説明

光制御シート、これを備えた透過型スクリーンおよび背面投射型表示装置、ならびに透過型スクリーンの製造方法

【課題】光制御シートの映像光出射面の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有し、かつ単位光吸収部が80μm以上150μm以下の高さを有する場合において、外観が損なわれることがなく、かつ良好な映像を表示できる光制御シートを提供する。
【解決手段】透過型スクリーンに用いられる光制御シート45であって、光制御シート45の映像光出射面45aの一部を構成する複数の単位光透過部47と、単位光透過部47と交互に配置され、光制御シート45の映像光出射面45aの一部を構成し、80μm以上150μm以下の高さを有する複数の単位光吸収部48とを備え、光制御シート45が曲面をなすようにかつ映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するように曲っており、単位光透過部47が、15%以上50%以下の伸び率を有する光透過性樹脂からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光制御シート、これを備えた透過型スクリーンおよび背面投射型表示装置、ならびに透過型スクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像光をスクリーンの背面型から投射して表示する背面投射型表示装置においては、投射された映像光を透過して映像を表示させる透過型スクリーンが用いられている。このような透過型スクリーンとしては、様々な構造のものが提案されており、例えば、複数の単位光透過部と、単位光透過部と交互に配置された複数の帯状の単位光吸収部とを有する光制御シートを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
一方で、例えば自動車等の分野においては、意匠性が非常に重要視される。現在、このような分野に適用される背面投射型表示装置には、単に映像を表示する機能が期待されているだけでなく、意匠面におけるシステム全体との調和も要求されている。
【0004】
そして、このような意匠性の観点から、曲面形状を有する透過型スクリーンの開発が望まれている。しかしながら、光制御シートを備えた透過型スクリーンの製造工程において、光制御シートおよび他の光学機能層を有する積層体を加熱して、積層体に曲面成形を施すと、単位光透過部と単位光吸収部との間にクラックが発生してしまい、外観が損なわれるおそれがある。またクラックが発生すると、映像光を透過型スクリーンに投影したとき、クラック部分がスジとして表示されてしまい、良好な映像を表示することが困難となるおそれがある。特に、このクラックは、光制御シートの映像光出射面の曲率半径が小さく、かつ単位光吸収部の高さが高いほど生じやすい。さらに、クラックが発生すると、歩留まりが低下してしまうおれがある。また、曲率半径がより小さい曲面形状に対応することができなくなるので、曲面形状の自由度が妨げられてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−50307号公報
【特許文献2】特開2003−57416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、光制御シートの映像光出射面の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有し、かつ単位光吸収部が80μm以上150μm以下の高さを有する場合において、外観が損なわれることがなく、かつ良好な映像を表示できる光制御シートを提供することを目的とする。また、外観が損なわれることがなく、意匠性を向上させることができる透過型スクリーンおよび背面投射型表示装置を提供することを目的とする。さらに、意匠性、歩留まり、および曲面形状の自由度を向上させることができる透過型スクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンに用いられる光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成し、80μm以上150μm以下の高さを有する複数の単位光吸収部とを備え、前記光制御シートは、曲面をなすようにかつ前記光制御シートの映像光出射面の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するように曲っており、前記単位光透過部が、15%以上50%以下の伸び率を有する光透過性樹脂からなる、光制御シートが提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンであって、上記の光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置された光拡散層とを備える積層体を備え、前記積層体全体が曲面をなすように曲っている、透過型スクリーンが提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、上記の透過型スクリーンと、前記透過型スクリーンの背面側に配置され、前記透過型スクリーンに映像光を投射する映像光源とを備えることを特徴とする、背面投射型表示装置が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンの製造方法であって、光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成し、かつ15%以上50%以下の伸び率を有する光透過性樹脂からなる複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成し、かつ80μm以上150μm以下の高さを有する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置された光拡散層とを有する積層体を形成する工程と、前記積層体を加熱することにより軟化させ、前記光制御シートの映像光出射面の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するように、軟化した前記積層体を曲面成形する工程とを備える、透過型スクリーンの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一の態様の光制御シートによれば、単位光透過部が、15%以上50%以下の伸び率を有する光透過性樹脂からなるので、単位光吸収部が80μm以上150μm以下の高さを有し、かつ光制御シートの映像光出射面の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するように光制御シートを曲面成形した場合であっても、単位光透過部と単位光吸収部との間におけるクラックの発生を抑制することができる。これにより、外観が損なわれることがなく、かつ良好な映像を表示できる。
【0012】
