説明

光反応基を有する多機能性単量体、これを用いた液晶表示素子用配向膜および前記配向膜を含む液晶表示素子

本発明に係る多機能性単量体は、一般的な光反応基以外に、熱硬化性官能基を共に備えることを特徴とする。本発明に係る多機能性単量体は、光反応基が高分子主鎖内に束縛されていないため、短時間の偏光紫外線の照射によって十分な配向処理を行えるために製造時間を短縮し、生産単価を低くでき、液晶の配向規制力を大きくすることができて、二色比を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反応基を有する多機能性単量体に関し、より詳しくは、光反応基と熱硬化性官能基を有する多機能性単量体、これを用いた液晶表示素子用配向膜および前記配向膜を含む液晶表示素子に関するものである。
【0002】
本出願は2005年9月22日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2005−0088317号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
近来、テレビ、コンピュータと接続された画像装置などの各種ディスプレイにおいてはより軽量で薄いながらも、低消費電力であることが要求されている。このような状況下で前記要件を満足させるための平板ディスプレイを実現するものとして優れた液晶表示素子の出現が要望されている。
【0004】
液晶表示素子には液晶を一定方向に配向させるために表面に傾斜が形成され、プレチルト角が設定された配向膜が設置されている。
【0005】
配向膜を製造する方法としては、基板上に形成されたポリイミド樹脂などの高分子樹脂膜を布等で一定方向にこするラビング処理を行う方法、または二酸化ケイ素を傾斜蒸着して形成する方法が知られている。しかし、前記ラビング処理を用いて配向膜を製造する場合、ラビング時の接触によって発生し得る不純物による汚染と静電気発生にともなう製品の収率減少、コントラストの低下などの問題点がある。また、前記傾斜蒸着を用いる方法の場合には、製造費用が高くなり大面積で形成することが困難であり、大型液晶表示素子には不適当であるという問題点があった。
【0006】
最近このような問題を解決しようと、転写法を用いて配向膜を製造する方法が脚光を浴びるようになった。この転写法による配向膜の製造方法は基板上に形成された樹脂膜に、転写しなければならない凹凸形状が表面に形成されている転写型を加熱しながら、圧着して、樹脂膜の表面に凹凸形状を転写形成するものである。一般的にこの転写型によって製造された配向膜の表面形状は基板上に複数のブロック状で、ほぼ平行に繰り返されている形状になる。しかし、転写法によって、凹凸形状だけを形成した配向膜を用いた液晶表示素子においては液晶の界面の規制力が弱くて外力や熱の印加によって、十分なプレチルト角(一般的に1°以上)を維持できず、いわゆるドメイン(domain)が発生する恐れがあった。
【0007】
日本国公開公報平成11−181127号には、アクリレート、メタクリレートなどの主鎖に桂皮酸基などの感光性基を含む測鎖を有する高分子型配向膜製造方法と、これによって製造された配向膜が開示されている。しかし、高分子の場合は移動度が落ちるため、長時間光に露出させても所望する程の十分な配向特性を得ることが難しいという短所があった。これは前記高分子内に存在する感光基が高分子の主鎖に束縛されているため照射される偏光に対して迅速に反応しにくいためである。これによって、ネットワークポリマーになるのに長い時間が必要となるために工程効率が落ち、充分でない時間で配向処理を終えてしまえば、製作した液晶表示素子の液晶配向が不充分であり、二色比が小さくてコントラストが劣化するという問題点があった。
【特許文献1】特開平11−181127号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明が達成しようとする第1の技術的課題は、光照射時の光反応基が迅速に配向できるように設計された、配向膜を製造することのできる多機能性単量体を提供することにある。
【0009】
本発明が達成しようとする第2の技術的課題は、前記多機能性単量体を用いた液晶表示素子用の配向膜およびその製造方法を提供することにある。
本発明が達成しようとする第3の技術的課題は、前記配向膜を含む液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記第1の技術的課題をなすために、下記化学式1によって示される多機能性単量体を提供する。
【化1】

