説明

光学イメージング剤

本発明は、ベンゾピリリウム色素とペプチドのような生物学的標的化部分とのコンジュゲートを含んでなる、インビボ光学イメージングのために適したイメージング剤に関する。また、医薬品組成物及びキット並びにインビボイメージング方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボ光学イメージングのために適したイメージング剤であって、ペンゾピリリウム色素とペプチドのような生物学的標的化部分とのコンジュゲートを含んでなるイメージング剤に関する。また、医薬品組成物及びキット並びにインビボイメージング方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6750346号には、下記式A、B及びCのレーザー適合性近赤外(NIR)マーカー色素が開示されている。
【0003】
【化1】

式中、
nは1、2又は3であり、
1〜R14は同一又は異なるものであって、H、Cl、Br並びに炭素原子数12以下の脂肪族基及び単核芳香族基から選択される。これらの基は、置換基として、C及びHに加えて4以下の酸素原子及び0、1若しくは2の窒素原子又は硫黄原子、或いは硫黄原子及び窒素原子を含み得るか、或いはH又は(C、H及び2以下のスルホン酸基からなる群から選択される)炭素原子数8以下の置換基の1以上が結合した窒素原子を有するアミノ官能基を表す。
【0004】
米国特許第6750346号の色素は、好ましくはR1〜R14の1以上が可溶化基又はイオン化基を含むように選択される。かかる基は、シクロデキストリン、糖、SO3-、PO32-、CO2-及びNR3+を含むと言われている。米国特許第6750346号は、かかる色素及びそれから導かれる系(コンジュゲート)が、細胞特性診断のための光学的な(特に蛍光光学的な)定性及び定量測定方法、バイオセンサー(ポイント・オブ・ケア測定)並びにゲノム及び小型化技術の探求において使用できることを教示している。典型的なかかる用途は、サイトメトリー、細胞選別、蛍光相関分光法(FCS)、超高スループットスクリーニング(UHTS)、多色蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)並びにマイクロアレイ(遺伝子及びタンパク質チップ)の分野にある。
【0005】
米国特許第6924372号には、下記式D及びEの非対称ポリメチン色素が開示されている。
【0006】
【化2】

式中、
nは0、1、2又は3であり、
1〜R9は同一又は異なるものであって、H、アルキル、tert−アルキル、アリール、カルボキシアリール、ジカルボキシアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルオキシ、アルキルメルカプト(「アルキル」及び「シクロアルキル」はオレフィン結合残基も含む)、アリールオキシ、アリールメルカプト、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールメルカプト、ヒドロキシ、ニトロ又はシアノ残基であり得ると共に、R1及びR2、R2及びR3、R3及びR4、R5及びR7は1以上の脂肪族環、ヘテロ脂肪族環又は芳香環を形成し得る。
【0007】
米国特許第6924372号のR1〜R9置換基の1以上は、任意には可溶化置換基又はイオン化置換基(例えば、SO3-、PO32-、CO2H、OH、NR3+、シクロデキストリン又は糖)であり得るか、或いは任意には色素を別の分子に共有結合させる反応基(例えば、イソチオシアネート、ヒドラジン、活性エステル、マレイミド又はヨードアセトアミド)であり得る。式D及びEの色素は、細胞特性又はバイオセンサーの診断、通例はサイトメトリー及び細胞選別において有用であるといわれている。
【0008】
Lisy他[J.Biomed.Optics,11(6)064014(2006)]は、近赤外光学イメージング及び標識単球又はマクロファージを用いる腹膜炎の診断方法を開示している。単球−マクロファージは、色素DY−676(Dyomics GmbH)によってインビトロで標識できた。腹膜炎の動物モデルにおいて色素DY−676自体をインビボで投与すると、腹膜炎の領域で蛍光の増加が生じた。著者らは、単球−マクロファージ標識がインビボで起こったと結論づけた。
【0009】
Lisy他[Invest.Radiol.,42(4)235−241(2007)]は、蛍光性マグネトソームで標識されたナノ粒子を含むバイモーダル(MRI及び光学)造影剤を開示している。蛍光性マグネトソームナノ粒子は、食作用のプロセスによってマクロファージを標識するために使用された。マグネトソームを標識するために使用された色素は、やはりDY−676であった。
【0010】
Dyomics GmbHのウェブサイト(www.dyomics.com)は、“Visualisation of Arthritis in a Rat by Accumulation of DY−676 in Joints”と題するI.Hilgerの提供画像を含んでいる。それ以上の詳細は示されていない。
【0011】
国際公開第2007/139815号は、前駆細胞に係るイメージング方法及び治療方法を開示している。下記に示す式のコンジュゲートが開示されている。
B−X
式中、
BはCD133+Flk1+内皮前駆細胞に結合するビタミン又は類似体を含み、
Xは定量化可能なマーカーである。
定量化可能なマーカーは、例えば放射性プローブ又は蛍光性プローブであり得る。好適な蛍光性プローブは、フルオレセイン、ローダミン、Texas Red、フィコエリトリン、Oregon Green、Alexa Fluor 488...、Cy3、Cy5、Cy7などであると述べられている。国際公開第2007/139815号の実施例30は、5量体ペプチドリンカー(Asp−Arg−Asp−Asp−Cys)を介してフォレートにコンジュゲートされたただ1種のベンゾピリリウム色素(DyLightTM 680)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
欧州特許出願公開第1281405号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明は、生物学的標的化部分(BTM)にコンジュゲートされた特定の部類のベンゾピリリウム色素を含んでなる、インビボ光学イメージングのために適したイメージング剤を提供する。本発明者らは、かかる共有結合BTMコンジュゲートの一部として、インビボ光学イメージング用途のために適したスルホン化ベンゾピリリウム色素を確認した。
【0014】
本発明のベンゾピリリウム色素(BzpM)は下記のような性質の組合せを有し、したがってインビボ光学イメージング用途のために有用である。
(i)生物学的標的化分子(BTM)へのコンジュゲーションの可能性、
(ii)水溶性、
(iii)電磁スペクトルの赤色、遠赤色又は近赤外部分での吸光及び発光、
(iv)高い吸光係数、
(v)低い血漿タンパク質結合度、
(vi)高い光安定性及び輝度、
(vii)血液中における色素及び色素−BTMコンジュゲートの高い安定性、
(viii)インビボでの血液からの迅速なクリアランス、並びに
(ix)(Meteor/Derek分析による)潜在的に危険な代謝産物の欠如。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の態様では、本発明は、哺乳類の身体のインビボ光学イメージングのために適したイメージング剤を生体適合性キャリヤーと共に含んでなる、哺乳類への投与に適した形態の医薬品組成物であって、前記イメージング剤が下記式Iのコンジュゲートを含んでいる医薬品組成物を提供する。
[BTM]−(L)n−BzpM
(I)
式中、
BTMは生物学的標的化部分であり、
nは0又は1の値を有する整数であり、
Lは式−(A)m−(式中、mは1〜20の値を有する整数であり、各Aは独立に−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基又はC3-12ヘテロアリーレン基、或いはアミノ酸、糖又は単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成単位であり、各Rは独立にH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシアルキル及びC1-4ヒドロキシアルキルから選択される。)の合成リンカー基であり、
BzpMは下記式IIのベンゾピリリウム色素である。
【0016】
【化3】

