説明

光ポンピング装置

本発明は光ポンピング装置(12)に関する。本装置(12)は、レーザイオンがドーピングされた活性材料ベースで形成された所定の体積を有する少なくとも一つの薄い層(13)を備える。また、本装置(12)は、活性材料のレーザイオンを励起状態にできるように波長が選択され所定の寸法の断面を有する少なくとも一つのポンプビーム(19)も備える。このポンプビームは、入射角(θ)で層(13)の入射ポイント(47)に入射し、層(13)内に少なくとも一つの光学利得領域(20)を形成する。この領域(20)は層(13)の体積未満の体積と層(13)内での位置とを有するが、その体積及び位置は、入射ポイント(47)、ポンプビーム(19)の断面の寸法及び入射角(θ)によって調節可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ポンピング装置に関する。半発明は特に、レーザビームの増幅及び/又は誘導と、レーザ発振器とに特に適する。本発明を、レーザ光が使用されるあらゆる分野の応用において用いることが可能である。更に、本発明は、このような光ポンピング装置を備えたレーザ発振器にも関する。
【背景技術】
【0002】
励起状態の粒子(原子、イオンまたは分子)は、一番目のフォトンに等しいエネルギーの二番目のフォトンの到達によって生じる刺激が原因で、一番目のフォトンを放出する傾向がある。この現象は誘導放出と称される。この現象を複数の粒子上で多数回繰り返すことによって、レーザビームと称される、全て同質のフォトンから成り同じ色で同一方向に同時に放出される光が得られる。
【0003】
レーザイオンがドーピングされた活性媒体、つまり、多数の励起可能粒子から成る媒体においては、こうした粒子は、自然な状態では、ほぼ全てが非励起状態にある。従って、上述のレーザビームの放出を誘発可能にするために、エネルギー源を用いて、この状況を覆す必要がある。つまり、非励起状態よりも多数の励起状態の粒子を得る必要がある。このプロセスは“反転分布”と称される。
【0004】
光ポンピングは、各々の粒子にフォトンを吸収させることによって、非励起状態から励起状態へと粒子を変化させることから成る反転分布法である。光ポンピングはレーザビームの形成中に用いられ得る。つまり、レーザ発振器中に見出される活性媒体中の分布を反転させるために、または、既存のレーザビーム(例えばレーザダイオードによって放出される)を、光ポンピング装置の活性媒体を通過させることによって増幅及び/又は誘導するために用いられ得る。特に、光ポンピングは、活性媒体中に、ポンプビームと称される一つ以上の光線を送ることから成り、次に、レーザ信号ビームと称されるレーザ源から放出されるビームが通過する。
【0005】
平面形状の誘導構造を備えたレーザダイオードによる光ポンピング装置が、いくつか知られている。
【0006】
横方向の光ポンピング装置1が図1Aに示されている。レーザ信号ビームは、レーザイオンがドーピングされた活性媒体4の第一面6を介して入射することによって、活性媒体4を通過する。また、一つ以上のポンプビーム3も、レーザ信号ビーム2に対して直角に、第一面6に直角な活性媒体6の第二面5を介して入射することによって、活性領域4の全体を通過する。出力増幅を実行するため、この横方向の光ポンピング装置は二つの主な欠点を示す。第一に、レーザ信号ビーム2及びポンプビーム3のそれぞれが、活性媒体4の異なる面を介して活性媒体4に入射するので、これらのビーム2及び3をそれぞれの入射面6及び5上に集光することが必要である。更に、活性媒体4中のポンプビーム3の軌道のかなりの長さを考慮すると、ポンプビーム3がこれらの軌道の最初の数ミリメートル中に完全に吸収されないように、低濃度のレーザイオンドーピングしかこの活性媒体4中に用いることができない。この横方向の光ポンピング装置1の第三の欠点は、レーザ信号ビーム2とポンプビーム3との間の重なりの低さである。この小さな重なりが意味するのは、ポンプビーム3が活性媒体4の全体を通過するので、ポンプビーム3によって活性媒体4中に供給されるエネルギーの一部が、レーザ信号ビーム2の軌道の外側にあるということである。このエネルギー損失は、活性媒体の4の過熱、収率の低下、寄生レーザビームの出現、レーザ信号ビーム2の質の劣化をもたらす。
【0007】
縦方向の光ポンピング装置11が図1Bに示されている。この装置11が、図1Aの横方向の光ポンピング装置1と異なる点は、ポンプビーム3が、レーザ信号ビーム2に対して縦方向に、レーザイオンがドーピングされた活性媒体4を通過するという点である。レーザ信号ビーム2及びポンプビーム3は、活性媒体4の同じ面6を介して媒体4に入射する。出力増幅に対する横方向の光ポンピング装置1と同じ欠点を有することに加えて、レーザ信号ビーム2及びポンプビーム3は、活性媒体4に入射する前に、同一直線上に存在していなければならない。しかしながら、例えばかなり非対称であり得るレーザダイオードからのビームを同一直線上に存在するようにすることは、複雑な形態を必要とする。しかしながら、この縦方向の光ポンピング装置11に対しては、レーザ信号ビーム2とポンプビーム3との間の重なりが、横方向の光ポンピング装置1のものよりも良い。
【0008】
上面を介した光ポンピング装置10が非特許文献1に開示されており、図1Cにこれを示す。この光ポンピング装置10は、ポンプビーム(図1Cには示さず)を放出するためのレーザダイオードマトリクス7、微小開口ミラー8、活性媒体4、共振キャビティ9を有する。高出力レーザ用に用いられるこの光ポンピング装置によって実施される方法が上述の二つの光ポンピング装置1及び11と異なる点は、レーザダイオードマトリクス7からのポンプビームが、レーザ信号ビーム2に垂直に、ミラー8の開口部を通過して、活性媒体4の上面を介して入射するという点である。その後、ポンプビームは活性媒体4の全体を光学的にポンピングすることによって、共振キャビティ9内へと反射される。ミラー8の微小開口部によって、共振キャビティ9全体にわたって分散されるポンプビームを閉じ込めることが可能になる。このような光ポンピング装置10の主な欠点は、高価で複雑であるという点である。この方法によって、活性媒体4の全体にわたる高エネルギー密度を達成することが可能にはなるが、重なりは小さいままである。実際、ポンプビームに供給されるエネルギーのかなりの量が活性媒体4及び共振キャビティ9内で失われ、上述と同じ欠点(過熱、寄生レーザビーム等)が生じる。更に、ポンプビームが活性媒体全体を通過するので、レーザ信号ビーム2は活性媒体4の全体を通過し、レーザ信号ビーム2が入力部では例えば単一モードであったとしても、光ポンピング装置10の出力部では、相当に多重モードなレーザ信号ビーム2が得られる。
【0009】
特許文献1には、一つの光ポンピング装置が開示されている。この装置は、ネオジムイオンが低レベルにドーピングされた活性材料の厚い層を備える。この装置は、レーザイ信号ビームの単一モードの増幅を実施することを目的としている。しかしながら、この動作は、活性材料層のドーピング及び/又は光学利得領域の幾何学的形状の特定の最適化によってのみ得られるものである。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5485482号明細書
