説明

光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器

【課題】 使用時に手間が掛からず、膜厚調整も容易な光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器を提供する。
【解決手段】 着色剤を分散した粘着剤からなることを特徴とする光吸収材。光コネクタ径に合わせた挿入穴Hを有する板状部材30と、所定の大きさの光吸収材とを備える光吸収材貼着治具であって、前記光吸収材は着色剤を分散した粘着剤からなり、該光吸収材は、前記挿入穴Hの底に配置されていることを特徴とする光吸収材貼着治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光減衰特性を備えた染料または顔料を含むカラーインク層を光ファイバ端面に熱転写により融着させた光減衰器が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、この技術は熱転写に手間が掛かるとともに、熱転写時にカラーインク層が一度融解するので得られる層の膜厚にバラツキを生じるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−120508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とする処は、使用時に手間が掛からず、膜厚調整も容易な光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の技術的構成により、前記課題を解決できたものである。
(1)着色剤を分散した粘着剤からなることを特徴とする光吸収材。
(2)粘着剤と非粘着樹脂とを有する光吸収材であって、少なくとも粘着剤と非粘着樹脂のいずれかに、着色剤を分散したことを特徴とする光吸収材。
(3)前記着色剤は、顔料または染料であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の光吸収材。
(4)前記着色剤はカーボンブラックであることを特徴とする前記(1)または(2)記載の光吸収材。
(5)前記着色剤はフタロシアニンブルーであることを特徴とする前記(1)または(2)記載の光吸収材。
(6)前記光吸収材は、厚さが5μm以上50μm以下であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の光吸収材。
(7)前記光吸収材は、屈折率が1.35〜1.55であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の光吸収材。
(8)光コネクタ径に合わせた挿入穴を有する板状部材と、所定の大きさの光吸収材とを備える光吸収材貼着治具であって、前記光吸収材は着色剤を分散した粘着剤からなり、該光吸収材は、前記挿入穴の底に配置されていることを特徴とする光吸収材貼着治具。
(9)光コネクタ径に合わせた挿入穴を有する板状部材と、所定の大きさの光吸収材とを備える光吸収材貼着治具であって、前記光吸収材は粘着剤と非粘着樹脂とを有し、少なくとも粘着剤と非粘着樹脂のいずれかに着色剤が分散され、該光吸収材は、前記挿入穴の底に非粘着樹脂が接するように配置されていることを特徴とする光吸収材貼着治具。
(10)光学部品の端面に前記(1)または(2)記載の光吸収材を設けたことを特徴とする光減衰器。
(11)光伝送媒体の一方または両方の端面に前記(1)または(2)記載の光吸収材を設けたことを特徴とする光減衰器。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用時に手間が掛からず、膜厚調整も容易な光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1を示す側面図
【図2】本発明の実施形態2を示す側面図
【図3】本発明の実施形態3を示す斜視図
【図4】本発明の実施形態4を示す平面図
【図5】光吸収材貼着治具を示す図であり、(a)は平面図、(b)はB−B線断面図、(c)は斜視図
【図6】A−A線断面拡大図
【図7】光吸収材貼着治具を用いて製造した光学接続構造を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を用いて本発明の光吸収材について説明する。
図1は、本発明の実施形態1を示す側面図である。
10aは光伝送媒体である光ファイバ、10bは他の光伝送媒体である光ファイバ、22は光吸収材である。
