説明

光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙

【課題】
プリンタによる印字でも不具合が発生しにくく、意匠性がよく、偽造防止性に優れる光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙を提供する。
【解決手段】
基材11と、該基材11の一方の面に、少なくとも光回折層13、透明反射層15及びメタリック印刷層17からなることを特徴とし、上記メタリック印刷層17が、少なくとも有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、又はセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片を含有する高輝度インキの印刷層であり、並びに、該光回折層を有するスレッドを基紙21の少なくとも一方の面の表面、又は用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開きスレッドであるも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止用紙に関し、さらに詳しくは、プリンタによる印字でも不具合が発生しにくく、意匠性がよく、偽造防止性に優れる光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の光回折層を有するスレッドを用いた偽造防止用紙の主なる用途としては、例えば、紙幣、株券、証券、証書、商品券、小切手、手形、入場券、通帳類、ギフト券、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、入場証、通行証、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、メンバーズカード、ICカード、光カードなどのカード類、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、パスポート等の各種証明書やその証明写真類、カートン、ケース、軟包装材などの包装材類、バッグ類、帳票類、封筒、タグ、パスポート、化粧品、腕時計、ライター等のブランド装身具などで、意匠性がよく、偽造防止性に優れ、かつ、プリンタによる印字における不具合を解消したものである。
しかしながら、意匠性がよく、偽造防止性に優れ、かつ、プリンタによる印字における不具合の発生を解消した用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)近年、紙幣、商品券、株券、小切手、手形等の有価証券、ギフト券、入場証、通行証、サービスポイントなどの、一定の金額を払い込んだ(プリペイドという)権利などを証明する媒体、パスポート、身分証明書などの資格を証明する媒体が増加している。該媒体は一定の経済的価値や効果を持つため、不正に偽造、変造、不正使用することが絶えない。特に、カラーコピー機の精度向上が著しく、各種の媒体類の偽造を容易にしている。そのほかにも、偽造による被害を防止する必要がある製品分野において使用される用紙がある。これらの偽造を防止するため各種の偽造防止手段が施されている。用紙の偽造防止対策に関わる公知技術として、スレッドを抄き込んだいわゆる糸(スレッド)入り紙と称する偽造防止用紙がある。また、このようなスレッドの形態としては、金糸、銀糸、プラスチックフィルム、金属蒸着フィルムが使用され、特に複製による偽造が困難な材料として、回折格子またはホログラムのような光回折層を有する光学的部材が使用されてきた。例えば反射型レリーフホログラムを施したフィルムをスレッドに加工する場合、通常は反射層として金属蒸着層を設けているが、このようなスレッドを抄き込んだ用紙の場合、金属蒸着層による帯電の影響で、プリンタを用いて印字する際に不具合を生じる可能性が高く、用途が限られていた。
光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙は、プリンタによる印字でも不具合が発生しにくく、意匠性がよく、偽造防止性に優れることが求められている。
【0005】
(先行技術)従来、片面及び/又は両面に少なくとも一つの光学的変化素子が貼付された不織布及び上部紙層が順次積層されて成る多層抄き合わせ紙が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、光学的変化素子は個別に付与されており、スレッドではなく、製造も煩雑であるという欠点がある。
また、スレッドが抄き込まれた偽造防止用紙として、ポリエステルフィルム等に金属蒸着薄膜や、ホログラム層を積層して構成されたスレッドが、窓開き部に露出しているスレッド入り紙からなる偽造防止用紙が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、例えば、領収書、請求書、又は証明書等のように、個人毎に異なる個人情報や個別の番号等の可変情報を設けることがある。該可変情報の印刷(印字)は、一般的にノンインパクトプリンタが用いられるが、印字に際の高電位でスレッドの金属蒸着薄膜により電場に乱れ、印字品質が低下したり、ノンインパクトプリンタの故障が起きるという問題点がある。
さらに、本出願人も、非導電性プラスチックフィルムと非導電性透明樹脂層とが積層され、前記非導電性透明樹脂層の前記非導電性プラスチックフィルムとは反対側の面に光回折構造が設けられ、前記光回折構造上に非導電性反射層が積層された偽造防止用紙を開示している(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、光回折構造としては透明ホログラムであり、金属反射が得られないので、アイキャッチ性やキラキラ感などの意匠性に欠けるという問題点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2006−52488号公報
