説明

光モジュール、その製造方法及びスリーブ

【目的】 部品点数が少なく、簡単に且つ高精度に組み立てることのできる光モジュールを提供すること。
【構成】 本発明による光モジュールは、パッケージ本体12及びカバー14から成るプラスチック製のパッケージ10と、パッケージ本体に一体的に形成されたスリーブ30,31と、パッケージ本体内で保持される回路基板20と、回路基板の所定位置に固定された光作動素子16,18と、パッケージ本体の内面に一体的に形成され、回路基板の縁に接することで回路基板の位置決めを行う3つの突起50,51,52と、これらの突起に回路基板の縁を押し付けるようパッケージの内面に一体的に形成されたばね手段54,55,56とを備える。スリーブ及びパッケージ本体がプラスチック成形により一体化されているので、部品数が少なく、よって組立工程も簡略化される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光を情報伝達媒体として使用する光データリンクや光ローカルエリアネットワーク(LAN)等の光通信システムにおいて用いられる光モジュールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】光通信システムにおいて用いられる光モジュールには、電気光変換素子(発光素子)としてLEDや半導体レーザ等の光作動素子を用いた送信用モジュールと、光電気変換素子(受光素子)としてピンフォトダイオード等の光作動素子を用いた受信用モジュールとがある。このような光モジュールは、一般的に、発光素子又は受光素子等の光作動素子と、この光作動素子に電気的に接続される回路基板上の電子部品等と、レンズ系と、光ファイバの端部が挿入されるスリーブとを備えている。光ファイバが数10μm径のファイバコアを有するものである場合、光作動素子、レンズ系及びスリーブを高精度に組み立てる必要があるため、従来、例えば図1R>1に示すような光モジュールが用いられていた。
【0003】図1に示す光モジュールは、円筒状の保持体1を備えている。この保持体1は、ステンレス鋼等の金属から作られており、その一端側の内部には集光用のレンズ(図示しない)が配置され、他端側は光ファイバの端部のフェルール(図示しない)を受け入れるスリーブとして機能するように構成されている。また、この保持体1には、光作動素子2が接着剤等で固定され、この光作動素子2は、保持体1に接続されるフェルール及びレンズと光軸が一致するようにして配置される。
【0004】このようにして光作動素子2が固定された保持体1は、回路基板3と共にセラミック製のパッケージ本体4により支持され、光作動素子2の端子は、回路基板3上に取り付けられたベアチップIC等の電子部品5とワイヤボンディング(図示しない)により接続される。
【0005】また、パッケージ本体4は、その内側に立設されたインナリードピン6と、外側に立設され且つインナリードピン6に電気的に接続されたアウタリードピン7とを備えている。インナリードピン6は回路基板3上の端子にワイヤボンディングによって電気的に接続され、配線パターンと電子部品5とはリッド8により封止される。最後に、カバー9をパッケージ本体4に固定することで、光モジュールが完成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したような従来の光モジュールにおいては、光作動素子2が金属筒から成る保持体1に保持されており、しかも、この保持体1は、回路基板3が取り付けられるパッケージ本体4やカバー9とは別構成のため、部品点数が多く、コスト低減、工程数削減による生産性向上の面で不利という問題があった。
【0007】また、図示しないが、パッケージ本体及びカバーに代えてリードフレームを使用し、このリードフレームに回路基板と光作動素子を取り付け、これらをプラスチックで一体的にモールドする光モジュールも知られている(実開平2−126107号)。しかし、この場合も光作動素子と回路基板は図1に示すものと同様に別個の部材であり、よって、図1の場合と同様な問題があった。
【0008】本発明の目的は、かかる問題点を解決するために、金属製の円筒形保持体を用いることなく、簡単に且つ高精度に組み立てることのできる光モジュールを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明では、光モジュールの構成部品を可能な限りプラスチックから一体成形により形成することとしている。ここで、発光素子や受光素子等の光作動素子と、レンズと、スリーブとを高精度に配置することがプラスチック成形品で可能かどうかが問題となる。
