説明

光保護のための組成物

本発明は、光分解を受けやすい化合物を、マイクロカプセル中に含ませることにより、この化合物の寿命を改善させるための方法に関し、ここで、このマイクロカプセルは、そのカプセル壁に化学的に結合した光保護粒子を有する。詳細には、本発明は、マイクロカプセルであって、このマイクロカプセルの内部の生物活性化合物、およびこのマイクロカプセル壁の物質に化学的に結合された光保護粒子を含む、マイクロカプセル;そのようなマイクロカプセルの使用;そのようなマイクロカプセルを調製するためのプロセス;ならびに表面改変光保護粒子およびそのようなマイクロカプセルにおける表面改変光保護粒子の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光分解を受けやすい化合物を、マイクロカプセル中に含ませることにより、この化合物の寿命を改善させるための方法に関し、ここで、このマイクロカプセルは、そのカプセル壁に化学的に結合された光保護粒子を有する。詳細には、本発明は、マイクロカプセルであって、このマイクロカプセルの内部の生物活性化合物、およびこのマイクロカプセル壁の物質に化学的に結合されている光保護粒子を含む、マイクロカプセル;そのようなマイクロカプセルの使用;そのようなマイクロカプセルを調製するためのプロセス;ならびに表面改変光保護粒子およびそのようなマイクロカプセルにおける表面改変光保護粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの生物活性農薬用化合物(一般的に、活性成分(AI)と称される)は、光不安定性であり、日光(代表的に、約200nm〜約800nmの波長)への暴露後、数時間または数日以内に分解され得る。日光を原因とする分解は、光不安定性または光分解と代表的に称され、そのような分解を受けやすいAIは、光不安定(photolabile)、光不安定(photo−unstable)、光感受性(photosensitive)または光感受性(light sensitive)であると見なされる。
【0003】
光保護剤は、本質的に光感受性のAIを光安定化させるために使用され得る。用語、光保護剤は、AIの光分解の速度または程度を低減させる化合物、または化合物の組み合わせを意味する。
【0004】
マイクロカプセル化技術は、光保護のための有効な手段を提供し得、それによって光保護剤は、AIを保護するか、またはAIに非常に近接する。カプセル技術は、長年にわたって公知である(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5)。本発明における使用のためのマイクロカプセルは、0.2μm〜1000μm、適切には0.5μm〜100μm、より適切には1μm〜40μmの範囲であり得る。
【0005】
美容産業による遮光剤のカプセル化は、(a)この遮光剤の有効性を維持しつつ、ヒトの肌と潜在的に刺激性の化学物質との直接的な接触を回避し、そして(b)そのような化学物質の処方を簡素化する手段として説明されている。したがって、遮光剤のカプセル化の理由は、光分解からマイクロカプセルの内容物を保護する、本発明のカプセル化の理由とは異なっている。
【0006】
一つの公知の方法において、光保護剤はマイクロカプセル壁物質の一部またはすべてを形成し、したがって、このカプセルのためのシールドを提供し、それによって、このカプセル内に存在する任意の光感受性AIを保護する。例えば、特許文献2において、LeboおよびDetroitは、リグノスルホネートなどは、高ブルームのゼラチンのようなタンパク質と組み合わせて用いられて、農業用活性物質(例えば、農薬)のUV光分解への耐性を改善するカプセル壁を形成し得ることを示している。これらの成分の相互作用により形成されるカプセル壁は、耐久性を有し、その構造の構成部分としてUV保護剤を有する。
【0007】
別の方法において、光保護剤は、AIとともにカプセル化され得る。光保護剤は、クロルピリホスまたはエンドスルファンについて特許文献6でMarcusにより開示されるように、マイクロカプセルの核となる内容物中に溶解され得る。この方法はまた、ロイコ染料を光保護剤とともにカプセル化する印刷産業および複写産業において用いられる。
【0008】
あるいは、光保護剤は、特許文献7に開示されるように、マイクロカプセルの核となる内容物中に粒子の懸濁物として分散され得、ここで、カプセルは、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびそれらの混合物から選択される粒子の懸濁物を含む。
【0009】
特許文献8において、コアセルベーションまたは界面重合方法によりマイクロカプセルを作製するために、コロイド状無機粒子(特に、二酸化ケイ素および二酸化ジルコニウムの無機粒子)の使用を記載している。このプロセスは、いわゆるPickeringエマルジョンの形成を包含し、熱硬化性マイクロカプセル壁はこの無機粒子を含む。Moyは、カプセル壁に化学的に結合させた光保護粒子の使用を開示していない。
【0010】
非特許文献1は、官能性付与された有機ミクロスフェアの界面重合により作製されたポリ尿素マイクロカプセル壁への組み込みを記載しているが、化学的にカプセル壁へ結合させた光保護粒子の使用を示唆していない。
【0011】
Oderaは、JP86−242834 861013において、二酸化チタンは、200μm〜500μmのマイクロカプセル壁に組み込まれ得ることを教示し、このマイクロカプセル壁は、ゼラチンおよびアラビアゴムを、水相中の二酸化チタン分散物の存在下、カロチン−菜種油混合物上でコアセルベート化することにより作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】英国特許第1513614号明細書