本発明の他の態様の透過型スクリーンおよび他の態様の背面投射型表示装置によれば、積層体が曲面をなすように曲がっているので、外観が損なわれることがなく、意匠性を向上させることができる。また、本発明の他の態様の透過型スクリーンの製造方法によれば、積層体を曲面成形するので、意匠性を向上させることができる。また、単位光透過部と単位光吸収部との間におけるクラックの発生を抑制することができるので、歩留まりおよび曲面形状の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの模式的な斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの概略構成図である。
【図3】図2のI−I線に沿って透過型スクリーンを切断したときの断面図である。
【図4】図2に示されるフレネルレンズシートの概略斜視図である。
【図5】図2に示されるフレネルレンズシートを映像光出射側から見たときのフレネルレンズシートの平面図である。
【図6】第1の実施形態に係る他の態様のフレネルレンズシートを示す図である。
【図7】図2に示される光制御シートの概略斜視図である。
【図8】図7のII−II線に沿って光制御シートを切断したときの断面図である。
【図9】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図10】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図11】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図12】第1の実施形態に係る背面投射型表示装置の模式的な断面図である。
【図13】第2の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図14】第3の実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置の模式的な断面図である。
【図15】第3の実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置を上方から見た図である。
【図16】電子顕微鏡を用いて、実施例に係る透過型スクリーンの断面を撮影した写真である。
【図17】電子顕微鏡を用いて、比較例に係る透過型スクリーンの断面を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
<光制御シートおよび透過型スクリーン>
先ず、本発明の第1の実施形態に係る光制御シートおよび透過型スクリーンについて、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る透過型スクリーンの模式的な斜視図であり、図2は本実施形態に係る透過型スクリーンの概略構成図であり、図3は図2のI−I線に沿って透過型スクリーンを切断したときの断面図である。図4は図2に示されるフレネルレンズシートの概略斜視図であり、図5は図2に示されるフレネルレンズシートを映像光出射側から見たときのフレネルレンズシートの平面図である。図6は本実施形態に係る他の態様のフレネルレンズシートを示す図であり、図7は図2に示される光制御シートの概略斜視図であり、図8は図7のII−II線に沿って光制御シートを切断したときの断面図である。
【0015】
図1および図2に示される透過型スクリーン10は、フレネルレンズシート20と、フレネルレンズシート20の映像光出射側に配置された積層体30とを備えている。
【0016】
図1および図2に示されるフレネルレンズシート20および積層体30は、曲面をなすように曲がったものである。フレネルレンズシート20および積層体30の全体は、少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するように曲っていることが好ましい。曲率半径は用途によって適宜選択されるが、フレネルレンズシート20および積層体30の全体は、少なくとも一部が250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように曲っていることもある。
【0017】
また、フレネルレンズシート20および積層体30は、二次元曲面または三次元曲面をなすように曲がっている。好ましくは、フレネルレンズシート20および積層体30は、図1および図2に示されるように三次元曲面をなすように曲がっている。ここで、本明細書において、「二次元曲面」とは単一の軸を中心として二次元的に曲がったもの、或いは、互いに平行な複数の軸を中心として異なる曲率で二次元的に曲がったものを意味し、また「三次元曲面」とは互い対して傾斜した複数の軸をそれぞれ中心として、部分的または全体的に曲がっていることを意味するものとする。
【0018】
本実施形態においては、図1に示すように、フレネルレンズシート20および積層体30は、概ね、一方の対角線と平行で透過型スクリーン10の背面側(映像光入射側)に位置する第1の軸A1を中心とした方向d1に曲がるとともに、他方の対角線と平行で透過型スクリーン10の背面側(映像光入射側)に位置する第2の軸A2を中心とした方向d2にも曲がっている。この結果、透過型スクリーン10は観察者側へ凸となるように曲がっており、透過型スクリーン10の平面形状をなす矩形状の一対の対角線が交わる中央位置Pにおいて、透過型スクリーン10の映像光出射面10a(表示面)は観察者側に最も突出している。なお、図1に示される透過型スクリーン10は、観察者側へ凸となるように曲がったものであるが、これに限らず、透過型スクリーンは、観察者側へ凹、すなわち背面側へ凸となるように曲がっていてもよく、また観察者側へ凸となるように曲がった部分と、背面側へ凸となるように曲がった部分とを組み合わせた形状となっていてもよい。
【0019】
フレネルレンズシート
図2および図3に示されるフレネルレンズシート20は、基部21と、基部21の表面に形成されたフレネルレンズ部22を備えている。
【0020】
フレネルレンズ部22は、映像光源(図示せず)から発散光束として透過型スクリーン10に投射される映像光の進行方向を偏向させる機能を有している。具体的には、フレネルレンズ部22は、発散光束として入射した映像光を、映像光入射側から映像光出射側へ向けて進む平行光束、例えば正面方向Nへ進む平行光束に変換する。このようにフレネルレンズ部22を用いて映像光をいったん平行光化させておくことにより、観察者に観察される映像、とりわけ、観察者によって斜め方向から観察される映像の明るさの面内ばらつきを効果的に緩和させることができる。
【0021】
本実施形態では、図4および図5に示すように、フレネルレンズ部22は、いわゆるサーキュラーフレネルレンズとして構成されている。ただし、これに限られず、いわゆるリニアフレネルレンズとして構成されていてもよい。リニアフレネルレンズでは、複数の単位レンズの各々が直線状に延び、かつ、複数の単位レンズがその長手方向と交差する配列方向に配列されるようになる。
【0022】
フレネルレンズ部22は、図5に示されるようにフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部形成面20aの中心Oに対して偏心した位置に光学中心Oを有することが好ましい。具体的には、フレネルレンズ部22は、光学中心Oを中心とする同心円弧状または同心円状の複数の単位プリズム23から構成されている。
【0023】
上記「フレネルレンズ部形成面」とは、フレネルレンズシートにおけるフレネルレンズ部が形成されている面であり、フレネルレンズシートが屈折型のフレネルレンズシートの場合には、フレネルレンズ部形成面は映像光出射側に位置し、フレネルレンズシートが後述する全反射型のフレネルレンズシートの場合には、フレネルレンズ部形成面は映像光入射側に位置している。
