説明

光モジュール

【課題】本発明の目的は、放射ノイズを十分に抑制することができる光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュールである光トランシーバは、光素子収容部を有する下筐体と、光素子収容部の開口を閉塞する上筐体と、下筐体と上筐体とを互いに回動自在に連結することで、光素子収容部と上筐体とを互いに離間自在とし、光素子収容部の開口を開放自在とする連結部Aと、下筐体と上筐体とに互いにスライドする方向の力を付加するスライド力付加部と、を備え、連結部Aは、下筐体に連設された軸部9と、上筐体に連設され、軸部9に回動自在に係合する軸受部10と、を有し、軸受部10には、スライド力付加部が付加した力によって軸部9を押圧し、下筐体と上筐体とを互いに押し付ける分力F1,F2を生じる押圧面Mが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発光素子や受光素子等の光素子を有し、光通信装置に取り付けられる光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光モジュールとしては、光素子収容部を有する下筐体と、光素子収容部の開口を閉塞する上筐体と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US Patent No.7,351,090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光モジュールでは、光素子収容部内で生じたノイズが、光素子収容部と上筐体との間の隙間を通り、下筐体及び上筐体の外に放射される。このため、光モジュールの放射ノイズを十分に抑制できない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、放射ノイズを十分に抑制することができる光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光モジュールは、光通信装置に取り付けられる光モジュールであって、光素子収容部を有する下筐体と、光素子収容部の開口を閉塞する上筐体と、下筐体と上筐体とを互いに回動自在に連結することで、光素子収容部と上筐体とを互いに離間自在とし、光素子収容部の開口を開放自在とする連結部と、下筐体と上筐体とに互いにスライドする方向の力を付加するスライド力付加手段と、を備え、連結部は、下筐体及び上筐体の一方の筐体に連設された軸部と、下筐体及び上筐体の他方の筐体に連設され、軸部に回動自在に係合する軸受部と、を有し、軸受部には、スライド力付加手段が付加した力によって軸部を押圧し、下筐体と上筐体とを互いに押し付ける分力を生じる押圧面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このような光モジュールでは、スライド力付加手段により、下筐体と上筐体とに互いにスライドする方向の力が付加されると、下筐体と上筐体との連結部において軸部が軸受部の押圧面から押圧され、下筐体と上筐体とを互いに押し付ける分力が生じる。このため、下筐体と上筐体とが互いに押し付けられ、光素子収容部と上筐体との隙間が小さくなる。従って、光モジュールの放射ノイズを十分に抑制することができる。
【0008】
好ましくは、押圧面は、平面である。この場合、寸法ばらつきにより、光モジュールの個体ごとに軸部と軸受部との相対位置がばらついても、押圧面の角度が安定し、下筐体と上筐体とを互いに押し付ける分力が安定する。このため、光素子収容部と上筐体との隙間をより確実に小さくすることができる。
【0009】
また、好ましくは、下筐体及び上筐体に外側から装着され、下筐体及び上筐体と光通信装置の光モジュール取付部とを互いに導通させる導通部材を更に備え、スライド力付加手段は、導通部材に設けられている。この場合、導通部材がスライド力付加手段を兼ねるために、光モジュールの部品点数を削減することができる。
【0010】
また、好ましくは、導通部材は、下筐体及び上筐体と光通信装置の光モジュール取付部との間に挟まれて弾性変形し、弾性変形の反力により、下筐体と上筐体とを互いに押し付けるフィンガー部を有する。この場合、下筐体と上筐体とを互いに押し付ける力が、連結部と、導通部材が装着された部分との二箇所で生じるため、光素子収容部と上筐体との隙間をより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光モジュールによれば、放射ノイズを十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る光トランシーバの斜視図である。
【図2】図1の光トランシーバの内部を示す斜視図である。
【図3】連結部の部分切欠斜視図である。
【図4】連結部の断面図である。
【図5】導通部材を外した光トランシーバの斜視図である。
【図6】光トランシーバに装着された導通部材の平面図である。
【図7】図6中のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】軸部と押圧面とによって生じる分力を説明するための図である。
【図9】フィンガー部の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る光モジュールの好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、光モジュールは光トランシーバである。
【0014】
図1は、本発明に係る光トランシーバ1の斜視図である。光トランシーバ1は、下筐体2と、上筐体3と、導通部材4とを備えている。
