説明

光受信器

【課題】受光素子(フォトダイオード)が出力する電気信号の振幅を増幅する機能(AGC)を有する光受信器において、AGC増幅率の調整時間を短くする。
【解決手段】可変ゲイン増幅器33の増幅率制御(AGC増幅率制御)を常時行うのではなく、送信側からの通信データに付加されたプリアンブルを受信しているときのみ可変ゲイン増幅器33の増幅率制御を行い、プリアンブルを受信していないときには可変ゲイン増幅器33の増幅率を固定する。このような処理により、光変調OFFの期間(信号レベルがゼロの期間)においてAGC増幅率が上がることがなく、前回のプリアンブル期間のAGC増幅率を次回のプリアンブル期間まで保持・継続することができる。これによって次回のプリアンブル受信時におけるAGC増幅率の調整時間(セットアップ時間)を短くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光等を利用した光通信システムにおいて、送信側から送信される光信号を受信する光受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(発光ダイオード)などの光源が出力する可視光を利用してデータ通信を行う可視光通信システムが開発されている。
【0003】
可視光通信システムの一例として、送信データに応じて照明機器等の光源を点滅制御することにより、照明光(可視光)に光変調信号を重畳して出力する光送信器と、この光送信器から送信される可視光信号(光変調信号)を受信し、その受信した光変調信号を復調して通信データを取得する光受信器とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような可視光通信システム等において、光変調信号を受信する光受信器としては、例えば、光変調信号を電気信号に変換する受光素子(例えば、フォトダイオード)、この受光素子の出力信号を増幅する初段増幅器、この初段増幅器にて増幅された電気信号から光変調信号(通信データ)に対応する周波数成分を抽出するバンドパスフィルタ、及び、バンドパスフィルタによって抽出された電気信号のゲインを調整して信号の振幅を一定に揃えるAGC(Auto Gain Control;自動利得制御)回路などを備えたものがある(例えば、特許文献2または特許文献3参照)。なお、AGC回路は、例えば、可変ゲイン増幅器と、そのゲイン(増幅率)を制御する制御部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−252465号公報
【特許文献2】特開2001−168661号公報
【特許文献3】特開平08−018510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、同期用のプリアンブルを使用する光通信システムにおいては、例えば図5に示すように、プリアンブルと通信データとがセットされた状態で転送され、その通信データが転送される光変調ONの期間と、通信データ転送間の光変調OFFの期間とが設定されている。ここで、通常のAGC回路では、AGC増幅率制御が常時行われているため、上記光変調OFFの期間(信号レベルがない期間)においてAGC回路増幅率が上がってしまう。そのため、次に、光変調信号が光変調ONとなるとき(プリアンブル時)にAGC回路の増幅率(以下、AGC増幅率ともいう)がオーバーする。こうした状況になると、AGC増幅率が安定するまでに多くの時間が必要となるため、プリアンブルの目的である同期が取れるまでに時間がかかってしまう。また、通常のAGC回路では、光送信器と光受信器との間の通信距離が変化した場合などにおいて、光受信器側で受信した光変調信号の信号レベルが変化した場合には、適切なAGC増幅率を設定できない場合がある。
【0007】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、受光素子が出力する電気信号の振幅を増幅する機能(AGC)を有する光受信器において、AGC増幅率の調整時間を短くすることが可能な構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、同期用のプリアンブルを使用する光通信システムにおいて、送信側から送信される光信号を受信する光受信器を対象としており、このような光受信器において、前記送信側からの光信号を受信して電気信号に変換する受光素子と、前記受光素子が出力する電気信号の振幅を増幅する可変ゲイン増幅器と、前記可変ゲイン増幅器の増幅率を制御する制御手段とを備えている。そして、その制御手段は、前記送信側からの通信データに付加されたプリアンブルを受信しているときに前記可変ゲイン増幅器の増幅率制御を行い、前記プリアンブルを受信していないときには前記可変ゲイン増幅器の増幅率を固定することを技術的特徴としている。
【0009】
