説明

光ファイバ側面の清掃方法および清掃具

【課題】保護被覆が施された光ファイバのシリコーンを良好に除去することが可能な光ファイバ側面の清掃方法および清掃具を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態は、シリコーン層を有する光ファイバの側面の清掃方法であって、清掃面の少なくとも一部に粒子13が存在する不織布11を用意し、粒子13が存在する清掃面にて裸光ファイバ16の側面を拭う清掃工程であって、光ファイバ14および不織布11を相対的に移動させて裸光ファイバ16の側面を拭う清掃工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信用の光ファイバ側面の清掃方法および清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信用ガラス光ファイバは外径125μmであり、これに保護被覆が施されている。光ファイバコネクタを組み立てる場合、この被覆を除去しフェルールに光ファイバを通して組み立てる。その際、フェルールと光ファイバの隙間はミクロンメートル程度と小さい。従って、光ファイバの側面にゴミ等が付着していると、上述のように狭い隙間に光ファイバが良好に挿入されないことがある。これを解消するために、フェルールに挿入する際、光ファイバ側面に付着しているゴミ等を清掃してから接着剤を塗布して組み立てる。
【0003】
従来の光ファイバ側面の清掃方法では、光ファイバを保護している被覆を10mm程度剥いてから、不織布のワイパにアルコールを滲み込ませ、光ファイバ側面をはさんで光ファイバの長手方向に動かして拭うことで清掃される(非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】“現地組立型単心SCコネクタクイック−SC”、[online]、住友電気工業株式会社、インターネット<http://www.optigate.jp/topics/qst02p.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被覆材として一般的なナイロン被覆の場合、光ファイバとナイロン被覆の間に曲げた時の応力緩和のためにシリコーン層が存在する。このシリコーン層は、非特許文献1に記載の従来の光ファイバの清掃方法、つまり、不織布にアルコールを滲み込ませて拭う清掃方法では、清掃後に光ファイバ側面に残留することがあった。すなわち、応力緩和のためのシリコーンは、光ファイバの清掃において上述のように残留し、薄く光ファイバにコーティングされたような状態(残留シリコーン皮膜となり)となり、完全に除去することは困難であった。
【0006】
その結果、光ファイバをフェルールに固定する際に接着剤がシリコーンによってはじかれ、光ファイバが完全に濡れた状態とならず、フェルールと光ファイバの接着力が低下して接着剤による十分な固定が行われないことがあった。この結果、長期間光コネクタを使用した場合、温度変化等によりフェルールから光ファイバが動いてしまい、光学特性が劣化する問題があった。
【0007】
さらに、ナイロン被覆等の、保護被覆物を光ファイバから除去した際に、露出した光ファイバの側面に付着したほこりやゴミを良好に除去することや、上記側面に後天的に付着した粘着性の付着物も良好に除去することが望まれている。
【0008】
一方、従来のフェルールと光ファイバの接着剤はエポテック353ND(商品名)が主流であった。この接着剤によれば、上記の多少の濡れ性の悪さがあっても接着力が強力なため、ナイロン被覆光ファイバであっても、安定した光学特性が得られていた。しかし、この接着剤は人体に悪影響があるため代替品が検討されている。しかし、この接着剤並みの強度を有する接着剤が開発できていない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、保護被覆が施された光ファイバのシリコーンを良好に除去することが可能な光ファイバ側面の清掃方法および清掃具を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、光ファイバをフェルールに固定する際に用いる接着剤の候補を拡大させる光ファイバ側面の清掃方法および清掃具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1記載の発明は、シリコーン層を有する光ファイバの側面の清掃方法であって、清掃面の少なくとも一部に粒子が存在