光伝送装置および光伝送システム
【課題】安価な構成で、光伝送システムの拡張または光伝送路の劣化からの復旧を実現する。
【解決手段】光伝送装置は、光信号生成部、検出部、伝送レート決定部を備える。光信号生成部は、データを伝送する光信号を生成して送信する。検出部は、有効クライアント数を検出する。伝送レート決定部は、有効クライアント数および光受信器において検出される光信号の品質に基づいて、光信号の伝送レートを決定する。
【解決手段】光伝送装置は、光信号生成部、検出部、伝送レート決定部を備える。光信号生成部は、データを伝送する光信号を生成して送信する。検出部は、有効クライアント数を検出する。伝送レート決定部は、有効クライアント数および光受信器において検出される光信号の品質に基づいて、光信号の伝送レートを決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを介して光信号を伝送する光伝送装置および光伝送システム、並びに光ネットワークの運用方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムにおいて伝送距離が長くなると、光信号は減衰する。このため、長距離光伝送システムを構築するためには、光伝送路上に1または複数の光中継ノードが配置される。各光中継ノードは、光信号を増幅する光アンプを備えている。
【0003】
また、光信号は、光ファイバを介して伝送されると、品質が劣化する。すなわち、光信号の品質は、例えば、光ファイバの波長分散および偏波モード分散などの影響を受けて劣化する。或いは、光受信器において、OSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio、光信号対雑音比)が劣化する。このため、光中継ノードは、光信号を再生するための光再生中継器を備えることがある。
【0004】
図1(a)は、光伝送システムの一例を示す図である。図1(a)に示す光伝送システムにおいて、光伝送装置1および光伝送装置2は、光伝送路3により接続されている。光伝送路3は、光ファイバケーブルである。光伝送路3上には、光中継ノード4a、4b、4c、4dが設けられている。各光中継ノード4a、4b、4c、4dは、それぞれ光信号を増幅する光アンプを備えている。
【0005】
上記構成の光伝送システムにおいて、光伝送装置1の光送信部は、所定のビットレートの光信号を送信する。光中継ノード4a、4b、4c、4dは、この光信号を増幅しながら中継する。そして、光伝送装置2の光受信部は、光伝送路3を介して伝送される光信号を受信する。
【0006】
図1(b)に示す光伝送システムは、図1(a)に示す光伝送システムと比較すると、光伝送路3が延長され、光中継ノード4eが追加されている。すなわち、図1(b)に示す光伝送システムは、図1(a)に示す光伝送システムと比較すると、スパン数が増加している。ここで、光伝送路3を延長すると、光伝送装置2における光信号の品質(OSNR、残留波長分散、偏波モード分散等)が劣化する。このため、この光伝送システムは、光信号を再生する光再生中継器(Optical Regenerator)5を備える。図1(b)に示す例では、光再生中継器5は、光中継ノード4dに接続されている。なお、光再生中継器5は、3R(Regenerating, Retiming, Reshaping)機能を備える。したがって、光伝送装置2において、光信号の品質は改善する。
【0007】
図1(c)は、図1(a)に示す光伝送システムにおいて、光中継ノード4c、4d間の光伝送路3の特性が劣化した状態を示している。この場合も、光伝送装置2の光受信部における光信号の品質が劣化する。よって、この光伝送システムにおいても、光伝送装置2において所定の品質を確保するためには、光再生中継器5が接続される。図1(c)に示す例では、光中継ノード4cに光再生中継器5が接続されている。
【0008】
なお、関連する技術として、特許文献1〜5の記載の技術が提案されている。また、非特許文献1には、ビットレート調整可能な光OFDMトランスポンダが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−77962号公報
【特許文献2】特開平10−75279号公報
【特許文献3】特開2004−356742号公報
【特許文献4】特表2008−533822号公報
【特許文献5】特開2008−278488号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】OFC/NFOEC2009, NTuB5, Axel Klekamp, Olivier Rival, Annalisa Morea, Roman Dischler, Fred Buchali “Transparent WDM Network with Bitrate Tunable Optical OFDM Transponders”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、光伝送システムの光伝送路の途中に光再生中継器を設けることにより、伝送距離を長くする(すなわち、スパン数を増やす)ことができる。或いは、光再生中継器を接続することにより、光ファイバの劣化を救済することができる。
【0012】
ただし、光再生中継器は、光信号をいったん電気信号に変換し、その電気信号に対して3R処理を行う。そして、光再生中継器は、3R処理後の電気信号を光信号に変換して光伝送路に出力する。すなわち、光再生中継器は、光/電気変換素子および電気/光変換素子を備える。このため、光再生中継器は、高価であり、回路サイズも大きくなる。特に、WDM光信号を伝送するWDMネットワークにおいては、光再生中継器は、波長ごとに光/電気変換素子および電気/光変換素子を備えることが好ましく、その場合、光再生中継器は非常に高価になる。
【0013】
本発明の課題は、安価な構成で光伝送システムの拡張または光伝送路の劣化からの復旧を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの態様の光伝送装置は、データを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部と、有効クライアント数を検出する検出部と、前記有効クライアント数および光受信器において検出される前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する伝送レート決定部、を備える。
【0015】
本発明の1つの態様の光伝送システムは、第1の光伝送装置から第2の光伝送装置へ光信号を伝送する。第1の光伝送装置は、有効クライアント数を検出する検出部と、伝送レートを決定する伝送レート決定部と、前記伝送レートでデータを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部、を備える。第2の光伝送装置は、前記光信号の品質を検出する品質検出部と、前記品質検出部による検出結果に基づいて制御情報を生成する生成部と、前記制御情報を前記第1の光伝送装置に通知する通知部、を備える。そして、前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数および前記制御情報に基づいて、前記伝送レートを決定する。
【0016】
本発明の1つの態様の光ネットワークの運用方法は、第1の光伝送装置から第2の光伝送装置へ光信号を送信し、前記第2の光伝送装置において前記光信号の品質を検出し、前記第1の光伝送装置において有効クライアント数を検出し、前記第1の光伝送装置において、前記有効クライアント数および前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する。
【発明の効果】
【0017】
上述の態様によれば、安価な構成で光伝送システムの拡張または光伝送路の劣化からの復旧を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光伝送システムの一例を示す図である。
【図2】実施形態の光伝送システムの構成を示す図である。
【図3】光伝送装置が備える送信部の構成を示す図である。
【図4】光伝送装置が備える受信部の構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態の光伝送装置が備える光送信器の構成を示す図である。
【図6】第1の実施形態の光伝送装置が備える光受信器の構成を示す図である。
【図7】光信号および制御情報の伝送経路について説明する図である。
【図8】第1の実施形態において伝送レートを決定する処理を示すフローチャートである。
【図9】伝送レートの変更の実施例を示す図である。
【図10】波長チャネルごとに伝送レートを調整する方法を説明する図である。
【図11】第2の実施形態の光伝送装置が備える光送信器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2は、実施形態の光伝送システムの構成を示す図である。図2に示すように、光伝送システムは、光伝送装置10、光伝送装置20、光伝送路3a、3b、光中継ノード31a、32a、33a、光中継ノード31b、32b、33bを備える。光伝送装置10および光伝送装置20は、光伝送路3a、3bにより接続されている。光伝送路3aは、光伝送装置10から光伝送装置20へ光信号を伝送する。光伝送路3bは、光伝送装置20から光伝送装置10へ光信号を伝送する。すなわち、光伝送装置10、20は、1組の双方向伝送路により接続されている。なお、光伝送路3a、3bは、それぞれ光ファイバケーブルである。
【0020】
光伝送装置10は、送信部11および受信部12を備える。送信部11は、光信号を生成して光伝送路3aを介して光伝送装置20へ送信する。また、受信部12は、光伝送装置20から送信される光信号を、光伝送路3bを介して受信する。同様に、光伝送装置20は、送信部21および受信部22を備える。送信部21は、光信号を生成して光伝送路3bを介して光伝送装置10へ送信する。また、受信部22は、光伝送装置10から送信される光信号を、光伝送路3aを介して受信する。
【0021】
光伝送路3a上には、光中継ノード31a、32a、33aが設けられている。各光中継ノード31a、32a、33aは、それぞれ光伝送路3a上の光信号を増幅する光アンプを備えている。同様に、光伝送路3b上には、光中継ノード31b、32b、33bが設けられている。各光中継ノード31b、32b、33bは、それぞれ光伝送路3b上の光信号を増幅する光アンプを備えている。なお、光中継ノード31a、31bは、1つの中継装置内に設けられる。同様に、光中継ノード32a、32bは1つの中継装置内に設けられ、光中継ノード33a、33bも1つの中継装置内に設けられる。
【0022】
上記構成の光伝送システムにおいて、光伝送装置10、20は、この実施例では、WDM光信号を送信および受信する。この場合、各光中継ノード31a、32a、33a、31b、32b、33bは、それぞれWDM光信号を一括して増幅する光アンプを備えることが好ましい。
【0023】
光伝送装置10、20の構成および動作は、基本的に互いにほぼ同じである。したがって、以下の説明では、1つの例として、光伝送装置10から光伝送装置20へ光信号を伝送するケースについて説明し、光伝送装置20から光伝送装置10へ光信号を伝送するケースについては説明を省略する。
【0024】
図3は、光伝送装置が備える送信部の構成を示す図である。図3に示す送信部は、図2に示す光伝送装置10が備える送信部11、または光伝送装置20が備える送信部21に相当する。以下の説明では、図3に示す送信部は、光伝送装置10が備える送信部11であるものとする。なお、送信部11、21の構成は、互いにほぼ同じである。
【0025】
送信部11は、複数の光送信器41(41−1〜41−n)、マルチプレクサ42、OSC送信部43、光カプラ44を備える。光送信器41−1〜41−nは、それぞれクライアントデータを伝送する光信号を生成する。光送信器41−1〜41−nにより生成される光信号の波長は、互いに異なっている。すなわち、光送信器41−1、41−2、41−3、・・・、41−nは、それぞれ波長λ1、λ2、λ3、・・・、λnの光信号を生成する。なお、波長λ1〜λnは、例えば、エルビウム添加光ファイバアンプ(EDFA)の利得帯内に配置される。そして、マルチプレクサ42は、光送信器41−1〜41−nにより生成される複数の光信号を多重化してWDM光信号を生成する。
【0026】
OSC送信部43は、光伝送システムを制御するための制御情報を生成する。制御情報は、後述する品質情報および/または伝送レート情報を含むようにしてもよい。また、OSC送信部43は、その制御情報を伝送するOSC光信号を生成する。そして、OSC送信部43は、OSC(Optical Supervisory Channel、監視チャネル)を利用してOSC光信号を送信する。OSCは、予め決められた所定の波長が割り当てられており、データ信号が配置される波長帯(波長λ1〜λnが配置されるEDFAの利得帯)の外に配置される。
【0027】
なお、図2に示す各光中継ノード31a〜33aは、光伝送路3a上の光信号からOSC光信号を抽出する機能を備える。そして、各光中継ノード31a〜33aは、OSC光信号から制御情報を再生し、その制御情報により指示される動作を実行する。さらに、各光中継ノード31a〜33aは、次の光中継ノードまたは光伝送装置へOSC光信号を送信する。
【0028】
光カプラ44は、マルチプレクサ42から出力されるWDM光信号にOSC光信号を追加する。すなわち、送信部11は、WDM光信号およびOSC光信号を光伝送路3aへ出力する。なお、マルチプレクサ42は、光送信器41−1〜41−nにより生成される複数の光信号およびOSC光信号を多重化してもよい。この場合、送信部11は、光カプラ44を省くことができる。
【0029】
図4は、光伝送装置が備える受信部の構成を示す図である。図4に示す受信部は、光伝送装置10が備える受信部12、または光伝送装置20が備える受信部22に相当する。以下の説明では、図4に示す受信部は、光伝送装置20が備える受信部22であるものとする。なお、受信部12、22の構成は、互いにほぼ同じである。
【0030】
受信部22は、光カプラ45、デマルチプレクサ46、光受信器47(47−1〜47−n)、OSC受信部48を備える。そして、受信部22は、図3に示す送信部11により生成される光信号(WDM光信号およびOSC光信号)を、光伝送路3aを介して受信する。
【0031】
