説明

光位相同期化広帯域光源

【課題】1つのマルチ光周波数キャリア発生装置を用い、中心光周波数が異なる複数のマルチ光周波数キャリアを相互に位相同期させて同時に発生させる。
【解決手段】所定の周波数間隔を有し互いに位相が同期した光周波数コムを発生する光周波数コム発生手段12と、光周波数が異なる複数のCW光を出力する複数の安定化CW光源20と、これらのCW光を合波する手段16と、合波された複数のCW光を入力し、各CW光から互いに異なる帯域の複数の光周波数成分を有するマルチ光周波数キャリアを発生させる発生装置17と、合波された複数のCW光のパワーの一部と光周波数コムとを合波する手段18と、複数のCW光と光周波数コムとを合波した光を検波し複数のCW光の光周波数・位相と光周波数コムの該当する光周波数・位相とが同期するように複数の安定化CW光源を帰還制御するマルチ光位相検波回路19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長多重光伝送システムや光計測における光周波数基準として用いられる等しい光周波数間隔のマルチ光周波数キャリアを発生する広帯域光源に関する。特に、1つのマルチ光周波数キャリア発生装置で位相同期した広帯域のマルチ光周波数キャリアを一括して発生させる光位相同期化広帯域光源に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に、従来の広帯域光源の構成例を示す(特許文献1、非特許文献1)。
図8において、広帯域光源は、マルチ光周波数キャリアの種光源として連続発振光(CW光)を発生させるCW光源91と、CW光を入力してマルチ光周波数キャリアを発生させるマルチ光周波数キャリア発生装置として、位相変調を施す位相変調器92、93と、変調周波数fm [Hz]の正弦波を発生する信号発生器94と、変調信号の位相を調整する位相シフタ95と、群速度分散を与える分散媒質96とを備える。
【0003】
CW光源91で発生させたCW光は位相変調器92に入射され、そこで信号発生器94からの変調周波数fm [Hz]の正弦波によって変調指数Δθ1 =π/4で位相変調され、チャープが付与される。チャープを受けたCW光は、分散媒質96を通過することによって、群速度分散B2 (=±1/(4πfm2))[秒2 ]が与えられる。群速度分散を受けたCW光は位相変調器93に入力される。位相変調器93は、信号発生器94から出力された変調周波数fm の正弦波を位相シフタ95を介して入力し、群速度分散を受けたCW光に任意の変調指数Δθ2 で位相変調を与える。これにより、CW光の光周波数に対して周波数間隔fm で、広い周波数範囲にわたってSNRの優れた平坦なスペクトル波形のマルチ光周波数キャリアが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−094143号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山本貴司他、「位相変調器と分散媒質を用いたマルチキャリア光源」, IEICE Technical Report OCS2007-32(2007-8) pp.1-5 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチ光周波数キャリアの一層の広帯域化を図るには、中心光周波数が異なる複数のマルチ光周波数キャリアを順に位相同期させてチェーンする方法があるが、この場合に位相誤差や揺らぎも累積する問題がある。また、3つ以上のマルチ光周波数キャリアをチェーン化するには、位相同期のための構成も煩雑になる問題があった。さらに、n台のマルチ光周波数キャリアをチェーン化させるには、n台のマルチ光周波数キャリア発生装置が必要であった。
【0007】