【特許文献2】加国特許第2133779号明細書
【特許文献3】国際公開第00/05951号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6485736号明細書
【特許文献5】米国特許第5846554号明細書
【特許文献6】国際公開第95/23506号パンフレット
【特許文献7】国際公開第96/33611号パンフレット
【特許文献8】欧州特許出願公開第539142号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Stover,Macromolecules,38(7)2903−2910
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、マイクロカプセル処方物のための光保護システムを提供するために光保護粒子を利用する。光感受性化合物は、マイクロカプセルのコア内に含まれ得、そして光保護粒子は、マイクロカプセル壁に化学的に結合され、それにより、このマイクロカプセル壁、このマイクロカプセルのコアの内容物、またはこの壁およびこのコア内容物の両方に光保護を提供する。本発明は、生物学的に光感受性の化合物を扱う場合に最も有用であるが、光感受性パートナー(例えば、光感受性アジュバント)を必要とし得る生物学的に光安定性の化合物のためにも適切である。
【0015】
本発明のマイクロカプセルは、界面重合により調製され得る。
【0016】
光保護粒子は、光吸収および光反射を含む種々の手段による光保護を提供し得る。
【0017】
光保護粒子は、有機物であっても、無機物であっても、無機化合物および有機化合物の混合物を含んでもよい(例えば、JP 02002867A2 900108 Heiseiに記載されるように、Si粒子に、有機光保護剤が含浸され得る)。
【0018】
さらに、光保護粒子は、反応性化合物により表面改変され得る。光保護粒子は、安定な水中油型(いわゆる、Pickering)エマルジョンを作製するために、従来の界面活性剤の代わりに使用され得、いずれの場合も、その後、油−水界面での壁形成は、油相に溶解した化合物を用いて行われ、その結果、表面改変無機粒子はこの壁物質と化学結合を形成する。
【0019】
生物活性物質は、適切には、薬学的化合物または農薬(agrochemical)であり、より適切には農薬である。
【0020】
適切には、農薬は、殺真菌薬、殺虫薬、または除草薬であり、有害生物(例えば、菌類、昆虫、および雑草)を制御するか、またはそれらと闘うために使用される。農薬はまた、非農業的状況(例えば、公衆衛生および専門製品の目的(例えば、シロアリバリア、蚊帳、およびウォールボード)において使用され得る。
【0021】
より適切には、農薬は殺虫剤であり、さらにより適切には、ピレスロイドであり、そして最も適切には、λ−シハロトリンである。
【0022】
本発明のマイクロカプセルは、(例えば、顆粒処方物の調製において)さらに加工され得る。
【0023】
したがって、第一の局面において、本発明は、マイクロカプセルであって、このマイクロカプセルの内部の生物活性化合物、およびこのマイクロカプセル壁に化学的に結合された光保護粒子を含む、マイクロカプセルを提供する。
【0024】
化学結合は、光保護粒子を、マイクロカプセル壁に不可逆的に固定される。化学結合が隣接する光保護粒子間に形成される場合、さらなる固定が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
適切な光保護剤(光保護粒子)は、以下からなる群より選択される:オールトランス
−(オール−E)−1,1’−(3,7,12,16−テトラメチル−1,3,5,7,9,11,13,15,17−オクタデカノナエン−1,18−ジイル)ビス[2,6,6−トリメチルシクロヘキセン;2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート;1,3−ビス−[2’−シアノ−3’,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス−{[2−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル}プロパン;2−シアノ−3,3−ジフェニル−2−プロペノエートエチル;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート;2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2−[(2−メチル−3H−インドール−3−イリデン)エチリデン]−1H−インドール、一塩酸塩;3,6−ジアミノ−10−メチルアクリジニウムクロリド+3,6−ジアミノアクリジン;1−アミノ−9,10−ジヒドロ−9,10−ジオキソ−4−(フェニルアミノ)−2−アントラセンスルホネート一ナトリウム;1−アミノ−2−メチル−9,10−アントラセンジオン;1,4−ビス[(1−メチルエチル)アミノ]−9,10−アントラセンジオン;1,4−ビス[(4−メチルフェニル)アミノ]−9,10−アントラセンジオン;1−ヒドロキシ−4−[(4−メチルフェニル)アミノ]−9,10−アントラセンジオン;4−ヒドロキシ−3−[(2−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)アゾ]−ベンゼンスルホネート一ナトリウム;4−[(2−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)アゾ]−3−メチル−ベンゼンスルホネート一ナトリウム;4−[(4−ニトロフェニル)アゾ]−N−フェニル−ベンゼンアミン;4−[[4−(フェニルアゾ)−1−ナフタレニル]アゾ]−フェノール;3−[エチル[4−[(4−ニトロフェニル)アゾ]フェニル]アミノ]−プロパンニトリル;4−[(4−ニトロフェニル)アゾ]−ベンゼンアミン;3−ヒドロキシ−4−[(1−ヒドロキシ−2−ナフタレニル)アゾ]−7−ニトロ−1−ナフタレンスルホネート一ナトリウム;1−[[2,5−ジメチル−4−[(2−メチルフェノール)アゾ]フェニル]アゾ]−2−ナフタレノール;1−[[4−[(ジメチルフェニル)アゾ]ジメチルフェニル]アゾ]−2−ナフタレノール;1−(オルト−トリルアゾ)−2−ナフトール;4−アミノ−5−ヒドロキシ−3,6−ビス[[4−[[2−(スルホオキシ)エチル]スルホニル]フェニル]アゾ]−2,7−ナフタレンジスルホネート四ナトリウム;1−[[4−(フェニル)アゾ)フェニル]アゾ]−2−ナフタレノール;1−[[3−メチル−4−[(3−メチルフェノール)アゾ]フェニル]アゾ]−2−ナフタレノール;2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−6−[[4−(フェニルアゾ)−1−ナフタレニル]アゾ]−1H−ペリミジン(perimidine);1−(フェニルアゾ)−2−ナフタレノール;1−[[2−メチル−4−[(2−メチルフェノール)アゾ]フェニル]アゾ]−2−ナフタレノール;1,3(2H)−ジオン,2−(3−ヒドロキシ−2−キノリニル)−1H−インデン;2−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−2H−インドール−2−イリデン)−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−オン;2−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン)−2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1H−インドール−5−スルホネート二ナトリウム;1−(フェニルアゾ)−2−ナフタレノールと、1,4−ビス[(1−メチルエチル)アミノ]−9,10−アントラセンジオンとの混合物;1−(フェニルアゾ)−2−ナフタレノールと、1,4−ビス[(1−メチルエチル)アミノ]−9,10−アントラセンジオンおよび1−[[2−メチル−4−[(2−メチルフェノール)アゾ]フェニル]アゾ]−2−ナフタレノールとの混合物;ベンゾ[a]フェノキサジン−7−イウム,5−アミノ−9−(ジエチルアミノ)−、硫酸塩;N−[4−[[−(ジエチルアミノ)フェニル](2,4−ジスルホフェニル)メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−エチル−エタンアミニウム、内部塩、ナトリウム塩;N−[4−[[4−(ジエチルアミノ)フェニル][4−(フェニルアミノ)−1−ナフタレニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−メチル−メタンアミニウムクロリド;N−[4−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル][4−(エチルアミノ)−1−ナフタレニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−メチル−メタンアミニウムクロリド;4,5,6,7−テトラクロロ−3’,6’−ジヒドロキシ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−[9H]キサンテン]−3−オン 二ナトリウム塩;2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,5,7−トリヒドロキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン;N,N’,N’’,N’’’−テトラキス(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン;ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル(etramethyl)−4−ピペリジニル)イミノ]]);2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペリジノールと、より高級の脂肪酸(主にステアリン酸およびパルミチン酸)とのエステルの混合物;マロン二酸、[(4−メトキシ−フェニル)−メチレン]−,ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバセート(sebaceate);ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル;N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと、3−ブロモ−1−プロペン、N−ブチル−1−ブタンアミン、およびN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン反応生成物とのポリマー(酸化、水素化);4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート;2−tert−ブチル−1,4−ベンゼンジオール;’2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン;2