光カプラ45は、入力光信号からOSC光信号を分離してOSC受信部48に導く。また、光カプラ45は、入力光信号に含まれているWDM光信号をデマルチプレクサ46に導く。デマルチプレクサ46は、WDM光信号を波長ごとに分離する。そして、デマルチプレクサ46は、波長λ1〜λnの光信号を、それぞれ光受信器47−1〜47−nに導く。なお、デマルチプレクサ46は、WDM光信号およびOSC光信号を波長ごとに分離してもよい。この場合、受信部22は、光カプラ45を省くことができる。
【0032】
光受信器47−1〜47−nは、それぞれ波長λ1〜λnの光信号からクライアントデータを再生する。OSC受信部48は、OSC光信号から制御情報を取得する。この制御情報は、光伝送装置の動作および状態を制御するために使用される。
【0033】
図2の説明に戻る。図2において、光伝送装置10は、光信号を利用して伝送するデータの伝送レート(または、ビットレート)を調整する機能を有する。ここで、光伝送システムがWDM光信号を伝送する場合には、光伝送装置10は、各波長チャネルの伝送レートを独立して調整することができる。
【0034】
光伝送装置10は、光伝送路3aに設定されるOSCを利用して、送信部11の伝送レートを光伝送装置20に通知する。そして、光伝送装置20の受信部22は、この通知に従って、光伝送装置10から送信される光信号を受信してデータを再生する。
【0035】
光伝送装置20の受信部22は、光伝送装置10から送信される光信号の品質をモニタする。例えば、受信部22は、入力光信号のOSNR、残留波長分散、偏波モード分散の中の少なくとも1つをモニタする。そして、光伝送装置20は、光伝送路3bに設定されるOSCを利用して、モニタ結果を光伝送装置10に通知する。そうすると、光伝送装置10の送信部11は、通知されたモニタ結果に基づいて光信号の伝送レートを決定する。ただし、送信部11は、光伝送装置20から通知されるモニタ結果だけではなく、他の要因(例えば、トラヒック量)も考慮して伝送レートを決めることができる。
【0036】
光伝送システムがWDM光信号を伝送する場合、対応する1組の光送信器41と光受信器47との間で、伝送レート情報および品質情報が通知される。例えば、光送信器41−1から光受信器47−1へクライアントデータが送信される場合には、光送信器41−1は、自分がクライアントデータを送信するための伝送レートを表す伝送レート情報を光受信器47−1に通知する。また、光受信器47−1は、光送信器41−1からの光信号の品質を表す品質情報を光送信器41−1に通知する。
【0037】
<第1の実施形態>
図5は、第1の実施形態の光伝送装置が備える光送信器の構成を示す図である。図5に示す光送信器41は、図3に示す光送信器41−1〜41−nのなかの任意の1つに相当する。そして、光送信器41は、複数のクライアントI/F51a〜51d、フレーマー52、CPU53、クロック生成部54、送信機モジュール55を備える。
【0038】
クライアントI/F51a〜51dは、それぞれクライアント回線を収容するための入力ポートを備える。また、クライアントI/F51a〜51dは、対応するクライアント回線を介して受信するクライアントデータを終端するためのインタフェースを提供する。そして、クライアントI/F51a〜51dは、対応するクライアント回線のクライアントデータをフレーマー52に送信する。
【0039】
クライアントI/F51a〜51dが提供するインタフェースは、この実施例では、互いにほぼ同じであるものとする。すなわち、各クライアント回線のクライアントデータのフォーマットおよび伝送レートは、互いにほぼ同じである。
【0040】
クライアントI/F51a〜51dは、それぞれ、対応するクライアント回線を介してクライアント信号を受信すると、有効クライアントが存在することを検出する。そして、クライアントI/F51a〜51dは、有効クライアントの存在を検出すると、有効クライアント信号をCPU53に送信する。なお、クライアントI/F51a〜51dは、他の契機に基づいてクライアント信号を出力してもよい。例えば、クライアントI/F51a〜51dは、入力ポートにクライアント回線のコネクタが接続されたときに有効クライアント信号を出力してもよい。或いは、クライアントI/F51a〜51dは、クライアント端末との間でネゴシエーションが成功したときに有効クライアント信号を出力してもよい。
【0041】
図5に示す光送信器41は、4個のクライアントI/F51a〜51dを備えるが、クライアントI/Fの数は特に限定されるものではない。ただし、光送信器41は、複数のクライアントI/Fを備えることが好ましい。
【0042】
フレーマー52は、クライアントI/F51a〜51dに対応するバッファメモリ52a〜52dを備える。すなわち、クライアントI/F51aは、対応するクライアント回線から受信したクライアントデータをバッファメモリ52aに書き込む。同様に、クライアントI/F51b〜51dは、それぞれ対応するバッファメモリ52b〜52dにクライアントデータを書き込む。このとき、例えば、クライアントI/F51a、51bのみがクライアント回線からクライアントデータを受信するときは、バッファメモリ52a、52bにクライアントデータが書き込まれ、バッファメモリ52c、52dにはデータは書き込まれない。
【0043】
また、フレーマー52は、クロック生成部54により生成されるクロック信号を利用して、バッファメモリ52a〜52dからクライアントデータを読み出して送信機モジュール55に送信する。このとき、フレーマー52は、クライアントデータを格納している各バッファメモリ52a〜52dから、順番に、クライアントデータを読み出す。例えば、バッファメモリ52a、52bのみにクライアントデータが書き込まれているときは、フレーマー52は、バッファメモリ52a、52bから交互にクライアントデータを読み出す。このように、フレーマー52は、シリアライザとして動作する。なお、フレーマー52は、クライアントI/F51a〜51dが受信するデータの速度と、送信機モジュール55が送信するデータの速度との差分を調整するために、例えばダミーデータまたはパディングを生成する機能を備えるようにしてもよい。
【0044】
CPU53は、有効クライアント数に基づいて、クライアントデータを送信する際の伝送レートを決定する。具体的には、CPU53は、有効クライアント数に基づいてクロック周波数を決定する。ここで、CPU53は、クライアントI/F51a〜51dにより生成される有効クライアント信号に基づいて有効クライアント数を検出する。例えば、クライアントI/F51a、51bのみがクライアント回線からクライアントデータを受信するときは、クライアントI/F51a、51bは有効クライアント信号を出力し、クライアントI/F51c、51dは有効クライアント信号を出力しない。この場合、CPU53は、「有効クライアント数=2」を検出する。
【0045】
CPU53は、有効クライアント数だけでなく、品質情報にも基づいて伝送レート(すなわち、クロック周波数)を決定する。品質情報は、光信号の品質を表すと共に、光伝送路の特性を表す。また、品質情報は、送信先光伝送装置の光受信器において、受信光信号の品質(または、特性)をモニタすることにより生成される。送信先光伝送装置は、光送信器41から送信される光信号を受信する光伝送装置であり、図2に示す光伝送装置20に相当する。そして、送信先光伝送装置は、OSCを利用して、品質情報を光送信器41に通知する。
【0046】
CPU53は、有効クライアント数および品質情報に基づいて決定したクロック周波数を指定するクロック選択信号を生成する。クロック選択信号は、クロック選択部54に与えられる。また、CPU53は、OSCを利用して、光信号の伝送レート(または、クロック周波数)を送信先光伝送装置に通知する。
【0047】
クロック生成部54は、クロック選択信号により指定されるクロック信号を出力する。ここで、クロック生成部54は、例えば、互いに発振周波数の異なる複数の発振器を備える。図5に示す例では、クロック生成部54は、発振器CLK1〜CLK4を備える。この場合、クロック生成部54は、クロック選択信号に応じて発振器CLK1〜CLK4のなかの1つを選択する。そして、クロック生成部54は、選択した発振器により生成されるクロック信号を出力する。クロック生成部54により生成されるクロック信号は、フレーマー52および送信機モジュール55に与えられる。
【0048】
フレーマー52は、クロック生成部54により生成されるクロック信号を利用して、バッファメモリ52a〜52dからクライアントデータを読み出す。バッファメモリ52a〜52dから読み出されたクライアントデータは、送信機モジュール55に送信される。
【0049】
送信機モジュール55は、バッファメモリ55a、ドライバ55b、光源(LD)55c、光変調器55dを備える。フレーマー52から出力されるクライアントデータは、バッファメモリ55aに書き込まれる。そして、送信機モジュール55は、クロック生成部54により生成されるクロック信号を利用して、バッファメモリ55aからクライアントデータを読み出す。
【0050】
ドライバ55bは、バッファメモリ55aから読み出されるクライアントデータから駆動信号を生成する。このとき、ドライバ55bは、光変調器55dの変調方式に応じて、クライアントデータから駆動信号を生成する。
【0051】
光変調器55dは、光源55cから出力されるCW光を、ドライバ55bにより生成される駆動信号で変調することにより、クライアントデータを伝送する光信号を生成する。光変調器55dの変調方式は、特に限定されるものではないが、例えば、QPSKまたはDQPSKである。また、光変調器55dは、1組の偏波(X偏波およびY偏波)を利用してクライアントデータを送信してもよい。すなわち、光変調器55dは、例えば、DP−QPSK光信号を送信してもよい。
【0052】
上記構成の光送信器41において、クライアントI/F51a〜51dに接続される各クライアント回線は、例えば、10Gbit/sのクライアントデータを伝送する。この場合、クロック生成部54が備える発振器CLK1〜CLK4は、それぞれ下記のクロック信号を生成する。
CLK1:バッファメモリから10Gbit/sでデータを読み出すクロック信号
CLK2:バッファメモリから20Gbit/sでデータを読み出すクロック信号
CLK3:バッファメモリから30Gbit/sでデータを読み出すクロック信号
CLK4:バッファメモリから40Gbit/sでデータを読み出すクロック信号
ここで、例えば、クロック信号の1サイクルで、バッファメモリから1ビットのデータを読み出す構成においては、発振器CLK1〜CLK4の周波数は下記の通りである。
CLK1:10GHz
CLK2:20GHz
CLK3:30GHz
CLK4:40GHz
ただし、1クロックサイクルでバッファメモリからnビットのデータを読み出す構成においては、発振器CLK1の発振周波数は10/n GHzである。発振器CLK2〜CLK4についても同様である。
【0053】
なお、CPU53は、有効クライアント数を検出する検出部の一例である。また、CPU53は、光信号の伝送レートまたはクロック信号の周波数を決定する伝送レート決定部の一例である。さらに、クロック生成部54および送信器モジュール55は、光信号を生成して送信する光信号生成部の一例である。
【0054】
図6は、第1の実施形態の光伝送装置が備える光受信器の構成を示す図である。図6に示す光受信器47は、図4に示す光受信器47−1〜47−nのなかの任意の1つに相当する。
【0055】
光受信器47は、デジタルコヒーレント受信器であり、光フロントエンド回路60、A/Dコンバータ64a〜64d、デジタル信号処理部65、デコーダ66を備える。そして、光受信器47は、図5に示す光送信器41から送信される光信号を受信する。
【0056】
光フロントエンド回路60は、光位相ハイブリッド回路61、局部光源62、光検出器63a〜63dを備える。光位相ハイブリッド回路61は、入力光信号および局部光源62から出力される局発光を混合することにより、光信号のI成分およびQ成分を得る。この実施例では、変調方式はDP−QPSKである。したがって、光位相ハイブリッド回路61は、入力光信号のX偏波のI成分、Q成分、および入力光信号のY偏波のI成分、Q成分を得る。なお、局部光源62は、図5に示す光送信器41の光源55cとほぼ同じ波長のCW光を生成する。
【0057】
光検出器63a〜63dは、それぞれ、直列に接続された1組のフォトダイオードを含み、入力光を表す電気信号を出力する。図6に示す例では、光検出器63a、63b、63c、63dは、それぞれ、X偏波のI成分、X偏波のQ成分、Y偏波のI成分、Y偏波のQ成分を表す電気信号を出力する。
【0058】
A/Dコンバータ64a〜64dは、光検出器63a〜63dから出力される電気信号をそれぞれデジタルデータに変換する。すなわち、A/Dコンバータ64a、64b、64c、64dは、それぞれ、X偏波のI成分、X偏波のQ成分、Y偏波のI成分、Y偏波のQ成分を表すデジタルデータを出力する。
【0059】
デジタル信号処理部65は、DSP(Digital Signal Processor)を備え、X偏波のI成分、Q成分、およびY偏波のI成分、Q成分を表すデジタルデータからシンボルを再生する。ここで、デジタル信号処理部65は、データ識別部65a、OSNR算出部65b、残留分散算出部65c、PMD算出部65dを提供する。データ識別部65a、OSNR算出部65b、残留分散算出部65c、PMD算出部65dは、例えば、DSPがソフトウェアプログラムを実行することにより実現される。ただし、データ識別部65a、OSNR算出部65b、残留分散算出部65c、PMD算出部65dの一部は、ハードウェア回路で実現されてもよい。
【0060】
データ識別部65aは、入力光信号のX偏波のI成分、Q成分からX偏波のシンボルを再生し、入力光信号のY偏波のI成分、Q成分からY偏波のシンボルを再生する。QPSKでは、1シンボルは2ビットのデータを伝送する。したがって、DP−QPSKにおいては、データ識別部65aは、1セットのデジタルデータから4ビットのデータを再生する。
【0061】
OSNR算出部65bは、入力光信号のOSNRを算出する。また、残留分散算出部65cは、入力光信号の残留波長分散を算出する。さらに、PMD算出部65dは、入力光信号の偏波モード分散を算出する。ここで、入力光信号のI成分およびQ成分からOSNR、残留波長分散、偏波モード分散を算出する方法は、公知である。すなわち、デジタル信号処理部65は、公知のアルゴリズムを利用して、入力光信号のI成分およびQ成分からOSNR、残留波長分散、偏波モード分散を算出することができる。
【0062】
なお、デジタル信号処理部65は、必ずしもOSNR、残留波長分散、偏波モード分散のすべてを算出する必要はなく、それらのうちの少なくとも1つを算出すればよい。そして、デジタル信号処理部65は、OSNR、残留波長分散、偏波モード分散の少なくとも1つを含む品質情報を生成する。