【0010】そこで、本発明者は図2に基づき検討した結果、石英光ファイバ(グレーデッドインデックスタイプ、コア径62.5μm)に光を結合させるのに必要な精度は、光軸に垂直な面内で±15μm、光軸に平行な方向に±50μmであれば十分なことを見いだした。そして、この精度であればプラスチック成形品の寸法精度から充分実現可能であることを確認した。
【0011】図2は、石英光ファイバと光作動素子とが所定の間隔を離して配設されている場合における光軸ずれと光パワーとの関係を示すグラフである。このグラフは次のようにして得たものである。まず、光ファイバと光作動素子との間に2個のレンズを配設し、光ファイバの端面から遠い側のレンズを第1のレンズ、近い側を第2のレンズとした。そして、第1のレンズを固定し且つ第2のレンズを光軸方向において静止させた状態で、第2のレンズを光軸方向に対して垂直な面内で移動させた場合の、光ファイバに結合された光の光パワーの変動を調べたものである。図2において、L1は第1レンズと第2レンズとの間隔を示し、L2は第2レンズと光ファイバとの間隔を示したものであり、図2は、第2レンズの位置を光軸の方向に変更することにより得られた5種類の配列についての光パワーの変動関係を示したものである。上述したように、本発明者は、図2において△印と◇印で示したグラフから、光軸と垂直な面内での寸法精度±15μmと、光軸と平行な方向への寸法精度±50μmが許容範囲であることを見いだした。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0012】本発明による光モジュールは、パッケージ本体及びこのパッケージ本体の開放部分を閉鎖するカバーから成り、光ファイバが接続されたコネクタプラグを受け入れて保持するプラスチック製のパッケージと、プラスチック成形により前記パッケージ本体に一体的に形成され、前記パッケージ本体内で前記コネクタプラグが保持された場合に前記光ファイバの端部を受け入れるようになっているスリーブと、前記パッケージ本体の前記開放部分内で保持される回路基板と、前記回路基板の所定位置に固定された光作動素子と、前記パッケージ本体の内面に一体的に形成され、前記回路基板の縁に接することで前記回路基板の位置決めを行う3つの突起と、前記突起に前記回路基板の縁を押し付けるよう、前記パッケージの内面に一体的に形成されたばね手段と、前記スリーブ内に同軸に配置された集光用のレンズとを備えることを特徴としている。
【0013】また、本発明によれば、上記構成の光モジュールを製造する方法において、前記3つの突起と実質的に同一の配列で3つの位置決め用ピンが表面上に立設された基板載置台を用意し、前記基板載置台の前記表面上に前記回路基板を載置し、前記ピンの全てに前記回路基板の縁が接するように前記回路基板を押圧し、前記ピンの接触点を基準点として、前記基準点に関して予め決められた位置に前記光作動素子を固定するステップを備えることを特徴としている。
【0014】
【作用】上記構成の光モジュールにおいては、スリーブ及びパッケージ本体がプラスチック成形により一体化されているので、部品数が少なく、よって組立工程も簡略化される。また、回路基板は突起により、常に一定の基準点にて支持される。よって、この基準点に関する所定位置に光作動素子を配置すれば、光作動素子とスリーブ、レンズは同軸に配置される。
【0015】また、回路基板上に光作動素子を配置する際、前記突起と同配列に配設された位置決め用ピンを有する基板載置台を用いることにより、回路基板がパッケージ本体内で突起に接する位置、即ち基準点を容易に特定することができる。その結果として、スリーブ及びレンズに整列される位置に光作動素子を配置することができる。
【0016】
【実施例】図3〜図7は、本発明に従った光モジュールの一実施例を示す分解斜視図である。この光モジュールはトランシーバタイプであり、送信用モジュールと受信用モジュールを一体化したものである。図3において、符号10は、プラスチック成形により形成されたパッケージを全体的に示している。このパッケージ10は、パッケージ本体12とカバー14とから成り、接続されるべき送信用及び受信用の光ファイバ(図示しない)の端部に設けられたコネクタプラグ(図示しない)を受ける光コネクタ・レセプタクルとして機能する。また、パッケージ10内には、以下で詳細に説明するが、IC(図示しない)、発光素子16及び受光素子18等が固着された回路基板20が取り付けられるようになっている。