前記化学式1において、Aは下記化学式2の官能基であり、
【化2】

(前記化学式2において、Rは水素、炭素数1〜4のアルキル、またはシクロアルキル基である)
Zは下記化学式3の官能基であり、
【化3】

(前記化学式3において、LおよびL‘は独立して窒素または酸素原子である)
とYとは互いに同一であるか相異し、独立して直接結合またはC1−9のアルキレンであり、
Xは2〜4価の脂肪族、芳香族基またはヘテロ芳香族基であるか、またはこれらを含むケトン、エーテルまたはエステル基であり、
aは2〜4の整数であり、
*は連結された部位を意味する。
【0011】
本発明は、前記第2の技術的課題をなすために、前記単量体を用いて形成された液晶表示素子用配向膜およびその製造方法を提供する。
本発明は、前記第3の技術的課題をなすために、前記配向膜を含む液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る多機能性単量体は、光反応基が高分子主鎖内に束縛されていないために、短時間の偏光紫外線の照射によって十分な配向処理を行えるために製造時間を短縮させ、生産単価を低くでき、液晶の配向規制力を大きくすることができ、二色比を高めることができる。また、熱硬化性官能基を共に備えるため、配向処理と共に追加的な光硬化によって物性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0014】
本発明に係る多機能性単量体は、従来の光反応性高分子とは異なり、単量体状態で基板に適用するため光反応基の反応速度が非常に速い。また、一般的な単量体の場合は粘度が低くて無機質基板に吸着がうまくできない問題点があるということを考慮して、本発明に係る多機能性単量体は前記光反応基以外に熱硬化性官能基を備えることによって、熱硬化によって、物性が改善されるということを特徴とする。
【0015】
本発明は、下記化学式1によって示される多機能性単量体を提供する。
【化4】

前記化学式1において、A、Z、Y、Y、Xおよびaは前記にて定義した通りである。
前記単量体は既存の光反応性高分子とは異なり、前記光反応基が高分子主鎖内に束縛されていないために、短時間の偏光紫外線の照射によって十分な配向処理を行えるため、配向膜の製造時間を短縮し、生産単価を低くでき、液晶の配向規制力を大きくすることができて二色比を高めることができる。
【0016】
前記単量体は光照射によって、ラジカルを生成する光開始剤と共に用いる場合、光重合が行われるようになるが、偏光紫外線による前記単量体の配向処理と共に光硬化反応を行う場合、偏光によって配向膜に生成された異方性の熱的安定性を改善することができる。前記光硬化は偏光紫外線を照射すると同時に行われることもでき、追加的な光照射によって行われることもできる。
【0017】
前記化学式1において、前記YおよびYは具体的に下記化学式4の官能基であることが好ましい。
【化5】

前記化学式4において、pは0〜9の整数である。
*は連結された部位を意味し、以下でも同一である。
前記化学式1において、Xは下記化学式5〜化学式17の官能基であることが好ましいが、これらの例にのみ限定されるものではない。
【化6】