図1に示されるように、2本の光ファイバ10a及び10bが光吸収材22を介して突き合わされ、光学的に接続されている。
光吸収材22は、染料または顔料を分散した粘着剤からなることを特徴とする。
これにより、光ファイバ内を進んできた光が光吸収材22を透過する際に減衰される。
また、粘着剤を光ファイバ先端に貼着するだけでよいので、使用時に手間がかからない。
そして、熱転写で融解させる必要がないので、塗布等により所定の膜厚に形成しておけばその厚さのまま用いることができ、膜厚調整が容易である。
また、粘着剤を用いることで光ファイバにキズを付けず、隙間無く光学接続できる。
【0010】
染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料などを用いることができる。
顔料としては、イソインドリノン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、アゾ系、ナフトール系、キノフタロン系、アゾメチン系、ベンズイミダゾロン系、ペリノン系、ピランスロン系、ペリレン系、ヒランスロン系、フタロシアニン系、スレン系、カーボンブラックなどを用いることができ、その中でもカーボンブラック、フタロシアニンブルーが好ましく、特にカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは、広い波長範囲の光を吸収するため光損失の波長依存性が小さく、広い波長範囲で一定の減衰効果を得ることが可能である。また耐熱性も1000℃以上と高く、長期信頼性にも優れている。
【0011】
本発明には種々のカーボンブラックを利用できるが、光通信の分野では波長が850nm程度の光を用いるので、光の異常散乱を防ぎ、膜表面のいずれの場所においても均一な損失を得るためにカーボンブラックの微粒子の大きさは850nm未満であることが好ましい。
そして、粘着剤に分散させることによって減衰効果を得ることができる。減衰効果を制御するためには、粘着剤の膜厚を厚くしたり、カーボンブラックの配合量を増やしたりすればよい。
粘着剤の厚さは5μm以上50μm以下が好ましく、さらに好ましくは5μm以上40μm以下である。
5μm未満だと光伝送媒体または光学部品に凹凸があった場合に平滑に接続することができず、50μmを超えると接続損失が大きくなり過ぎる。
染料または顔料の配合量は、光吸収材の仕様によって異なるが、0.01重量%〜10重量%が好ましい。
【0012】
粘着剤は、一定量の光を透過させる観点から、屈折率が1.35〜1.55であることが好ましく、特に1.40〜1.50であることが好ましい。
粘着剤としては、高分子材料、例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等の各種粘着剤を使用することができる。また必要に応じてこれらを混合したり、硬化剤やフッ素樹脂を加えたりして用いることができる。
それらの中でも、接着性、その他の面から、アクリル系粘着剤とシリコーン系粘着剤が特に好ましく使用される。
【0013】
本発明に用いるアクリル系粘着剤とは、その基本構造がアクリル酸の炭素数2〜12のアルキルエステルまたはメタクリル酸の炭素数4〜12のアルキルエステルを主モノマーとして構成されたポリマーを意味する。具体的には、例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸のアルキルエステル類、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸のアルキルエステル類等があげられる。また、これらの主モノマーと共重合するモノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン等があげられる。
【0014】
本発明に用いるシリコーン系粘着剤とは、主鎖の骨格がSi−O−Si結合(シロキサン結合)からなる粘着剤を意味し、シリコーンゴムまたはシリコーンレジンで構成される。
それらは、有機溶剤の溶解した状態で塗布して固化または成膜される。
シリコーンゴムの主ポリマーは、直鎖状のポリジメチルシロキサンであって、メチル基の一部をフェニル基やビニル基に置換したものも含まれる。
また、シリコーンレジンは複雑な三次元構造を持った分子量3000〜1万程度のものが使用され、接着付与樹脂の役目をする。
なお、シリコーン系粘着剤には、架橋剤、軟化剤、粘着調整剤、その他の添加剤を添加して、粘着力、濡れ性を調節したり、耐水性、耐熱性を付与したりしてもよい。
【0015】
シリコーン系粘着剤は、耐熱保持力が優れ、高温、低温環境下でも粘着力が優れていると言う特徴を有している。
