説明

光ファイバー結束具及びそれを用いた光ファイバー複合体

【課題】光ファイバー集合体に応力や熱負荷を与えたり、接着剤を塗布したりする必要がなく、また光ファイバー自体を傷付けることなく、光ファイバー集合体の束の一部を結束して固定する作業性に優れた光ファイバー結束具及びそれを用いた光ファイバー複合体を提供する。
【解決手段】光ファイバー結束具100は、筒状であって、切り欠き部22を側壁20に有し、この切り欠き部22は一方の端部10から軸線方向に延在している。光ファイバー複合体は、光ファイバー結束具100によって、光ファイバー集合体の束の一部分が握持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバーを集束した光ファイバー束や、光ファイバーを少なくともその一部に含む織物、編物、メッシュ織物、不織布などの光ファイバー布などの光ファイバー集合体を結束して固定するための光ファイバー結束具、及びそれを用いた光ファイバー複合体に係り、更に詳細には、これらの光ファイバー集合体の末端部を結束し、光源からの光を効率良く光ファイバー中に導光するための光ファイバー結束具、及びそれを用いた光ファイバー複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光技術の進歩により、光ファイバーを用いた照明技術が数多く提案されている。例えば、光ファイバーの表面を傷付ける、或いは溶剤によって表面の一部を溶解させて光を漏洩させる方法や、光ファイバーを織物中に織り込み、織物組織の中で光ファイバーが屈曲することによって光を漏洩させる方法、光ファイバーを紐状に撚った状態で光を漏洩させる方法、光ファイバー中にガラスや樹脂の粒子を分散させて光を散乱させる方法、光ファイバーの端末からの発光を利用した方法などが挙げられる。
【0003】
しかしながら、光ファイバー中に光を導光するためには、光ファイバーの末端部を光源装置と接続し、光源装置からの発光を光ファイバー中に効率的に導光する必要がある。そのため、複数本の光ファイバーや光ファイバー布の末端部を束ねた後、口金で固定して光源装置に接続する方法が採られている。
【0004】
これらの光ファイバー集合体を束ねて束状とし、光源装置に接続する場合、具体的には、(i)この光ファイバーの束の外径とほぼ同等の内径を有する筒状の樹脂製口金や金属製口金に、光ファイバーを詰め込んで挿入し、光ファイバーの充填率を上げてその内圧で光ファイバー束を口金に固定する方法や、(ii)光ファイバー束の外径に対してやや大きい内径を有する口金に、光ファイバー束を挿入後、隙間に接着剤を塗布、硬化して、接着剤で光ファイバー束を口金に固定する方法を用いることができる。
【0005】
しかしながら上述の(i)の方法では、光ファイバーを筒状の口金に詰め込んで挿入するため、多大な時間を要する上、光ファイバーの側面が傷付いたり、光ファイバーが折れたりする問題がある。また上述の(ii)の方法では、接着剤の硬化に時間を要する上、使用する接着剤の耐熱性や組成によっては、光源装置からの発熱により接着剤が軟化したり、光ファイバー自体に接着剤成分が浸透して光学特性を低下させてしまう問題がある。
【0006】
そこで、光ファイバー束を筒状の口金に挿入した後、口金の周囲を、加熱装置を用いて口金自体を加熱、軟化させて絞り、更に装置を用いて縮径することで、接着剤を用いることなく、光ファイバー束を口金に固定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平08−30771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、口金の周囲を加熱、軟化させて縮径させているため、加熱装置や縮径装置など、大型の設備投資が必要な上、加工コストも高くなる。また、石英系光ファイバーに比べて耐熱性の低いプラスチック光ファイバーでは、光ファイバー自体が加熱時に溶融してしまうため、光ファイバーの種類も限定されるという問題もある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光ファイバー集合体に応力や熱負荷を与えたり、接着剤を塗布したりする必要がなく、また光ファイバー自体を傷付けることなく、光ファイバー集合体の束の一部を結束して固定する作業性に優れた光ファイバー結束具及びそれを用いた光ファイバー複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、切り欠き部やスリットを側壁に有する筒状の結束具であって、その切り欠き部やスリットが、一方の端から軸線方向に延びている結束具とすることで、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の光ファイバー結束具は、切り欠き部を側壁に有する筒状である。この切り欠き部は一方の端部から軸線方向に延在している。