(式中、
1は下記式Ya又はYbの基であり、
【0017】
【化4】

1〜R4及びR9〜R13はH、−SO31(式中、各M1は独立にH又はBcであり、Bcは生体適合性陽イオンである。)、Hal、Ra及びC3-12アリールから独立に選択され、
5はH、C1-4アルキル、C1-6カルボキシアルキル、C3-12アリールスルホニル又はClであり、或いは任意にはR6、R14、R15又はR16の1つと共に五員又は六員の不飽和脂肪族環、不飽和ヘテロ脂肪族環又は芳香環を形成でき、
6及びR16は独立にRa基であり、
7及びR8は独立にC1-4アルキル、C1-4スルホアルキル又はC1-6ヒドロキシアルキルであり、或いは任意にはR9及び/又はR10の一方又は両方と共に五員又は六員のN含有複素環又はヘテロアリール環を形成でき、
Xは−CR1415−、−O−、−S−、−Se−、−NR16−又は−CH=CH−(式中、R14〜R16は独立にRa基である。)であり、
aはC1-4アルキル、C1-4スルホアルキル、C1-6カルボキシアルキル又はC1-6ヒドロキシアルキルであり、
wは1又は2であり、
Jは生体適合性陰イオンであり、
BzpMはR1〜R16基から選択される1以上のスルホン酸置換基を含むことを条件とする。)
「イメージング剤」という用語は、完全な(即ち、無傷の)哺乳類の身体の検査対象領域のインビボ光学イメージングを行うために適した化合物を意味する。好ましくは、哺乳類はヒトの患者である。イメージングは侵襲的(例えば、手術中検査又は内視鏡検査)であってもよいし、或いは非侵襲的であってもよい。イメージングは、任意には(例えば、内視鏡器具の生検チャネルを通しての)生検又は(例えば、腫瘍縁の同定による手術処置中の)腫瘍切除を容易にするために使用できる。
【0018】
「光学イメージング」という用語は、緑色乃至近赤外領域(波長500〜1200nm)の光との相互作用に基づいて、疾患の検出、ステージング又は診断、疾患進展の追跡或いは疾患治療の追跡のための画像を形成する任意の方法を意味する。光学イメージングはさらに、いかなる装置も使用しない直接可視化並びに各種スコープ、カテーテル及び光学イメージング装置(例えば、断層撮影表示用のコンピューター支援ハードウェア)のような装置の使用を伴う直接可視化のためのあらゆる方法を包含する。かかるモダリティ及び測定技法には、特に限定されないが、ルミネセンスイメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光学コヒーレンス断層撮影、透過率イメージング、時間分解透過率イメージング、共焦点イメージング、非線形顕微鏡検査、光音響イメージング、音響光学イメージング、スペクトル分析、反射スペクトル分析、干渉分析、コヒーレンス干渉分析、拡散光学断層撮影及び蛍光媒介拡散光学断層撮影(連続波、時間ドメイン及び周波数ドメインシステム)、並びに光の散乱、吸光、偏光、ルミネセンス、蛍光寿命、量子収量及び消光の測定がある。これらの技法のさらなる詳細は、Tuan Vo−Dinh(編):“Biomedical Photonics Handbook”(2003),CRC Press LCC、Mycek & Pogue(編):“Handbook of Biomedical Fluorescence”(2003),Marcel Dekker,Inc.、Splinter & Hopper:“An Introduction to Biomedical Optics”(2007),CRC Press LCCに示されている。
【0019】
緑色乃至近赤外領域の光は、好適には500〜1200nm、好ましくは550〜1000nm、最も好ましくは600〜800nmの波長を有する。光学イメージング方法は、好ましくは蛍光内視鏡検査である。第6の態様の哺乳類の身体は、好ましくは人体である。イメージング剤の好ましい実施形態は、第1の態様に関して(上記に)記載した通りである。特に、使用するBzpM色素は蛍光性であることが好ましい。
【0020】
「生体適合性キャリヤー」という用語は、組成物が生理学的に許容され得るようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳類の身体に投与できるようにして)イメージング剤を懸濁又は溶解できる流体(特に液体)を意味する。生体適合性キャリヤーは、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終生成物が等張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、生体適合性対イオンを有する血漿陽イオンの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。好ましくは、生体適合性キャリヤーはパイロジェンフリー注射用水又は等張食塩水である。
【0021】
「コンジュゲート」という用語は、BTM、(L)n基及びBzpM色素が共有結合によって結合されていることを意味する。
【0022】
式Iのコンジュゲートはインビボイメージングのために適するが、それはインビトロ用途(例えば、生物学的試料中のBTMを定量するアッセイ又は組織試料中のBTMの可視化)も有し得る。好ましくは、イメージング剤はインビボイメージングのために使用される。
【0023】
「スルホン酸置換基」という用語は、式−SO31(式中、M1はH又はBcであり、Bcは生体適合性陽イオンである。)の置換基を意味する。−SO31置換基は炭素原子に共有結合され、炭素原子はアリール(即ち、R1又はR2が−SO31である場合のようなスルホアリール)又はアルキル(即ち、スルホアルキル基)であり得る。「生体適合性陽イオン」(Bc)という用語は、イオン化して負に帯電した基(この場合にはスルホネート基)と共に塩を形成する正に帯電した対イオンを意味する。この場合、前記正に帯電した対イオンも無毒性であり、したがって哺乳類の身体(特に人体)への投与に適している。好適な生体適合性陽イオンの例には、アルカリ金属であるナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属であるカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンがある。好ましい生体適合性陽イオンはナトリウム及びカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。
【0024】
「生体適合性陰イオン」(J)という用語は、イオン化して正に帯電した基(この場合にはインドリニウム基)と共に塩を形成する負に帯電した対イオンを意味する。この場合、前記負に帯電した対イオンも無毒性であり、したがって哺乳類の身体(特に人体)への投与に適している。対イオン(J-)は、モル相当量で存在することでBzpM色素上の正電荷をバランスさせる陰イオンを表す。電荷をバランスさせる量が存在する限り、陰イオン(J)は好適には単一又は複数の電荷を有する。陰イオンは好適には無機酸又は有機酸から導かれる。好適な陰イオンの例には、塩化物イオン又は臭化物イオンのようなハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、クエン酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン及びホウ酸イオンがある。好ましい陰イオンは塩化物イオンである。
【0025】
「生物学的標的化部分」(BTM)という用語は、哺乳類の身体にインビボで投与した後、前記哺乳類の身体の特定部位に選択的に取り込まれるか又は特定部位に局在する化合物を意味する。かかる部位は、例えば、特定の疾患状態に関係するものであるか、或いは器官又は代謝過程がいかに機能しているかを表すものであり得る。生物学的標的化部分は、好ましくは、線状ペプチド、環状ペプチド又はこれらの組合せであり得る3〜100量体ペプチド、ペプチド類似体、ペプトイド又はペプチド模倣体、或いは酵素基質、酵素拮抗剤又は酵素阻害剤、合成レセプター結合化合物、オリゴヌクレオチド、又はオリゴDNAフラグメント若しくはオリゴRNAフラグメントからなる。
【0026】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合(即ち、1つのアミノ酸のアミンを別のアミノ酸のカルボキシルに連結するアミド結合)によって連結された(下記に定義するような)2以上のアミノ酸を含む化合物を意味する。「ペプチド模倣体」又は「模倣体」という用語は、ペプチド又はタンパク質の生物学的活性を模倣するが、化学的性質がペプチド的でない(即ち、いかなるペプチド結合(つまり、アミノ酸間のアミド結合)も含まない)生物学的活性化合物をいう。ここでは、ペプチド模倣体という用語は広い意味で使用され、性質が完全にはペプチド的でない分子(例えば、プソイドペプチド、セミペプチド及びペプトイド)を包含する。「ペプチド類似体」という用語は、下記に記載するような1種以上のアミノ酸類似体を含むペプチドをいう。“Synthesis of Peptides and Peptidomimetics”,M.Goodman et al,Houben−Weyl E22c,Thiemeも参照されたい。
【0027】
「アミノ酸」という用語は、L−又はD−アミノ酸、アミノ酸類似体(例えば、ナフチルアラニン)或いはアミノ酸模倣体を意味し、これらは天然のもの又は純粋に合成由来のものであってよく、光学的に純粋なもの(即ち、単一の鏡像異性体)、したがってキラルなものであるか、或いは鏡像異性体の混合物であってよい。本明細書中では、アミノ酸に関する通常の三文字略語又は一文字略語が使用される。好ましくは、本発明のアミノ酸は光学的に純粋なものである。「アミノ酸模倣体」という用語は、アイソスター(即ち、天然化合物の立体構造及び電子構造を模倣するように設計されたもの)である天然アミノ酸の合成類似体を意味する。かかるアイソスターは当業者にとって公知であり、特に限定されないが、デプシペプチド、レトロ−インベルソペプチド、チオアミド、シクロアルカン又は1,5−二置換テトラゾールを包含する[M.Goodman,Biopolymers,24,137(1985)を参照されたい]。
【0028】
好適な酵素の基質、拮抗剤又は阻害剤には、グルコース及びグルコース類似体(例えば、フルオロデオキシグルコース)、脂肪酸、或いはエラスターゼ、アンギオテンシンII又はメタロプロテイナーゼ阻害剤がある。好ましい非ペプチドのアンギオテンシンII拮抗剤はロサルタンである。好適な合成レセプター結合化合物には、エストラジオール、エストロゲン、プロゲスチン、プロゲステロン及び他のステロイドホルモン、ドーパミンD−1又はD−2レセプター用リガンド及びトロパンのようなドーパミン輸送体用リガンド、並びにセロトニンレセプター用リガンドがある。レセプター結合化合物がフォレートである場合、リンカー基は5量体ペプチドAsp−Arg−Asp−Asp−Cysを含まないことが好ましい。最も好ましくは、レセプター結合化合物はフォレートでない。
【0029】
式IIのベンゾピリリウム色素(BzpM)は、緑色乃至近赤外波長(500〜1200nm、好ましくは550〜1000nm、さらに好ましくは600〜800nm)の光を用いる光学イメージング方法で直接又は間接に検出できる蛍光色素又は発色団である。好ましくは、BzpMは蛍光性を有する。
【0030】
式Iのリンカー基−(A)m−の役割の1つは、BzpMをBTMの結合部位から遠ざけることにあると想定されている。これが特に重要であるのは、BzpMが比較的バルキーであり、したがって不都合な立体相互作用が起こり得るからである。これは、BzpMが結合部位から離れて位置する自由を与えるたわみ性(例えば、単純アルキル鎖)及び/又はBzpMを結合部位から離すように定位させる剛性(例えば、シクロアルキル又はアリールスペーサー)を組み合わせることで達成できる。リンカー基の性質はまた、イメージング剤の生体分布を調整するためにも使用できる。即ち、例えばリンカー中にエーテル基を導入することは、血漿タンパク質結合を最小限に抑えるために役立つ。−(A)m−がポリエチレングリコール(PEG)構成単位又は1〜10のアミノ酸残基を有するペプチド鎖からなる場合、リンカー基はインビボでイメージング剤の薬物動態及び血中クリアランス速度を調整するために機能し得る。かかる「バイオモディファイアー」リンカー基は、バックグラウンド組織(例えば、筋肉又は肝臓)及び/又は血液からのイメージング剤のクリアランスを促進することで、バックグラウンド妨害を少なくして一層良好な診断画像を与えることができる。バイオモディファイアーリンカー基はまた、特定の排泄経路(例えば、肝臓経由ではなく腎臓経由の排泄)を有利にするためにも使用できる。
【0031】
「糖」という用語は、単糖、二糖又は三糖を意味する。好適な糖には、グルコース、ガラクトース、マルトース、マンノース及びラクトースがある。任意には、アミノ酸への容易なカップリングを可能にするように糖を官能化することができる。即ち、例えばアミノ酸のグルコサミン誘導体は、ペプチド結合を介して他のアミノ酸にコンジュゲートすることができる。(NovaBiochem社から商業的に入手できる)アスパラギンのグルコサミン誘導体はこれの一例である。
【0032】
【化5】