そのためシリコーン系粘着剤を光伝送媒体および/または光学部品との間に介在させた光学接続構造においては、高温環境下(〜250℃)、或いは低温環境下(〜−50℃)においても接続部の密着が維持され、常に安定した接続状態を保つことができる。
また、高温を履歴した後でも硬化したり黄変したりせず、被着体より良好に剥離することができる。
また、シリコーン系粘着剤は、電気絶縁性、耐薬品性、耐候性、耐水性に優れており、広範囲な材料、例えば、クラッド層がフッ素樹脂でコーティングされた光ファイバ等に対しても密着させることができる。
また、光導波路や光学部品についても、フッ素ポリイミド等のフッ素樹脂ベースのものに対しても粘着性を示すので、有効に使用することができる。
【0016】
硬化剤としては、各種エポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤等を用いることができる。また、触媒を用いて硬化させることもできる。
【0017】
そして、粘着剤と硬化剤の組み合わせや配合量等によって粘着力を調整することができる。
粘着力は、20〜2500gf/25mmであることが好ましく、より好ましくは100〜2500gf/25mmである。
【0018】
また、粘着剤について、表裏の粘着力に差異を設けることもできる。
表裏の粘着力に差異を設けるには、粘着剤と硬化剤の組み合わせや配合量等によって2種類の粘着剤を作り分ければよい。
その際、それぞれの粘着力は20gf/25mm以上異なることが好ましい。そして、一方の層が他方の層の2倍以上の粘着力を有することがより好ましい。
なお、上記の粘着力はJIS Z 0237の180度引きはがし粘着力に準拠して測定した値である。
【0019】
次に、図2を用いて本発明の他の光吸収材について説明する。
図2は、本発明の実施形態2を示す側面図である。
10aは光伝送媒体である光ファイバ、10bは他の光伝送媒体である光ファイバ、23は光吸収材、23aは粘着剤の層、23bは非粘着樹脂の層である。
図2に示されるように、2本の光ファイバ10a及び10bが光吸収材23を介して突き合わされ、光学的に接続されている。そして、光吸収材23は、粘着剤の層23aと非粘着樹脂の層23bの2層構造を有している。
染料または顔料はいずれか一方の層に分散させればよいが、両方の層に分散させることもできる。
このように、一面を非粘着樹脂にすることにより、接続の位置合わせに失敗しても容易にやり直すことができる。
なお、ここでいう非粘着樹脂にはゴムが含まれる。
【0020】
非粘着樹脂としては、アクリル系やスチレン系の材料が好ましい。
そして、硬度がJIS(A型)10〜100であることが好ましく、さらに好ましくは30〜90である。
また、前記硬度の非粘着樹脂を用いることで、光吸収材の強度を向上させることができる。
なお、当該硬度はJIS K−6253に準拠して測定した値である。
【0021】
次に、図3を用いて説明する。
図3は本発明の実施形態3を示す斜視図である。
11a〜14a、11b〜14bは光ファイバ、15aは光伝送媒体である4心の光ファイバテープ心線、15bは他の光伝送媒体である4心の光ファイバテープ心線、47a、47bはガイドピン、75a、75bはMTコネクタ、Gはガイドピン挿入孔である。
図3において、MTコネクタ75aとMTコネクタ75bの接続端面間に、光吸収材22、23が介在している。
図3(a)に示されるように、2つのMTコネクタ75a及びMTコネクタ75bは、ガイドピン47a、47bによって位置決めされて光吸収材22、23を介して突き合わされ、それにより、図3(b)に示すように、光ファイバテープ心線15a、15bが光学的に接続された構造になる。
【0022】
次に、図4を用いて説明する。
図4は本発明の実施形態4を示す平面図である。
80はSCコネクタ、90はSCコネクタ用アダプタ、95は光学部品である。
図4に示すように、SCコネクタ80とSCコネクタ用アダプタ90の間に光吸収材22、23を配置する。
そして、光吸収材22、23をSCコネクタ80に貼着する。
次に、SCコネクタ80をSCコネクタ用アダプタ90に挿し込み、光吸収材22、23を介して光学部品95に突き合わせる。これにより光学接続構造が作製される。
【0023】
次に、図5〜図7を用いて本発明の光吸収材貼着治具について説明する。
図5は光吸収材貼着治具を示す図であり、(a)は平面図、(b)はB−B線断面図、(c)は斜視図、図6はA−A線断面拡大図、図7は光吸収材貼着治具を用いて製造した光学接続構造を示す側面図である。