【0024】
図5に示されるフレネルレンズ部22の光学中心Oは、フレネルレンズシート20から外れた位置に存在する。例えば、映像光源(図示せず)が透過型スクリーン10よりも下方に配置される場合には、光学中心Oは、フレネルレンズシート20外であってフレネルレンズ部形成面20aの中心Oに対して透過型スクリーン10の縦方向下側の位置に存在する。なお、上記では、光学中心Oは、フレネルレンズシート20から外れた位置に存在しているが、フレネルレンズシート20内に存在していてもよい。
【0025】
ここで、本明細書においては、透過型スクリーン10の「縦方向」とは、観察者が透過型スクリーン10を正面から見たとき、観察者の上下方向を意味するものとし、また透過型スクリーン10の「横方向」とは、観察者が透過型スクリーン10を正面から見たとき、観察者の左右方向を意味するものとする。
【0026】
このように光学中心Oが偏心したフレネルレンズ部22を形成することにより、フレネルレンズシート20と映像光源との距離を短くした場合であっても、映像光を、映像光入射側から映像光出射側へ向けて進む平行光束、例えば図1に示される正面方向Nへ進む平行光束に変換することができる。本実施形態では、光学中心Oがフレネルレンズ部形成面20aの中心Oに対して偏心したフレネルレンズ部22を用いているが、光学中心がフレネルレンズ部形成面の中心に対して偏心していないフレネルレンズ部を用いることも可能である。
【0027】
また、本実施形態におけるフレネルレンズシート20は、いわゆる屈折型のフレネルレンズであるが、これに限られず、全反射型のフレネルレンズシートを用いることも可能である。
【0028】
図6に示されるように、全反射型のフレネルレンズシート24は、入射する映像光を屈折させる屈折面25aと、屈折面25aで屈折された映像光の少なくとも一部を全反射させて、映像光出射側に向ける全反射面25bとを有する複数の単位プリズム25を備えたものである。全反射型のフレネルレンズシート24を用いた場合には、さらに映像光源とフレネルレンズシート24との距離を縮めることができるので、より薄型の背面投射型表示装置を提供することができる。
【0029】
また、図2〜図4に示されるようにフレネルレンズシート20は、基部21よりも映像光入射側にフレネルレンズシート20を補強するための入射側透明基材26を有していてもよい。入射側透明基材26と基部21は、粘着剤や紫外線硬化型接着剤のような接着剤等からなる接合層(図示せず)を介して互いに接合されている。
【0030】
入射側透明基材26は、フレネルレンズシート20と同様に、曲面をなすように曲がったものである。入射側透明基材26としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基材が挙げられる。
【0031】
入射側透明基材26の厚みは、1.0〜4.0mmであることが好ましく、1.5〜2.0mmであることがより好ましい。入射側透明基材26の厚みが1.0mm未満であると、補強部材としての機能を十分に果たすことができないおそれがあるからであり、また4.0mmを超えると、次に説明する理由から二重像が観察者に認識されやすくなるからである。すなわち、フレネルレンズシートの厚みが厚い場合には、フレネルレンズシートの厚みが薄い場合に比べてフレネルレンズシートから出射される映像光と迷光との距離が大きくなり、この距離が大きくなると、観察者に二重像として認識されやすくなる。したがって、フレネルレンズシート20が同じ厚さであったとしても、入射側透明基材26の厚さが厚い場合には、観察者に二重像が認識されやすくなる。
【0032】
積層体
積層体30は、図2および図3に示されるように映像光入射側から映像光出射側に向けて、順に、主に、透明基材35、接合層40、光制御シート45、接合層50、光拡散層55、および表面層60を有している。なお、本発明においては、積層体30は光制御シート45および光拡散層55を有していればよく、透明基材35、接合層40、50および表面層60を有していなくともよい。
【0033】
透明基材
積層体30の透明基材35は、透過型スクリーン10の剛性を高めるものである。ここで、入射側透明基材26の厚みを厚くして、透過型スクリーン10の剛性を高めることも可能であるが、入射側透明基材26の厚みを厚くした場合には観察者に二重像が認識されやすくなる。したがって、入射側透明基材26の厚みを厚くして透過型スクリーン10の剛性を高めるよりも透明基材35を配置して透過型スクリーン10の剛性を高めた方が、観察者に二重像が認識されにくくなるので、効果的である。また、透明基材35を配置することにより透過型スクリーン10の剛性を高めることができるので、入射側透明基材26の厚みをより薄くすることができ、二重像がさらに認識されにくくなる。
【0034】
透明基材35の厚みは、1.5mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。透明基材35の厚みが1.5mm未満であると、透過型スクリーン10の剛性を高めるという機能を十分に果たすことができないおそれがあるからである。
【0035】
透明基材35としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基材が挙げられる。
【0036】
光制御シート
光制御シート45は、透明基材35の映像光出射側(観察者側)に配置されている。光制御シート45に入射した映像光を透過するものであるとともに二重像の原因となる迷光を吸収するためのものである。光制御シート45は、用途によって異なるが、意匠性を向上させる観点から、図7および図8に示される映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するものである。また、光制御シート45は、用途に応じて、映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように曲っていることもある。
【0037】
図3、図7および図8に示されるように光制御シート45は、基部46と、基材部46上に形成された入射した映像光を透過する複数の単位光透過部47と、基材部46上に形成され、単位光透過部47間に形成された迷光を吸収する複数の単位光吸収部48とを備えている。
【0038】
基部46は、図8に示されるように光制御シート45の映像光入射面45bを構成するものである。単位光透過部47および単位光吸収部48は、図8に示されるようにそれぞれ光制御シート45の映像光出射面45aを構成するものであり、映像光出射面45aに沿って配置されている。また、単位光透過部47および単位光吸収部48は、図7に示されるように透過型スクリーン10の横方向に延在しており、透過型スクリーン10の縦方向に交互に配置されている。
【0039】
また、光制御シート45とフレネルレンズシート20との配置関係においては、単位光透過部47および単位光吸収部48は、フレネルレンズ部形成面20aの中心Oとフレネルレンズ部22の光学中心Oとを結ぶ方向と略平行でありかつ映像光出射面45aに沿った第1の方向に交互に並べて配置されている。この場合、単位光透過部47および単位光吸収部48は、第1の方向と略直交しかつ映像光出射面45aに沿った第2の方向に延在している。ここで、図1等においては、「第1の方向」と「縦方向」および「第2の方向」と「横方向」が一致しているが、「第1の方向」と「第2の方向」は光制御シート45とフレネルレンズシート20との配置関係を表すためのものであり、必ずしも「第1の方向」と「縦方向」および「第2の方向」と「横方向」は一致していなくともよい。