【0017】パッケージ本体12は直方体形状の箱体であり、互いに平行に配置された1対の側板22,23と、これらの側板22,23の上縁間及び下縁間にそれぞれに設けられ互いに平行に配置された上板24及び底板26とを備えている。図7から分かるように、側板22,23及び上板24は実質的に同じ長さであるが、底板26は側板22,23及び上板24よりも短く、その一端は側板22,23及び上板24の同側の端部から一定の距離を置いて配置されている。底板26の前記端部からは横板28が側板22,23間を上板24まで垂直に延びており、この横板28によりパッケージ本体12の一端部が閉鎖されている。また、パッケージ本体12の他端は開放されており、この開放端部に光ファイバのコネクタプラグが挿入されるようになっている。尚、以下、この開放端部側を便宜的に前側と称することとする。これらの側板22,23、上板24、底板26及び横板28は適当なプラスチック材料により一体成形されている。
【0018】パッケージ本体12の内部には、光ファイバの端部のフェルール(図示しない)を受け入れて後述の発光素子16又は受光素子18と整列させるための1対のスリーブ30,31が、横方向に所定の間隔を置いて互いに平行に配置され、横板28の前面から前方(パッケージ本体12の開放端部側)に延びている。このスリーブ30,31は、横板28等と同一のプラスチック材料から成り、横板28上に一体的に形成されている。また、各スリーブ30,31の中空部分に対向する横板28の部分には貫通孔32,33が形成され、各スリーブ30,31の中空部分と共に、パッケージ本体12の前後を連通する連続的な穴を形成している。
【0019】光ファイバのコネクタプラグがパッケージ本体12内に挿入され保持された場合、各スリーブ30,31には対応の光ファイバのフェルールが挿入され、スリーブ30,31の内面により所望の位置にて支持される。本発明では、スリーブ30,31は金属製ではなく、プラスチック製であるので、コネクタプラグの着脱により、金属製又はセラミック製のフェルールと接するスリーブ30,31の内面が摩耗する可能性がある。特に、スリーブ30,31はフェルールの径方向の位置を決定するために、内面を高精度に形成しなければならないので、スリーブ30,31とフェルールとの間の摩擦は大きくなる。そこで、この実施例では、スリーブ30,31の内面の摩耗を防止又は低減するために、図8に明示するように、スリーブ30,31の内面、特にフェルールが接する部分に、軸線方向に延びる複数の溝34を周方向に間隔をおいて形成することとした。これにより、フェルールとの接触面積を少なくし、摺動性が向上し、接触面の摩耗が低減される。また、フェルールが円滑にスリーブ30,31内に挿入されるように、スリーブの前端部の内面に先広がりのテーパ部36を設けるのが好ましい。
【0020】各スリーブ30,31の後端部の内部(フェルールの先端が達しない部分)の適所には、レンズ38,39が配設されている。各レンズ38,39は、その光軸が対応のスリーブ30,31の軸線と一致するように位置決めされている。発光素子16に対向するスリーブ30に取り付けられるレンズ38は、発光素子16からの光を対応のフェルールの端面の中心部、即ちファイバコアの端面に集光させるためのものであり、他方のスリーブ31に取り付けられるレンズ39は、受信用光ファイバの端面から発せられた光を受光素子18の受光面に集光させるためのものである。
【0021】パッケージ本体12の後端部側の凹部(側板22,23の内面、上板24の内面及び横板28の後面により囲まれる部分)40には、ほぼ矩形の回路基板20が配置されるようになっている。この実施例における回路基板20はセラミックやエポキシ樹脂等から成り、その表面には配線パターン(図示しない)が形成されると共に、IC等の電子部品(図示しない)が取り付けられている。回路基板20上の回路は、図3に示すように、回路基板20の下縁から延びる複数のリードピン42により、他の外部回路と電気的に接続されるようになっている。
【0022】また、この実施例では、回路基板20の表面に光作動素子として半導体レーザ又は発光ダイオード等の発光素子16及び受光素子18が取り付けられている。発光素子16及び受光素子18の取付位置は、回路基板20をパッケージ本体12内の所定位置に配置した場合にその発光面及び受光面の中心が対応のスリーブ30,31の中心軸線に実質的に一致する位置である。尚、周知の如く、発光素子16と光ファイバとの間の光結合効率を高めるために、発光素子16の発光面の中心にマイクロボールレンズ(図示しない)を配置し、透明な接着剤等により固定するのが好適である。また、モノリシックレンズを備えた発光素子を用いることも好ましい。