30は光吸収材貼着治具を構成する板状部材、32は板状部材を構成する孔空き板、33は板状部材を構成する基材板、35は板状部材を構成する接着層、36は弱粘着層、Cは光コネクタ、Hは挿入穴である。
図5および図6に示すように、光吸収材貼着治具は、光コネクタ径に合わせた挿入穴Hを有する板状部材30と、所定の大きさの光吸収材23とを備える光吸収材貼着治具であって、光吸収材23は粘着剤の層23aと非粘着樹脂の層23bとを有し、少なくとも粘着剤と非粘着樹脂のいずれかに着色剤が分散され、光吸収材23は、挿入穴Hの底に非粘着樹脂が接するように配置されていることを特徴とする。
この貼着治具を用いれば、光コネクタを挿入穴Hに挿し込むだけで粘着剤の層23aを貼着することができる。
そして、光コネクタを挿入穴Hから抜き出す際に非粘着樹脂の層23bと弱粘着層36とが剥離して、光コネクタの先端に光吸収材23を設けることができる。
そして、図7に示すように、この光コネクタを他の光コネクタに突き合わせるだけで容易に光学接続ができ、作業性が飛躍的に向上する。
また、板状部材を用いているので光吸収材23の持ち運びも容易になる。
【0024】
本発明の板状部材は一片の部材でもよいが、図6に示す通り孔空き板32と基材板33とを、接着層35で一体化して構成することが好ましい。
当該構成により、挿入穴Hの深さを孔空き板32の厚さによって制御できる。また、一片の部材に穴を形成してから穴の底に光吸収材23を配置することは容易ではないが、当該構成によれば、粘着層35上に光吸収材23を配置してから孔空き板32を載せることで、容易に穴の底に光吸収材23を配置できる。
また、光吸収材23は、図6に示すように弱粘着層36を介して配置することが好ましい。
挿入穴Hは光コネクタ径に合わせた寸法を有するが、周囲に若干余裕を持たせてもよい。
挿入穴Hの深さ、すなわち図6での孔空き板32の厚さは、挿入される光コネクタに合わせた深さが好ましく、具体的には0.1mm〜10mm程度が好ましい。
孔空き板32にはレーザ等で精密に孔空けをしたアクリル板等が好ましく用いられる。
挿入穴Hは規則的に配列してあることが好ましい。図5では1列10個の丸穴が示されているが、列数や個数を増やしてもよいし、数種類の光コネクタに対応できるように、径や形の異なる挿入穴を配列してもよい。
本発明の光吸収材貼着治具に用いられる光コネクタとしては、SCコネクタ、FCコネクタ、MPOコネクタ、MTコネクタ、MUコネクタ、FPCコネクタなどがある。
例えば、1枚の板状部材にSCコネクタ用の丸穴と、MTコネクタ用の四角穴を設けることなどもできる。
【0025】
基材板33の厚さは特に制限はないが、50〜5000μmが好ましい。
基材板33にはPET(ポリエチレンテレフタレート)等が好ましく用いられる。
接着層35の厚さは100〜200μmが好ましい。
接着層35は、光コネクタを押し付けることができるように柔軟性を有することが好ましく、市販の両面テープ等が好ましく用いられる。
弱粘着層36は、光吸収材23を保持する役割を果たす。
光コネクタの先端に光吸収材23が貼着されたときには光吸収材23と分離できるように、粘着剤23aよりも粘着力の弱い材料を用いることが好ましい。
弱粘着層36の粘着力は1〜100gf/25mmが好ましく、より好ましくは5〜50gf/25mm、特に好ましくは5〜30gf/25mmである。
材質としては、糊残りが少ないシリコーン系粘着剤が好ましい。
弱粘着層36の厚さは10〜70μmが好ましい。
なお、非粘着樹脂を有しない光吸収材22の貼着治具を作製する場合には、弱粘着層36を剥離フィルムに代えればよい。
剥離フィルムには剥離PET(ポリエチレンテレフタレート)等が好ましく用いられる。
【0026】
次に、本発明の光吸収材の作製方法を説明する。
粘着剤にトルエン等の溶媒を加えて、ディスパー(攪拌機)で10分程度攪拌することにより粘着剤溶液を作製する。
粘着剤と溶媒の重量比は1:9〜7:3が好ましく、さらに好ましくは2:8〜4:6である。
また、非粘着樹脂をトルエン等の溶媒に溶かし、ディスパー(攪拌機)で10分程度攪拌することにより非粘着樹脂溶液を作製する。
非粘着樹脂と溶媒の重量比は1:9〜7:3が好ましく、さらに好ましくは2:8〜4:6である。
ここで、少なくとも粘着剤溶液と非粘着樹脂溶液のいずれかに顔料または染料を添加する。添加後、さらにディスパー(攪拌機)で10分程度攪拌することにより顔料または染料の分散を行う。
【0027】
次に、PETフィルム等の保護フィルムを敷き、その上に粘着剤溶液をアプリケーターで均一な厚みに塗布し、粘着剤膜を形成する。
また、非粘着樹脂溶液についても同様に塗布し、非粘着樹脂膜を形成する。