【非特許文献1】“Face pumping of thin, solid−state slab lasers with laser diodes”、Optics letters、1996年4月15日、第21巻、第8号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、従来技術の欠点を含まない、つまり、活性領域内での短いポンプビームの軌道と、ポンプビームとレーザ信号ビームとの大きな重なりとを有し、両方のビームが同一直線上にあることを必要とせず、単純且つ安価であり、活性領域内のポンプ出力密度を最適化することによってレーザ信号ビームの増幅を得ることを可能にし、レーザ信号ビームの誘導機能を行う光ポンピング装置を提案することである。また、本発明の課題の一つは、光学利得領域の幾何学的形状及び活性材料層のドーピングに特定の制約の無い光ポンピング装置を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するため、本発明は、レーザイオンがドーピングされた活性材料ベースで形成され所定の体積を有する少なくとも一つの層と、活性材料のレーザイオンを励起状態にできるように波長が選択され所定の寸法の断面を有する少なくとも一つのポンプビームとを備えた光ポンピング装置を提案する。このポンプビームは、所定の入射角で層の入射ポイントに入射し、層内に少なくとも一つの光学利得領域を形成する。また、本発明は、レーザイオンがドーピングされた活性材料ベースで形成され所定の体積を有する少なくとも一つの層と、活性材料のレーザイオンを励起状態にできるように波長が選択され所定の寸法の断面を有する少なくとも一つのポンプビームを放出する手段とを備えた光ポンピング装置を提案する。この手段は、ポンプビームが所定の入射角で層の入射ポイントに入射し、層内に少なくとも一つの光学利得領域を形成するように、配置されている。光学利得領域は、入射ポイント、ポンプビームの断面の寸法、入射角によって調節可能な層内の位置及び体積を有するが、この光学利得領域の体積は層の体積未満である。活性材料層は薄層であってもよい。
【0013】
このようにして、ポンプエネルギーが活性材料層全体にわたって分散している光ポンピング装置を用いる代わりに、ポンプエネルギーを特定の領域に集中させる装置を用いることによって、ポンプ出力密度を最大にすることが、従って、得られる増幅率を最適化することが可能になる。この制限された光学利得領域は、ポンプビームの特徴によってその体積及び位置が調節可能であり、また、レーザ信号ビームの増幅を介して誘導機能を果たすことが可能である。何故ならば、レーザ信号ビームは、高増幅領域(この場合、光学利得領域)内を優先的に伝播するからである。
【0014】
薄層は、略1マイクロメートルと数十マイクロメートルとの間の、及び/又は、略1マイクロメートルと略10マイクロメートルとの間の、及び/又は、略100マイクロメートル未満の、及び/又は、略50マイクロメートル未満の厚さを有し得る。このようにして、レーザ信号ビームの単一モードでの誘導を実行することが可能になる。
【0015】
薄層は、略40%のレーザイオンの、及び/又は、略30%超のレーザイオンの、及び/又は、略20%超のレーザイオンのドーピングレベルでドーピングされ得る。このようなドーピングによって、活性材料層の薄い厚さにも関わらず、光学利得領域内のポンプビームの吸収の良いレベルを維持することが可能になり、従って、光学利得領域の幾何学的形状における特定の最適化の制約が減る。
【0016】
レーザイオンはイッテルビウムイオンであることが好ましい。電子構造の単純なこうしたイオンによって、本発明によるもののような高出力密度光ポンピング装置に生じる寄生効果を防止することが可能になる。
【0017】
層は単結晶であり得る。
【0018】
層は、イットリウムオルソケイ酸塩またはレーザイオン用の受容サイトを示す他のマトリクスをベースにしていてもよい。
【0019】
ポンプビームが、少なくとも一つのレーザダイオードといった少なくとも一つの光源から放出されることが想定され得る。
【0020】
ポンプビームが、層に入射する前に、レンズまたはプリズムといった少なくとも一つの光学手段によって形作られ、ポンプビームが区切られるようになる。この形作られることが層13の外側で行われることによって、光源及び/又は用いられる光学手段の選択にかなり柔軟性が与えられる。
【0021】
本発明による光ポンピング装置は、少なくとも一つのレーザ信号ビームと働き合うように設計されているので、光学利得領域が、レーザ信号ビーム用に、直線状の軌道でまたは非直線状の軌道で、層内に画定され得る。
【0022】
本発明による光ポンピング装置が、少なくとも一つの単一モードのレーザ信号ビームと働き合うように設計されているので、光学利得領域の断面の寸法が、レーザ信号ビームが層を通過した後でも基本モードが実質的に保持されるように、レーザ信号ビームの断面の寸法に略等しくてもよい。これによって、単一モードのレーザ信号ビームを増幅すると同時に、ビームのモードを保持することが可能になる。
【0023】
層が少なくとも一つの基板上に配置されていることが想定され得る。薄層内のエネルギーの閉じ込めを考慮すると、この基板によって、薄層内に形成される熱を逃がすことが可能になる。
【0024】
この場合には、基板が、ポンプビームの波長に対して透明な材料から作成されていることが好ましい。これによって、基板内におけるポンプビームからのエネルギー損失を防止することが可能になる。
【0025】
基板の材料の屈折率は、層の材料の屈折率以下であり得る。このようにして、レーザ信号ビームが層内に閉じ込められたままになる。
【0026】
ポンプビームが、層に入射する前に基板を通過してもよい。
【0027】
基板が少なくとも一つの面取り部を備えていることが好ましい。この面取り部によって、ポンプビームが、基板上での反射の可能性を制限することにより、基板に入射することが可能になる。
【0028】
この場合には、ポンプビームが面取り部を介して基板に入射し、層に入射する前に基板を通過することが想定され得る。
【0029】
本発明による光ポンピング装置が、層の上に配置された少なくとも一つの表板(superstrate)を備えていることが好ましい。この表板は特に、光ポンピング装置に対する有害な熱の影響を制御し、レーザ信号ビームの伝播中の拡散損失を最小化するものとして機能し得る。
【0030】
レーザ信号ビームを層内に閉じ込めるために、表板の材料の屈折率が層の材料の屈折率以下であり得る。
【0031】
表板はポンプビームの波長に対して透明な材料から作成され得て、表板内でのエネルギー損失がなくなるようになる。
【0032】
ポンプビームが、層に入射する前に表板を通過することが想定され得る。
【0033】
表板は、ポンプビームの波長を吸収する材料から作成され得る。このようにして、ポンプビームが層を通過した後には、層内で吸収されなかったポンプビームの残留強度の全てが、表板で吸収される。
【0034】
本発明による光ポンピング装置は、層に向けて配置された少なくとも一つの反射面を備えていてもよい。
【0035】
この場合には、ポンプビームが、反射面上で反射され、上述の光学利得領域とは明確に区別される少なくとも一つの第二光学利得領域を層内に形成し得る。ここで、第二光学利得領域は、光学利得領域から離隔されているか、または光学利得領域に事実上接触している。
【0036】
他の変形例においては、ポンプビームが、反射面上で反射され、光学利得領域に重なる少なくとも一つの第二光学利得領域を形成され得る。従って、単一の光学利得領域が形成される。
