説明

光ファイバ識別表示札

【課題】光接続ユニットにおける光ファイバの撤去作業等における作業性を良好にすることができ、取付けおよび取外しが容易であり、かつ作業現場での識別情報記入が可能であり、しかも識別情報を容易に確認できる光ファイバ識別表示札の提供。
【解決手段】光接続ユニットの光コネクタハウジングにコネクタ接続された光ファイバに取付可能な光ファイバ識別表示札1。光ファイバ13の識別情報を表示する表示部2を有する本体部3と、光ファイバ13に取付けられる取付部4とを備えた可撓性のシート体からなる。取付部4は、折り返しにより光ファイバ13が挿通可能な環状となる光ファイバ保持部5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配線盤や光接続箱等の光接続ユニットにおいて光ファイバの線番確認等のために使用できる識別表示札に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光接続ユニットでは、多数本の光ファイバコード等の光ファイバを識別するため、各光ファイバに紐を介して光ファイバ識別表示札を取り付け、これら識別表示札に光ファイバの線番などを表示して線番管理を行うことがある(例えば特許文献1を参照)。
図9は、従来の光ファイバ識別表示札の一例を示すもので、光ファイバ13は、光接続ユニット31の光コネクタアダプタ12に光コネクタ14により接続されており、光ファイバ識別表示札21は、各光ファイバ13に紐22を介して取り付けられている。
また、バンド状の装着具により光ファイバの外周面に装着可能な識別表示具も用いられており、この識別表示具はバーコードなどの識別情報を表示可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−246147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の識別表示札21では、光ファイバ13(光ファイバコード等)の本数が多いと、配線変更などのため一部の光ファイバを撤去する作業や保守作業等において、識別表示札21が他の光ファイバ13や他の識別表示札21に引っかかって光ファイバの移動がしにくくなり、作業性が低下するという問題があった。また、取付けおよび取外しに手間がかかるという問題もあった。
上記識別表示具では、光ファイバ外周面に直接装着されるため、光ファイバの数が多くなると他の光ファイバに隠れて確認しにくくなることがあった。また、小型であるため作業現場で情報の記入は難しい。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、光接続ユニットにおける光ファイバの撤去作業等における作業性を良好にすることができ、取付けおよび取外しが容易であり、かつ作業現場での識別情報記入が可能であり、しかも識別情報を容易に確認できる光ファイバ識別表示札の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1にかかる発明は、光接続ユニットの光コネクタハウジングにコネクタ接続された光ファイバに取付可能な光ファイバ識別表示札であって、前記光ファイバの識別情報を表示する表示部を有する本体部と、前記光ファイバに取付けられる取付部とを備えた可撓性のシート体からなり、前記取付部が、折り返しにより前記光ファイバが挿通可能な環状となる光ファイバ保持部を有する光ファイバ識別札である。
本発明の請求項2にかかる発明は、請求項1において、前記取付部が、一方面が粘着面とされた固定部を有し、前記固定部は、前記粘着面を前記本体部に貼り付けることにより前記光ファイバ保持部を環状とすることができる光ファイバ識別表示札である。
本発明の請求項3にかかる発明は、請求項2において、前記光ファイバ保持部は、環状にしたときの内面が非粘着面である光ファイバ識別表示札である。
本発明の請求項4にかかる発明は、請求項1〜3のうちいずれか1項において、前記光ファイバ保持部が、前記表示部に比べ幅が狭く形成されている光ファイバ識別表示札である。
本発明の請求項5にかかる発明は、請求項2において、前記光ファイバ保持部が、前記固定部に比べ幅が狭く形成されている光ファイバ識別表示札である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光ファイバ識別表示札は、光ファイバ保持部を環状にすることで光ファイバに取付けできるので、取り付けおよび取り外し作業が容易である。
本発明の光ファイバ識別表示札は可撓性であるので、光ファイバの数が多い場合も、光ファイバの移動に際し他の光ファイバに引っかかることがなく、撤去作業などにおける作業性が良好である。
また、光ファイバの長さ方向に移動可能であるため、識別情報を確認しやすい位置に配置するのが容易である。
さらには、シート体からなるため、表示部に十分な面積を与えることができ、作業現場での識別情報の記入が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の光ファイバ識別表示札の一実施形態の平面図である。
【図2】光ファイバ識別表示札を光ファイバに取り付けた状態を示す平面図である。
【図3】光ファイバ識別表示札を光ファイバに取り付けた状態を示す側面図である。