【0040】
基部46は、単位光透過部47や単位光吸収部48を形成するためのベースとなる層である。
【0041】
基部46としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0042】
単位光透過部47は、光制御シート45の厚さ方向の断面形状が略台形となっているものが好ましい。この台形は、映像光出射面45aが上底、映像光入射側が上底より長さが長い下底とするものである。
【0043】
単位光透過部47は、15%以上50%以下、好ましくは20%以上50%以下の伸び率を有する光透過性樹脂からなるものである。この数値範囲としたのは、光透過性樹脂の伸び率が15%未満であると、単位光透過部と単位光吸収部との間におけるクラックの発生を抑制することができないおそれがあるからである。また、光透過性樹脂の伸び率が50%を超えると、製造上の問題が生じるおそれがあるからである。すなわち、単位光透過部は、単位光透過部の形状に対応する溝を有する金型に光透過部用組成物を供給し、硬化させて、光透過性樹脂を得ることにより形成することが可能であるが、光透過性樹脂の伸び率が50%を超えると、金型から単位光透過部を引き剥がす際に剥がし難くなる。
【0044】
本明細書における「伸び率」とは、測定対象となる樹脂を用いて、長さ10cm、幅1cm、厚さ150mmの短冊状のフィルム試片を作製し、そのフィルム試片を、引張り試験機を用いて、100℃おいて、長さ方向に引張速度200mm/分で引張り、フィルム試片が破断したときの伸び率(%)を意味する。具体的には、伸び率(%)は、以下の式によって求める。
伸び率(%)=(破断時のフィルム試片長さ−試験前のフィルム試片長さ(10cm))/試験前のフィルム試片長さ(10cm))×100
【0045】
光透過性樹脂としては、特に限定されることはないが、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化する特徴を有する電離放射線硬化型樹脂組成物等の硬化物が挙げられる。
【0046】
電離放射線硬化型樹脂組成物に含まれるベース樹脂としては、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等が挙げられる。これらの中でもウレタン樹脂のアクリレート(ウレタンアクリレート)やエポキシ樹脂のアクリレート(エポキシアクリレート)が好ましい。また、電離放射線硬化型樹脂組成物には、(メタ)アクリレートモノマー等の反応性希釈剤を含んでいてもよい。また、電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、組成物中に重合開始剤や光増感剤等を混合する。
【0047】
伸び率が15%以上50%以下の光透過性樹脂は、光透過性樹脂の架橋度を変えることにより得られる。具体的には、伸び率が15%以上50%以下の光透過性樹脂は、従来の単位光透過部を構成する光透過性樹脂よりも架橋度を低くすることにより得ることができる。架橋度は、架橋剤、重合開始剤、およびベース樹脂等を調製することによって、変えることができる。
【0048】
単位光吸収部48は、図8に示されるように80μm以上150μm以下の高さHを有する。また、単位光吸収部48は、単位光吸収部48が隣り合う単位光透過部47により形成される、断面形状がV字状の溝または断面形状が台形状の溝に形成されていることが好ましい。すなわち、断面形状がV字状の溝の場合には、単位光吸収部48は光制御シート45の厚さ方向の断面形状が映像光出射面45aを底辺とする略三角形となっており、断面形状が台形状の溝の場合には、光制御シート45の映像光入射側を上底としかつ光制御シート45の映像光出射面45aを下底とするものである。ここで、「下底」の長さは「上底」の長さより長いものとする。
【0049】
単位光吸収部48は、光吸収材等を含有する樹脂から構成することが可能である。この樹脂としては、電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物が挙げられる。この電離放射線硬化型樹脂組成物としては、上記単位光透過部47を形成するための電離放射線硬化型樹脂組成物と同様のものが使用できる。
【0050】
光制御シート45の映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上1500mm以下の曲率半径を有する場合には、単位光吸収部48を構成する光吸収材等を含有する樹脂は、光吸収材等を含有する状態で、15%以上40%以下、好ましくは20%以上40%以下の伸び率を有することが好ましい。これは、単位光透過部と単位光吸収部との間におけるクラックの発生をより確実に抑制するためである。なお、単位光吸収部の伸び率が15%未満であると、単位光透過部と単位光吸収部との間におけるクラックの発生をより確実に抑制することができないおそれがある。また、上述したように単位光透過部の伸び率が15%以上50%以下となっているので、単位光吸収部の40%を超えると、光制御シートが柔らかくなりすぎてしまい、光制御シート全体として所望の硬さが得られないおそれがある。
【0051】
樹脂は、単位光透過部47を構成する透明樹脂の屈折率より小さい屈折率を有する材料により構成されていることが好ましい。
【0052】
光吸収材は、可視光である外光や迷光を吸収する機能を有すればよく、光吸収材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等、顔料または染料、顔料または染料で着色された樹脂粒子等が挙げられる。
【0053】
光吸収材が顔料または染料で着色された樹脂粒子である場合、樹脂粒子としては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ等のプラスチックビーズが挙げられる、これらの中でもアクリルビーズが好ましい。
【0054】
光拡散層
光拡散層55は、光制御シート45の映像光出射側(観察者側)に配置されている。光制御シート45から出射した映像光を等方的に拡散させるためのものである。
【0055】
光拡散層55の厚みは、0.05〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.5mmであることがより好ましい。光拡散層55の厚みが0.05mm未満であると、光拡散効果が十分に得られないおそれがあるからであり、また2.0mmを超えると透過型スクリーン10に映し出される映像がぼやけてしまい、解像性に劣る映像となってしまうおそれがあるからである。
【0056】
光拡散層55は、光透過性樹脂に光拡散粒子を含有させたものから構成することが可能である。光拡散層55は、例えば、光透過性樹脂と光拡散粒子との間の屈折率差に起因して、または、光拡散粒子自体が有する反射性に起因して、映像光を等方的に拡散する機能を発現する。光拡散層55の光拡散能によって、光制御シートを透過した映像光が拡散され、観察者は、光拡散層55の光拡散能に応じた視野角の範囲内で映像を観察することができる。
【0057】
