及びその光ファイバホルダを備える光ファイバ融着接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記従来の技術分野の光ファイバ融着接続装置として、例えば、特許文献1に記載の融着接続機が知られている。この融着接続機は、光ファイバ素線をチューブ内に遊挿させてなるルースチューブ光ファイバを把持するための把持機構を備えている。この把持機構は、ホルダベースに載置されたルースチューブ光ファイバのチューブ部分を弾性的にホルダベースに押え付けることにより、ルースチューブ光ファイバを把持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−292523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ルースチューブ光ファイバのチューブの硬さが一定以上になると、従来の把持機構では、チューブ部分を弾性的にホルダベースに押え付けたとしても、チューブに遊挿された光ファイバ素線が把持固定されなくなる。したがって、光ファイバ素線を把持固定するためには、チューブ部分でなく光ファイバ素線自体を把持する必要がある。
【0005】
一般に、ルースチューブ光ファイバとタイトチューブ光ファイバとでは、チューブから露出した光ファイバ素線とその光ファイバ素線から露出した裸ファイバとの長さの割合が異なる。より具体的には、タイトチューブ光ファイバは、ルースチューブ光ファイバに比べて、裸ファイバの露出の割合が大きくなる。このため、ルースチューブ光ファイバの光ファイバ素線自体を把持する構成とした従来の把持機構をタイトチューブ光ファイバに利用すると、裸ファイバを把持することとなるため、裸ファイバが傷つきやすくなる。
【0006】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、裸ファイバの露出の割合が異なる場合においても、裸ファイバが傷つくことを抑制しつつ光ファイバを保持可能な光ファイバホルダ、及びその光ファイバホルダを備える光ファイバ融着接続装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の光ファイバホルダは、光ファイバを保持する光ファイバホルダであって、所定の方向に沿って光ファイバが載置される載置面を有するベースと、載置面に載置された光ファイバを載置面に対して押え付けるための押さえ部を有する蓋体と、ベースと蓋体とを連結する連結部と、を備え、連結部は、蓋体をベースに対して開閉可能にかつ所定の方向に沿って移動可能に連結する、ことを特徴とする。
【0008】
この光ファイバホルダにおいては、連結部は、光ファイバが載置される所定の方向に沿って蓋体が移動可能なように、蓋体をベースに対して開閉可能に連結している。このため、光ファイバを押え付けるための押さえ部が、所定の方向に沿って移動可能となっている。したがって、裸ファイバの露出の割合に応じて、所定の方向に沿って押さえ部を移動させることにより、裸ファイバ自体を押さえ付けることなく光ファイバを保持することができる。よって、裸ファイバの露出の割合が異なる場合においても、裸ファイバが傷つくことを抑制しつつ光ファイバを保持することができる。
【0009】
本発明の光ファイバホルダにおいては、蓋体の裏面が載置面と略平行となるように蓋体がベースに対して開いた状態においてのみ、蓋体が所定の方向に沿って移動可能である、ことが好ましい。この場合、蓋体の開閉途中において、蓋体が不用意に所定の方向に移動してしまうことを防止することができる。
【0010】
また、本発明の光ファイバ融着接続装置は、互いに対向して配置された一対の上記の光ファイバホルダと、光ファイバホルダに保持された光ファイバ同士を融着する融着部と、を備える、ことを特徴とする。この光ファイバ融着接続装置は、上記の光ファイバホルダを備えるので、裸ファイバが傷つくことを抑制しつつ光ファイバ同士の融着接続を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、裸ファイバの露出の割合が異なる場合においても裸ファイバが傷つくことを抑制しつつ光ファイバを保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わる光ファイバ融着接続装置の一実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示された光ファイバ融着接続装置が備える光ファイバホルダの開いた状態の構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示された光ファイバ融着接続装置が備える光ファイバホルダの閉じた状態の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示された光ファイバ融着接続装置が備える光ファイバホルダ3の構成を示す側面図である。
【図5】光ファイバホルダの蓋体の位置を調節する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係わる光ファイバホルダ及び光ファイバ融着接続装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係わる光ファイバ融着接続装置の一実施形態の外観を示す斜視図である。図1に示されるように、本実施形態の光ファイバ融着接続装置1は、箱状の筐体2を備えている。この筐体2の上部には、互いに対向して配置され、融着対象の光ファイバを保持する一対の光ファイバホルダ3と、光ファイバホルダ3に保持された光ファイバ同士を融着する融着部4と、光ファイバの融着接続部に被せられたファイバ補強スリーブを加熱収縮させる光ファイバ補強用加熱器5とが設けられている。また、光ファイバ融着接続装置1は、筐体2の内部に配置されたカメラ(図示せず)によって撮像された光ファイバの融着接続状態を表示するモニタ6を備えている。