する不織布を用意する用意工程と、前記粒子が存在する清掃面にて前記光ファイバの側面を拭う清掃工程であって、前記光ファイバおよび前記不織布を相対的に移動させて前記光ファイバの側面を拭う清掃工程とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記不織布の代わりに布を用いることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記清掃面にはアルコールが染み込まれていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記清掃工程の後に、前記不織布にて拭われた光ファイバの側面を、アルコールがしみ込んだ第2の不織布にて拭う工程をさらに有することを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記粒子は、前記清掃面に固定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、シリコーン層を有する光ファイバの側面を清掃するための清掃具であって、不織布と、前記不織布の清掃面に存在する粒子とを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記不織布の代わりに布を用いることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明において、前記清掃面にはアルコールが染み込まれていることを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求久尾6乃至8のいずれかに記載の発明において、前記粒子は、前記清掃面に固定されていることを特徴とする。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求ク9記載の発明において、前記粒子を固定する材料がセルロースであることを特徴とする。
【0021】
請求項11記載の発明は、請求項6乃至10のいずれかに記載の発明において、前記粒子は、モース硬度が3以上5以下であることを特徴とする。
【0022】
請求項12記載の発明は、請求項6乃至11のいずれかに記載の発明において、前記粒子は、そのサイズが75μm〜150μmで形状が不揃いでいびつであることを特徴とする。
【0023】
請求項13記載の発明は、請求項6乃至12のいずれかに記載の発明において、前記粒子の表面は、1μm〜10μmの凹凸を有することを特徴とする。
【0024】
請求項14記載の発明は、請求項6乃至13のいずれかに記載の発明において、前記粒子は、メラミン、ポリエステル、ユリア、ポリカーネート、アクリル、桃の種、あんずの種、またはくるみの殻の群から選ばれる1または2以上の物質であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光ファイバの清掃時に、清掃具の清掃面に粒子を存在させるようにするので、光ファイバが有するシリコーンを適切に除去することが可能である。また、フェルールへの接着強度を高めることができるので、使用可能な接着剤を増やすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の一実施形態では、ナイロン被覆などの保護被覆を有し、シリコーン層を有する光ファイバの側面を清掃するための不織布の清掃面に、上記側面の清掃時に粒子を存在させることが重要である。すなわち、本発明の一実施形態に係る清掃具は、清掃面の少なくとも一部に粒子が存在する清掃用ワイパである。上記粒子により、上記保護被覆を除去した光ファイバの表面に存在するシリコーン層を良好に除去することができる。
【0027】
このような粒子としては、例えば、メラミン、ポリエステル、ユリア、ポリカーネート、アクリル、桃の種、あんずの種、またはくるみの殻など、シリコーンを適切にこそぎ落とすことが可能な粒子であればいずれを用いることができる。また、本発明で重要なことは、上述のようにシリコーンの残留を低減させることであるので、用いる粒子は上記例で示した材料を単体で用いることが本質ではない。よって、上記粒子の例を適宜組み合わせて用いても良い。すなわち、粒子として、メラミン、ポリエステル、ユリア、ポリカーネート、アクリル、桃の種、あんずの種、またはくるみの殻の群から選ばれる1または2以上の物質を用いることができる。
【0028】