【特許文献2】特開平10−226996号公報
【特許文献3】特開2003−193400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、プリンタによる印字でも不具合が発生しにくく、意匠性がよく、偽造防止性に優れる光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる光回折層を有するスレッドは、基材と、該基材の一方の面に、少なくとも光回折層、透明反射層及びメタリック印刷層からなるように、したものである。
請求項2の発明に係わる光回折層を有するスレッドは、上記メタリック印刷層が、少なくとも有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、又はセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片を含有する高輝度インキの印刷層であるように、したものである。
請求項3の発明に係わる光回折層を有するスレッドを用いた偽造防止用紙は、請求項1〜2のいずれかに記載の光回折層を有するスレッドを用いて、該光回折層を有するスレッドを基紙の少なくとも一方の面の表面に抄き込んだように、したものである。
請求項4の発明に係わる光回折層を有するスレッドを用いた偽造防止用紙は、上記抄き込みが用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部にスレッドが露出している窓開きスレッドであるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、プリンタによる印字でも不具合が発生しにくく、意匠性がよく、偽造防止性に優れる光回折層を有するスレッドが提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、よりキラキラ感がゆく意匠性に優れる光回折層を有するスレッドが提供される。
請求項3の本発明によれば、プリンタによる印字でも不具合が発生しにくく、意匠性がよく、偽造防止性に優れる偽造防止用紙が提供される。
請求項4の本発明によれば、請求項3の効果に加えて、スレッド上が窓開き部を形成しているので、スレッドの視認性がよく、かつ、より製造が困難でありより偽造防止性に優れる偽造防止用紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す偽造防止用紙の平面図及び断面図である。
図2は、本発明の1実施例を示すスレッドの断面図である。
【0011】
本発明の偽造防止用紙20は、図1(A)の平面図に示すように、基紙21にスレッド10が抄き込まれ、該スレッド10は、図1(B)のAA断面図、図1(C)のBB断面図に示すように、複数の紙層からなる基紙21へ抄き込まれ、少なくとも1部が露出している。また、スレッド10は、図2に示すように、基材11、光回折層13、透明反射層15及びメタリック印刷層17からなり、透明反射層15とメタリック印刷層17とは接して設ける。
【0012】
(偽造防止用紙)本発明の偽造防止用紙20は、図1(A)の平面図に示すように、表面及び/又は裏面に必要に応じて印刷部31や、印字部33を設けてもよい。抄き込まれたスレッド10は、図1(B)のAA断面図、図1(C)のBB断面図に示すように、複数の紙層からなる基紙21へ抄き込まれ、該抄き込みが用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部にスレッドが露出している窓開きスレッドを図示しているが、スレッドの全部が表面にあってもよく、また、表面の紙層が薄ければ埋まっていてもよい。また、抄き込むスレッド10は、1本でも複数本でもよい。
【0013】
(基紙)本発明の偽造防止用紙の基紙21としては、表面平滑性および耐熱性に優れ、適当な強度、厚さを有するものであれば、特に制限はないが、上質紙等の洋紙、薄手の板紙、カード紙等の紙が適用できる。100〜200g/m2の坪量で、印字、転写適性に優れる上質紙、コート紙が好ましい。
【0014】
(抄紙)基紙21へ、スレッドを抄き込んで製造する。即ち、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファィトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプや麻、綿、藁を原料とした非木材パルプ等を適宜混合して叩解し、これに填料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料、蛍光剤などを適宜添加し、通常フリーネス400〜250mlC.S.F.に調整した紙料を調製する。該紙料へ、狭い幅のスレッドを繰り出しながら、長網抄紙機や円網抄紙機などの公知の抄紙機を使用して抄き込んで製造し、必要に応じてマシンカレンダー、スーパーカレンダー処理をする。前述のように、スレッドは、必要に応じて、基紙中へ埋没、半分埋め込み、表面上でもよく、また、基紙の表面に部分的に露出させた窓開きでもよい。
【0015】
(スレッド)本発明のスレッド10は、図2に示すように、基材11、光回折層13、透明反射層15及びメタリック印刷層17からなり、必要に応じて他の層を層間及び/又は表裏面に設けてもよいが、透明反射層15とメタリック印刷層17とは接して設ける。また、図示しないが、スレッド10の表面及び/又は裏面には、紙層との接着を向上させるため、接着剤層が積層されていてもよい。スレッド10は、幅が0.3〜30mm程度、好ましくは1〜10mmの幅のごく狭い糸状とも見えるテープ状の装飾片を意味し、基本的には紙層どうしが積層された間に適当な間隔で挿入される。