【0015】
融着部4は、光ファイバホルダ3に保持された光ファイバの先端部をそれぞれ位置決めする一対のファイバ位置決め部材7を有している。これらのファイバ位置決め部材7は、一対の光ファイバホルダ3の間に設けられている。また、融着部4は、アーク放電によって光ファイバの先端部同士を融着するための一対の放電電極8を有している。これらの放電電極8は、一対のファイバ位置決め部材7の間に配置されている。
【0016】
図2〜4は光ファイバホルダ3の構成を示す図である。図2〜4に示されるように、光ファイバホルダ3は、ベース10と蓋体20と連結部30とを備えている。
【0017】
ベース10は光ファイバFが載置される載置面11を有している。載置面11には、光ファイバFのチューブ部分F1をガイドするためのガイド部12と、チューブ部分F1の先端部を位置決めすると共に該先端部から露出した光ファイバ素線F2をガイドするための複数(ここでは2つ)のガイド片13a,13bと、光ファイバ素線F2の先端部から露出した裸ファイバF3をガイドするためのガイド部14とが設けられている。
【0018】
ガイド部12、ガイド片13a,13b及びガイド部14は、ベース10の長手方向(所定の方向)に沿って順に配置されている。したがって、光ファイバFは、ガイド部12、ガイド片13a,13b及びガイド部14によって、ベース10の長手方向に沿って載置面11に載置される。
【0019】
載置面11には、ベース10の長手方向に沿って互いに略平行に延在する2つの溝15が設けられている。溝15は、光ファイバFが載置される載置面11の中央部分を挟むように配置されている。また、各溝15内には、直方体状のマグネット16が埋設されている。
【0020】
蓋体20は、後述するように、連結部30によって、ベース10に対して開閉可能に連結されている。したがって、蓋体20は、図2に示されるようにベース10に対して開いた状態としたり、図3に示されるようにベース10に対して閉じた状態としたりできる。
【0021】
蓋体20には、ベース10の長手方向に沿って延在する2つの金属板21が設けられている。金属板21のそれぞれは、蓋体20がベース10に対して閉じた状態において、マグネット16のそれぞれに対応する位置に配置されている。したがって、蓋体20は、マグネット16と金属板21との間に生じる磁力によって、ベース10に対して閉じた状態を維持できる。
【0022】
蓋体20の中央部には、金属板21同士を離間させるようにベース10の長手方向に沿って延在する溝22が形成されている。溝22は、蓋体20がベース10に対して閉じた状態において、ベース10の載置面11に載置された光ファイバFに対応する位置に形成されている。このような溝22内には、光ファイバFを載置面11に対して押え付けるための押さえ部23a〜23cが埋設されている。
【0023】
押さえ部23a〜23cは、バネ等の弾性体(図示せず)によって、蓋体20の裏面(金属板21の上面)20a側に付勢されている。したがって、押さえ部23a〜23cは、蓋体20をベース10に対して閉じたときに、弾性体の付勢力によって、載置面11に載置された光ファイバFを載置面11に対して押さえ付ける。
【0024】
押さえ部23a、押さえ部23b、及び押さえ部23cは、ベース10の長手方向に沿ってこの順に配列されると共に、少なくとも蓋体20の裏面20a側において互いに離間している。
【0025】
押さえ部23aと押さえ部23bとの離間箇所P1は、蓋体20をベース10に対して閉じたときに、ガイド片13aを挿入可能な位置に設定されている。また、押さえ部23bと押さえ部23cとの離間箇所P2は、蓋体20をベース10に対して閉じたときに、ガイド片13a又はガイド片13bを挿入可能な位置に設定されている。
【0026】
押さえ部23aと、押さえ部23b及び押さえ部23cとは、蓋体20をベース10に対して閉じたときに、それぞれ別個に光ファイバFを押さえ付けることとなる。このため、押さえ部23aが相対的に太いチューブ部分F1を押さえつつ、押さえ部23b及び押さえ部23cが光ファイバFのなかで相対的に細い光ファイバ素線F2を押さえることが可能となる。
【0027】
連結部30は、ベース10の一側部においてベース10の長手方向に沿って配置された回動軸31と、ベース10の一側部から延設された筒状部32と、蓋体20のベース10側の端部から延設された軸把持部33とを有している。回動軸31は、筒状部32の内部に摺動可能に挿通されている。軸把持部33は、筒状部32に挿通された回動軸31の両端を把持固定している。これにより、連結部30は、蓋体20をベース10に対して、回動軸31を中心に回動可能(開閉可能)に連結している。
【0028】
ここで、連結部30は、回動軸31を筒状部32に対して摺動可能とすることにより、蓋体20をベース10に対してベース10の長手方向に沿って移動可能に連結している。特に、連結部30は、蓋体20の裏面20aが載置面11と略平行となるように(すなわち、裏面20aと載置面11とのなす角度が略180°となるように)蓋体20がベース10に対して開いた状態においてのみ、蓋体20をベース10に対してベース10の長手方向に沿って移動可能としている。
【0029】
そのために、連結部30は、ベース10の一側部から突出して形成された一対の突起34を有している。また、軸把持部33のそれぞれは、切り欠き33aを有する筒状を呈している。切り欠き33aは、蓋体20の裏面20aが載置面11と略平行となるように蓋体20がベース10に対して開いたときに、突起34がその内部を通過できるような位置及び形状に形成されている。このため、蓋体20の裏面20aが載置面11と略平行となるように蓋体20がベース10に対して開いた状態においてのみ、蓋体20がベース10に対してベース10の長手方向に沿って移動可能となる。