本発明は、1つのマルチ光周波数キャリア発生装置を用い、中心光周波数が異なる複数のマルチ光周波数キャリアを相互に位相同期させて同時に発生させることができる光位相同期化広帯域光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光位相同期化広帯域光源は、所定の周波数間隔を有し、互いに位相が同期した光周波数コムを発生する光周波数コム発生手段と、互いに光周波数が異なる複数のCW光を出力する複数の安定化CW光源と、複数の安定化CW光源から出力される複数のCW光を合波する手段と、合波された複数のCW光を入力し、各CW光から互いに異なる帯域の複数の光周波数成分を有するマルチ光周波数キャリアを発生させるマルチ光周波数キャリア発生装置と、合波された複数のCW光のパワーの一部と光周波数コムとを合波する手段と、複数のCW光と光周波数コムとを合波した光を検波し、複数のCW光の光周波数・位相と光周波数コムの該当する光周波数・位相とが同期するように複数の安定化CW光源を帰還制御するマルチ光位相検波回路とを備える。
【0009】
光周波数コムは、アンカー光周波数および複数のCW光を設定する光周波数グリッドからオフセット周波数foffsetだけオフセットを与え、さらにアンカー光周波数からn(整数)番目の光周波数成分をnΔfだけ偏移させる。
【0010】
マルチ光位相検波回路は、複数のCW光と光周波数コムとを合波した光を検波した信号と、周波数(nΔf+foffset)の信号との位相比較を行い、その位相誤差信号でアンカー光周波数からn番目のCW光を出力する安定化CW光源をそれぞれ制御する手段を備える。
【0011】
また、光周波数コム発生手段は、基準クロックの周波数に応じた光周波数間隔で互いに位相同期した光周波数コムを発生する構成であり、マルチ光位相検波回路は、複数のCW光と光周波数コムとを合波した光を検波した信号と、基準クロックに位相同期した周波数(nΔf+foffset)の信号との位相比較を行い、その位相誤差信号でアンカー光周波数からn番目のCW光を出力する安定化CW光源をそれぞれ制御する手段と、基準クロックに位相同期した周波数(nΔf+foffset)の信号の位相を制御し、複数の安定化CW光源の平均位相誤差がゼロになるように設定する移相器とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、基準光周波数コムに位相同期した複数のCW光を合波し、マルチ光周波数キャリア発生装置に入力してマルチ光周波数キャリアを生成する光位相同期化広帯域光源において、個々のCW光の伝搬光路長の揺らぎによるCW光相互の位相揺らぎを抑圧することにより、位相同期したマルチ光周波数キャリアを数十キャリア以上生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】先願の広帯域多波長光源の構成例を示す図である。
【図2】本発明の光位相同期化広帯域光源の実施例構成を示す図である。
【図3】基準光周波数コムのスペクトルの一例を示す図である。
【図4】基準光周波数コムと複数のCW光の光周波数配置例を示す図である。
【図5】マルチ光位相検波回路19の第1の構成例を示す図である。
【図6】2つのCW光が同期引き込み状態となったときのスペクトルの様子を示す図である。
【図7】マルチ光位相検波回路19の第2の構成例を示す図である。
【図8】従来の広帯域光源の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、先願(特願2008−270952)の広帯域多波長光源の構成例を示す。
図1において、先願の広帯域多波長光源は、基準クロック11、基準クロック11から与えられる周波数に応じた光周波数間隔で互いに位相同期した基準光周波数コムを発生する基準光周波数コム発生装置12、基準光周波数コムをk分岐(kは2以上の整数)する光スプリッタ13、それぞれ基準光周波数コムの異なる光周波数成分と光周波数および位相が同期した連続発振光(CW光)を出力するk台の安定化CW光源14−1,…,14−k、各安定化CW光源から出力されるCW光の光位相を調整して合波する光移相器15−1,…,15−kおよび光合波器16、位相同期して合波された複数の光周波数のCW光を入力し、各CW光から互いに異なる帯域のマルチ光周波数キャリアを発生する1台のマルチ光周波数キャリア発生装置17から構成される。
【0015】
