説明

光マイクロフォン

【課題】 機構上の設計自由度が高く、小型のペンシルマイク型の形状を実現でき、このような形状にした際に回路部品等により音波検出精度が劣化するのを防止できる光マイクロフォンを提供する。
【解決手段】 音波を通過させる円筒ミラー4の壁面の一部に傾斜した平面ミラー16を設けて、レーザ光発生部2や光電変換部6を円筒ミラー4の開口部側に配置することを可能にする。さらに、円筒ミラー4の音源と反対側の開口部に遮蔽板17を設けて、音源と反対側の開口部における音響インピーダンスを一定にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを用いて音波を電気信号に変換する光マイクロフォンに関し、特に小型化された、いわゆるペンシルマイク形の光マイクロフォンに関する。
【背景技術】
【0002】
音波を電気信号に変換する装置であるマイクロフォンは、振動板を使用したダイナミック型やコンデンサ型のマイクロフォンが一般的である。一方、振動板を使用せずにレーザ光などの光ビームを使用して音波を検出するマイクロフォンが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【特許文献1】特開昭59−157620号公報
【特許文献2】特開2002−78093公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の光ビームを使用したマイクロフォンの多くは、装置が大型で音響用のマイクロフォンとしての十分な周波数特性が得られなかったり、極端な検出指向性を生じてしまったりするという問題があり、実用化が困難であった。本発明に先立って、本発明者は、音波の検出領域が拡大することなく音波の検出感度を効率的に高め、周波数特性や指向性を改善した小型で高感度の光マイクロフォンを発明したが、先の発明においては、音響信号検出フィールド内の星形多角形の形状の光ビームの光路形成面と、光ビーム出力手段及び光ビーム検出手段が略同一平面上となる構成をとっていたため、機構上の設計自由度が低く、小型のいわゆるペンシルマイク形の光マイクロフォンを実現することが困難であった。
【0004】
ペンシルマイクとは、棒状のマイクロフォン装置で、一端に音波検出部を備え、棒状の本体内部に回路部品や電源等を収めたものであり、楽器収録用やボーカルマイクとして広く用いられており、一般にペンシルマイクの音波検出部の検出指向性は棒状のマイクの軸の長手方向に高感度となっており、音波検出部を音源方向に向けて使用する。
【0005】
ペンシルマイク形の光マイクロフォンを実現するために、光マイクロフォンの光路形成手段の一方の開口部がペンシルマイクの一端に位置するように構成した場合、光路形成手段の他方の開口部はペンシルマイクの本体内部に向かって開く事になる。ペンシルマイクの本体内部には回路部品が置かれるため、光路形成手段の背面空間の音響インピーダンスは場所により異なってくる。このため前記背面空間における音波の反射を均一にしないと、背面空間からの不均一な反射音波によって音響信号検出フィールドにおける音場に乱れを生じてしまい、音波検出の精度が劣化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、機構上の設計自由度が高く、小型のペンシルマイク型の形状を実現でき、このような形状にした際に回路部品等により音波検出精度が劣化するのを防止できる光マイクロフォンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0008】
(1)光ビームを出力する光ビーム出力手段と、
前記光ビーム出力手段から出力された光ビームを、複数回反射及び交差させて光路を星形多角形に形成し、この光路を含む領域である音響信号検出フィールドを通過する音波で前記星形多角形の形状の光ビームを変調する光路形成手段と、
前記光路形成手段から出射された前記光ビームの変調量を検出し、その変調量に応じた電気信号を出力する光ビーム検出手段と、
を備え、
前記光路形成手段は、その内壁面が鏡面の筒型構造で、該内壁面と、前記星形多角形の形状の光路が形成される平面と、の成す角が垂直であり、
前記内壁面はその一部に、前記光ビーム出力手段から出力された光ビームを、星形多角形の形状の光路が前記音響信号検出フィールド内に形成されるように入射させる小反射面を備え、
前記光路形成手段に入射する光ビームと、前記光路形成手段から出射する光ビームと、が前記小反射面の略同一点で反射されて入射及び出射し、音響信号検出フィールド内の星形多角形の形状の光路形成面と、前記光ビーム出力手段及び光ビーム検出手段が異なる平面上に配置されることを特徴とする。
【0009】