本発明によれば、可変ゲイン増幅器の増幅率制御(AGC増幅率制御)を常時行うのではなく、送信側からのプリアンブルを受信しているとき(プリアンブル期間)にAGC増幅率制御を行い、プリアンブルを受信していないとき(光変調OFFの期間)にはAGC増幅率制御は行わないようにしている(増幅率固定)ので、光変調OFFの期間(信号レベルがゼロの期間)においてAGC増幅率が上がることがなく、前回のプリアンブル期間のAGC増幅率を次回のプリアンブル期間まで保持・継続することができる。これによって、次回のプリアンブル受信時におけるAGC増幅率の調整時間(セットアップ時間)を短くすることができる。
【0010】
本発明において、プリアンブルを受信していないとき(光変調OFF時)に、受光素子が出力する電気信号に含まれる直流成分を検出し、その直流成分に基づいて、上記プリアンブル受信時における可変ゲイン増幅器の増幅率(AGC増幅率)の初期値を設定するようにしてもよい。このような構成を採用すれば、光通信システムを構成する光送信器と光受信器との間の通信距離の変化等により、受光素子での受信信号(光変調信号)の信号レベルが変化した場合であっても、AGC増幅率を常に適切に設定することができる。
【0011】
具体的には、例えば、受光素子が出力する電気信号に含まれる直流成分(受光素子で受光した光信号の光量に相当)と、適切なAGC増幅率との関係を予め計測してテーブル化しておき、プリアンブルを受信していないとき(光変調OFF時)に、受光素子が出力する電気信号に含まれる直流成分を検出し、その直流成分に基づいて上記テーブルを参照してAGC増幅率を求める。そして、その直流成分を検出した後(光変調OFF期間の後)の、次のプリアンブル時において、このプリアンブル時の初期の増幅率(初期値)を上記AGC増幅率(上記直流成分から求めた増幅率)としてAGC増幅率の調整を行う。このような処理により、通信距離の変化等による受信信号の信号レベル変化に対応することができ、適切なAGC増幅率の調整を短時間で終了することができる。
【0012】
なお、上記受光素子が出力する電気信号に含まれる直流成分を検出する直流成分検出手段の一例として、抵抗器とコンデンサとからなり、初段増幅器が出力する電気信号に含まれる直流成分のみを抽出するローパスフィルタを挙げることができる。このようなローパスフィルタを用いると、簡単な回路構成で直流成分を検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受光素子が出力する電気信号の振幅を増幅する機能を有する光受信器において、通信データに付加されたプリアンブルを受信しているときにのみ可変ゲイン増幅器の増幅率制御を行うようにしているので、AGC増幅率の調整時間を短くすることできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用する光受信器の一例を示すブロック図である。
【図2】ローパスフィルタの一例を示す図である。
【図3】光通信システムを構成する光送信器の一例を示すブロック図である。
【図4】フォトダイオードの出力信号を増幅する初段増幅器の出力信号(直流成分を含む信号)の波形図である。
【図5】光通信システムにおけるデータ転送の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
この実施形態では、可視光通信にてデータ通信を行う光送信器と光受信器とを備えた光通信システムにおいて、上記光受信器に本発明を適用した場合の例について説明する。
【0017】
−光送信器−
まず、光通信システムを構成する光送信器100の一例について、図3を参照して説明する。この例の光送信器100は、変調回路101、LED駆動回路102、及び、照明機器の光源であるLED(発光ダイオード)103などを備えている。
【0018】
変調回路101は、通信データ(照明光に重畳するデータ)を変調してLED駆動回路102に出力する。変調回路101の信号変調方式は、光通信などで一般に用いられている変調方式であればよく、例えば、ASK方式(Amplitude Shift Keying;振幅偏移変調)方式やPPM(Pulse Position Modulation;パルス位置変調)方式を挙げることができる。また、QPSK(quadrature phase shift keying)方式などの直交変復調方式などを用いてもよい。
【0019】
LED駆動回路102は、変調回路101にて変調された変調データに基づいてLED103を高速点滅する。これによって照明光に重畳して光変調信号(通信データ)が出力される。その出力された光変調信号は光受信器1にて受信される。
【0020】
ここで、この例の光送信器100においては、プリアンブルと通信データとをセットした状態で送信(転送)する。その通信データ送信の際には、プリアンブルは通信データの先頭に付加される(図5参照)。
【0021】
−光受信器−