式Iは、−(L)n[BzpM]部分がBTMの任意適宜の位置に結合し得ることを示している。−(L)n[BzpM]部分に対して好適なかかる位置は、インビボで活性部位への結合に係わるBTM部分から離れた位置にあるように選択される。式Iの[BTM]−(L)n部分は、式IIのBzpMの任意適宜の位置に結合し得る。[BTM]−(L)n−部分は、既存の置換基(例えば、R1〜R16基の1つ)に取って代わるか、或いはBzpMの既存の置換基に共有結合する。[BTM]−(L)n−部分は、好ましくはBzpMのカルボキシアルキル置換基を介して結合する。
【0033】
本発明の好適なイメージング剤は、BzpMが下記式IIa又は式IIbを有するものである。
【0034】
【化6】

式中、X、w、J及びR1〜R13は式IIに関して定義した通りである。
【0035】
5がR6/R14〜R16の1つと共に五員又は六員の不飽和脂肪族環、不飽和ヘテロ脂肪族環又は芳香環を形成する場合、好適なかかる芳香環には、フェニル、フラン、チアゾール、ピリジル、ピロール及びピラゾール環がある。好適な不飽和環は、少なくともR5が結合したC=Cを含んでいる。
【0036】
7及び/又はR8がR9及び/又はR10の一方又は両方と共に五員又は六員のN含有複素環又はヘテロアリール環を形成する場合、好適なかかる環には、チアゾール、ピリジル、ピロール及びピラゾール環並びにこれらの部分水素化変種がある。好ましくは、ピリジル又はジヒドロピリジルである。
【0037】
別の実施形態では、式IIbの色素は、任意にはR1〜R4の1以上がF又は−(CF2f−F(色素中、fは1〜4の値を有する整数である。)であるように選択できる。
【0038】
医薬品組成物は、注射器又はカニューレによる溶液の追加及び抜取りを許しながら、無菌保全性の維持、さらに任意には不活性ヘッドスペースガス(例えば、窒素又はアルゴン)の維持を可能にする密封容器からなる適当なバイアル又は容器に入れた状態で供給される。好ましいかかる容器は、気密蓋を(通例はアルミニウムからなる)オーバーシールと共にクリンプオン式セプタム封止バイアルである。蓋は、無菌保全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したもの(例えば、クリンプオン式セプタムシール蓋)である。かかる容器は、(例えば、ヘッドスペースガスの変更又は溶液のガス抜きのために)所望される場合には蓋が真空に耐え得ると共に、酸素又は水蒸気のような外部大気ガスの侵入を許すことなしに減圧のような圧力変化にも耐え得るという追加の利点を有している。
【0039】
好ましい複数用量容器は、複数の患者用量を含む(例えば、容積10〜30cm3の)単一のバルクバイアルからなり、したがって臨床的状況に合わせて製剤の実用寿命中に様々な時間間隔で1回分の患者用量を臨床グレードの注射器中に抜き取ることができる。予備充填注射器は1回分のヒト用量又は「単位用量」を含むように設計され、したがって好ましくは臨床用に適した使い捨て注射器又は他の注射器である。本発明の医薬品組成物は、好ましくは1人の患者用に適した用量を有し、上述したような適当な注射器又は容器に入れて供給される。
【0040】
かかる医薬品組成物は、抗菌防腐剤、pH調整剤、フィラー、安定剤又は重量オスモル濃度調整剤のような追加賦形剤を任意に含むことができる。「抗菌防腐剤」という用語は、潜在的に有害な微生物(例えば、細菌、酵母又はかび)の増殖を阻止する薬剤を意味する。抗菌防腐剤はまた、使用する用量に応じて多少の殺菌性を示すこともある。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、医薬品組成物中におけるこのような微生物の増殖を阻止することである。しかし、抗菌防腐剤は、任意には投与に先立って前記組成物を製造するために使用されるキットの1種以上の成分中における潜在的に有害な微生物の増殖を阻止するためにも使用できる。かかるキットは第2の態様(下記)で記載される。好適な抗菌防腐剤には、パラベン類(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはこれらの混合物)、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールがある。好ましい抗菌防腐剤はパラベン類である。
【0041】
「pH調整剤」という用語は、組成物のpHがヒト又は哺乳類への投与のために許容し得る範囲(およそpH4.0〜10.5)内にあることを保証するために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調整剤には、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン]のような薬学的に許容し得る緩衝剤、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物のような薬学的に許容し得る塩基がある。組成物をキットの形態で使用する場合には、pH調整剤を任意には独立のバイアル又は容器に入れて供給することができ、その結果としてキットのユーザーは多段操作の一部としてpHを調整することができる。
【0042】
「フィラー」という用語は、製造及び凍結乾燥中における材料の取扱いを容易にすることができる薬学的に許容し得る増量剤を意味する。好適なフィラーには、塩化ナトリウムのような無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースのような水溶性糖又は糖アルコールがある。
【0043】
第1の態様の医薬品組成物は、無菌製造条件下で(即ち、クリーンルーム内で)製造して所望の無菌で非発熱性の生成物を得ることができる。基本構成部分、特に関連する試薬並びにイメージング剤に接触する装置部品(例えば、バイアル)は無菌であることが好ましい。かかる構成部分及び試薬は、無菌濾過或いは(例えば、γ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いる)終末滅菌をはじめとする、当技術分野で公知の方法によって滅菌できる。一部の構成部分を予め滅菌しておけば、最小数の操作を実施すれば済むので好ましい。しかし、予防策として、医薬品組成物の製造における最終段階として少なくとも無菌濾過段階を含めることが好ましい。
【0044】
第1の態様の医薬品組成物は、好ましくは第2の態様に関して下記に記載するようなキットから製造される。
【0045】
好ましい特徴
イメージング剤の分子量は、好適には30000ダルトン以下である。好ましくは、分子量は1000〜20000ダルトンの範囲内にあり、最も好ましくは2000〜18000ダルトンの範囲内にあり、2500〜16000ダルトンが特に好ましい。
【0046】
BTMは合成品又は天然品であり得るが、好ましくは合成品である。「合成品」という用語はそれの通常の意味を有し、即ち、天然の供給源(例えば、哺乳類の身体)から単離されるものではなく人造のものを意味する。かかる化合物は、それの製造及び不純物プロファイルを完全に制御できるという利点を有している。したがって、天然由来のモノクローナル抗体及びそのフラグメントは、本明細書中で使用する「合成品」という用語の範囲外にある。
【0047】
BTMは、好ましくは3〜100量体ペプチド、酵素基質、酵素拮抗剤及び酵素阻害剤から選択される。BTMは、最も好ましくは3〜100量体ペプチド又はペプチド類似体である。BTMがペプチドである場合、それは好ましくは4〜30量体ペプチドであり、最も好ましくは5〜28量体ペプチドである。
【0048】
式Iの[BTM]−(L)n−部分は、好ましくは式IIのBzpMのR5、R6、R14、R15又はR16の位置、さらに好ましくはR6、R14、R15又はR16の位置、最も好ましくはR6、R14又はR15の位置に結合している。結合を容易にするため、関連するR5、R6、R14、R15又はR16置換基は好ましくはC1-6カルボキシアルキル、さらに好ましくはC3-6カルボキシアルキルであり、カルボキシ基は活性エステルとして使用される。
【0049】
ベンゾピリリウム色素(BzpM)は、好ましくは2以上のスルホン酸置換基、さらに好ましくは2〜6のスルホン酸置換基、最も好ましくは2〜4のスルホン酸置換基を有する。好ましくは、スルホン酸置換基の少なくとも1つはC1-4スルホアルキル基である。かかるスルホアルキル基は、好ましくは式IIのR6、R7、R8、R14、R15又はR16の位置にあり、さらに好ましくはR6、R7、R8、R14又はR15の位置にあり、最も好ましくはR7及びR8の一方又は両方と共にR6の位置にある。式IIのスルホアルキル基は、好ましくは式−(CH2kSO31(式中、M1はH又はBcであり、kは1〜4の値を有する整数であり、Bcは(上記に定義したような)生体適合性陽イオンである。)を有する。kは好ましくは3又は4である。
【0050】
式II中、wは好ましくは1である。R5は好ましくはH又はC1-4カルボキシアルキルであり、最も好ましくはHである。Xは好ましくは−CR1415−又は−NR16−であり、最も好ましくは−CR1415−である。
【0051】
好ましいBzpM色素は下記式IIIを有する。
【0052】
【化7】

式中、Y1、R1〜R4、R6、R14、R15及びJは式IIに関して定義した通りである。
【0053】
式IIIの好適な色素は、下記式IIIa又はIIIbを有する。
【0054】
【化8】

式III、IIIa及びIIIbの好ましいR1〜R4及びR6〜R13基は、式IIa及びIIbに関して上記に定義した通りである。式III、IIIa及びIIIb中、R14及びR15は好ましくは一方がRb基でありかつ他方がRc基であるように選択される。RbはC1-2アルキル、最も好ましくはメチルである。RcはC1-4アルキル、C1-6カルボキシアルキル又はC1-4スルホアルキル、好ましくはC3-6カルボキシアルキル又は−(CH2kSO31(式中、kは3又は4であるように選択される。)である。
【0055】
好ましくは、式IIIの色素は、BTMへの容易な共有結合を可能にするためにC1-6カルボキシアルキル置換基を有する。
【0056】
式II又はIII中、R7及び/又はR8がR9及び/又はR10の一方又は両方と共に五員又は六員のN含有複素環又はヘテロアリール環を形成する場合、好ましいかかる環はピリジル又はジヒドロピリジルである。R8基がR10と共に環化された好ましいかかるY1基は、下記式Ycを有する。
【0057】
【化9】

7及びR8基の両方が環化された好ましいかかるY1基は、下記式Ydを有する。
【0058】
【化10】

式中、R7、R9及びR11〜R13は上記に定義した通りであり、各X1は独立にH又はC1-4アルキルである。
【0059】
式Yc中、好ましくは下記の通りである。
各X1はCH3であり、
9=R11=Hであり、
12はHであり、
12はCH3又は−C(CH33、さらに好ましくは−C(CH33である。
【0060】
式Yd中、好ましくは下記の通りである。
9はHであり、
12はHであり、
12は好ましくはCH3又は−C(CH33、さらに好ましくは−C(CH33である。
【0061】
式IIIの−NR78基は下記のいずれかであることが好ましい。
(i)この基は開鎖形態にある。即ち、R7/R8基はR9/R10の一方又は両方と共に環化されていない。好ましいかかるR7及びR8基は、C1-4アルキル及びC1-4スルホアルキルから独立に選択され、最も好ましくはエチル及びC3-4スルホアルキルから独立に選択される。
(ii)この基は環化されて、式Yc又はYd、さらに好ましくは式Ycの環状Y1置換基を生じる。
開鎖形態(i)が最も好ましい。
【0062】
式IIIの特に好ましい色素は、下記式IIIc、IIId又はIIIeを有する。
【0063】
【化11】

式中、
1及びJは上記に定義した通りであり、
17及びR18はC1-4アルキル及びC1-4スルホアルキルから独立に選択され、
19はH又はC1-4アルキルであり、
20はC1-4アルキル、C1-4スルホアルキル又はC1-6カルボキシアルキルであり、
21はC1-4スルホアルキル又はC1-6カルボキシアルキルであり、
22はC1-4アルキル、C1-4スルホアルキル又はC1-6カルボキシアルキルであり、
2,X3及びX4は独立にH又はC1-4アルキルである。
式IIId、IIIe及びIIIfの色素は、好ましくはR20〜R22の1以上がC1-4スルホアルキルであるように選択される。
【0064】
式IIIdの好ましい特定の色素は、次式のDY−631及びDY−633である。
【0065】
【化12】