【0037】
複数のポンプビームが層内で交差し、ポンプビームが働き合って光学利得領域を形成することが想定され得る。この場合には、光学利得領域が、上述の場合よりも複雑になり、より明確に所定のレーザ信号ビームを増幅することが可能になり得る。
【0038】
ポンプビームが異なる波長を有してもよく、所定のレーザ信号ビームの吸収線が飽和することを避ける。
【0039】
また、共通光源からの少なくとも二つのポンプビームのそれぞれが、層上での或る入射角を有し、層内で干渉し、二つのポンプビームによって形成される光学利得領域が、正弦関数的に変化するポンプ出力密度を有することも想定可能である。
【0040】
また、光学利得領域が、少なくともひとつの非照射領域によって互いに離隔された少なくとも二つの第一部分と、この二つの第一部分を接続する少なくとも一つの共通の第二部分とに分けられてもよい。
【0041】
層の体積が、実質的に平面状の第一主面及び第二主面によって区切られていてもよい。また、これらの面が平行であってもよい。
【0042】
また、本発明は、レーザビームを発生させるように設計されていて、少なくとも二つのミラーと、本発明による光ポンピング装置とを備えたレーザ発振器にも関する。二つのミラーは光ポンピング装置に取り付けられているかまたは取り付けられていない。ミラーの一つはレーザビームを光学利得領域に戻すように設計されている。そして、ミラーの他方は、レーザビームの一部を光学利得領域に戻し、残りの部分を光ポンピング装置の外に出すように設計されている。このようして、光ポンピング装置がレーザ発振器の増幅モジュールとなる。
【0043】
光ポンピング装置の層の体積は、実質的に平面状で平行な第一主面及び第二主面によって区切られていてもよい。二つのミラーの一つは、二つの主面に実質的に垂直な層の第三面に対向して配置された反射面を有する。そして、二つのミラーの他方は、第一のミラーに実質的に平行であり、第三面の反対側の層の第四面に対向して配置されている半透明ミラーである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明は、添付図面を参照して、単純に例示的で非限定的な目的で供される実施形態の例についての記載を読むことによって、より明確に理解されるものである。
【0045】
以下で説明される様々な図面の同一、同様または均等な部分は、図から図への移行を容易にするために同一の参照符号を有する。
【0046】
図面を見易くするため、図面中の様々な部分は必ずしも単一のスケールでは示されていない。
【0047】
多様な可能性(変形例及び実施例)が互いに排除されることなく理解されるものであり、これらが互いに組み合わされ得る。
【0048】
まず、図2A及び図2Bに対して説明するが、これらはそれぞれ、本発明の第一実施例による光ポンピング装置12の正面断面図及び上面断面図である。この光ポンピング装置12は、レーザイオンがドーピングされた活性材料ベースで形成された層13を備える。本実施例では、層13は薄層、つまり、厚さが略1マイクロメートルと略50マイクロメートルとの間、又は、略1マイクロメートルと略100マイクロメートルとの間であり、単結晶で、例えばイットリウムオルソケイ酸塩(yttrium orthosilicate,YSO)で、レーザイオン(本例ではYb3+イッテルビウムイオン)がドーピングされ、単純な電子構造を有し、本発明等の高出力密度光ポンピング装置に生じる寄生効果を防止することが可能な層である。選択されるレーザイオンの種類に従って、層13が、このレーザイオン用の受容サイトを示す他のマトリクスに基づいてもよい。この層13は所定の体積を有する。図2Aから8に示される実施例においては、層13の体積は、実質的に平坦で平行な第一主面16及び第二主面15によって区切られている。三つの軸x、y、zを構成する直交する参照符号xyzが図2Aから図8の全ての図面に示されている。x軸及びz軸によって定義されるxz平面は、主面15及び16に実質的に平行である。第一主面16は基板14上に位置する。層13は、例えば液相エピタキシーを用いて得ることができるが、これは非常に高品質の薄い単結晶層(数十マイクロメートル)を得るために用いられる方法であり、つまり、例えば略40%の活性イオン(レーザイオン)、または、より一般的には略20%または略30%超の活性イオンのドーピングレベルでドーピングされた、非常に高レベルドーピングで0.01dB/cm未満の光伝播損失を有する。
【0049】
また、この光ポンピング装置12はポンプビーム19を有する。ポンプビーム19は、このポンプビーム19のフォトンが層13に入射した際に、層13からのレーザイオンが非励起状態から励起状態へと変化するように選択された波長の光線である。このポンプビーム19は、第一主面16または第二主面15のどちらかを照射するように向けられる。照射される面が、例えば適切な誘電体の多層堆積を用いて形成された非反射コーティング(図示せず)によって覆われることが有利であり、光ポンピング装置12の出力を改善することができる。図2A及び2Bの例では、第一主面16がポンプビーム19によって照射される。ポンプビーム19の有効幅は図2AにΦで示されている。基板14は第一主面16に接触していて、ポンプビーム19の波長に対して透明な材料(この場合は単結晶)で作成され、ポンプビーム19が、基板14で生じるエネルギー損失無しで、第一主面16上に到達するようになる。基板14は面取り部(ベベル)17を有する。図2Aでは、ポンプビーム19は、面取り部17を介して基板14に入射する。面取り部17は、基板14の一つの底面35のエッジを切断して研磨することによって形成される。図2Aでは、ポンプビーム19は、面取り部17上にゼロまたはほぼゼロの入射角で到達し、基板14に入射する際のポンプビーム19の反射を制限する。この基板14によって、層13内のエネルギーの閉じ込めを考慮して、層13からの熱を逃がすことが可能になる。本実施例では、ポンプビーム19は、入射ポイント47(この場合、第一主面16上に位置する)を介して層13に入射する前に、基板14を通過する。ポンプビーム19は、入射角θで第一主面16上に到達する。ポンプビーム19は、図2Bから見て取れるように、z軸に平行な光ポンピング装置12の全長Lにわたって実質的に直線状に、第一主面16を照射する。ポンプビーム19は、図3Aに示される光源27(例えば一つ以上のレーザダイオード)によって放出される。
【0050】
その後、ポンプビーム19は、レーザイオンを非励起状態から励起状態に変えながら、層13を通過する。この現象により、ポンプビーム19のエネルギーが層13に伝達される。ポンプビーム19が通過した層13の部分は、ポンプビーム19からエネルギーを吸収し、図2A及び2Bに示される、光学利得領域20と称される領域を形成する。図2Bから見て取れるように、ポンプビーム19が実質的に直線状に第一主面16を照射するならば、光学利得領域20もまた、光ポンピング装置12の全長Lにわたって実質的に直線状になる。従って、本実施例では、ポンプビーム19は、実質的に矩形の断面を有し表面積は、実質的にΦ×Lに等しい。従って、ポンプビーム19のエネルギーは、この光学利得領域20に集中する。従って、ポンプビーム19が入射角θで第一主面16上に到達するならば、光学利得領域20は下記の式(1)によって定義される有効厚さheffを有する:
