説明

光フィルター、光フィルターモジュールおよび光分析装置

【課題】対向する光学膜の面内で均一なギャップを確保する。
【解決手段】固定基板51と、固定基板51と対向する可動基板52と、固定基板51の可動基板52に対向する面に設けられた第1光学膜54と、可動基板52に設けられ、第1光学膜54とギャップを介して対向する第2光学膜55と、固定基板51の可動基板52に対向する面に設けられた第1電極561と、可動基板52に設けられ、第1電極561と対向する第2電極562と、を含み、第1光学膜54に重ねて、電荷を帯びた第1帯電体膜61が形成され、第2光学膜55に重ねて、電荷を帯びた第2帯電体膜62が形成され、第1帯電体膜61および第2帯電体膜62は同極性で帯電し、かつ対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の波長を有する光から特定の波長の光を取り出す光フィルターが知られている。光フィルターの一例として、例えば波長可変干渉フィルターが挙げられる。
波長可変干渉フィルターは、基板に形成した光学膜を対向配置し、この光学膜間のギャップを外力により変化させて、ギャップ寸法に応じた波長の光を透過するように構成した光フィルターである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−142752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような波長可変干渉フィルターでは、光学膜間のギャップを外力により狭めていくと、光学膜が形成された部分の基板が変形することになり、光学膜面内の平坦性が確保できないことがある。このため、対向する光学膜の面内で均一なギャップを確保できず、光フィルターの分光精度を低下させる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる光フィルターは、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1光学膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1光学膜とギャップを介して対向する第2光学膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、を含み、前記第1光学膜に重ねて、電荷を帯びた第1帯電体膜が形成され、前記第2光学膜に重ねて、電荷を帯びた第2帯電体膜が形成され、前記第1帯電体膜および前記第2帯電体膜は同極性で帯電し、かつ対向していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、対向する第1帯電体膜と第2帯電体膜とが同極性で帯電していることから、両者の間にクーロン力が働き、各基板が変形しようとする力に対して斥力となる。このようにして、外力によって生ずる光学膜が形成される面の変形を抑制することができ、第1光学膜および第2光学膜の平坦性が保たれ、光学膜の面内でばらつきのない均一なギャップを確保できる。そして、光フィルターの分光精度を向上させることが可能となる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第1帯電体膜および前記第2帯電体膜は、透光性を有する膜であることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、第1帯電体膜および第2帯電体膜が透光性を有することから、光の反射特性と透過特性を有する各光学膜に影響を与えずに形成することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第1帯電体膜および前記第2帯電体膜は、前記第1光学膜および前記第2光学膜における光の光路上に形成されていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、平坦性の必要な各光学膜の光路上に第1帯電体膜および第2帯電体膜が形成され、各帯電体膜に働く斥力により光学膜が形成される面の変形を抑制し、光路上の光学膜を平坦化することができる。このことから、光学膜の面内で均一なギャップを形成することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、第2基板は前記第2光学膜が設けられた可動部と、前記可動部を基板厚み方向に移動可能に保持する連結保持部を備え、前記連結保持部は、前記可動部を囲んで連続して形成され、前記可動部よりも厚み寸法が小さく形成されていることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、可動部は連結保持部に連続して形成され保持されている。そして連結保持部は可動部より薄肉のダイヤフラム構造を有するため、可動部が厚み方向に移動する際に、可動部の移動がし易くなる。この構造では可動部における基板の変形を小さくすることができ、第1帯電体膜および第2帯電体膜による斥力と合わせて、光学膜の面内でさらに均一なギャップを形成することができる。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかる光フィルターモジュールは、前記光フィルターと、前記光フィルターを透過した光を受光する受光部と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、対向する光学膜の面内で均一なギャップを確保できる光フィルターを備えており、精度の高い光量測定を実施する光フィルターモジュールを得ることができる。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかる光分析装置は、前記光フィルターと、前記光フィルターを透過した光を受光する受光部と、前記受光部から得られる信号に基づき前記光の光特性を分析する分析処理部と、を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、上述した光フィルターと、受光部とを備えた光モジュールを有するので、精度の高い光量測定を実施できる。そして、この測定結果に基づいて光分析処理を実施することで、正確な分光特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の測色装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態におけるエタロンの平面図。