次に、光受信器1について図1を参照して説明する。
【0022】
光受信器1は、上記光送信器100が出力する光変調信号(通信データ)を受光して、その光変調信号を電気信号(電流信号)に変換するフォトダイオード(受光素子)2、このフォトダイオード2で光電変換された電気信号を増幅する増幅回路3、及び、増幅回路3を通過した電気信号(光変調信号)を復調する復調回路4などを備えている。
【0023】
増幅回路3は、初段増幅器(フォトダイオード受光回路)31、バンドパスフィルタ32、可変ゲイン増幅器33、ローパスフィルタ34、ADコンバータ35、処理制御部36、及び、バイアス回路37などを備えている。
【0024】
初段増幅器31は、オペアンプ31aと帰還抵抗器31bとからなる増幅器(I−V変換器)であって、フォトダイオード2で光電変換された電気信号を増幅する。初段増幅器31で増幅された電気信号はバンドパスフィルタ32に入力される。
【0025】
なお、初段増幅器(I−V変換回路)31は、オペアンプ31aを用いた反転増幅回路であるので、オペアンプ31aの出力電圧Vは[V=−Ipd×R Ipd:フォトダイオード2の出力電流 R:帰還抵抗器31bの抵抗値]となり、後述する直流成分(図4参照)は負の値となる。
【0026】
バンドパスフィルタ32は、例えば、減衰特性が3段バターワース特性(振幅平坦特性)のフィルタであって、初段増幅器31が出力する電気信号に含まれるノイズ成分を除去して光変調信号(通信データ)のみを抽出する。このバンドパスフィルタ32にて抽出された光変調信号は可変ゲイン増幅器33によって振幅が調整される(詳細は後述する)。可変ゲイン増幅器33はADコンバータ35にてA/D変換された後に、処理制御部36に入力される。
【0027】
処理制御部36は、バンドパスフィルタ32にて抽出され、可変ゲイン増幅器33及びADコンバータ35を通過した光変調信号(通信データ)に所定の信号処理を行って復調回路4に出力する。具体的には、光変調信号をADコンバータ35により、光変調信号の2倍より高い周波数でサンプリングし、光変調信号をデジタル信号に変換する(サンプリング定理)。次に、その変換後のデータを移動平均フィルタに通してノイズ除去し復調回路4に出力する。復調回路4は処理制御部36からの光変調信号を復調して通信データを取得する。
【0028】
次に、本実施形態の光受信器1の特徴部分である「直流成分除去処理」及び「AGC増幅率制御」について説明する。
【0029】
−直流成分除去処理−
まず、図1に示す増幅回路3において、「直流成分除去」を行わない場合の初段増幅器31の出力信号は図4に示すような波形となる。この図4から判るように、初段増幅器31の出力信号には、光変調信号(通信データ)と、照明光等の2つの信号成分が含まれている。このため、初段増幅器31の増幅率を大きくすることができない。つまり、初段増幅器31の増幅率を大きくすると、照明光等の信号成分(ほぼ直流成分)も大きく増幅され初段増幅器31の出力が飽和してしまう。
てしまう。
【0030】
このような点を考慮して、本実施形態では、初段増幅器31の出力信号に含まれる直流成分を抽出し、この直流成分を打ち消すように初段増幅器31の入力側にバイアス電流を帰還することで、初段増幅器31に入力される電気信号の直流成分を除去する。その具体的な構成について以下に説明する。
【0031】
本実施形態では、図1に示すように、初段増幅器31の出力信号に含まれる光変調信号(通信データ)を除去して直流成分(照明光等の信号成分)を抽出するローパスフィルタ34と、DAコンバータ37a及び抵抗器37bによって構成されるバイアス回路37とを設け、このバイアス回路37の出力端子(抵抗器37b)を初段増幅器31の入力側(フォトダイオード2と初段増幅器31との間)に接続している。
【0032】
上記ローパスフィルタ34にて抽出された直流成分はADコンバータ35にてA/D変換された後に処理制御部36に入力される。処理制御部36は、ローパスフィルタ34で抽出された直流成分(A/D変換後のデジタル信号)を一時記憶するとともに、その直流成分を打ち消す(直流成分がゼロになる)ようなバイアス信号(デジタル信号)をバイアス回路37に出力する。バイアス回路37では、処理制御部36からのバイアス信号(デジタル信号)をDAコンバータ37aでアナログ信号(バイアス電流)に変換し、抵抗器37bを通じて初段増幅器31の上流側に帰還する。
【0033】
このようにして、初段増幅器31の入力側に、直流成分を打ち消すバイアス電流を流すことによって、初段増幅器31に入力される電気信号の直流成分(照明光等の信号成分)を除去することができ、初段増幅器31の増幅率を大きくすることが可能になる。これによって、例えば、微弱な光変調信号を受信することが可能になり、光変調信号の受信のダイナミックレンジを広げることができる。
【0034】
