説明

光半導体微粒子

【課題】十分な光触媒性能を示し、有機バインダーなどの媒体が劣化し難く、耐候性に優れた光半導体微粒子を提供する。
【解決手段】0.5nm〜10nmの細孔直径を有する多孔質シリカ膜で被覆された光触媒活性を有する光半導体微粒子;その光半導体微粒子を製造する為の方法であって、少なくとも界面活性剤と、水と、水溶性有機溶剤と、光半導体微粒子と、アルコキシシランとを含む溶液を、20℃以下で撹拌することにより該光半導体微粒子の表面に膜を形成し、該膜で被覆された光半導体微粒子を焼成することにより多孔質シリカ膜を形成する光半導体微粒子の製造方法;その光半導体微粒子を有機バインダー中に分散してなるコ−ティング用組成物;及び、このコ−ティング用組成物から得られる被膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、防汚、防曇、抗菌、空気浄化、水浄化などの用途に用いられる光触媒活性を有する光半導体微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化チタンなどの光触媒活性を有する光半導体は、防汚、防曇、抗菌、空気浄化、水浄化など多方面の用途で注目を集め、活発な製品開発が行われている。この光半導体にバンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光が当たると、正孔と電子が発生し、この電子と空気中の酸素が反応してO2-(スーパーオキサイドイオン)が生成し、また正孔と水が反応してヒドロキシラジカルが発生する。これら活性種は強力な酸化力を有し、有機物を酸化分解する。
【0003】
例えば、光触媒活性を有する半導体微粒子(光触媒微粒子)を有機バインダー中に分散して組成物を調製し、これを基材上に塗布して用いる方法が知られている。この光触媒微粒子を含む塗膜は、空気中の悪臭や有毒VOC(Volatile Organic Compound)の分解による空気浄化、塗膜の汚れの分解による表面汚染防止、さらには抗菌や防カビなど、屋内および屋外における環境浄化に非常に有用である。しかしながら、長期的には、その塗膜中の光触媒微粒子周辺の有機物も分解されてしまうので、塗膜劣化の問題がある。したがって、有機バインダーが光触媒微粒子に直接接触しないよう工夫する必要がある。
【0004】
特許文献1には、光触媒微粒子を多孔質リン酸カルシウム膜で被覆することが記載されている。また、特許文献2には、光触媒微粒子をシリカ粒子の中に含有させることが記載されている。これらの方法によれば、有機バインダーの劣化抑制効果はある程度得られる。ただし、その被覆により光触媒性能が低下することがあり、また長期屋外曝露における有機バインダーの耐候性にはまだ課題が残されている。
【0005】
特許文献3には、光触媒微粒子をシリカ、アルミナなどの無機物やフッ素樹脂などの有機物からなる多孔性被覆部で被覆することが記載されている。具体的には、金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル法により光触媒微粒子を被覆する際にポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーを添加し、被覆膜形成後に焼成することでこの多孔質被覆部を形成している。しかしながら、この方法では多孔質膜の細孔直径を精密に制御することが難しく、比較的大きな径の細孔に有機バインダーが侵入し易く、その結果、有機バインダーの耐候性が低下する場合がある。
【特許文献1】特開平10−244166号公報
【特許文献2】特開平11−33100号公報
【特許文献3】特開平11−197515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上説明した課題を解決すべくなされたものである。すなわち、本発明の目的は、十分な光触媒性能を示し、かつ有機バインダーなどの媒体中に光半導体微粒子を分散した場合においてその媒体が劣化し難く、その結果、従来のものよりも耐候性が遥かに優れた塗膜等を形成できる光半導体微粒子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討を行った結果、光半導体微粒子を特定の多孔質シリカ膜により被覆することにより、十分な光触媒活性を維持しつつ、耐候性も優れた塗膜が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、0.5nm〜10nmの細孔直径を有する多孔質シリカ膜で被覆された光触媒活性を有する光半導体微粒子である。