【0063】
デコーダ66は、デジタル信号処理部65のデータ識別部65aにより再生されたデータを復号する。すなわち、デコーダ66は、クライアントデータを再生する。
図7は、光信号および制御情報の伝送経路について説明する図である。ここでは、光送信器41−1から光受信器47−1へ光伝送路3aを介して光信号が伝送されるものとする。この光信号は、光送信器41−1に収容されるクライアント回線のクライアントデータを伝送する。なお、図7においては、光中継ノードは省略されている。
【0064】
この場合、光受信器47−1は、光送信器41−1から送信される光信号の品質を検出する。光信号の品質は、上述したように、OSNR、残留波長分散、偏波モード分散の少なくとも1つである。そして、光受信器47−1は、検出した品質を表す品質情報を光送信器41−1に通知する。このとき、光伝送装置20の送信部21は、光伝送路3bに設定されるOSCを利用して、品質情報を光伝送装置10へ送信する。そうすると、光伝送装置10の受信部12は、OSCを介して品質情報を受信する。そして、受信部12は、この品質情報を光送信器41−1に提供する。
【0065】
光送信器41−1は、光送信器41−1の有効クライアント数および光受信器47−1から受信する品質情報に基づいて、クライアントデータを伝送する光信号の伝送レートおよびクロック周波数を決定する。そして、光送信器41−1は、決定した伝送レートで光信号を送信するとともに、伝送レートを表す伝送レート情報を光受信器47−1に通知する。このとき、光伝送装置10の送信部11は、光伝送路3aに設定されるOSCを利用して、伝送レート情報を光伝送装置20へ送信する。そうすると、受信部22は、OSCを介して伝送レート情報を受信する。そして、受信部22は、この伝送レート情報を光受信器47−1に提供する。
【0066】
光受信器47−1は、受信した伝送レート情報に従って、受信光信号からデータを再生する。このとき、光受信器47−1は、伝送レート情報により指示されるクロック周波数のクロック信号を生成する。そして、A/Dコンバータ64a〜64dは、このクロック信号を利用してデジタルデータを出力する。また、デジタル信号処理部65およびデコーダ66は、このクロック信号を利用して動作する。
【0067】
なお、光伝送装置20は、例えば、品質情報を定期的に光伝送装置10へ送信する。また、光伝送装置10は、例えば、初期設定時および伝送レートを変更したときに、伝送レート情報を光伝送装置20へ送信する。
【0068】
図8は、第1の実施形態において伝送レートを決定する処理を示すフローチャートである。なお、この処理は、各光送信器41−1〜41−nのCPU53によりそれぞれ実行される。また、この処理は、例えば、定期的に実行される。
【0069】
S1において、CPU53は、有効クライアント数を検出する。なお、CPU53は、例えば、上述したように、クライアントI/F51a〜51dから出力される有効クライアント信号を利用して有効クライアント数を検出する。或いは、CPU53は、各クライアントI/F51a〜51dに対してクライアント回線が有効か否かを問い合わせることによって、有効クライアント数を検出してもよい。
【0070】
S2において、CPU53は、S1で検出された有効クライアント数に基づいて、最小伝送レートRminを決定する。ここで、フレーマー52および送信機モジュール55においてバッファメモリからデータを読み出すためのクロック信号の周波数は、クライアントデータを伝送する光信号の伝送レートに比例するものとする。この場合、S2においてCPU53は、実質的に、最小クロック周波数を決定する。
【0071】
S3において、CPU53は、品質情報を取得する。品質情報は、図7を参照しながら説明したように、光信号を受信する光伝送装置において生成される。そして、CPU53は、OSCを利用して通知される品質情報を受信する。
【0072】
S4において、CPU53は、S3で取得した品質情報に基づいて、最大伝送レートRmaxを決定する。すなわち、CPU53は、実質的に、最大クロック周波数を決定する。
S5において、CPU53は、S2で決定された最小伝送レート以上かつS4で決定された最大伝送レート以下の範囲で、伝送レートを設定できるか否かを判定する。例えば、Rmin≦Rmaxであれば、CPU53は、伝送レートを設定できると判定する。
【0073】
伝送レートを設定できるときは、S6において、CPU53は、クライアントデータを伝送する光信号の伝送レートを決定する。すなわち、CPU53は、実質的に、クロック周波数を決定する。
【0074】
S7において、CPU53は、現在の伝送レートと新たに決定した伝送レートとを比較する。そして、伝送レートを変更する場合には、CPU53は、S8において、新たな伝送レートを表す伝送レート情報を生成する。なお、伝送レート情報は、図7を参照しながら説明したように、OSCを利用して、光信号を受信する光伝送装置に通知される。なお、伝送レートを変更しないときは、S8をスキップするようにしてもよい。
【0075】
S9において、CPU53は、S6で決定した伝送レートに対応するクロック信号を選択するためのクロック選択信号を生成する。そうすると、クロック生成部54は、クロック選択信号に対応する周波数のクロック信号を出力する。
【0076】
なお、伝送レートを設定できないときは(S5:No)、CPU53は、S10において、警告メッセージを出力する。この警告メッセージは、例えば「伝送レートの調整のみでは、所定の品質を確保できない」を表す。この場合、ネットワーク管理者は、例えば、警告メッセージに応じて、図1に示す光再生中継器5の設置を検討することができる。
【0077】
一例を示す。なお、以下の説明では、各クライアント回線は、それぞれ10Gbit/sのクライアントデータを伝送するものとする。また、光送信器41は、光信号の伝送レートとして、10Gbit/s、20Gbit/s、30Gbit/s、40Gbit/sのいずれか1つを選択できるものとする。
【0078】
上記構成の光送信器41において、CPU53は、例えば「有効クライアント数=2」を検出したものとする。この場合、CPU53は、以下のようにして光信号の最小伝送レートRminを決定する。
Rmin=10Gbit/s×2=20Gbit/s
すなわち、「有効クライアント数=2」であるときは、光送信器41は、光信号の伝送レートとして、20Gbit/s、30Gbit/s、40Gbit/sのいずれか1つを選択できる。
【0079】
続いて、CPU53は、品質情報に基づいて最大伝送レートRmaxを決定する。最大伝送レートRmaxを決定する手順は、以下の通りである。
光受信器47が受信光信号からクライアントデータを再生するためには、受信光信号が伝送レートに応じて決まる所定のレベルよりも良好な品質を有していることが好ましい。ここで、「クライアントデータを再生」は、例えば、ビット誤り率が所定レベルよりも小さいことを意味する。
【0080】
受信品質の耐力は、伝送レートに応じて変化する。すなわち、伝送レートが低いときは耐力の条件は緩やかであり、伝送レートが高いときは耐力の条件は厳しい。例えば、伝送レートが2倍になると、OSNR耐力は3dB増加する。また、伝送レートが2倍になると、偏波モード分散耐力は2分の1になる。さらに、伝送レートが2倍になると、残留波長分散耐力は4分の1になる。
【0081】
光送信器41は、例えば、OSNR、偏波モード分散、残留波長分散についての耐力と伝送レートとの対応関係を格納するテーブルを有している。そして、CPU53は、品質情報を取得すると、そのテーブルを参照して最大伝送レートを決定する。例えば、伝送レートと残留波長分散耐力との対応関係が、下記の通りであるとする。
10Gbit/s:200ps/nm
20Gbit/s:50ps/nm
30Gbit/s:22ps/nm
40Gbit/s:12ps/nm
このとき、例えば、光受信器47により検出された残留波長分散が20ps/nmであるものとする。そして、この検出結果は、品質情報としてCPU53に通知される。そうすると、CPU53は、「残留波長分散=20ps/nm」に基づいて、最大伝送レートを決定する。このケースでは、検出された残留波長分散(20ps/nm)は、30Gbit/sに対応する耐力(22ps/nm)を満足するが、40Gbit/sに対応する耐力(12ps/nm)を超えている。すなわち、この場合、CPU53は、伝送レートが30Gbit/sであれば、光受信器47はクライアントデータを再生できるが、伝送レートが40Gbit/sであれば、光受信器47はクライアントデータを再生できない、と判定する。したがって、CPU53は、通知された残留波長分散に対して「最大伝送レート=30Gbit/s」と決定する。
【0082】
CPU53は、OSNRおよび偏波モード分散に対してもそれぞれ最大伝送レートを決定する。そして、CPU53は、3つの最大伝送レートの中で最も小さい値を選択する。例えば、OSNR、偏波モード分散、残留波長分散に対応する最大伝送レートが、それぞれ30Gbit/s、40Gbit/s、30Gbit/sであれば、「30Gbit/s」が選択される。この手順によれば、OSNR、偏波モード分散、残留波長分散のすべてについて耐力を満足するように最大伝送レートが決定される。
【0083】
なお、「最大伝送レート=30Gbit/s」である場合、光送信器41は、光信号の伝送レートとして10Gbit/s、20Gbit/s、30Gbit/sのいずれか1つを選択できる。
続いて、CPU53は、S2の最小伝送レートおよびS4の最大伝送レートに基づいて、光信号の伝送レートを決定する。具体的には、CPU53は、「S2の最小伝送レート以上」および「S4の最大伝送レート以下」という2つの条件を満たす伝送レートを選択する。この実施例では、「S2の最小伝送レート以上」に対応する選択可能な伝送レートは、以下通りである。
20Gbit/s、30Gbit/s、40Gbit/s
また、「S4の最大伝送レート以下」に対応する選択可能な伝送レートは、以下通りである。
10Gbit/s、20Gbit/s、30Gbit/s
上述の2つの条件を満たす伝送レートは、「20Gbit/s」および「30Gbit/s」である。したがって、CPU53は、「20Gbit/s」または「30Gbit/s」のいずれか一方を選択することができる。なお、S6において選択可能な伝送レートが複数ある場合、CPU53は、予め決められている通信ポリシに基づいて1つの伝送レートを選択してもよい。例えば、光送信器41(および、光受信器47)の消費電力を小さくするためには、選択可能な伝送レートの中で最小の伝送レート(上述の例では、20Gbit/s)を選択してもよい。
【0084】
このように、第1の実施形態においては、光送信器41は、有効クライアント数および光信号の受信品質に基づいて伝送レートを決定する。したがって、第1の実施形態においては、光ネットワークの柔軟な運用が可能になる。なお、既存の光ネットワークは、光信号の伝送レートは固定されているので、光ネットワークの柔軟な運用は困難である。
【0085】
図9は、伝送レートの変更の実施例を示す。この例では、図9(a)に示すように、光伝送装置10の光送信器41から光伝送装置20の光受信器47へ光信号が伝送されているものとする。また、光送信器41は、2本のクライアント回線を収容しているものとする。すなわち、「有効クライアント数=2」であり、クライアントデータの総トラヒック量は、20Gbit/sである。ただし、光送信器41は、40Gbit/sの光信号を送信するものとする。すなわち、図9(a)において、光信号の伝送レートが40Gbit/sであっても、光伝送装置20の受信光信号の品質は良好である。
【0086】
上記構成の光伝送システムにおいて、図9(b)に示すように、光伝送装置10、20間の光伝送路3を延長するものとする。そして、光送信器41は、図9(a)に示す運用状態と同様に、40Gbit/sの光信号を送信する。
【0087】
光受信器47は、受信光信号の品質(OSNR、偏波モード分散、残留波長分散)をモニタする。そして、光伝送装置20は、光受信器47により検出された品質を表す品質情報を光送信器41に通知する。このとき、光受信器47により検出された品質は、伝送レートが40Gbit/sであるときの耐力を超えているものとする。そうすると、光送信器41は、クライアントデータの総トラヒック量を満足し、且つ、光受信器47における受信耐力を満足するように、光信号の伝送レートを低下させる。この実施例では、光送信器41は、光信号の伝送レートを40Gbit/sから20Gbit/sに低下させている。
【0088】
図9(c)は、図9(a)に示す光伝送システムにおいて、光伝送路3の品質が劣化した状態を示している。この場合、光受信器47により検出される受信光信号の品質(OSNR、偏波モード分散、または残留波長分散)が劣化する。そして、光送信器41は、光伝送装置20からの通知により、光伝送路3の品質の劣化を認識する。そうすると、光送信器41は、図9(b)に示す例と同様に、光信号の伝送レートを低下させる。
【0089】
ここで、図1および図9に示す光伝送システムを比較する。図1に示す光伝送システムにおいては、光伝送装置1、2間の光信号の伝送レートは固定である。例えば、光伝送装置1の光送信部が10Gbit/sのクライアント回線を4本収容可能である場合は、光送信部に実際に接続されているクライアント回線の本数にかかわらず、光信号の伝送レートは40Gbit/sである。このため、図1(b)に示すように、光伝送路3を延長し、光伝送装置2における受信品質が、40Gbit/sに対応する耐力を超えると、光伝送システムに光再生中継器5を設ける必要が生じる。また、図1(c)に示すように光伝送路が劣化した場合も同様に、光伝送システムに光再生中継器5を設ける必要が生じる。
【0090】
これに対して、第1の実施形態の光伝送システムにおいては、光伝送装置10、20間の光信号の伝送レートは可変である。具体的には、光送信器41と光受信器47との間の光信号の伝送レートは可変である。そして、図9(b)に示すように、光伝送路3を延長したときに、光伝送装置22における受信品質が、40Gbit/sに対応する耐力を超えたとすると、光送信器41は、伝送レートを低下させる。具体的には、光送信器41は、上述したように、クライアントデータの総トラヒック量を満足し、且つ、光受信器47における受信耐力を満足するように、光信号の伝送レートを低下させる。したがって、第1の実施形態の光伝送システムにおいては、図1に示す光再生中継器5を設けることなく、光伝送路のスパン数を増やすことができる。また、図9(c)に示すように光伝送路が劣化した場合も同様に、光再生中継器5を設けることなく、伝送レートを低下させることで光伝送システムを復旧させることができる。
【0091】
