説明

光合成増進剤及び光合成増進方法

【課題】光合成増進作用が高い光合成増進剤及び光合成増進方法を提供すること。
【解決手段】亜燐酸マグネシウムを含むことを特徴とする、光合成増進作用が従来の光合成増進剤よりも高い光合成増進剤。本発明の光合成増進剤としては、例えば、亜燐酸マグネシウムの水溶液が挙げられる。この場合、亜燐酸マグネシウムの濃度は、例えば、1〜10g/Lとすることができる。上述した光合成増進剤を植物の葉面に散布することを特徴とする光合成増進方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の光合成作用を増進する光合成増進剤及び光合成増進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光合成増進剤として、第1燐酸マグネシウムの4水物結晶を含むものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−80488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の光合成増進剤は、光合成増進作用が必ずしも十分ではなかった。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、光合成増進作用が高い光合成増進剤及び光合成増進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光合成増進剤は、亜燐酸マグネシウムを含むことを特徴とする。本発明の光合成増進剤は、有効成分として、亜燐酸マグネシウムを含むことにより、植物の光合成を増進する作用が高い。光合成が増進されることにより、例えば、植物の生育状態、開花数、結実数、果実の着色、果実の糖度、収量等が向上する。
【0006】
本発明の光合成増進剤としては、例えば、亜燐酸マグネシウムの水溶液が挙げられる。この場合、亜燐酸マグネシウムの濃度は、例えば、1〜10g/Lとすることができる。濃度をこの範囲内とすることにより、光合成増進作用が一層顕著になる。
【0007】
また、本発明の光合成増進剤は、例えば、上述した濃度範囲よりも、亜燐酸マグネシウムの濃度が高い水溶液であってもよい。この場合、例えば、使用時に水で希釈して、亜燐酸マグネシウムの濃度を、上述した濃度範囲内にすることができる。また、本発明の光合成増進剤の剤型は、液状の他にも、粉末、又は固形物であってもよい。この場合、使用前に水等の溶媒に溶かし、液状にしてから、植物に散布することができる。
【0008】
本発明の光合成増進方法は、上述した光合成増進剤を植物の葉面に散布することを特徴とする。本発明の光合成増進方法により、植物の光合成を増進することができる。
本発明の光合成増進方法では、例えば、液状の光合成増進剤を、噴霧器等を用いて、植物の葉面に散布することができる。本発明の光合成増進方法で使用する光合成増進剤における有効成分(亜燐酸マグネシウム)の濃度等は、上述した濃度範囲が好ましいが、本発明の光合成増進方法を実施する時期、期間、被使用植物の種類等に応じて適宜設定できる。
【0009】
前記植物としては、各種農作物が挙げられ、例えば、各種の果樹、各種の野菜、各種の穀物等が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0011】
1.光合成増進剤の製造
亜燐酸マグネシウムを水に溶解し、亜燐酸マグネシウム水溶液を調製した。この亜燐酸マグネシウム水溶液における亜燐酸マグネシウムの濃度は表1に示す3種であり、濃度が10g/Lであるものを光合成増進剤1Aとする。また、濃度が2g/Lであるものを光合成増進剤1Bとする。また、濃度が1g/Lであるものを光合成増進剤1Cとする。
【0012】
なお、使用した亜燐酸マグネシウムは、晃栄化学工業株式会社製のトップスコア・マグ(商品名)である。
【0013】
【表1】

【0014】
また、比較例として、第1燐酸マグネシウムの4水物結晶(Mg(H2PO42・4H2O)を水に溶解し、燐酸マグネシウム水溶液を調製した。燐酸マグネシウム水溶液における燐酸マグネシウムの濃度は表2に示す3種であり、濃度が10g/Lであるものを光合成増進剤R1とする。また、濃度が2g/Lであるものを光合成増進剤R2とする。また、濃度が1g/Lであるものを光合成増進剤R3とする。
【0015】
【表2】

【0016】
2.光合成増進方法の実施(その1)
光合成増進剤1A〜1C、及び光合成増進剤R1〜R3を、それぞれ、噴霧器を用いて、生育初期、開花前後および収穫前の3期にわたってトマトやメロン等の果菜類の葉面に散布した。光合成増進剤1A〜1Cのいずれかを散布した野菜類は、光合成増進剤R1〜R3を散布した野菜類に比べて、いずれの種類の果菜類においても、生育状態、開花数、結実数、果実の着色、果実の糖度および収量において有意に優れていた。また、光合成増進剤1A〜1Cのいずれかを散布した野菜類は、光合成増進剤を散布しなかった同種の果菜類と比較したところ、いずれの種類の果菜類においても、生育状態、開花数、結実数、果実の着色、果実の糖度および収量において有意に優れていた。
【0017】
3.光合成増進方法の実施(その2)
光合成増進剤1A〜1C、及び光合成増進剤R1〜R3を、それぞれ、噴霧器を用いて、りんご、ぶどう等の各種果樹類の葉面に周年散布した。その後、光合成増進剤を塗布したリンゴについて、着色を評価した。その評価方法は次のとおりである。
【0018】
リンゴの色を表すカラーチャート(色見本)を用意した。このカラーチャートには、複数の異なる色が載せられており、各色には、それぞれ異なる指数が付されている。指数は0.1刻みであり、1〜10の範囲をカバーする。指数が大きいほど、その指数が付された色は、着色がより良いリンゴの色に対応する。すなわち、指数の大きさは、リンゴの着色の良さを表す。光合成増進剤を塗布したリンゴについて、カラーチャートの中から、そのリンゴの色に最も類似する色を目視で見つけ出し、その色の指数を読み出す。読み出した指数を、そのリンゴの色を表す指数とする。また、光合成増進剤を塗布していない(無処理)のリンゴについても、同様に、カラーチャートの中から、最も類似する色を目視で見つけ出し、その色の指数を読み出す。
【0019】
その結果を表3に示す。
【0020】
【表3】

【0021】
表3に示すように、光合成増進剤1A〜1Cのいずれかを散布したリンゴは、光合成増進剤R1〜R3を散布したリンゴ、及び無処理のリンゴに比べて、指数の値が大きく、着色が顕著に優れていた。
【0022】
また、光合成増進剤を塗布したリンゴ、及び無処理のリンゴについて、糖度計を用いて糖度を測定した。その結果を表4に示す。
【0023】
【表4】

【0024】
表4に示すように、光合成増進剤1A〜1Cのいずれかを散布したリンゴは、光合成増進剤R1〜R3を散布したリンゴ、及び無処理のリンゴに比べて、糖度が顕著に高かった。
【0025】
また、いずれの種類の果樹類においても、光合成増進剤1A〜1Cのいずれかを散布したものは、光合成増進剤R1〜R3を散布した果樹類、及び無処理の果樹類に比べて、生育状態、開花数、結実数、果実の着色、果実の糖度および収量において有意に優れていた。
【0026】
また、光合成増進剤1A〜1Cは、エネルギー代謝の活性化による成長促進、細胞分裂の増進による収穫増加、花芽分化の促進による次年度の収穫増加、澱粉のブドウ糖への変換作用の増進、窒素過多による「つるぼけ」等の改善などの効果も発揮する。
【0027】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜燐酸マグネシウムを含むことを特徴とする光合成増進剤。
【請求項2】
請求項1記載の光合成増進剤を植物の葉面に散布することを特徴とする光合成増進方法。

【公開番号】特開2012−223183(P2012−223183A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46895(P2012−46895)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(000167897)晃栄化学工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】