【0009】
さらに本発明は、上記本発明の多孔質シリカ膜で被覆された光半導体微粒子を製造する為の方法であって、少なくとも界面活性剤と、水と、水溶性有機溶剤と、光半導体微粒子と、アルコキシシランとを含む溶液を、20℃以下で撹拌することにより該光半導体微粒子の表面に膜を形成し、該膜で被覆された光半導体微粒子を焼成することにより多孔質シリカ膜を形成することを特徴とする光半導体微粒子の製造方法である。
【0010】
さらに本発明は、上記本発明の光半導体微粒子を有機バインダー中に分散してなるコ−ティング用組成物である。
【0011】
さらに本発明は、上記本発明のコ−ティング用組成物を基材上に塗布し、熱または活性エネルギー線により乾燥、硬化して得られる被膜である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多孔質シリカ膜で被覆された光半導体微粒子は、有機バインダーなどの媒体中に分散された場合でもその媒体が劣化し難い。その結果、従来のものよりも耐候性が遥かに優れた塗膜等を形成できる。また、本発明の多孔質シリカ膜で被覆された光半導体微粒子は、十分な光触媒性能を示す。したがって、光触媒活性を利用する用途、例えば、空気中の悪臭や有毒VOCの分解などによる空気浄化、家庭及び工業廃水のBOD(Biochemical Oxygen Demand)分解処理による水浄化、塗膜の汚れの分解による表面汚染防止、さらには抗菌や防カビなどを目的とする用途において非常に有用である。
【0013】
さらに、光半導体微粒子の製造方法は、そのような優れた光半導体微粒子を簡易且つ良好に製造できる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<光半導体微粒子>
本発明における光半導体微粒子は、例えば、UVランプ、ブラックライト、蛍光灯、太陽光などの光により光触媒活性を示すものであればよく、その触媒活性成分の種類について特に制限はない。触媒活性成分の具体例としては、TiO2、ZnO、SrTiO3、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO3、KNbO3、Fe23、Ta25、WO3、SnO2、Bi23、NiO、Cu2O、SiC、SiO2、MoS2、InPb、RuO2、CeO2、LaTaON2、MTaO2N(M:アルカリ土類金属)、Ta35、TaON、LaTiO2N、TiNx2-X、TiNxyz、およびMNbO2N(M:アルカリ土類金属)などのニオブ系の化合物が挙げられる。また、酸化チタン微粒子にナノスケールの金属超微粒子を担持した可視光に応答する材料を用いることもできる。これらの中でも、耐久性、コスト、光触媒活性の観点から、酸化チタン(TiO2)を主成分とする光半導体微粒子が好ましく、酸化チタン微粒子の中でも特にアナターゼ型酸化チタン微粒子が好ましい。
【0015】
光半導体の粒子径は、1nm〜300nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。粒子径が適度に大きければ、多孔質シリカ膜で被覆する際に溶剤で1次粒子に分散し易くなる。また、粒子径が適度に小さければ、表面積が大きくなり、光触媒活性が向上する。
【0016】
<多孔質シリカ膜>
本発明の光半導体微粒子は、特定の多孔質シリカ膜で被覆されたものである。この光半導体微粒子は、個々の微粒子が独立してその膜で被覆されているものであるから、例えばシリカ粒子の中に光触媒微粒子が含有されているものや、あるいは複数の微粒子の被覆部分が一体化して分離が困難な状態のものは含まれない。
【0017】
多孔質シリカ膜の細孔直径は、0.5nm〜10nmである。これが0.5nm未満であると、分解すべき有機物が細孔内へ侵入し難くなり、分解性能が不十分になる。また、これが10nmを超えると、有機バインダーの分子セグメントも侵入し易くなってしまうので、有機バインダーが劣化し、塗膜の耐候性が不十分になる。この細孔直径は、さらに0.5nm〜3nmであることが好ましい。このような細孔直径の揃ったシリカ膜は、後に詳述する製造方法により簡易かつ良好に製造することができる。
【0018】