この構成においては、光マイクロフォンの光路形成手段は、光ビーム出力手段から出力された光ビームを音響信号検出フィールド内に星形多角形の形状の光路を形成するように前記光路形成手段の内壁面へ反射する小反射面を備えているので、光ビームの光路を曲げることが可能となり、光ビーム出力手段及び光ビーム検出手段を光路形成手段と別の平面上に配置する事が可能となり、筒型構造の光路形成手段の音源方向と反対側の開口部側に光ビーム出力手段及び光ビーム検出手段を配置することができる。したがって、設計の自由度を高めることができ、光マイクロフォンを小型化したり、ペンシル型の光マイクロフォンを設計することが容易となる。
【0010】
さらに、この構成においては、光ビーム出力手段から出力された光ビームは前記小反射面で反射され、光路形成手段に入射し、光路形成手段の内壁面で反射を繰り返して、一平面上に星形多角形の形状の光路を形成し再び前記小反射面で反射されて光路形成手段より出射し光ビーム検出手段に導かれるが、この時、光路形成手段に入射する光ビームの入射角度を、小反射面の反射による入射及び出射が略同一点で起こる角度に設定することで、小反射面は光路形成手段内の一カ所に設ければ良く、小反射面を小型化できるので、小反射面による音響信号検出フィールド内の音場の乱れは極めて小さいものとする事が出来、小型で高性能な光マイクロフォンの設計が可能となる。
【0011】
(2)前記光路形成手段の音源方向と反対側の開口部を密閉状態または半密閉状態にする遮蔽手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成においては、光マイクロフォンは、遮蔽手段によって光路形成手段の一方の開口部を密閉または半密閉状態とするので、光路形成手段の音源方向と反対側の開口部側に配置される様々な部品による音波の反射の影響を軽減することが可能となり、位置にかかわらず音響インピーダンスをほぼ一定にすることができる。したがって、音波の検出精度を高めることができる。また、密閉状態における音響信号検出フィールドの音源方向と反対側の背面空間の容積を最適化したり、半密閉状態における外部からの音波の導入を制御することで、指向性を変化させる事も可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光マイクロフォンは、光ビームの光路を光路形成手段の内壁面の一部に小反射面を設けて、この反射手段で光路を曲げることで、光路形成手段(円筒ミラー)と、光ビーム出力手段及び光ビーム検出手段と、の位置関係を自由に設定することが可能となり、光マイクロフォンの形状の設計自由度を高めることができ、小型のペンシルマイク形の光マイクロフォン等の製作が容易となる。
【0014】
また、音響信号検出フィールドの音源方向と反対側の開口部に、光透過性を有し、完全密閉や半密閉状態とする遮蔽手段を設けて空気の流通を制限することで、光路形成手段の背面側の空間における音響インピーダンスを一定にすることができ、音波の検出精度の高い小型のペンシルマイク形の光マイクロフォンの製作が可能となると共に音波検出の指向性の制御が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[基本構成]
図1は、本発明に先だってなされた本発明者の先願の光マイクロフォンの基本構成を示す構成図であり、(A)は音源側から見た上面図であり、(B)は側面図であり、(C)は円筒ミラーに代えて多角柱ミラーを使用した場合の上面図である。光マイクロフォン1は、光ビーム出力手段であるレーザ光発生部2及び光源系レンズ部3、光路形成手段である円筒ミラー4、並びに光ビーム検出手段である検出系レンズ部5及び光電変換部6を備えている。
【0016】
レーザ光発生部2は、図外の半導体レーザ素子やレーザ駆動回路を備え、レーザ光7を出射する。光源系レンズ部3は、レーザ光発生部2から出射されたレーザ光7を集光して所定のスポット径でほぼ平行光であるレーザビーム8に変換する。 円筒ミラー4は、円筒形状で内壁面全体が鏡面4mであり、内壁面の一部に切り欠き4kまたは孔4aが形成され、入射したレーザビーム8を複数回反射させて、光ビームに対する音波の変調が複数回行われるようにしたものである。ここで、以下の説明では円筒ミラー4には切り欠き4kが形成されたものとする。円筒ミラー4は、その内側の音響信号検出フィールド9に入射したレーザビーム8が鏡面4mで複数回反射して星形多角形の光路を形成するように配置されている。すなわち、レーザ光発生部2から出力されたレーザビーム8と、鏡面4mに内接する円(図1(A),(C)に点線で図示)とレーザビーム8の交点における法線と、のなす入射角∠Aが所定の角度になるように配置されている。これにより、鏡面4m上におけるレーザビーム8の各反射点では、鏡面4m上の反射点における法線に対して入射角∠Aで入射する。
【0017】