前記化学式5において、nは1〜9の整数である。
【化7】

前記化学式6において、nは1〜9の整数である。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

本発明の一実施例によれば、前記化学式1の化合物は下記化学式18〜24によって示される化合物でありうる。
【化19】

【化20】

前記化学式19において、nは0〜9の整数である。
【化21】

前記化学式20において、m、nは各々独立して0〜9の整数である。
【化22】

前記化学式21において、m、nは各々独立して0〜9の整数である。
【化23】

前記化学式22において、m、nは各々独立して0〜9の整数である。
【化24】

前記化学式23において、m、nは各々独立して0〜9の整数である。
【化25】

【0018】
前記単量体は、一般的に次のような方法によって製造される。前記化学式3の基、YとXを含む化合物を合成して精製した後、YとAを順次加えて反応させる。以後、得られた化合物のa当量またはそれ以上の量と中心分子Xの塩化物または酸化物をルイス塩基を触媒として用いて反応させる。しかし、このような製造方法は一般的な例にすぎず、製造に用いられる開始物質、反応の順序、触媒の種類、詳細な反応条件は化合物の構造により変更され得る。
【0019】
本発明は、また、前記多機能性単量体を用いて形成された液晶表示素子用配向膜を提供する。本発明に係る液晶表示素子用配向膜は、前記多機能性単量体を溶解させた溶液を基板上に塗布するステップ、前記塗布された溶液中の溶媒を除去して膜を形成するステップ、所定方向に偏光された紫外線を照射して、膜の表面に異方性を付与するステップ、および前記膜を熱処理して高分子膜を形成するステップを含む方法によって製造することができる。
【0020】
前記溶液の製造時に用いられる溶媒は沸点が摂氏80度以上であって、前記多機能性単量体など溶媒に溶解する物質に対する溶解性に優れた溶媒を主溶媒として用いることが好ましい。前記主溶媒の例としては、N−メチルピロリドン(N−methyl pyrrolidone)やブチルセロソルブ(Butyl Cellosolve)のようなものがある。また、溶液の粘度とコーティング特性を調節するために前記主溶媒と溶解特性が異なる溶媒を少量、例えば、溶媒内の20wt%未満で添加することができる。前記溶媒としては、ブチルカルビトール(Butyl Carbitol)を例に挙げることができる。溶媒は前記条件を満足する限り、製造された合成物質によって変更されることができ、本発明の範囲が前記例に限定されるものではない。その他、添加剤として界面活性剤、接着助剤、熱硬化開始剤などが共に用いられ得る。ただし、前記添加剤の全体量は溶液内の5wt%を超過しないことが好ましい。
【0021】
前記多機能性単量体溶液を基板上に塗布する方法は特に限定されず、スピンコーティング法、ロールコーティング法、スリットコーティング法などが適当である。前記多機能性単量体溶液を基板上に塗布した後には、必要に応じてベーキング処理をすることにより溶媒を除去することもできる。
【0022】
次に、前記多機能性単量体が塗布された基板を偏光紫外線に露光させ、シンナモイル基またはシンナミド基を二量化した後、加熱することによって熱硬化性官能基を重合して、高分子膜を形成するようになる。この時、前記高分子化合物膜の厚さは、100nm〜2,000nm程度が好ましい。前記高分子化合物膜の厚さが100nmに達しなければ、可視光線の各波長に薄膜回折現象が起きて一定波長に対して透過率が減少するようになり、前記高分子化合物膜の厚さが2,000nmを超過すれば、化合物自体の光吸収によって、透過率が減少する問題点がある。
【0023】
前記膜の熱処理時温度は摂氏100度以上〜350度以下の範囲が適切であり、時間は15分〜2時間の間が適切である。熱処理温度と時間とは各々摂氏350度と2時間を越さないことが好ましく、これを超過する場合、高温によって基板の酸化または物質の分解などが起きるという問題が生じ得る。
【0024】
前記配向膜の製造時、前記多機能性単量体溶液に光開始剤を添加して前記偏光紫外線照射と同時にまたは前記偏光紫外線照射後に追加の光照射を遂行することができる。前述したように、このような光照射によって偏光によって生成された異方性の熱的安定性を改善することができる。
【0025】
本発明において、紫外線を生成する光源としては、高圧水銀ランプ、低温水銀ランプ、タングステン白熱、レーザなどが用いられることができ、紫外線領域の強さが5mW/cm以上であることが好ましい。また、紫外線の照射量は、十分な二量化特性を得るために5mJ/cm以上であることが好ましい。紫外線の照射時間は、必要な紫外線の照射量と光源の強さにより決定される。また、偏光を形成する方法としては、石英ガラス板を積み立てる方法、有機または無機薄膜がコーティングされた石英板を用いる方法、または石英板上に直線のパターンを形成する方法などがあり、偏光度は(垂直偏光と水平偏光とのうち大きいものを小さいもので割った値)1.2以上であることが好ましい。
【0026】
本発明は、また、前記配向膜を含む液晶表示素子を提供する。本発明に係る液晶表示素子の一例を図1に示す。図に示したこのカラー液晶表示素子10は、概略的に対向配置された一対の基板12,14、その間に封入された液晶16、片方基板12に形成された液晶駆動素子18、その液晶駆動素子18に接続された透明電極(画素電極、20a,20b,20c)、その透明電極20に対向して、他方基板14に形成された対向電極22、液晶16を支持する配向膜24、一対の各基板12,14上に形成された偏光フィルタ(下部偏光フィルタ26、上部偏光フィルタ28)、基板14に形成されたカラーフィルタ30r,30g,30bを備えて構成されている。
【0027】
基板12,14としては、一般的な液晶表示素子に用いられるものを用いることができ、ガラス基板、セラミック材など各種のものを用いることができる。また、その形状も製品化された液晶表示素子に対応するものが用いられ、平面長方形状のものなど、任意の形状のものが用いられる。
【0028】
液晶16は、電圧の印加によって分子の配向状態を変えるもので、例えば、図1において一例として示したTN方式の液晶においては、電圧が印加されない時には90°歪んでいた分子列が電圧を印加することによって直立し、歪みが解消される。また、図1に示されていないが、両配向膜24,24の間には微粒子などによって形成されたスペイサが介在し、そのスペイサによって液晶が封入される間隔が所定の長さで維持される。
【0029】
液晶駆動素子18には、薄膜トランジスタ(TFT)などが用いられ、駆動信号によって液晶に印加される電圧を制御するものである。
【0030】
透明電極20は、他方の基板14に形成される対向電極22と対をなし、液晶駆動素子18からの電圧を液晶16に印加するものであり、一般的にITO膜などが用いられる。前記液晶駆動素子18および透明電極20a,20b,20cは、各画素ごとに設けられるものであるが、対向電極22は一般的に各画素に共通の共通電極として構成される。
【0031】
偏光フィルタ26,28は、直線偏光を放射する機能を有するフィルムであり、図に示した液晶表示素子10においては、各基板12,14に形成される下部フィルタ26と上部フィルタ28はその偏光方向が相対的に90°異なるように設けられる。
【0032】
カラーフィルタ30は、カラー液晶表示素子に用いられるものであり、通常各画素ごとに赤色、緑色、青色の3色のカラーフィルタが用いられて1組をなし、カラー液晶表示素子においてはこれら3色の組合せによって多種の色彩を表現するようなっている。
【0033】
[実施例]
以下、具体的な実施例および比較例をもって本発明の構成および効果をより詳しく説明するが、これらの実施例は単に本発明をより明確に理解させるためのものにすぎず本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0034】
<実施例1>化学式18の多機能性単量体の製造。
【0035】
(1)化合物(a)ビス(4−ホルミルフェニル)テレフタレート[(Bis(4−formylphenyl)terephthalate)]の製造
ヒドロキシベンズアルデヒド(hydroxybenzaldehyde)6.6gとテトラエチルアミン(TEA)10.3mlとを入れたメチルクロライド(MC)100mlにテレフタロリルクロライド(terephthalolyl chloride)5gを氷浴でゆっくり滴加した後、常温で5時間攪拌させた。反応終結後、反応溶液中の生成された固体を濾過しMCで何度も洗浄した。この後、10%HCl水溶液とMeOHを用いて、追加洗浄して真空オーブンで乾燥してビス(4−ホルミルフェニル)テレフタレート8.2gを得た。(収率:89%)
【0036】
(2)化合物(b)[1,4−(テレフタロリルジオキシ)ジ桂皮酸(1,4−(terephthaloyldioxy)dicinnamic acid)]の製造
ビス(4−ホルミルフェニル)テレフタレート5.8gとマロン酸4.84gをピリジン50mlに溶かしてピペリジンは0.1mlを入れた後10時間の間還流させる。反応終結後、10%HCl水溶液を添加してできた沈殿物を濾過し水とアセトンを用いて、反復洗浄した後に得られた固体を真空オーブンで乾燥させ、1,4−(テレフタロリルジオキシ)ジ桂皮酸3gを得た。(収率:42%)
【0037】
(3)化学式18の化合物の製造
前記1,4−(テレフタロリルジオキシ)ジ桂皮酸2.7gをSOCl10mlに入れてジメチルホルムアミド(DMF)を約100ppm添加した後、2時間の間還流させた。減圧下にSOClを除去した後、残った固体を2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.5gとN、N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)100ppmと共にピリジン30mlに常温で24時間攪拌させた。蒸溜水を入れて、反応を終結させ、得られた固体は濾過後、コラムクロマトグラフィ(MC)を用いて純粋な化学式18の化合物(CLM_001)1.52gを得た。(収率:38%)
【0038】
以上の過程を下記反応式1に示した。
【化26】

