説明

光制御フィルム及びそれを用いたスクリーン

【課題】所定の角度範囲で入射した光を広い角度範囲で散乱しつつ、外光の散乱を抑制する光制御フィルム、および外光散乱の抑制と広い視野角との両方を実現するスクリーンを提供する。
【解決手段】光制御フィルム3は、曇価に入射角依存性を有さず、入射光を水平方向へ散乱させる第1の散乱フィルム1と、曇価に入射角依存性を有し、入射光を前記水平方向に対して直交する垂直方向へ散乱させる第2の散乱フィルム2を積層して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光制御フィルム及びそれを用いたプロジェクションスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ(投影機)からの光を散乱させ、視聴者に視認できるようにする部材として、プロジェクションスクリーンが用いられている。また、近年では超小型プロジェクタを搭載したノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ等が相次いで開発されている。これらプロジェクタに用いられるスクリーンの他、デジタルサイネージ用の透過型スクリーンや、レーザーディスプレイ用のスクリーン、ヘッドアップディスプレイ用のスクリーン等、スクリーンの需要が高まっている。
このように、スクリーンは様々な環境下で使用され、映画館や会議室のような暗所だけではなく、明るい室内や屋外等の明所でも使用されるようになっている。スクリーンを明所で使用する場合、問題となるのは外光の散乱である。外光を視聴者側へ散乱してしまうと、表示画像のコントラストが低下してしまう。また、特定の視野角で視認できるようにするためには、所望の範囲に投影光を散乱させる必要があり、ディスプレイ等の多くの場合において広い視野角が求められる。
外光散乱を抑制したスクリーンとしては、汎用に用いられているものとして回帰反射を利用したビーズスクリーンがあるが、視野角が狭いことが問題であった。
これに対し、特定の入射角度範囲の光を選択的に散乱させる光制御フィルムが知られており、これを用いたスクリーンが提案されている。投影光は散乱する角度で入射し、外光は散乱しない角度で入射するようにこのスクリーンを配置することによって、外光散乱を抑制できる。例えば、特許文献1には、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを有する組成物に光を照射することにより硬化してなる曇価に入射角依存性を有する散乱フィルムを光制御フィルムとして用い、スクリーンに適用することが提案されているが、かなり視野角が狭いという問題があった。
特許文献2には、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを有する組成物に光を照射することにより硬化してなる曇価に入射角依存性を有する散乱フィルムを複数枚積層して光制御フィルムとし、スクリーンに適用することが提案されている。 また、特許文献3には、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを有する組成物に光を照射することにより硬化させた、曇価に入射角依存性を有する散乱フィルムを3枚以上積層してなる光制御フィルムであって、うち2枚の散乱フィルムは高い曇価を示す入射角度範囲が同一面上にあり、前記範囲の中心が法線方向に対して互いに逆向きに偏っており、前記範囲の一部が互いに重なる状態で積層し、さらに別の1枚の散乱フィルムは、前記2枚の散乱フィルムと高い曇価を示す入射角度範囲が同一面上にあり、前記範囲の中心が法線方向にほぼ一致するように積層した光制御フィルムとし、スクリーンに適用することが提案されている。
このように、特定の入射角度範囲の光を選択的に散乱させる光制御フィルムを用いたスクリーンでは、特許文献2、3に記載された構成のようにして、視野角を広くすることが提案されている。
また、特許文献4では、曇価に入射角依存性を有する散乱フィルムと、曇価に入射角依存性を有しない散乱フィルムと、を積層することで水平、垂直方向の両方で広い出射角度範囲を有する光制御フィルムとし、スクリーンに適用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2691543号公報
【特許文献2】特開平4−77728号公報
【特許文献3】特開2006−84769号公報
【特許文献4】特開2009−157250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2、3に記載のように、曇価に入射角依存性を有する散乱フィルムのみを光制御フィルムとして用いたスクリーンでは、垂直方向へは充分に広い視野角が得られておらず、水平、垂直方向の両方で広い出射角度範囲を有する光制御フィルムを提供することができなかった。