このとき、上記清掃面に対して、粒子に加えてアルコールを染み込ませても良い。アルコールは、光ファイバの側面に付着したゴミや粘着性の付着物を除去する効果があるので、清掃面に粒子とアルコールとを存在させることによって、同一の清掃用ワイパで、シリコーン層の除去と付着物の除去とを行うことができる。
【0029】
上記清掃面に対して、粒子に加えてアルコールを染み込ませない場合は、粒子を有する清掃用ワイパにて光ファイバの側面を拭いた後に、別個の清掃用ワイパであって、アルコールを染み込ませたワイパにて拭けば良い。
【0030】
また、上記粒子を清掃面に存在させる際に、該粒子を清掃面に固定しても良いし、固定しなくても良い。固定しない場合は、上記粒子が光ファイバの側面に付着することがあるので、粒子を有する清掃用ワイパで清掃した後に、光ファイバの側面を別個に用意した、アルコールを染み込ませた清掃用ワイパで上記側面を拭くようにすれば良い。このようにすることで、粒子を有する清掃用ワイパにて残留シリコーン皮膜を低減、ないしは除去した後に、光ファイバの側面に残留している粒子やその他のゴミ等の残留物を良好に除去することができる。
【0031】
ところで、粒子を固定することは、光ファイバの清掃後における、光ファイバの側面への粒子の残留を抑えることができるので有効である。このように固定することによって、固定しない場合で必要であった、アルコール付の別個のワイパによる清掃を省略することができる。ただし、粒子を固定する場合であっても、アルコール付の別個のワイパによる清掃を行っても良いことは言うまでも無い。このような粒子を固定する材料としては、例えばセルロースを用いることができる。
【0032】
また、本発明の一実施形態では、清掃用ワイパの基体として不織布に限らず、布を用いても良い。このように清掃用ワイパとして布を用いる場合は、光ファイバの側面に布の繊維が付着する場合がある。よって、清掃用ワイパとして布を用いる場合は、アルコールを有する如何に関らず、粒子を有する布による清掃の後に、別個に用意したアルコールを染み込ませた不織布による拭き取りを行えば良い。
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係る光ファイバ側面の清掃方法および清掃具を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは言うまでもない。
【0034】
(第1の実施例)
光ファイバ側面の清掃方法の第1の実施例を説明する。
図1に示すように、不織布11にアルコール12を滲み込ませ、これに粒子13を振りかけるなどして、粒子13をまぶす。このようにして、粒子13を不織布11の清掃面に存在させる。このようにして、清掃用ワイパ10が作製される。
【0035】
なお、本明細書において、「清掃面」とは、不織布や布等の清掃用ワイパの基体における、清掃すべき光ファイバに当接して光ファイバの側面を清掃するための面である。
【0036】
光ファイバ14は、ナイロン被覆15により保護されており、フェルール(不図示)に挿入される部分のナイロン被覆15を1cm程度除去し、裸光ファイバ16を露出させる。このとき、裸光ファイバ16の側面にはシリコーン層が形成されている。
【0037】
この裸光ファイバ16の側面を不織布11で挟み込み拭う。このとき、裸光ファイバ16の心線を挟んで、裸光ファイバ16の長手方向に沿って裸光ファイバ16および不織布11の少なくとも一方を動かすことによって、上記側面を拭う。すなわち、裸光ファイバ16と不織布11とを相対的に動かして、上記表面を清掃する。このように、粒子12が存在する清掃用ワイパ10を用いて清掃を行うので、裸光ファイバ16の表面に形成されたシリコーン層を適切に除去することができ、残留シリコーン皮膜を減少することができる。また、粒子13に加えてアルコール12を染み込ませているので、上記シリコーンの除去と共に、ほこりやゴミ、粘着性の付着物などを適切に除去することができる。この清掃用ワイパ10による清掃作業を数回から10回程度繰り返す。
【0038】
なお、本実施例では、清掃者が裸光ファイバ16を清掃用ワイパ10にて挟み、裸光ファイバ16および清掃用ワイパ10を相対的に移動させることによって、シリコーンのこそぎ落としを行っているが、これに限らない。例えば、クリップ等の挟持手段とモータとを備え、該モータが作動することにより挟持手段が移動可能な構成のアクチュエータを用いても良い。この場合は、例えば、光ファイバ14を支持台に固定し、清掃用ワイパ10にて裸光ファイバ16を挟み、その状態を保つようにクリップで清掃用ワイパ10を挟み、上記クリップを移動させることによって行えば良い。また、光ファイバ14をクリップにて挟持し、清掃用ワイパ10にて裸光ファイバ16を挟み、その状態を保つように清掃用ワイパ10を支持台に固定し、上記クリップを移動させるようにしても良い。さらに、光ファイバ14および清掃用ワイパ10の双方をそれぞれ別個のクリップにて挟持し、双方のクリップを移動させるようにしても良い。