図10は、波長チャネルごとに伝送レートを調整する方法を説明する図である。図10に示す例では、光伝送装置10から光伝送装置20A、20Bに光信号が伝送される。ここで、光送信器41−1は波長λ1の光信号を生成し、光送信器41−2は波長λ2の光信号を生成する。また、光伝送装置10は、波長λ1の光信号および波長λ2の光信号を含むWDM光信号を送信する。そして、光中継ノード4cは、波長λ1の光信号を光伝送装置20Aに導き、波長λ2の光信号を光伝送装置20Bに導く。なお、光中継ノード4cは、例えば、WSS(Wavelength Selective Switch)を備える。
【0092】
この場合、光受信器47aは、受信光信号の品質を表す品質情報を光送信器41−1に通知する。そうすると、光送信器41−1は、光送信器41−1の有効クライアント数および光受信器47aからの通知に基づいて、波長λ1の光信号の伝送レートを決定する。同様に、光受信器47bは、受信光信号の品質を表す品質情報を光送信器41−2に通知する。そうすると、光送信器41−2は、光送信器41−2の有効クライアント数および光受信器47bからの通知に基づいて、波長λ2の光信号の伝送レートを決定する。
【0093】
このように、第1の実施形態の光伝送システムは、波長チャネル毎にそれぞれ伝送レートを調整することができる。したがって、たとえば、WDM光信号の中の一部の波長チャネルのみを拡張する場合には、その波長チャネルの伝送レートのみを調整すればよい。また、WDM光信号の中の一部の波長チャネルのみが設定されている区間の光伝送路が劣化した場合は、その波長チャネルの伝送レートのみを調整すればよい。例えば、図10に示す光中継ノード4d、4e間の光伝送路3が劣化した場合には、波長チャネルλ2の伝送レートのみを調整すればよい。
【0094】
ただし、複数の波長チャネルを含むWDMパスが設定されているスパンが劣化した場合は、そのスパン上の複数のチャネルすべてに対して伝送レートを調整するネゴシエーションが実行される。例えば、運用系およびプロテクション系を備える光伝送システムにおいて、運用系の光伝送路のあるスパンが劣化したときは、その劣化スパンを介して伝送されている光信号は、いったんプロテクション系に導かれる。このとき、光伝送システムは、運用系からプロテクション系への切替えの直前の運用系における品質情報を光信号の送信元の光伝送装置に通知する。そして、送信元の光伝送装置は、光伝送システムがプロテクション系を利用して動作している期間に、品質情報に応じて伝送レートを調整する。このとき、送信元の光伝送装置において、上記劣化スパンを通過するすべてのチャネルに対して伝送レートの調整を実行する。その後、光伝送システムは、プロテクション系から運用系への切替えを行い、運用系で通信を再開する。
【0095】
このように、第1の実施形態の光伝送装置または光ネットワーク運用方法によれば、光伝送システムを拡張する際に、必要に応じて品質要求を満足するように伝送レートを下げることができる。このため、光再生中継器を追加することなく(或いは、少ない光再生中継器で)光伝送システムを拡張できる。同様に、光再生中継器を追加することなく(或いは、少ない光再生中継器で)、光伝送路の劣化から復旧が可能になる。したがって、光伝送システムの拡張または光伝送路の劣化からの復旧を、安価な構成で実現できる。
【0096】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、光伝送装置は、伝送レートに応じてクロック周波数を決定する。これに対して、第2の実施形態では、光伝送システムはOFDMを採用し、光伝送装置は伝送レートに応じて使用するサブキャリアの本数を決定する。すなわち、第2の実施形態では、使用するサブキャリアの本数を変えることにより、伝送レートが調整される。
【0097】
図11は、第2の実施形態の光伝送装置が備える光送信器の構成を示す図である。第2の実施形態の光送信器41は、複数のクライアントI/F51a〜51d、フレーマー70、CPU53、クロック生成部54、送信機モジュール55を備える。なお、クライアントI/F51a〜51dは、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0098】
CPU53は、第2の実施形態では、サブキャリア選択信号を生成する。すなわち、CPU53は、有効クライアント数および品質情報に基づいて、サブキャリア選択信号を生成する。すなわち、第2の実施形態において、CPU53は、図8に示すS1〜S8を実行した後、サブキャリア選択信号を生成する。
【0099】
光送信器41は、例えば、予め決められた所定数のサブキャリアを使用できるものとする。この例では、例えば、8本のサブキャリアが用意されているものとする。また、光送信器41は、光信号の伝送レートとして10Gbit/s、20Gbit/s、30Gbit/s、40Gbit/sのいずれか1つを選択できるものとする。そして、CPU53は、S6で決定した伝送レートに対応するサブキャリア選択信号を出力する。具体的には、CPU53は、伝送レートが10Gbit/sのときは2本のサブキャリアを選択し、伝送レートが20Gbit/sのときは4本のサブキャリアを選択し、伝送レートが30Gbit/sのときは6本のサブキャリアを選択し、伝送レートが40Gbit/sのときは8本のサブキャリアを選択するサブキャリア選択信号を出力する。
【0100】
フレーマー70は、サブキャリア生成部71、マッピング部72、IFFT部73を備える。フレーマー70は、図5に示すフレーマー52と同様に、クライアントI/F51a〜51dから出力されるクライアントデータを一時的に格納するバッファメモリ52a〜52dを備えてもよい。
【0101】
サブキャリア生成部71は、サブキャリア選択信号により指定される本数の有効サブキャリアを生成する。マッピング部72は、クライアントI/F51a〜51dから出力されるクライアントデータを、サブキャリア生成部71により生成される対応するサブキャリアにマッピングする。これにより、複数のサブキャリアデータが生成される。そして、IFFT部73は、マッピング部72の出力データに対して逆フーリエ変換を実行することにより、時間領域データを生成する。
【0102】
第2の実施形態の送信機モジュール55は、D/Aコンバータ55e、ドライバ55f、光源55c、光変調器55dを備える。D/Aコンバータ55eは、フレーマー70において生成される時間領域データを、アナログ信号に変換する。ドライバ55fは、光変調器55dの変調方式に応じて、D/Aコンバータ55eの出力信号から駆動信号を生成する。そして、光変調器55dは、光源55cから出力されるCW光を、ドライバ55fにより生成される駆動信号で変調することにより、クライアントデータを伝送する光信号を生成する。
【0103】
第2の実施形態の光受信器は、第1の実施形態と同様に、対応する光送信器から伝送レート情報を受信する。また、第2の実施形態の光受信器は、特に図示しないが、マッピング部72、IFFT部73に対応する逆マッピング部およびFFT部を備える。そして、逆マッピング部およびFFT部は、伝送レート情報に応じてクライアントデータを再生する。さらに、第2の実施形態の光受信器は、第1の実施形態と同様に、品質情報を生成して光送信器へ通知する。
【0104】
このように、第2の実施形態においては、使用するサブキャリアの本数を変えることにより、伝送レートが調整される。したがって、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、光伝送システムの拡張または光伝送路の劣化からの復旧を、安価な構成で実現できる。
【0105】
<変形例>
図5〜図11を参照しながら説明した実施例では、光受信器から光送信器へ品質情報が通知され、光送信器がその品質情報を利用して伝送レートを決定する。しかし、発明に係る光伝送システムは、この方式に限定されるものではない。すなわち、例えば、光受信器は、光信号の品質を検出し、その品質に対応する最大伝送レートを決定してもよい。この場合、光受信器は、例えばOSCを利用して、最大伝送レートを光送信器に通知する。そうすると、光送信器は、図8のフローチャートにおいて、S3〜S4の処理の代わりに、最大伝送レートを表す情報を受信することになる。このように、発明に係る光伝送システムは、光受信器で検出した光信号の品質に基づいて生成される制御情報(品質情報、最大伝送レートを表す情報を含む)を送信側に通知し、光送信器がその制御情報を利用して伝送レートを決定してもよい。
【0106】
また、図5〜図11を参照しながら説明した実施例では、各クライアントI/F51a〜51dが受信するクライアントデータのビットレートが互いにほぼ同じである。しかし、発明に係る光伝送装置は、この構成に限定されるものではない。すなわち、各クライアントI/F51a〜51dが受信するクライアントデータのビットレートは、互いにほぼ同じでなくてもよい。この場合、CPU53は、たとえば、各クライアントI/F51a〜51dの有効ビットレートの総和(すなわち、クライアントデータの総トラヒック量)を検出する。そして、CPU53は、有効ビットレートの総和および品質情報に基づいて、伝送レートを決定する。
【符号の説明】
【0107】
3(3a、3b) 光伝送路
10、20 光伝送装置
11、21 送信部
12、22 受信部
41(41−1〜41−n) 光送信器
47(47−1〜47−n) 光受信器
51(51−1〜51−n) クライアントI/F
53 CPU
54 クロック生成部
55b ドライバ
55d 光変調器
65 デジタル信号処理部
65b OSNR算出部
65c 残留分散算出部
65d PMD算出部
71 サブキャリア生成部
72 マッピング部
73 逆フーリエ変換部(IFFT)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを介して光信号を伝送する光伝送装置および光伝送システム、並びに光ネットワークの運用方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムにおいて伝送距離が長くなると、光信号は減衰する。このため、長距離光伝送システムを構築するためには、光伝送路上に1または複数の光中継ノードが配置される。各光中継ノードは、光信号を増幅する光アンプを備えている。
【0003】
また、光信号は、光ファイバを介して伝送されると、品質が劣化する。すなわち、光信号の品質は、例えば、光ファイバの波長分散および偏波モード分散などの影響を受けて劣化する。或いは、光受信器において、OSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio、光信号対雑音比)が劣化する。このため、光中継ノードは、光信号を再生するための光再生中継器を備えることがある。
【0004】
図1(a)は、光伝送システムの一例を示す図である。図1(a)に示す光伝送システムにおいて、光伝送装置1および光伝送装置2は、光伝送路3により接続されている。光伝送路3は、光ファイバケーブルである。光伝送路3上には、光中継ノード4a、4b、4c、4dが設けられている。各光中継ノード4a、4b、4c、4dは、それぞれ光信号を増幅する光アンプを備えている。
【0005】
上記構成の光伝送システムにおいて、光伝送装置1の光送信部は、所定のビットレートの光信号を送信する。光中継ノード4a、4b、4c、4dは、この光信号を増幅しながら中継する。そして、光伝送装置2の光受信部は、光伝送路3を介して伝送される光信号を受信する。
【0006】
図1(b)に示す光伝送システムは、図1(a)に示す光伝送システムと比較すると、光伝送路3が延長され、光中継ノード4eが追加されている。すなわち、図1(b)に示す光伝送システムは、図1(a)に示す光伝送システムと比較すると、スパン数が増加している。ここで、光伝送路3を延長すると、光伝送装置2における光信号の品質(OSNR、残留波長分散、偏波モード分散等)が劣化する。このため、この光伝送システムは、光信号を再生する光再生中継器(Optical Regenerator)5を備える。図1(b)に示す例では、光再生中継器5は、光中継ノード4dに接続されている。なお、光再生中継器5は、3R(Regenerating, Retiming, Reshaping)機能を備える。したがって、光伝送装置2において、光信号の品質は改善する。
【0007】
図1(c)は、図1(a)に示す光伝送システムにおいて、光中継ノード4c、4d間の光伝送路3の特性が劣化した状態を示している。この場合も、光伝送装置2の光受信部における光信号の品質が劣化する。よって、この光伝送システムにおいても、光伝送装置2において所定の品質を確保するためには、光再生中継器5が接続される。図1(c)に示す例では、光中継ノード4cに光再生中継器5が接続されている。
【0008】
なお、関連する技術として、特許文献1〜5の記載の技術が提案されている。また、非特許文献1には、ビットレート調整可能な光OFDMトランスポンダが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−77962号公報
【特許文献2】特開平10−75279号公報
【特許文献3】特開2004−356742号公報
【特許文献4】特表2008−533822号公報
【特許文献5】特開2008−278488号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】OFC/NFOEC2009, NTuB5, Axel Klekamp, Olivier Rival, Annalisa Morea, Roman Dischler, Fred Buchali “Transparent WDM Network with Bitrate Tunable Optical OFDM Transponders”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、光伝送システムの光伝送路の途中に光再生中継器を設けることにより、伝送距離を長くする(すなわち、スパン数を増やす)ことができる。或いは、光再生中継器を接続することにより、光ファイバの劣化を救済することができる。
【0012】
ただし、光再生中継器は、光信号をいったん電気信号に変換し、その電気信号に対して3R処理を行う。そして、光再生中継器は、3R処理後の電気信号を光信号に変換して光伝送路に出力する。すなわち、光再生中継器は、光/電気変換素子および電気/光変換素子を備える。このため、光再生中継器は、高価であり、回路サイズも大きくなる。特に、WDM光信号を伝送するWDMネットワークにおいては、光再生中継器は、波長ごとに光/電気変換素子および電気/光変換素子を備えることが好ましく、その場合、光再生中継器は非常に高価になる。