式IIIeの好ましい特定の色素は、次式のDY−652である。
【0066】
【化13】

好ましい特定の色素はDY−631及びDY−652であり、DY−652が最も好ましい。
【0067】
BTMがペプチドである場合、好ましいかかるペプチドには以下のものがある。
−ソマトスタチン、オクトレオチド及び類似体。
−STレセプターに結合するペプチド(ここで、STとは大腸菌(E.coli)及び他の微生物によって産生される耐熱性毒素をいう。)。
−ラミニンフラグメント、例えば、YIGSR、PDSGR、IKVAV、LRE及びKCQAGTFALRGDPQG。
−白血球集積部位を標的化するためのN−ホルミルペプチド。
−血小板第4因子(PF4)及びそれのフラグメント。
−例えば血管形成を標的化し得るRGD(Arg−Gly−Asp)含有ペプチド[R.Pasqualini et al.,Nat Biotechnol.1997 Jun;15(6):542−6]、[E.Ruoslahti,Kidney Int.1997 May;51(5):1413−7]。
−α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、β−カゼイン、フィブリノーゲン又はトロンボスポンジンのペプチドフラグメント。α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、β−カゼイン、フィブリノーゲン又はトロンボスポンジンのアミノ酸配列は、以下の参考文献中に見出すことができる。α2−抗プラスミン前駆体[M.Tone et al.,J.Biochem,102,1033(1987)]、β−カゼイン[L.Hansson et al,Gene,139,193(1994)]、フィブロネクチン[A.Gutman et al,FEBS Lett.,207,145(1996)]、トロンボスポンジン1前駆体[V.Dixit et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,83,5449(1986)]、R.F.Doolittle,Ann.Rev.Biochem.,53,195(1984)。
−アンギオテンシンII:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe(E.C.Jorgensen et al,J.Med.Chem.,1979,Vol 22,9,1038−1044)及び[Sar,Ile]アンギオテンシンII:Sar−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Ile(R.K.Turker et al.,Science,1972,177,1203)のようなアンギオテンシンの基質又は阻害剤であるペプチド。
−アンギオテンシンI:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−His−Leu。
【0068】
BTMがペプチドである場合、ペプチドの一方又は両方の末端(好ましくは両方の末端)に代謝抑制基(MIG)がコンジュゲートされる。このようにして両方のペプチド末端を保護することは、インビボイメージング用途のために重要である。さもないと、急速な代謝の結果としてBTMペプチドに対する選択的結合親和性が失われると予想されるからである。「代謝抑制基(MIG)」という用語は、アミノ末端又はカルボキシ末端におけるBTMペプチドの酵素(特にカルボキシペプチダーゼのようなペプチダーゼ)代謝を阻止又は抑制する生体適合性基を意味する。かかる基はインビボ用途のために特に重要であって、これらは当業者にとって公知であり、好適にはペプチドアミン末端に関してはN−アシル化基−NH(C=O)RG(式中、アシル基−(C=O)RGはC1-6アルキル基及びC3-10アリール基から選択されるRGを有するか、或いはポリエチレングリコール(PEG)構成単位を含む。)から選択される。好適なPEG基は、リンカー基(L)に関して下記に記載される。好ましいかかるPEG基は、式Bio1又はBio2(下記)のバイオモディファイアーである。好ましいかかるアミノ末端MIG基はアセチル、ベンジルオキシカルボニル又はトリフルオロアセチルであり、最も好ましくはアセチルである。
【0069】
ペプチドカルボキシル末端に関して好適な代謝抑制基には、カルボキサミド、tert−ブチルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、アミノアルコール及びポリエチレングリコール(PEG)構成単位がある。BTMペプチドのカルボキシ末端アミノ酸残基にとって好適なMIG基は、アミノ酸残基の末端アミンをC1-4アルキル基(好ましくはメチル基)でN−アルキル化したものである。好ましいかかるMIG基はカルボキサミド又はPEGであり、最も好ましいかかる基はカルボキサミドである。
【0070】
いずれか一方又は両方のペプチド末端がMIG基で保護された場合、−(L)n[BzpM]部分はMIG基に任意に結合できる。好ましくは、少なくとも一方のペプチド末端はMIG基を有しておらず、その位置に−(L)n[BzpM]部分が結合することでそれぞれ下記式IVa又はIVbの化合物が得られる。
[BzpM]−(L)n−[BTM]−Z2 (IVa)
1−[BTM]−(L)n−[BzpM] (IVb)
式中、
1はBTMペプチドのN末端に結合していて、H又はMIGであり、
2はBTMペプチドのC末端に結合していて、OH、OBc(式中、Bcは(上記に定義したような)生体適合性陽イオンである。)又はMIGである。
【0071】
式IVa及びIVb中、Z1及びZ2は好ましくは共に独立にMIGである。Z1及びZ2にとって好ましいかかるMIG基は、ペプチド末端に関して上記に記載した通りである。いずれかのペプチド末端におけるBTMペプチドの代謝抑制はこのように−(L)n[BzpM]部分を結合することによっても達成できるが、−(L)n[BzpM]自体は本発明のMIGの定義範囲外にある。
【0072】
BTMペプチドは、任意には、BzpMの容易なコンジュゲーションのために適した側鎖を有しかつリンカー基(L)のA残基の一部をなす1以上の追加アミノ酸残基を含み得る。好適なかかるアミノ酸残基には、アミン官能化BzpM色素とのコンジュゲーションのためのAsp又はGlu残基、或いはカルボキシ官能化又は活性エステル官能化BzpM色素とのコンジュゲーションのためのLys残基がある。BzpMのコンジュゲーションのための追加アミノ酸残基は、好適にはBTMペプチドの結合領域から離れて位置しており、好ましくはC末端又はN末端に位置している。好ましくは、コンジュゲーションのためのアミノ酸残基はLys残基である。
【0073】
合成リンカー基(L)が存在する場合、それは好ましくは[BTM]及びBzpMへのコンジュゲーションを容易にする末端官能基を含む。好適なかかる基(Qa)を以下に記載する。Lが1〜10のアミノ酸残基を有するペプチド鎖からなる場合、アミノ酸残基は好ましくはグリシン、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びセリンから選択される。LがPEG部分からなる場合、それは好ましくは下記式Bio1又はBio2の単分散PEG様構造のオリゴマー化で導かれる単位を含む。
【0074】
【化14】

かかるPEG様構造は、式Bio1(式中、pは1〜10の整数である。)の17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸であり得る。別法として、式Bio2のプロピオン酸誘導体に基づくPEG様構造も使用できる。
【0075】
【化15】

式中、pは式Bio1に関して定義した通りであり、qは3〜15の整数である。式Bio2中、pは好ましくは1又は2であり、qは好ましくは5〜12である。
【0076】
リンカー基がPEG又はペプチド鎖からなってない場合、好ましいL基は、2〜10の原子、最も好ましくは2〜5の原子、特に好ましくは2又は3の原子を含む−(A)m−部分を構成する結合原子の主鎖を有している。2つの原子を含む最小リンカー基主鎖は、いかなる望ましくない相互作用も最小限に抑えられるようにBzpMを十分に引き離すという利点を与える。
【0077】
商業的に入手できないBTMペプチドは、P.Lloyd−Williams,F.Albericio and E.Girald;Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins,CRC Press,1997に記載されているような固相ペプチド合成法によって合成できる。
【0078】
イメージング剤は次のようにして製造できる。
【0079】
BTMに対するBzpMのコンジュゲーションを容易にするため、BzpMには好適には反応性官能基(Qa)が結合されている。Qa基は、BTMの相補的な官能基と反応することでBzpMとBTMとの間に共有結合を形成するように設計されている。BTMの相補的な官能基は、BTMの固有部分であってもよいし、或いは当技術分野で公知のように二官能性基での誘導体化の使用によって導入してもよい。表1は、反応基及びその相補的な対応基を示している。
【0080】
【表1】