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸、ヘキシルエステル;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン;’2(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;α−[3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロピル]−ω−ヒドロキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル);2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデカニル−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1フェニルエチル)フェノール;’2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;’2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール;3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジ−メチルエチル)4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸、C7〜9分枝および直鎖アルキルエステル;2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−[2−ヒドロキシ−3−(ドデシルオキシ−およびトリデシルオキシ)プロポキシ]フェノール;酸化亜鉛;二酸化チタン;酸化亜鉛と二酸化チタンとの混合物;微粒化カーボンブラック;3,5,6−トリヒドロキシ安息香酸 n−プロピルエステル;ヨウ化ナトリウム;2,2’−チオビス[4−t−オクチルフェノラート]−β−ブチルアミンニッケル(II);2−エチル,2’−エトキシオキサラニリド(ethoxyoxalanilide);3,9−ビス(オクタデシルオキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン+1,1’,1’’−ニトリロトリス−2−プロパノール;3,9−ビス[2,4−ビス(1−メチル,1−フェニルエチル)フェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ,3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン;トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト;1,2−ジヒドロキシアントラキノン;7−β−D−グルコピラノシル−9,10−ジヒドロ−3,5,6,8−テトラヒドロキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−2−アントラセンカルボン酸;5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン;亜硫酸ナトリウム;ジステアリル−ジスルフィド;ならびにジステアリルチオジプロピオネート。
【0026】
より適切には、光保護粒子は、酸化亜鉛:二酸化チタン;および酸化亜鉛と二酸化チタンとの混合物から選択される。さらにより適切には、光保護粒子は、二酸化チタン粒子である。
【0027】
光保護粒子は、マイクロカプセル壁上に単一の層として存在してもよいし、多層系で存在してもよい。
【0028】
マイクロカプセル壁の外面に結合されることに加えて、光保護粒子は、マイクロカプセル壁の内面にも化学結合され得;内面への結合は、光保護粒子が、乳化の前に油相に分散される調製プロセスによって達成され得る。
【0029】
さらなる局面において、本発明は、以下の工程を包含する、上に記載されたマイクロカプセルを調製するためのプロセスを提供する:
(a)(i)光保護粒子を水中に分散させ、そして(ii)壁形成物質および生物活性物質を含む混合物を水中に乳化させることによって、光保護粒子によりコロイド状で安定化される水中油型エマルジョンを形成する工程;
(b)この壁形成物質を、油−水界面で、水もしくは光保護粒子、または水および光保護粒子の両方と反応させて、マイクロカプセル壁を形成する工程;ならびに
(c)この光保護粒子を、このマイクロカプセル壁に化学的に結合させる工程。
【0030】
本明細書の全体にわたって、以下の略語が用いられる:
THF=テトラヒドロフラン;EMA=メチルメタクリレート;TMSPMA=3−(トリメトキシシリルプロピル)メタクリレート;DEAEMA=2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート。
【0031】
別の局面において、本発明は反応性化合物によって光保護粒子の表面を改変するためのプロセスを提供し、ここで、
(a)上記表面は、ヒドロキシル基を有し;
(b)上記反応性化合物は、ブロックコポリマーであり、このブロックコポリマーにおいて、第一のブロックは3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート[TMSPMA]およびエチルメタクリレート[EMA]の統計的コポリマーであり、第二のブロックは、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート[TMSPMA]および2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート[DEAEMA]の統計的コポリマーであり;そして