前記のように製造した化学式18の化合物が生成されたことを確認するために行ったNMR分析結果を図2に示した。
【0039】
<実施例2>化学式19の多機能性単量体の製造。
(1)化合物(c)[ビス(4−ホルミルフェニル)セバコイレート(Bis(4−formylphenyl)sebacoylate)]の製造
ヒドロキシベンズアルデヒド10.25gとTEA12.8mlを入れたMC200mlにセバコイルクロライド(sebacoyl chloride)11.19gを氷浴でゆっくり滴加した後に常温で5時間攪拌させた。反応終結後、10%HCl水溶液を添加してMC層を洗浄して脱イオン水を用いてもう一度有機層を洗浄した。有機層はMgSOを用いて乾燥させ、減圧濃縮して粗製のビス(4−ホルミルフェニル)セバコイレート15.7gを得た。(収率:100%)
【0040】
(2)化合物(d)[1,4−(セバコイルジオキシ)ジ桂皮酸(1,4−(Sebacoyldioxy)dicinnamic acid)]の製造
ビス(4−ホルミルフェニル)セバコイレート3gとマロン酸2.3gをピリジン30mlに溶かし、ピペリジン0.1mlを入れた後に10時間の間還流させた。反応終結後、10%HCl水溶液を添加してできた沈殿物を濾過し、脱イオン水とアセトンを用いて何度も洗浄した後に得られた固体を真空オーブンで乾燥させ、1,4−(セバコイルジオキシ)ジ桂皮酸2.35gを得た。(収率:65%)
【0041】
(3)化学式19の化合物の製造
1,4−(セバコイルジオキシ)ジ桂皮酸2.6gをSOCl25mlに入れてDMFを約100ppm添加した後、2時間の間還流させた。減圧してSOClを除去した後、残った固体を2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.84mlとDMAP約100ppmと共にピリジン30mlに常温で24時間攪拌させた。蒸溜水を入れて反応を終結させ、得られた固体を濾過した後にコラムクロマトグラフィ(MC)を用いて純粋な化学式19の化合物(CLM_002)1.9gを得た。(収率:50%)
【0042】
以上の過程を下記反応式2に示した。
【化27】

前記のように製造した化学式19の化合物が生成されたことを確認するために行ったNMR分析結果を図3に示した。
【0043】
<実施例3>化学式20の多機能性単量体の製造
(1)化合物(e)[4−((6−ヒドロキシヘキシル)オキシ)桂皮酸(4−((6−hydroxyhexyl)oxy)cinnamic acid)]の製造
NaOH 4.4gを蒸溜水20mlに溶かした溶液を4−ヒドロキシ桂皮酸(4−hydroxy cinnamic acid)7.5gが溶けているメタノール溶液に入れてKI 0.02gを添加した後に6−ブロモ−1−ヘキサノール10.0gをゆっくり滴加して65℃で24時間反応させた。蒸溜水100mlを入れて、反応を終結させた後に常温で冷却し、10%HCl水溶液を添加してできた沈殿物を濾過して、4−((6−ヒドロキシヘキシル)オキシ)桂皮酸9.5gを得た。(収率:60%)
【0044】
(2)化合物(f)[4−((6−(メタクロイルオキシ)ヘキシル)オキシ)桂皮酸(4−((6−(Methacroyloxy)hexyl)oxy)cinnamic acid)]の製造
4−((6−ヒドロキシヘキシル)オキシ)桂皮酸4.6gとピリジン4.4mlを入れたDMF30mlにメタクリロリルクロライド(methacryloryl chloride)5.9mlをゆっくり滴加した後にジメチルアミノピリジンを少量添加し、常温で24時間攪拌させた。反応終結後、10%HCl水溶液を添加してできた沈殿物を濾過しメタノールに再結晶させ、4−((6−(メタクロイルオキシ)ヘキシル)オキシ)桂皮酸3gを得た。(収率:50%)
【0045】
(3)化学式20の化合物の製造
4,4‘−ビフェノール(4,4’−biphenol)0.35gと4−((6−(メタクロイルオキシ)ヘキシル)オキシ)桂皮酸1.5gを溶かしたDMF25mlに1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(1−(3−dimethylaminopropyl)−3−ethylcarbodiimide)1.15gと1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1−hydroxybenzotrizole)0.76gを入れてトリエチルアミン1.15mlを添加して常温で24時間反応させた。蒸溜水を入れて反応を終結させた後、30分の間攪拌させて沈殿物を濾過してメタノールで何度も洗浄した。この濾過物をメタノールで再決定して化学式20の化合物(CLM_003)1.2gを得た。(収率:60%)
【0046】
以上の過程を下記反応式3に示した。
【化28】