図1には、円筒ミラー4への入射角∠Aが6度の場合を示している。また、光マイクロフォン1では、図1(B)に示すように、レーザビーム8の光路はほぼ同一平面上に形成される。なお、以下の説明では、このレーザビーム8の光路が形成された平面をXY平面と称し、このXY平面に垂直な軸をZ軸と称する。
【0018】
また、図1(C)に示すように、円筒ミラー4に代えて、開口面が多角形で内壁面が鏡面であり、一部に切り欠き14kまたは孔14aが形成された多角柱ミラー14を使用することも可能である。検出系レンズ部5は、円筒ミラー4で反射を繰り返して出射されたレーザビーム8を集光して、光電変換部6を構成する非図示の検出素子上に収束させる。光電変換部6は、検出系レンズ部5によって非図示の検出素子上に収束されたレーザビーム8の変調量を検出し、その変調量に応じた電気信号を出力する。
【0019】
次に、光マイクロフォン1の動作について説明する。周知のように、音波は空気の密度の振動成分であり、音波が伝搬している空間ではその疎密の程度に応じて空気の光学屈折率に大小の分布が生じ、この分布が音波の伝搬とともに移動する。そのため、音波が伝搬している空間にレーザビームを通過させると、その通過点における屈折率の傾きに応じてレーザビームが変調され、上記屈折率の分布の移動に伴って変調量が変化するため、このレーザビームは、音波に相関した変調を受ける。
【0020】
光マイクロフォン1は、レーザ光発生部2からレーザ光7を出射して、光源系レンズ部3でこのレーザ光7をレーザビーム(平行光)8に変換し、円筒ミラー4によって音響信号検出フィールド9内に星形多角形状の光路を形成するように複数回反射させる。これにより、音響信号検出フィールド9内においてレーザビーム8に対して音波12による変調を、直線光路に対するの場合の概ね反射回数倍与える。そして、変調されたレーザビーム8を検出系レンズ部5を介して光電変換部6に導き、空気の屈折率の傾きに応じたレーザビーム8の変調量を検出し、この変調量に応じた電気信号を出力する。
【0021】
また、円筒ミラー4内の音響信号検出フィールド9において、その中心の領域はレーザビーム8が通過しないため、音響信号検出感度を持たない領域(以下、中心領域10と称する。)となり、そのすぐ外周にはこの音響信号検出感度を持たない中心領域10を取り囲むように、複数の光路が集中した(交差した)光路密度が高く音響信号検出感度の高い領域がリング状に形成される(以下、リング状領域11と称する。)。このように、音響信号検出フィールド9内における音響信号検出感度は、一様でない感度分布となり、音源13から出力された音波12によるレーザビーム8の変調はリング状領域11を中心に行われる。
【0022】
したがって、音波12の検出領域を限られた空間にすることができ、また、音波12を検出する領域である音響信号検出フィールド9を拡大させることなく、レーザビーム8に対する音波12の作用回数を効率的に増加することが可能となり、限られた空間における音波12の検出感度を効果的に高めることができる。
【0023】
次に、円筒ミラーのレーザビームの入射角について説明する。図2は、円筒ミラー内に形成した星形多角形の形状の光路を示す上面図であり、(A)は入射角∠Aが12度の場合、(B)は入射角∠Aが24度の場合、(C)入射角∠Aが48度の場合である。
【0024】
前記のように、円筒ミラー4への入射角∠Aは、円筒ミラー4の鏡面4mに内接する円とレーザビーム8の交点における法線と、レーザビーム8と、のなす角と定義する。図2に示すように、レーザビーム8の入射角に応じて、音響信号検出フィールド9内に形成されるレーザビーム8の星形多角形の形状の光路パターンが変化し、光路密度の高い領域であるリング状領域11の径が変化する。また、このリング状領域11の径が変化することで、音波(音響信号)12の検出指向性を変化させることが可能となる。
【0025】
例えば、図2(A)に示すように、音響信号検出フィールド9の中央付近に光路が集中するように入射角を設定した場合には、中央付近に音響信号検出感度が高いリング状の領域11が形成されて周辺領域の検出感度は低くなる。したがって、光マイクロフォン1では、音響信号検出フィールド9の中央付近と周辺部とに異なった位相の音波が印加された場合にも抑圧効果が顕著とならず、8の字状の音響信号検出感度を持つ双指向性に近い光マイクロフォンとなる。
【0026】