【0023】回路基板20の表面には、更に、プラスチック製の透明リッド44が接着材により固着されており、この透明リッド44により基板表面の配線パターン、電子部品及び光作動素子16,18等が雰囲気から遮断される。透明リッド44は、回路基板20よりも若干小さな矩形形状をなす平板部分46と、その周縁に一体的に設けられ前記平板部分46に対して垂直に延びる周部分48とを有している。回路基板20の表面には透明リッド44の周部分48の端面が接着され、従って、透明リッド44の平板部分46と回路基板20の表面との間には空間が形成され、この空間に光作動素子16,18等が配置される。
【0024】上述した通り、回路基板20はパッケージ本体12の後端部側の凹部40に配置される。その際、回路基板20はパッケージ本体12の内面に設けられた3つの位置決め用の突起50,51,52により正確に位置決めがされる。これらの突起50,51,52は、図6から理解されるように、側板23の内面の後端部側部分に1つと、上板24の内面(下面)の後端部側部分に横方向に所定の間隔を置いて2つ設けられている。各突起50,51,52は断面が略半円形であり、パッケージ本体12の長手方向に沿って延びている。回路基板20は、その縁をこれらの突起50,51,52の全てに押し当てた状態で配置されることにより、位置決めされる。より詳細に述べるならば、矩形基板20の一方の長辺、即ち上縁をパッケージ本体12の上板24上の突起51,52に接触させると共に、基板20の一方の短辺、即ち図3で右側の側縁を側板23上の突起50に接触させることで、回路基板20は3点支持され、互いに直交する2軸方向及び回転方向の移動が制限される。
【0025】また、パッケージ本体12の側板22,23の内面における後端部側部分には、回路基板20を突起50,51,52に押し当てるためのばね54,55,56が一体的に形成されている。図6に示すように、突起50が設けられている側板23の内面には、横板28に隣接する位置に、回路基板20を上方に押圧するばね54が形成されている。また、他方の側板22の内面には、同じく横板28に隣接する位置に、回路基板20を上方に押圧するばね55と、回路基板20を反対側の側板23に向かって押圧するばね56とが設けられている。ばね54,55,56の形状としては種々考えられるが、この実施例では一端が側板22,23に一体的に固定されたアーチ状の突起片となっている。これらのばね54,55,56は、透明リッド44の平板部分46の表面を横板28の後面に接するようにして回路基板20を所定位置に配置した時、透明リッド44の周部分48の外面に接してこれを押圧する。この際、ばね54,55,56は回路基板20を直接押圧することはないが、透明リッド44は回路基板20に固着されているので、各ばね54,55,56の押圧力は、透明リッド44を介して回路基板20に作用し、回路基板20を突起50,51,52に押し付けることができる。このようにばね54,55,56により突起50,51,52に押し付けられた回路基板20は、当該回路基板20の表面により定められる面内で不動となる。この際、突起50,51,52が接触する回路基板20の位置は常に一定であるので、その接触点を基準点として予め定めた回路基板20上の所定位置に発光素子16及び受光素子18を配置すれば、基板装着時、常に発光素子16及び受光素子18はそれぞれ対応のスリーブ30,31の中心軸線上に配置されることになる。
【0026】前述したように、本発明による光モジュールのパッケージ10はカバー14を備えている。このカバー14は、パッケージ本体12の後端部を閉じて回路基板20を保持するためのものである。この実施例では、あり継ぎによりカバー14はパッケージ本体12の後端部に取り付けられるようになっている。即ち、パッケージ本体12の側板22,23の後端面に形成された鳩尾形の突起58,59を、カバー14の前面の対応位置に形成されたあり溝60,61に係合させることで、両者は結合される。
【0027】また、カバー14の前面には、少なくとも1個、この実施例では2個のばね62が一体的に形成されており、カバー14をパッケージ本体12に取り付けた場合に、このばね62が回路基板20の裏面を前方に押圧する。その結果、回路基板20は前方に押され、透明リッド44の平板部分46の前面が横板28の後面に密着し、回路基板20及び後板28が実質的に互いに平行に配置される。これによって、回路基板20が側板22,23のばね54,55,56から脱落するのが防止されると共に、光軸ずれが防止される。この際、回路基板20のリードピン42はカバー14とパッケージ本体12の底板26との間の間隙から外部に延び、外部回路との接続を可能ならしめている。
【0028】このように、図示実施例の光モジュールを用いた場合には、回路基板20がパッケージ本体12に対して正確に位置決めされるため、回路基板20上の発光素子16及び受光素子18はそれぞれ、対応のスリーブ30,31及びその内部のレンズ38,39と同軸に配置されることとなる。