前記のように製造した化学式20の化合物が生成されたことを確認するために行ったNMR分析結果を図4に示した。
【0047】
<実施例4>化学式21の多機能性単量体の製造。
(1)化合物(g)[4,4‘−(ジ(6−ヒドロキシヘキシル)オキシ)ビフェニル(4,4’−(di(6−hydroxyhexyl)oxy)biphenyl)]の製造
4,4‘−ビフェノール(4,4’−biphenol)3gとKCO18gが溶けているメチルエチルケトン(MEK)溶液にKI0.02gを入れて6−ブロモ−1−ヘキサノール(6−bromo−1−hexanol)6.9gをゆっくり滴加した後に80℃で24時間反応させた。蒸溜水100mlを入れて、反応を終結させた後に常温で冷却し、10%HCl水溶液を添加してできた沈殿物を濾過して、4,4‘−(ジ(6−ヒドロキシヘキシル)オキシ)ビフェニル)3.8gを得た。(収率:50%)
【0048】
(2)化学式21の化合物の製造
4,4‘−(ジ(6−ヒドロキシヘキシル)オキシ))ビフェニル)0.73gと実施例3の(f)化合物4−((6−(メタクロイルオキシ)ヘキシル)オキシ)桂皮酸1.5gを溶かしたDMF25mlに1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(1−(3−dimethylaminopropyl)−3−ethylcarbodiimide)1.15gと1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1−hydroxybenzotrizole)0.76gを入れてトリエチルアミン1.15mlを添加して常温で24時間反応させた。蒸溜水を入れて反応を終結させた後に30分の間攪拌させて沈殿物を濾過してメタノールで何度も洗浄した。この濾過物をメタノールで再決定して化学式21の化合物(CLM_004)1.0gを得た。(収率:40%)
【0049】
以上の過程を下記反応式4に示した。
【化29】

前記のように製造した化学式21の化合物が生成されたことを確認するために行ったNMR分析結果を図5に示した。
【0050】
<実施例5>化学式22の多機能性単量体の製造。
4,4‘−ジヒドロキシジフェニルエーテル(4,4’−Dihydroxy diphenyl ether)0.30gと実施例3の(f)化合物4−((6−(メタクロイルオキシ)ヘキシル)オキシ)桂皮酸1.2gを溶かしたDMF25mlに1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド0.92gと1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.60gを入れてトリエチルアミン0.91mlを添加して常温で24時間反応させた。蒸溜水を入れて反応を終結させた後に30分の間攪拌させて沈殿物を濾過してメタノールで何度も洗浄した。この濾過物をメタノールで再決定して化学式22の化合物(CLM_005)1.1gを得た。(収率:70%)
【0051】
以上の過程を下記反応式5に示した。
【化30】

前記のように製造した化学式22の化合物が生成されたことを確認するために行ったNMR分析結果を図6に示した。
【0052】
<実施例6>化学式23の多機能性単量体の製造。
4,4‘−(ジ(6−ヒドロキシヘキシル)オキシ)ジフェニルエーテル0.60gと実施例3の(f)化合物4−((6−(メタクロイルオキシ)ヘキシル)オキシ)桂皮酸1.2gを溶かしたDMF25mlに1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド0.92gと1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.61gを入れてトリエチルアミン0.91mlを添加して常温で24時間反応させた。蒸溜水を入れて反応を終結させた後に30分の間攪拌させて沈殿物を濾過してメタノールで何度も洗浄した。この濾過物をメタノールで再決定して化学式23の化合物(CLM_006)1.2gを得た。(収率:62%)
【0053】
以上の過程を下記反応式6に示した。
【化31】

