説明

光受信装置

【課題】ONUに誤発光が生じた場合にも、低コストでプリアンプの保護を行う。
【解決手段】各ONU2からの光信号を受信し、電気信号に変換する受光素子12と、受光素子12により変換された電気信号のうち、連続発光成分を遮断するフィルタ13と、フィルタ13により連続発光成分が遮断された電気信号を増幅するプリアンプ18と、プリアンプ18により増幅された電気信号を処理する受信回路15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信した光信号を電気信号に変換する処理を行う光受信装置において、過剰な強度の光信号を受信した場合に自機の故障を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PON(Passive Optical Network System)システムのような光通信システムでは、1台のOLT(Optical Line Terminal)が複数のONU(Optical Network Unit)と通信を行っている。このPONシステムでは、ある特定のONUで何らかの要因により通信障害が生じた場合(以下誤発光という)であっても、OLTは誤発光ONUとの通信を断続して行う。
【0003】
ここで、PONシステムでは、通常、各ONUからの通信が重ならないように時分割方式を用いて制御している。しかしながら、ある特定のONUで誤発光が生じた場合には、OLTでは、通信障害が発生している間、断続的に正常ONUと誤発光ONUからそれぞれ発信され重畳された信号を受信することになる。
この場合、誤発光ONUのみを取り替えるなどの処置によりシステムを復旧させることになる。
【0004】
それに対して、OLTにおいて、誤発光ONUにより光入力が過大となった場合に、スイッチを用いて誤発光を切り分け可能としたものが存在する(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に開示される方式では、ONU内の光送受信器で、正常な場合には、バースト信号を直接光信号に変換・出力し、ある特定のONUに誤発光が生じた場合には、正常ONUにてバースト信号で変調したサブキャリアを光信号に変換・出力している。一方、OLT内の光受信器では、入力された光信号を受光素子により電気信号に変換した後、プリアンプにより増幅し乗算器に入力する。乗算器にはスイッチを介して直流電圧あるいはサブキャリア発信器の出力が印加されている。そして、全ONUが正常な場合には、スイッチを直流電圧側にし、後段のローパスフィルタのカットオフ周波数をバースト信号のみ得られる周波数に設定することで、バースト信号のみを取り出している。一方、誤発光ONUが存在する場合には、スイッチをサブキャリア発信器側に切替え、ローパスフィルタのカットオフ周波数をバースト信号で変調された信号のみ得られる周波数に設定することで、バースト信号で変調された信号のみを取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−77902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される方式では、ある特定のONUで誤発光が生じた場合、正常ONUにてバースト信号でサブキャリアを変調した光信号を出力し、かつOLTでサブキャリアを変調した光信号のみを取り出すことができるようにする必要がある。そのため、全ONUおよびOLTにサブキャリア発信器を備える必要があり、コストがかさむという課題があった。
また、OLTにおいて、ローパスフィルタよりも前段のプリアンプには、誤発光ONUからの信号が入力されることになる。そのため、正常ONUからの信号と誤発光ONUからの信号による強度の和がプリアンプの最大定格電流を超えた場合には、プリアンプが破壊される恐れがあるという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ONUに誤発光が生じた場合にも、低コストでプリアンプの保護を行うことができる光受信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る光受信装置は、各ONUからの光信号を受信し、電気信号に変換する受光素子と、受光素子により変換された電気信号のうち、連続発光成分を遮断するフィルタと、フィルタにより連続発光成分が遮断された電気信号を増幅するプリアンプと、プリアンプにより増幅された電気信号を処理する受信回路とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、上記のように構成したので、低コストで確実にバースト信号と誤発光した連続信号を回路上で識別することができ、プリアンプの保護を行うことができる。また、全ONUおよびOLTにサブキャリア発信器やスイッチを設置する必要がなくなるため、ONUおよびOLTのメンテナンスコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るGEPONシステムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る光受信部の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るGEPONシステムの各部での信号波形を示すタイミングチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2に係る光受信部の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るGEPONシステムの各部での信号波形を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るGEPON(Gigabit Ethernet−PON;Ethernetは登録商標/以下、記載を省略する)システムの構成を示す図である。