【0029】以上から明らかであろうが、本発明による光モジュールは、発光素子16、受光素子18、電子部品及び透明リッド44が固定された回路基板20をパッケージ本体12内の所定位置に配置してばね54,55,56により保持し、カバー14を取り付けるだけで、簡単に製造することが可能である。そして、実際に組み立てられた光モジュールの寸法精度を調べた結果、スリーブとレンズと光作動素子との寸法精度は、光軸に垂直な面内で±15μm以下、光軸に平行な方向で±50μm以下であることが確認された。これは、石英ファイバ(グレーデッドインデックスタイプ、コア径62.5μm)と光作動素子とを結合させる場合の光結合効率の許容範囲内となっている。
【0030】ところで、回路基板20がセラミック製である場合、大きなセラミックプレートを所定の線に沿って割ることで回路基板20を形成する。このようにして得られた回路基板20の周縁は、研磨処理されないのが一般的である。従って、回路基板20の寸法は製品毎に区々であり、各辺も完全な直線とはならない。
【0031】このため、回路基板20上に発光素子16及び受光素子18を所定の位置に正確に取り付けることが困難となる。回路基板20上の発光素子16及び受光素子18の取付位置が不正確である場合には、回路基板20をパッケージ本体12内の所定位置に配置したとしても、発光素子16及び受光素子18は対応のスリーブ30,31に整列しないことは勿論である。
【0032】そこで、本発明においては、回路基板20上に発光素子16及び受光素子18を取り付ける場合には、図9に示すような装置を用いて行うこととしている。図9の光作動素子取付装置は、回路基板20が載置される平坦な上面を有する基板載置台64から成っている。基板載置台64の上面には、パッケージ本体12内の位置決め用突起50,51,52と実質的に同一の配列で、円柱形のピン70,71,72が立設されている。より詳細には、図6の点50a,51a,52aと図9の点70a,71a,72aがそれぞれ一致するように、ピン70,71,72が配置されている。従って、これらのピン70,71,72に回路基板20の長辺20a及び短辺20bが接するように回路基板20を基板載置台64上に載置した場合、ピン70,71,72の接触点は位置決め用突起50,51,52の接触点と一致することとなる。よって、この接触点を基準点とし、この基準点に関して前もって定めた位置にて発光素子16及び受光素子18を回路基板20上に配置すれば、回路基板20をパッケージ本体12に装着した際、回路基板20の形状に拘らず、発光素子16及び受光素子18はパッケージ本体12内の所定位置に配置されることになる。
【0033】実際に発光素子16及び受光素子18を回路基板20に取り付ける場合には、まず、回路基板20を基板載置台64上に載置し、その後、図9の矢印74,75,76で示すように力を回路基板20に作用させて回路基板20を基板載置台64上で保持する。そして、ピン70,71,72の接触点を基準点とした所定位置に発光素子16及び受光素子18を固定する。尚、発光素子16及び受光素子18を固定する場合には、先端にコレットが取り付けられたロボットアーム等を用いるのが好適である。
【0034】また、回路基板20の寸法精度が高い場合には、上述したような光作動素子取付装置を用いなくとも、発光素子16及び受光素子18の取付位置を特定することは容易である。従って、かかる場合には、予め回路基板20上の素子取付位置に有底穴(図示しない)を形成し、その穴に光作動素子16,18を嵌合させることで、光作動素子16,18を正確に位置決めすることが可能となる。この有底穴の内周面及び底面には、グランド電極や電気信号の入出力のためのリード電極をメタライズ等により設けてもよい。また、有底穴を設けずに、メタライズ部分を形成し、そこを光作動素子16,18の取付位置としてもよい。
【0035】以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はこの実施例に限られないことは言うまでもない。例えば、上記実施例の光モジュールは、送受信可能なモジュールであり、発光素子16及び受光素子18を1枚の回路基板20上に配置するようになっているが、送信又は受信のいずれか一方の機能しか有しない光モジュールにも本発明を適用することは可能である。
【0036】また、上記実施例では、ばね54,55,56は透明リッド44を介して回路基板20を押圧するようになっているが、ばねが回路基板20を直接押圧するようにしてもよい。