その後、粘着剤膜と非粘着樹脂膜を加熱して溶媒を除去し、均一な厚みを持つ粘着剤の層23aと非粘着樹脂23bの層を得る。
【0028】
なお、粘着剤と溶媒の重量比、非粘着樹脂と溶媒の重量比から加熱による膜厚変化を予想できる。
例えば、粘着剤と溶媒の重量比を1:2にしておけば、粘着剤の層23aの膜厚は加熱前の1/3になると予想できる。
したがって、その予想を踏まえて、アプリケーターで塗布する際の厚みを決定すれば、得られる層23a、23bの膜厚を容易に調整できる。
そして、得られた粘着剤の層23aと非粘着樹脂の層23bとをラミネーター等で貼り合せることにより、光吸収材23を得ることができる。
【0029】
なお、非粘着樹脂を有しない光吸収材22を作製する場合には、粘着剤溶液に顔料または染料を添加して得た粘着剤の層をそのまま光吸収材22とすればよい。
また、光吸収材の作製について必ずしも保護フィルムを用いる必要はないが、汚れを防いで取り扱いを容易にする観点から保護フィルムを用いて製作し、使用に際して剥がすことが好ましい。
【0030】
本発明の光吸収材は、光伝送媒体や光学部品の接続箇所に用いることができる。
光伝送媒体としては、上記した光ファイバのほかに光導波路などがあげられるが、その種類は特に限定されず、光を伝送するものであれば如何なるものでもよい。また、光ファイバも何等限定されるものではなく、その用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、石英、プラスチック等の材料からなる光ファイバを用いることができる。また、光導波路としては、石英光導波路、ポリイミド光導波路、PMMA光導波路、エポキシ光導波路などが利用される。
【0031】
さらに、使用する二つの光伝送媒体の種類が異なっていても接続させることが可能である。また、異なる外径の光伝送媒体であっても、コア径とモードフィールド径が同じであれば、本発明を適用することができる。なお、光ファイバの本数、光導波路の枚数も何等限定されるものではなく、複数本の光ファイバよりなる光ファイバテープ心線を用いることもできる。
【0032】
本発明において用いられる光学部品としては、光学レンズ、フィルタ、測定器、レーザーダイオード、フォトダイオードなどがあげられ、その種類に関しては特に限定されるものではない。光学レンズは、例えば両凸、両凹、凹凸、平凸、非球面等の各種形状を有するものや、コリメートレンズ、ロッドレンズなどがあげられ、フィルタとしては、例えば一般光通信用フィルタのほか、多層膜フィルタやポリイミドフィルタ等があげられる。
【0033】
そして、光学部品の端面に染料または顔料を分散した粘着剤を設けることで、光減衰器として用いることができる。
また、光伝送媒体の一方または両方の端面に染料または顔料を分散した粘着剤を設けることでも、光減衰器として用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて説明する。
<実施例1>
以下のように光吸収材を作製した。
まず、粘着剤の材料として、材料Aを用意した。
材料A
アクリル系粘着剤α(100重量部)+エポキシ系硬化剤(0.05重量部)
(粘着力1767gf/25mm、20℃での屈折率1.463)
なお、屈折率の測定には波長1310nmの光源を用いた(以下同じ)。
材料A100重量部にトルエン200重量部を加えて、ディスパー(攪拌機)で10分攪拌して粘着剤溶液を作製した。
次に、顔料として、市販のカーボンブラック(粒径30nm)を0.17重量部添加し、さらにディスパー(攪拌機)で10分程度攪拌した。
【0035】
次に、非粘着樹脂として、材料Xを用意した。
材料X
アクリルゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名:「Nipol AR−71」、Tg −15℃、膜厚15μmでの波長850nmから1700nmにおける透過率91%)
そして、アクリルゴム30重量部をトルエン60重量部中に溶かし、ディスパー(攪拌機)で10分程度攪拌することにより非粘着樹脂溶液を作製した。
【0036】
次に、厚さ50μmの剥離PETを敷き、その上に粘着剤溶液を厚さ90μmになるようにアプリケーターで塗布し、粘着剤膜を形成した。
また、非粘着樹脂溶液についても同様にして厚さ30μmになるように塗布し、非粘着樹脂膜を形成した。
その後、粘着剤膜と非粘着樹脂膜を80℃のオーブンに2分間入れることで加熱して溶媒を除去し、厚さが30μmの粘着剤の層23aと厚さが10μmの非粘着樹脂の層23bを得た。