【0030】
このような光ファイバホルダ3において光ファイバFを保持するときには、図2に示されるように、まず、光ファイバFをベース10の載置面11に載置する。このとき、光ファイバFは、ガイド部12、ガイド片13a,13b及びガイド部14によって、ベース10の長手方向に沿って載置される。
【0031】
続いて、蓋体20の裏面20aが載置面11と略平行となるように蓋体20をベース10に対して開いた状態において、ベース10の長手方向についての蓋体20の位置を調整する。より具体的には、裸ファイバF3の露出の割合に応じて、押さえ部23a〜23cの位置を調整すべくベース10の長手方向についての蓋体20の位置を調整する。
【0032】
例えば、光ファイバFがルースチューブ光ファイバである場合には、裸ファイバF3の露出の割合が比較的小さい。すなわち、光ファイバFがルースチューブ光ファイバである場合には、光ファイバ素線F2が比較的長く取られている。このため、押さえ部23bや押さえ部23cによって光ファイバ素線F2を押さえ付けるために、図5(a)に示されるように、蓋体20をベース10の先端側(前端側)に移動させる。
【0033】
また、光ファイバFがタイトチューブ光ファイバである場合には、裸ファイバF3の露出の割合が比較的大きい。すなわち、光ファイバFがタイトチューブ光ファイバである場合には、光ファイバ素線F2の部分が短い。このため、押さえ部23aや押さえ部23bでチューブ部分F1を押さえ付けるために、図5(b)に示されるように、蓋体20をベース10の後端側に移動させる。
【0034】
そして、図3に示されるように、蓋体20をベース10に対して閉じた状態とすることにより、押さえ部23a〜23cで光ファイバFを載置面11に対して押さえ付けて、光ファイバFを保持する。
【0035】
以上説明したように、光ファイバホルダ3においては、連結部30が、蓋体20をベース10に対してベース10の長手方向に沿って移動可能なように連結している。このため、光ファイバFを押え付けるための押さえ部23a〜23cが、ベース10の長手方向に沿って移動可能となっている。
【0036】
したがって、裸ファイバF3の露出の割合に応じて(すなわち、光ファイバ素線F2の長さに応じて)、押さえ部23a〜23cを移動させることにより、裸ファイバF3自体を押え付けることなく光ファイバFを保持することができる。よって、ルースチューブ光ファイバとタイトチューブ光ファイバのように裸ファイバF3の露出の割合が互いに異なる光ファイバを保持する場合においても、裸ファイバが傷つくことを抑制できる。
【0037】
また、光ファイバ融着接続装置1は、上述したような光ファイバホルダ3を備えることにより、裸ファイバが傷つくことを抑制しつつ、好適に光ファイバの融着接続を行うことができる。
【0038】
以上の実施形態は、本発明に係わる光ファイバホルダ及び光ファイバ融着接続装置の一実施形態を説明したものであり、本発明に係わる光ファイバホルダ及び光ファイバ融着接続装置は、上記の光ファイバホルダ3及び光ファイバ融着接続装置1に限定されるものではない。本発明に係わる光ファイバホルダ及び光ファイバ融着接続装置は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、光ファイバホルダ3及び光ファイバ融着接続装置1を変形したものとすることができる。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、光ファイバホルダ3は、光ファイバ融着接続装置1に搭載されるものとしたが、これに限らず、光ファイバホルダ3は他の機器に搭載して用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…光ファイバ融着接続装置、3…光ファイバホルダ、4…融着部、10…ベース、11…載置面、20…蓋体、23a,23b,23c…押さえ部、30…連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを保持する光ファイバホルダであって、
所定の方向に沿って前記光ファイバが載置される載置面を有するベースと、
前記載置面に載置された前記光ファイバを前記載置面に対して押え付けるための押さえ部を有する蓋体と、
前記ベースと前記蓋体とを連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、前記蓋体を前記ベースに対して開閉可能にかつ前記所定の方向に沿って移動可能に連結する、ことを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項2】
前記蓋体の裏面が前記載置面と略平行となるように前記蓋体が前記ベースに対して開いた状態においてのみ、前記蓋体が前記所定の方向に沿って移動可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバホルダ。
【請求項3】
互いに対向して配置された請求項1又は2に記載の一対の光ファイバホルダと、
前記光ファイバホルダに保持された前記光ファイバ同士を融着する融着部と、を備えることを特徴とする光ファイバ融着接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137664(P2012−137664A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290777(P2010−290777)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【Fターム(参考)】