【図3】第1実施形態におけるエタロンの概略断面図。
【図4】第1実施形態におけるエタロンの光学膜部分の作用を説明する模式図。
【図5】第1実施形態におけるエタロンの変形例を示す概略断面図。
【図6】第1実施形態におけるエタロンの他の変形例を示す部分断面図。
【図7】第2実施形態における光分析装置としてのガス検出装置の概略図。
【図8】第2実施形態におけるガス検出装置の回路ブロック図。
【図9】第3の実施形態における光分析装置としての食物分析装置の構成を示すブロック図。
【図10】第4の実施形態における光分析装置としての分光カメラの構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。
(第1実施形態)
【0020】
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
<測色装置の概略構成>
図1は光分析装置としての測色装置の概略構成を示すブロック図である。
測色装置1は、検査対象Aに光を照射する光源装置2と、測色センサー3(光モジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。
この測色装置1は、検査対象Aに光源装置2から光を照射し、検査対象Aから反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度を分析して測定する装置である。
【0021】
<光源装置の構成>
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ図示)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが発光部材である場合、光源装置2を設けずに測色装置を構成してもよい。
【0022】
<測色センサーの構成>
測色センサー3は、光フィルターとしてのエタロン(波長可変干渉フィルター)5と、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御し、エタロン5で透過させる光の波長を変える電圧制御部32と、エタロン5を透過した光を受光する受光部31と、を備える。
また、測色センサー3は、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、エタロン5に導光する光学レンズ(図示せず)を備えている。そして、この測色センサー3は、光学レンズに入射した検査対象光をエタロン5で所定波長帯域の光に分光し、分光した光が受光部31にて受光される。
受光部31は、フォトダイオードなどの光電変換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部31は制御装置4に接続され、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0023】
(エタロンの構成)
図2は、エタロンの平面図であり、図3は、図2のB−B断線に沿う概略断面図である。
図2に示すように、エタロン5は、平面視で正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、固定基板(第1基板)51および可動基板(第2基板)52を備えている。
これらの基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などの基材からなり、板状の基材をエッチングすることにより形成されている。
そして、基板51,52は、第1接合面515および第2接合面524がプラズマ重合膜を用いた接合膜531を介して接合されている。
【0024】
また、固定基板51と可動基板52との間には、光の反射特性と透過特性とを有する第1光学膜54、および第2光学膜55が設けられる。ここで、第1光学膜54は、固定基板51の可動基板52に対向する面に固定され、第2光学膜55は、可動基板52の固定基板51に対向する面に固定されている。
第1光学膜54は、固定基板51の中央の光学膜固定部512に形成され、第2光学膜55は、可動基板52の中央の可動部522に形成されている。
光学膜54,55は円形状でAgC合金単層により形成されている。なお、TiO2−SiO2系の誘電体多層膜や、AgC合金以外のAg合金や、Ag合金および誘電体膜の積層膜の光学膜を用いる構成としてもよい。
【0025】
そして、第1光学膜54の上には第1帯電体膜61が形成され、第2光学膜55の上には第2帯電体膜62が形成されている。第1帯電体膜61および第2帯電体膜62は共に透光性の材料で形成され、第1光学膜54および第2光学膜55を透過する光の光路の範囲(光路径:D)に形成されている。
帯電体膜61,62は円形状で光学膜54,55よりも小さい径で配置されている。そして、これらの第1帯電体膜61および第2帯電体膜62はギャップGを介して対向配置されている。
【0026】
第1帯電体膜61および第2帯電体膜62はエレクトレットにて構成され、同極性で帯電している。
このエレクトレットは絶縁材料の表面付近に電荷を注入して形成される。この電荷の注入にはコロナ放電、電子ビームなどを用いた公知の方法を用いる。
絶縁材料として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフロオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル))重合体、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体、などの絶縁破壊強度が高い材料が採用される。
光学膜上にエレクトレットの作成は、例えば、フッ素溶媒に溶かした上記材料をスピンコートなどの方法によりコーティングしてキュアした後、パターニングして電荷を注入すればよい。
なお、絶縁材料の絶縁破壊強度が高いほど電荷注入量を増加でき、必要な電荷注入量から適宜、材料を選択すればよい。
【0027】
さらに、固定基板51と可動基板52との間には、固定基板51に設けられた第1電極561と、可動基板52の可動部522に設けられた第2電極562とからなる静電アクチュエーター56が設けられている。
