説明

光出力立ち上げ機能を有する照明制御方法

ウォームアップ期間中にLEDの光源から実質的に均一な光出力を維持するための照明制御方法である。LED光源のウォームアップ期間中にデューティ比立ち上げ機能が徐々にLED出力駆動信号のデューティ比を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概要的には照明制御に関するものであり、より具体的にはウォームアップ期間中の光出力をほぼ均一にするための光出力立ち上げ機能を有する照明制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存の照明制御システムにおいては、所望されるより低い性能しか発揮できないことにつながる多くの問題点が明らかになっている。これに限定されるものではないが、非均一な光出力の原因となる、LED照明の各要素間の電圧のばらつきもこの問題点に含まれる。照明装置に使用されるLEDが製造の際に均一になっていないことが、この電圧のばらつきの原因となり得る。
【0003】
既存の照明制御システムのその他の問題点は、照明回路が温度変化に伴うLEDの順方向電圧への影響を補償することができないことであり、例えば温度上昇に伴って必要となる駆動電力の変更を行うことができない。これに関連して、既存の照明制御システムは、出力駆動器の近くで照明装置の動作温度範囲全体にわたって観測される、固有の順方向電圧変化の補償を行ってはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、当業者にはよく知られているように、LEDの光出力はLEDのジャンクション温度に反比例する。したがって、LEDが最初に駆動されたとき(つまり常温始動のとき)は、ジャンクション温度は低く、光出力は高くなる。ウォームアップ期間(典型的には約30分間継続する)の間にジャンクション温度が上昇するにつれて、LEDが定常状態に達するまで、LEDの光出力は低下していく。定常状態に達すると、LEDの動作ジャンクション温度は、概ね一定に維持され、その結果、それ以降の使用期間中には、光出力は概ね一定に維持される。
【0005】
ウォームアップ期間中のLED光出力の減衰の度合は20%ほどにもなることがある。したがって、ウォームアップ期間中のLEDの光出力は、大抵の場合、一様ではなく、定常状態でのLEDの光出力は、定常状態において期待される光出力の公称値より大幅に低くなることがある。また、常温始動時にLEDの光出力が上限光出力値を上回ってしまうこともある。
【0006】
照明装置が、実質的に一定の光出力やルクス値を必要とする手術用照明灯である場合、このような問題点は特に不都合である。
本発明は、こういった問題点や他の問題点に対処し、照明装置のための改良された照明制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、LEDウォームアップモードの間にLED光源を制御する照明制御方法を提供する。この方法では、(a)光強度レベルに対応する予め格納された設定デューティ比を読み出し、(b)前記設定デューティ比から予め格納されたデューティ比トリム値を引いた値に相当する動作デューティ比で最初の所定期間の間LED光源を動作させ、(c)デューティ比立ち上げ値を予め格納されたデューティ比ステップ値と等しく設定し、(d)前記設定デューティ比から前記デューティ比トリム値を引いて前記デューティ比立ち上げ値を加えた値に相当する動作デューティ比で次の所定期間の間LED光源を動作させ、そして、(1)立ち上がり時間が経過したか、(2)動作デューティ比が前記設定デューティ比と等しくなっているか、(3)新しい光強度レベルが選択されたか、を判定する。(1)、(2)、(3)のいずれかが発生していればLEDウォームアップモードを終了する。(1)も(2)も(3)も発生していなければ、前記デューティ比立ち上げ値を前記デューティ比ステップ値だけ増加させてステップ(d)に戻る。
【0008】
本発明の他の側面においては、(a)光強度レベルを設定し、(b)前記光強度レベルに対応する予め格納された設定デューティ比を読み出し、(c)予め格納されたデューティ比トリム値を読み出し、(d)前記設定デューティ比から前記デューティ比トリム値を引いた値に相当する動作デューティ比で最初の所定期間の間LED光源を動作させ、(e)予め格納された立ち上がり時間を読み出し、(f)予め格納されたデューティ比ステップ値を読み出し、(g)デューティ比立ち上げ値を前記デューティ比ステップ値と等しく設定し、(h)前記設定デューティ比から前記デューティ比トリム値を引いて前記デューティ比立ち上げ値を加えた値に相当する動作デューティ比で次の所定期間の間LED光源を動作させ、(i)所定の条件が満たされたかどうかを判定し、(j)前記所定の条件が満たされていれば、前記デューティ比立ち上げ値を前記デューティ比ステップ値だけ増加させてステップ(h)に戻り、(k)前記所定の条件が満たされていなければ、LEDウォームアップモードを終了する、という、LEDウォームアップモードの間にLEDの光源を制御する照明制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の利点は、LEDウォームアップ期間中のLED光源からの光出力の均一性を改善する照明制御方法を提供することにある。