【0013】
本発明の課題は、安価な構成で光伝送システムの拡張または光伝送路の劣化からの復旧を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの態様の光伝送装置は、データを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部と、有効クライアント数を検出する検出部と、前記有効クライアント数および光受信器において検出される前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する伝送レート決定部、を備える。
【0015】
本発明の1つの態様の光伝送システムは、第1の光伝送装置から第2の光伝送装置へ光信号を伝送する。第1の光伝送装置は、有効クライアント数を検出する検出部と、伝送レートを決定する伝送レート決定部と、前記伝送レートでデータを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部、を備える。第2の光伝送装置は、前記光信号の品質を検出する品質検出部と、前記品質検出部による検出結果に基づいて制御情報を生成する生成部と、前記制御情報を前記第1の光伝送装置に通知する通知部、を備える。そして、前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数および前記制御情報に基づいて、前記伝送レートを決定する。
【0016】
本発明の1つの態様の光ネットワークの運用方法は、第1の光伝送装置から第2の光伝送装置へ光信号を送信し、前記第2の光伝送装置において前記光信号の品質を検出し、前記第1の光伝送装置において有効クライアント数を検出し、前記第1の光伝送装置において、前記有効クライアント数および前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する。
【発明の効果】
【0017】
上述の態様によれば、安価な構成で光伝送システムの拡張または光伝送路の劣化からの復旧を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光伝送システムの一例を示す図である。
【図2】実施形態の光伝送システムの構成を示す図である。
【図3】光伝送装置が備える送信部の構成を示す図である。
【図4】光伝送装置が備える受信部の構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態の光伝送装置が備える光送信器の構成を示す図である。
【図6】第1の実施形態の光伝送装置が備える光受信器の構成を示す図である。
【図7】光信号および制御情報の伝送経路について説明する図である。
【図8】第1の実施形態において伝送レートを決定する処理を示すフローチャートである。
【図9】伝送レートの変更の実施例を示す図である。
【図10】波長チャネルごとに伝送レートを調整する方法を説明する図である。
【図11】第2の実施形態の光伝送装置が備える光送信器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2は、実施形態の光伝送システムの構成を示す図である。図2に示すように、光伝送システムは、光伝送装置10、光伝送装置20、光伝送路3a、3b、光中継ノード31a、32a、33a、光中継ノード31b、32b、33bを備える。光伝送装置10および光伝送装置20は、光伝送路3a、3bにより接続されている。光伝送路3aは、光伝送装置10から光伝送装置20へ光信号を伝送する。光伝送路3bは、光伝送装置20から光伝送装置10へ光信号を伝送する。すなわち、光伝送装置10、20は、1組の双方向伝送路により接続されている。なお、光伝送路3a、3bは、それぞれ光ファイバケーブルである。
【0020】
光伝送装置10は、送信部11および受信部12を備える。送信部11は、光信号を生成して光伝送路3aを介して光伝送装置20へ送信する。また、受信部12は、光伝送装置20から送信される光信号を、光伝送路3bを介して受信する。同様に、光伝送装置20は、送信部21および受信部22を備える。送信部21は、光信号を生成して光伝送路3bを介して光伝送装置10へ送信する。また、受信部22は、光伝送装置10から送信される光信号を、光伝送路3aを介して受信する。
【0021】
光伝送路3a上には、光中継ノード31a、32a、33aが設けられている。各光中継ノード31a、32a、33aは、それぞれ光伝送路3a上の光信号を増幅する光アンプを備えている。同様に、光伝送路3b上には、光中継ノード31b、32b、33bが設けられている。各光中継ノード31b、32b、33bは、それぞれ光伝送路3b上の光信号を増幅する光アンプを備えている。なお、光中継ノード31a、31bは、1つの中継装置内に設けられる。同様に、光中継ノード32a、32bは1つの中継装置内に設けられ、光中継ノード33a、33bも1つの中継装置内に設けられる。
【0022】
上記構成の光伝送システムにおいて、光伝送装置10、20は、この実施例では、WDM光信号を送信および受信する。この場合、各光中継ノード31a、32a、33a、31b、32b、33bは、それぞれWDM光信号を一括して増幅する光アンプを備えることが好ましい。
【0023】
光伝送装置10、20の構成および動作は、基本的に互いにほぼ同じである。したがって、以下の説明では、1つの例として、光伝送装置10から光伝送装置20へ光信号を伝送するケースについて説明し、光伝送装置20から光伝送装置10へ光信号を伝送するケースについては説明を省略する。
【0024】
図3は、光伝送装置が備える送信部の構成を示す図である。図3に示す送信部は、図2に示す光伝送装置10が備える送信部11、または光伝送装置20が備える送信部21に相当する。以下の説明では、図3に示す送信部は、光伝送装置10が備える送信部11であるものとする。なお、送信部11、21の構成は、互いにほぼ同じである。
【0025】
送信部11は、複数の光送信器41(41−1〜41−n)、マルチプレクサ42、OSC送信部43、光カプラ44を備える。光送信器41−1〜41−nは、それぞれクライアントデータを伝送する光信号を生成する。光送信器41−1〜41−nにより生成される光信号の波長は、互いに異なっている。すなわち、光送信器41−1、41−2、41−3、・・・、41−nは、それぞれ波長λ1、λ2、λ3、・・・、λnの光信号を生成する。なお、波長λ1〜λnは、例えば、エルビウム添加光ファイバアンプ(EDFA)の利得帯内に配置される。そして、マルチプレクサ42は、光送信器41−1〜41−nにより生成される複数の光信号を多重化してWDM光信号を生成する。
【0026】
OSC送信部43は、光伝送システムを制御するための制御情報を生成する。制御情報は、後述する品質情報および/または伝送レート情報を含むようにしてもよい。また、OSC送信部43は、その制御情報を伝送するOSC光信号を生成する。そして、OSC送信部43は、OSC(Optical Supervisory Channel、監視チャネル)を利用してOSC光信号を送信する。OSCは、予め決められた所定の波長が割り当てられており、データ信号が配置される波長帯(波長λ1〜λnが配置されるEDFAの利得帯)の外に配置される。
【0027】
なお、図2に示す各光中継ノード31a〜33aは、光伝送路3a上の光信号からOSC光信号を抽出する機能を備える。そして、各光中継ノード31a〜33aは、OSC光信号から制御情報を再生し、その制御情報により指示される動作を実行する。さらに、各光中継ノード31a〜33aは、次の光中継ノードまたは光伝送装置へOSC光信号を送信する。
【0028】
光カプラ44は、マルチプレクサ42から出力されるWDM光信号にOSC光信号を追加する。すなわち、送信部11は、WDM光信号およびOSC光信号を光伝送路3aへ出力する。なお、マルチプレクサ42は、光送信器41−1〜41−nにより生成される複数の光信号およびOSC光信号を多重化してもよい。この場合、送信部11は、光カプラ44を省くことができる。
【0029】
図4は、光伝送装置が備える受信部の構成を示す図である。図4に示す受信部は、光伝送装置10が備える受信部12、または光伝送装置20が備える受信部22に相当する。以下の説明では、図4に示す受信部は、光伝送装置20が備える受信部22であるものとする。なお、受信部12、22の構成は、互いにほぼ同じである。
【0030】
受信部22は、光カプラ45、デマルチプレクサ46、光受信器47(47−1〜47−n)、OSC受信部48を備える。そして、受信部22は、図3に示す送信部11により生成される光信号(WDM光信号およびOSC光信号)を、光伝送路3aを介して受信する。
【0031】
光カプラ45は、入力光信号からOSC光信号を分離してOSC受信部48に導く。また、光カプラ45は、入力光信号に含まれているWDM光信号をデマルチプレクサ46に導く。デマルチプレクサ46は、WDM光信号を波長ごとに分離する。そして、デマルチプレクサ46は、波長λ1〜λnの光信号を、それぞれ光受信器47−1〜47−nに導く。なお、デマルチプレクサ46は、WDM光信号およびOSC光信号を波長ごとに分離してもよい。この場合、受信部22は、光カプラ45を省くことができる。
【0032】
光受信器47−1〜47−nは、それぞれ波長λ1〜λnの光信号からクライアントデータを再生する。OSC受信部48は、OSC光信号から制御情報を取得する。この制御情報は、光伝送装置の動作および状態を制御するために使用される。
【0033】
図2の説明に戻る。図2において、光伝送装置10は、光信号を利用して伝送するデータの伝送レート(または、ビットレート)を調整する機能を有する。ここで、光伝送システムがWDM光信号を伝送する場合には、光伝送装置10は、各波長チャネルの伝送レートを独立して調整することができる。
【0034】
光伝送装置10は、光伝送路3aに設定されるOSCを利用して、送信部11の伝送レートを光伝送装置20に通知する。そして、光伝送装置20の受信部22は、この通知に従って、光伝送装置10から送信される光信号を受信してデータを再生する。
【0035】
光伝送装置20の受信部22は、光伝送装置10から送信される光信号の品質をモニタする。例えば、受信部22は、入力光信号のOSNR、残留波長分散、偏波モード分散の中の少なくとも1つをモニタする。そして、光伝送装置20は、光伝送路3bに設定されるOSCを利用して、モニタ結果を光伝送装置10に通知する。そうすると、光伝送装置10の送信部11は、通知されたモニタ結果に基づいて光信号の伝送レートを決定する。ただし、送信部11は、光伝送装置20から通知されるモニタ結果だけではなく、他の要因(例えば、トラヒック量)も考慮して伝送レートを決めることができる。
【0036】
光伝送システムがWDM光信号を伝送する場合、対応する1組の光送信器41と光受信器47との間で、伝送レート情報および品質情報が通知される。例えば、光送信器41−1から光受信器47−1へクライアントデータが送信される場合には、光送信器41−1は、自分がクライアントデータを送信するための伝送レートを表す伝送レート情報を光受信器47−1に通知する。また、光受信器47−1は、光送信器41−1からの光信号の品質を表す品質情報を光送信器41−1に通知する。
【0037】
<第1の実施形態>
図5は、第1の実施形態の光伝送装置が備える光送信器の構成を示す図である。図5に示す光送信器41は、図3に示す光送信器41−1〜41−nのなかの任意の1つに相当する。そして、光送信器41は、複数のクライアントI/F51a〜51d、フレーマー52、CPU53、クロック生成部54、送信機モジュール55を備える。
【0038】
クライアントI/F51a〜51dは、それぞれクライアント回線を収容するための入力ポートを備える。また、クライアントI/F51a〜51dは、対応するクライアント回線を介して受信するクライアントデータを終端するためのインタフェースを提供する。そして、クライアントI/F51a〜51dは、対応するクライアント回線のクライアントデータをフレーマー52に送信する。
【0039】
クライアントI/F51a〜51dが提供するインタフェースは、この実施例では、互いにほぼ同じであるものとする。すなわち、各クライアント回線のクライアントデータのフォーマットおよび伝送レートは、互いにほぼ同じである。
【0040】
クライアントI/F51a〜51dは、それぞれ、対応するクライアント回線を介してクライアント信号を受信すると、有効クライアントが存在することを検出する。そして、クライアントI/F51a〜51dは、有効クライアントの存在を検出すると、有効クライアント信号をCPU53に送信する。なお、クライアントI/F51a〜51dは、他の契機に基づいてクライアント信号を出力してもよい。例えば、クライアントI/F51a〜51dは、入力ポートにクライアント回線のコネクタが接続されたときに有効クライアント信号を出力してもよい。或いは、クライアントI/F51a〜51dは、クライアント端末との間でネゴシエーションが成功したときに有効クライアント信号を出力してもよい。
【0041】
図5に示す光送信器41は、4個のクライアントI/F51a〜51dを備えるが、クライアントI/Fの数は特に限定されるものではない。ただし、光送信器41は、複数のクライアントI/Fを備えることが好ましい。
【0042】
フレーマー52は、クライアントI/F51a〜51dに対応するバッファメモリ52a〜52dを備える。すなわち、クライアントI/F51aは、対応するクライアント回線から受信したクライアントデータをバッファメモリ52aに書き込む。同様に、クライアントI/F51b〜51dは、それぞれ対応するバッファメモリ52b〜52dにクライアントデータを書き込む。このとき、例えば、クライアントI/F51a、51bのみがクライアント回線からクライアントデータを受信するときは、バッファメモリ52a、52bにクライアントデータが書き込まれ、バッファメモリ52c、52dにはデータは書き込まれない。
【0043】
また、フレーマー52は、クロック生成部54により生成されるクロック信号を利用して、バッファメモリ52a〜52dからクライアントデータを読み出して送信機モジュール55に送信する。このとき、フレーマー52は、クライアントデータを格納している各バッファメモリ52a〜52dから、順番に、クライアントデータを読み出す。例えば、バッファメモリ52a、52bのみにクライアントデータが書き込まれているときは、フレーマー52は、バッファメモリ52a、52bから交互にクライアントデータを読み出す。このように、フレーマー52は、シリアライザとして動作する。なお、フレーマー52は、クライアントI/F51a〜51dが受信するデータの速度と、送信機モジュール55が送信するデータの速度との差分を調整するために、例えばダミーデータまたはパディングを生成する機能を備えるようにしてもよい。