また、本発明の他の光ファイバー結束具は、2以上のスリット部を側壁に有する筒状である。これらのスリット部は、一方の端部から軸線方向に延在し、且つ他の端部まで達しており、
これらのスリット部によって2以上の結束具片が形成されている。更に、側壁の形状に対応した枠体を有しており、この枠体は上記結束具片を拘束している。
【0011】
また、本発明の光ファイバー複合体は、光ファイバー集合体と本発明の光ファイバー結束具を含み、この光ファイバー集合体の束の一部が光ファイバー結束具に握持されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、切り欠き部やスリットを側壁に有する筒状の結束具であって、その切り欠き部やスリットが、一方の端から軸線方向に延びる結束具とすることで、光ファイバー集合体に応力や熱負荷を与えたり、接着剤を塗布したりする必要がなく、また光ファイバー自体を傷付けることなく、光ファイバー集合体の束の一部を結束して固定する作業性に優れた光ファイバー結束具及びそれを用いた光ファイバー複合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(光ファイバー結束具)
以下、本発明の光ファイバー結束具のいくつかの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1〜図4は、本発明の光ファイバー結束具の様々な実施形態を示す斜視図である。また図5は、本発明の光ファイバー結束具の他の実施形態を示す断面図である。
【0015】
図1及び図2において、これらの光ファイバー結束具100は、両方の端部10,10’が開放された筒状であり、その壁面20に切り欠き部22を有する。この切り欠き部は、一方の端部10から他の端部10’に向かって軸方向に延在しており、他の端部まで達していてもよいし(図1)、達していなくてもよい(図2)。またひとつの光ファイバー結束具につき、複数の切り欠き部を有していてもよい。
【0016】
更に、切り欠き部22を有する端部10の端面面積のうち、切り欠き部以外の端部の端面面積と、切り欠き部の端面面積との比が、90:10〜50:50であることが好ましい。このような割合で切り欠き部を有することによって、光ファイバー集合体の束の一部を結束する際の作業性が、より向上するからである。
【0017】
図3において、この光ファイバー結束具100は、両方の端部10,10’が開放された筒状であり、その壁面20に2本のスリット24を有する。これらのスリットは、一方の端部10から軸方向に向かって延びて他の端部10’まで達しており、2片の結束具片102、102’を形成している。なお、スリットの本数は2本には限られず、3本以上のスリットにより3片以上の結束具片に分割されてもよい。
【0018】
また、上記結束具片のうち、最大の結束具片の端面の面積と、それ以外の結束具片の端面の面積の和との比が、90:10〜50:50であることが好ましい。最大の結束具片の割合をこのように十分に大きくすることにより、光ファイバー集合体の束の一部を結束する際に結束具片からのはみ出しが少なくなり、作業性がより向上する。
【0019】
ここでは、枠体30がこれらの結束具片を拘束することによって、2片の結束具片に分割される前の筒状本体の形状を保持している。この枠体は、側壁の形状に対応した環状であり、その内径は、分割前の筒状本体の外周の長さとほぼ同じ長さであることが好ましい。
また、より確実に筒状の形状を保持するために、枠体と結束具片の両者に予め凹凸を設けて拘束の際にその凹凸を嵌合させる方法や、結束具片にネジ山を、結束具片にそれに相当する溝をそれぞれ設けて拘束の際にねじ込む方法等、従来公知の嵌合方法を使用することができる。このように、枠体を用いて結束具片を固定することにより、結束具が使用中に分解して、光ファイバー集合体が結束具の側面方向から抜け出ることを未然に防止し得る。
【0020】
その他、最大の結束具片と枠体のみで光ファイバー集合体を結束することもできる。この場合、光ファイバー集合体の結束時において、最大の結束具片以外の結束具片をセットする工程が省かれるため、作業時間を短縮することができる。