【0016】
反射層としては、従来は真空成膜による金属薄膜を用いていたが、このような金属層を含むスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙の場合、金属層と基材とが所謂コンデンサーを形成して高度に帯電してしまい、プリンタを用いて印字する際に不具合を生じる危険性が高かった。そこで、本発明では、反射層として、透明反射層15とメタリック印刷層17の導電性がないか又は極めて低い層を接して用いることで、光回折層13による偽造防止性があり、プリンタ印字の際でも不具合を生じず、かつ、従来の金属様のキラキラ感のある高意匠性が得られるのである。
【0017】
(基材)基材11としては、導電性が低く、製造及び抄紙に耐える機械的強度、耐熱性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、セルローストリアセテートなどのセルロース系フィルム、などがある。該基材11は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であってもよく、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。
【0018】
該基材11の厚さは、通常、2.5〜100μm程度が適用できるが、4〜50μmが好適で、6〜25μmが最適である。この範囲を超える厚さでは、抄き込み性が悪く、コストも高く、また、この範囲未満では、機械的強度が不足し切断などが発生して、作業性が低下する。該基材11は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理などの易接着処理を行ってもよい。また、該フィルムは、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。該基材11は、これら樹脂の少なくとも1層からなるフィルム、シート、ボード状として使用する。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが、強度、耐熱性、価格面でバランスがよく、好適に使用され、特にポリエチレンテレフタレートが最適である。
【0019】
(光回折層)基材11の一方の面へ光回折層13を設ける。該光回折層13としては、無色または着色された透明または半透明なもので、単層であっても多層状であってもよく、凹凸を注型や型押しで再現できる熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、あるいは、光回折パターン情報に応じて硬化部と未硬化部とを成形することができる感光性樹脂組成物が利用できる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、またはポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、またはトリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂であり、それぞれの単独、熱可塑性樹脂どうし、または熱硬化性樹脂同志の混合、もしくは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合等であってもよい。ラジカル重合性不飽和基を有し、熱成形性を有するものや、ラジカル重合性不飽和モノマーを添加した電離放射線硬化性樹脂組成物も利用できる。電離放射線硬化樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等が適用でき、好ましくはウレタン変性アクリレート樹脂である。
【0020】
(光回折層の形成)光回折層13の形成は、上述したそれぞれの材料を溶剤に溶解または分散させて、適宜添加剤を添加するなどした組成物を、グラビア印刷やスクリーン印刷などの印刷法、ロールート、グラビアコート、又はバーコートなどのコーティング法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して、塗膜を形成すれば良い。また、電離放射線で架橋する硬化性樹脂は、そのままの無溶剤、または溶剤へ分散若しくは溶解した組成物を、上記の印刷またはコーティング法で、少なくとも1部に塗布し、必要に応じて乾燥し、後述するように表面凹凸パターン(光回折パターン)を複製(エンボスともいう)した後に、電離放射線を照射して硬化して形成する。乾燥後の厚さとしては、0.1μm〜10μm程度である。
【0021】
(光回折=凹凸パターン)光回折層13は、2次元または3次元画像を再生可能な表面凹凸パターン(光回折パターン)が形成されたものである。この表面凹凸パターンとしては、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞の光の強度分布が凹凸模様で記録されたホログラムや回折格子が適用できる。ホログラムとしては、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子、電子線直接描画等の描画的に形成された回折格子などがある。
【0022】
(回折格子)回折格子としては、ホログラム記録手段を利用したホログラフィック回折格子があげられ、その他、電子線描画装置等を用いて描画的に回折格子を作成することにより、計算に基づいて任意の回折光が得られる回折格子をあげることもできる。これらのホログラム、回折格子は、単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。