光透過性樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0058】
光拡散粒子としては、プラスチックビーズ等の有機フィラーが好適であり、特に透明度が高いものが好ましい。プラスチックビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩化ビニルビーズ等が挙げられ、これらの中でもアクリルビーズが好ましい。また、プラスチックビーズのみならず、シリコンビーズ等も使用することも可能である。さらに、プラスチックビーズとシリコンビーズ等を併用することも可能である。
【0059】
表面層
表面層60は、光拡散層55より観察面側に設けられる層であり、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、紫外線吸収機能および防汚機能の少なくともいずれかの機能を有する層である。本実施形態では、表面層60は、ハードコート機能を有する層(ハードコート層)となっている。ハードコート層は、透明性を有し、JISK5600−5−4(1994)で規定される鉛筆硬度試験で「HB」以上の硬度を示すものである。
【0060】
<透過型スクリーンの製造方法>
このような透過型スクリーン10は、例えば、以下のような製造方法により作製することが可能である。図9(a)〜図11は本実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を示した図である。
【0061】
まず、フレネルレンズシート20を用意する。フレネルレンズシート20は、例えば以下のようにして得ることができる。すなわち、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基部21と金型との間に紫外線硬化型樹脂組成物等の電離放射線硬化型樹脂組成物を充填し、電離放射線を照射して電離放射線硬化型樹脂組成物を硬化させることによってフレネルレンズ部22を形成する。これにより、フレネルレンズシート20が作製される。そして、基部21の映像光入射面に入射側透明基材26を粘着剤または紫外線硬化型接着剤のような接着剤からなる接合層(図示せず)を用いて接合し、入射側透明基材26を背面側に有するフレネルレンズシート20を形成する(図9(a))。
【0062】
フレネルレンズシート20を作製した後、フレネルレンズシート20を加熱して、軟化させ、例えばフレネルレンズ部22側が凸となるように、かつフレネルレンズシート20の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下、場合によっては250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように曲面成形する(図9(b))。具体的には、フレネルレンズシート20を構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度にフレネルレンズシート20を加熱して、軟化させる。より具体的には、60〜250℃、好ましくは70〜200℃に加熱して、軟化させる。そして、この軟化したフレネルレンズシート20を、少なくとも一部が250mm以上2000mm以下、場合によっては250mm以上1500mm以下の曲率半径を有する型面(図示せず)に、例えば気体圧力を用いた加圧により、非接触で、フレネルレンズシート20を押し付け、あるいは、押圧部材を用いて、フレネルレンズシート20を押し付ける。この曲面成形中、好ましくは、フレネルレンズシート20と型面との間の雰囲気が減圧した状態に保たれ、より好ましくは概ね真空状態に保たれる。これにより、フレネルレンズシート20の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下、場合によっては250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するフレネルレンズシート20を得ることができる。なお、上記では、フレネルレンズ部22側が凸となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形しているが、これに限らず、フレネルレンズ部22側が凹となるように、すなわち入射側透明基材26側が凸となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形してもよく、またフレネルレンズ部22側が凸となる部分とフレネルレンズ部22側が凹となる部分とを組み合わせた形状となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形してもよい。
【0063】
一方で、透明基材35、光制御シート45、および光拡散層55を用意する。光制御シート45は、例えば、以下の方法によって作製することができる。すなわち、単位光透過部47の形に対応した形の複数の溝を有する金型(図示せず)にシート状の基部46を送り込み、金型と基部46との間に、硬化後の状態での伸び率が15%以上50%以下となる電離放射線硬化型樹脂組成物等の光透過部用組成物を供給し、基部46と金型との間に光透過部用組成物を充填する。その後、電離放射線を照射し、光透過部用組成物を硬化させて、基部46上に単位光透過部47を形成する。
【0064】
単位光透過部47を形成した後、単位光透過部47を金型から引き抜き、そして、複数の単位光透過部47間の溝に、光吸収材を含有する電離放射線硬化型樹脂組成物等の光吸収部用組成物を塗布し、ドクターブレード等によって充填する。なお、光制御シート45の映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように光制御シート45を曲面成形する場合には、硬化後の状態での伸び率が15%以上40%以下となる光吸収部用組成物を用いることが好ましい。その後、電離放射線により光吸収部用組成物を硬化させて、単位光透過部47間に単位光吸収部48を形成する。これにより、光制御シート45が作製される。なお、単位光吸収部48を先に形成し、その後単位光吸収部48間に単位光透過部47を形成して、光制御シート45を形成することも可能である。
【0065】
光拡散層55は、例えば、押出し成形装置を用いて、光拡散粒子を含有する透明樹脂を板状に押出しすることにより作製することができる。また、光拡散層55に使用される透明樹脂および光拡散粒子は、上記で説明したので、説明を省略するものとする。
【0066】
そして、このように用意した透明基材35、光制御シート45、および光拡散層55をこの順で積層し、積層体80を形成する(図10(a))。なお、これらのシートおよび層を積層する際に、透明基材35と光制御シート45、および光制御シート45と光拡散層55とを、粘着剤または紫外線硬化型接着剤のような接着剤からなる接合層40、50を用いて接合する。
【0067】