【0021】
図4に示す光ファイバー結束具は、内壁40に凸部42を有する本発明の光ファイバー結束具の他の実施形態である。
このように、本発明の光ファイバー結束具は、筒状の本体の軸心方向に向かって任意の形状の突起、すなわち凸部を有することができる。この凸部の形状としては、針柱状、角柱状、円柱状など様々な形状を挙げることができるが、結束する光ファイバーの側面に著しい傷を付ける恐れがなければ、特に限定されず、従来公知の形状をとることができる。またその大きさについても、筒状の本体に納まる大きさであれば、特に限定されない。
【0022】
また、内壁40における凸部42の数や分布の状態についても特に限定されず、1個の凸部が任意の位置に存在したり、複数個の凸部が規則的に又はランダムに存在したりすることができるが、内壁40の周方向、すなわち軸線方向に垂直な方向に沿って、複数個の凸部が規則的に配置されたり、図4に示すように連続した凸部42が形成されたりしている状態が好ましい。このような構造を有することで、例えば、たて糸とよこ糸を有する光ファイバー含有織物やメッシュ織物を結束する際、結束具の周方向とほぼ平行なたて糸又はよこ糸の一部が、平行且つ規則的に並んだ凸部や連続した凸部に引っ掛かり、光ファイバー含有織物等の特に末端部が、結束具から抜け落ちることを未然に防止し得る。
【0023】
なお、筒状本体の構造について、外周やその中空部の断面形状は任意の形状であり、例えば、円形状、楕円形状、三角形や四角形などの多角形状、星形状など様々な形状を挙げることができるが、好ましくは、円形状である。汎用性及び筒状本体の加工コストの観点から有利であり、また光ファイバー集合体の末端部に設置する光源の断面形状が、電球、LED等の円形状であるため、光源からの光を導光するためには断面が円形状である方が、より効率がよいからである。
また、その大きさは、本発明の作用効果を奏する限り特に限定はされないが、通常、その内接円(内径)の直径が3mm〜30mm、長さが3mm〜50mm程度である。
【0024】
更に、図5に示す光ファイバー結束具のように、筒状本体の一方の端部10”をテーパー加工等により拡開形状とすることができる。図5では、内壁のみをテーパー加工しているが、外壁も含めてテーパー加工してもよい。このような形状を有する結束具は、例えば、光ファイバー集合体の束の末端部の結束に有利に用いることができる。末端部を結束する際に、拡開していない方の端部10を末端側とすることで、結束した箇所以外の光ファイバーを容易に整った扇状に展開することが出来るため、作業性の向上に寄与し得るからである。また、結束した後の光ファイバーが屈曲した際に、結束具の端部に接触して傷つくことを緩和し得るからである。
【0025】
以下に、本発明の光ファイバー結束具の材料等について説明する。
筒状本体については、従来公知の材料を使用することができ、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂やポリプロピレン(PP)樹脂などを含むポリオレフィン樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール(PF)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂などの樹脂材料や、鉄鋼材料、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金などの金属材料、炭素繊維やアラミド繊維、ガラス繊維など強化繊維を用いた成形材料、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)などのゴム材料が挙げられる。なかでも樹脂材料や金属材料が好ましい。
【0026】
更に、金属材料の具体的な例としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、鉛(Pb)、錫(Sn)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)などを主成分する金属や合金、さらにはこれら金属の2種以上を含む合金などが挙げられる。
【0027】
枠体についても、従来公知の材料を使用することができ、上述した筒状本体に使用できる材料を用いることができる。
【0028】
(光ファイバー複合体)
次に、本発明の光ファイバー複合体の実施形態について詳細に説明する。
図6は、本発明の光ファイバー複合体の一実施形態を示す側面図である。
図6に示すように、本発明の光ファイバー複合体200は、光ファイバー集合体500と、上に説明した本発明の光ファイバー結束具100を含み、この光ファイバー集合体の束の一部分が、上記結束具によって握持されている。この束の一部分は、図6のように束の末端部であることが好ましい。光ファイバー集合体を照明等に用いる場合、末端部を結束し、その結束部に光源を設置するのが通常の方法だからである。
ここで、光ファイバー集合体としては、例えば複数本の光ファイバーを集束した光ファイバー束や、光ファイバーを含む光ファイバー布等を挙げることができる。
【0029】
上述の光ファイバー束は、複数本の光ファイバーを集束して束状にされたものであれば特に限定されず、例えば、複数本の光ファイバーを単に集合化したもの、ロープ状・紐状に撚ったもの、シート状に引き揃えたものを丸めたもの、更にこれらの光ファイバー束を更に集めて束ねたものや、これを撚り合わせたもの等が挙げられる。これらの光ファイバー束に含まれる光ファイバーの本数は任意であり、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
また上述の光ファイバー布は、光ファイバーを少なくとも部分的に含む面状のものであれば特に限定されず、例えば、たて糸及び/又はよこ糸として光ファイバーを少なくとも部分的に含む光ファイバー織物や、地組織又は挿入糸として光ファイバーを少なくとも部分的に含む光ファイバー編み物、少なくとも部分的に光ファイバーを含む糸をより合わせたり、結び合わせたり、編み合わせたりしてつくられる透孔のある光ファイバーレース、少なくとも部分的に光ファイバーを含む糸を相互に交錯してつくられた光ファイバー組物、少なくとも部分的に光ファイバーを含む糸を互いに絡み合わせたり、結び合わせてつくられる光ファイバー網、同様に少なくとも部分的に光ファイバーを含む糸を織ったり編んだりしないで、直接シート状にした光ファイバー不織布などが挙げられる。
図6に示す実施例においては、たて糸51とよこ糸52のうち、よこ糸のみを光ファイバーとしている。
【0031】
これらの光ファイバー集合体を形成する光ファイバーとしては、光ファイバー自体が芯と鞘の二層構造から成り、芯と鞘の屈折率の差により導光できるものであれば特に限定されず、従来公知の石英系光ファイバーや多成分系光ファイバー、プラスチック光ファイバーなどを使用することができる。
【0032】
石英系光ファイバーとしては、石英ガラスを主体とした光ファイバーであり、例えば、屈折率を上げる目的でゲルマニウム(Ge)やリン(P)を予め添加した石英ガラスを芯とし、逆に屈折率を下げる目的でホウ素(B)やフッ素(F)を予め添加した石英ガラスを鞘とする石英系光ファイバーが挙げられる。
【0033】
多成分系光ファイバーとしては、主にソーダ石灰やガラスやホウ硅ガラスなどを主成分とした光ファイバーであり、ナトリウム(Na)やカルシウム(Ca)などのアルカリ金属が予め添加されている。
【0034】
プラスチック光ファイバーとしては、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂など、様々な樹脂を芯にしたものがあるが、光の透過率と耐熱性の観点から、メチルメタクリレートを主体とした重合体を芯とし、それよりも屈折率の低い樹脂を鞘としたポリメチルメタクリレート(PMMA)系のプラスチック光ファイバーが好ましい。メチルメタクリレートを主体とした重合体とは、メチルメタクリレートのホモポリマーやメチルメタクリレートと他のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体である。また鞘としては、ビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレン共重合体やビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペン共重合体やビニリデンフルオライドとトリフルオロエチレン共重合体や、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロアセトンとトリフルオロエチレン共重合体やビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロアセトン共重合体などビニリデンフルオライド系樹脂やフルオロアルキルメタクリレートを構成モノマーとして含む樹脂などが挙げられる。
【0035】