(1) heff=h/cos(θ
ここで、hは層13の厚さである。
【0051】
この有効厚さheffは、層13内をポンプビーム19が伝わる距離に対応する。このようにして、θを変更することによって、層13内で吸収されるポンプビーム19のパワーの割合を単純な方法で制御することが可能になる。
【0052】
同様に、光学利得領域20の有効幅leffは下記の式(2)によって定義される:
(2) leff=Φ/cos(θ
【0053】
しかしながら、本第一実施例で、光学利得領域20が、実質的に平行六面体状の体積Vを有するならば、この体積は下記の式(3)によって定義される:
(3) V=leff×h×L
【0054】
従って、光学利得領域20の体積Vはポンプビーム19のΦ及びLの寸法、従ってポンプビーム19の断面積によって、また、第一主面16上のポンプビーム19の入射角θによって調節可能であるということがわかる。本発明によると、体積Vは層13の全体積よりは小さい。更に、有効幅leffに平行なx軸に沿った、光学利得領域20の位置も、これらのパラメータ及び、層19内のポンプビーム19の入射ポイント47を用いて、調節可能である。
【0055】
層13を通過した後、ポンプビーム19はその軌道を続け、層13の第一主面16または第二主面15の他方の面上に配置された表板(superstrate)18を通過する。図2A及び2Bの例では、他方の面は第二主面15である。この表板18は例えば、基板14と同じ材料から作成されてもよく、この場合には、単結晶で、ポンプビーム19の波長に対して透明である。この表板18は、層13内のポンピング反応によって生じた熱を抽出する機能を有し得て、従って、層13の厚さhに平行なy軸に沿った温度勾配を形成して、有害な熱の影響を最小化することができる。
【0056】
図2A及び2Bの実施例では、ポンプビーム19は、面取り部17から基板14を通過し、そして、層13を通過し、最後に、表板18を通過する。本実施形態の変形例では、ポンプビーム19は、面取り部17を介さずに基板14を通過してもよく、または、図3Aに示されるように、ポンプビーム19が最初に表板18を通過して、第二主面15を介して層13に入射し、最後に基板14を通過する。他の変形例では、面取り部17及び/又は表板18、更には基板14が無くてもよい。この場合には、ポンプビーム19は、入射角θpで層13の第一主面16または第二主面15を介して直に層13に入射し、その前に何かを通過することが無い。
【0057】
本発明による光ポンピング装置12は、図2に示されるレーザ信号ビーム2を増幅及び誘導するように設計されている。本第一実施例では、光ポンピング装置12は、第一に、レーザ信号ビーム2を増幅するように設計されている。レーザ信号ビーム2は、光学利得領域20の、z軸に実質的に平行な層13の入射部に送られる。光学利得領域20を通過する間に、図2Bに破線で示されるように、レーザ信号ビーム2は、光学利得領域20内に集められたエネルギーを回収することによって、増幅される。また、光ポンピング装置12は、レーザ信号ビーム2を誘導する機能も有する。実際、本実施例では、基板14及び表板18の材料の屈折率は、層13の活性材料の屈折率以下にされている。層13に送られたレーザ信号ビーム2は、層13内に留まり、基板14及び表板18内に分散されない。同様に、ポンプビーム19のエネルギーが、光学利得領域20内のみに位置し、また、レーザ信号ビーム2が、利得が最高のこの領域内を優先的に伝播するので、レーザ信号ビーム2は、この光学利得領域20内に閉じ込められたままであり、層13全体にわたって分散することがない。本第一実施例では、光学利得領域20の有効幅leffは、光ポンピング装置12の全長Lにわたって実質的に一定であり、レーザ信号ビーム2の幅に実質的に等しく、また、厚さhは、レーザ信号ビーム2の高さに実質的に等しい。従って、光学利得領域20の断面の寸法は、レーザ信号ビーム2の断面の寸法に略等しい。従って、光ポンピング装置12の出力部では、レーザ信号ビーム2が、光ポンピング装置12の入力部での質と同じ質で得られる。レーザ信号ビームの質は、レーザ信号ビームの空間モードと称され、レーザ信号ビームのスポットの発散及び分散を決定する。レーザビームが“高品質”であると言われるのは、空間エネルギー分布が、(レーザビームを放出するキャビティによって決定される)基本モードに対応するものである場合であり、回転対称性を有するキャビティの通常の場合には、ガウス分布モードである。例えば、レーザ信号ビーム2が単一モードであり、層13に入射するならば、光ポンピング装置12からは、増幅されて完全に単一モードで放出される。より一般的な規則として、この構成によって、基本空間モードにエネルギーを供給するだけで、基本空間モードでレーザ信号ビーム2を増幅すると同時に、この空間モードを光ポンピング装置12の出力部まで維持することができる。
【0058】
例えば、40%のYb3+イオンがドーピングされた厚さhが10マイクロメートルのYSO層13に対して、長さの次元で割った978nmでの吸収係数が200cm−1のオーダであり、層13と基板14と間の屈折率の違いが0.01未満である場合には、ポンプビーム19(幅Φは10マイクロメートル、入射角は7.2°)からのエネルギーの80%が吸収されて、光学利得領域20が形成され、z軸方向の伝播時に適切に単一モードを保持することが可能である。有効吸収厚さheffはこの場合80マイクロメートルであり、従って、光学利得領域20は、10マイクロメートル×80マイクロメートルの断面積を有する。
【0059】
図3A及び3Bは、本発明による光ポンピング装置12の第二実施例を示す。本第二実施例の層13、表板18、基板14、ポンプビーム19及び光学利得領域20は、事実上、第一実施例の同じものと実質的に同様である。第一実施例と比較すると、基板14は面取り部を有していない。第一実施例のポンプビーム19とは異なり、第二実施例のポンプビーム19は、光ポンピング装置12の長さLに沿って直線状ではない。図3Aに見て取れるように、ポンプビーム19は、表板18に入射し、第二主面15上に到達する前に表板18を通過する。ポンプビーム19の断面は、図3Bに示される光学利得領域20の上面と実質的に同様の形状を有するが、ポンプビーム19の断面の幅はΦであり、leffである光学利得領域20の幅とは異なる。この場合には、ポンプビーム19は層13に入射し、光学利得領域20を形成するが、その光学利得領域は、図3Bに示されるように、z軸に沿った光ポンピング装置12の全長Lに沿った直線状の軌道を有していない。本第二実施例では、ポンプビーム19は、光学手段33によって、形作られている、つまりコリメートされている。図3Aでは、この光学手段33はレンズである。この光学手段33はプリズムであってもよい。この光学手段33によって、ポンプビーム19を正確に区切ることが可能になる。第一実施例においては、レーザ信号ビーム2は、光学利得領域20内で増幅及び誘導された。しかしながら、エネルギー密度の勾配によって発生させた利得による誘導を用いることによってレーザ信号ビーム2が光学利得領域を進むので、本実施例の光ポンピング装置12は、レーザ信号ビーム2が非直線状の軌道を進むという事実の結果として、追加的な誘導を実施するということになる。従って、レーザ信号ビーム2は、このレーザ信号ビーム2が層13に入射した際の軸とは平行ではない軸に沿って、層13から出て来る。これによって、レーザ信号ビーム2を、ポンプビーム19の幾何学的形状によって定められた方向に向けることができる。この現象は、本実施例の場合のように、層13をドーピングするのに用いられるYb3+イオンによって強められる。実際、このイオンは、ポンプビーム19が通過しない層13の領域内のレーザ信号ビーム2を吸収し、レーザ信号ビーム2の誘導を強める。