【図4】光ファイバ識別表示札を光ファイバに取り付ける操作を示す説明図である。
【図5】光ファイバ識別表示札を光ファイバに取り付ける操作を示す説明図である。
【図6】光ファイバ識別表示札を光ファイバに取り付ける操作を示す説明図である。
【図7】本発明の光ファイバ識別表示札を使用可能な光接続ユニットを示す模式図である。
【図8】光ファイバ識別表示札の使用例を示す斜視図である。
【図9】従来の光ファイバ識別表示札の一例を使用した光接続ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜図3は、本発明の光ファイバ識別表示札の一実施形態である光ファイバ識別表示札1を示す図であり、図1は光ファイバ識別表示札1の平面図であり、図2は光ファイバ識別表示札1を光ファイバ13に取り付けた状態を示す平面図であり、図3は光ファイバ識別表示札1を光ファイバ13に取り付けた状態を示す側面図である。
【0009】
図1に示すように、光ファイバ識別表示札1は、表示部2を有する本体部3と、光ファイバ13に取付けられる取付部4とを備えた可撓性のシート体である。
光ファイバ識別表示札1は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどの樹脂で形成するのが好ましく、識別情報9が明瞭に確認できれば半透明でも不透明でもよい。なお、光ファイバ識別表示札1は、可撓性を与え得る材料であれば樹脂製に限らず、他の材料、例えば紙製などとしてよい。
光ファイバ識別表示札1の厚さは、例えば20〜100μmとすることができ、20〜50μmとするのが好ましい。
【0010】
本体部3は、略長方形状の表示部2と、表示部2の一端部から徐々に幅が狭くなりつつ延出する延出部6とを有する。
表示部2には、光ファイバ13の識別情報9を形成することができる。識別情報9は、ペンで情報を記入してインクを付着させることにより形成してもよいし、印刷等により形成してもよい。表示部2は、作業者がペンを用いて識別情報9を記入するための十分な面積を有することが好ましい。
識別情報9としては、例えば光ファイバ13の回線番号、接続元、接続先、使用者、施工者などに関する情報が挙げられる。
【0011】
取付部4は、光ファイバ13を保持する光ファイバ保持部5と、本体部3に固定可能な固定部7とを有する。
光ファイバ保持部5は、延出部6の先端から表示部2の長手方向に帯状に延出して形成されている。
光ファイバ保持部5の幅は、ある程度狭く、例えば表示部2の幅より狭くすると、光ファイバ識別表示札1が光ファイバ13の長手方向に移動しやすくなり位置調整などの操作がしやすくなる。光ファイバ保持部5は、固定部7よりも幅が狭くなるように形成することができる。
なお、幅とは光ファイバ保持部5の延出方向に対し垂直な方向の寸法をいい、図1においては左右の寸法である。光ファイバ保持部5の幅は、例えば2〜10mm、好ましくは4〜6mmとすることができる。
【0012】
光ファイバ保持部5は、取付部4の折り返しにより光ファイバ13が挿通可能な環状とすることができ、これによって光ファイバ13に取り付けできる。
光ファイバ保持部5は、光ファイバ13の長さ方向に移動可能となるように形成するのが好ましい。例えば、環状としたときの光ファイバ保持部5の内周長が光ファイバ13の外周長より大きくなるように形成することによって、光ファイバ保持部5に余裕を持たせ、光ファイバ13に対し容易に移動できるようにするのが好ましい。
光ファイバ保持部5は、環状にしたときの内面が非粘着面であると、光ファイバ13に対する移動が容易になる。
【0013】
固定部7は、光ファイバ保持部5の延出端に形成され、前記延出方向、すなわち図1における下方に向けて徐々に幅広になる台形状の基部7aと、一定幅の中間部7bと、徐々に幅狭になる台形状の先端部7cとを有する。
基部7aの両側縁は、前記延出方向に対し傾斜して形成されており、後述する折り返し時に延出部6の両側縁にほぼ一致するように形成するのが好ましい。
固定部7の一方面には、固定部7を本体部3に固定するための粘着剤層8を形成することによって、粘着面とすることができる。図示例では、基部7aと中間部7bの一方面に粘着剤層8が形成されている。
あらかじめ粘着剤層8を形成しておくことによって、固定部7を本体部3に固定する操作が容易になる。
粘着剤としては、汎用の粘着剤を使用することができる。粘着剤は、固定部7を本体部3にいったん貼り付けると容易には剥離しない程度の粘着性を有するものが望ましい。
【0014】
次に、光ファイバ識別表示札1の使用方法の一例を説明する。
本発明の光ファイバ識別表示札の対象となる光ファイバは、例えば図7に示す光接続ユニット11の光コネクタアダプタ12に光コネクタ14(光コネクタプラグ)により接続された光ファイバ13である。光ファイバ13は、例えば、光ファイバコード、光ファイバ心線等である。
【0015】
図4〜図6に示すように、光ファイバ13を光ファイバ保持部5上に載せ、光ファイバ保持部5を長さ方向の中間位置で折り返し、固定部7を本体部3の延出部6に重ね、粘着剤層8により延出部6に貼り付けて固定する。
これによって、光ファイバ保持部5は光ファイバ13が挿通した環状となり、光ファイバ識別表示札1は取付部4にて光ファイバ13に取り付けられる。