次に、粘着剤の層23aと非粘着樹脂の層23bとをラミネーターを用いて貼り合わせ、厚さ40μmの光吸収材23を作製した。
【0037】
次に、基材板である透明PET板(アクリルサンデー社製、商品名:サンデーPET、厚さ500μm)上に接着層となる両面テープ(日東電工社製、商品名:両面接着テープ、厚さ125μm)を貼った。
光吸収材23の剥離PETを取り除き、弱粘着層(市販のシリコーン粘着剤)を介して両面テープの上に載せた。
その際、非粘着樹脂の層23bが弱粘着層に接するように(挿入穴Hの底が非粘着樹脂が接するように)配置した。
【0038】
次に、所定の箇所を残して、光吸収材および剥離PETの他の部分を切除した。
すなわち、挿入穴に該当する所定の10箇所の光吸収材を直径2mmの円形となるようにレーザで切り離し、その他の部分を両面テープから剥がして除去した。
そして、予めレーザで所定の10箇所に直径2.5mmの精密な孔空けを行った孔空き板(アクリルサンデー社製、商品名:アクリルサンデー板、厚さ1mm)を両面テープ上に位置合わせして載せた。
さらに、挿入穴Hを覆うように保護テープであるメンディングテープ(住友スリーエム社製、商品名:Scotchメンディングテープ)を貼り、実施例1の光吸収材貼着治具を作製した。
【0039】
次に、以下のように光減衰器を作製した。
まず、石英系シングルモードの光ファイバ(住友電工社製、外径0.25mm、20℃での屈折率1.452)を保持したSCコネクタ(住友電工社製、商品名:「単心光コネクタSC」)の接続面を該光吸収材貼着治具の挿入穴Hに挿し込み、先端に光吸収材を貼り付けて実施例1の光減衰器を作製した。
【0040】
<実施例2>
カーボンブラック0.16重量部をフタロシアニンブルー(日本触媒社製 商品名:「イーエクスカラーIR10A」)0.11重量部に代えたことを除き、実施例1と同様にして実施例2の光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器を作製した。
【0041】
<実施例3>
粘着剤溶液ではなく非粘着樹脂溶液にカーボンブラックを添加したことを除き、実施例1と同様にして実施例3の光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器を作製した。
【0042】
<実施例4>
粘着剤溶液ではなく非粘着樹脂溶液にフタロシアニンブルーを添加したことを除き、実施例2と同様にして実施例4の光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器を作製した。
【0043】
<実施例5>
カーボンブラックを添加した粘着剤溶液のみを用いて厚さ40μmの光吸収材を作製した。その他は実施例1と同様にして実施例5の光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器を作製した。
【0044】
<比較例1>
カーボンブラックを添加しなかった。その他は実施例1と同様にして比較例1の光吸収材、光吸収材貼着治具および光減衰器を作製した。
【0045】
<比較例2>
カーボンブラックを添加した非粘着樹脂溶液のみを用いて、厚さ40μm、20mm×20mmの光吸収材を作製した。
そして、該光吸収材を170℃の鉄板上に置いた。
次に、石英系シングルモードの光ファイバ(住友電工社製、外径0.25mm、20℃での屈折率1.452)を保持したSCコネクタ(住友電工社製、商品名:「単心光コネクタSC」)の接続面を該光吸収材に押し付けた。
これにより、SCコネクタと光吸収材を一体化させ(熱転写)、一体化したまま鉄板上から持ち上げて自然冷却させた。
そして、接続面の光吸収材が固まってから余分な光吸収材を除去し、比較例2の光減衰器を作製した。
【0046】
実施例および比較例の光学接続構造について、主な条件を表1に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例および比較例の光学接続構造について、以下の方法で評価した。
【0049】
<評価方法>
(光減衰器作製時間)
実施例1〜5および比較例1については、光吸収材貼着治具を用いて貼着により光減衰器を作製するのに掛かった時間を測定した。
比較例2については、熱転写により光減衰器を作製するのに掛かった時間を測定した。
【0050】
(膜厚制御)
実施例および比較例の光減衰器を5個ずつ作製し、光吸収材の厚みが最大のものと最小のものとを選んで膜厚の差を測定した。
【0051】
(接続損失)