【0060】
図4Aは、本発明の第三実施例による光ポンピング装置12の正面断面図を示す。第一実施例のように、光ポンピング装置12は、層13、表板18、基板14、ポンプビーム19及び光学利得領域20を有する。図4Aの光ポンピング装置12と図2Aの光ポンピング装置との違いは、層13に向けられた反射面22を備えることである。この反射面22は、層13から最も離れていて、第一主面16に実質的に平行な表板18の面上に位置する。ポンプビーム19が層13を通過すると、図2Aに示されるような光学利得領域20が形成されるが、これは第一光学利得領域20となる。その後、ポンプビーム19が表板18を通過して面22上で反射される。その後、ポンプビーム19は表板18と、層13とを再び通過するが、層13が第二光学利得領域21を形成し、その体積は第一光学利得領域に実質的に等しい。第二光学利得領域21は、第一光学利得領域20に平行であってもよく、第一光学利得領域20と同じ性質を有してもよい。第二光学利得領域も、同じパラメータ、つまり、向き、有効厚さheff、有効幅leff、層13の長さ及び厚さhによって、画定される。その後、ポンプビーム19は、基板14を通過して、基板14から出て来る。図4Aでは、第二光学利得領域21は明確に区別されていて、第一光学利得領域20から離隔されている。この構成では、ポンピング装置12は、二つのレーザ信号ビーム(図4Aには示さず)を独立に増幅することが可能で、それぞれが第一光学利得領域20または第二光学利得領域21のどちらかを用いる。ここでも、上述のように、光ポンピング装置12は、増幅及び光誘導の機能を果たす。他の変形例では、第二実施例のように直線状ではないポンプビーム19を有することが可能である。この場合には、二つの非直線状の光学利得領域20が得られる。ポンプビーム19は、図3Aに示されるように光源27から放出される。また、ポンプビーム19は、第二実施例のように図3Aに示される光学手段33によって形作られてもよい。第一実施例に対して説明された多数の変形例(面取り部17、基板14及び表板18の有無)が、この第三実施例に対しても想定され得る。
【0061】
図4Bは、本発明の第三実施例による光ポンピング装置12を示す。この図の光ポンピング装置12が図4Aの光ポンピング装置と異なるのは、層13上のポンプビーム19の入射角θである。この入射角θは、光学利得領域20と第二光学利得領域21とが明確に区別されるが、両方の光学利得領域20、21が互いに離隔される図4Aの場合とは異なり、図4Bでは両方の光学利得領域20、21が互いに事実上接触するようになっている。
【0062】
この第三実施例の変形例が図4Cに示されている。この図では、光ポンピング装置12は図4Aの光ポンピング装置12と同一の構成要素を有する。違いは、角度θが、二つの光学利得領域20及び21が重なり、単一の光学利得領域44を形成するようになっていることである。この重なりによって、上述の実施例とは異なり、出力密度が一様ではない単一の光学利得領域44がもたらされる。領域23は、ポンプビーム19が面22上で反射される前後に横切る領域であり、光学利得領域20、21の交差部に位置し、単一の光学利得領域44の中心部分にあり、光学利得領域20、21の交差部に対応する中心部分のどちらかの側面に位置する単一の光学利得領域44の端部において、より大きな出力密度を有する。この変形例では、領域23の幅によって画定された幅に対してのみレーザ信号ビーム2(図4Cには示さず)を最大に増幅するによって、特定の空間モードのレーザ放出を促すことが可能である。この現象は、層13をYb3+イオンでドーピングすることによって強められ、“十分にポンピングされなかった”領域(この場合には、領域23の外側に位置する単一の光学利得領域44の端部)が、レーザ信号ビーム2を吸収する。
【0063】
図5は、本発明の第四実施例による光ポンピング装置12の正面断面図を示す。この光ポンピング装置12は、層13、基板14及び表板18を備える。第一実施例と比較すると、基板14は、底面35の対向する二つのエッジ上に形成された二つの面取り部17及び24を有する。上述の実施例とは異なり、図5において、いわゆる主ポンプビーム19は、基板を通過した後、入射ポイント47にゼロ度の入射角θp1(図示せず)で第一主面16上に到達する。図5では、光ポンピング装置12はまた、二つの副ポンプビーム25、26を含む。この二つの副ポンプビーム25、26の各々は、それぞれ基板14の面取り部24及び17を介して入射する。この図では、副ポンプビーム25、26の各々は、例えば絶対値が実質的に等しいが逆符号である入射角θp2、θp3で第一主面16上に到達する。他の変形例では、副ポンプビーム25、26は異なる入射角θp2、θp3を有してもよい。基板14を通過した後、三つのポンプビーム19、25、26は共通の光学利得領域20を形成する。この図では、ポンプビーム19、25、26はそれぞれ、異なる特定の幅Φp1、Φp2、Φp3、従って異なる断面を有する。ポンプビーム19、25、26は、所定の波長での吸収の飽和を避けるために、異なる波長を有してもよい。また、ポンプビーム19、25、26はそれぞれ、z軸に平行な異なる長さを有してもよい。幾何学的形状の異なるこれらのポンプビーム19、25、26を用いることによって、共通光学利得領域20が、一様ではない出力密度を有する。図5では、共通光学利得領域20は、主ポンプビーム19と副ポンプビーム26、25の一つとが交差する二つの領域42、43を有する。この二つの領域42、43は、主ポンプビーム19のみによって生じた光学利得領域20の残りの部分20’よりも、大きな出力密度を有する。本実施例では、それぞれのパラメータ、つまり、層13の入射ポイント47、主ポンプビーム19の入射角θp1及び幅Φp1が共通光学利得領域20を形成し、副ポンプビーム25、26の同様のパラメータが領域42、43の形成を助ける。本実施例では、表板18は、ポンプビーム19、25、26の波長を吸収する材料から形成されている。このようにして、ポンプビーム19、25,26が層13を通過した後には、ポンプビーム19、25、26の残留強度は表板18に吸収される。本実施例によって、所定の空間モードのレーザ放出を促すことが可能であり、または共通の光学利得領域20内に複数の明確に区別できるガイドを形成することができる。本実施例を用いて、一つ以上のレーザ信号ビーム2(図5には示さず)が、共通光学利得領域20内のそれぞれの位置に従って、層13を介して入射し得て、層13を通過する。そして、光学利得領域20に入射するポイントによって、従って遭遇する出力密度によって決められる空間モードで、光ポンピング装置12から出て来る。本第四実施例では、複数の変形例が可能である。例えば、ポンプビーム19、25、26は直線状であってもなくてもよい。他の変形例では、追加ポンプビームを加えることが想定され得る。また、光ポンピング装置12は、第三実施例のような反射面22を有してもよく、光学利得領域20内に更に複雑な幾何学的形状を得ることが可能になる。第一実施例のように、他の変形例では、面取り部17及び24、基板の有無、また、表板18の省略が想定され得る。