【0037】更に、上記実施例では、回路基板20を位置決め用突起50,51,52に押圧するためのばね54,55,56がパッケージ本体12に形成されていたが、図10及び図11に示す光モジュールのように、パッケージを構成する他の部材にそのようなばねを設けてもよい。図10及び図11の光モジュールは、パッケージ本体12´の中央部に回路基板20´を配置する空間部80が形成されており(図12参照)、カバー14´を回路基板20´の下側から取り付ける構成となっている(図13参照)。このような構成において、図13に示すように、パッケージ本体12´の側板23´上の位置決め用突起50´に回路基板20´を押し付けるためのばね56´は、先の実施例と同様に、側板22´の内面上に設けられているが、上板24の下面の位置決め用突起51´,52´に回路基板20´を押し付けるためのばね55´,56´はカバー14´に設けられている。この場合、カバー装着と同時に回路基板20´の突起50´,51´,52´への押付けが完了するので、光モジュールの製造は更に容易化される。
【0038】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、スリーブ及びパッケージ本体をプラスチックにより一体的に形成すると共に、光作動素子を予め回路基板上に固定することとしているので、従来に比べて少ない工程で光モジュールを組み立てることができる。従って、光モジュールを従来よりも低価格で提供できる。また、パッケージをプラスチック製とすることで、量産が可能である。
【0039】また、回路基板を3点支持する構成としたので、種々の形状ないしは寸法の回路基板にも対応可能であり、常に一定の基準点にて回路基板を支持することができる。よって、この基準点に対する所定位置に光作動素子を配置すれば、光作動素子とスリーブ、レンズを同軸に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の光モジュールを示す分解斜視図である。
【図2】光パワーの光軸ずれによる変動を示すグラフである。
【図3】本発明の好適な実施例に係る光モジュールを示す分解斜視図である。
【図4】図3に示す光モジュールを分解して示す平面図であり、その一部を破断して示す図である。
【図5】図4のV−V線に沿って見た場合の光モジュールの正面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿って見た場合の光モジュールのパッケージ本体の背面図である。
【図7】図4のVII −VII 線に沿っての断面図である。
【図8】スリーブの拡大斜視図である。
【図9】回路基板への光作動素子の配置方法を示す斜視図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る光モジュールの斜視図である。
【図11】図10の光モジュールを下面側から見た場合の斜視図である。
【図12】図10の光モジュールのパッケージ本体と回路基板を示す斜視図である。
【図13】図10の光モジュールの組立方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
10…パッケージ、12,12´…パッケージ本体、14,14´…カバー、16…発光素子、18…受光素子、20,20´…回路基板、30,31…スリーブ、34…溝、36…テーパ部、38,39…レンズ、40…凹部、44…透明リッド、50,50´,51,51´,52,52´…位置決め用突起、54,54´,55,55´,56,56´…ばね、64…基板載置台、70,71,72…ピン、80…空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パッケージ本体及び該パッケージ本体の開放部分を閉鎖するカバーから成り、光ファイバが接続されたコネクタプラグを受け入れて保持するプラスチック製のパッケージと、プラスチック成形により前記パッケージ本体に一体的に形成され、前記パッケージ本体内で前記コネクタプラグが保持された場合に前記光ファイバの端部を受け入れるようになっているスリーブと、前記パッケージ本体の前記開放部分内で保持される回路基板と、前記回路基板の所定位置に固定された光作動素子と、前記パッケージ本体の内面に一体的に形成され、前記回路基板の縁に接することで前記回路基板の位置決めを行う3つの突起と、前記突起に前記回路基板の縁を押し付けるよう、前記パッケージの内面に一体的に形成されたばね手段と、前記スリーブ内に同軸に配置された集光用のレンズと、を備える光モジュール。