また、図2(B),(C)に示すように、音響信号検出フィールド9の周辺部に光路が集中するように入射角を設定した場合には、周辺部に音響信号検出感度が高いリング状の領域11が形成される。この場合、音響信号検出フィールド9の中心において星形多角形の形状を成すレーザビーム8の光路面と垂直な軸上に音源13があるときには、音波12は検出感度の高いリング状の領域11のどの部分でも位相が同一となるので、抑圧効果が発生しない。一方、前記の垂直な軸から離れた位置に音源13がある場合には、検出感度の高いリング状の領域11では位置によって位相が異なる音波12によって変調されるため、抑圧効果により音響信号検出感度が低下し、前記の軸の双方向に狭指向性を持つ光マイクロフォンとなる。このように、光マイクロフォン1では、レーザビーム8の円筒ミラー4への入射角を変更することで、音波の検出指向性を変えることができる。
【0027】
[第1実施形態]
図3は本発明の第1実施形態に係る光マイクロフォンの円筒ミラーの概略の構成図であり、(A)は正面図、(B),(D)は側面図、(C),(E)は上面図である。また、図3(B),(C)は、一例として、円筒ミラー4に対するレーザビーム8の入射角∠Aを6度に設定した場合を示し、図3(D),(E)は、円筒ミラー4に対するレーザビーム8の入射角∠Aを48度に設定した場合を示している。なお、図3に示す光マイクロフォン1aは、図1に示した光マイクロフォン1とほぼ同様の構成であるため、異なる部分についてのみ詳細を説明する。また、第1実施形態における以下の説明では、このレーザビーム8の星形多角形の形状の光路が形成された平面をXY平面と称し、このXY平面に垂直な軸をZ軸と称する。また、図3において、入射角とは、鏡面4m上のレーザビーム8の反射点における鏡面4mの法線とレーザビーム8との成す角である。
【0028】
光マイクロフォン1aは図3に示すように、円筒ミラー4の鏡面の内壁面4mの一部を、レーザ光発生部2からのレーザービーム8を円筒ミラー4の内壁面に導き、複数回反射及び交差させて星形多角形の形状の光路を形成するように、円筒ミラー4の軸(図3におけるZ軸)に対して所定の角度∠Cで傾斜させた平面ミラー(小反射面)16に置き換えて、その角度に応じてレーザ光発生部2及び光電変換部6と円筒ミラー4との位置関係を変更可能とした構成となっている。また、本構成によれば円筒ミラー4の壁面に光透過部を設けることなく、音響信号検出フィールド9にレーザビーム8を導いて星形多角形の形状の光路を形成することが可能となる。
【0029】
∠Cは機構設計に応じて任意の値を取り得るが、図3においては∠Cを45度とし、XY平面上の星形多角形の形状の光路をZ軸方向から入射及び出射させる例を示している。
【0030】
レーザビーム8の入射角∠Aは、レーザビーム8によってXY平面上に星形多角形の形状の光路が形成されて、このレーザビーム8の入射点と出射点とが一致する角度に設定する。例えば∠Cが45度の場合には、レーザビーム8の入射角∠Aを6度、12度、24度、48度などの角度に設定することで、第1実施形態の光マイクロフォン1aでは、レーザビーム8が平面ミラー16の概ね一点16pで反射して入出射するため、平面ミラー16は、レーザビーム8の径に対して多少の余裕を持つ程度の小さなサイズで良いことになる。
【0031】
平面ミラー16の大きさは、星形多角形の形状の光路の16pの両隣の反射点に影響を及ぼさないようにするため、平面ミラーのY軸方向の幅は反射点の間隔と同程度に設定する。
【0032】
したがって、光マイクロフォン1aでは、円筒ミラー4の形状は単純な円筒形状ではなくなるが、平面ミラー16は小型であるため、音響信号検出フィールド9を通過する音波に対してほとんど影響を及ぼすことがなく、また、円筒ミラー4の壁面から音波が漏れ出すこともないので、音波の検出感度の低下や検出精度の低下を招くことなく、、機構設計の自由度を高めることができ、光マイクロフォン全体を小型化することや、いわゆるペンシルマイク形の小型の光マイクロフォンを設計することが可能となる。
【0033】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る光マイクロフォンの概略の構成図であり、(A)は正面図、(B),(D)は側面図、(C),(E)は上面図であり、∠C=45度の場合を示している。また、図4(B),(C)には、一例として、円筒ミラー4に対するレーザビーム8の入射角∠Aを6度に設定した場合を示し、図4(D),(E)には、円筒ミラー4に対するレーザビーム8の入射角∠Aを48度に設定した場合を示している。なお、図4に示す光マイクロフォン1bは、図3に示した光マイクロフォン1aとほぼ同様の構成であるため、異なる部分についてのみ詳細を説明する。また、第2実施形態における以下の説明では、レーザビーム8の星形多角形状の光路が形成された平面をXY平面と称し、このXY平面に垂直な軸をZ軸と称する。また、図4において、入射角とは、鏡面4m上のレーザビーム8の反射点における鏡面4mの法線とレーザビーム8との成す角である。
【0034】