なお、安定化CW光源14−1,…,14−kは、それぞれの発振周波数を位相同期の手法により、基準光周波数コムのそれぞれ異なる光周波数基準に一致させる。位相同期させる光周波数は安定化CW光源ごとに異なり、各安定化CW光源の光周波数間隔は後段のマルチ光周波数キャリア発生装置17によって発生するマルチ光周波数キャリア数に応じて設定される。マルチ光周波数キャリア発生装置17は、図8に示す従来の広帯域光源に用いられるマルチ光周波数キャリア発生装置と同様の構成や、その位相変調器92と分散媒質96を強度変調器に置換した構成(例えば特開2006−118172号公報の多波長一括発生装置)でもよい。
【0016】
また、マルチ光周波数キャリア発生装置17に入力する各CW光は、マルチ光周波数キャリア発生装置17で発生する異なる帯域のマルチ光周波数キャリアのうち、互いに光周波数が同一となる光周波数キャリアが同相で電界加算されるように、光移相器15−1,…,15−kで位相の調整が行われる。これにより、マルチ光周波数キャリア発生装置17では、複数の安定化CW光源14−1,…,14−kから入力する基準光周波数コムに同期した各CW光を通過させるだけで、光周波数キャリアのチェーン化を図ることができる。
【0017】
このような位相同期した複数のCW光を用いるのは、数百kmの光ファイバ長距離信号伝送を行うために必要となる−140dB/(Hz)1/2 以下のノイズ特性(RIN:Relative Intensity Noise)を確保するためである。1つの半導体レーザ光源から多数の送信用光周波数キャリアを生成すると、RINが−150dB/(Hz)1/2 以下(測定限界)の光源を準備しても数十波程度の光周波数キャリア数に留まるが、複数のCW光を用いる図1の構成ではそれ以上の光周波数キャリア数が容易に得られる。
【0018】
ただし、複数の安定化CW光源14−1,…,14−kは基準光周波数コムに位相同期しているが、各CW光の位相を制御して合波するまでの光移相器を含む光路において、各光路が集積化されていない場合に個々の光導波路の熱膨張係数の違いなどにより、光導波路長揺らぎに起因する電界振動成分の位相揺らぎが生じることがある。例えば、光周波数192〜194THzは波長に換算して1552nm近辺であるので、光導波路長が 1.5μmだけ変動すれば、光位相は2π変動したことになる。一方、光ファイバの熱膨張係数が約7×10-7-1であるので、光ファイバ1mに対して環境温度1℃の変化があると、πだけ位相が変動することになる。
【0019】
本発明は、図1に示す安定化CW光源14−1,…,14−kから光合波器16までの光導波路長が環境温度に応じて変動することによる複数のCW光間の位相揺らぎを抑圧するための構成を提供する。
【0020】
図2は、本発明の光位相同期化広帯域光源の実施例構成を示す。
図2において、本実施例の光位相同期化広帯域光源は、基準クロック11、基準光周波数コム発生装置12、光合波器16、1台のマルチ光周波数キャリア発生装置17、光合波器18、マルチ光位相検波回路19およびk台の安定化CW光源20−1,…,20−kから構成される。ここで、基準クロック11、基準光周波数コム発生装置12、光合波器16およびマルチ光周波数キャリア発生装置17は、図1に示す先願の広帯域多波長光源の各部と同様の構成である。
【0021】
本実施例の光合波器16は、各安定化CW光源20−1,…,20−kから出力される複数のCW光を合波してマルチ光周波数キャリア発生装置17に出力するとともに、合波した複数のCW光のパワーの一部を光合波器18に出力する。光合波器18は、この複数のCW光と基準光周波数コム発生装置12から出力される基準光周波数コムを合波してマルチ光位相検波回路19に入力する。マルチ光位相検波回路19は、複数のCW光と基準光周波数コムとを合波した光を検波し、複数のCW光の光周波数・位相と基準光周波数コムの該当する光周波数・位相とが同期するように、安定化CW光源20−1,…,20−kの発振周波数および位相を個別に帰還制御する構成であり、図1に示す先願の広帯域多波長光源の光移相器15−1,…,15−kの機能を有し、かつ複数のCW光間の位相揺らぎを抑圧する機能を有する。マルチ光位相検波回路19の具体的な構成例については後述する。
【0022】
基準光周波数コム発生装置12は、基準クロック11から与えられるITU−T周波数標準に準拠した次式に示す周波数間隔の基準光周波数コムを発生する。