積層体80を作製した後、積層体80を加熱して、軟化させ、光拡散層55側が凸となるように、かつ光制御シート45の映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上2000mm以下、場合によっては250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように曲面成形する(図10(b))。具体的には、積層体80を透明基材35のガラス転移温度以上に加熱して、軟化させる。より、具体的には60〜250℃、好ましくは80〜200℃に加熱して、軟化させる。そして、この軟化した積層体80を、少なくとも一部が250mm以上2000mm以下、場合によっては250mm以上1500mm以下の曲率半径を有する型面に、例えば気体圧力を用いた加圧により、非接触で積層体80を押し付け、あるいは、押圧部材を用いて積層体80を押し付ける。この曲面成形中、好ましくは、積層体と型面との間の雰囲気が減圧した状態に保たれ、より好ましくは概ね真空状態に保たれる。これにより、積層体80を曲面成形できる。
【0068】
積層体80を曲面成形した後、光拡散層55上に表面層60を形成して、積層体30を形成する(図10(c))。表面層60として、ハードコート層を形成する場合においては、電離放射線硬化型樹脂組成物を含むハードコート層用組成物を塗布し、乾燥させ、紫外線等の電離放射線により硬化させる。これにより、光拡散層55上に表面層60としてのハードコート層が形成される。なお、ハードコート層は、予め半硬化させたハードコート層を形成しておき、このハードコート層を光拡散層上に載せ、その後硬化させて形成することも可能である。また、熱硬化性塗料を塗布し、加熱乾燥し、硬化させてハードコート層を形成することも可能である。
【0069】
そして、最後に、曲面成形された積層体30を、曲面成形されたフレネルレンズシート20の映像光出射側に配置する(図11)。なお、この状態においては、透明基材35がフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部22側となっており、表面層60が観察者側となっている。これにより、図1に示される透過型スクリーン10が完成する。
【0070】
<背面投射型表示装置>
透過型スクリーン10は、背面投射型表示装置に組み込んで使用することができる。このような背面投射型表示装置としては、例えば、車載用や船舶用の背面投射型表示装置等が挙げられる。
【0071】
以下、透過型スクリーン10を組み込んだ背面投射型表示装置について説明する。図12は本実施形態に係る背面投射型表示装置の模式的な断面図である。図12に示されるように背面投射型表示装置70は、例えば、透過型スクリーン10、透過型スクリーン10を支持する例えば筐体のようなスクリーン支持体71、および透過型スクリーン10に映像光を投射する映像光源72を備えている。
【0072】
本実施形態では、透過型スクリーン10は、透過型スクリーン10が縦方向となるようにスクリーン支持体71に支持されている。とりわけ、透過型スクリーン10の映像光出射面10aのうちの最も観察者側に突出した位置(本実施形態では、透過型スクリーン10の中央位置Pに相当)における法線方向に直交する面(すなわち、最も観察者側に突出した位置での接面)が、略鉛直方向と平行となっている。
【0073】
映像光源72は、透過型スクリーン10の背面側に配置されている。図12に示される映像光源72は、透過型スクリーン10よりも下方に配置されており、ミラー等を使用せずに透過型スクリーン10に対し映像光を投射するように構成されている。なお、ミラー等を介して透過型スクリーン10に映像光を投射してもよい。
【0074】
この場合、透過型スクリーン10は、単位光透過部47および単位光吸収部48の延在方向が横方向となり、かつフレネルレンズ部22の光学中心Oがフレネルレンズ部形成面20aの中心Oより縦方向下側となるように配置されている。
【0075】
なお、図12においては、映像光源72が透過型スクリーン10より下方に配置されているが、映像光源72は透過型スクリーン10よりも上方に配置されていてもよい。この場合、透過型スクリーン10は、単位光透過部47および単位光吸収部48の延在方向が横方向となり、かつフレネルレンズ部22の光学中心Oがフレネルレンズ部形成面20aの中心Oより縦方向上側となるように配置される。
【0076】
映像光源72は、照射領域がしだいに広がっていく発散光束(拡大投影された光束)として透過型スクリーン10の映像光入射面10bの全域に映像光を照射する。このような映像光源72としては、公知の光源、例えばLEDやレーザを利用したピコプロジェクタ等の小型の光源が挙げられる。
【0077】
このような背面投射型表示装置70においては、映像光源72から映像光が発せられると、図12に示されるように映像光は、発散光束として、透過型スクリーン10の映像光入射面10bの全域に投射される。そして、図3に示されるように透過型スクリーン10の映像光入射面10bに投射された映像光Lは、入射側透明基材26を透過して、フレネルレンズシート20に入射する。そして、フレネルレンズ部22によって、映像光Lは正面方向Nに向く光に変換される。正面方向Nに向く光となった映像光Lは、透明基材35を介して光制御シート45に入射し、単位光透過部47を介して光制御シート45から出射する。光制御シート45から出射した映像光Lは、光拡散層55で拡散されて、表面層60を介して、透過型スクリーン10の映像光出射面10aから出射する。このような背面投射型表示装置70においては、映像光は、フレネルレンズシート20によっていったん正面方向Nに向く光に変換された後に光拡散層55で拡散されるので、各方向から表示された映像を観察した場合、明るさの面内ばらつきが緩和された高品質の映像を提供できる。
【0078】
また、映像光のみならず、図3に示されるように迷光Lもフレネルレンズシート20から出射し、光制御シート45に入射するが、迷光Lは正面方向Nに向く略平行な光とはなっていないので、迷光Lは単位光吸収部48で吸収される。また、外光Lも、光制御シート45の単位光吸収部48によって、吸収される。
【0079】
本実施形態によれば、単位光透過部47が15%以上50%以下の伸び率を有する光透過性樹脂からなるので、単位光吸収部48が80μm以上150μm以下の高さを有し、かつ、光制御シート45の映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するように積層体80に曲面成形を施した場合であっても、曲面成形時に単位光透過部47を構成する光透過性樹脂が延伸する。これにより、単位光透過部47と単位光吸収部48との間におけるクラックの発生を抑制することができるので、外観が損なわれることがなく、かつ良好な映像を表示できる。
【0080】
本実施形態によれば、フレネルレンズシート20および積層体30が曲面をなすように曲がっているので、外観が損なわれることなく、意匠性を向上させることができる。
【0081】
本実施形態によれば、単位光透過部と単位光吸収部との間におけるクラックの発生を抑制することができるので、歩留まりを向上させることができるとともに、曲面形状の自由度を向上させることができる。
【0082】
積層体80を曲面成形する前に光拡散層55上に表面層60を形成した場合には、積層体80を曲面成形する際に表面層60が割れてしまうおそれがある。これに対し、本実施形態においては積層体80を曲面成形した後に光拡散層55上に表面層60を形成しているので、表面層60の割れを防止することができる。
【0083】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、透過型スクリーンを、第1の実施形態とは異なる方法によって製造した例について説明する。図13(a)〜図13(c)は、第2の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【0084】