本発明の別の利点は、LED光源の光出力が上限光出力値を上回ってしまうことを防止する照明制御方法を提供することにある。
【0010】
これらの利点や他の利点は、以下の記載や添付の図面および添付の特許請求の範囲を考え合わせることで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、特定の部品として、あるいは各部品の組み合わせによる物理的な形態をなすことができ、実施形態の一つが本明細書にて詳細に説明され、本明細書の一部をなす添付の図面にて以下のように例示される。
【図1】本発明の実施形態の一つにおける、照明装置用の照明制御システムの概略ブロック図
【図2】本発明の実施形態の一つにおける、出力駆動回路の概略図
【図3】本発明の実施形態の一つにおける、温度補償回路を含む第1のLEDモジュールの概略図
【図4】本発明の実施形態の一つにおける、トリム回路を含む第1のLEDモジュールの概略図
【図5A】本発明の実施形態の一つにおける、ウォームアップ期間のための照明制御方法を表すフロー図
【図5B】本発明の実施形態の一つにおける、ウォームアップ期間のための照明制御方法を表すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において参照する図面は本発明の実施形態の一つを図示するものであるが本発明を同一の形態に限定するものではなく、図1では、照明装置、例えば手術用照明灯のための照明制御システム10の、本発明の実施形態の一つにおけるブロック図を示す。
【0013】
照明制御システム10は、概略的には主制御器20と、少なくとも1つの駆動制御器32及び少なくとも1つの出力駆動器34を有する駆動回路30と、1つ以上の第1のLEDモジュール50(モジュールA)と、1つ以上の第2のLEDモジュール80(モジュールB)と、から構成されている。図示の実施形態では、主制御器20と駆動回路30は第1のプリント回路基板PCB1上に配置されている。第1,第2のLEDモジュール50,80のそれぞれは、各自第2,第3のプリント回路基板PCB2,PCB3上に配置されている。プリント回路基板PCB1,PCB2,PCB3は照明装置のハウジング(図示せず)内にまとめて配置してもよい。プリント回路基板PCB2とPCB3とに分かれているLEDモジュール50,80の部品は、他の実施形態においては、共に単一の基板(すなわちプリント回路基板)上に配置することもできる。
【0014】
図示の実施形態では、主制御器20はマイクロコントローラである。例えば、主制御器20はARMベースのプロセッサで構成することができ、このプロセッサは、以下に限定されるものではないが、プログラム格納用の内蔵FLASHメモリ、データ格納用のRAMメモリ、UARTs、タイマ/カウンタ、バスインタフェース、シリアルインタフェース、SPIインタフェース、プログラマブルウォッチドッグタイマ、プログラマブルI/Oライン、A/D変換器、PWM出力器、といった様々なオンチップペリフェラルを有するものである。主制御器20は、駆動制御器32へコマンドを送信し、各駆動制御器32からステータス情報を受信する。
【0015】
主制御器20は、以下に限定するものではないが、ユーザインタフェース(例えばキーパッド付きのフロントパネルディスプレイや制御スイッチやボタン)、通信インタフェース、ビデオ入力コネクタ、カメラモジュール、といった、図1には示されていない他の電子機器とも通信できる。ユーザインタフェースにより、ユーザが照明装置のON/OFF光強度レベルを選択することができる。また、ユーザインタフェースにより、照明システムに備えられた他の補助機器をユーザがON/OFFできる。
【0016】
主制御器20はバス22を介して駆動制御器32と通信を行う。図示の実施形態では、バス22はシリアルバスである(例えばICバス)。また、主制御器20は、以下においてさらに詳細に説明するように、同期ライン24を介して駆動制御器32へ一定のクロック信号を供給する。
【0017】
図示の実施形態では、駆動制御器32は、マイクロコントローラである。例えば、駆動制御器32はそれぞれARMのマイクロコントローラで構成することができ、このマイクロコントローラは、以下に限定されるものではないが、プログラム格納用の内蔵FLASHメモリ、データ格納用のRAMメモリ、タイマ/カウンタ、シリアルインタフェース、A/D変換器、プログラマブルウォッチドッグタイマ、プログラマブルI/Oライン、といった様々なオンチップペリフェラルを有するものである。図示の実施形態では、駆動制御器32のそれぞれは、主制御器20が各駆動制御器32を個別に指定するための一意の識別番号を有する。