GEPONシステムでは、図1に示すように、1台のOLT1が複数のONU2a〜2n(以下、単にONU2と示す)との間で通信を行っている。このOLT1と各ONU2は、光ファイバ3a〜3n(以下、単に光ファイバ3と示す)、光カプラ4および光ファイバ5を介して接続されている。
【0012】
ONU2は、PON制御部6および光送受信器7から構成されている。
PON制御部6は、OLT1に出力するバースト電気信号(データ)を生成して光送受信器7に出力し、OLT1から光送受信器7を介して受信した電気信号を処理するものである。
光送受信器7は、PON制御部6からのバースト電気信号を光信号に変換してOLT1に出力し、OLT1からの光信号を電気信号に変換してPON制御部6に出力するものである。
【0013】
OLT1は、PON制御部8および光送受信器9から構成されている。
PON制御部8は、各ONU2に出力する電気信号を生成して光送受信器9に出力し、各ONU2から光送受信器9を介して受信した電気信号を処理するものである。
光送受信器9は、PON制御部8からの電気信号を光信号に変換して各ONU2に出力する光送信部(TX)10と、ONU2からの光信号を電気信号に変換してPON制御部8に出力する光受信部(RX、光受信装置)11とを有している。
【0014】
次に、OLT1の光受信部11の構成について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1に係る光受信部11の構成を示す図である。
光受信部11は、図2に示すように、受光素子12、フィルタ13、増幅器14および受信回路15により構成される。
【0015】
受光素子12は、各ONU2からの光信号30を受信し、この光信号30を電気信号(電流)に変換するものである。この受光素子12により変換された電気信号はフィルタ13に出力される。
【0016】
フィルタ13は、受光素子12から出力された電気信号のうち、誤発光ONUからの連続発光成分を遮断するものであり、抵抗16およびコンデンサ17を有している。なお、抵抗16の一端はGNDに接続されている。コンデンサ17は、受光素子12から出力された電気信号のうち、連続発光成分(バースト信号以下の周波数成分)により充電を行い、この連続発光成分を除去するものである。このフィルタ13により連続発光成分が遮断された電気信号は増幅器14に出力される。
【0017】
増幅器14は、フィルタ13から出力された電気信号を増幅するものであり、プリアンプ18および帰還抵抗19を有している。プリアンプ18は、フィルタ13から出力された電気信号を増幅するものである。帰還抵抗19は、プリアンプ18から出力された電気信号をプリアンプ18の入力側にフィードバックさせるものである。この増幅器14より増幅された電気信号は受信回路15に出力される。
受信回路15は、増幅器14から出力された電気信号を処理するものである。この受信回路15により処理された電気信号はPON制御部8に出力される。
【0018】
次に、上記のように構成されたONU2における正常状態および異常状態での信号波形について説明する。
図3はこの発明の実施の形態1に係るGEPONシステムの各部での信号波形を示すタイミングチャートである。ここで、図3(a)〜(c)は正常状態のONU(正常ONU2a)での信号波形を示し、図3(d)〜(f)は異常状態のONU(誤発光ONU2b)での信号波形を示している。
各ONU2a,2bでは、図3(a),(d)に示すように、OLT1に送信するバースト電気信号(データ)を生成している。なお、OLT1は、各ONU2からのデータ間にガードタイム31(図3(i)参照)を設定しており、各ONU2からの光信号が重複しないように制御している。
【0019】
正常ONU2aの光送受信器7では、図3(a)に示すバースト電気信号に対して、図3(b)に示すような光を発光する。これにより、バースト電気信号は、図3(c)に示すような光信号に変換されOLT1に出力される。
一方、誤発光ONU2bの光送受信器7では、図3(d)に示すバースト電気信号に対して、図3(e)に示すような連続した光を発光してしまう(誤発光)。そのため、バースト電気信号は、図3(f)に示すような連続発光成分を含む光信号に変換されOLT1に出力される。
【0020】
その後、正常ONU2aからの光信号および誤発光ONU2bからの光信号は、それぞれ光ファイバ3を介して光カプラ4により合波される。そのため、OLT1の光受信部11に受信される光信号は、図3(g)に示すような連続発光成分を含む光信号となる。
【0021】
次に、上記のように構成されたOLT1の光受信部11において、図3(g)に示すような連続発光成分を含む光信号を受信した際の動作について説明する。
まず、光受信部11の受光素子12は、光カプラ4を介して連続発光成分を含む光信号を受信し、電気信号に変換する。この受光素子12により変換された電気信号はフィルタ13に出力される。
【0022】
次いで、フィルタ13は、受光素子12から受信した電気信号のうち、連続発光成分を遮断する。この際、コンデンサ17は、この電気信号に含まれる連続発光成分(バースト信号以下の周波数成分)により充電を行うことで、連続発光成分を除去する。また、コンデンサ17は、図3(h)に示す放電時間32の間に、充電した電荷を抵抗16を介してGNDに放電する。なお、この現象によりOLT1および正常ONU2aが影響を受けないようにするためには放電時間32をガードタイム31よりも短くすればよく、この条件を満足するフィルタ13を使用する。
このフィルタ13により、増幅器14(プリアンプ18)および受信回路15には、図3(i)に示すように、誤発光ONU2bからの連続発光成分が遮断された信号(バースト信号)のみが入力される。
【0023】
以上のように、この実施の形態1によれば、受光素子12とプリアンプ18との間に、誤発光ONU2bからの連続発光成分を遮断する容量成分(コンデンサ17)を持たせたフィルタ13を備えたので、低コストでかつ確実にバースト信号と連続信号を回路上で識別することができ、プリアンプ18の保護を行うことができる。さらに、全ONU2およびOLT1に対するメンテナンスコストを削減することができる。