【0039】
次いで、裸光ファイバ16の側面に残留する粒子13を除去するために、一方の面にアルコール18を染み込ませた不織布17を用意し、清掃用ワイパ10にて清掃が終了した裸光ファイバ16を不織布17にて挟み、清掃用ワイパ10による清掃と同様にして、裸光ファイバ16の側面の清掃を行う。このように、清掃用ワイパ10と別個に、不織布17にて裸光ファイバ16の表面を清掃するので、シリコーン除去に用いた粒子を適切に除去することができる。
【0040】
本実施例と従来方法によりナイロン被覆の光ファイバ側面の清掃を行い、シアノアクリレート系の接着剤を用いてフェルールと接着し、その接着強度を測定した結果を図2に示す。
【0041】
図2から本実施例の効果を示す。ここでは、サイズ約2cm×2cmの不織布を用い、シリコーン除去用の微粒子としてメラミンを用いた。メラミン粒子は粒径が75〜150μmの範囲のものを0.05g程度使用した。
【0042】
図2より本実施例によって清掃した光ファイバのフェルールへの接着力が従来方法による接着力よりも格段に大きく、ほぼ3kg以上の強度が確保可能となっていることがわかる。この値は、従来主流の接着剤エポテック353NDと同等の接着強度である。本実施例によれば、粒子によって、ナイロン被覆心線に付着しているシリコーン皮膜をこそぎ落とす効果があり、これにより接着強度を向上させているものと考えられる。なお、ナイロン被覆心線のシリコーンと同様な粘着性の付着物についても除去することが可能である。
【0043】
以上、本実施例によれば、光ファイバ側面の清掃を従来と比較してしっかり行うことが可能で、特に接着強度を低下させるシリコーンなどの粘着性物質の除去に効果があり、接着剤による光ファイバとフェルールの接着強度を向上させることができる。この効果により、従来主流の接着剤エポテック353ND以外の接着剤として、たとえば、シアノアクリレート系の接着剤が光コネクタに適用可能とすることができる。
【0044】
すなわち、本実施例によれば、光ファイバ側面の清掃方法において、不織布にアルコールを滲み込ませて光ファイバ側面を拭う際に、粒子を混ぜて拭うことにより、光ファイバ心線表面の残留シリコーン皮膜や、光ファイバに後天的に付着した粘着性の付着物をこそぎ落とす効果があり、接着剤による光ファイバとフェルールの接着強度を向上させることができる。
【0045】
(第2の実施例)
光ファイバ側面の清掃方法の第2の実施例を説明する。
本実施例は、第1の実施例の清掃方法において、硬度を、モース硬度で3以上5以下に限定した粒子を用いることを特徴とする。
【0046】
図3に粒子の硬度を変えて光ファイバを拭いた後の光ファイバの引張り強度(破断強度)を示す。粒子はガラス粒子(モース硬度7)、ソーダ石灰ガラス(モース硬度6)、SUS430(モース硬度5)、メラミン粒子(モース硬度4)、そして、通常の光ファイバの測定結果である。なお、これらの粒子をまぶして光ファイバを清掃することにより、図2で示したような接着力の向上が確認されている。
【0047】
しかし、ガラス粒子(モース硬度7)やソーダ石灰ガラス(モース硬度6)では明らかに光ファイバの引張り強度が低下している。これは、硬度が光ファイバと同じ、あるいは、これに近いため、光ファイバ表面に傷が付いたため、強度低下したと考えられる。光ファイバの強度が低下するとコネクタとした場合などの信頼性が低下する。モース硬度5以下であれば光ファイバに傷を付けにくく、図3に示すとおり光ファイバの引張り強さがほとんど低下していない。一方、モース硬度が3以下であると、光ファイバの表面に付着しているシリコーン皮膜の除去率が低下し、接着剤の濡れ性が悪くなるので、光ファイバの接着強度は低下する。
【0048】
以上説明したように、モース硬度が3以上5以下である粒子を採用することにより、シリコーンの除去性が十分に発揮され、かつ、光ファイバの強度劣化が生じず、接着剤による光ファイバとフェルールの接着強度を向上させることができる。
【0049】