また、特許文献4のような構成とすることで視野角を広くすることは可能ではあるが、特許文献4では、曇価に入射角依存性を有しない散乱フィルムに、垂直方向へも広い出射角度範囲を有する散乱フィルムを用いているため、特許文献4の光制御フィルムをスクリーンに用いた場合、視聴者側に届く外光散乱の割合が多くなり、結果的に外光散乱の抑制機能は低いという問題があった。すなわち、外光散乱の抑制と広い視野角の両方を有するスクリーン、および、そのようなスクリーンに好適に用いられる、所定の角度範囲で入射した光を広い角度範囲で散乱しつつ、外光の散乱を抑制することができる光制御フィルム、を得ることは従来の技術では困難であった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、所定の角度範囲で入射した光を広い角度範囲で散乱しつつ、外光の散乱を抑制する光制御フィルム、および外光散乱の抑制と広い視野角との両方を実現するスクリーンと、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような構成を有する本願発明によれば、曇価に入射角依存性を有さず、入射光を水平方向へ散乱させる第1の散乱フィルムと、曇価に入射角依存性を有し、入射光を前記水平方向に対して直交する垂直方向へ散乱させる第2の散乱フィルムを積層してなる、ことを特徴とする光制御フィルムが提供される。
【0007】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記第2の散乱フィルムが、光重合性組成物を硬化してなるマトリックスと、該マトリックス中に配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の板状構造体とを備えている、ことを特徴とする光制御フィルムが提供される。
【0008】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記第2の散乱フィルムは、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物に光を照射して硬化させたものである、ことを特徴とする光制御フィルムが提供される。
【0009】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記光制御フィルムを用いる、ことを特徴とするプロジェクションスクリーンが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の角度範囲で入射した光を広い角度範囲で散乱しつつ、外光の散乱を抑制する光制御フィルム、および外光散乱の抑制と広い視野角との両方を実現するスクリーンと、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の散乱フィルムと第2の散乱フィルムを積層して光制御フィルムを作製する例を模式的に説明する図である。
【図2】曇価の入射角依存性の測定方法を説明するための図である。
【図3】第2の散乱フィルムに好適に用いられる複数の板状構造体を有する散乱フィルムの斜視図である。
【図4】光制御フィルムの出射角度範囲の測定方法を説明するための図である。
【図5】実施例の光制御フィルムの散乱光分布を示したグラフである。
【図6】比較例1の光制御フィルムの散乱光分布を示したグラフである。
【図7】比較例2の光制御フィルムの散乱光分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の光制御フィルムについて詳細に説明する。
本発明に係る光制御フィルム3は、第1の散乱フィルム1と、第2の散乱フィルム2との積層体からなる。このように構成された光制御フィルムに入射した光は、第1の散乱フィルムによって水平方向へ広い出射角度範囲散乱され、さらにその散乱光が第2の散乱フィルムによって垂直方向へ広い出射角度範囲に散乱され、水平、垂直方向の両方で充分に広い出射角度範囲を有する光制御フィルムが得られる(図1参照)。
【0013】
(第1の散乱フィルム)
第1の散乱フィルム1は、曇価に入射角依存性を有さず、入射光を水平方向へ広い出射角度範囲に散乱させる散乱フィルムが好適に用いられ、第一の散乱フィルム1を水平面に配置し、鉛直方向(図1中X軸に沿った方向)に光を入射した際に、鉛直方向を0度とした場合の水平方向(図1中Y軸沿った方向)の出射角度範囲は、好ましくは−50〜+50°より広い範囲、より好ましくは−60〜+60°より広い範囲である。また、垂直方向(図1中Z軸に沿った方向)の出射角度範囲は、好ましくは−5度〜+5度の範囲内であり、より好ましくは−3度〜+3度の範囲内である。
第2の散乱フィルム2は、曇価に入射角依存性を有し、第2の散乱フィルム2を水平面に配置し、鉛直方向(図1中X軸に沿った方向)に光を入射した際に、入射光を垂直方向(図1中Z軸に沿った方向)へ広い出射角度範囲に散乱させる散乱フィルムが好適に用いられ、垂直方向の出射角度範囲は好ましくは−10〜+10°より広い範囲、より好ましくは−20〜+20°より広い範囲である。また、水平方向(図中Y軸に沿った方向)の出射角度範囲は、好ましくは−5度〜+5度の範囲内であり、より好ましくは−3度〜+3度の範囲内である。