(c)上記光保護粒子および上記反応性化合物を、上記反応性化合物中の3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート[TMSPMA]基が、この光保護粒子の表面上のヒドロキシル基と反応するような様式で一緒にし、不可逆的に結合されたポリマー改変表面が得られる。
【0032】
本発明はまた、そのようなプロセスによって得ることができる表面改変光保護粒子(適切には、二酸化チタン)を提供する。
【0033】
例えば、反応性コポリマー(例えば、ポリ([EMA−s−TMSPMA]−b−[DEAEMA−s−TMSPMA])は、第一に、光保護粒子(例えば、二酸化チタン粒子)と反応され、これは、次に従来の乳化剤またはコロイド安定化剤の代わりに、油滴を分散させるために用いられ、この油滴は、次にカプセル壁へと組み込まれる(すなわち、カプセルはPickeringエマルジョンを介して作製される)。この粒子を化学結合を介して不可逆的に結合させることにより、それらは、通常の界面活性剤のさらなる添加により置換されない(すなわち、粒子はコロイド状で安定である)。
【0034】
上記反応性化合物は、この反応性化合物を、粒子の間に、またはマイクロカプセル壁形成物質と化学的に結合させることによって、隣接する表面改変粒子を空間的に固定することを可能にするように設計される。このプロセスは、他の化学反応で行われ得る。
【0035】
反応しないTMSPMA基は、以下に記載のさらなる加工のために利用可能である。反応性化合物の組成は、表面改変粒子が、油状物とPickeringエマルジョンを形成することができるように設計され得る。
【0036】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、限定されない。ここで、「部」は重量で与えられる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
この実施例は、原子移動ラジカル重合による反応性ブロックポリマーの調製を説明する。
【0038】
バッチ1
EMA 40部
TMSPMA 4部
p−トルエンスルホニルクロリド 1部
トルエン 150部
CuCl 1部
バッチ2
N−プロピル 2−ピリジルメタンイミン 2部
バッチ3
DEAEMA 7部
TMSPMA 2部
1 Sigma−Aldrichから購入
2 文献(Haddleton et al,Macromolecules,1997,30,2190)に従って調製。
【0039】
バッチ1を、ガス注入口、セプタム、および磁気撹拌棒を備えた注意深く乾燥した窒素充填容器に加え、90℃まで加熱した。バッチ2を、注意深く乾燥し、窒素で洗ったシリンジによって加え、約90%の固体変換まで重合を進めた。次にバッチ3を加え、第二のブロックをインサイチュで重合した。重合した溶液を、窒素圧下乾燥トルエンで半分に希釈し、注意深く乾燥したアルミナの短いカラムに通して銅錯体を除去し、密閉した容器内の乾燥氷冷ヘキサンに直接沈殿させた。
【0040】
(実施例2)
この実施例は、実施例1に記載される反応性ポリマー界面活性剤に対する対照として、非反応性ポリマー界面活性剤の調製を説明する。実施例1に記載される手順にしたがって(TMSPMAモノマーを除く)、ブロックコポリマーを作製し、ここで、NMR分析からのおおよその組成は、[EMA45]−b−[EMA23−s−DEAEMA41]であった。
【0041】
(実施例3)
この実施例は、反応性ポリマーを用いるTiOの表面改変を説明する。水(100部)を、THF(50部)中のTiO(1部)と実施例1からのポリマー(0.1部)との十分に分散した混合物に滴下した。スラリーのpHを、トリエチルアミンの添加により約9に調整し、THFをロータリーエバポレーションにより除去した。表面改変TiO粒子を、遠心分離し、水、アセトンで連続的に洗浄し、そして乾燥させた。
【0042】
(実施例4)
この実施例は、反応性界面活性剤は、TiO粒子から脱離されないことを説明する。反応性界面活性剤のTiO粒子からの脱離を、非反応性界面活性剤の脱離と比較した。反応性界面活性剤は、NMR分析によると、およそ[EMA46−s−TMSPMA5]−b−[EMA16−s−DEAEMA40−s−TMSPMA9]の組成を有し、一方、非反応性界面活性剤は、およそ[EMA45]−b−[EMA23−s−DEAEMA41]の組成を有した。THF中にTiO(10部)および試験界面活性剤(1部)を含む分散液を作製した。水を加えて、混合物を15分間にわたって超音波浴に置いた。粒子を単離し、アセトンで繰り返し洗浄した。洗浄物をNMRで分析し、脱着されたポリマーの量を推定した。それぞれ、約6%、約80%の反応性ポリマー、非反応性ポリマーが脱着された。
【0043】
(実施例5)
この実施例は、カプセル壁に埋め込まれたTiO粒子を含む、マイクロカプセルの形成を説明する。
【0044】
ヘキサデカン(100部)、ポリ(トリメチルプロピルシリルメタクリレート)(10部)、およびポリ(ジメトキシシロキサン)(10部)の混合物を、表面改変TiO粒子(23部)を含む水(900部)に乳化させた。カプセル壁形成と、粒子の埋め込みは、トリエチルアミンの添加によって触媒した。
【0045】
(実施例6)
この実施例は、λ−シハロトリンを含むカプセルの壁に埋め込まれたTiO粒子の形成を説明する。
【0046】
ポリ(ジメトキシシロキサン)(12.5部)、Solvesso 200(2.5部)およびλ−シハロトリン(2.5部)を含む油相を、高せん断下で、水(100部)中の塩化ナトリウム(0.57部)およびTiO(2部)の混合物に乳化させた。トリエチルアミン触媒を加え、懸濁液を一晩撹拌し、カプセル壁を形成した。