すなわち、第2の実施例によれば、粒子のモース硬度が5以下であることにより、光ファイバのモース硬度の7に対して十分小さいので、清掃を行っても光ファイバの強度劣化が生じず、また、モース硬度が3以上であることにより、シリコーンなどの粘着性付着物の除去性が十分に発揮され、さらに、接着剤による光ファイバとフェルールの接着強度を向上させることができる。
【0050】
なお、本実施例では、粒子のモース硬度を3以上5以下にすることが本質ではない。本実施例では、粒子が光ファイバの側面に残存するシリコーンをこそぎ落とす役割を果たすため、上記粒子による光ファイバの側面への傷を抑えること、およびシリコーンをこそぎ落とすための粒子の硬度を確保することが本質である。
【0051】
(第3の実施例)
光ファイバ側面の清掃方法の第3の実施例を説明する。
本実施例では、第1の実施例の清掃方法において、図4に示すように粒子サイズが光ファイバの外径と同程度の125μm前後(75μm〜150μm、好ましくは75μm〜125μm)で、形状が不揃いでいびつである粒子(凹凸を有する粒子)を用いる。
【0052】
粒子サイズが125μmより十分小さい粒子を用いた場合、シリコーンによる目づまりが発生しやすく、付着物の除去効率が低下してしまう。
一方、粒子サイズが125μmより十分大きい粒子を用いた場合、光ファイバの外径より大きくなり光ファイバ側面に接触しにくくなり、付着物の除去効率が低下する。
【0053】
図5は、ナイロン被覆光ファイバの清掃について、粒子サイズ75〜150μmと粒子サイズ180〜300μmのメラミン粒子によりおこなった場合の、光ファイバの濡れ性を測定した結果である。濡れ性は、エタノールで希釈したシランカップリング剤を光ファイバに塗り、エタノールが蒸発して液が順次濃くなっていき玉状になるまでの時間で評価している。
【0054】
図5に示されるように、濡れている時間が長いほど、濃い液でも濡れ性を保っていることを示し、シリコーンが十分に除去されていることを示す。ただし、全くシリコーンがない光ファイバにおいても十分に時間が経過すると玉状になるので、本測定は完全にシリコーンが除去できたかの判断ではなく、相対的な除去性の確認である。粒子サイズ75〜150μmと粒子サイズ180〜300μmの場合を比較すると、粒径が大きいと濡れ性を保つ時間が短く、除去効率が低下していることを示している。したがって、この結果より、光ファイバの外径と同程度の125μm前後の粒径がよいことがわかる。
【0055】
さらに、粒子サイズが125μm程度であると、たとえば、球形を想像するとわかるように、光ファイバへの接触する確率は小さい。そこで、いびつな形状の粒子を用いることによって、そのエッジが光ファイバにランダムに接触し、シリコーンをこそぎ落とす効率を高めることができる。
【0056】
すなわち、第3の実施例によれば、その粒子のサイズが125μm前後で形状が不揃いでいびつであることにより、粒子サイズが小さい時に発生するシリコーンなどの付着物による目づまりが起こりにくく、それでも、いびつな形状によって、そのエッジが光ファイバにランダムに接触し、シリコーンなどの付着物をより良好にこそぎ落とすことができる。
【0057】
(第4の実施例)
光ファイバ側面の清掃方法の第4の実施例を説明する。
本実施例では、第1の実施例の清掃方法において、図6に示すように微粒子の表面に1μm〜10μm程度の凸凹を有する粒子を用いる。この粒子の凹凸がシリコーン皮膜に食い込んで、光ファイバの表面のシリコーンをこそぎ落とす効果が向上する。
【0058】
すなわち、本実施例によれば、シリコーンを除去するための粒子が、その表面に1μm〜10μm程度の凸凹を有することにより、光ファイバの表面のシリコーンなどの付着物をこそぎ落とす効果が向上し、さらに、接着剤による光ファイバとフェルールの接着強度を向上させることができる。
【0059】
(第5の実施例)
光ファイバ側面の清掃方法の第5の実施例を説明する。
本実施例では、第1の実施例の清掃方法において、微粒子として、メラミン、ポリエステル、ユリア、ポリカーボネート、アクリル、桃の種、アンズの種およびクルミの殻を用いる。その際、ふるいを用いて、粒子サイズが125μm前後のものを選定して用いる。以上の粒子は、モース硬度が3以上5以下であり、また、粒子サイズが125μm前後であるとともに、形状が不揃いでいびつであり、さらに、表面に1μm〜10μm程度の凸凹を有する。したがって、実施例2、3、4で示した、光ファイバ側面に付着したシリコーンなど粘着性の付着物の除去に効果を合わせもつ。また、メラミン、ポリエステル、ユリア、ポリカーボネート、アクリルは安価で容易に入手可能な樹脂である。また、桃の種、アンズの種、クルミの殻は、自然界の物質であり、環境負荷が小さい。