【請求項2】 前記回路基板が実質的に矩形形状をなし、前記突起の1つが前記回路基板の第1の縁に接し、前記突起の残り2つが前記第1の縁に隣接する前記回路基板の第2の縁に接するようになっている、請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】 前記パッケージ本体は直方体形状の箱体をなし、前記突起の1つが前記パッケージ本体の一方の側板の内面に形成され、前記突起の残り2つが前記パッケージ本体の上板の内面に形成されている、請求項2記載の光モジュール。
【請求項4】 前記ばね手段は、前記回路基板を各突起に向かって押圧する複数のばねから成る、請求項1記載の光モジュール。
【請求項5】 前記回路基板が実質的に矩形形状をなし、前記突起の1つが前記回路基板の第1の縁に接し、前記突起の残り2つが前記第1の縁に隣接する前記回路基板の第2の縁に接するようになっている場合において、前記ばね手段は、前記一方の側板に設けられた前記突起の1つに向かって前記回路基板を押圧するよう他方の側板の内面に一体的に形成されたばねと、前記上板に設けられた前記突起の残り2つのそれぞれに向かって前記回路基板を押圧するよう前記両側板の内面に一体的に形成されたばねとから成る、請求項1記載の光モジュール。
【請求項6】 前記カバーは、前記パッケージ本体内に配置された前記回路基板の裏面側から取り付けられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項7】 前記カバーは、前記パッケージ本体内に配置された前記回路基板の下側から取り付けられた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項8】 前記回路基板が実質的に矩形形状をなし、前記突起の1つが前記回路基板の第1の縁に接し、前記突起の残り2つが前記第1の縁に隣接する前記回路基板の第2の縁に接するようになっている場合において、前記ばね手段は、前記一方の側板に設けられた前記突起の1つに向かって前記回路基板を押圧するよう他方の側板の内面に一体的に形成されたばねと、前記上板に設けられた前記突起の残り2つのそれぞれに向かって前記回路基板を押圧するよう前記カバーに一体的に形成されたばねとから成る、請求項7記載の光モジュール。
【請求項9】 前記回路基板には、その上の電子回路及び前記光作動素子等を覆う透明リッドが固定されており、前記ばね手段は、前記透明リッドを介して前記回路基板に押圧力を作用させるようになっている、請求項1記載の光モジュール。
【請求項10】 前記光モジュールは送信用モジュールであり、前記光作動素子として発光素子を有している、請求項1記載の光モジュール。
【請求項11】 前記光モジュールは受信用モジュールであり、前記光作動素子として受光素子を有している、請求項1記載の光モジュール。
【請求項12】 前記光モジュールは送信及び受信用モジュールであり、前記光作動素子として発光素子及び受光素子を有している、請求項1記載の光モジュール。
【請求項13】 前記スリーブの内面には、長手方向に延びる複数の溝が周方向に間隔をおいて形成されている、請求項1記載の光モジュール。
【請求項14】 パッケージ本体及び該パッケージ本体の開放部分を閉鎖するカバーから成り、光ファイバが接続されたコネクタプラグを受け入れて保持するプラスチック製のパッケージと、前記パッケージ本体に一体的に形成され、前記パッケージ本体内で前記コネクタプラグが保持された場合に前記光ファイバの端部を受け入れるようになっているスリーブと、前記パッケージ本体の前記開放部分内で保持される回路基板と、前記回路基板の所定位置に固定された光作動素子と、前記パッケージ本体の内面に一体的に形成され、前記回路基板の縁に接することで前記基板の位置決めを行う3つの突起と、前記突起に前記回路基板の縁を押し付けるよう、前記パッケージの内面に一体的に形成されたばね手段と、を備える光モジュールを製造する方法において、前記3つの突起と実質的に同一の配列で3つの位置決め用ピンが表面上に立設された基板載置台を用意し、前記基板載置台の前記表面上に前記回路基板を載置し、前記ピンの全てに前記回路基板の縁が接するように前記回路基板を押圧し、前記ピンの接触点を基準点として、前記基準点に関して予め決められた位置に前記光作動素子を固定する、ことを備える光モジュールの製造方法。
【請求項15】 光コネクタのレセプタクルに設けられたスリーブにおいて、内面に長手方向に延びる複数の溝を周方向に間隔をおいて形成したことを特徴とするスリーブ。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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