【0047】
(実施例7)
この実施例は、実施例6との組成比較実施例であり、エマルジョン、そしてカプセルは、TiO安定化粒子の代わりに界面活性剤を用いて形成する。
【0048】
ポリ(ジメトキシシロキサン)(12.5部)、Solvesso 200(2.5部)およびλ−シハロトリン(5部)を含む油相を、高せん断下で、水(100部)中のドデシル硫酸ナトリウム(1部)の溶液に乳化させた。トリエチルアミン触媒を加え、懸濁液を一晩撹拌し、カプセル壁を形成した。
【0049】
(実施例8)
この実施例は、実施例6および実施例7のカプセル中のλ−シハロトリンの光安定性を比較するための実験室用Suntestの実施例である。
【0050】
試験処方物を、前もって刻印したガラス顕微鏡スライド上に分注し、清浄なUV透明シリカスライド(これは、屋外での自然光暴露と同様のスペクトルエネルギー分布を提供するフィルター処理されたキセノン光源を用いるAtlas XLS+SuntestTM人工光源刺激装置で照射した)で覆う前に、堆積物を形成するように乾燥させた。堆積物を、アセトンによる抽出により回収した。残留したλ−シハロトリンの百分率を、GC−MSによって、既知の濃度の一連の標準物に対して分析した。表の結果は、壁に埋め込まれたTiOを有するカプセルは有意な光保護をもたらすを示す。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルであって、該マイクロカプセルの内部の生物活性化合物、および該マイクロカプセル壁に化学的に結合された光保護粒子を含む、マイクロカプセル。
【請求項2】
請求項1で特許請求されるマイクロカプセルであって、隣接する光保護粒子間にもまた化学結合が存在する、マイクロカプセル。
【請求項3】
請求項1または2で特許請求されるマイクロカプセルであって、前記生物活性化合物が光感受性である、マイクロカプセル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項で特許請求されるマイクロカプセルであって、前記生物活性化合物が、農薬用化合物である、マイクロカプセル。
【請求項5】
請求項4で特許請求されるマイクロカプセルであって、前記農薬用化合物が、ピレスロイドである、マイクロカプセル。
【請求項6】
請求項5で特許請求されるマイクロカプセルであって、前記ピレスロイドが、λ−シハロトリンである、マイクロカプセル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項で特許請求されるマイクロカプセルであって、前記光保護粒子が反応性物質によって表面改変されている、マイクロカプセル。
【請求項8】
光感受性生物活性物質を光保護するための、請求項1〜7のいずれか一項で特許請求されるマイクロカプセルの使用。
【請求項9】
有害生物と闘うかまたは有害生物を制御するための、請求項1〜7のいずれか一項で特許請求されるマイクロカプセルの使用。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項で特許請求されるマイクロカプセルを調製するためのプロセスであって、該プロセスは:
(a)(i)光保護粒子を、水中に分散させ、そして(ii)壁形成物質および生物活性化合物を含む混合物を、水中に乳化させることによって、該光保護粒子によりコロイド状で安定化される水中油型エマルジョンを形成する工程;
(b)該壁形成物質を、水と油の界面で、水もしくは該光保護粒子または水および該光保護粒子の両方と反応させて、マイクロカプセル壁を形成する工程;ならびに
(c)該光保護粒子を、該マイクロカプセル壁に化学的に結合させる工程、
を包含する、プロセス。
【請求項11】
反応性化合物によって光保護粒子の表面を改変するためのプロセスであって、ここで、
(a)該表面は、ヒドロキシル基を有し;
(b)該反応性化合物は、ブロックコポリマーであり、該ブロックコポリマーにおいて、第一のブロックは3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート[TMSPMA]およびエチルメタクリレート[EMA]の統計的コポリマーであり、第二のブロックは、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート[TMSPMA]および2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート[DEAEMA]の統計的コポリマーであり;そして
(c)該光保護粒子および該反応性化合物を、該反応性化合物中の3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート[TMSPMA]基が、該光保護粒子の表面上のヒドロキシル基と反応するような様式で一緒にし、不可逆的に結合されたポリマー改変表面を得る、プロセス。
【請求項12】
請求項11で特許請求されるプロセスであって、前記光保護粒子が、二酸化チタンである、プロセス。
【請求項13】
マイクロカプセルの調製における、請求項12で定義される、表面改変光保護粒子の使用。

【公表番号】特表2010−502685(P2010−502685A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527202(P2009−527202)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003374
【国際公開番号】WO2008/032022
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】