【0060】
すなわち、本実施例によれば、その粒子がメラミン、または、ポリエステル、または、ユリア、または、ポリカーボネート、または、アクリル、または、桃の種、または、アンズの種、または、くるみの殻であることによりモース硬度が3〜5の範囲内にあり、粒子のサイズが125μm前後とすることが容易で、かつ、粒子表面に1μm〜10μm程度の凸凹を有し、シリコーンなどの付着物を除去するために最適で、接着剤による光ファイバとフェルールの接着強度を向上させることができる。
【0061】
(第6の実施例)
光ファイバ側面の清掃用ワイパの実施例を説明する。
本実施例では、不織布の清掃面に粒子を固定した清掃用ワイパについて説明する。
図7に示すように、清掃用ワイパ70は不織布71をベースとし、この不織布71に実施例1〜5で用いたいずれかの粒子73を分散させ、固定剤72により固定された構造である。
【0062】
このワイパを用いることにより、第1の実施例のように粒子をまぶす作業が不要となり、粒子が飛び散る心配もなく、簡易に清掃作業を行うことが可能となる。
【0063】
すなわち、本実施例によれば、光ファイバ側面の清掃用ワイパであって、不織布に以上に記した特徴を有する粒子が固定されたことにより作業性が向上する効果がある。
【0064】
さて、図8は、ホチキス形状の清掃用ワイパを備えたシリコーン皮膜除去部を示す図である。
図8において、金属プレート81aおよび金属プレート81bのそれぞれの一方端を支点84として回動可能に接続し、他方端にはそれぞれ、スポンジ82aおよびスポンジ82bが設けられている。スポンジ82aおよびスポンジ82bのそれぞれの表面には、上述のいずれかの粒子を有する清掃用ワイパ83が設けられている。すなわち、スポンジ82aに設けられた清掃用ワイパ83aの清掃面(粒子が存在する面)と、スポンジ82bに設けられた清掃用ワイパ83bの清掃面とは互いに対向している。このようにして、ホチキス形状のシリコーン皮膜除去部80を構成する。
【0065】
このような構成において、支点84を中心に金属プレート81aおよび金属プレート81bの少なくとも一方を回動させて清掃用ワイパ83aと清掃用ワイパ83bとの間に空間を形成し、該空間内に裸光ファイバ16を挿入する。次いで、支点84を中心に金属プレート81aおよび金属プレート81bの少なくとも一方を回動して裸光ファイバ16を清掃用ワイパ83aおよび清掃用ワイパ83bにて挟む。次いで、光ファイバ14およびシリコーン皮膜除去部80の少なくとも一方を動かすことにより、裸光ファイバ16の表面に残存するシリコーンをこそぎ落とす。
【0066】
上記光ファイバ14およびシリコーン皮膜除去部80の相対的な移動は、清掃者によって行っても良いし、光ファイバ14およびシリコーン皮膜除去部80の少なくとも一方をモータにより移動可能な支持台に支持し、該移動可能な支持台の移動により行っても良い。
【0067】
図8に示すシリコーン皮膜除去部80は、光ファイバを挟む部分に清掃用ワイパ83a、83bを2枚、スポンジ82a、82bを介して上下に装着したものであり、清掃作業をさらに容易にすることもできる。
【0068】
(第7の実施例)
光ファイバ側面の清掃用ワイパの実施例を説明する。
本実施例では、第6の実施例における不織布への粒子固定剤として、セルロースを用いている。製作方法は以下のとおりである。
【0069】
粉末セルロースと清掃用粒子を混ぜ、水を加えて攪拌し、メラミン粉末を充分分散させながらセルロースを溶解させる。この液体を不織布上で所定の厚さにコーティングし、オーブン等で水分を蒸発させ完成する。
【0070】
本実施例によれば、固定剤に有機溶媒を使用しないので環境に対する負荷が小さい、さらに、セルロース自体も環境に与える負荷が小さく、使い捨てのワイパに最適である。
【0071】