まず、第1の実施形態と同様に、入射側透明基材26を背面側に有するフレネルレンズシート20を用意する。また、第1の実施形態と同様に、透明基材35、光制御シート45、および光拡散層55を用意し、これらをこの順で積層して、積層体80を形成する。
【0085】
その後、積層体80がフレネルレンズシート20の映像光出射側に配置されるようにフレネルレンズシート20と積層体80とを積層する(図13(a))。積層された状態では、透明基材35がフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部22側となっており、積層体80の光拡散層55が観察者側となっている。
【0086】
フレネルレンズシート20と積層体80とを積層した後、これらを加熱して、軟化させ、光拡散層55側が凸となるように、かつ光制御シート45の映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上2000mm以下、場合によっては250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように、フレネルレンズシート20および積層体80を曲面成形する(図13(b))。
【0087】
フレネルレンズシート20と積層体80を曲面成形した後、光拡散層55上に表面層60を形成して、積層体30を形成する(図13(c))。これにより、図1に示される透過型スクリーン10が完成する。
【0088】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態においては、透過型スクリーンを、タッチパネル機能を有する背面投射型表示装置に組み込んだ例について説明する。図14は本実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置の模式的な断面図であり、図15は本実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置を上方から見た図である。なお、図14および図15中において、第1の実施形態と同様の符号を付している部材等は、第1の実施形態で説明した部材等と同様のものであるので、説明を省略する。
【0089】
図14に示されるように背面投射型表示装置90は、例えば、透過型スクリーン10、筐体のような透過型スクリーン10を支持するスクリーン支持体71、透過型スクリーン10に映像光を投射する映像光源72を備えている。さらに、この背面投射型表示装置90は、図14および図15に示されるように、透過型スクリーン10に赤外光を投射する赤外光源91と、赤外光を検出可能なCCDカメラ等の赤外光検出器92等を備えている。赤外光源91および赤外光検出器92は透過型スクリーン10の背面側に配置されている。
【0090】
赤外光源91から発せられた赤外光は、透過型スクリーン10を透過する。これにより、透過型スクリーン10に例えば指や専用のペン等が触れた場合には、赤外光は指等により反射されるので、赤外光検出器92で指の位置情報を検出することができる。これにより、タッチパネル機能を実現することができる。
【0091】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、構造や材質、各部材の配置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【実施例】
【0092】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明する。
【0093】
実施例
まず、フレネルレンズシートを用意した。フレネルレンズシートの入射側透明基材としては、厚みが1.3mmのアクリル板を使用した。フレネルレンズシートのフレネルレンズ部としては、ウレタンアクリレートを含む紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物から構成されており、単位プリズムのピッチが105μmのものを使用した。
【0094】
そして、このフレネルレンズシートを80℃に加熱し、軟化させるとともに真空成形により曲面成形した。なお、曲面成形は、曲率半径が1000mmとなるように行われた。
【0095】
一方で、透明基材、光制御シート、および光拡散層を用意した。透明基材としては、厚みが3mmのアクリル板を使用した。
【0096】
光制御シートとしては、ポリカーボネート(PC)フィルム上に形成された単位光透過部および単位光吸収部を備え、かつ厚みが0.3mmのものを使用した。単位光透過部を構成する光透過性樹脂は、42.4%の伸び率を有するものであり、単位光吸収部を構成する光吸収材としての着色粒子を含有する樹脂は、着色粒子を含有する状態で30.5%の伸び率を有するものであった。
【0097】
単位光透過部の屈折率は1.550であり、単位光吸収部の屈折率は1.490であった。単位光吸収部の高さは150μmであった。単位光吸収部の幅は映像光出射面において30μmであり、単位光吸収部における映像光入射側の先端部の幅は6μmであり、単位光吸収部における映像光出射側の底部のピッチは60μmであった。さらに、ポリカーボネートフィルムの法線と単位光吸収部とによって形成される角度は4.5°であった。
【0098】
光制御シートは、具体的には、以下のようにして作製された。まず、単位光透過部の形に対応した形の複数の溝を有する金型にシート状のポリカーボネートフィルムを送り込み、金型とポリカーボネートフィルムとの間に、ウレタンアクリレート等を含む硬化後の状態での伸び率が42.4%となる紫外線硬化型樹脂組成物を供給し、ポリカーボネートと金型との間に紫外線硬化型樹脂組成物を充填した。その後、紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させて、ポリカーボネート上に光透過性透明樹脂からなる単位光透過部を形成した。単位光透過部を形成した後、単位光透過部を金型から引き抜き、そして、複数の単位光透過部間の溝に、着色粒子を含有するウレタンアクリレート等を含む紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、ドクターブレード等によって充填した。紫外線硬化型樹脂組成物は、着色粒子を含有した状態で、硬化後の状態での伸び率が30.5%となるものであった。その後、紫外線により紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させて、単位光透過部間に着色粒子を含有する樹脂からなる単位光吸収部を形成した。
【0099】
光拡散層としては、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)樹脂中に、光拡散粒子として、屈折率1.550および平均粒径8μmのアクリル系ビーズと、屈折率1.420および平均粒径2μmのシリコン系ビーズとを含有させたものから構成され、かつ厚みが0.14mmのものを使用した。なお、光拡散層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂50重量%、アクリル系ビーズ40重量%、シリコン系ビーズ10重量%であった。
【0100】