静電アクチュエーター56は、第1帯電体膜61と第2帯電体膜62との間のギャップG寸法を調整する。
【0028】
また、可動部522は可動基板52の外周側に、可動部522に連続し、可動部522の厚みより肉薄に形成された連結保持部523が形成されている。
このように、可動基板52はダイヤフラム構造を有し、エタロン平面視で円環状に形成された可動部522を可動基板52の厚み方向に移動可能に構成している。
【0029】
また、固定基板51には、第1電極561に接続されエタロン5の頂点C2に向かって延出する第1引出電極513aと、頂点C2と対角となる頂点C4に向かって延出する第2引出電極513bと、が設けられている。そして、第1引出電極513aは固定基板51の隅部に形成された電極パッド部514aに接続され、第2引出電極513bは固定基板51の隅部に形成された電極パッド部514bに接続されている。
【0030】
可動基板52には、第2電極562に接続されエタロン5の頂点C1,C3に向かって延出する第3引出電極561aと第4引出電極561bが形成されている。
また、可動基板52の四隅は切り欠かれ、エタロン5の平面視において、固定基板51の四隅に形成された電極パッド部514a,514b,562a,562bが露出するように構成されている。
【0031】
電極パッド部562a,562bには、図示しないが、可動基板52の引出電極561a,561bが導電性ペーストなどで接続されて、可動基板52から固定基板51への導通がなされる。このようにして、静電アクチュエーター56を構成する第1電極561と第2電極562とは電気的に独立し、固定基板51の電極パッド部514a,514b,562a,562bから各電極561,562とを接続することができる。
そして、電圧制御部32とエタロン5との接続は電極パッド部514a,514b,562a,562bを介して行なわれる。
【0032】
以上のような構成のエタロン5において、第1帯電体膜61および第2帯電体膜62は、同極性で帯電して対向していることから、両者の基板51,52にクーロン力が働くことになる。
図4はエタロンにおける帯電体膜の作用を説明する模式図である。この図では固定基板51は十分な厚みを備え、静電アクチュエーター56の駆動による基板の変形は無いものとする。
静電アクチュエーター56に電圧を印加すると、可動基板52の第2電極562が第1電極561に引き付けられる。ダイヤフラム構造の可動基板52は連結保持部523が撓んで、可動部522が第1光学膜54に近づく方向に変位する。このとき、可動基板52の可動部522も微小ではあるが固定基板51側に凸となるように変形する。
【0033】
ここで、光学膜54,55の表面には帯電体膜61,62が対向しており、可動部522の変形により、第2帯電体膜62が第1帯電体膜61に最も近づく中央部では大きな斥力が働き、その斥力は周辺に行くに従い小さくなる(図4の実線の矢印を参照)。
このことから、可動部522は斥力により変形が抑制され、可動部522の第2光学膜55および第2帯電体膜62は平坦性を保つことができる。つまり、光学膜が平坦であることから、光学膜の面内においてギャップのばらつきを抑制することが可能である。
【0034】
特に、静電アクチュエーター56の駆動により帯電体膜間のギャップを小さくしようとすると、それに伴い可動基板52の変形も大きくなるが、斥力も大きくなり増加する基板の変形力に対応することができる。このことは、クーロン力は電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例することから理解される。
なお、本実施形態のエタロンのように片側の基板を可動としたが、両側の基板が可動の形態であっても同様の効果がある。
【0035】
(電圧制御部の構成)
図1に戻って、電圧制御部32は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター56の第1電極561および第2電極562に印加する電圧を制御する。
【0036】
<制御装置の構成>
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部(分析処理部)43などを備えて構成されている。
【0037】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長を透過させるよう、静電アクチュエーター56への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5の光学膜間のギャップを変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光部31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、検査対象Aから反射された光の色度を算出する。
【0038】
(第1実施形態の作用効果)
上記の第1実施形態によれば、以下の効果を有する。
本実施形態に係るエタロン5では、対向する第1帯電体膜61と第2帯電体膜62とが同極性で帯電していることから、両者の間にクーロン力が働き、可動基板52が変形しようとする力に対して斥力となる。このようにして、静電アクチュエーター56の駆動によって生ずる可動部522の変形を抑制することができ、第1光学膜54および第2光学膜55の平坦性が保たれ、光学膜の面内でばらつきのない均一なギャップを確保できる。そして、エタロン5の分光精度を向上させることが可能となる。
【0039】
また、エタロン5は各光学膜54,55の光路上に透光性を有する第1帯電体膜61および第2帯電体膜62が形成されており、帯電体膜に働く斥力により可動基板52の変形を抑制し、平坦性の必要な光路上の第2光学膜55を平坦化することができる。このことから、光学膜間において、面内で均一なギャップを形成することができる。
【0040】
さらに、エタロン5は第2光学膜55が形成された可動部522が肉薄の連結保持部523に連続して形成されている。このように、連結保持部523が可動部522より薄肉のダイヤフラム構造を有するため、可動部522が厚み方向に移動する際に、可動部522が変形し易くなる。この構造では可動部522における可動基板52の変形を小さくすることができ、第1帯電体膜61および第2帯電体膜62による斥力と合わせて、光学膜における面内でさらに均一なギャップを形成することができる。