【0064】
図6は、本発明の第五実施例による光ポンピング装置12の正面断面図を示す。この光ポンピング装置12は、第四実施例のものと実質的に同様な、層13及び基板14を有する。本第5実施例では、少なくとも二つのポンプビーム19、25が、共通光源27によって発せられる。図6では、二つのポンプビーム19、25が示されている。ポンプビーム19、25はそれぞれ、例えば絶対値が実質的に等しいが逆符号である第一主面16上の入射角θp19、θp25と、単一の光学利得領域20を形成するように層13で交差する実質的に等しい幅Φp19及びΦp25とを有する。ポンプビーム19、25が同一の光源27からのものであり、実質的に等しく、実質的に等しい入射角θp19及びθp25で面16を照射するならば、単一の光学利得領域20内には二つのポンプビーム19、25間の干渉が存在し、x軸に沿って正弦関数的に変化するポンプ出力密度が誘発される。この正弦関数的な変化の区間は、それぞれのポンプビーム19、25の入射角θp19、θp25及び幅Φp19、Φp25を変更することによって、調節可能である。ポンプビーム19、25は、絶対値が実質的に等しいが逆符号である第二主面15に対する屈折角θr19及びθr25で層13から出て来て、それぞれが実質的に等しい幅Φr19及びΦr25を有する。従って、本実施例を用いて、同一にまたはほぼ同一にポンピングされる平行な光学ガイドの組が形成される。また、上述の実施例に対して説明した変形例を、本第5実施例に適用してもよい。
【0065】
図7Aは本発明の第六実施例による光ポンピング装置12の上面断面図を示す。この光ポンピング装置12は、実質的に第五実施例のものと同様の層13及び基板14(図7Aには示さず)を有する。この第六実施例では、ポンプビーム19(図7Aには示さず)が基板14を介して入射し、層13内に光学利得領域20を形成する。本実施例では、光学利得領域20は、層13の照射されていない領域34によって互いに離隔された二つの第一部分28、29に分けられ、この第一部分は共通の第二部分30から延伸する。この共通の第二部分30は、二つの第一部分28、29を接続する。ポンピング装置12の動作時には、光源27(図7Aには示さず)が、光学利得領域20を形成するポンプビーム10を放出する。しかしながら、ポンプ装置12の動作時には、ポンプビーム19が、図7Aの場合のように、二つの第一部分の一つ28と共通の第二部分30とを形成するようにするか、または、二つの第一部分の他方29と共通の第二部分30を形成するようにする。このようにして、光源27が、層13内に二つの異なる光学経路を互いに無関係に形成することが可能である。このようにして、第二部分30を介して層13に入射するレーザ信号ビーム2が、図7Aの場合のように、第二部分30を介して、図7Aに実線で示される二つの第一部分の一つ28によって画定された第一光学経路内を誘導されて、出力部である第一端部31を介して層13から出て来てもよく、または、図7Aに破線で示される二つの第一部分の他方29によって画定された第二光学経路内を誘導されて、第一端部31の隣に位置しこれもまた出力部である第二端部32を介して層13から出て来てもよい。従って、本光ポンピング装置12は光ルーティング機能を果たし、互いに無関係に、二つの軌道に沿って、レーザ信号ビーム2をルーティングすることが可能になる。同じ構成を用いて、図7Bに示されるように、本光ポンピング装置12が、光スイッチング機能を果たすことも想定可能である。この場合、二つのレーザ信号ビーム2a、2bがそれぞれ、この場合入力部になる端部31及び32に到達する。図7Bの場合のように、ポンプビーム19(図7Bに示さず)が、図7Bに実線で示される二つの第一部分の一つ28及び共通の第二部分30を照射するならば、第一端部31を介して入射するレーザ信号ビーム2aのみが、光ポンピング装置12から増幅されて出て来る。同様に、ポンプビーム19が、図7Bに破線で示される二つの第一部分の他方29及び共通の第二部分30を照射するならば、第二端部32を介して入射するレーザ信号ビーム2bのみが、光ポンピング装置12から増幅されて出て来る。上述の全ての変形例を、この第六実施例に適用してもよい。
【0066】
上述の全ての実施例においては、光ポンピング装置12が、一つ以上の既存のレーザ信号ビーム2用の増幅器及び光学ガイドとして用いられている。レーザ信号ビーム2は、活性材料の層13に入射し、光学利得領域20内でポンプビーム19によって供給されるエネルギーで増幅されながら、この光学利得領域20に沿って層13を通過し、光ポンピング装置12から出て行く。
【0067】
また、本発明は、レーザ発振器50にも関する。レーザ発振器50はレーザビームを生成するように設計されている。このレーザ発振器の原理は、光ポンピング装置を二つのミラーの間に配置するということである。この二つのミラーの一つはレーザビームを光学利得領域に戻し、この二つのミラーの他方は、レーザビームの一部を光学利得領域に戻し、残りの部分は光ポンピング装置の外へと通過させる。従って、光ポンピング装置が、レーザ発振器50の増幅(gain)モジュールとして用いられる。図8は、本発明によるレーザ発振器を示す。レーザ発振器50は、本発明の上述の実施例のいずれかによる光ポンピング装置12を備える。光ポンピング装置12は、第一実施例の光ポンピング装置12の構成要素と実質的に同様の、図8には示されない基板、ポンプビーム、表板、並びに、層13、光学利得領域20を含む。レーザ発振器50は第一ミラー27を備えるが、ここで、この第一ミラーには、一つの反射面37が層13の主面に実質的に垂直な層13の第三面39に対向して配置されている。また、レーザ発振器50は、層13の第三面39の反対側の第四面40に対向して配置された半透明な第二ミラー38も備える。本実施例では、ミラー36及び38は実質的に互いに向き合って配置されている。このレーザ発振器50に対しては、光学利得領域20内での誘導放出を用いた自発放出及び増幅放出によって発生させたレーザビーム41が、最初に層13を通過し、第二ミラー38で反射され、再び層13を通過し、第一ミラー36で反射されるというようになる。層13つまり光学利得領域20を通過する度に、レーザビーム41が、光学利得領域20内のポンプビームによって供給されたエネルギーを回収する。レーザビーム41が半透明ミラー38に到達する度に、レーザビーム41の一部45がこの半透明ミラー38によって光学利得領域20内に反射され、レーザビーム41の残りの部分46は、半透明ミラー38を通過して、光ポンピング装置12から出て行く。
【0068】
レーザ発振器50についてのこの説明は、可能な実施例の一つである。レーザ発振器50の原理が、層13のそれぞれの側に二つのミラー36、38を配置することに基づいているものであれば、上述の光ポンピング装置12のいずれかを用いて、図8のようなレーザ発振器50の増幅モジュールを製造することができる。
【0069】
一変形例においては、ミラー36、38が、光ポンピング装置12に取り付けられていなくてもよい。また、この二つのミラーの少なくとも一つが、レーザ発振器50の安定性を高めるために、平面状でなく凹型であってもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施例について詳細に説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、多種多様な変更及び改良が可能であるということは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】従来技術による横方向の光ポンピング装置の一例の斜視図である。