これらの光ファイバーの直径は、特に限定はされないが、通常は0.1mm〜10mm程度であり、光源や光ファイバー結束具の大きさや、作業性、汎用性の観点から、好ましくは0.1mm〜1mmである。
【0036】
次に、本発明の光ファイバー複合体の製造方法の一実施形態について説明する。
まず、光ファイバー束又は光ファイバー布について、例えば末端部を本発明の結束具又は本発明の結束具に係る最大の結束具片の中空部に向けて軸線方向又は側面方向から挿入する。この前準備として、木綿糸やビニール紐などで光ファイバー束や光ファイバー布を束ねて、仮集束しておき、挿入作業を容易にすることもできる。
このとき、結束具の中空部の断面積に対して、結束される光ファイバー束や光ファイバー布の断面積の占める割合は60%以上であることが好ましい。
この割合が小さいと、光ファイバー束や光ファイバー布を結束具で十分に固定できず、特に末端部を結束した場合は抜け落ちるおそれがある。
【0037】
結束具が壁面のスリットにより2片以上の結束具片に分割されているタイプ(図3)の場合は、必要に応じて最大の結束具片以外の結束具片を用いて、光ファイバー束又は光ファイバー布の結束部分を側面方向から縮径・固定することもでき、その後、枠体を筒状本体の軸線方向から挿入したり、又は枠体と筒状本体の壁面とを嵌合したりして光ファイバー集合体を結束具に固定することができる。
【0038】
このようにして製造した光ファイバー複合体を光源と接続する場合、通常、その結束部分はファイバー集合体の末端部であるが、この末端部のうち結束具内に収まらずに端面から突き出ている部分については、従来公知の鋭利な刃、カッター、回転刃、ヒートカッター等により切断し、光ファイバー複合体自体の末端の端面を揃えることができる。特にプラスチック光ファイバーを切断する場合はヒートカッターで処理する方法が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
たて糸がポリエステル糸(ハイム;167dtex、東洋紡社製)、よこ糸がプラスチック光ファイバー(エスカ;CK−10、三菱レイヨン社製)から成る光ファイバー織物の末端部を、図1に示す略円状の結束具100の中空部に、側面20の切り欠き部22方向から挿入し、光ファイバー複合体を得た。
本実施例で用いた結束具100の素材はナイロン樹脂であり、形状は外径:12mm、内径:10mm、長さ:20mmである。また切り欠き部22を除いた端部の端面面積と、切り欠き部22の端面面積との比は85:15である。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同じ光ファイバー織物の末端部を、図2に示す略円状の結束具100の中空部に、切り欠き部22の方向から挿入し、光ファイバー複合体を得た。
本実施例で用いた結束具100の素材はポリエステル樹脂であり、形状は外径:12mm、内径:10mm、長さ:20mmである。また切り欠き部22を除いた端部の端面面積と、切り欠き部22の端面面積との比は75:25であり、切り欠き部22の長さは、端部10から軸線方向に向かって10mmである。
【0042】
(実施例3)
実施例1と同じ光ファイバー織物の末端部を、円周方向に対して50:50の割合で分割された図3に示す結束具100の結束具片102と結束具片102’で挟み込み、次いで枠体30を端部方向から挿入してこれらの結束具片を固定することにより、光ファイバー複合体を得た。
本実施例で用いた結束具片と枠体の素材は共にアルミニウム合金であり、分割前の筒状本体の形状は外径:9mm、内径:7mm、長さ:30mmであり、枠体の形状は外径:13mm、内径:9mm、長さ:5mmである。
【0043】
(実施例4)
プラスチック光ファイバー(CK−10、三菱レイヨン社製)450本を予め木綿糸で束ねて成る光ファイバー束の末端部を、実施例3と同じ要領で、図3に示す結束具100を用いて光ファイバー複合体を得た。
【0044】
(実施例5)
実施例1と同じ光ファイバー織物の末端部を、円周方向に対して50:50の割合で分割された図4に示す結束具100の結束具片102と結束具片102’で挟み込み、次いで枠体30を端部方向から挿入してこれらの結束具片を固定することにより、光ファイバー複合体を得た。
本実施例で用いた結束具片と枠体の素材は共にアルミニウム合金であり、分割前の筒状本体の形状は外径:9mm、内径:7mm、長さ:30mmであり、内壁40の軸線方向の中央に、高さ:0.5mm、長さ:1mmの凸状の突起(凸部42)が円周方向に沿って連続して設けられている。また枠体の形状は外径:13mm、内径:9mm、長さ:5mmである。