【0023】
(凹凸パターンの複製)ホログラムおよび/または回折格子を記録する表面凹凸パターン(光回折パターン)は、光回折層13の反射層の側に設ける。光回折パターンを複製する際には、マスターそのものも使用できるが、摩耗や損傷の恐れがあるため、アナログレコード等におけるのと同様、マスターに金属メッキまたは紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射して硬化させて剥がす等の方法により、金属または樹脂による複製を行ない、複製された型を使用して商業的複製を行なう。
【0024】
(大量複製)商業的複製の方法は、金型または樹脂型を利用し、熱可塑性の合成樹脂、又は常温で固体状の電離放射線硬化性樹脂を素材として使用し、プレスによりホログラムを複製するか、または、金型または樹脂型面に電離放射線硬化性樹脂などの液状の樹脂を塗布し、紫外線や電子線を照射して硬化させる。この商業的な複製は、長尺状で行うことで連続な複製作業ができて、ホログラムを一方の表面に有する光回折層13が得られる。
【0025】
(透明反射層)光回折層13の光回折機能を有する表面凹凸パターン(光回折パターン)を設けた面へ、透明反射層15を設けることにより、レリーフの反射及び/又は回折効果を高めるので、光回折層13の反射率のより高れば、特に限定されない。透明反射層15としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がレリーフ形成層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるが、本発明では、反射層として透明反射層15とメタリック印刷層17とを接して設けることで、金属光沢に近づけることができる。
【0026】
透明反射層15としては、例えば、光回折層13よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。透明金属化合物の形成は、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、設ければよい。さらには、光回折層13と光の屈折率の異なる透明な合成樹脂を使用してもよい。
【0027】
(メタリック印刷層)メタリック印刷層17としては、金属光沢様(メタリック調)を付与する印刷インキを用いた印刷層であり、好ましくは、少なくとも有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、またはセルロース誘導体で表面処理されている蒸着金属膜を粉砕した蒸着金属膜細片を含有させた高輝度インキを用いた印刷層である。印刷法なので、部分的に設けてもよく、高輝度インキ反射層を既存の印刷設備で安価に製造することができる。金属薄膜片とバインダとからなる高輝度インキを用いたメタリック印刷層17を透明反射層15面へ印刷することで、よりメタリック調の高輝度を発揮でき、光回折画像の反射層とする。また、意匠性が高く、かつ、目視で容易に真偽が判定できてセキュリティ性も高まり、小ロット生産にも対応でき、また、コストも低くできるという著しい効果を発揮する。
【0028】
(高輝度インキ)高輝度インキとしては、金属蒸着膜に匹敵する金属光沢を有する高輝度インキで、金属蒸着膜細片の表面を有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、またはセルロース誘導体で処理して、インキ中への分散性を向上させて、インキ塗膜の金属光沢を高輝度としたものである。該インキは、有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、またはセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片、バインダ、添加剤、及び溶剤からなり、必要に応じてグラビアインキ、スクリーンインキ、又はフレキソインキ化すればよい。金属蒸着膜細片の金属としては、アルミニウムが適用できるが、必要に応じて、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等も使用できる。金属蒸着膜の厚さは、0.01〜0.1μmが好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.08μmであり、インキ中に分散させた金属蒸着膜細片の大きさは、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。大きさが、この範囲未満の場合はインキ塗膜の輝度が不十分となり、この範囲を超えると、グラビア印刷ではグラビア版のセルに入りにくく、また、スクリーン印刷ではスクリーン版が目詰まりし易く、印刷塗膜の光沢が低下する。
【0029】
(高輝度インキの印刷)以上のようにして得られたインキを、公知のグラビ印刷、スクリーン印刷、又はフレキソ印刷で、所要の絵柄を製版して、印刷し、乾燥、必要に応じて硬化すればよい。このようにして、全面ベタ、部分的、又は任意の画像のメタリック印刷層17が得られる。
【0030】
(着色した高輝度インキ)また、高輝度インキを着色してもよく、高輝度インキ中に染料及び/又は顔料を添加したり、金属蒸着膜細片へ有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、またはセルロース誘導体を吸着させる表面処理を行う際に、有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、またはセルロース誘導体溶液に染料及び/又は顔料を添加したり、すればよい。また、該着色は透明でも不透明でもよい。透明着色、例えば、黄色とするとゴールド反射層となり、青色とするとメタリックブルー反射層となり、赤色とするとメタリックレッド反射層となる。また、不透明で淡い色であれば、パール調反射層、パステル調反射層の外観が得られる。