【0041】
また、静電アクチュエーター56の駆動において、第1電極561と第2電極562との間のギャップが微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象が生ずるが、常に帯電体膜61,62の間で斥力が働くことから、このプルイン現象を抑制することができる。
そして、常に帯電体膜間で斥力が働くことから、固定基板51の第1帯電体膜61と可動基板52の第2帯電体膜62とが接触して貼り付くことなく、光学膜間のギャップを維持できる。
【0042】
このようなエタロン5と、エタロン5と透過した光を受光する受光部31とで測色センサー(光フィルターモジュール)3を構成すれば、精度の高い光量測定を実現する測色センサーを得ることができる。
さらに、この測色センサー3と、受光部31から得られる信号に基づき光の色度を算出する測色処理部(分析処理部)43とで測色装置1を構成すれば、精度の高い光量測定を実施でき、この測定結果に基づいて色度を測定する測色装置1を提供できる。
【0043】
(実施形態の変形例)
次に、第1実施形態におけるエタロンの変形例について説明する。
図5はエタロンの変形例を示す概略断面図である。本変形例では、光学膜と帯電体膜の構成が第1実施形態のエタロンと異なる。第1実施形態のエタロンと同様な構成要素については、同符号を付し説明を省略する。
【0044】
エタロン8の固定基板51には第1光学膜54が形成され、第1光学膜54の上には第1帯電体膜63が設けられている。第1帯電体膜63は第1光学膜54と同じ大きさに形成されている。可動基板52の可動部522には第2光学膜55が形成され、第2光学膜55の上には第2帯電体膜64が設けられている。第2帯電体膜64は第2光学膜55と同じ大きさに形成されている。そして、第1帯電体膜63と第2帯電体膜64とが対向配置されている。
【0045】
このように、第1光学膜54の表面を第1帯電体膜63が覆い、第2光学膜55の表面を第2帯電体膜64が覆っている。
このような構成によれば、第1実施形態のエタロンの効果に加えて、光学膜にAgなどの金属膜を用いた場合、帯電体膜が光学膜を保護する役目を果たすことができる。
【0046】
また、エタロンの他の光学膜部分の変形例として、図6に示す形態を挙げることができる。
図6(a)、(b)はエタロンの光学膜部分の変形例を示す概略断面図である。これらの図面では、可動基板と固定基板に設ける光学膜部分の構成は同じであるため、固定基板側の光学膜部分の構成のみ図示している。
【0047】
図6(a)に示すように、固定基板51には第1光学膜54が形成され、その表面を覆う保護膜70が形成されている。保護膜70は透光性を有するSiO2、Al23などの材料で形成されている。
そして、保護膜70の上に第1光学膜54を透過する光の光路範囲とする第1帯電体膜65が形成されている。この第1帯電体膜65は第1光学膜54および、保護膜70よりも小さい寸法で形成されている。
また、第1帯電体膜67は、図6(b)に示すように、第1光学膜54および、保護膜70と同じ大きさに形成しても良い。
【0048】
このように、光学膜を覆う保護膜を設けて光学膜を保護し、その上に帯電体膜を設ける構成であっても第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0049】
以上の光分析装置として、測色装置1を例示したが、その他、様々な分野に光フィルター、光モジュール、光分析装置を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、光フィルターとしてエタロン(波長可変干渉フィルター)を用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
(第2実施形態)
【0050】
以下、ガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0051】
図7は、エタロンを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図8は、図7のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図7に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン(波長可変干渉フィルター)5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
また、図8に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図8に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0052】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0053】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0054】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0055】
なお、上記図7,8において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の光分析装置とする。このような構成でも、本発明の波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0056】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
(第3実施形態)
【0057】
次に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0058】