【0015】
下筐体2及び上筐体3は、例えばアルミダイキャストにより形成されている。下筐体2は、光素子収容部5と、光素子収容部5に連設された光コネクタ装着部6と、を有している。以後、前後、上下、及び左右の各方向は、光コネクタ装着部6側を前、上筐体3側を上とした場合の方向を示すものとする。
【0016】
図2に示されるように、光素子収容部5は、光コネクタ装着部6から後方に延在する底板と(不図示)、左の側板5aと、右の側板5bとを有し、これらの板によって収容空間S1が形成されている。収容空間S1の先端側には、一対の光素子7a,7bが左右に並べて収容されている。収容空間S1における光素子7a,7bの後側には、電子回路基板8が収容されている。左右の側板5a,5bの上端には、光素子7a,7b及び電子回路基板8を収容空間S1内に導入するための開口S2が形成されている。
【0017】
上筐体3は、光素子収容部5の平面形状と略同形状の板状部材であり、光素子収容部5の開口S2を閉塞する。上筐体3の左右端部の下面には、前後方向に沿って一対の凸部3b,3bが設けられている。各凸部3b,3bは、光素子収容部5の収容空間S1に収容され、光素子収容部5の左の側板5aと右の側板5bとの間に配置される。これにより、光素子収容部5と上筐体3とが互いに位置決めされる。また、各凸部3b,3bによって、光素子収容部5と上筐体3との隙間が内側から遮蔽される。
【0018】
ここで、光素子7aは、TOSA(TransmitterOptical Sub-Assembly)であり、光信号を送信する。光素子7bは、ROSA(ReceiverOptical Sub-Assembly)であり、光信号を受信する。電子回路基板8は、後側に電気コネクタ部を有し(不図示)、電気コネクタ部での電気信号の入出力と、光素子7a,7bでの光信号の入出力とを相互に変換する。
【0019】
図2及び図3に示されるように、左右の側板5a,5bの後側且つ上側の内面には、内側に突出した軸部9,9がそれぞれ形成されている。上筐体3の後端には、左右の側板5a,5bに挟まれた状態で軸部9,9に係合する軸受部10が形成されている。軸受部10の左右端部には、上方に開口した凹部11,11が形成されており、軸部9,9がそれぞれ凹部11,11に収容されることで、軸部9,9と軸受部10とが係合している。
【0020】
軸受部10は、軸部9,9により保持され、左右に延びる軸線P回りに回動自在となっている。このため、上筐体3が軸線P回りに回動自在となっている。上筐体3が軸線P回りに上方向に回動されると、光素子収容部5と上筐体3とが離間し、光素子収容部5の開口S2が開放される。このように、軸部9,9及び軸受部10により、下筐体2と上筐体3との連結部Aが構成されている。
【0021】
図4に示されるように、軸部9の下側には、左右に延びる線を軸とする円弧面9aが形成されている。一方、軸受部10の凹部11の底部の前側には、左右に延びる線を軸とし、軸部9の円弧面9aの外径と同等以上の内径の円弧面11aが形成されている。凹部11の底部の後側には、後方に向うに従い高くなるように傾斜した傾斜平面11bが形成されている。この凹部11の円弧面11a及び傾斜平面11bが、軸部9の円弧面9aに外接することで、軸受部10が円弧面9a回りにスムーズに回動させられるようになっている。また、傾斜平面11bは、後述のように上筐体3と下筐体2とに互いにスライドする方向の力が付加されたときに、軸部9を押圧する押圧面Mとして作用する。
【0022】
図5に示されるように、導通部材4は、下筐体2及び上筐体3に外側から装着される装着部12と、複数のフィンガー部13とを有している。
【0023】
装着部12は、下筐体2の下面に対向する下板12aと、下板12aの左右端部から上方に延在し、下筐体2の左右の側面に対向する左右の側板12b,12cと、左の側板12bの上端部から右方向に延在し、上筐体3の左側の上面に対向する左の上板12dと、右の側板12cの上端部から左方向に延在し、上筐体3の右側の上面に対向する右の上板12eとを有している。各上板12d,12eには、挿通孔12fが形成されている。各挿通孔12fには、後述のように、上筐体3の上面に形成された凸部3aが挿通される。また、左の上板12dと右の上板12eとの間には切目Bが形成されている。装着部12は、この切目Bから左右に広げられ、下筐体2及び上筐体3に装着される。
【0024】
下板12a、側板12b,12c、及び上板12d,12eの前端には複数のフィンガー部13が連設されている。各フィンガー部13は、下筐体2及び上筐体3の外側に向かって膨らむように曲がりつつ、前方に延在している。装着部12及び各フィンガー部13は、例えば銅板から切り出された一枚の板状素材を曲げて一体的に形成されている。
【0025】
下筐体2の前側の両側面には、装着部12の左右の側板12b,12cを収容する溝部2aが形成されている。この溝部2aに左右の側板12b,12cが収容されることで、装着部12が下筐体2の後側に移動することが規制される。
【0026】
上筐体3の前側の上面には、一対の凸部3a,3aが左右に並べて形成されている。凸部3a,3aは、それぞれ装着部12の挿通孔12f,12fに挿通される。図6及び図7に示されるように、挿通孔12f,12fの後側には、スライド力付加部12g,12gが形成されている。スライド力付加部12g,12gは、凸部3a,3aに当接して弾性変形し、弾性変形の反力F0によって凸部3a,3aを前方に押圧する。
【0027】