【0044】
CPU53は、有効クライアント数に基づいて、クライアントデータを送信する際の伝送レートを決定する。具体的には、CPU53は、有効クライアント数に基づいてクロック周波数を決定する。ここで、CPU53は、クライアントI/F51a〜51dにより生成される有効クライアント信号に基づいて有効クライアント数を検出する。例えば、クライアントI/F51a、51bのみがクライアント回線からクライアントデータを受信するときは、クライアントI/F51a、51bは有効クライアント信号を出力し、クライアントI/F51c、51dは有効クライアント信号を出力しない。この場合、CPU53は、「有効クライアント数=2」を検出する。
【0045】
CPU53は、有効クライアント数だけでなく、品質情報にも基づいて伝送レート(すなわち、クロック周波数)を決定する。品質情報は、光信号の品質を表すと共に、光伝送路の特性を表す。また、品質情報は、送信先光伝送装置の光受信器において、受信光信号の品質(または、特性)をモニタすることにより生成される。送信先光伝送装置は、光送信器41から送信される光信号を受信する光伝送装置であり、図2に示す光伝送装置20に相当する。そして、送信先光伝送装置は、OSCを利用して、品質情報を光送信器41に通知する。
【0046】
CPU53は、有効クライアント数および品質情報に基づいて決定したクロック周波数を指定するクロック選択信号を生成する。クロック選択信号は、クロック選択部54に与えられる。また、CPU53は、OSCを利用して、光信号の伝送レート(または、クロック周波数)を送信先光伝送装置に通知する。
【0047】
クロック生成部54は、クロック選択信号により指定されるクロック信号を出力する。ここで、クロック生成部54は、例えば、互いに発振周波数の異なる複数の発振器を備える。図5に示す例では、クロック生成部54は、発振器CLK1〜CLK4を備える。この場合、クロック生成部54は、クロック選択信号に応じて発振器CLK1〜CLK4のなかの1つを選択する。そして、クロック生成部54は、選択した発振器により生成されるクロック信号を出力する。クロック生成部54により生成されるクロック信号は、フレーマー52および送信機モジュール55に与えられる。
【0048】
フレーマー52は、クロック生成部54により生成されるクロック信号を利用して、バッファメモリ52a〜52dからクライアントデータを読み出す。バッファメモリ52a〜52dから読み出されたクライアントデータは、送信機モジュール55に送信される。
【0049】
送信機モジュール55は、バッファメモリ55a、ドライバ55b、光源(LD)55c、光変調器55dを備える。フレーマー52から出力されるクライアントデータは、バッファメモリ55aに書き込まれる。そして、送信機モジュール55は、クロック生成部54により生成されるクロック信号を利用して、バッファメモリ55aからクライアントデータを読み出す。
【0050】
ドライバ55bは、バッファメモリ55aから読み出されるクライアントデータから駆動信号を生成する。このとき、ドライバ55bは、光変調器55dの変調方式に応じて、クライアントデータから駆動信号を生成する。
【0051】
光変調器55dは、光源55cから出力されるCW光を、ドライバ55bにより生成される駆動信号で変調することにより、クライアントデータを伝送する光信号を生成する。光変調器55dの変調方式は、特に限定されるものではないが、例えば、QPSKまたはDQPSKである。また、光変調器55dは、1組の偏波(X偏波およびY偏波)を利用してクライアントデータを送信してもよい。すなわち、光変調器55dは、例えば、DP−QPSK光信号を送信してもよい。
【0052】
上記構成の光送信器41において、クライアントI/F51a〜51dに接続される各クライアント回線は、例えば、10Gbit/sのクライアントデータを伝送する。この場合、クロック生成部54が備える発振器CLK1〜CLK4は、それぞれ下記のクロック信号を生成する。
CLK1:バッファメモリから10Gbit/sでデータを読み出すクロック信号
CLK2:バッファメモリから20Gbit/sでデータを読み出すクロック信号
CLK3:バッファメモリから30Gbit/sでデータを読み出すクロック信号
CLK4:バッファメモリから40Gbit/sでデータを読み出すクロック信号
ここで、例えば、クロック信号の1サイクルで、バッファメモリから1ビットのデータを読み出す構成においては、発振器CLK1〜CLK4の周波数は下記の通りである。
CLK1:10GHz
CLK2:20GHz
CLK3:30GHz
CLK4:40GHz
ただし、1クロックサイクルでバッファメモリからnビットのデータを読み出す構成においては、発振器CLK1の発振周波数は10/n GHzである。発振器CLK2〜CLK4についても同様である。
【0053】
なお、CPU53は、有効クライアント数を検出する検出部の一例である。また、CPU53は、光信号の伝送レートまたはクロック信号の周波数を決定する伝送レート決定部の一例である。さらに、クロック生成部54および送信器モジュール55は、光信号を生成して送信する光信号生成部の一例である。
【0054】
図6は、第1の実施形態の光伝送装置が備える光受信器の構成を示す図である。図6に示す光受信器47は、図4に示す光受信器47−1〜47−nのなかの任意の1つに相当する。
【0055】
光受信器47は、デジタルコヒーレント受信器であり、光フロントエンド回路60、A/Dコンバータ64a〜64d、デジタル信号処理部65、デコーダ66を備える。そして、光受信器47は、図5に示す光送信器41から送信される光信号を受信する。
【0056】
光フロントエンド回路60は、光位相ハイブリッド回路61、局部光源62、光検出器63a〜63dを備える。光位相ハイブリッド回路61は、入力光信号および局部光源62から出力される局発光を混合することにより、光信号のI成分およびQ成分を得る。この実施例では、変調方式はDP−QPSKである。したがって、光位相ハイブリッド回路61は、入力光信号のX偏波のI成分、Q成分、および入力光信号のY偏波のI成分、Q成分を得る。なお、局部光源62は、図5に示す光送信器41の光源55cとほぼ同じ波長のCW光を生成する。
【0057】
光検出器63a〜63dは、それぞれ、直列に接続された1組のフォトダイオードを含み、入力光を表す電気信号を出力する。図6に示す例では、光検出器63a、63b、63c、63dは、それぞれ、X偏波のI成分、X偏波のQ成分、Y偏波のI成分、Y偏波のQ成分を表す電気信号を出力する。
【0058】
A/Dコンバータ64a〜64dは、光検出器63a〜63dから出力される電気信号をそれぞれデジタルデータに変換する。すなわち、A/Dコンバータ64a、64b、64c、64dは、それぞれ、X偏波のI成分、X偏波のQ成分、Y偏波のI成分、Y偏波のQ成分を表すデジタルデータを出力する。
【0059】
デジタル信号処理部65は、DSP(Digital Signal Processor)を備え、X偏波のI成分、Q成分、およびY偏波のI成分、Q成分を表すデジタルデータからシンボルを再生する。ここで、デジタル信号処理部65は、データ識別部65a、OSNR算出部65b、残留分散算出部65c、PMD算出部65dを提供する。データ識別部65a、OSNR算出部65b、残留分散算出部65c、PMD算出部65dは、例えば、DSPがソフトウェアプログラムを実行することにより実現される。ただし、データ識別部65a、OSNR算出部65b、残留分散算出部65c、PMD算出部65dの一部は、ハードウェア回路で実現されてもよい。
【0060】
データ識別部65aは、入力光信号のX偏波のI成分、Q成分からX偏波のシンボルを再生し、入力光信号のY偏波のI成分、Q成分からY偏波のシンボルを再生する。QPSKでは、1シンボルは2ビットのデータを伝送する。したがって、DP−QPSKにおいては、データ識別部65aは、1セットのデジタルデータから4ビットのデータを再生する。
【0061】
OSNR算出部65bは、入力光信号のOSNRを算出する。また、残留分散算出部65cは、入力光信号の残留波長分散を算出する。さらに、PMD算出部65dは、入力光信号の偏波モード分散を算出する。ここで、入力光信号のI成分およびQ成分からOSNR、残留波長分散、偏波モード分散を算出する方法は、公知である。すなわち、デジタル信号処理部65は、公知のアルゴリズムを利用して、入力光信号のI成分およびQ成分からOSNR、残留波長分散、偏波モード分散を算出することができる。
【0062】
なお、デジタル信号処理部65は、必ずしもOSNR、残留波長分散、偏波モード分散のすべてを算出する必要はなく、それらのうちの少なくとも1つを算出すればよい。そして、デジタル信号処理部65は、OSNR、残留波長分散、偏波モード分散の少なくとも1つを含む品質情報を生成する。
【0063】
デコーダ66は、デジタル信号処理部65のデータ識別部65aにより再生されたデータを復号する。すなわち、デコーダ66は、クライアントデータを再生する。
図7は、光信号および制御情報の伝送経路について説明する図である。ここでは、光送信器41−1から光受信器47−1へ光伝送路3aを介して光信号が伝送されるものとする。この光信号は、光送信器41−1に収容されるクライアント回線のクライアントデータを伝送する。なお、図7においては、光中継ノードは省略されている。
【0064】
この場合、光受信器47−1は、光送信器41−1から送信される光信号の品質を検出する。光信号の品質は、上述したように、OSNR、残留波長分散、偏波モード分散の少なくとも1つである。そして、光受信器47−1は、検出した品質を表す品質情報を光送信器41−1に通知する。このとき、光伝送装置20の送信部21は、光伝送路3bに設定されるOSCを利用して、品質情報を光伝送装置10へ送信する。そうすると、光伝送装置10の受信部12は、OSCを介して品質情報を受信する。そして、受信部12は、この品質情報を光送信器41−1に提供する。
【0065】
光送信器41−1は、光送信器41−1の有効クライアント数および光受信器47−1から受信する品質情報に基づいて、クライアントデータを伝送する光信号の伝送レートおよびクロック周波数を決定する。そして、光送信器41−1は、決定した伝送レートで光信号を送信するとともに、伝送レートを表す伝送レート情報を光受信器47−1に通知する。このとき、光伝送装置10の送信部11は、光伝送路3aに設定されるOSCを利用して、伝送レート情報を光伝送装置20へ送信する。そうすると、受信部22は、OSCを介して伝送レート情報を受信する。そして、受信部22は、この伝送レート情報を光受信器47−1に提供する。
【0066】
光受信器47−1は、受信した伝送レート情報に従って、受信光信号からデータを再生する。このとき、光受信器47−1は、伝送レート情報により指示されるクロック周波数のクロック信号を生成する。そして、A/Dコンバータ64a〜64dは、このクロック信号を利用してデジタルデータを出力する。また、デジタル信号処理部65およびデコーダ66は、このクロック信号を利用して動作する。
【0067】
なお、光伝送装置20は、例えば、品質情報を定期的に光伝送装置10へ送信する。また、光伝送装置10は、例えば、初期設定時および伝送レートを変更したときに、伝送レート情報を光伝送装置20へ送信する。
【0068】
図8は、第1の実施形態において伝送レートを決定する処理を示すフローチャートである。なお、この処理は、各光送信器41−1〜41−nのCPU53によりそれぞれ実行される。また、この処理は、例えば、定期的に実行される。
【0069】
S1において、CPU53は、有効クライアント数を検出する。なお、CPU53は、例えば、上述したように、クライアントI/F51a〜51dから出力される有効クライアント信号を利用して有効クライアント数を検出する。或いは、CPU53は、各クライアントI/F51a〜51dに対してクライアント回線が有効か否かを問い合わせることによって、有効クライアント数を検出してもよい。
【0070】
S2において、CPU53は、S1で検出された有効クライアント数に基づいて、最小伝送レートRminを決定する。ここで、フレーマー52および送信機モジュール55においてバッファメモリからデータを読み出すためのクロック信号の周波数は、クライアントデータを伝送する光信号の伝送レートに比例するものとする。この場合、S2においてCPU53は、実質的に、最小クロック周波数を決定する。
【0071】
S3において、CPU53は、品質情報を取得する。品質情報は、図7を参照しながら説明したように、光信号を受信する光伝送装置において生成される。そして、CPU53は、OSCを利用して通知される品質情報を受信する。
【0072】
S4において、CPU53は、S3で取得した品質情報に基づいて、最大伝送レートRmaxを決定する。すなわち、CPU53は、実質的に、最大クロック周波数を決定する。
S5において、CPU53は、S2で決定された最小伝送レート以上かつS4で決定された最大伝送レート以下の範囲で、伝送レートを設定できるか否かを判定する。例えば、Rmin≦Rmaxであれば、CPU53は、伝送レートを設定できると判定する。
【0073】
伝送レートを設定できるときは、S6において、CPU53は、クライアントデータを伝送する光信号の伝送レートを決定する。すなわち、CPU53は、実質的に、クロック周波数を決定する。
【0074】
S7において、CPU53は、現在の伝送レートと新たに決定した伝送レートとを比較する。そして、伝送レートを変更する場合には、CPU53は、S8において、新たな伝送レートを表す伝送レート情報を生成する。なお、伝送レート情報は、図7を参照しながら説明したように、OSCを利用して、光信号を受信する光伝送装置に通知される。なお、伝送レートを変更しないときは、S8をスキップするようにしてもよい。
【0075】
S9において、CPU53は、S6で決定した伝送レートに対応するクロック信号を選択するためのクロック選択信号を生成する。そうすると、クロック生成部54は、クロック選択信号に対応する周波数のクロック信号を出力する。
【0076】
なお、伝送レートを設定できないときは(S5:No)、CPU53は、S10において、警告メッセージを出力する。この警告メッセージは、例えば「伝送レートの調整のみでは、所定の品質を確保できない」を表す。この場合、ネットワーク管理者は、例えば、警告メッセージに応じて、図1に示す光再生中継器5の設置を検討することができる。
【0077】