図9は、エタロン5を利用した光分析装置の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図9に示すように、検出器(光モジュール)210と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン(波長可変干渉フィルター)5と、分光された光を検出する撮像部(受光部)213と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0059】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0060】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにした得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0061】
また、図9において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる、また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0062】
さらには、本発明の光フィルター、光モジュール、光分析装置としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
(第4実施形態)
【0063】
また、光分析装置としては、本発明のエタロン(波長可変干渉フィルター)により光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、エタロンを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図10は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図10に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図10に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0064】
さらには、本発明のエタロンをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明のエタロンを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0065】
さらには、光モジュールおよび光分析装置を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、エタロンにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0066】
上記に示すように、本発明の光フィルター、光モジュール、および光分析装置は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明のエタロンは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光モジュールや光分析装置の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0067】
本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…測色装置、2…光源装置、3…測色センサー、4…制御装置、5…エタロン、21…光源、22…レンズ、31…受光部、41…光源制御部、42…測色センサー制御部、43…測色処理部、51…固定基板(第1基板)、52…可動基板(第2基板)、54…第1光学膜、55…第2光学膜、56…静電アクチュエーター、61…第1帯電体膜、62…第2帯電体膜、63…第1帯電体膜、64…第2帯電体膜、65…第1帯電体膜、67…第1帯電体膜、70…保護膜、100…ガス検出装置、200…食物分析装置、300…分光カメラ、512…光学膜固定部、513a…第1引出電極、513b…第2引出電極、514a…電極パッド部、514b…電極パッド部、515…第1接合面、522…可動部、523…連結保持部、524…第2接合面、531…用いた接合膜、561…第1電極、561a…第3引出電極、561b…第4引出電極、562…第2電極、562a…電極パッド部、562b…電極パッド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1光学膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1光学膜とギャップを介して対向する第2光学膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、を含み、
前記第1光学膜に重ねて、電荷を帯びた第1帯電体膜が形成され、
前記第2光学膜に重ねて、電荷を帯びた第2帯電体膜が形成され、
前記第1帯電体膜および前記第2帯電体膜は同極性で帯電し、かつ対向している
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の光フィルターにおいて、
前記第1帯電体膜および前記第2帯電体膜は、透光性を有する膜である
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の光フィルターにおいて、
前記第1帯電体膜および前記第2帯電体膜は、前記第1光学膜および前記第2光学膜において、光の光路上に形成されている
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光フィルターにおいて、
第2基板は前記第2光学膜が設けられた可動部と、前記可動部を基板厚み方向に移動可能に保持する連結保持部を備え、
前記連結保持部は、前記可動部を囲んで連続して形成され、前記可動部よりも厚み寸法が小さく形成されている
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光フィルターと、
前記光フィルターを透過した光を受光する受光部と、
を含むことを特徴とする光フィルターモジュール。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光フィルターと、
前記光フィルターを透過した光を受光する受光部と、
前記受光部から得られる信号に基づき前記光の光特性を分析する分析処理部と、
を含むことを特徴とする光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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