「活性化エステル」又は「活性エステル」という用語は、良好な脱離基であり、したがってアミンのような求核性化合物との一層容易な反応を可能にするように設計されたカルボン酸のエステル誘導体を意味する。好適な活性エステルの例は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、p−ニトロフェノール及びヒドロキシベンゾトリアゾールである。好ましい活性エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミド又はペンタフルオロフェノールエステルである。
【0081】
タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物などのBTM中に存在する官能基の例には、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、カルボニル(アルデヒド及びケトンを含む)並びにチオホスフェートがある。好適なQa基は、カルボキシル、活性化エステル、イソチオシアネート、マレイミド、ハロアセトアミド、ヒドラジド、ビニルスルホン、ジクロロトリアジン及びホスホラミダイトから選択できる。好ましくは、Qaはカルボン酸の活性化エステル、イソチオシアネート、マレイミド又はハロアセトアミドである。
【0082】
相補基がアミン又はヒドロキシルである場合、Qaは好ましくは活性化エステルであり、好ましいかかるエステルは上記のに記載した通りである。BzpM上の好ましいかかる置換基は、5−カルボキシペンチル基の活性化エステルである。相補基がチオールである場合、Qaは好ましくはマレイミド又はヨードアセトアミドである。
【0083】
色素を生物学的分子にコンジュゲートするための一般的方法は、Licha他[Topics Curr.Chem.,222,1−29(2002);Adv.Drug Deliv.Rev.,57,1087−1108(2005)]によって記載されている。本発明で使用するためのペプチド、タンパク質及びオリゴヌクレオチド基質は、末端位置で標識することができ、或いは別法として1以上の内部位置で標識することができる。蛍光色素標識試薬を用いるタンパク質標識の総説及び例に関しては、“Non−Radioactive Labelling,a Practical Introduction”,Garman,A.J.,Academic Press,1997、及び“Bioconjugation − Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences”,Aslam,M.and Dent,A.,Macmillan Reference Ltd.(1998)を参照されたい。合成ペプチドにおいて部位特異的標識を達成するためのプロトコルが利用できる。例えば、Hermanson,G.T.,“Bioconjugate Techniques”,Academic Press(1996)を参照されたい。
【0084】
好ましくは、イメージング剤の製造方法は、
(i)BTMのアミン官能基を式J1−(L)n−[BzpM]の化合物と反応させるか、
(ii)BTMのカルボン酸又は活性化エステル官能基を式J2−(L)n−[BzpM]の化合物と反応させるか、或いは
(iii)BTMのチオール官能基を式J3−(L)n−[BzpM]の化合物と反応させる
ことを含んでいる。式中、
BTM、MIG、L、n及びBzpMは上記に定義した通りであり、
1はカルボン酸基、活性化エステル基、イソチオシアネート基又はチオシアネート基であり、
2はアミン基であり、
3はマレイミド基である。
【0085】
2は、好ましくは第一又は第二アミン基であり、最も好ましくは第一アミン基である。段階(iii)では、BTMのチオール基は好ましくはシステイン残基に由来する。
【0086】
段階(i)〜(iii)では、BTMはBzpM誘導体と反応する可能性がある他の官能基を任意に有し得るが、これらは所望の部位のみで化学反応が選択的に起こるように適当な保護基で保護される。「保護基」という用語は、望ましくない化学反応を阻止又は抑制するが、分子の残部を変質させない程度に温和な条件下で問題の官能基から脱離させ得るのに十分な反応性を有するように設計された基を意味する。脱保護後には所望の生成物が得られる。アミン保護基は当業者にとって公知であり、好適にはBoc(ここでBocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(ここでFmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]及びNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から適宜に選択される。好適なチオール保護基は、Trt(トリチル)、Acm(アセトアミドメチル)、t−Bu(tert−ブチル)、tert−ブチルチオ、メトキシベンジル、メチルベンジル及びNpys(3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)である。さらに他の保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(John Wiley & Sons,1991)に記載されている。好ましいアミン保護基はBoc及びFmocであり、最も好ましくはBocである。好ましいチオール保護基はTrt及びAcmである。
【0087】
BTMへのコンジュゲーションに適するように官能化されたベンゾピリリウム色素(BzpM)は、Dyomics社(Dyomics GmbH、Winzerlaer Str.2A、D−07745 Jene、ドイツ、www.dyomics.com)から商業的に入手できる。この場合、反応性官能基(Qa)はNHSエステル、マレイミド、アミノ又はカルボン酸である。ベンゾピリリウム色素の合成のために適した前駆体は、米国特許第5405976号に記載されたようにして製造することもできる。光学レポーター色素をアミノ酸及びペプチドにコンジュゲートする方法は、Licha(上記参照)並びにFlanagan他[Bioconj.Chem.,,751−756(1997)]、Lin他[ibid,13,605−610(2002)]及びZaheer[Mol.Imaging,(4),354−364(2002)]によって記載されている。リンカー基(L)をBTMにコンジュゲートする方法は、色素のみをコンジュゲートする方法(上記参照)と類似の化学作用を使用し、当技術分野で公知である。
【0088】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の医薬品組成物を製造するためのキットであって、当該キットは式1のコンジュゲートを無菌固体形態で含んでおり、生体適合性キャリヤーの無菌供給物で再構成すれば溶解が起こって所望の医薬品組成物が得られるキットを提供する。「コンジュゲート」及び「生体適合性キャリヤー」並びにこれらの好ましい実施形態は、第1の態様に関して記載した通りである。
【0089】
キットに関しては、コンジュゲート及び上述したような他の任意賦形剤は、凍結乾燥粉末として適当なバイアル又は容器に入れて供給できる。かかる粉末は、次いで所望の生体適合性キャリヤーを用いて再構成することで、哺乳類への投与が可能な無菌で非発熱性の形態の医薬品組成物を与えるように設計されている。
【0090】
コンジュゲートの好ましい無菌固体形態は凍結乾燥固体である。無菌固体形態は、好ましくは医薬品組成物に関して(上記に)記載したような医薬品用容器に入れて供給される。キットを凍結乾燥する場合、配合物は糖類(好ましくはマンニトール、マルトース及びトリシン)から選択される凍結保護剤を任意に含むことができる。
【0091】
第3の態様では、本発明は下記式Iのコンジュゲートを提供する。
[BTM’]−(L)n−BzpM
(I)
式中、L及びnは第1の態様に関して定義した通りであり、BzpMは上記に定義した式IIを有し、BTM’は第1の態様に関して定義したBTMであると共に、合成品であり、