透明基材等を用意した後、透明基材、光制御シート、および光拡散層をこの順で積層し、積層体を形成した。ここで、透明基材等を積層する際、透明基材と光制御シートとの間、および光制御シートと光拡散層との間を、紫外線硬化型接着剤により接着した。
【0101】
そして、この積層体を140℃に加熱し、軟化させるとともに型を用いた真空成形により曲面成形した。なお、曲面成形は、光制御シートの映像光出射面の曲率半径が1000mmとなるように行われた。
【0102】
積層体を曲面成形した後、積層体の表面に、アクリルウレタン系熱硬化塗料を塗布し、加熱により乾燥させた後、ハードコート層を形成した。最後に、積層体をフレネルレンズシートの映像光出射側に配置して、実施例1に係る透過型スクリーンを作製した。
【0103】
比較例
比較例においては、単位光透過部を構成する光透過性樹脂が13.8%の伸び率を有するものであり、単位光吸収部を構成する着色粒子を含有する樹脂が着色粒子を含有した状態で13.0%の伸び率を有するものであった以外、実施例と同様の材料および方法を用いて、透過型スクリーンを作製した。
【0104】
(クラックの有無)
上記において作製した実施例および比較例の透過型スクリーンについて、95℃の環境下で1週間放置する耐久性試験を行い、試験後の透過型スクリーンにクラックが生じているか否か確認した。なお、クラックが生じているか否かの判断は、電子顕微鏡を用いて透過型スクリーンの断面を撮影した写真により行った。
【0105】
図17に示されるように比較例に係る透過型スクリーンは、単位光透過部と単位光吸収部との間にクラックが発生していた。なお、比較例に係る透過型スクリーンでは、放置後2時間〜4時間でクラックが発生していた。これに対し、図16に示されるように実施例に係る透過型スクリーンは、放置後1週間経過しても、単位光透過部と単位光吸収部との間にクラックが発生していなかった。この結果から、実施例に係る透過型スクリーンは、クラックを抑制することができることが確認された。
【符号の説明】
【0106】
10…透過型スクリーン、10a…映像光出射面、10b…映像光入射面、20…フレネルレンズシート、20a…フレネルレンズ部形成面、22…フレネルレンズ部、23…単位プリズム、26…入射側透明基材、35…透明基材、45…光制御シート、45a…映像光出射面、45a…映像光入射面、46…基部、47…単位光透過部、48…単位光吸収部、55…光拡散層、60…表面層、70、90…背面投射型表示装置、72…映像光源、80…積層体、91…赤外光源、92…赤外光検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンに用いられる光制御シートであって、
前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成し、80μm以上150μm以下の高さを有する複数の単位光吸収部とを備え、
前記光制御シートは、曲面をなすようにかつ前記光制御シートの映像光出射面の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するように曲っており、
前記単位光透過部が、15%以上50%以下の伸び率を有する光透過性樹脂からなる、光制御シート。
【請求項2】
前記光制御シートの映像光出射面の少なくとも一部が250mm以上1500mm以下の曲率半径を有し、前記単位光吸収部が、15%以上40%以下の伸び率を有する、光吸収材を含有する樹脂からなる、請求項1に記載の光制御シート。
【請求項3】
映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンであって、
請求項1または2に記載の光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置された光拡散層とを備える積層体を備え、
前記積層体全体が曲面をなすように曲っている、透過型スクリーン。
【請求項4】
前記積層体全体が三次元曲面をなすように曲がっている、請求項3に記載の透過型スクリーン。
【請求項5】
前記積層体よりも前記映像光源側に配置された、フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートをさらに備え、前記フレネルレンズシートが曲面をなすように曲っている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項6】
前記単位光透過部および前記単位光吸収部が、前記透過型スクリーンの横方向に延在している、請求項5に記載の透過型スクリーン。
【請求項7】
前記フレネルレンズ部が、前記フレネルレンズシートのフレネルレンズ部形成面の中心に対して前記透過型スクリーンの縦方向下側に偏心した位置に光学中心を有する、請求項6に記載の透過型スクリーン。
【請求項8】
前記単位光透過部および前記単位光吸収部が、前記フレネルレンズ部形成面の中心と前記フレネルレンズ部の光学中心とを結ぶ方向と略平行でありかつ前記映像光出射面に沿った第1の方向に交互に並べて配置されるとともに、前記第1の方向と略直交しかつ前記映像光出射面に沿った第2の方向に延在している、請求項5に記載の透過型スクリーン。
【請求項9】
請求項3ないし8のいずれか1項に記載の透過型スクリーンと、
前記透過型スクリーンの背面側に配置され、前記透過型スクリーンに映像光を投射する映像光源と
を備えることを特徴とする、背面投射型表示装置。
【請求項10】
前記透過型スクリーンに赤外光を投射する赤外光源と、
前記赤外光を検出可能な赤外光検出器と
をさらに備える、請求項9に記載の背面投射型表示装置。
【請求項11】
映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンの製造方法であって、
光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成し、かつ15%以上50%以下の伸び率を有する光透過性樹脂からなる複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成し、かつ80μm以上150μm以下の高さを有する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置された光拡散層とを有する積層体を形成する工程と、
前記積層体を加熱することにより軟化させ、前記光制御シートの映像光出射面の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するように、軟化した前記積層体を曲面成形する工程と、
を備える、透過型スクリーンの製造方法。
【請求項12】
前記積層体を曲面成形する工程が、前記光制御シートの映像光出射面の少なくとも一部が250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように行われ、前記単位光吸収部が、15%以上40%以下の伸び率を有する、光吸収材を含有する樹脂からなる、請求項11に記載の透過型スクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−76730(P2013−76730A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214906(P2011−214906)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】