一例を示す。なお、以下の説明では、各クライアント回線は、それぞれ10Gbit/sのクライアントデータを伝送するものとする。また、光送信器41は、光信号の伝送レートとして、10Gbit/s、20Gbit/s、30Gbit/s、40Gbit/sのいずれか1つを選択できるものとする。
【0078】
上記構成の光送信器41において、CPU53は、例えば「有効クライアント数=2」を検出したものとする。この場合、CPU53は、以下のようにして光信号の最小伝送レートRminを決定する。
Rmin=10Gbit/s×2=20Gbit/s
すなわち、「有効クライアント数=2」であるときは、光送信器41は、光信号の伝送レートとして、20Gbit/s、30Gbit/s、40Gbit/sのいずれか1つを選択できる。
【0079】
続いて、CPU53は、品質情報に基づいて最大伝送レートRmaxを決定する。最大伝送レートRmaxを決定する手順は、以下の通りである。
光受信器47が受信光信号からクライアントデータを再生するためには、受信光信号が伝送レートに応じて決まる所定のレベルよりも良好な品質を有していることが好ましい。ここで、「クライアントデータを再生」は、例えば、ビット誤り率が所定レベルよりも小さいことを意味する。
【0080】
受信品質の耐力は、伝送レートに応じて変化する。すなわち、伝送レートが低いときは耐力の条件は緩やかであり、伝送レートが高いときは耐力の条件は厳しい。例えば、伝送レートが2倍になると、OSNR耐力は3dB増加する。また、伝送レートが2倍になると、偏波モード分散耐力は2分の1になる。さらに、伝送レートが2倍になると、残留波長分散耐力は4分の1になる。
【0081】
光送信器41は、例えば、OSNR、偏波モード分散、残留波長分散についての耐力と伝送レートとの対応関係を格納するテーブルを有している。そして、CPU53は、品質情報を取得すると、そのテーブルを参照して最大伝送レートを決定する。例えば、伝送レートと残留波長分散耐力との対応関係が、下記の通りであるとする。
10Gbit/s:200ps/nm
20Gbit/s:50ps/nm
30Gbit/s:22ps/nm
40Gbit/s:12ps/nm
このとき、例えば、光受信器47により検出された残留波長分散が20ps/nmであるものとする。そして、この検出結果は、品質情報としてCPU53に通知される。そうすると、CPU53は、「残留波長分散=20ps/nm」に基づいて、最大伝送レートを決定する。このケースでは、検出された残留波長分散(20ps/nm)は、30Gbit/sに対応する耐力(22ps/nm)を満足するが、40Gbit/sに対応する耐力(12ps/nm)を超えている。すなわち、この場合、CPU53は、伝送レートが30Gbit/sであれば、光受信器47はクライアントデータを再生できるが、伝送レートが40Gbit/sであれば、光受信器47はクライアントデータを再生できない、と判定する。したがって、CPU53は、通知された残留波長分散に対して「最大伝送レート=30Gbit/s」と決定する。
【0082】
CPU53は、OSNRおよび偏波モード分散に対してもそれぞれ最大伝送レートを決定する。そして、CPU53は、3つの最大伝送レートの中で最も小さい値を選択する。例えば、OSNR、偏波モード分散、残留波長分散に対応する最大伝送レートが、それぞれ30Gbit/s、40Gbit/s、30Gbit/sであれば、「30Gbit/s」が選択される。この手順によれば、OSNR、偏波モード分散、残留波長分散のすべてについて耐力を満足するように最大伝送レートが決定される。
【0083】
なお、「最大伝送レート=30Gbit/s」である場合、光送信器41は、光信号の伝送レートとして10Gbit/s、20Gbit/s、30Gbit/sのいずれか1つを選択できる。
続いて、CPU53は、S2の最小伝送レートおよびS4の最大伝送レートに基づいて、光信号の伝送レートを決定する。具体的には、CPU53は、「S2の最小伝送レート以上」および「S4の最大伝送レート以下」という2つの条件を満たす伝送レートを選択する。この実施例では、「S2の最小伝送レート以上」に対応する選択可能な伝送レートは、以下通りである。
20Gbit/s、30Gbit/s、40Gbit/s
また、「S4の最大伝送レート以下」に対応する選択可能な伝送レートは、以下通りである。
10Gbit/s、20Gbit/s、30Gbit/s
上述の2つの条件を満たす伝送レートは、「20Gbit/s」および「30Gbit/s」である。したがって、CPU53は、「20Gbit/s」または「30Gbit/s」のいずれか一方を選択することができる。なお、S6において選択可能な伝送レートが複数ある場合、CPU53は、予め決められている通信ポリシに基づいて1つの伝送レートを選択してもよい。例えば、光送信器41(および、光受信器47)の消費電力を小さくするためには、選択可能な伝送レートの中で最小の伝送レート(上述の例では、20Gbit/s)を選択してもよい。
【0084】
このように、第1の実施形態においては、光送信器41は、有効クライアント数および光信号の受信品質に基づいて伝送レートを決定する。したがって、第1の実施形態においては、光ネットワークの柔軟な運用が可能になる。なお、既存の光ネットワークは、光信号の伝送レートは固定されているので、光ネットワークの柔軟な運用は困難である。
【0085】
図9は、伝送レートの変更の実施例を示す。この例では、図9(a)に示すように、光伝送装置10の光送信器41から光伝送装置20の光受信器47へ光信号が伝送されているものとする。また、光送信器41は、2本のクライアント回線を収容しているものとする。すなわち、「有効クライアント数=2」であり、クライアントデータの総トラヒック量は、20Gbit/sである。ただし、光送信器41は、40Gbit/sの光信号を送信するものとする。すなわち、図9(a)において、光信号の伝送レートが40Gbit/sであっても、光伝送装置20の受信光信号の品質は良好である。
【0086】
上記構成の光伝送システムにおいて、図9(b)に示すように、光伝送装置10、20間の光伝送路3を延長するものとする。そして、光送信器41は、図9(a)に示す運用状態と同様に、40Gbit/sの光信号を送信する。
【0087】
光受信器47は、受信光信号の品質(OSNR、偏波モード分散、残留波長分散)をモニタする。そして、光伝送装置20は、光受信器47により検出された品質を表す品質情報を光送信器41に通知する。このとき、光受信器47により検出された品質は、伝送レートが40Gbit/sであるときの耐力を超えているものとする。そうすると、光送信器41は、クライアントデータの総トラヒック量を満足し、且つ、光受信器47における受信耐力を満足するように、光信号の伝送レートを低下させる。この実施例では、光送信器41は、光信号の伝送レートを40Gbit/sから20Gbit/sに低下させている。
【0088】
図9(c)は、図9(a)に示す光伝送システムにおいて、光伝送路3の品質が劣化した状態を示している。この場合、光受信器47により検出される受信光信号の品質(OSNR、偏波モード分散、または残留波長分散)が劣化する。そして、光送信器41は、光伝送装置20からの通知により、光伝送路3の品質の劣化を認識する。そうすると、光送信器41は、図9(b)に示す例と同様に、光信号の伝送レートを低下させる。
【0089】
ここで、図1および図9に示す光伝送システムを比較する。図1に示す光伝送システムにおいては、光伝送装置1、2間の光信号の伝送レートは固定である。例えば、光伝送装置1の光送信部が10Gbit/sのクライアント回線を4本収容可能である場合は、光送信部に実際に接続されているクライアント回線の本数にかかわらず、光信号の伝送レートは40Gbit/sである。このため、図1(b)に示すように、光伝送路3を延長し、光伝送装置2における受信品質が、40Gbit/sに対応する耐力を超えると、光伝送システムに光再生中継器5を設ける必要が生じる。また、図1(c)に示すように光伝送路が劣化した場合も同様に、光伝送システムに光再生中継器5を設ける必要が生じる。
【0090】
これに対して、第1の実施形態の光伝送システムにおいては、光伝送装置10、20間の光信号の伝送レートは可変である。具体的には、光送信器41と光受信器47との間の光信号の伝送レートは可変である。そして、図9(b)に示すように、光伝送路3を延長したときに、光伝送装置22における受信品質が、40Gbit/sに対応する耐力を超えたとすると、光送信器41は、伝送レートを低下させる。具体的には、光送信器41は、上述したように、クライアントデータの総トラヒック量を満足し、且つ、光受信器47における受信耐力を満足するように、光信号の伝送レートを低下させる。したがって、第1の実施形態の光伝送システムにおいては、図1に示す光再生中継器5を設けることなく、光伝送路のスパン数を増やすことができる。また、図9(c)に示すように光伝送路が劣化した場合も同様に、光再生中継器5を設けることなく、伝送レートを低下させることで光伝送システムを復旧させることができる。
【0091】
図10は、波長チャネルごとに伝送レートを調整する方法を説明する図である。図10に示す例では、光伝送装置10から光伝送装置20A、20Bに光信号が伝送される。ここで、光送信器41−1は波長λ1の光信号を生成し、光送信器41−2は波長λ2の光信号を生成する。また、光伝送装置10は、波長λ1の光信号および波長λ2の光信号を含むWDM光信号を送信する。そして、光中継ノード4cは、波長λ1の光信号を光伝送装置20Aに導き、波長λ2の光信号を光伝送装置20Bに導く。なお、光中継ノード4cは、例えば、WSS(Wavelength Selective Switch)を備える。
【0092】
この場合、光受信器47aは、受信光信号の品質を表す品質情報を光送信器41−1に通知する。そうすると、光送信器41−1は、光送信器41−1の有効クライアント数および光受信器47aからの通知に基づいて、波長λ1の光信号の伝送レートを決定する。同様に、光受信器47bは、受信光信号の品質を表す品質情報を光送信器41−2に通知する。そうすると、光送信器41−2は、光送信器41−2の有効クライアント数および光受信器47bからの通知に基づいて、波長λ2の光信号の伝送レートを決定する。
【0093】
このように、第1の実施形態の光伝送システムは、波長チャネル毎にそれぞれ伝送レートを調整することができる。したがって、たとえば、WDM光信号の中の一部の波長チャネルのみを拡張する場合には、その波長チャネルの伝送レートのみを調整すればよい。また、WDM光信号の中の一部の波長チャネルのみが設定されている区間の光伝送路が劣化した場合は、その波長チャネルの伝送レートのみを調整すればよい。例えば、図10に示す光中継ノード4d、4e間の光伝送路3が劣化した場合には、波長チャネルλ2の伝送レートのみを調整すればよい。
【0094】
ただし、複数の波長チャネルを含むWDMパスが設定されているスパンが劣化した場合は、そのスパン上の複数のチャネルすべてに対して伝送レートを調整するネゴシエーションが実行される。例えば、運用系およびプロテクション系を備える光伝送システムにおいて、運用系の光伝送路のあるスパンが劣化したときは、その劣化スパンを介して伝送されている光信号は、いったんプロテクション系に導かれる。このとき、光伝送システムは、運用系からプロテクション系への切替えの直前の運用系における品質情報を光信号の送信元の光伝送装置に通知する。そして、送信元の光伝送装置は、光伝送システムがプロテクション系を利用して動作している期間に、品質情報に応じて伝送レートを調整する。このとき、送信元の光伝送装置において、上記劣化スパンを通過するすべてのチャネルに対して伝送レートの調整を実行する。その後、光伝送システムは、プロテクション系から運用系への切替えを行い、運用系で通信を再開する。
【0095】
このように、第1の実施形態の光伝送装置または光ネットワーク運用方法によれば、光伝送システムを拡張する際に、必要に応じて品質要求を満足するように伝送レートを下げることができる。このため、光再生中継器を追加することなく(或いは、少ない光再生中継器で)光伝送システムを拡張できる。同様に、光再生中継器を追加することなく(或いは、少ない光再生中継器で)、光伝送路の劣化から復旧が可能になる。したがって、光伝送システムの拡張または光伝送路の劣化からの復旧を、安価な構成で実現できる。
【0096】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、光伝送装置は、伝送レートに応じてクロック周波数を決定する。これに対して、第2の実施形態では、光伝送システムはOFDMを採用し、光伝送装置は伝送レートに応じて使用するサブキャリアの本数を決定する。すなわち、第2の実施形態では、使用するサブキャリアの本数を変えることにより、伝送レートが調整される。
【0097】
図11は、第2の実施形態の光伝送装置が備える光送信器の構成を示す図である。第2の実施形態の光送信器41は、複数のクライアントI/F51a〜51d、フレーマー70、CPU53、クロック生成部54、送信機モジュール55を備える。なお、クライアントI/F51a〜51dは、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0098】
CPU53は、第2の実施形態では、サブキャリア選択信号を生成する。すなわち、CPU53は、有効クライアント数および品質情報に基づいて、サブキャリア選択信号を生成する。すなわち、第2の実施形態において、CPU53は、図8に示すS1〜S8を実行した後、サブキャリア選択信号を生成する。
【0099】
光送信器41は、例えば、予め決められた所定数のサブキャリアを使用できるものとする。この例では、例えば、8本のサブキャリアが用意されているものとする。また、光送信器41は、光信号の伝送レートとして10Gbit/s、20Gbit/s、30Gbit/s、40Gbit/sのいずれか1つを選択できるものとする。そして、CPU53は、S6で決定した伝送レートに対応するサブキャリア選択信号を出力する。具体的には、CPU53は、伝送レートが10Gbit/sのときは2本のサブキャリアを選択し、伝送レートが20Gbit/sのときは4本のサブキャリアを選択し、伝送レートが30Gbit/sのときは6本のサブキャリアを選択し、伝送レートが40Gbit/sのときは8本のサブキャリアを選択するサブキャリア選択信号を出力する。
【0100】
フレーマー70は、サブキャリア生成部71、マッピング部72、IFFT部73を備える。フレーマー70は、図5に示すフレーマー52と同様に、クライアントI/F51a〜51dから出力されるクライアントデータを一時的に格納するバッファメモリ52a〜52dを備えてもよい。
【0101】