次に、本実施形態に用いるローパスフィルタ34の一例について図2を参照して説明する。図2に示すローパスフィルタ34は、1個の抵抗器34aと、1個のコンデンサ34bとからなる簡単な回路構成のフィルタである。
【0035】
本実施形態に用いるローパスフィルタ34では、上記したように初段増幅器3が出力する電気信号の直流成分のみを抽出することを目的としているので、カットオフ周波数fcを小さい値に設定している。例えば、この例では、図2に示す抵抗器34aの抵抗値Rを10kΩ、コンデンサ34bの容量Cを1μFとして、カットオフ周波数fcを約16Hz[fc=1/(2π・R・C)≒16Hz]に設定している。
【0036】
そして、このようなローパスフィルタ34を用いると、簡単な回路構成で、初段増幅器31の出力信号に含まれる光変調信号(通信データ)を除去して直流成分(蛍光灯光等の外乱光信号成分)のみ抽出(検出)することが可能になる。
【0037】
−AGC増幅率制御−
まず、本実施形態を適用する光通信システムにおいては、図5に示すように、プリアンブルと通信データとがセットされた状態で転送され、その通信データが転送される光変調ONの期間と、通信データ転送間の光変調OFFの期間とが設定されている。
【0038】
ここで、通常のAGC回路では、バンドパスフィルタ32を通過した信号を常に一定振幅まで増幅している。このような常時AGC増幅率制御では、上記通信データ転送間の光変調OFF時においてもAGC増幅率の調整が行われるため、その次のプリアンブル受信時に可変ゲイン増幅器33の振幅が振り切ってしまい、ADコンバータ35のAD値がオーバーフローした状態となってしまう。こうした状況になると、プリアンブル受信時に、可変ゲイン増幅器33の出力値(ADコンバータ35のAD値)を規定値内に収める(AGC増幅率が安定する)のに多くの時間が必要になる。このため、プリアンブル期間を長くする必要があって、プリアンブルの目的である同期が取れるまでに時間がかかってしまう。
【0039】
また、通常のAGC回路では、光送信器100と光受信器1との間の通信距離が変化した場合などにおいて、光受信器1側で受信した光変調信号の信号レベルが変化した場合には、適切なAGC増幅率を設定できない場合がある。
【0040】
このような点を考慮して、本実施形態では、可変ゲイン増幅器33の増幅率の調整制御(AGC増幅率制御ともいう)を、常時行うのではなく、プリアンブル受信時のみ行うようにすることで、AGC増幅率の調整時間を短くすることを技術的特徴としている。その具体的なAGC増幅率制御(処理制御部36が実行する制御)の一例について説明する。
【0041】
まず、処理制御部36は、フォトダイオード2で受信され、バンドパスフィルタ32を通過した信号(A/D変換後)に基づいて、プリアンブルを受信している期間(以下、プリアンブル期間ともいう)であるか否かを判定する。プリアンブル期間である場合はAGC増幅率制御を行う。具体的には、処理制御部36は、プリアンブル期間中に、ADコンバータ35の出力値(AD値)が予め設定した規定範囲内(例えば、8ビットのADコンバータ35を使用した場合、AD値が235〜245の範囲内)に収まるように、可変ゲイン増幅器33の増幅率を調整する。このようなAGC増幅率制御により、バンドパスフィルタ32を通過した信号の振幅を一定に揃えることができる。
【0042】
そして、そのAGC増幅率制御が完了した時点(ADコンバータ35のAD値が規定範囲内に入った時点)で、可変ゲイン増幅器33の増幅率を固定し、このAGC増幅率を次回のプリアンブル期間まで保持・継続する。このような処理により、図5に示す光変調OFFの期間(信号レベルがゼロの期間)ではAGC増幅率制御が実行されず、AGC増幅率が上がることがないので、次回のプリアンブル期間でのAGC増幅率の調整時間を短くすることができる。
【0043】
ここで、上述の如く、光送信器100と光受信器1との間の通信距離の変化等により、フォトダイオード2が受信する光変調信号の信号レベルが変化(低下)する場合がある。これを解消するために、本実施形態では、上記したローパスフィルタ34が抽出する直流成分(フォトダイオード2で受光した光信号の光量に相当)を用いて、プリアンブル時の初期のAGC増幅率を設定することによりAGC増幅率を適正に設定する。その具体的な例について説明する。
【0044】
まず、本実施形態では、フォトダイオード2が出力する電気信号に含まれる直流成分(ローパスフィルタ34にて抽出する直流成分)と、適切なAGC増幅率との関係を、予め計測・計算等によって取得してテーブル化しておき、そのテーブルを処理制御部36に記憶しておく。また、本実施形態の処理制御部36は、上述したように、ローパスフィルタ34によって抽出され、ADコンバータ35を通過した直流成分を認識・記憶している。
【0045】