【0014】
ここで、前記散乱フィルムに特定の角度から光を入射させたとき、出射光が観測される角度範囲を、本明細書では「出射角度範囲」と定義する。このときの出射角度範囲は、入射光に対し平行な軸を0°として表す。即ち、水平面に散乱フィルムを配置し、鉛直方向に光を入射する場合、図1中のX軸方向に沿った方向が0度となる。
【0015】
本発明でいう曇価とは、JIS K 7136に従い、光線透過率測定装置(例えば、ヘーズメーターHM−150、ゴニオフォトメータGP−200、共に村上色彩技術研究所社製)を用いて、光制御フィルムの全光線透過率及び散乱透過率を測定し、下式により求められる値である。
【0016】
[式1]
曇価(%)=散乱透過率(%)/全光線透過率(%)×100
散乱透過率(%)=全光線透過率(%)−平行光線透過率(%)
【0017】
また、光制御フィルムにおける曇価の入射角依存性は、次のようにして測定される。図2に示すように、法線方向を0°としたときに、光制御フィルムへの光の入射角θを−90〜+90°の範囲で変化させて、それぞれの角度毎に前記の曇価を測定する。ここで、入射角θは、法線方向と入射光とのなす角度である。ここで、60%以上の曇価を示す入射角度範囲と、60%未満の曇価を示す入射角度範囲と、両方を有する場合を、曇価に入射角依存性を有する、と定義し、どちらか一方のみの場合を、曇価に入射角依存性を有しない、と定義する。
【0018】
第1の散乱フィルム1として好適に用いられる、曇価に入射角依存性を有さず、入射光を水平方向へ広い出射角度範囲に散乱させる散乱フィルムとしては、フィルム表面に微細なレンズアレイを設け、そのレンズによる屈折機能で光を散乱させることを特徴とする散乱フィルムを用いることができる。前記フィルム以外に本機能を有するフィルムの構成としては、フィルム表面にレンチキュラーレンズ、バックリング構造等を設けた散乱フィルム、または、フィルム基材内部に針状構造の微粒子を一方向に分散配列させた散乱フィルム等がある。
【0019】
本発明に好適に用いられる市販の散乱フィルムとしては、Luminit社製のレンズ拡散板(LSD:登録商標)がある。LSDは、フィルム表面にマイクロオーダーの微細なレンズアレイをランダムに配置した構造を有しており、レンズアレイによる屈折機能で入射光を広い出射角度範囲に散乱させている。散乱強度及び出射角度範囲は、表面構造の形状を変えることで調節することができ、例えば、散乱光の形状を円形、楕円形、直線形等にすることができる。LSDの基材としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート等の透明材料を用いる。基材表面にレンズアレイを加工する方法としては、射出成形を用いる方法や、基材に光硬化性樹脂を塗布し、マスターを押し当て光硬化によってパターンを転写させる方法等がある。
【0020】
(第2の散乱フィルム)
第2の散乱フィルム2として好適に用いられる、曇価に入射角依存性を有し、入射光を垂直方向へ散乱させる散乱フィルムとしては、光重合性組成物を硬化してなるマトリックスと、該マトリックス中に配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の板状構造体とを備えていることを特徴とする散乱フィルムが用いられる(図3参照)。
ここで、板状構造体が水平方向に配列した状態で配置すると、板状構造体に平行に入射した光は、垂直方向へ散乱される。
【0021】
このような散乱フィルムは、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する光重合性組成物を膜状に形成し、棒状光源から特定の方向に広がり角を有する光を照射して硬化させることにより製造できる。より具体的には、膜状の光重合性組成物と棒状光源との間に、スリットが形成された遮光板を、スリットの長手方向が棒状光源と略平行となるように配置することにより、膜状の光重合性組成物に対し、特定の方向から光を照射することができる。このような光を照射して光重合性組成物を硬化することで、板状構造体が光源の長軸に沿った方向に形成された硬化物を得ることができる。また、このようにして得られた硬化物は、板状構造体の長手方向を軸として、光の入射方向を回転させた場合に、曇価に入射角依存性を有する。第2の散乱フィルム2に用いられる光重合可能なモノマー又はオリゴマーとしては、(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリルモノマーや、ビニル基、アリル基等を少なくとも1個含有するものが好ましく、例えば特開2005−242340号公報や、特許第2691543号公報に記載のもの等を用いることができる。