f(n) = 193.1THz+(fgrid+Δf)・n+foffset …(1)
【0023】
ここで、 193.1THzはITU−T周波数標準として規定されているアンカー光周波数、fgridは基準光周波数コムのグリッド間隔を決める周波数であり、ITU-T Recommendation G.694.1 "Spectral Grids for WDM Applications:DWDM Frequency Grid"では、12.5GHz,25GHz,50GHz, 100GHzの値が示されている。foffsetは必要に応じて付与されるオフセット周波数、Δf・nはグリッド周波数からの偏移量であり、チャネル番号nに応じた値をとる。本実施例では、fgrid=25GHz、Δf=4MHzとして説明する。
【0024】
基準光周波数コム発生装置12は、例えば特開2009−116242号公報「光周波数コム安定化光源」に記載のCEP(Carrier-Envelope Offset Lock)制御によって絶対位相を確定させる方法や、文献 (M.Kourogi, B.Widiyatmoko, T.Takeuchi, and M.Ohtsu,"Limit of optical frequency comb generation due to material dispersion", IEEE.J.Quantum Electronics Vol.31, No.12, December 1995) に記載の方法などを用いて構成される。
【0025】
基準光周波数コムのスペクトルの一例を図3に示す。foffset=−500 MHz, 、fgrid=25GHz、Δf=4MHzの例である。このとき、光周波数 193.4THzと 192.8THzに対応する基準光周波数コムの光周波数f(n=12)とf(n=-12) は、
f(12) =193.1THz+(25GHz+4MHz)・12−500MHz
=193.4THz−452MHz …(2-1)
f(-12) =193.1THz+(25GHz+4MHz)・(-12) −500MHz
=192.8THz−548MHz …(2-2)
となる。これら2つの光周波数f(n=12)とf(n=-12) に対応し、安定化CW光源のCW光の光周波数をそれぞれ 193.4THzと 192.8THzに設定する例を以下に説明する。
【0026】
基準光周波数コムと複数のCW光の光周波数の配置例を図4に示す。目標設定値とする光周波数 193.4THzと 192.8THzに対して、基準光周波数コムはそれぞれ 452MHzと 548MHzだけ周波数オフセットを有する位置に光周波数を発している。したがって、マイクロ波周波数 452MHzと 548MHzの局部発振器を準備してミキシング(乗算)を行うことにより、アンカー光周波数からn番目の光周波数のCW光に対して位相同期をかけることができる。
【0027】
図5は、マルチ光位相検波回路19の第1の構成例を示す。ここでは、安定化CW光源の数k=2の場合で、光周波数 193.4THz, 192.8THzの2つのCW光からそれぞれマルチ光周波数キャリアを発生させてチェーンする場合について示す。
【0028】
図5において、安定化CW光源20−1,20−2からそれぞれ出力されるCW光(光周波数 193.4THz, 192.8THz)と、基準光周波数コム発生装置12から出力される基準光周波数コム(光周波数 193.1THz+ (25GHz+4MHz)n−500MHz)は光合波器18で合波され、マルチ光位相検波回路19のフォトダイオード191に入力する。このとき、マイクロ波周波数 452MHzと 548MHzの近傍にビート周波数が観測される。これは、光周波数 193.4THz, 192.8THzのCW光が基準光周波数コムとのヘテロダイン検波により、中間周波数である 452MHzと 548MHzにダウンコンバートされたものである。
【0029】