すなわち、本実施例によれば、以上の粒子を固定する材料が、セルロースであることにより、水に溶解しやすく、粒子を混ぜてから、オープン等で水を蒸発させるだけでよく、有機溶媒のような環境に対する負荷は小さい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態に係る、シリコーン皮膜の付着した裸光ファイバの清掃方法を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態、および従来における、フェルールに接着剤によって接着された光ファイバの引き抜き力を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る、粒子のモース硬度と破断強度との関係を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る、表面に凹凸を有する粒子を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、粒子としてのメラミン粉末の粒径と濡れ時間との関係を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る、表面に凹凸を有する粒子を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る、清掃用ワイパを示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る、清掃用ワイパを備えたシリコーン皮膜除去部を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10、70 清掃用ワイパ
11、17、71 不織布
12、18 アルコール
13、73 粒子
14 光ファイバ
15 ナイロン被覆
16 裸光ファイバ
72 粒子固定材
80 シリコーン皮膜除去部
81a、81b 金属プレート
82a、82b スポンジ
83a、83b 清掃用ワイパ
84 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン層を有する光ファイバの側面の清掃方法であって、
清掃面の少なくとも一部に粒子が存在する不織布を用意する用意工程と、
前記粒子が存在する清掃面にて前記光ファイバの側面を拭う清掃工程であって、前記光ファイバおよび前記不織布を相対的に移動させて前記光ファイバの側面を拭う清掃工程と
を有することを特徴とする光ファイバ側面の清掃方法。
【請求項2】
前記不織布の代わりに布を用いることを特徴とする請求項1記載の清掃方法。
【請求項3】
前記清掃面にはアルコールが染み込まれていることを特徴とする請求項1または2記載の清掃方法。
【請求項4】
前記清掃工程の後に、前記不織布にて拭われた光ファイバの側面を、アルコールがしみ込んだ第2の不織布にて拭う工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の清掃方法。
【請求項5】
前記粒子は、前記清掃面に固定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の清掃方法。
【請求項6】
シリコーン層を有する光ファイバの側面を清掃するための清掃具であって、
不織布と、
前記不織布の清掃面に存在する粒子と
を備えることを特徴とする清掃具。
【請求項7】
前記不織布の代わりに布を用いることを特徴とする請求項6記載の清掃具。
【請求項8】
前記清掃面にはアルコールが染み込まれていることを特徴とする請求項6または7記載の清掃具。
【請求項9】
前記粒子は、前記清掃面に固定されていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の清掃具。
【請求項10】
前記粒子を固定する材料がセルロースであることを特徴とする請求項9記載の清掃具。
【請求項11】
前記粒子は、モース硬度が3以上5以下であることを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の清掃具。
【請求項12】
前記粒子は、そのサイズが75μm〜150μmで形状が不揃いでいびつであることを特徴とする請求項6乃至11のいずれかに記載の清掃具。
【請求項13】
前記粒子の表面は、1μm〜10μmの凹凸を有することを特徴とする請求項6乃至12のいずれかに記載の清掃具。
【請求項14】
前記粒子は、メラミン、ポリエステル、ユリア、ポリカーネート、アクリル、桃の種、あんずの種、またはくるみの殻の群から選ばれる1または2以上の物質であることを特徴とする請求項6乃至13のいずれかに記載の清掃具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−185718(P2008−185718A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18202(P2007−18202)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】