【0045】
(実施例6)
実施例1と同じ光ファイバー織物の末端部を、円周方向に対して50:50の割合で分割された図5に示す結束具100の結束具片102と結束具片102’で挟み込み、次いで枠体30を端部方向から挿入してこれらの結束具片を固定することにより、光ファイバー複合体を得た。
本実施例で用いた結束具片と枠体の素材は共にアルミニウム合金であり、分割前の筒状本体の形状は一方の端部10”の内壁がテーパー加工されており、他の一端に比べて内径が広く、外径:9mm、内径:8mmである。他の端部10は外径:9mm、内径:7mmである。長さは30mmである。内壁40の軸線方向の中央に、高さ:0.5mm、長さ:1mmの凸部42が円周方向に沿って連続して設けられている。また枠体の形状は外径:13mm、内径:9mm、長さ:5mmである。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同じ光ファイバー織物の末端部を、図7に示す円柱状の結束具の中空部に、軸線方向から挿入し、光ファイバー複合体を得た。
本例で用いた結束具の素材は、実施例1と同様に、ナイロン樹脂であり、形状は外径:12mm、内径:10mm、長さ:20mmである。
【0047】
(比較例2)
実施例4と同じ光ファイバー束の末端部を、図7に示す円柱状の結束具の中空部に、軸線方向から挿入し、次いで、光ファイバー束の末端部と、光ファイバー束と結束具との隙間に接着剤(EP−330、セメダイン社製)を塗布して、室温環境下(25℃/50%RH)で乾燥させて、光ファイバー複合体を得た。
【0048】
[評価]
上述の実施例1〜6及び比較例1〜2につき下記の評価を行った。
【0049】
<端部処理時間>
光ファイバー織物又は光ファイバー束の末端部を筒状本体に挿入し始めてから、完全に挿入し終わるまでに要した時間を、光ファイバー複合体1個あたりの処理時間とした。処理時間は、ストップウォッチを用いて時間計測を行い、結果は分単位で纏めた。
【0050】
<作業性>
光ファイバー織物又は光ファイバー束の末端部を筒状本体に挿入する際の作業性について、以下の基準で評価を行った。
○ :作業性としては良好
△ :作業性としては中程度
× :作業性としては悪い
【0051】
<引抜力>
光ファイバー織物又は光ファイバー束の結束された末端とは別の末端を、ゆっくりと1kgfの荷重で5秒間引っ張った後の結束された末端の状態について、以下の基準で評価を行った。
○ :光ファイバー織物又は光ファイバー束が結束具からずれることなく、変化のない状態
△ :光ファイバー織物又は光ファイバー束が結束具からずれるものの、抜け落ちまでには至っていない状態
× :光ファイバー織物又は光ファイバー束が結束具から完全に抜け落ちた状態
【0052】
<耐屈曲性>
得られた光ファイバー複合体の、結束具から15cm離れた箇所を手で軽く掴み、結束具の開口部の中心軸に対して、90度の角度まで、ゆっくりと折り曲げて5秒間そのまま保持した後、元に戻した。同様な操作を、連続して5回行い、その後、結束具を光ファイバー織物又は光ファイバー束から取り外した。この操作による屈曲点、即ち、結束具の端部との接触部を中心に、光ファイバー織物又は光ファイバー束表面をマイクロスコープ(VHX−900、キーエンス社製)で観察し、以下の基準で評価を行った。
○ :光ファイバー織物表面に傷付きが見られず、変化のない状態
△ :光ファイバー織物表面に僅かに傷付きが見られるものの、たて糸やよこ糸が切れる状態までには至っていない状態
× :光ファイバー織物表面に顕著な傷付きが見られる状態、若しくはたて糸やよこ糸が切れた状態
【0053】
以上の評価結果を表1に示す。表1から分かるように、本発明の結束具を用いた光ファイバー複合体では、その製造にかかる処理時間を従来の結束具を用いた光ファイバー複合体と比較して1/5〜1/10に短縮することが可能である。更に、実施例5及び実施例6の光ファイバー複合体では引抜力に優れるなど安定した結束構造を維持することも可能であり、非常に優れている。
【0054】
【表1】

【0055】