【0018】
次に、図2を参照しながら説明する。各出力駆動器34は、概略的にはコンパレータ42(例えば、ナショナルセミコンダクター社のLMV7235)、電圧レギュレータ、ダイオード45、設定用ポテンショメータ(POT)46、パワー電界効果トランジスタ(FET)48、帰還抵抗(R)47を含む回路である。出力駆動器34の駆動(すなわち有効化)は、固定周波数で行われている(すなわち、ライン43を介して固定周波数の有効化信号が供給されている)。図示の実施形態では、出力駆動器34は、固定周波数300Hzの有効化信号で駆動されている。
【0019】
電圧レギュレータ44は、有効化されると、正確な固定出力電圧(例えば5V)を供給する。電圧レギュレータ44の出力電圧(VOUT)は電気的にパワーFET48と接続されている。FET48は、LEDモジュール50,80で必要とされる電流を操作するために使用される。センス抵抗(R)47は電流の検出を行う。設定用POT46は、R47において検出される電流が目標の電流範囲内に収まるように電圧レギュレータ44の出力電圧を調整するために使用される。
【0020】
コンパレータ42は、出力駆動器34の出力電圧を監視する。これに関して、コンパレータ42は、基準電圧(VREF)を第1の入力として受け取り、検出電圧(V)を第2の入力としてライン49を介して受け取る。コンパレータ42は、VREFとVとを比較することで、Vに対応する検出電流(I)がしきい値電流(例えば約1.26A)を上回っているかどうかを判定する。しきい値電流を上回っていた場合には、コンパレータ42は、電圧レギュレータ44を無効化する信号を出力し、これにより、電圧レギュレータ44のVOUTをオフにする。また、駆動制御器32も、所定の条件で(例えば、回路の開放または短絡異常が検出されたとき)電圧レギュレータ44を無効化することができる。
【0021】
図3,4はそれぞれLEDモジュール50(モジュールA)とLEDモジュール80(モジュールB)の模式図を示す。LEDモジュール50,80はLED光源である。図示の実施形態では、LEDモジュール50,80は、LEDモジュール50のコネクタJ2と、LEDモジュール80のコネクタJ4との間に接続されたワイヤハーネスアセンブリによって電気的に直列接続されている。したがって、直列接続された一対のLEDモジュール50,80のそれぞれは、共同で6つ直列接続されたひとまとまりのLEDとなる。第1の直列接続された一対のLEDモジュール50,80は、第2の直列接続された一対のLEDモジュール50,80と並列に配線することもできる。第1及び第2の直列接続されたLEDモジュール50,80は、単一の出力駆動器34(すなわち出力駆動経路)により駆動される。各LEDモジュール50は、コネクタJ1に接続されたワイヤハーネスアセンブリ(図示せず)を介して出力駆動器34と電気的に接続されている。図示の実施形態では、二対のLEDモジュール50,80が出力駆動器Aと電気的に接続されており、二対のLEDモジュール50,80が出力駆動器Bと電気的に接続されている。
【0022】
次に、図3を参照しながら説明する。LEDモジュール50は、複数のLED52、温度補償回路60、任意に設けられるリモート温度センサ回路70を有する。図示の実施形態では、LEDモジュール50は、3つ直列接続されたLED52(例えば高輝度LED)を有する。温度補償回路60は、LEDを駆動するために必要となる順方向電圧の、温度上昇に起因する変化を補正する。LEDの温度が上昇したとき、LEDを駆動する電流を一定に維持するためには、順方向電圧を低下させなければならない。温度補償回路60は、電界効果トランジスタ(FET)Q2と、サーミスタ62と、抵抗R1及びR2で構成されるネットワーク抵抗64とを有する。電源は、コネクタJ1を介して温度補償回路60に供給されている。サーミスタ62は、温度を検出する抵抗器である。FET Q2は電流を調整するために、より強く(またはより弱く)動作してネットワーク抵抗64と釣り合いをとる(つまり等価となる)。
【0023】
リモート温度センサ回路70は、プリント回路基板PCB2の近傍の温度を監視するための温度データを主制御器20へ供給するために、温度センサ72(例えば、アナログデバイセズ社の低電圧温度センサTMP35)を備えている。温度センサ72は、検出された温度に線形比例する電圧を出力する。温度センサ回路70は、コネクタJ3とライン26を介して主制御器20と電気的に接続されている。主制御器20は、温度センサ回路70の出力を受け取る。主制御器20は、プリント回路基板PCB2から限られた数の温度センサの入力を読みとることができる。図示の実施形態では、LEDモジュール50における温度センサ回路70のうち二つのみ、主制御器20に接続または選択されている。