光重合性組成物の硬化に用いる光の波長は、前述の組成物を硬化させるものであればどのような波長を有していてもよく、例えば、可視光、紫外線等がよく用いられる。また、前記硬化に用いる光は、特定の方向に広がり角を有する光であることが好ましい。例えば、棒状のランプを用いた場合には、ランプの長手方向と略平行なスリットが形成された遮光板をランプと光重合性組成物との間に配置することにより、ランプの長軸方向に沿った方向には所定の広がり角を有するが、短軸方向の広がり角が長軸の広がり角よりも非常に小さい光を光重合性組成物に照射するができる。
また、光重合性組成物の硬化の際に照射した光の広がり角の中心を、光の照射方向とした場合、上述の光硬化物は光の照射方向を中心に高い曇価を示す入射角度範囲を発現する。即ち、光の照射方向にほぼ平行な光が光硬化物に入射した場合、高い曇値を発現するが、光の照射方向と大きく異なる方向から光が入射した場合は、曇値が小さく光をほとんど散乱しない。例えば、光の照射方向が光重合性組成物の膜面にほぼ垂直であれば、当該垂直方向、すなわち法線方向を中心に、前記入射角度範囲が発現する。また、光の照射方向が法線方向に対して所定角度傾いた斜め方向であれば、その傾いた方向を中心に前記入射角度範囲が発現する。
また、平行光源と膜面の間に偏角作用のある部材を設置し、平行光を特定方向の広がり角を有する光に変換して硬化に用いる光としても良い。ここで用いられる偏角作用のある部材としては、本発明に用いられるの第1の散乱フィルム等が挙げられる。
光重合性組成物を硬化して得られた光硬化物は、屈折率の異なる樹脂が相分離して、特定の方向に回折格子状の板状構造体を形成しており、該光硬化物に特定の入射角で入射した光は、Braggの回折条件に準じた原理にて散乱するものと考えられる。
【0022】
Braggの回折式に従う場合、散乱角θ0の大きさは複数の板状構造体の配列周期Λに依存し、散乱角θ0の大きさは式2で表される。
[式2]
nλ=Λsinθ0 (nは次数、λは入射光の波長、Λは配列周期、θは散乱角)
すなわち、散乱角θ0を大きくしたい場合、構造体の配列周期Λをより小さくすればよい。
式2より、散乱角θ0を10°程度にしたい場合、配列周期Λを3μm程度にすればよいことが分かる。
(n=1、λ=532nmで計算)
配列周期Λは、使用する組成物及び照射条件によって調節することができる。
【0023】
(光制御フィルム)
本発明に係る光制御フィルム3は、上述の第1の散乱フィルム1と、第2の散乱フィルム2とを積層することにより得られる。第1の散乱フィルム1と第2の散乱フィルム2とを積層する方法としては、別々に作製した散乱フィルムを、透明な接着剤、両面接着フィルム等の媒体を介して接着してもよいし、媒体を介さずに積層してもよい。
媒体を介さずに積層する場合は、例えば第1の散乱フィルム1を基材として、その上に前記光重合性組成物を膜状に形成し、そこに特定方向から光を照射して硬化させることにより第2の散乱フィルム2を直接第1の散乱フィルム1上に製造する方法がある。
また、第1の散乱フィルム1により散乱された光は、特定方向の広がり角を有する光に変換されるため、前記光重合性組成物を膜状に形成した後、第1の散乱フィルム1をラミネートし、第1の散乱フィルム1側から平行光を照射して硬化させることにより、第1の散乱フィルム1と第2の散乱フィルム2が積層してなる本発明の光制御フィルムを製造することもできる。
本発明に係る光制御フィルム3においては、第1の散乱フィルム1は曇価に入射角依存性を有しないため、どの角度から入射した光でも広い出射角度範囲に散乱させる。しかし、第1の散乱フィルム1は、垂直方向へは広い出射角度範囲を有さず、第2の散乱フィルム2が曇値に入射角依存性を有するために、本発明の光制御フィルム3をスクリーンに適用した場合でも、外光散乱を視聴者側まで到達させないという特徴を有する。
【0024】
本発明の光制御フィルムはそのままスクリーンとして用いてもよいし、フレネルレンズシート等の他の光学部材と積層してスクリーンとして用いてもよい。また、反射部材と積層し、反射型スクリーンとして用いてもよい。
また、本発明の光制御フィルムは、第1の散乱フィルムと、第2の散乱フィルムの、どちらの面を光入射面としてもよい。
本発明は、本明細書に記載された実施形態や具体的な実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【実施例】
【0025】
(垂直方向へ光を散乱させる第2の散乱フィルムの作製)
単官能モノマーとしてベンジルアクリレートを、多官能モノマーとして分子量が536のポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)を用いた。開始剤種としては、Irgacure 369(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を用いた。また、照射波長はバンドパスフィルタを使用して365nmにピークを持つ波長を用いた。
【0026】