以上、本発明を若干の実施例及び比較例を用いて説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。なお、本発明の結束具を用いた光ファイバー複合体は、照明、装飾、表示装置、通信用デバイスなど、従来公知の用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の光ファイバー結束具の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の光ファイバー結束具の他の実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の光ファイバー結束具の更に他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明の光ファイバー結束具の更に他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の光ファイバー結束具の更に他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の光ファイバー複合体の一実施形態を示す側面図である
【図7】従来の光ファイバー結束具を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
10,10’ 端部
20 壁面
22 切り欠き部
24 スリット
30 枠体
40 内壁
42 凸部
51 たて糸
52 よこ糸
100 光ファイバー結束具
102、102’ 結束具片
200 光ファイバー複合体
500 光ファイバー集合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の光ファイバー結束具であって、
切り欠き部を側壁に有し、
この切り欠き部は、一方の端部から軸線方向に延在している
ことを特徴とする光ファイバー結束具。
【請求項2】
上記切り欠き部を有する端部において、
その端部の切り欠き部を除いた端面面積と、その切り欠き部の端面面積との比が、90:10〜50:50である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー結束具。
【請求項3】
筒状の光ファイバー結束具であって、
2以上のスリット部を側壁に有し、
これらのスリット部は、一方の端部から軸線方向に延在し、且つ他の端部まで達しており、
これらのスリット部によって2以上の結束具片が形成されており、
更に、上記側壁の形状に対応した枠体を有し、
該枠体が上記結束具片を拘束している
ことを特徴とする光ファイバー結束具。
【請求項4】
上記結束具片のうち、最大の結束具片の端面の面積と、それ以外の結束具片の端面の面積の和との比が、90:10〜50:50である
ことを特徴とする請求項3に記載の光ファイバー結束具。
【請求項5】
内壁に凸部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の光ファイバー結束具。
【請求項6】
上記凸部が、上記軸線方向に垂直な方向に沿って連続して形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の光ファイバー結束具。
【請求項7】
一方の端部が拡開形状をなすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の光ファイバー結束具。
【請求項8】
光ファイバー集合体と、請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の光ファイバー結束具を含む光ファイバー複合体であって、
上記光ファイバー集合体の束の一部分を上記光ファイバー結束具によって握持したことを特徴とする光ファイバー複合体。
【請求項9】
上記束の一部分が、束の末端部であることを特徴とする請求項8に記載の光ファイバー複合体。
【請求項10】
上記光ファイバー集合体が、複数本の光ファイバーを集束した光ファイバー束、又は光ファイバー布であることを特徴とする請求項8又は9に記載の光ファイバー複合体。
【請求項11】
上記光ファイバー布が、たて糸及び/又はよこ糸として光ファイバーを含む織物であることを特徴とする請求項10に記載の光ファイバー複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−128164(P2010−128164A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302520(P2008−302520)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(390011198)福井鋲螺株式会社 (41)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【Fターム(参考)】