上述のように、装着部12が下筐体2の後側に移動することが規制されているため、スライド力付加部12g,12gによって凸部3a,3aが押圧されると、上筐体3には、下筐体2に対して前方にスライドする方向の力が付加される。一方、下筐体2には、上筐体3に対して後方にスライドする方向の力が付加される。即ち、スライド力付加部12g,12gによって、下筐体2と上筐体3とに互いにスライドする方向の力が付加される。このように、導通部材4によってスライド力付加手段が兼ねられることで、光トランシーバ1の部品点数が削減されている。
【0028】
下筐体2に対して前方にスライドする方向の力が上筐体3に付加されると、図8に示されるように、軸受部10の傾斜平面11bが軸部9の円弧面9aに当接する。そして、軸部9が傾斜平面11bによって上方且つ前方へ押圧されることで、下筐体2を上方且つ前方へ押し上げる分力F1が生じる。一方、傾斜平面11bが軸部9によって下方且つ後方へ押圧されることで、上筐体3を下方且つ後方へ押し下げる分力F2が生じる。即ち、下筐体2及び上筐体3とを互いに押し付ける分力F1,F2が生じる。このように、傾斜平面11bは、スライド力付加部12gが付加した力F0によって軸部9を押圧し、下筐体2と上筐体3とを互いに押し付ける分力F1,F2を生じる押圧面Mとして作用する。そして、下筐体2と上筐体3とは互いに押し付けられ、光素子収容部5と上筐体3との隙間が小さくなる。従って、光トランシーバ1の放射ノイズを十分に抑制することができる。
【0029】
また、押圧面Mが平面であるため、寸法ばらつきにより、光トランシーバ1の個体ごとに軸部9と軸受部10との相対位置がばらついても、押圧面Mの角度が安定し、下筐体2と上筐体3とを互いに押し付ける分力F1,F2が安定する。このため、光素子収容部5と上筐体3との隙間をより確実に小さくすることができる。
【0030】
このように構成された光トランシーバ1が、図9に示されるように光通信装置の光モジュール取付部14に取り付けられると、各フィンガー部13は、下筐体2及び上筐体3と光モジュール取付部14との間に挟まれて弾性変形し、反発力によって下筐体2又は上筐体3と光モジュール取付部14とにしっかりと当接する。これにより、下筐体2及び上筐体3と光モジュール取付部14とが導通する。また、下筐体2の下側で弾性変形したフィンガー部13は、上方へ向う反力F3を下筐体2に付加する。上筐体3の上側で弾性変形したフィンガー部13は、下方へ向う反力F4を上筐体3に付加する。即ち、導通部材4が装着された部分においても、下筐体2と上筐体3とを互いに押し付ける反力F3,F4が生じ、光素子収容部5と上筐体3との隙間をより小さくすることができる。
【0031】
更に、光素子収容部5と上筐体3との隙間は、上筐体3の各凸部3b,3bによって内側から遮蔽されるため、光トランシーバ1の放射ノイズをより十分に抑制することができる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0033】
例えば、本実施形態では、下筐体2側に軸部9が連設され、上筐体3側に軸受部10が連設されているが、上筐体3側に軸部が連設され、下筐体2側に軸受部が連設されていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…光トランシーバ、2…下筐体、3…上筐体、4…導通部材、5…光素子収容部、9…軸部、10…軸受部、11b…傾斜平面、12g…スライド力付加部、13…フィンガー部、14…光モジュール取付部、A…連結部、M…押圧面、S2…開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信装置に取り付けられる光モジュールであって、
光素子収容部を有する下筐体と、
前記光素子収容部の開口を閉塞する上筐体と、
前記下筐体と前記上筐体とを互いに回動自在に連結することで、前記光素子収容部と前記上筐体とを互いに離間自在とし、前記光素子収容部の開口を開放自在とする連結部と、
前記下筐体と前記上筐体とに互いにスライドする方向の力を付加するスライド力付加手段と、を備え、
前記連結部は、前記下筐体及び前記上筐体の一方の筐体に連設された軸部と、前記下筐体及び前記上筐体の他方の筐体に連設され、前記軸部に回動自在に係合する軸受部と、を有し、
前記軸受部には、前記スライド力付加手段が付加した力によって前記軸部を押圧し、前記下筐体と前記上筐体とを互いに押し付ける分力を生じる押圧面が形成されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記押圧面は、平面であることを特徴とする請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】
前記下筐体及び前記上筐体に外側から装着され、前記下筐体及び前記上筐体とと前記光通信装置の光モジュール取付部とを互いに導通させる導通部材を更に備え、
前記スライド力付加手段は、前記導通部材に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の光モジュール。
【請求項4】
前記導通部材は、前記下筐体及び前記上筐体と前記光通信装置の前記光モジュール取付部との間に挟まれて弾性変形し、弾性変形の反力により、前記下筐体と前記上筐体とを互いに押し付けるフィンガー部を有することを特徴とする請求項3記載の光モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−256703(P2012−256703A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128634(P2011−128634)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】