【図1B】従来技術による縦方向の光ポンピング装置の一例の斜視図である。
【図1C】従来技術による上面を介した光ポンピング装置の一例の斜視図である。
【図2A】本発明の第一実施例による光ポンピング装置の正面断面図である。
【図2B】本発明の第一実施例による光ポンピング装置の上面断面図である。
【図3A】本発明の第二実施例による光ポンピング装置の正面断面図である。
【図3B】本発明の第二実施例による光ポンピング装置の上面断面図である。
【図4A】本発明の第三実施例による光ポンピング装置の正面断面図である。
【図4B】本発明の第三実施例による光ポンピング装置の正面断面図である。
【図4C】本発明の第三実施例の変形例による光ポンピング装置の正面断面図である。
【図5】本発明の第四実施例による光ポンピング装置の正面断面図である。
【図6】本発明の第五実施例による光ポンピング装置の正面断面図である。
【図7A】本発明の第六実施例による光ポンピング装置の上面断面図である。
【図7B】本発明の第六実施例による光ポンピング装置の上面断面図である。
【図8】本発明の第七実施例による光ポンピング装置の上面断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 横方向の光ポンピング装置
2 レーザ信号ビーム
3 ポンプビーム
4 活性媒体
5 第一面
6 第二面
7 レーザダイオードマトリクス
8 微小開口ミラー
9 共振キャビティ
10 上面を介した光ポンピング装置
11 縦方向の光ポンピング装置
12 光ポンピング装置
13 層
14 基板
15 第二主面
16 第一主面
17 面取り部
18 表板
19 ポンプビーム
20、21 光学利得領域
22 反射面
27 光源
33 光学手段
35 底面
36 第一ミラー
37 反射面
38 半透明な第二ミラー
39 第三面
40 第四面
41 レーザビーム
47 入射ポイント
50 レーザ発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザイオンがドーピングされた活性材料ベースで形成され所定の体積を有する少なくとも一つの薄い層(13)を備え、また、前記活性材料の前記レーザイオンを励起状態にできるように波長が選択されまた所定の寸法の断面を有する少なくとも一つのポンプビーム(19)も備えた光ポンピング装置(12)にであり、前記ポンプビームは、所定の入射角(θ)で前記層(13)の入射ポイント(47)に入射し、前記層(13)内に少なくとも一つの光学利得領域(20)を形成し、前記光学利得領域(20)は、前記入射ポイント(47)、前記ポンプビーム(19)の断面の寸法、前記入射角(θ)によって調節可能な前記(13)内の位置及び体積を有するが、前記光学利得領域(20)の体積は前記層(13)の体積未満である光ポンピング装置(12)。
【請求項2】
前記薄い層(13)は略1マイクロメートルと数十マイクロメートルとの間の厚さを有する請求項1に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項3】
前記薄い層(13)は略1マイクロメートルと略10マイクロメートルとの間の厚さを有する請求項1または請求項2のいずれかに記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項4】
前記薄い層(13)は略100マイクロメートル未満の厚さを有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項5】
前記薄い層(13)は略50マイクロメートル未満の厚さを有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項6】
前記薄い層(13)は略40%のレーザイオンのドーピングレベルでドーピングされている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項7】
前記薄い層(13)は略30%超のレーザイオンのドーピングレベルでドーピングされている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項8】
前記薄い層(13)は略20%超のレーザイオンのドーピングレベルでドーピングされている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項9】
前記レーザイオンがイッテルビウムイオンである請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項10】
前記層(13)が単結晶である請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項11】
前記層(13)は、イットリウムオルソケイ酸塩またはレーザイオン用の受容サイトを示す他のマトリクスをベースにしている請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項12】
前記ポンプビーム(19)が、少なくとも一つのレーザダイオードといった少なくとも一つの光源(27)から放出される請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項13】
前記ポンプビーム(19)が、前記層(13)に入射する前に、レンズまたはプリズムといった少なくとも一つの光学手段(33)によって形作られ、前記ポンプビーム(19)が区切られるようになっている請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項14】
少なくとも一つのレーザ信号ビーム(2)と働き合うように設計され、前記光学利得領域(20)が、前記レーザ信号ビーム(2)用に直線状の軌道で前記層(13)内に画定される請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項15】
少なくとも一つのレーザ信号ビーム(2)と働き合うように設計され、前記光学利得領域(20)が、前記レーザ信号ビーム(2)用に非直線状の軌道で前記層(13)内に画定する請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項16】
少なくとも一つの単一モードのレーザ信号ビーム(2)と働き合うように設計され、前記光学利得領域(20)の断面の寸法は、前記レーザ信号ビーム(2)が前記層(13)を通過した後でも基本モードが実質的に保持されるように、前記レーザ信号ビーム(2)の断面の寸法に略等しい請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項17】
前記層(13)は少なくとも一つの基板(14)上に配置されている請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項18】
前記基板(14)は、前記ポンプビーム(19)の波長に対して透明な材料から作成されている請求項17に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項19】