そして、処理制御部36は、図5に示す光変調OFF期間において、上記ローパスフィルタ34によって抽出される直流成分(A/D変換後)を用いて上記テーブルを参照してAGC増幅率を求め、この光変調OFF時に求めたAGC増幅率を、次回のプリアンブル時の初期のAGC増幅率とする。このような処理により、通信距離の変化等による受信信号(光変調信号)の信号レベル変化に対応することができ、適切なAGC増幅率の調整を短時間で終了することができる。
【0046】
なお、通信距離の変化等がない場合(前回の光変調OFF時の直流成分と、今回の光変調OFF時の直流成分とに差がない場合)には、前回のプリアンブル時で設定したAGC増幅率を、そのまま今回のプリアンブル時の初期のAGC増幅率とする。
【0047】
−他の実施形態−
以上の実施形態では、初段増幅器31の出力信号に含まれる直流成分を検出する手段として、ローパスフィルタ34を用いているが、本発明はこれに限られることなく、初段増幅器31の出力信号に含まれる直流成分を検出できるものであれば、他の回路構成の検出手段を用いてもよい。
【0048】
以上の実施形態では、変調回路101及びLED103等を有する光送信器100と、フォトダイオード2、増幅回路3及び復調回路4等を有する光受信器1とを備えた片方向通信の光通信システムを例にとって説明したが、本発明はこれに限られることなく、送信側及び受信側の両方に、LED駆動回路系(変調回路等)及び受光回路系(復調回路等)を備えさせた双方向通信の光通信システムに用いられる増幅回路にも適用可能である。
【0049】
以上の実施形態では、LEDが出力する可視光を利用してデータ通信を行う可視光通信システムを例にとって説明したが、本発明にこれに限られることなく、例えば、蛍光灯などの放電灯、有機EL、無機ELなどの光源が出力する可視光を利用してデータ通信を行う可視光通信システムに用いられる増幅回路にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、可視光通信などにおいて光変調信号を受信する光受信器に利用可能であり、さらに詳しくは、受光素子が出力する電気信号の振幅を増幅する機能を有する光受信器において、AGC増幅率の調整時間を短くする技術に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 光受信器
2 フォトダイオード(受光素子)
3 増幅回路
31 初段増幅器
31a オペアンプ
31b 帰還抵抗器
32 バンドパスフィルタ
33 可変ゲイン増幅器
34 ローパスフィルタ(直流成分検出手段)
35 ADコンバータ
36 処理制御部(制御手段)
37 バイアス回路
37a DAコンバータ
37b 抵抗器
4 復調回路
100 光送信器
101 変調回路
102 LED駆動回路
103 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期用のプリアンブルを使用する光通信システムにおいて、送信側から送信される光信号を受信する光受信器であって、
前記送信側からの光信号を受信して電気信号に変換する受光素子と、前記受光素子が出力する電気信号の振幅を増幅する可変ゲイン増幅器と、前記可変ゲイン増幅器の増幅率を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記送信側からの通信データに付加されたプリアンブルを受信しているときに前記可変ゲイン増幅器の増幅率制御を行い、前記プリアンブルを受信していないときには前記可変ゲイン増幅器の増幅率を固定することを特徴とする光受信器。
【請求項2】
請求項1記載の光受信器において、
前記プリアンブルを受信していないときに、前記受光素子が出力する電気信号に含まれる直流成分を直流成分検出手段にて検出し、その直流成分に基づいて、前記プリアンブル受信時における前記可変ゲイン増幅器の増幅率の初期値を設定することを特徴とする光受信器。
【請求項3】
請求項2記載の光受信器において、
前記直流成分と前記可変ゲイン増幅器の増幅率との関係が予め設定されたテーブルを用いて、プリアンブルを受信していないときの直流成分に基づいて前記プリアンブル受信時における前記可変ゲイン増幅器の増幅率の初期値を設定することを特徴とする光受信器。
【請求項4】
請求項2または3記載の光受信器において、
前記直流成分検出手段は、抵抗器とコンデンサとからなり、前記受光素子が出力する電気信号に含まれる直流成分のみを抽出するローパスフィルタであることを特徴とする光受信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−5327(P2013−5327A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136304(P2011−136304)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000195029)星和電機株式会社 (143)
【Fターム(参考)】