図4に示すように、光マイクロフォン1bは、図3に示した光マイクロフォン1aの円筒ミラー4の開口面4f側に遮蔽板17を設けた構成である。遮蔽板17には、レーザビーム8が透過して空気が流通しない非通気性の光透過部18が形成されている。この光透過部18は、遮蔽板17に設けた孔に、ガラスや樹脂などの光透過性の部材を充填したり、遮蔽板17に切り欠きまたは孔を設けて、この切り欠きまたは孔の形に成形した光透過性の部材を嵌め込むように構成することも、遮蔽板17全体を光透過性の部材で形成するように構成することも可能である。
【0035】
遮蔽板17に設ける光透過部18は、例えば図4(E)に示すように、レーザビーム8の最大の入射角をaとしたときに、2aとなる狭角(中心角)の間を光透過性の部材で形成すると良い。
【0036】
また、遮蔽板17の光透過部18の表面には、表面反射による透過率の低下を防止する誘電体多層膜をコーティングすることが望ましい。これにより、光透過部18に入射するレーザビーム8の反射を防止することができる。
【0037】
ここで、図4には、円筒ミラー4の背面側に気密性を持った遮蔽板17を設けた実施形態を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、円筒ミラー4が筐体に納められた構成の場合、音響信号検出フィールド9の背面の空間と、筐体内の電子部品などが設置された空間と、の間に、光透過性を有したケースを設けることで、遮蔽板17を設けるのと同様の効果が得られる。また、円筒ミラー4の背面に設ける遮蔽板17やケースは、完全な気密性を有するものに限定されず、音波導入のために孔やスリットを設けたものであっても良い。
【0038】
このように、音響信号検出フィールド9の背面空間に光透過性を持った遮蔽板やケースを設けて音響インピーダンスが最適となるように設計することで、光路設計の自由度が高く、背面空間の音響インピーダンスの不均一性を解消した高性能な光マイクロフォンを得ることができる。また、背面空間へ外部からの音波を導入することで、指向性の制御を行う事も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る光マイクロフォンの基本構成を示す構成図である。
【図2】円筒ミラー内に形成した星形多角形の光路を示す上面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る光マイクロフォンの概略の構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る光マイクロフォンの概略の構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1,1a,1b,1c−光マイクロフォン 2−レーザ光発生部
3−光源系レンズ部 4−円筒ミラー 5−検出系レンズ部
6−光電変換部 7−レーザ光 8−レーザビーム
9−音響信号検出フィールド 10−中心領域 11−リング状領域
12−音波 13−音源 15,18−光透過部 16−平面ミラー
17−カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出力する光ビーム出力手段と、
前記光ビーム出力手段から出力された光ビームを、複数回反射及び交差させて光路を星形多角形に形成し、この光路を含む領域である音響信号検出フィールドを通過する音波で前記星形多角形の形状の光ビームを変調する光路形成手段と、
前記光路形成手段から出射された前記光ビームの変調量を検出し、その変調量に応じた電気信号を出力する光ビーム検出手段と、
を備え、
前記光路形成手段は、その内壁面が鏡面の筒型構造で、該内壁面と、前記星形多角形の形状の光路が形成される平面と、の成す角が垂直であり、
前記内壁面はその一部に、前記光ビーム出力手段から出力された光ビームを、星形多角形の形状の光路が前記音響信号検出フィールド内に形成されるように、入射させる小反射面を備え、
前記光路形成手段に入射する光ビームと、前記光路形成手段から出射する光ビームと、が前記小反射面の略同一点で反射されて入射及び出射し、音響信号検出フィールド内の星形多角形の形状の光路形成面と、前記光ビーム出力手段及び光ビーム検出手段が異なる平面上に配置されることを特徴とする光マイクロフォン。
【請求項2】
前記光路形成手段の音源方向と反対側の開口部を密閉状態または半密閉状態にする遮蔽手段を備えた請求項1に記載の光マイクロフォン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−50099(P2006−50099A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225860(P2004−225860)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】