光ファイバ13を囲む環状部分の光ファイバ保持部5は光ファイバ13に対し接着されておらず、光ファイバ13の長手方向に移動可能であるため、光ファイバ13の長手方向の位置を容易に調整できる。
【0016】
図7に示す光接続ユニット11は、光コネクタアダプタ12が形成された成端部15の前面側に水平なトレイ16が延出した構造を有する。成端部15には、トレイ16に垂直に配列された複数の光コネクタアダプタ12からなるアダプタ配列部17が、紙面に垂直な方向に間隔をおいて複数設けられている。
光ファイバ13は、トレイ16上に形成した複数の光ファイバガイド18およびクリップ19によって配線位置を定められる。光ファイバガイド18はトレイ16に立設された板状体であり、各アダプタ配列部17の位置に合わせて所定間隔ごとに設けられている。図7に示す例では、紙面に垂直な方向に所定間隔をおいて設けられている。
【0017】
図8に示すように、光ファイバ識別表示札1は、隣り合う光ファイバガイド18間に配置すると、光ファイバガイド18によって挟まれた状態で位置決めされるため識別情報9の確認が容易になる。
光ファイバ識別表示札1は光ファイバ13の長手方向に移動可能であるため、光ファイバ13が接続された光コネクタアダプタ12の高さ位置によらず、光ファイバガイド18間に配置することができる。
光ファイバ識別表示札1を光ファイバ13から取り外すには、固定部7を本体部3から剥がすか、光ファイバ保持部5を切断すればよい。
【0018】
光ファイバ識別表示札1は、光ファイバ保持部5を環状にすることで光ファイバ13に取付けできるので、取り付けおよび取り外し作業が容易である。
光ファイバ識別表示札1は可撓性であるので、光ファイバ13の数が多い場合も、光ファイバ13の移動に際し他の光ファイバ13や他の光ファイバ識別表示札1に引っかかることがなく、撤去作業などにおける作業性が良好である。
また、光ファイバ13の長さ方向に移動可能であるため、識別情報9を確認しやすい位置に配置するのが容易である。
さらには、シート体からなるため、表示部2に十分な面積を与えることができ、作業現場での識別情報9の記入は容易である。
また、識別表示札1どうしの摩擦が小さいため、多数の識別表示札1が重ねられている状態でも光ファイバ13の移動は容易である。
【0019】
なお、本発明において「光コネクタハウジング」は、光コネクタプラグ同士を中継し、内部にて両光コネクタプラグが位置決め接続される光接続機器をいい、ここに例示した光コネクタアダプタのほか、光コネクタレセプタクル等、光コネクタ(光コネクタアダプタ)が挿入接続される、各種雌型の光コネクタを指す。
【符号の説明】
【0020】
1・・・光ファイバ識別表示札、2・・・表示部、3・・・本体部、4・・・取付部、5・・・光ファイバ保持部、7・・・固定部、8・・・粘着剤層、11・・・光接続ユニット、12・・・光コネクタハウジング、13・・・光ファイバ、14・・・光コネクタ、15・・・成端部、16・・・トレイ、17・・・アダプタ配列部、18・・・光ファイバガイド、19・・・クリップ、21・・・光ファイバ識別表示札、22・・・紐、31・・・光接続ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光接続ユニット(11)の光コネクタハウジング(12)にコネクタ接続された光ファイバ(13)に取付可能な光ファイバ識別表示札であって、
前記光ファイバの識別情報を表示する表示部(2)を有する本体部(3)と、前記光ファイバに取付けられる取付部(4)とを備えた可撓性のシート体からなり、
前記取付部は、折り返しにより前記光ファイバが挿通可能な環状となる光ファイバ保持部(5)を有することを特徴とする光ファイバ識別札(1)。
【請求項2】
前記取付部が、一方面が粘着面とされた固定部(7)を有し、前記固定部は、前記粘着面を前記本体部に貼り付けることにより前記光ファイバ保持部を環状とすることができることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ識別表示札。
【請求項3】
前記光ファイバ保持部は、環状にしたときの内面が非粘着面であることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ識別表示札。
【請求項4】
前記光ファイバ保持部は、前記表示部に比べ幅が狭く形成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光ファイバ識別表示札。
【請求項5】
前記光ファイバ保持部は、前記固定部に比べ幅が狭く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ識別表示札。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−224488(P2010−224488A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74614(P2009−74614)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】