フォトダイオード191の出力信号は2分岐され、それぞれPLL部192,193に入力する。PLL部192は、位相比較器21で局部発振器22から出力される局発信号(n1 Δf+foffset= 452MHz)との位相差を検出し、ループフィルタ(LF)23でその位相誤差信号から高周波数成分等不要な周波数成分を除去して直流誤差成分として安定化CW光源20−1にフィードバックし、発振周波数(193.4THz)および位相を制御する。PLL部193は、位相比較器31で局部発振器32から出力される局発信号(n2 Δf+foffset= 548MHz)との位相差が検出し、その位相誤差信号をループフィルタ(LF)33を介して安定化CW光源20−2にフィードバックし、発振周波数(192.8THz)および位相を制御する。
【0030】
このようなマルチ光位相検波回路19の作用により、2つのCW光は基準光周波数コムに位相同期し、かつCW光相互の位相揺らぎが抑圧される。2つのCW光が同期引き込み状態となったときのスペクトルの様子を図6に示す。 452MHzと 548MHzで引き込んでいる様子が分かる。
【0031】
先願の構成では、光移相器15−1〜15−kを用いて複数のCW光間の位相調整を行っているが、上記のように光周波数 192〜194 THzにおける環境温度に応じた位相変化が例えば1℃の変化に対して位相がπ変動するなど極めて敏感であった。本実施例の構成では、2つのCW光の位相を相対的に確定させるために、合波してその出力ビート信号位相をロックする方法をとっている。マイクロ波周波数にダウンコンバートした後では、 100MHzのマイクロ波の場合は約3mが位相2πに相当するので、伝搬長の変動分による位相揺らぎは無視できることになる。本発明は、このような複数のCW光の光位相をマルチ光位相検波回路19を用いて確定させる技術であることを特徴とする。
【0032】
位相比較器21,31には乗算機能が多く用いられる。例えば、マイクロ波DBM(Double Balanced Mixier)や4象限乗算回路の他、最近では周波数弁別機能付きディジタル位相比較回路などが実現手段として考えられる。
【0033】
図7は、マルチ光位相検波回路19の第2の構成例を示す。本構成例は、図5に示す第1の構成例のPLL部192の局部発振器22およびPLL部193の局部発振器32を基準クロック11に同期させ、安定化CW光源20−1,20−2の平均位相誤差をゼロに近づけるための構成を付加したものである。
【0034】
図7において、PLL部192には、局部発振器22の出力を分周する分周器24、分周器24の出力と基準クロック11の位相差を検出する位相比較器25、その位相誤差信号の直流誤差成分を局部発振器22に入力するループフィルタ(LF)26を備える。PLL部193には、局部発振器32の出力を分周する分周器34、分周器34の出力と基準クロック11の位相差を検出する位相比較器35、その位相誤差信号の直流誤差成分を局部発振器32に入力するループフィルタ(LF)36を備える。さらに、PLL部192の局部発振器22から位相比較器21に入力する局発信号位相を調整する移相器27、PLL部193の局部発振器32から位相比較器31に入力する局発信号位相を調整する移相器37を備える。なお、分周器24,34は、上記の数値例では 452MHz, 548MHzの局発信号を基準クロックの周波数(例えば10MHz)に分周するために、フラクショナル分周器が用いられる。
【0035】
これにより、安定化CW光源20−1,20−2の相対位相を同期させ、平均位相誤差をゼロに近づけることができるので、マルチ光位相周波数キャリア発生装置17で各CW光から発生させた複数の光周波数キャリアが位相差ゼロで電界加算され、効率良くキャリア強度を得ることができる。
【0036】
なお、本発明の光位相同期化広帯域光源に用いるマルチ光周波数キャリア発生装置17の構成法は複数考えられるが、上記のように図8に示す従来の広帯域光源に用いられるマルチ光周波数キャリア発生装置と同様の構成でもよい。光ファイバ通信へ適用することを鑑みるとCNR(Carrier-to-Noise Ratio)が高いほうが望ましく、位相を制御して変調サイドバンドを光周波数キャリアとして利用する本構成が好ましい。この構成では、発生させることのできる光周波数キャリア数は、位相変調器93の変調指数Δθ2 に比例する。この変調指数Δθ2 を大きくしすぎると、CNRが劣化する。分散媒質96が与える分散量には最適値があり、瞬時周波数がゼロとなる群速度分散はB2 (=±1/(4πfm2))となる。