【0031】
(スレッド)このようにして、基材11/光回折層13/透明反射層15/メタリック印刷層17からなる、本発明のスレッド10が得られる。該スレッド10は、例えば、非導電性プラスチックフィルムを基材11の一方の面に、ホログラムなどの光回折機能を有する光回折層13、非導電性の透明反射層15、低導電性のメタリック印刷層17が順に積層されたものであって、スレッド全体が非導電性、もしくは、電子写真方式などのノンインパクトプリンタでの印字に支障の無い程度に、実質的に非導電性とすることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)まず、基材11として、厚さ12μmのルミラーFタイプ(東レ社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。この一方の面へ、ユピマーLZ065(三菱化学社製、紫外線硬化樹脂商品名)を固形分25質量%となるように溶剤で稀釈して、リバースロールコーティング法で、乾燥後の厚さが3μmになるように塗布し乾燥して、光回折層13を形成した。
該光回折層13面へ、スタンパを加圧(エンボス)してレリーフを賦形する。別途レーザー光を用いて作ったマスターホログラムから、2P法で複製したスタンパを複製装置のエンポスローラーに貼着して、150℃で相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯で波長が200〜400nmの紫外線を照射して硬化させた。
該光回折層13面へ、厚さが300nmになるように真空蒸着法で硫化亜鉛を成膜して透明反射層15とした。
該透明反射層15面へ、ファインラップスーパーメタリックシルバーインキ(大日本インキ化学工業社製、高輝度インキ商品名)を用いて、グラビア印刷法で全面に、乾燥後の厚さが5μmになるように印刷して、基材11/光回折層13/透明反射層15/メタリック印刷層17からなる積層体を得た。
該積層体を精密マイクロスリッタ機で幅1.5mmにスリットして、スレッドとした。
該スレッドを紙料へ抄き込む。NBKP20質量部、LBKP80質量部を叩解し、白土10質量部、紙力増強剤0.3質量部、サイズ剤1.0質量部、硫酸バンドを適量加えて、紙料を調製した。該紙料を用いて、2槽式円網抄紙機で抄紙速度50m/分で2層抄合わせ、一方の紙料層を用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部として、上記で製造したスレッドを所定の位置に流した。次いで、公知の一般的な方法に従い湿紙を脱水し、ドライヤーで乾燥することで、スレッドは基紙21へ抄き込まれ、偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙は、スレッドの表面が部分的に露出した状態で、窓開きスレッドであった。
【0034】
(評価)該偽造防止用紙のスレッドには目視でホログラムが観察でき、金属光沢様のキラキラ感があり、カラーコピー機でコピーしたところ、スレッド黒くなり、もちろん光回折槽の画像も再現されず、一見して偽造品と判断できた。さらに、電子写真方式のプリンタで、番号を印字したところ、欠けもなく良好に印字できた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の1実施例を示す偽造防止用紙の平面図及び断面図である。
【図2】本発明の1実施例を示すスレッドの断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10:スレッド
11:基材
13:光回折層
15:透明反射層
17:メタリック印刷層
20:偽造防止用紙
21:基紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に、少なくとも光回折層、透明反射層及びメタリック印刷層からなることを特徴とする光回折層を有するスレッド。
【請求項2】
上記メタリック印刷層が、少なくとも有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、又はセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片を含有する高輝度インキの印刷層であることを特徴とする請求項1記載の光回折層を有するスレッド。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の光回折層を有するスレッドを用いて、該光回折層を有するスレッドを基紙の少なくとも一方の面の表面に抄き込んだことを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項4】
上記抄き込みが用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部にスレッドが露出している窓開きスレッドであることを特徴とする請求項3に記載の偽造防止用紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−283617(P2007−283617A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112878(P2006−112878)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】