説明

光伝送装置

【課題】電気コネクタを用いることなく、必要に応じてトランスポンダの内部と外部との間で通信が行える光伝送装置を提供する。
【解決手段】光伝送システムを構成する光伝送装置10において、前記装置10の内部と外部との間で通信を行うための赤外線通信手段を、一つあるいは複数設ける。また、赤外線通信手段を介して、前記装置10のファームウェアの更新、前記装置10の内部メモリへのアクセス、前記装置10のログデータ確認、前記装置10内部信号のモニタ、の少なくともいずれかを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送装置に関し、詳しくは、装置内部と外部との通信の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量光伝送システムの構築に好適な光伝送装置として、非特許文献1に記載されているようなトランスポンダが実用化されている。
【0003】
図3は、非特許文献1に記載されている従来のトランスポンダのブロック図である。図3において、トランスポンダ10には、業界規格であるMSA(Multi Source Agreement)に準拠した300ピンの電気コネクタ11が設けられていて、この電気コネクタ11を介してユーザー機器20や外部端末30との間で信号の授受が行われる。MSAでは、電気コネクタ11における主信号、電源、I2C(Inter-Integrated Circuit)、アラーム、モニタなどの端子のピン配置があらかじめ割り当てられている。その他使用されていない端子ピンは、NUC(No User Connect)、FFU(Reserved for Future Use)となっており、通常は使用されない。
【0004】
また、電気コネクタ11には、コントローラ12と、シリアライザ13と、デシリアライザ14が接続されている。
【0005】
コントローラ12は、トランスポンダ10内部の制御や、トランスポンダ10とユーザー機器20との間に接続される図示しない外部インタフェースのI2C通信の制御などを行う。なお、コントローラ12には制御用メモリ15が接続されていて、この制御用メモリ15にはコントローラ12が使用するプログラムや設定値などが格納される。
【0006】
シリアライザ13は、電気コネクタ11から入力されるSFI(Serdes Framer Interface)4/5の規格に準拠した16ビットのパラレル電気信号をシリアル電気信号に変換し、光送信モジュール16へ出力する。なお、光送信モジュール16は、シリアライザ13から入力されるシリアル電気信号を光信号に変換して外部へ出力する。
【0007】
デシリアライザ14は、光受信モジュール17から入力されるシリアル電気信号をSFI4/5の規格に準拠した16ビットのパラレル電気信号に変換し、電気コネクタ11に出力する。なお、光受信モジュール17は、外部から入力される光信号をシリアル電気信号に変換してデシリアライザ14に出力する。
【0008】
ユーザー機器20は、トランスポンダ10の利用にあたってベンダにより接続される機器である。電気コネクタ11を介して、トランスポンダ10との間で、SFI4/5の規格に準拠した16ビットのパラレル電気信号、電源、I2C、アラーム、モニタ信号などを含む各種信号の授受を行う。
【0009】
外部端末30は、トランスポンダ10のメーカーにより、製造、デバッグ時、ユーザー先でのサポート作業など必要に応じて接続される機器である。トランスポンダ10のメーカーは、製品の差別化を行うために、電気コネクタ11のNUCやFFUに独自に信号を割り当ててトランスポンダ10の内部と通信を行い、たとえばコントローラ12のファームウェアをアップデートしたり、制御用メモリ15に直接アクセスしたり、コントローラ12のログを確認したり、MSAでは規定されていないアラームやトランスポンダ10の内部信号を直接モニタすることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】太田 篤伸、外3名、「長距離光伝送システム向け43Ggps RZ−DQPSKトランスポンダ」、横河技報、横河電機株式会社、2008年9月20日、Vol.52 No.3(2008) p.5−8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、トランスポンダ10のメーカーが独自に割り当てる信号は、電気コネクタ11の通常使用されないNUCやFFUを利用するため、トランスポンダ10を利用する一部のベンダ(ユーザー)も同様にNUCやFFUを利用するように設計すると、最悪の場合には、信号の衝突や短絡が発生し、トランスポンダ10の本体やユーザー機器20を破壊したり、意図しない入力により誤動作の原因となってしまうことがある。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するもので、その目的は、電気コネクタ11を用いることなく、必要に応じてトランスポンダ10の内部と外部との間で通信が行える光伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
光伝送システムを構成する光伝送装置において、
前記装置の内部と外部との間で通信を行うための赤外線通信手段、
を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の光伝送装置において、
前記赤外線通信手段は、複数系統設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、
請求項1または請求項2記載の光伝送装置において、
前記赤外線通信手段を介して、前記装置のファームウェアの更新、前記装置の内部メモリへのアクセス、前記装置のログデータ確認、前記装置内部信号のモニタ、の少なくともいずれかを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
これらにより、必要に応じて、赤外線通信手段を介して、光伝送システムにおける光伝送動作に影響を与えることなく、光伝送装置の内部と外部との間で通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図3】非特許文献1に記載されている従来のトランスポンダのブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、トランスポンダ10の一方の側面には、赤外線発光部18と赤外線受光部19がこれらの発光面と受光面が同一面を形成するように設けられている。