【0024】
次に、図4を参照しながら説明する。LEDモジュール80は、複数のLED82とトリミング回路90を有する。図示の実施形態では、LEDモジュール80は、3つ直列接続されたLED(例えば、高輝度LED)を有する。
【0025】
トリミング回路90は、LEDの製造における不均一性に起因する各LED間の順方向電圧値の差異を補正する。これに関連して、トリミング回路90は、直列接続されたLED52,82にわたっての電圧降下の差異を補正して、直列接続されたLED52,82にわたって適切な電圧が印加されることを保証し、順方向電流値を所要の値に設定して全LEDモジュール50,80が同一の動作を行うようにする(つまり照明を均一化する)。トリミング回路90は、調節可能なFET Q1を備えており、このFET Q1は、アンプ(コンパレータ)96(例えばアナログデバイセズ社のJFET入力計装アンプAD8220)によって制御され、以下に述べるように、一対のLEDモジュール50,80を当該一対のモジュールにわたる電圧降下が一定値となるよう較正(つまり「トリム」)できる手段となる。デジタルポテンショメータ(POT)92(例えばマキシムインテグレーテッドプロダクツ社のデジタルポテンショメータMAX5417)は、FET Q1のゲート電圧を調整するために使用される。マイクロパワー電圧レギュレータ94(例えばマキシムインテグレーテッドプロダクツの基準電圧LM4040)はアンプ96およびデジタルPOT92の電源として使用される。電圧レギュレータ94は、デジタルPOT92、アンプ96とバイアス回路(図示せず)へ5Vを供給する。電圧レギュレータ94の入力は、ブロッキングダイオードD1と2つのコンデンサ(図示せず)を使用する。このダイオードD1と2つのコンデンサとが組み合わさることにより、通常の動作周波数における最小のデューティ比(例えば300Hz中の25%)の下で、各パルス間において一定の電圧を維持する、小規模の容量性エネルギー蓄積器を形成する。電圧レギュレータ94は、LED52,82に一度電圧が印加されると、常に電源が入った状態となる。
【0026】
次に、照明制御システム10の動作について詳細に説明する。主制御器20は、照明制御システム10の全体的な制御を行うようにプログラムされている。これに関連して、主制御器20は、駆動制御器32と通信を行い、これと同様に、例えばユーザインタフェースやビデオカメラのような他のシステム構成要素とも通信を行う。
【0027】
図示の実施形態では、主制御器20は、固定幅のクロックパルスからなる30kHzのクロック信号を出力する。このクロック信号は、同期ライン24を介して各駆動制御器32に供給される。クロック信号は、各駆動制御器32同士の同期を確保するために用いられ、各駆動制御器32がそれぞれのLEDモジュール50,80を駆動するための一定の時間基準となる。これに関連して、クロック信号は、各駆動制御器32内の2つの内蔵タイマを直接駆動する。各駆動制御器32の第1の内蔵タイマは第1の出力駆動器34(出力駆動器A)に対応しており、各駆動制御器32の第2の内蔵タイマは第2の出力駆動器34(出力駆動器B)に対応している。これらの内蔵タイマは、2つの出力駆動器34(すなわち出力駆動器Aと出力駆動器B)に、互いに位相のずれた出力駆動信号を出力させ、これにより、照明装置がアクティブになった際に消費電流が大きく変動することを防止する。本発明の好ましい実施形態では、全ての駆動制御器32のそれぞれの出力駆動器34ごとに位相が異なっている。したがって、駆動制御器1の出力駆動器Aと、駆動制御器1の出力駆動器Bと、駆動制御器2の出力駆動器Aと、駆動制御器2の出力駆動器Bと、が出力する出力駆動信号は、全て互いに位相がずれている。
【0028】
出力駆動器34の出力駆動信号は、好ましくは300Hzの固定周波数を有する。周波数を300Hzと選択している理由は、50Hz(PALビデオカメラのスキャンレート)及び60Hz(NTSCビデオカメラのスキャンレート)の倍数だからである。LED52,82の発光周波数がカメラのスキャンレートの倍数でない場合、本発明に係る照明装置に対して任意に設けられるビデオカメラを使用した際に、カメラは照明について顕著なちらつきを検出してしまう。
【0029】