石英系シングルモードの光ファイバ(住友電工社製、外径0.25mm、20℃での屈折率1.452)を保持したSCコネクタ(住友電工社製、商品名:「単心光コネクタSC」)をSCコネクタ用アダプタ(住友電工社製、商品名:「光アダプタSC−SC(プラスチック)」)を介して測定器(ADVANTEST社製、商品名:「OPTICAL MULTI POWER METER 「Q8221」」)と接続した。光ファイバの先端からLED:850nmの光を入射させ、測定器に出射した光のパワーを測定して基準値とした。
次に、実施例および比較例の光減衰器について、同様にSCコネクタ用アダプタを介して測定器と接続した。そして、光ファイバの先端からLED:850nmの光を入射させ、測定器に出射した光のパワーを測定した。
測定値と基準値の差を算出し、接続損失[dB]とした。なお、実用上適切な減衰効果を得るには接続損失が1.5〜1.6dBであればよく、さらに望ましくは1.54〜1.55dBである。
【0052】
以上の結果を表2で示した。
【0053】
【表2】

【0054】
<評価結果>
表2から明らかなように、実施例1〜5は光減衰器作製時間が1秒と短く、膜厚制御の値も1μmと小さかった。すなわち、使用時に手間が掛からず、膜厚調整も容易であった。また、接続損失は1.54〜1.55内であり所望の減衰効果を得られた。
さらに、実施例1〜4は非粘着樹脂を用いているのでSCコネクタと光吸収材の位置合わせが不完全なときに容易に貼り直しができた。また、実施例1〜4は耐久性が飛躍的に向上しており、長期間の使用にも適していた。
これに対して、比較例1は光減衰器作製時間に問題はないものの、接続損失は0.3dBであり十分な減衰効果を得られなかった。
また、比較例2は光減衰器作製時間が150秒と長く、膜厚制御の値は12μmと大きかった。なお、この膜厚のバラツキは接続損失に0.97dBもの差を生じさせた。
【符号の説明】
【0055】
10a、10b 光ファイバ
11a〜14a、11b〜14b 光ファイバ
15a、15b 光ファイバテープ心線
22、23 光吸収材
23a 粘着剤の層
23b 非粘着樹脂の層
30 板状部材
32 孔空き板
33 基材板
35 接着層
36 弱粘着層
47a、47b ガイドピン
75a、75b MTコネクタ
80 SCコネクタ
90 SCコネクタ用アダプタ
95 光学部品
C 光コネクタ
G ガイドピン挿入孔
H 挿入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤を分散した粘着剤からなることを特徴とする光吸収材。
【請求項2】
粘着剤と非粘着樹脂とを有する光吸収材であって、
少なくとも粘着剤と非粘着樹脂のいずれかに、着色剤を分散したことを特徴とする光吸収材。
【請求項3】
前記着色剤は、顔料または染料であることを特徴とする請求項1または2記載の光吸収材。
【請求項4】
前記着色剤はカーボンブラックであることを特徴とする請求項1または2記載の光吸収材。
【請求項5】
前記着色剤はフタロシアニンブルーであることを特徴とする請求項1または2記載の光吸収材。
【請求項6】
前記光吸収材は、厚さが5μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光吸収材。
【請求項7】
前記光吸収材は、屈折率が1.35〜1.55であることを特徴とする請求項1または2記載の光吸収材。
【請求項8】
光コネクタ径に合わせた挿入穴を有する板状部材と、所定の大きさの光吸収材とを備える光吸収材貼着治具であって、
前記光吸収材は着色剤を分散した粘着剤からなり、
該光吸収材は、前記挿入穴の底に配置されていることを特徴とする光吸収材貼着治具。
【請求項9】
光コネクタ径に合わせた挿入穴を有する板状部材と、所定の大きさの光吸収材とを備える光吸収材貼着治具であって、
前記光吸収材は粘着剤と非粘着樹脂とを有し、少なくとも粘着剤と非粘着樹脂のいずれかに着色剤が分散され、
該光吸収材は、前記挿入穴の底に非粘着樹脂が接するように配置されていることを特徴とする光吸収材貼着治具。
【請求項10】
光学部品の端面に請求項1または2記載の光吸収材を設けたことを特徴とする光減衰器。
【請求項11】
光伝送媒体の一方または両方の端面に請求項1または2記載の光吸収材を設けたことを特徴とする光減衰器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−191234(P2010−191234A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36106(P2009−36106)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】