ベンジルメタクリレート20質量%とPEGDMA80質量%の混合物に対し開始剤を1.0質量%加え、光重合性組成物を得た。得られた光重合成組成物に紫外線を照射した。スライドガラスとカバーガラスの間に0.2mmのシリコン製スペーサを配置し、前記光重合性組成物をスペーサ内部に封入させ、カバーガラスの上部にバンドパスフィルタを設置した。続いて、水銀キセノンランプからの平行光をカバーガラス側から垂直に照射し、光重合性組成物を重合させてフィルムを得た。このとき、カバーガラスの上に、LSD60×1°(Luminit社製)を配置し、平行光を水平方向へ±60°に拡がりを持たせた光に変換した状態で照射し、光硬化させた。平行光の強度は0.1mW/cm2、照射時間は10minとした。
【0027】
(光制御フィルム)
前記作製した、垂直方向へ広い出射角度範囲を有する第2の散乱フィルムと、水平方向へ広い出射角度範囲を有する第1の散乱フィルムを積層して、2層構成の光制御フィルムを作製した。第1の散乱フィルムとしては、LSD60×1°を用いた。
【0028】
(比較例1)
曇価に入射角依存性を有する光制御フィルムとして、ルミスティ−(MFX−1515、住友化学工業社製)を一枚用意した。
【0029】
(比較例2)
ルミスティー(MFX−1515、住友化学工業社製)を2枚用い、光散乱方向が直交するように積層して、2層構成の光制御フィルムを作製した。
【0030】
(比較例3)
60%以上の曇価を示す入射角度範囲が−10〜+40°(中心15°)の範囲である散乱フィルムを2枚用い、前記範囲が法線方向を中心に互いに逆向きになるように積層して、2層構成としたものと、60%以上の曇価を示す入射角度範囲が−23〜+23°(中心0°)の範囲である散乱フィルムと、を積層して、3層構成の光制御フィルムを作製した。
【0031】
(評価法及び評価結果)
前記実施例並びに比較例1〜3の光制御フィルムにつき、ゴニオフォトメータGP−200(村上色彩技術研究所社製)を用いて、光制御フィルムへ光を0°(法線方向)で入射させたときの散乱光分布を測定した。測定結果を図5〜図7に示す。散乱光分布のグラフから、水平、垂直方向の出射角度範囲を求め、下記基準で評価し表1に示す。
【0032】
(広い出射角度範囲の判断基準)
(水平方向)
「○」:出射角度範囲がー50〜+50°より広い。
「×」:出射角度範囲がー50〜+50°より狭い。
(垂直方向)
「○」:出射角度範囲がー10〜+10°より広い。
「×」:出射角度範囲がー10〜+10°より狭い。
【0033】
【表1】

【0034】
表1、図5に示すように、実施例の光制御フィルムは、水平、垂直方向ともに広い出射角度範囲が得られていた。一方、比較例1〜3の光制御フィルムは、表1、図6、図7に示すように、水平、垂直方向のいずれか、もしくは両方の出射角度範囲が不十分であった。
【0035】
(プロジェクションスクリーンでの実装評価)
実施例の光制御フィルムをスクリーンとして装着し、映像を投影した結果、映像は鮮明で明るく、また水平、垂直方向の両方で良好な視野角を示した。
【0036】
以上、実施例からも明らかなように、本発明により、外光散乱の抑制と広い視野角の両方を有するスクリーンと、それに好適に用いられる広い出射角度範囲を有する光制御フィルムと、が提供された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る光制御フィルムは、プロジェクションスクリーンに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0038】
1 第1の散乱フィルム
2 第2の散乱フィルム
3 光制御フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曇価に入射角依存性を有さず、入射光を水平方向へ散乱させる第1の散乱フィルムと、曇価に入射角依存性を有し、入射光を前記水平方向に対して直交する垂直方向へ散乱させる第2の散乱フィルムを積層してなることを特徴とする、光制御フィルム。
【請求項2】
前記第2の散乱フィルムが、光重合性組成物を硬化してなるマトリックスと、該マトリックス中に配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の板状構造体とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の光制御フィルム。
【請求項3】
前記第2の散乱フィルムは、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物に光を照射して硬化させたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光制御フィルム。
【請求項4】
前記光制御フィルムを用いることを特徴とするプロジェクションスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−145693(P2012−145693A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3022(P2011−3022)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】