前記のように製造した化学式23の化合物が生成されたことを確認するために行ったNMR分析結果を図7に示した。
【0054】
<実施例7>化学式24の多機能性単量体の製造。
1、1、3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン(1、1、3−tris(2−methyl−4−hydroxy−5−tert−butylphenyl)butane)0.46gと実施例3の(f)化合物4−((6−(メタクロイルオキシ)ヘキシル)オキシ)桂皮酸1gを溶かしたDMF20mlに1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド0.77gと1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.51gを入れてトリエチルアミン0.8mlを添加して常温で24時間反応させた。蒸溜水を入れて反応を終結させた後に30分の間攪拌して沈殿物を濾過してメタノールで何度も洗浄した。この濾過物をMC/n−ヘキサン条件で再決定して化学式24の化合物(CLM_007)0.8gを得た。(収率:70%)
【0055】
以上の過程を下記反応式7に示した。
【化32】

前記のように製造した化学式24の化合物が生成されたことを確認するために行ったNMR分析結果を図8に示した。
【0056】
<実施例8〜実施例11>配向膜の製造および特性
実施例2、4、5、7(各々CLM_002,004,005,007で表示)に提示された物質の光学特性を測定するためにUV−VIS.吸収度を測定した。このためにサンプルをシクルロペンタノンに溶解させた溶液を水晶基板上にスピンコーティングして、薄膜を作り150℃のホットプレート上で2分間溶媒を乾燥させて製造した。この時に形成された薄膜の厚さは110nmであった。その結果を図9に示す。図9から分かるように、前記実施例の単量体は約260nm〜330nm波長の光に反応を示すことが分かった。
【0057】
また、実施例1〜実施例7で製造した化合物の熱的特性を知るためにDSCデータを用いて、吸熱、発熱温度を観察した。すべての物質のDSC曲線において溶融温度を分かることができ、1次加熱時に発熱が観察された。したがって、分子構造によって差はあるが、1次加熱時に約140℃以上250℃以下で発熱ピークが観察されることから見てしてアクリレートの架橋が起きるものと推測される。このようなDSC試験結果を下記表1に整理した。
【表1】

前記のように製造した膜を用いて、偏光照射によって液晶を配向し、これを用いて平行液晶セルを製造した。
【0058】
液晶の配向程度を知るために偏光の透過度を用いたオーダーパラメータであるSを下記の数学式1を用いて測定した。
【数1】

ここで、AとAは、各々偏光と配向方向とが一致する時と垂直にある時の透過度を示す。
【0059】
実施例1〜実施例7の各化合物に365nmの偏光を一定量照射させ、液晶セルを製造した時のオーダーパラメータを図10に示した。高分子との反応性比較のためにポリ(ビニルシンナメート)を用いた。図10から分かるように、高分子の場合は10000mJを照射しても相変らずオーダーパラメータ値が増加する傾向を示す反面、本発明の多機能性単量体の場合は100mJですでに飽和されることが分かる。
【0060】
追加的な光反応によって、膜の熱的安定性の変化を観察するために、各物質に365nmの偏光100mJと1000mJを照射して作った液晶セルを摂氏150℃で30分と1時間を放置した後にオーダーパラメータを測定した。
【0061】
また、光開始剤による追加的な光反応による効果を知るために各物質に質量対比1%の光開始剤(Irgacure 369、吸収波長約305nm)を入れた後、365nmの偏光を100mJ露光後、305nmの偏光されない光で100mJと1000mJの追加露光を実施した。これを用いて製作した液晶セルを摂氏150度で30分と1時間を放置した後にオーダーパラメータを測定した。前記で述べたすべての場合に対するオーダーパラメータの減少程度は下記表2に提示されている。
【表2】

前記表2に見られるように、偏光照射時間が長いほど、追加露光時間が長いほど、熱による異方性変化が少ないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上にて詳しく見たように、本発明の好ましい実施例について詳細に記述したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、添付する請求の範囲に定義した本発明の精神および範囲を脱せず本発明をさまざまに変形して実施することができる。したがって、本発明の今後の実施例の変更は本発明の技術を脱しないものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る液晶表示素子の一例を示す図である。
【図2】実施例1で製造した化合物のNMR分析結果を示す図である。
【図3】実施例2で製造した化合物のNMR分析結果を示す図である。
【図4】実施例3で製造した化合物のNMR分析結果を示す図である。
【図5】実施例4で製造した化合物のNMR分析結果を示す図である。
【図6】実施例5で製造した化合物のNMR分析結果を示す図である。
【図7】実施例6で製造した化合物のNMR分析結果を示す図である。
【図8】実施例7で製造した化合物のNMR分析結果を示す図である。
【図9】実施例2、4、5および7で製造された化合物のUV−VIS吸収度を測定した結果を示すグラフである。
【図10】実施例1〜7で製造された化合物に365nmの偏光を照射した時のオーダーパラメータ値を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 カラー液晶表示素子
12 14 基板
16 液晶
18 液晶駆動素子
20 20a 20b 20c 透明電極
24 配向膜
26 28 偏光フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1によって示される多機能性単量体:
【化1】