主制御器20は、LEDモジュール50,80を「アクティブ」にするため(つまりLED52,82が点灯するようにするため)、各駆動制御器32へ複数のコマンドを送信する。この複数のコマンドには、出力駆動器34の出力駆動信号に関して選択された動作デューティ比(「目標デューティ比」とも呼ばれる)を示すコマンドと、各出力駆動器34のそれぞれに関する「位相オフセット」を示すコマンドと、LEDモジュール50,80の起動を示す「スタート」コマンドと呼ばれるコマンドが含まれている。動作デューティ比は、主制御器20が出力するクロック信号のパルス数で表される。以下においてより詳細に説明するように、この主制御器20のクロック信号のパルス数は、出力駆動器34の出力駆動信号の周期ごとについて「ONとなる時間」を規定する。
【0030】
動作デューティ比は、出力駆動器34の出力駆動信号の周期のうち、出力駆動信号がONとなる時間の比率である。上記のように、出力駆動信号の各々は、好ましくは300Hzの固定周波数を有しており、したがって3.33ミリ秒の周期を有している。図示の実施形態では、LEDモジュール50,80は、出力駆動信号がONとなる時間の間にオンとなる(つまり点灯する)。各駆動制御器32の内蔵タイマは、出力駆動信号の周期ごとについて、ONとなる時間を定めるため、主制御装置20が供給するクロック信号のパルスの所定数をカウントする。したがって、カウントされるパルスの所定数は、出力駆動信号に関して選択された動作デューティ比に対応している。例えば、選択された動作デューティ比が40%の場合には、出力駆動信号の周期についてONとなる時間を定めるため、40回のパルスがカウントされる。
【0031】
さらに、位相オフセットは主制御器20が出力するクロック信号を単位として生成される。スタートコマンドは、対応するLEDモジュール50,80が起動されようとしていること(すなわちLEDライトが点灯されようとしていること)を駆動制御器32に示す。駆動制御器32は、自身の各内蔵タイマを初期化し、主制御器20が生成するクロック信号の始動に備えるためにスタートコマンドを使用する。また、主制御器20は、対応する出力駆動器34をオフにし、駆動制御器32の各内蔵タイマを停止するよう駆動制御器32へ通知するために、駆動制御器32へ「ストップ」コマンドを送信することもできる。
【0032】
上述したように、主制御器20のクロック信号は、各駆動制御器32内の2つの内蔵タイマを駆動し、これにより、駆動制御器32が、対応するLEDモジュール50,80を、出力駆動器34の出力駆動信号を介して動作デューティ比で制御できるようにする。主制御器20が供給する動作デューティ比の種々の値は、ユーザが選択可能な、複数の規定LED光強度レベルに対応するように定められている。各光強度レベルに対応したデューティ比の値は、主制御器20のメモリ内のルックアップテーブルに予め格納しておくことができる。以下の内容に限定するものではないが、一例として、図示された実施形態では、表1に示す9つの所定強度レベルを用いることができる。
【0033】
【表1】

メンテナンス用強度レベルでのデューティ比の値は、視覚的不快感を低減して、異常のあったLEDモジュール50,80の検査を容易にするため、光強度が低くなるような低いデューティ比としている。較正用強度レベルでのデューティ比の値は、駆動電流の最小の出力値が駆動電流の目標値となって、LEDモジュール50,80の全てに対して十分な駆動電流を出力できるようになるまで、電力供給の調節が手軽に行えるように、最大のデューティ比としている。
【0034】
また、以下においてより詳細に説明するように、主制御器20は、LEDモジュール50,80の光出力が所定の最大光出力レベルを超えないように、そして実質的に一様な出力が維持されるように、ウォームアップモードの間、LEDモジュール50,80を動作させるようにプログラムされている。
【0035】
LEDモジュール50(モジュールA)の動作について、図3を参照して詳細に説明する。温度補償回路60は、一対のLEDモジュール50,80にわたる総電圧降下を、LED52,82の温度変化に関する順方向電圧特性に応じて調整する。LED52,82が高温になってくると、順方向電圧が降下する。順方向電圧の低下は、LED52,82を通って流れる電流の増加につながる。LEDモジュール50,80の6連直列LED52,82にわたる総電圧降下は、LEDモジュール50,80が過電流シャットダウンを起こさないようLED駆動電流を目標値に維持するために、なんらかの形で温度補償を行わなければならないほど高い。
【0036】