【0019】
そして、これら同一面を形成する赤外線発光部18の発光面および赤外線受光部19の受光面と対向するように、トランスポンダ10の外部には赤外線トランシーバ40が設けられている。外部端末30は、この赤外線トランシーバ40と赤外線発光部18および赤外線受光部19を介してトランスポンダ10と接続されることになる。
【0020】
赤外線発光部18は、コントローラ12でIrDA(Infrared Data Association)方式に対応するようにエンコードされた電気信号を赤外線に変換し、トランスポンダ10の外部に出力する。
【0021】
赤外線受光部19は、トランスポンダ10の外部から入射される赤外線を受光して電気信号へ変換し、コントローラ12に出力する。
【0022】
赤外線トランシーバ40は、外部端末30から入力される電気信号をIrDA方式の信号にエンコードして赤外線信号に変換することにより赤外線受光部19に入射するとともに、赤外線発光部18から照射される赤外線信号を受光して電気信号に変換しデコードした信号を外部端末30に出力する。
【0023】
図1で付加された赤外線関連部分の動作を中心に説明する。
外部端末30からたとえばUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter、汎用非同期送受信回路)に基づく電気信号が赤外線トランシーバ40に入力されると、赤外線トランシーバ40は入力された電気信号をIrDA方式に対応したたとえばIrCOMM規格のようなプロトコルに変換して赤外線として発光出力する。
【0024】
赤外線トランシーバ40から発光出力される赤外線は、赤外線受光部19で受光されて電気信号に変換された後コントローラ12に入力され、コントローラ12でデコードされて外部端末30からの命令が実行される。
【0025】
外部端末30からの命令に基づく実行結果は、コントローラ12でIrDA方式に対応したたとえばIrCOMM規格のようなプロトコルに変換され、赤外線発光部18から赤外線として発光出力される。
【0026】
赤外線発光部18から発光出力される赤外線は、赤外線トランシーバ40でIrDA方式に対応したたとえばIrCOMM規格のようなプロトコルから外部端末30で受信できるたとえばUARTに基づく電気信号に変換され、外部端末30に出力される。
【0027】
このように構成することにより、従来、トランスポンダ10のメーカーがMSAに準拠した300ピンの電気コネクタ11のNUC、FFU端子ピンに割り当てていた前述のようなコントローラ12のファームウェアをアップデートしたり、制御用メモリ15に直接アクセスしたり、コントローラ12のログを確認したり、MSAでは規定されていないアラームやトランスポンダ10の内部信号を直接モニタするための独自の信号をIrDA方式の信号に置き換えることができ、電気コネクタ11のNUC、FFU端子ピンを完全にMSAに準拠した状態に戻すことができる。
【0028】
トランスポンダ10のメーカーは、MSAに準拠した300ピンの電気コネクタ11のNUC、FFU端子ピンにメーカー独自の信号を割り当てる必要がないので、これらの端子ピンを完全にOPENにすることができる。これにより、トランスポンダ10を利用するベンダがこれらNUCやFFUの端子ピンになんらかの信号を割り当てたとしても、従来のようにトランスポンダ10の動作に悪影響を及ぼすおそれはなくなる。
【0029】
また、従来のようにMSAに準拠した300ピンの電気コネクタ11のNUC、FFU端子ピンにメーカー独自の信号を割り当てた場合には、そのトランスポンダ10がベンダの装置に実装された状態ではそれらの割り当てた信号を利用することができなかったが、本発明のように赤外線通信を用いることにより、トランスポンダ10がベンダの装置に実装された状態でも利用することができる。
【0030】
また、赤外線通信を用いることにより、電波を使った通信に比べて、通信に起因する周辺機器に対する影響を大幅に軽減できる。
【0031】
さらに、赤外線通信の場合は通信範囲がかなり限定されるので、トランスポンダ10が複数台ある場合でも、トランスポンダ10を識別するための特別な設定を付加することなく個々のトランスポンダ10に対する個別の通信が行える。
【0032】
図2は、本発明の他の実施例を示すブロック図である。図2の実施例では、赤外線発光部18と赤外線受光部19を、破線で示すように、トランスポンダ10の外周の異なる側面に複数組設けている。
【0033】
図2のように構成することにより、トランスポンダ10の現場での使用状況によってはいずれかの赤外線発光部18と赤外線受光部19の組の発光面と受光面が障害物などで遮られても、他の赤外線発光部18と赤外線受光部19の組を用いて安定した状態で赤外線通信を行うことができる。
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、従来のような電気コネクタを用いることなく、赤外線通信手段を用いて、必要に応じてトランスポンダの内部と外部との間で通信が行える光伝送装置が実現できる。
【符号の説明】
【0035】
10 光伝送装置(トランスポンダ)
18 赤外線発光部
19 赤外線受光部
20 ユーザー機器
30 外部端末
40 赤外線トランシーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送システムを構成する光伝送装置において、
前記装置の内部と外部との間で通信を行うための赤外線通信手段、
を設けたことを特徴とする光伝送装置。
【請求項2】
前記赤外線通信手段は、複数系統設けられていることを特徴とする請求項1記載の光伝送装置。
【請求項3】
前記赤外線通信手段を介して、前記装置のファームウェアの更新、前記装置の内部メモリへのアクセス、前記装置のログデータ確認、前記装置内部信号のモニタ、の少なくともいずれかを行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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