多孔質シリカ膜の細孔直径は、定容量法によるガス吸着法により測定した値である。細孔直径0.5〜1nmの場合はt−プロットによるマイクロポア解析により、また細孔直径1〜10nmの場合は、BJH法で解析することにより細孔径分布曲線を求め、そのピークを細孔直径とすることが出来る。
【0019】
多孔質シリカ膜の厚さは、好ましくは1nm〜300nm、より好ましくは1nm〜100nm、特に好ましくは2nm〜100nmである。
多孔質シリカ膜をある程度厚くすれば、有機バインダーが膜を浸透して光半導体微粒子へ達することがなくなり、有機バインダーの劣化を避けることができる。また、適度に薄くすれば、分解すべき有機物が細孔を通って光半導体微粒子へ達し易くなるので、十分な分解性能が得られる。
【0020】
<製造方法>
本発明の多孔質シリカ膜で被覆された光半導体微粒子の製造方法においては、特定の成分と、光半導体微粒子及びアルコキシシランを含む溶液を、特定温度で撹拌することにより光半導体微粒子の表面に膜を形成し、その膜で被覆された光半導体微粒子を焼成することにより多孔質シリカ膜を形成する。
【0021】
具体的には、少なくとも界面活性剤水溶液と、水溶性有機溶剤とを20℃以下で混合して混合溶液を調製する工程と、20℃以下で、光半導体微粒子およびアルコキシシランをその混合溶液に添加し、撹拌することにより、光半導体微粒子の表面に膜を形成する工程と、その膜で被覆された光半導体微粒子を焼成することにより多孔質シリカ膜を形成する工程とを含む方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
【0022】
まず、少なくとも界面活性剤水溶液と、水溶性有機溶剤とを室温以下の特定温度で混合して混合溶液を調製する。
【0023】
界面活性剤水溶液には、通常は、陽イオン性界面活性剤を用いる。陽イオン性界面活性剤としては、特に、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩が好ましい。水溶性有機溶剤としては、通常は、メタノール、エタノール等のアルコール溶剤を用いる。特に、メタノールが好ましい。さらに、pH調整剤(例えばアンモニア水、アミンの溶液等)も一緒に混合して、混合溶液のpHを調整することが好ましい。
【0024】
次に、室温以下の特定温度で、光半導体微粒子およびアルコキシシランをその混合溶液に添加し、撹拌することにより、光半導体微粒子の表面に膜を形成する。この膜は、アルコキシシランに起因するシリカ成分を主成分として成るシリカ膜である。
【0025】
光半導体微粒子の具体例は、先に挙げた通りである。アルコキシシランとしては、例えば、テトラアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。特に、テトラアルコキシシランが好ましい。
【0026】
この撹拌は、例えば、混合溶液に超音波を掛けて振動させることにより行うことができる。撹拌時間は特に制限されず、2〜6時間程度撹拌するとよい。
【0027】
以上の各工程において、溶液温度は20℃以下にすることが必要である。この温度が高過ぎると被覆微粒子同士が凝集し易くなり、個々の微粒子が独立して膜で被複された光半導体微粒子を得難くなる。この温度は、好ましくは0℃〜20℃、より好ましくは1℃〜10℃、特に好ましくは2℃〜5℃である。混合時間は各成分が均一に混合されるに十分な時間であればよく、特に制限はない。通常は、数時間〜24時間撹拌である。
【0028】
次に、以上のようにして被膜を形成した光半導体微粒子を混合溶液中から取り出し、洗浄することが好ましい。具体的には、例えば光半導体微粒子を遠心分離により回収し、それをメタノール等の溶剤にて洗浄し、さらに遠心分離を数回繰り返すとよい。
【0029】
次に、その回収、洗浄した光半導体微粒子を焼成することにより、細孔直径の揃った多孔質シリカ膜を形成する。焼成温度は、300℃〜600℃程度が好ましく、焼成時間は、数時間から数十時間が好ましい。このような焼成により、膜中の界面活性剤が除去されて、いわゆるメソポーラスシリカ膜で被覆された光半導体微粒子が得られる。
【0030】
<コ−ティング用組成物>
本発明の多孔質シリカ膜で被覆された光半導体微粒子は、各種のバインダー中に分散してなるコ−ティング用組成物として非常に有用である。そのバインダーの種類は特に制限されず、従来よりこの用途において知られる各種の有機重合体、有機/無機複合有機重合体および無機重合体を広く用いることが出来る。特に有機バインダーの具体例としては、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、繊維素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、アミノ硬化性樹脂、イソシアネート硬化性樹脂、酸エポキシ硬化性樹脂、加水分解性シラン硬化性樹脂、水酸基エポキシ基硬化性樹脂、ヒドラジン硬化性樹脂等が挙げられる。