(i)3〜100量体ペプチド、
(ii)酵素基質、酵素拮抗剤又は酵素阻害剤、
(iii)レセプター結合化合物、
(iv)オリゴヌクレオチド、及び
(v)オリゴDNAフラグメント又はオリゴRNAフラグメント
から選択される。
【0092】
「合成品」という用語は上記に示した定義を有する。コンジュゲート中の式IIのBzpMの好ましい実施形態は、第1の態様に関して上記に記載した通りである。(i)〜(v)のBTM’の好ましい態様は、これらのタイプのBTMに関して第1の態様で記載した通りである。BTM’は好ましくは3〜100量体ペプチドである。
【0093】
第3の態様のコンジュゲートは、本発明のイメージング剤医薬品組成物の製造に際して有用である。かかるコンジュゲートは第1の態様に記載したようにして製造できる。
【0094】
第4の態様では、本発明は、哺乳類の身体のインビボ光学イメージング方法であって、第1の態様の医薬品組成物を用いてインビボでBTM局在部位の画像を得ることを含んでなる方法を提供する。
【0095】
「光学イメージング」という用語は、第1の態様に関して(上記に)定義した通りである。
【0096】
第4の態様の方法では、イメージング剤医薬品組成物は好ましくは前記哺乳類の身体に予め投与されている。「予め投与されている」とは、臨床医の関与の下でイメージング剤を例えば静脈内注射によって患者に投与する段階がイメージングに先立って既に実施されていることを意味する。この実施形態は、BTMが関係している哺乳類の身体の疾患状態のインビボ光学イメージング用の診断剤を製造するために、第1の態様で定義したコンジュゲートを使用することを含んでいる。
【0097】
第4の態様の好ましい光学イメージング方法は、蛍光反射イメージング(FRI)である。FRIでは、本発明のイメージング剤を診断すべき被験体に投与し、次いで被験体の組織表面を励起光(通常は連続波(CW)励起)で照明する。光はイメージング剤のBzpM色素を励起する。励起光によって生じるイメージング剤からの蛍光を、蛍光検出器を用いて検出する。好ましくは、戻る光を濾光することで蛍光成分を(単独に又は部分的に)分離する。蛍光から画像を形成する。通常、最小限の処理が実施され(寿命、量子収量などの光学パラメーターを計算するためのプロセッサーは使用されない)、画像は蛍光強度をマップする。イメージング剤は、疾患領域に集中して高い蛍光強度を生み出すように設計されている。したがって、疾患領域は蛍光強度画像中に正のコントラストを生み出す。画像は好ましくはCCDカメラ又はチップを用いて取得される結果、リアルタイムイメージングが可能である。
【0098】
励起用の波長は使用する特定のBzpM色素に応じて変化するが、本発明の色素に関しては通例500〜1200nmの範囲内にある。励起光を発生するための装置は、レーザー(例えば、イオンレーザー、色素レーザー又は半導体レーザー)、ハロゲン光源或いはキセノン光源のような通常の励起光源であり得る。任意には、各種の光学フィルターを用いて最適の励起波長を得ることができる。好ましいFRI方法は下記の段階を含んでいる。即ち、
(i)哺乳類の身体内の検査対象組織表面を励起光で照明する段階、
(ii)BzpMの励起によって生じるイメージング剤からの蛍光を蛍光検出器を用いて検出する段階、
(iii)蛍光検出器によって検出された光を任意に濾光して蛍光成分を分離する段階、及び
(iv)段階(ii)又は(iii)の蛍光から前記検査対象組織表面の画像を形成する段階
を含んでいる。段階(i)では、励起光は好ましくは連続波(CW)の性質を有する。段階(iii)では、検出される光は好ましくは濾光される。特に好ましいFRI方法は蛍光内視鏡検査である。
【0099】
第6の態様の別のイメージング方法は、FDPM(周波数ドメイン光子移動)を使用する。これは、組織内における色素の検出深度が大きいことが重要である場合、連続波(CW)方法に比べて利点を有する[Sevick−Muraca et al,Curr.Opin.Chem.Biol.,,642−650(2002)]。かかる周波数/時間ドメインイメージングのためには、BzpMが、画像化すべき病変の組織深度及び使用する計装のタイプに応じて変調できる蛍光特性を有するならば有利である。
【0100】
FDPM方法は下記のようなものである。即ち、
(a)不均質組成を有する前記哺乳類の身体の光散乱性生体組織を、所定の経時変動強度を有する光源からの光に暴露してイメージング剤を励起する段階であって、組織は励起光を多重散乱させる段階、
(b)前記暴露に応答した組織からの多重散乱発光を検出する段階、
(c)組織内の様々な位置における蛍光特性のレベルにそれぞれ対応する複数の値をプロセッサーで確定することにより、発光から組織全体の蛍光特性を定量化する段階であって、蛍光特性のレベルは組織の不均質組成に応じて変化する段階、及び
(d)段階(c)の値に従って組織の不均質組成のマッピングを行うことで組織の画像を生成する段階
を含んでいる。
【0101】
段階(c)の蛍光特性は、好ましくはイメージング剤の取込みに対応し、好ましくはさらにイメージング剤の投与前における組織の吸着係数及び散乱係数に対応する複数の量のマッピングを含んでいる。段階(c)の蛍光特性は、好ましくは蛍光寿命、蛍光量子効率、蛍光収量及びイメージング剤取込みの1以上に対応する。蛍光特性は、好ましくは発光強度に無関係であり、またイメージング剤濃度に無関係である。
【0102】
段階(c)の定量化は、好ましくは、(i)値の推定値を設定し、(ii)推定値の関数として計算発光を求め、(iii)計算発光を前記検出段階の発光と比較して誤差を求め、(iv)誤差の関数として蛍光特性の修正推定値を得ることを含んでいる。定量化は、好ましくは、組織の多重光散乱挙動をモデル化する数学的関係から値を求めることを含んでいる。第1のオプションの方法は、好ましくはさらに、前記蛍光特性の変動を検出することでインビボでの組織の代謝特性をモニターすることを含んでいる。
【0103】
第4の態様の光学イメージングは、好ましくは哺乳類の身体の疾患状態の管理を支援するために使用される。「管理」という用語は、検出、ステージング、診断、疾患進行のモニタリング又は治療のモニタリングでの使用を意味する。疾患状態は、好適にはイメージング剤のBTMが関係するものである。イメージング用途には、好ましくは、カメラに基づく表面イメージング、内視鏡検査及び外科的誘導がある。好適な光学イメージング方法のさらなる詳細は、Sevick−Muraca他[Curr.Opin.Chem.Biol.,,642−650(2002)]によって総説されている。
【0104】
第5の態様では、本発明は、哺乳類の身体の疾患状態の検出、ステージング、診断、疾患進行のモニタリング又は治療のモニタリングを行う方法であって、第4の態様のインビボ光学イメージング方法を含んでなる方法を提供する。
【実施例】
【0105】
以下に詳述する非限定的な実施例によって本発明を例証する。実施例1は、cMetに対して結合する生物学的標的化ペプチド(ペプチド1)の合成法を示している。実施例2は、本発明のBzpM色素をペプチド(特にペプチド1)にコンジュゲートする方法を示している。実施例3は、本発明のペプチド1のペプチドコンジュゲートがcMetに対する親和性を保有すること(即ち、コンジュゲートした色素が生物学的結合及び選択性を妨害しないこと)を実証するデータを示している。ヒト血清アルブミンに対する適度に低い結合及び血漿中での高い安定性が実証された。実施例4は、本発明のペプチドコンジュゲートが結腸直腸癌の動物モデルにおいて有用な腫瘍/バックグラウンド比を示すことを示している。実施例5は本発明の色素に関する予測ソフトウェアの使用を記載しており、本発明の色素がインビボで潜在的に危険な代謝産物を生じないことを実証している。実施例6は化合物6の毒性試験を記載しており、予想される臨床用量がいかなる薬物関連の副作用も生じることなく十分に許容されることを示している。
【0106】
【表2】