LEDモジュール50(つまりLEDモジュールA)の温度補償回路60は、LEDモジュール50,80が低温のときには完全にオンとなるようにバイアスされているFET Q2を含む。これはFET Q2の順方向抵抗が非常に低いということになり、低温時にはFET Q2での電圧降下は比較的少量であるということになる。LEDモジュール50,80が高温になってくると、サーミスタ62がFET Q2のゲート電圧を低減するように作用し、その順方向抵抗が増加する。この作用は、LED52,82が高温になる際の順方向電圧降下を効果的に吸収する。LED52,82が高温になり始めると、FET Q2のバイアス回路網内のサーミスタ62は、FET Q2のゲート電圧を低減し、その順方向抵抗を増加させるように作用する。この作用は、LED52,82が高温になる際の順方向電圧降下を効果的に吸収する。サーミスタ62の抵抗が次第に低くなるにつれ、FET Q2のゲート電圧が十分に低くなり、FET Q2の抵抗は、低い抵抗値で並列接続されている電力抵抗対R1,R2の抵抗値よりもはるかに高くなる。この時点で、並列抵抗R1,R2を介して温度補償回路60を通って流れる全有効電流は、実質的にFET Q2を通らないように経路が切り替わる。FET Q2を通らず、固定抵抗R1,R2を通るように経路が切り替わることで、これより高温においてはFET Q2が全電流を受け持つ必要がないので、FET Q2は小さく、安価にすることができる。温度補償回路60は、駆動制御器32や主制御器20へのフィードバックを行わない独立した回路である。
【0037】
温度センサ回路70は、上述したように、LEDモジュール50近傍の動作温度を表す表示用のデータを主制御器20に供給する。
以下、LEDモジュール80(モジュールB)の動作について、図4を参照して詳細に説明する。LEDモジュール80のトリミング回路90は、6つのLED52,82に対して直列に調節可能な所定の電圧降下を挿入することができるようにし、この電圧降下は、照明装置内の全LEDモジュール50,80に供給される電源として使用される固定入力電圧に合わせて、一対のLEDモジュール50,80を調節する。LED52,82と直列な、この調節可能な電圧降下は、電流が所定値のときにモジュール50,80のそれぞれのモジュール対の電圧を共通の電圧値に設定する。これにより、複数対のモジュール50,80を並行して駆動することができる。
【0038】
各出力駆動器34は二対のLEDモジュール50,80を電気的に並列接続する。この並列な二対のLEDモジュール50,80の順方向電圧降下が実質的に同等でない場合は、この並列な二対のLEDモジュール50,80を通って流れる電流は等しくならず、それに応じてこの並列な二対のLEDモジュール50,80は異なる光を出力してしまう。
【0039】
トリミング回路90のアンプ96は、FET Q1のゲート電圧を生成し、このゲート電圧は、FETのドレインから入力される+入力とデジタルPOT92を用いて設定される−入力との差に基づいて生成される。デジタルPOT92が適切な抵抗値に設定されていれば、FET Q1はLED52,82と直列な固定抵抗器として動作する。FET Q1の順方向抵抗を調整することにより、LED52,82の順方向電圧の差異に起因するLEDモジュール50,80の順方向電圧の変動を効果的に打ち消すことができる。
【0040】
POT92は、LEDモジュール製造工程の一部において、POT92へ設定値を書き込むプログラミングツール(例えば検査機器や較正機器)をコネクタJ5に接続して、調整及びプログラムされる。POT92の調整は、製造工程やLEDモジュール50,80が互いに電気的に接続される検査工程において行われる。LEDモジュール50,80の製造工程においては、検査機器や較正機器によって、コネクタJ1を介してLEDモジュール50へ約24Vが印加される。このとき、POT92は、LED52,82を通る駆動電流が所定の駆動電流の目標値になるよう調整される。トリミング回路90は、駆動制御器32や主制御器20へのフィードバックを行わない独立した回路である。
【0041】
照明装置の組み立て時の光学的損失を考慮して、LEDモジュール50,80に高めの駆動負荷をかけることもできるようにしておくべきである。これに関連して、LED駆動電流の制御目標値は、LEDの順方向電流の公称値からある程度オフセットした値に設定しておく。これにより、製造者はLEDメーカーの許容範囲内の値で駆動電流を調整しながらLED52,82の強度を増加させることができて、照明装置から目的のルクス値を得られるようになる。
【0042】
主制御器20により、さらなる調整を行って駆動電流をより目標値に近づけるように「チューン」ができるようにするための、較正機能が得られる。LEDモジュール50,80を含む照明灯に供給される調整可能な直流24Vの出力を持つ電源装置は、駆動電流値を増加または減少させるために、出力を上げたり下げたりして調節することができる。
【0043】
駆動制御器32は、LED駆動電流をサンプリングし、ディスプレイに異常通知を表示するために、LED駆動電流が目標値±所定許容値の範囲内にあるかどうかを判定するようプログラムされている。LED駆動電流が許容範囲を越えた場合には、音声または画像の警報表示器を用いて、電源装置の調整やLEDモジュール50,80(または対応するハーネス)の交換をする必要があることをユーザに示してもよい。
【0044】