【0031】
本発明のコ−ティング用組成物は、例えば、その組成物を基材上に塗布し、熱または活性エネルギー線により乾燥、硬化して被膜を形成する用途に使用される。この被膜は光半導体微粒子に起因する光触媒性能を十分発現するので、光触媒活性を利用する用途に非常に有用である。しかも、有機バインダーが劣化し難いので、被膜の耐候性にも優れている。
【実施例】
【0032】
<実施例1>
セチルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)0.211g、水7.7g、メタノール200ml、および、アンモニア水7.2gを、モル比1:1935:7505:180にて混合し、3℃にて1日撹拌した。次いで、酸化チタン微粒子(Degussa社製、商品名P−25)200mgを加え、さらにテトラエトキシシラン0.368ml(モルCTAC/Si比=0.4)加え、3℃でさらに3時間撹拌することによって、酸化チタン微粒子の表面に被膜を形成した。
【0033】
次いで、その混合溶液を遠心分離(3500rpmで3分)することにより、膜で被覆された酸化チタン微粒子を回収した。さらに、回収した微粒子にメタノールを適量加えて撹拌し、再度遠心分離により分離する操作を3回繰り返して、微粒子を洗浄した。
【0034】
この洗浄後の微粒子を60℃で1日乾燥させた。さらに、空気雰囲気下で1時間当たり150℃の昇温スピードで加温し、その後350℃で10時間焼成を行うことにより、本発明の多孔質シリカ膜で被覆された酸化チタン微粒子を得た。
【0035】
得られた微粒子を定容式ガス吸着にて測定し、BJH法で解析(前処理:真空中で120℃、3時間乾燥)したところ、約2nmがピークの細孔直径を有する多孔質体であることが分かった。また、この微粒子は比表面積が180m2/gであった。この値は酸化チタン(P−25)の比表面積が40m2/gであることから、酸化チタンと多孔質シリカが複合されていることが分かった。
【0036】
図1は、このような工程にて得た酸化チタン微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。ここに示されるように、個々の酸化チタン微粒子は約2.5nm厚の多孔質シリカ膜にて被覆されていた。以上のことから、本発明の多孔質シリカ膜で被覆された光半導体微粒子を製造できたことが確認された。
【0037】
<実施例2>
界面活性剤として、セチルトリメチルアンモニウムクロリドの代わりに、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドを等モル用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン微粒子を多孔質シリカ膜で被覆した。その結果、実施例1と同様な多孔質シリカ膜で被覆された光半導体微粒子が得られた。
【0038】
<実施例3>
各成分の配合量のうち、セチルトリメチルアンモニウムクロリドを0.422g、水を15.4g、テトラエトキシシランを0.736ml(モルCTAC/Si比=0.4)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン微粒子を多孔質シリカ膜で被覆した。その結果、実施例1と同様な多孔質シリカ膜(ただし膜厚約5nm)で被覆された光半導体微粒子が得られた。
【0039】
<実施例4>
界面活性剤として、セチルトリメチルアンモニウムクロリドの代わりに、ドデシルメチルアンモニウムクロリドを等モル用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン微粒子を多孔質シリカ膜で被覆した。その結果、実施例1と同様な多孔質シリカ膜で被覆された光半導体微粒子が得られた。
【0040】
<比較例>
混合溶液の撹拌を室温(28℃)にて行ったこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン微粒子を多孔質シリカ膜で被覆した。得られた粉体を透過型電子顕微鏡で観察したところ、多孔質シリカが均一に被覆されていなかった。