DY−752はDY−652と同じ環及び置換基パターンを有するが、DY−652のトリメチン結合の代わりにペンタメチン結合(即ち、w=2及びR5=H)を有している。
【0107】
略語
通常の三文字及び一文字アミノ酸略語を使用する。
Acm: アセトアミドメチル
ACN: アセトニトリル
Boc: tert−ブチルオキシカルボニル
DMF: N,N’−ジメチルホルムアミド
DMSO: ジメチルスルホキシド
Fmoc: 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HCl: 塩酸
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
HSPyU: O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチレン ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
Ile: イソロイシン
LC−MS: 液体クロマトグラフィー質量分析法
TFA: トリフルオロ酢酸
NHS: N−ヒドロキシスクシンイミド
NMM: N−メチルモルホリン
NMP: 1−メチル−2−ピロリジノン
Pbf: 2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホ ニル
PBS: リン酸塩緩衝食塩水
tBu: t−ブチル
TFA: トリフルオロ酢酸
Trt: トリチル
TSTU: O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウ ロニウムテトラフルオロボレート
実施例1:ペプチド1の合成
下記の配列を有しかつ2つのCys−Cys結合(Cys4−16及びCys6−14)を有する26量体二環式ペプチドを使用した。
Ac−Ala−Gly−Ser−Cys−Tyr−Cys−Ser−Gly−Pro−
Pro−Arg−Phe−Glu−Cys−Trp−Cys−Tyr−Glu−Thr−
Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys−NH2(「ペプチド1」)。
【0108】
【化16】