前記化学式1において、Aは下記化学式2の官能基であり、
【化2】

(前記化学式2において、Rは水素、炭素数1〜4のアルキル、またはシクロアルキル基である)
Zは下記化学式3の官能基であり、
【化3】

(前記化学式3において、LおよびL‘は、独立して窒素または酸素原子である)
とYとは互いに同一であるか相異し、独立して直接結合またはC1−9のアルキレンであり、
Xは2〜4価の脂肪族、芳香族基またはヘテロ芳香族基であるか、またはこれらを含むケトン、エーテルまたはエステル基であり、
aは2〜4の整数である。
【請求項2】
前記化学式1のうちYおよびYは、独立して下記化学式4によって示される官能基から選択される、請求項1に記載の多機能性単量体:
【化4】

前記化学式4において、pは0〜9の整数である。
【請求項3】
前記化学式1のうちXは下記化学式5〜17によって示される官能基から選択される、請求項1に記載の多機能性単量体:
【化5】

前記化学式5において、nは1〜6の整数である。
【化6】

前記化学式6において、nは1〜6の整数である。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【請求項4】
前記化学式1の化合物が下記化学式18の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の多機能性単量体:
【化18】

【請求項5】
前記化学式1の化合物が下記化学式19の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の多機能性単量体:
【化19】

前記化学式19において、nは0〜9の整数である。
【請求項6】
前記化学式1の化合物が下記化学式20の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の多機能性単量体:
【化20】

前記化学式20において、m、nは各々独立して0〜9の整数である。
【請求項7】
前記化学式1の化合物が下記化学式21の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の多機能性単量体:
【化21】

前記化学式21において、m、nは各々独立して0〜9の整数である。
【請求項8】
前記化学式1の化合物が化学式22の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の多機能性単量体。
【化22】

前記化学式22において、m、nは各々独立して0〜9の整数である。
【請求項9】
前記化学式1の化合物が化学式23の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の多機能性単量体。
【化23】

前記化学式23において、m、nは各々独立して0〜9の整数である。
【請求項10】
前記化学式1の化合物が下記化学式24の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の多機能性単量体:
【化24】

【請求項11】
請求項1の多機能性単量体を用いて形成された液晶表示素子用配向膜。
【請求項12】
請求項1の多機能性単量体を溶解させた溶液を基板上に塗布するステップ、前記塗布された溶液中の溶媒を除去して膜を形成するステップ、偏光紫外線を照射して、膜の表面に異方性を付与するステップ、および前記膜を熱処理して、高分子膜を形成するステップを含む方法によって製造された、請求項11に記載の液晶表示素子用配向膜。
【請求項13】
前記多機能性単量体を溶解させた溶液に光開始剤を添加して、前記偏光紫外線の照射と同時にまたはその後で光硬化を行うステップをさらに含む方法によって製造された、請求項12に記載の液晶表示素子用配向膜。
【請求項14】
厚さが100nm〜2,000nmである、請求項11に記載の液晶表示素子用配向膜。
【請求項15】
請求項1の多機能性単量体を溶解させた溶液を基板上に塗布するステップ、前記塗布された溶液中の溶媒を除去して膜を形成するステップ、偏光紫外線を照射して、膜の表面に異方性を付与するステップ、および前記膜を熱処理して、高分子膜を形成するステップを含む方法によって製造された液晶表示素子用配向膜の製造方法。
【請求項16】
前記多機能性単量体を溶解させた溶液に光開始剤を添加して、前記偏光紫外線の照射と同時にまたはその後で光硬化を行うステップをさらに含む、請求項15に記載の液晶表示素子用配向膜の製造方法。
【請求項17】
請求項11の液晶表示素子用配向膜を含む液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−527136(P2008−527136A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551209(P2007−551209)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003784
【国際公開番号】WO2007/035063
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】