サブキャリア生成部71は、サブキャリア選択信号により指定される本数の有効サブキャリアを生成する。マッピング部72は、クライアントI/F51a〜51dから出力されるクライアントデータを、サブキャリア生成部71により生成される対応するサブキャリアにマッピングする。これにより、複数のサブキャリアデータが生成される。そして、IFFT部73は、マッピング部72の出力データに対して逆フーリエ変換を実行することにより、時間領域データを生成する。
【0102】
第2の実施形態の送信機モジュール55は、D/Aコンバータ55e、ドライバ55f、光源55c、光変調器55dを備える。D/Aコンバータ55eは、フレーマー70において生成される時間領域データを、アナログ信号に変換する。ドライバ55fは、光変調器55dの変調方式に応じて、D/Aコンバータ55eの出力信号から駆動信号を生成する。そして、光変調器55dは、光源55cから出力されるCW光を、ドライバ55fにより生成される駆動信号で変調することにより、クライアントデータを伝送する光信号を生成する。
【0103】
第2の実施形態の光受信器は、第1の実施形態と同様に、対応する光送信器から伝送レート情報を受信する。また、第2の実施形態の光受信器は、特に図示しないが、マッピング部72、IFFT部73に対応する逆マッピング部およびFFT部を備える。そして、逆マッピング部およびFFT部は、伝送レート情報に応じてクライアントデータを再生する。さらに、第2の実施形態の光受信器は、第1の実施形態と同様に、品質情報を生成して光送信器へ通知する。
【0104】
このように、第2の実施形態においては、使用するサブキャリアの本数を変えることにより、伝送レートが調整される。したがって、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、光伝送システムの拡張または光伝送路の劣化からの復旧を、安価な構成で実現できる。
【0105】
<変形例>
図5〜図11を参照しながら説明した実施例では、光受信器から光送信器へ品質情報が通知され、光送信器がその品質情報を利用して伝送レートを決定する。しかし、発明に係る光伝送システムは、この方式に限定されるものではない。すなわち、例えば、光受信器は、光信号の品質を検出し、その品質に対応する最大伝送レートを決定してもよい。この場合、光受信器は、例えばOSCを利用して、最大伝送レートを光送信器に通知する。そうすると、光送信器は、図8のフローチャートにおいて、S3〜S4の処理の代わりに、最大伝送レートを表す情報を受信することになる。このように、発明に係る光伝送システムは、光受信器で検出した光信号の品質に基づいて生成される制御情報(品質情報、最大伝送レートを表す情報を含む)を送信側に通知し、光送信器がその制御情報を利用して伝送レートを決定してもよい。
【0106】
また、図5〜図11を参照しながら説明した実施例では、各クライアントI/F51a〜51dが受信するクライアントデータのビットレートが互いにほぼ同じである。しかし、発明に係る光伝送装置は、この構成に限定されるものではない。すなわち、各クライアントI/F51a〜51dが受信するクライアントデータのビットレートは、互いにほぼ同じでなくてもよい。この場合、CPU53は、たとえば、各クライアントI/F51a〜51dの有効ビットレートの総和(すなわち、クライアントデータの総トラヒック量)を検出する。そして、CPU53は、有効ビットレートの総和および品質情報に基づいて、伝送レートを決定する。
【符号の説明】
【0107】
3(3a、3b) 光伝送路
10、20 光伝送装置
11、21 送信部
12、22 受信部
41(41−1〜41−n) 光送信器
47(47−1〜47−n) 光受信器
51(51−1〜51−n) クライアントI/F
53 CPU
54 クロック生成部
55b ドライバ
55d 光変調器
65 デジタル信号処理部
65b OSNR算出部
65c 残留分散算出部
65d PMD算出部
71 サブキャリア生成部
72 マッピング部
73 逆フーリエ変換部(IFFT)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部と、
有効クライアント数を検出する検出部と、
前記有効クライアント数および光受信器において検出される前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する伝送レート決定部と、
を備える光伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光伝送装置であって、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数および前記光信号の品質に基づいてクロック周波数を決定する周波数決定部を備え、
前記光信号生成部は、
前記周波数決定部により決定されたクロック周波数のクロック信号を生成するクロック生成部と、
前記クロック信号を用いて送信データを生成する送信データ生成部と、
前記送信データから前記光信号を生成する光変調部と、を備える
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光伝送装置であって、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数に応じて決まる第1の伝送レート以上、かつ前記光信号の品質に応じて決まる第2の伝送レート以下の範囲内で、前記伝送レートを決定し、
前記周波数決定部は、前記伝送レートに基づいて前記クロック周波数を決定する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光伝送装置であって、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数および前記光信号の品質に基づいて決まる数の有効サブキャリアを選択するサブキャリア選択部を備え、
前記光信号生成部は、
前記サブキャリア選択部により選択された複数の有効サブキャリアを利用してサブキャリアデータを生成するサブキャリアデータ生成部と、
前記サブキャリアデータを逆フーリエ変換して送信信号を生成する送信信号生成部と、
前記送信信号から前記光信号を生成する光変調部と、を備える
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光伝送装置であって、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数に応じて決まる第1の伝送レート以上、かつ前記光信号の品質に応じて決まる第2の伝送レート以下の範囲内で、前記伝送レートを決定し、
前記サブキャリア選択部は、前記伝送レートに基づいて前記有効サブキャリアの数を決定する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光伝送装置であって、
前記光信号の品質は、OSNR、残留波長分散、偏波モード分散の少なくとも1つである
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項7】
クライアントデータの総トラヒック量を検出する検出部と、
前記クライアントデータを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部と、
前記総トラヒック量および光受信器において検出される前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する伝送レート決定部と、
を備える光伝送装置。
【請求項8】
第1の光伝送装置から第2の光伝送装置へ光信号を伝送する光伝送システムであって、
前記第1の光伝送装置は、
有効クライアント数を検出する検出部と、
伝送レートを決定する伝送レート決定部と、
前記伝送レートでデータを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部と、を備え、
前記第2の光伝送装置は、
前記光信号の品質を検出する品質検出部と、
前記品質検出部による検出結果に基づいて制御情報を生成する生成部と、
前記制御情報を前記第1の光伝送装置に通知する通知部と、を備え、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数および前記制御情報に基づいて、前記伝送レートを決定する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項9】
第1の光伝送装置から第2の光伝送装置へ光信号を送信し、
前記第2の光伝送装置において前記光信号の品質を検出し、
前記第1の光伝送装置において有効クライアント数を検出し、
前記第1の光伝送装置において、前記有効クライアント数および前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する、
ことを特徴とする光ネットワークの運用方法。
【請求項10】
請求項9に記載の光ネットワークの運用方法であって、
前記光ネットワークはWDMネットワークであり、
波長チャネルごとに、有効クライアント数および光受信器において検出される光信号の品質に基づいて、光信号の伝送レートを決定する
ことを特徴とする光ネットワークの運用方法。
【請求項1】
データを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部と、
有効クライアント数を検出する検出部と、
前記有効クライアント数および光受信器において検出される前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する伝送レート決定部と、
を備える光伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光伝送装置であって、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数および前記光信号の品質に基づいてクロック周波数を決定する周波数決定部を備え、
前記光信号生成部は、
前記周波数決定部により決定されたクロック周波数のクロック信号を生成するクロック生成部と、
前記クロック信号を用いて送信データを生成する送信データ生成部と、
前記送信データから前記光信号を生成する光変調部と、を備える
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光伝送装置であって、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数に応じて決まる第1の伝送レート以上、かつ前記光信号の品質に応じて決まる第2の伝送レート以下の範囲内で、前記伝送レートを決定し、
前記周波数決定部は、前記伝送レートに基づいて前記クロック周波数を決定する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光伝送装置であって、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数および前記光信号の品質に基づいて決まる数の有効サブキャリアを選択するサブキャリア選択部を備え、
前記光信号生成部は、
前記サブキャリア選択部により選択された複数の有効サブキャリアを利用してサブキャリアデータを生成するサブキャリアデータ生成部と、
前記サブキャリアデータを逆フーリエ変換して送信信号を生成する送信信号生成部と、
前記送信信号から前記光信号を生成する光変調部と、を備える
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光伝送装置であって、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数に応じて決まる第1の伝送レート以上、かつ前記光信号の品質に応じて決まる第2の伝送レート以下の範囲内で、前記伝送レートを決定し、
前記サブキャリア選択部は、前記伝送レートに基づいて前記有効サブキャリアの数を決定する
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光伝送装置であって、
前記光信号の品質は、OSNR、残留波長分散、偏波モード分散の少なくとも1つである
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項7】
クライアントデータの総トラヒック量を検出する検出部と、
前記クライアントデータを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部と、
前記総トラヒック量および光受信器において検出される前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する伝送レート決定部と、
を備える光伝送装置。
【請求項8】
第1の光伝送装置から第2の光伝送装置へ光信号を伝送する光伝送システムであって、
前記第1の光伝送装置は、
有効クライアント数を検出する検出部と、
伝送レートを決定する伝送レート決定部と、
前記伝送レートでデータを伝送する光信号を生成して送信する光信号生成部と、を備え、
前記第2の光伝送装置は、
前記光信号の品質を検出する品質検出部と、
前記品質検出部による検出結果に基づいて制御情報を生成する生成部と、
前記制御情報を前記第1の光伝送装置に通知する通知部と、を備え、
前記伝送レート決定部は、前記有効クライアント数および前記制御情報に基づいて、前記伝送レートを決定する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項9】
第1の光伝送装置から第2の光伝送装置へ光信号を送信し、
前記第2の光伝送装置において前記光信号の品質を検出し、
前記第1の光伝送装置において有効クライアント数を検出し、
前記第1の光伝送装置において、前記有効クライアント数および前記光信号の品質に基づいて、前記光信号の伝送レートを決定する、
ことを特徴とする光ネットワークの運用方法。
【請求項10】
請求項9に記載の光ネットワークの運用方法であって、
前記光ネットワークはWDMネットワークであり、
波長チャネルごとに、有効クライアント数および光受信器において検出される光信号の品質に基づいて、光信号の伝送レートを決定する
ことを特徴とする光ネットワークの運用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−95189(P2012−95189A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242110(P2010−242110)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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