【0024】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2に係る光受信部11の構成を示す図である。
この図4に示す実施の形態2に係る光受信部11は、図2に示す実施の形態1に係る光受信部11のフィルタ13をフィルタ20に変更したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0025】
フィルタ20は、受光素子12から出力された電気信号のうち、誤発光ONUからの連続発光成分を遮断するものであり、抵抗21、コンデンサ22、切替指示部23およびスイッチ24を有している。なお、抵抗21およびスイッチ24の一端はGNDに接続されている。コンデンサ22は、受光素子12から出力された電気信号のうち、連続発光成分(バースト信号以下の周波数成分)により充電を行い、この連続発光成分を除去するものである。切替指示部23は、受光素子12でONU2からのバースト信号受信が終了した際に、トリガ信号をスイッチ24に出力するものである。スイッチ24は、切替指示部23からのトリガ信号に応じて、GNDとの接続を行い、コンデンサ22に放電を行わせるものである。このフィルタ20により連続発光成分が遮断された電気信号は増幅器14に出力される。
【0026】
次に、上記のように構成されたOLT1の光受信部11において、図5(g)に示すような連続発光成分を含む光信号を受信した際の動作について説明する。
図5はこの発明の実施の形態2に係るGEPONシステムの各部での信号波形を示すタイミングチャートである。ここで、図5(a)〜(g)に示す信号波形は、図3(a)〜(g)に示す信号波形と同一である。
【0027】
まず、光受信部11の受光素子12は、光カプラ4を介して連続発光成分を含む光信号を受信し、電気信号に変換する。この受光素子12により変換された電気信号はフィルタ20に出力される。
【0028】
次いで、フィルタ20は、受光素子12から受信した電気信号のうち、連続発光成分を遮断する。この際、コンデンサ22は、この電気信号に含まれる連続発光成分(バースト信号以下の周波数成分)により充電を行うことで、連続発光成分を除去する。なお、この現象によりOLT1および正常ONU2aが影響を受けないようにするため、図5(i)に示すトリガ信号に応じてスイッチ24を接続させて、コンデンサ22の放電を促す。この際、切替指示部23は、スイッチ24を動作させるためのトリガ信号を光受信部11の受信動作に対応させるため、受光素子12でONU2からのバースト光信号の受信が終了した際に、トリガ信号を印加するように設定されている。また、スイッチ24は、受光素子12で許容される最大受信光を受信した場合での信号の立ち上がり時間と立ち下がり時間の和よりも早い応答速度を満足するスイッチを使用する。これにより、ガードタイム31に関係なく放電を行うことができる。
このフィルタ20により、増幅器14(プリアンプ18)および受信回路15には、図5(j)に示すように、誤発光ONU2bからの連続発光成分が遮断された信号(バースト信号)のみが入力される。
【0029】
以上のように、この実施の形態2によれば、受信素子12とプリアンプ18との間に、誤発光ONU2bからの連続発光成分を遮断するフィルタ20を備え、フィルタ20内にコンデンサ22の放電用のスイッチ24を設けるように構成したので、コンデンサ22の放電現象による影響を受けることなく誤発光ONU2bによるプリアンプ18の保護を行うことが可能となり、実施の形態1と比較して品質を向上させることができる。
【0030】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 OLT、2,2a〜2n ONU、3,3a〜3n,5 光ファイバ、4 光カプラ、6 PON制御部、7 光送受信器、8 PON制御部、9 光送受信器、10 光送信部、11 光受信部(光受信装置)、12 受光素子、13,20 フィルタ、14 増幅器、15 受信回路、16,21 抵抗、17,22 コンデンサ、18 プリアンプ、19 帰還抵抗、23 切替指示部、24 スイッチ、30 光信号、31 ガードタイム、32 放電時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のONUからの光信号を受信する光受信装置において、
各ONUからの光信号を受信し、電気信号に変換する受光素子と、
前記受光素子により変換された電気信号のうち、連続発光成分を遮断するフィルタと、
前記フィルタにより連続発光成分が遮断された電気信号を増幅するプリアンプと、
前記プリアンプにより増幅された電気信号を処理する受信回路と
を備えることを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
前記フィルタは、連続発光成分により充電を行うコンデンサを有する
ことを特徴とする請求項1記載の光受信装置。
【請求項3】
前記コンデンサは、各ONUからのバースト信号間のガードタイム内に放電を行う
ことを特徴とする請求項2記載の光受信装置。
【請求項4】
前記フィルタは、前記受光素子でバースト信号受信が終了した際に、トリガ信号を出力する受信検出部と、前記受信検出部からのトリガ信号に応じて、前記コンデンサに放電を行わせるスイッチとをさらに有する
ことを特徴とする請求項2記載の光受信装置。
【請求項5】
前記スイッチは、前記受光素子で許容される最大受信光を受信した場合での信号の立ち上がり時間と立ち上がり時間の和よりも早い応答速度で動作する
ことを特徴とする請求項4記載の光受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−165100(P2012−165100A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22592(P2011−22592)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】