前記基板(14)の材料の屈折率は前記層(13)の材料の屈折率以下である請求項17または請求項18のいずれかに記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項20】
前記ポンプビーム(19)が、前記層(13)に入射する前に前記基板(14)を通過する請求項17から請求項19のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項21】
前記基板(14)は少なくとも一つの面取り部(17)を備えている請求項17から請求項20のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項22】
前記ポンプビーム(19)が前記面取り部(17)を介して前記基板(14)に入射し、前記層(13)に入射する前に前記基板(14)を通過する請求項21に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項23】
前記層(13)の上に配置された少なくとも一つの表板(18)を備えている請求項17から請求項22のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項24】
前記表板(18)の材料の屈折率が前記層(13)の材料の屈折率以下である請求項23に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項25】
前記表板(18)が前記ポンプビーム(19)の波長に対して透明な材料から作成されている請求項23または請求項24のいずれかに記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項26】
前記ポンプビーム(19)が前記層(13)に入射する前に前記表板(18)を通過する請求項23から請求項25のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項27】
前記表板(18)が前記ポンプビーム(19)の波長を吸収する材料から作成されている請求項23または請求項24のいずれかに記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項28】
前記層(13)に向けて配置された少なくとも一つの反射面(22)を備えている請求項23から請求項26のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項29】
前記ポンプビーム(19)が、前記反射面(22)上で反射され、前記光学利得領域(20)とは明確に区別される少なくとも一つの第二光学利得領域(21)を前記層(13)内に形成し、前記第二光学利得領域(21)は、前記光学利得領域(20)から離隔さされているか、または前記光学利得領域(20)に事実上接触している請求項28に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項30】
前記ポンプビーム(19)が、前記反射面(22)上で反射され、前記光学利得領域(20)に重なる少なくとも一つの第二光学利得領域(21)を形成し、従って単一の光学利得領域(44)が形成される請求項28に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項31】
複数のポンプビーム(19、25、26)が前記層(13)内で交差し、前記ポンプビーム(19、25、26)が働き合って前記光学利得領域(20)を形成する請求項1から請求項30のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項32】
前記ポンプビーム(19、25、26)が異なる波長を有する請求項31に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項33】
共通光源(27)からの少なくとも二つのポンプビーム(19、25)を備え、前記二つのポンプビームのそれぞれは、前記層(13)上での入射角(θp12、θp25)を有し、前記層(13)内で干渉し、前記二つのポンプビーム(19、25)によって形成される前記光学利得領域(20)は、正弦関数的に変化するポンプ出力密度を有する請求項1から請求項30のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項34】
前記光学利得領域(20)が、少なくともひとつの非照射領域(34)によって互いに離隔された少なくとも二つの第一部分(28、29)と、前記二つの第一部分(28、29)を接続する少なくとも一つの共通の第二部分(30)とに分けられる請求項1から請求項33のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項35】
前記層(13)の体積が、実質的に平面状の第一主面(16)及び第二主面(15)によって区切られている請求項1から請求項34のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項36】
前記第一主面(16)及び前記第二主面(15)は実質的に平行である請求項35に記載の光ポンピング装置(12)。
【請求項37】
レーザビーム(41)を発生させるように設計されていて、少なくとも二つのミラー(36、38)と、請求項1から請求項36のいずれか一項に記載の光ポンピング装置(12)とを備えたレーザ発振器(50)であり、前記二つのミラー(36、38)は前記光ポンピング装置(12)に取り付けられているかまたは取り付けられていなく、前記ミラーの一つ(36)は前記レーザビーム(41)を前記光学利得領域(20)に戻すように設計され、前記ミラーの他方(38)は、前記レーザビーム(41)の一部(45)を前記光学利得領域(20)に戻し、残りの部分(46)を前記光ポンピング装置(12)の外に出すように設計されていて、前記光ポンピング装置(12)が前記レーザ発振器(50)の増幅モジュールとなるレーザ発振器(50)。
【請求項38】
前記光ポンピング装置(12)の層(13)の体積は、実質的に平面状で平行な第一主面(16)及び第二主面(15)によって区切られていて、前記二つのミラーの一つ(36)は、二つの前記主面(15、16)に実質的に垂直な前記層(13)の第三面(39)に対向して配置された反射面(37)を有し、前記二つのミラーの他方(38)は、第一の前記ミラー(36)に実質的に平行であり、前記第三面(39)の反対側の層(13)の第四面(40)に対向して配置されている半透明ミラーである請求項37に記載のレーザ発振器(50)。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−541442(P2008−541442A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510619(P2008−510619)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050416
【国際公開番号】WO2007/026084
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】