【0041】
<評価試験1>
実施例1で得た多孔質シリカ被覆酸化チタン微粒子の光触媒活性を調べる為に、以下の通り、ホルムアルデヒドの光触媒分解性を酸化チタン微粒子(P−25)と比較した。
【0042】
まず、多孔質シリカ被覆酸化チタン微粒子1.2g(酸化チタン約1.0g含有)を直径8cmガラスシャーレに広げ、5L容量のガスバック(テドラーバッグ)に入れて密閉した。その中へ1ppmホルムアルデヒドガスを導入し、室温、暗所において、ブラックライトで365nmでの露光強度が1mW/cm2となるよう照射し、1時間後のホルムアルデヒド濃度を測定した。また、被覆されていない酸化チタン微粒子(P−25)1.0gも同様にして試験を行い比較した。
【0043】
その結果、実施例1で得た多孔質シリカ被覆酸化チタン微粒子では、ホルムアルデヒド濃度が0.17ppm、被覆されていない酸化チタン微粒子では0.13ppmとなり、ほぼ同等の光触媒活性を示すことが確認できた。
【0044】
<評価試験2>
実施例1で得た多孔質シリカ被覆酸化チタン微粒子の耐候性を調べる為に、以下の通り、その耐候性について酸化チタン(P−25)と比較した。
【0045】
まず、多孔質シリカ被覆酸化チタン微粒子1.6gを、分散剤(商品名BYK−190)1%の水溶液8.1gに分散し、48%アクリルエマルション21.5gを加えてコーティング用組成物とした。このコーティング用組成物を、アルミ基板にアプリケータにて150μm厚塗布し、乾燥して被膜とした。また、被覆されていない酸化チタン微粒子(P−25)についても同様にしてコーティング用組成物を調製し、被膜を形成した。
【0046】
次に、これら被膜に対してサンシャインウエザーメーター(水スプレイ12分/UV照射48分)により、20時間耐候試験を行った。その結果、試験後の塗膜の光沢保持率について、実施例1で得た多孔質シリカ被覆酸化チタン微粒子の場合は92%であるのに対し、被覆されていない酸化チタン微粒子の場合は80%であった。この結果から、本発明により耐候性の著しい向上が図られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の多孔質シリカ被覆光半導体微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5nm〜10nmの細孔直径を有する多孔質シリカ膜で被覆された光触媒活性を有する光半導体微粒子。
【請求項2】
多孔質シリカ膜の厚さが1nm〜300nmである請求項1記載の光半導体微粒子。
【請求項3】
光半導体微粒子が酸化チタン微粒子である請求項1または2記載の光半導体微粒子。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項記載の多孔質シリカ膜で被覆された光半導体微粒子を製造する為の方法であって、
少なくとも界面活性剤と、水と、水溶性有機溶剤と、光半導体微粒子と、アルコキシシランとを含む溶液を、20℃以下で撹拌することにより該光半導体微粒子の表面に膜を形成し、該膜で被覆された光半導体微粒子を焼成することにより多孔質シリカ膜を形成することを特徴とする光半導体微粒子の製造方法。
【請求項5】
少なくとも界面活性剤水溶液と、水溶性有機溶剤とを20℃以下で混合して混合溶液を調製する工程と、
20℃以下で、光半導体微粒子およびアルコキシシランを前記混合溶液に添加し、撹拌することにより、該光半導体微粒子の表面に膜を形成する工程と、
該膜で被覆された光半導体微粒子を焼成することにより、多孔質シリカ膜を形成する工程と
を含む請求項4記載の光半導体微粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか一項記載の光半導体微粒子を有機バインダー中に分散してなるコ−ティング用組成物。
【請求項7】
請求項5記載のコ−ティング用組成物を基材上に塗布し、熱または活性エネルギー線により乾燥、硬化して得られる被膜。

【図1】
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【公開番号】特開2008−43848(P2008−43848A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219919(P2006−219919)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】