【0037】
また、複数の安定化CW光源20−1,…,20−nから出力されるCW光に対して一括して同質のマルチ光周波数キャリアを生成するためには、分散媒質96として分散フラットファイバまたは中心光周波数の異なる複数のセグメントを有するファイバブラググレーティング(FBG)を用意することになる。分散媒質96の帯域は複数のCW光を含んでいる必要があり、FBGを用いる構成において上記の数値例を適用する場合には、FBRの線形分散特性が1THz(8nm)の範囲以上に伸びている必要がある。
【符号の説明】
【0038】
11 基準クロック
12 基準光周波数コム発生装置
13 光スプリッタ
14 安定化CW光源
15 光移相器
16 光合波器
17 マルチ光周波数キャリア発生装置
18 光合波器
19 マルチ光位相検波回路
191 フォトダイオード
192,193 PLL部
20 安定化CW光源
21,25,31,35 位相比較器
22,32 局部発振器
23,26,33,36 ループフィルタ(LF)
24,34 分周器
27,37 移相器
91 CW光源
92,93 位相変調器
94 信号発生器
95 位相シフタ
96 分散媒質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数間隔を有し、互いに位相が同期した光周波数コムを発生する光周波数コム発生手段と、
互いに光周波数が異なる複数の連続発振光(以下「CW光」という)を出力する複数の安定化CW光源と、
前記複数の安定化CW光源から出力される複数のCW光を合波する手段と、
前記合波された複数のCW光を入力し、各CW光から互いに異なる帯域の複数の光周波数成分を有するマルチ光周波数キャリアを発生させるマルチ光周波数キャリア発生装置と、
前記合波された複数のCW光のパワーの一部と前記光周波数コムとを合波する手段と、
前記複数のCW光と前記光周波数コムとを合波した光を検波し、前記複数のCW光の光周波数・位相と前記光周波数コムの該当する光周波数・位相とが同期するように前記複数の安定化CW光源を帰還制御するマルチ光位相検波回路と
を備えたことを特徴とする光位相同期化広帯域光源。
【請求項2】
請求項1に記載の光位相同期化広帯域光源において、
前記光周波数コムは、アンカー光周波数および前記複数のCW光を設定する光周波数グリッドからオフセット周波数foffsetだけオフセットを与え、さらにアンカー光周波数からn(整数)番目の光周波数成分をnΔfだけ偏移させた
ことを特徴とする光位相同期化広帯域光源。
【請求項3】
請求項2に記載の光位相同期化広帯域光源において、
前記マルチ光位相検波回路は、前記複数のCW光と前記光周波数コムとを合波した光を検波した信号と、周波数(nΔf+foffset)の信号との位相比較を行い、その位相誤差信号でアンカー光周波数からn番目のCW光を出力する安定化CW光源をそれぞれ制御する手段を備えた
ことを特徴とする光位相同期化広帯域光源。
【請求項4】
請求項2に記載の光位相同期化広帯域光源において、
前記光周波数コム発生手段は、基準クロックの周波数に応じた光周波数間隔で互いに位相同期した光周波数コムを発生する構成であり、
前記マルチ光位相検波回路は、
前記複数のCW光と前記光周波数コムとを合波した光を検波した信号と、前記基準クロックに位相同期した周波数(nΔf+foffset)の信号との位相比較を行い、その位相誤差信号でアンカー光周波数からn番目のCW光を出力する安定化CW光源をそれぞれ制御する手段と、
前記基準クロックに位相同期した周波数(nΔf+foffset)の信号の位相を制御し、前記複数の安定化CW光源の平均位相誤差がゼロになるように設定する移相器と
を備えたことを特徴とする光位相同期化広帯域光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−81250(P2011−81250A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234317(P2009−234317)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】