主制御器20は、ディスプレイに異常通知を表示するために、出力駆動器34のLED駆動電流を監視し、一対のLEDモジュール50,80の一方または両方が「開放」異常をきたしている(つまり回路が開放されている)かどうかを判定するようにプログラムされている。一対のLEDモジュール50,80のうち一方が開放異常をきたしている場合には、駆動電流は設定目標値の約50%になる。LEDモジュール対の両方が異常をきたしている場合には、駆動電流の測定値は約0mAになる。異常の状態は、主制御器20によって検出され、ユーザインタフェースで警報通知が行われる。各出力駆動器34の部分では、LEDモジュール50,80が回路短絡による異常をきたしているかどうかを判定する。これに関連して、出力駆動器34は短絡の存在を検出し、対応する駆動制御器32への過電流通知を行う。そして、この駆動制御器32は、短絡した回路のあるLEDモジュール50,80に対応する出力駆動器34をオフにし、短絡異常状態が解決されるまで出力駆動器34がオンになることを防ぐ。異常通知はユーザにも通知するとよい。
【0045】
上記において述べた通り、主制御器20は、図5A,図5Bを参照して詳細に説明するようなウォームアップモードに基づいて動作するようにプログラムされている。図5A,図5Bは、ウォームアップモード時にLEDを動作させるための照明制御方法のフロー図を示す。ウォームアップモードは、LEDモジュール50,80が起動時に最初にオンとなり、LED光源機器の周囲温度が所定の設定温度(TSETPOINT)例えば38℃以下であるときに開始される。この周囲温度は、ステップ105でチェックされる。主制御器20は、ユーザが選択した光強度レベルに対応する予め格納された設定デューティ比(DSP)を読み出す(ステップ110)。例えば、光強度レベル1〜7は、それぞれ設定デューティ比(DSP)40%,50%,60%,70%,80%,90%,100%に対応する。それから、主制御器20は、選択された光強度レベルに対応する予め格納されたデューティ比トリム値(DTRIM)を読み出す(ステップ120)。また、主制御器20は、デューティ比立ち上げ機能が有効になっているかどうかを判定する(ステップ120)ようにプログラムされている。デューティ比立ち上げ機能の詳細は後述する。
【0046】
ステップ130において、動作デューティ比(D)は、選択された光強度レベルに対応する設定デューティ比(DSP)をDTRIMだけトリムした値として設定される。これにより、最初の所定期間(例えば15分)の間は、LEDモジュール50,80は設定デューティ比(DSP)からDTRIMだけ減らした値に等しい動作デューティ比(D)で動作する(ステップ140)。上述のように、動作デューティ比(D)は、出力駆動器34が出力する出力駆動信号のデューティ比のことである。最初の所定期間が経過した後、主制御器20は、デューティ比立ち上げ機能が有効になっているかどうかを判定する(ステップ145)。デューティ比立ち上げ機能が有効になっていない場合は、ウォームアップモードを終了する。一方、デューティ比の立ち上げが有効になっている場合は、デューティ比立ち上げ機能を起動する(ステップ150)。
【0047】
ステップ160において、主制御器20は、予め格納された立ち上がり時間(T)とデューティ比ステップ値(DSTEP)を読み出す。デューティ比ステップ値(DSTEP)は百分率値(例えば2%)である。デューティ比立ち上げ値(DRAMP)は、最初はDSTEPと等しく設定される(ステップ170)。ステップ180において、LEDモジュール50,80が所定期間(例えば5分)の間、DSP−DTRIM+DRAMPと等しく設定された動作デューティ比で動作する。所定期間の終了時に、主制御器20は、立ち上がり時間(T)が経過したかどうか、動作デューティ比(D)が選択された光強度レベルの設定デューティ比DSPに達したかどうか、ユーザによって新しく光強度レベルが手動で選択されていて動作デューティ比を新しくしなければならないどうか、を判定する(ステップ185)。これらのいずれかの条件が満たされている場合は、ウォームアップモードを終了する。これらのいずれの条件も満たされていない場合は、主制御器20は、現在のDRAMPをDSTEPだけ増加させる(ステップ190)。そして、主制御器20は、新しく設定された、DSP−DTRIM+DRAMPと等しい動作デューティ比(D)で次の所定期間の間LEDモジュール50,80を動作させる(ステップ180)。ステップ190においてDRAMPが増加しているため、ステップ180において動作デューティ比(D)が増加する。ステップ185においていずれかの条件が満たされてウォームアップモードが終了するまで、このような動作デューティ比(D)の段階的漸増がこれ以降の所定期間に対して続いていく。
【0048】
本明細書を読み、理解すれば、他の変更や改善も思いつくであろう。本発明は種々の代替構成を取り得ることも考えられる。例えば、ある構成においては、28個のLEDモジュールが、14個のLEDモジュール対となる。そして、4つの駆動制御器が主制御器に接続される。別の構成では、56個のLEDモジュールが、28個のLEDモジュール対となる。そして、7つの駆動制御器が主制御器に接続される。さらに、図示の実施形態の単一色LEDを複数色のLEDに置き換えることも考えられる。そうしたあらゆる変更や改善も、請求項に記載された発明やその均等の範囲内に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDウォームアップモードでLEDの光源を制御する照明制御方法であって、
(a)光強度レベルに対応する予め格納された設定デューティ比を読み出し、
(b)前記設定デューティ比から予め格納されたデューティ比トリム値を引いた値に相当する動作デューティ比で最初の所定期間の間LED光源を動作させ、
(c)デューティ比立ち上げ値を予め格納されたデューティ比ステップ値と等しく設定し、
(d)前記設定デューティ比から前記デューティ比トリム値を引いて前記デューティ比立ち上げ値を加えた値に相当する動作デューティ比で次の所定期間の間LED光源を動作させ、
そして、
(1)立ち上がり時間が経過したか、
(2)動作デューティ比が前記設定デューティ比と等しくなっているか、
(3)新しく光強度レベルが選択されたか、
を判定し、(1)、(2)、(3)のいずれかが発生していればLEDウォームアップモードを終了し、(1)も(2)も(3)も発生していなければ、前記デューティ比立ち上げ値を前記デューティ比ステップ値だけ増加させてステップ(d)に戻る
ことを特徴とする照明制御方法。
【請求項2】
最初の所定期間が経過した後、デューティ比立ち上げ機能が有効になっているかどうかを判定し、デューティ比立ち上げ機能が有効になっていなければ、LEDウォームアップモードを終了する、請求項1に記載の照明制御方法。
【請求項3】
LED光源機器の周囲の温度が所定の設定温度以下の場合にのみウォームアップモードを開始する、請求項1に記載の照明制御方法。
【請求項4】
LEDウォームアップモードでLEDの光源を制御する照明制御方法であって、
(a)光強度レベルを設定し、
(b)前記光強度レベルに対応する予め格納された設定デューティ比を読み出し、
(c)予め格納されたデューティ比トリム値を読み出し、
(d)前記設定デューティ比から前記デューティ比トリム値を引いた値に相当する動作デューティ比で最初の所定期間の間LED光源を動作させ、
(e)予め格納された立ち上がり時間を読み出し、
(f)予め格納されたデューティ比ステップ値を読み出し、
(g)デューティ比立ち上げ値を前記デューティ比ステップ値と等しく設定し、
(h)前記設定デューティ比から前記デューティ比トリム値を引いて前記デューティ比立ち上げ値を加えた値に相当する動作デューティ比で次の所定期間の間LED光源を動作させ、
(i)所定の条件が満たされたかどうかを判定し、
(j)前記所定の条件が満たされていれば、前記デューティ比立ち上げ値を前記デューティ比ステップ値だけ増加させてステップ(h)に戻り、
(k)前記所定の条件が満たされていなければ、LEDウォームアップモードを終了する
ことを特徴とする照明制御方法。
【請求項5】
前記所定の条件が、
(1)立ち上がり時間が経過していないかどうか、
(2)動作デューティ比が設定デューティ比と等しくないかどうか、
(3)新しく光強度レベルが選択されていないかどうか、
である、請求項4に記載の照明制御方法。
【請求項6】
最初の所定期間が経過した後、デューティ比立ち上げ機能が有効であるかどうかを判定し、デューティ比立ち上げ機能が有効になっていなければ、LEDウォームアップモードを終了する、請求項4に記載の照明制御方法。
【請求項7】
LED光源機器の周囲の温度が所定の設定温度以下の場合にのみウォームアップモードを開始する、請求項4に記載の照明制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2012−521640(P2012−521640A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502126(P2012−502126)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【特許番号】特許第4994520号(P4994520)
【特許公報発行日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/027888
【国際公開番号】WO2010/111126
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(302044247)アメリカン ステリライザー カンパニー (24)
【Fターム(参考)】