段階(a):ペプチド1の保護線状前駆体の合成
前駆体線状ペプチドは下記の配列を有している。
Ac−Ala−Gly−Ser−Cys−Tyr−Cys(Acm)−Ser−Gly−
Pro−Pro−Arg−Phe−Glu−Cys(Acm)−Trp−Cys−
Tyr−Glu−Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys−
NH2
【0109】
0.1mmolのRink Amide Novagel樹脂から出発するFmoc化学を用いて、Applied Biosystems 433Aペプチド合成機上でペプチジル樹脂H−Ala−Gly−Ser(tBu)−Cys(Trt)−Tyr(tBu)−Cys(Acm)−Ser(tBu)−Gly−Pro−Pro−Arg(Pbf)−Phe−Glu(OtBu)−Cys(Acm)−Trp(Boc)−Cys(Trt)−Tyr(tBu)−Glu(OtBu)−Thr(ψMe,Mepro)−Glu(OtBu)−Gly−Thr(tBu)−Gly−Gly−Gly−Lys(Boc)−ポリマーをアセンブルした。カップリング段階では、(HBTUを用いて)予備活性化した過剰量の1mmolアミノ酸を適用した。Glu−Thrプソイドプロリン(Novabiochem 05−20−1122)を配列中に組み込んだ。樹脂を窒素バブラー装置に移し、無水酢酸(1mmol)及びNMM(1mmol)をDCM(5mL)に溶解した溶液で60分間処理した。濾過によって無水物溶液を除去し、樹脂をDCMで洗浄してから窒素流下で乾燥した。
【0110】
2.5%のTIS、2.5%の4−チオクレゾール及び2.5%の水を含むTFA(10mL)中で、側鎖保護基の除去及び樹脂からのペプチド切断を2時間30分にわたり同時に実施した。樹脂を濾過によって取り除き、TFAを真空中で除去し、残留物にジエチルエーテルを添加した。生じた沈殿をジエチルエーテルで洗浄し、空気乾燥することで、264mgの粗ペプチドを得た。
【0111】
粗ペプチドを分取HPLC(勾配:40分で20〜30%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:30分)によって精製することで、純粋なペプチド1の線状前駆体100mgを得た。純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:6.54分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1464.6、MH22+実測値:1465.1)。
【0112】
段階(b):Cys4−16ジスルフィドブリッジの形成
Cys4−16;Ac−Ala−Gly−Ser−Cys−Tyr−Cys(Acm)−Ser−Gly−Pro−Pro−Arg−Phe−Glu−Cys(Acm)−Trp−Cys−Tyr−Glu−Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys−NH2
【0113】
段階(a)からの線状前駆体(100mg)を5%DMSO/水(200mL)に溶解し、アンモニアを用いて溶液をpH6に調整した。反応混合物を5日間撹拌した。次いで、TFAを用いて溶液をpH2に調整し、大部分の溶媒を真空中での蒸発によって除去した。生成物の精製のため、残留物(40mL)を分取HPLCカラム上に少しずつ注入した。
【0114】
残留物を分取HPLC(勾配:0%Bを10分間、次いで40分で0〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:44分)によって精製することで、純粋なペプチド1の単環式前駆体72mgを得た。
【0115】
(異性体P1乃至P3の混合物としての)純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:5.37分(P1)、5.61分(P2)、6.05分(P3))によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1463.6、MH22+実測値:1464.1(P1)、1464.4(P2)、1464.3(P3))。
【0116】
段階(c):Cys6−14ジスルフィドブリッジの形成(ペプチド1)
段階(b)からの単環式前駆体(72mg)を窒素ブランケット下で75%AcOH/水(72mL)に溶解した。1M HCl(7.2mL)及びAcOH中の0.05M I2(4.8mL)をその順序で添加し、混合物を45分間撹拌した。1Mアスコルビン酸(1mL)を添加して無色の混合物を得た。大部分の溶媒を真空中で蒸発させ、残留物(18mL)を水/0.1%TFA(4mL)で希釈し、分取HPLCを用いて生成物を精製した。残留物を分取HPLC(勾配:0%Bを10分間、次いで40分で20〜30%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:43〜53分)によって精製することで、52mgの純粋なペプチド1を得た。純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:6.54分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1391.5、MH22+実測値:1392.5)。
【0117】
実施例2:ベンゾピリリウム色素のペプチドコンジュゲートの合成
一般コンジュゲーション方法
実施例1からのペプチド1(4mg、1.4μmol)のDMF(0.5mL)溶液に、BzpM NHSエステル(1mg、1μmol)及びsym−コリジン(8μL、60μmol)のDMF(0.5mL)溶液を添加した。反応混合物を(マイクロ波支援により)60℃で1時間加熱し、次いでRTで一晩放置した。次いで、反応混合物を20%ACN/水/0.1%TFA(7mL)で希釈し、分取HPLCを用いて生成物を精製した。
【0118】
精製及び特性決定
粗ペプチドを分取HPLC(勾配:40分で20〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.2mm、検出:UV214nm)によって精製することで、純粋な[ペプチド1]−BzpMコンジュゲートを得た。純生成物を分析HPLC(勾配:5分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.6mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 20×2mm、検出:UV214nm)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した。
【0119】
製造した化合物を表3に示す。
【0120】
【表3】

実施例3:インビトロ蛍光偏光アッセイ
蛍光偏光アッセイを用いて、cMet標的に対するイメージング剤の結合親和性並びに血漿タンパク質に関する結合特性を検査した。蛍光偏光法の原理を簡単に述べれば、以下の通りである。
【0121】
単色光が水平偏光フィルターを通過し、試料中の蛍光分子を励起する。垂直偏光面内に正しく配向した分子のみが光を吸収し、励起され、次いで光を放出する。放出された光を水平面内及び垂直面内で測定する。異方性値(A)は、下記の式に従った光強度の比である。
【0122】
【数1】

蛍光異方性測定は、Ex635/Em678nmでTecan Safire蛍光偏光プレートリーダー(Tecan社、米国)を使用しながら、384ウェルマイクロプレート中において結合緩衝液(PBS、0.01%Tween−20、pH7.5)中10μLの体積で実施した。色素標識ペプチドの濃度を一定(5nM)に保つと共に、ヒトcMet/Fcキメラ(R&D Systems社)の濃度を0〜250nMの範囲内で変化させた。結合混合物をマイクロプレート中において30℃で10分間平衡させた。観察された異方性の変化を下記の式に当てはめた。
【0123】
【数2】

式中、robsは観察された異方性であり、rfreeは遊離ペプチドの異方性であり、rboundは結合ペプチドの異方性であり、KDは解離定数であり、cMetは総cMet濃度であり、Pは総色素標識ペプチド濃度である。この式は、合成ペプチド及びレセプターが溶液中において1:1の化学量論比で可逆複合体を形成することを仮定している。SigmaPlotソフトウェアを用いて非線形回帰によりデータ当てはめを行うことでKD値(一部位結合)を得た。
【0124】
ヒトcMet(Fcキメラ)に対する結合に関して化合物1乃至化合物6を試験した。結果(表4参照)は、ヒトcMetに対するすべての試験化合物の結合に関するnM単位のKDを示している。
【0125】
偏光値の変化が小さいことはインビボ用途に適した低い結合性に関連しているので、偏光値の変化を用いてヒト血清アルブミンに対する化合物の結合度を評価した。血漿タンパク質結合度(PPB)はBiacore測定によって確認した。血漿中でのイメージング剤の安定性は、マウス血漿中において37℃で2時間インキュベートした後に残留する化合物の量を測定することで確認した。
【0126】
【表4】

実施例4:化合物2〜6のインビボ試験
(a)動物モデル
この試験では雌のBALB c/Aヌード(Bom)マウスを使用した。動物の使用は地方倫理委員会によって承認された。BALB c/Aヌードは、他のヌードマウス系統に比べてヒト腫瘍に対し高い生着率を有する、同系交配された免疫無防備状態のマウス系統である。マウスは到着時に8週齢であり、試験の開始時には約20グラムの体重を有していた。動物は、HEPA濾過空気を備えた個別換気ケージ(IVC、Scanbur BK社)内に収容した。動物は、“Rat and Mouse nr.3 Breeding”飼料(Scanbur BK社)及び1mMのモル濃度にHClを添加して酸性化した水道水(pH3.0)に随意にアクセスできた。
【0127】
結腸癌細胞HT−29はヒト結腸癌腫から導かれ、Zeng他[Clin.Exp.Metastasis,21,409−417(2004)]によればcMetを発現することが報告されている。この細胞株は、ヌードマウスに皮下接種した場合に腫瘍を形成することが判明した[Flatmark et al,Eur.J.Cancer,40,1593−1598(2004)]。
【0128】
10%ウシ胎児血清及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したMcCoy’s 5a培地(Sigma #M8403)中でHT−29細胞を増殖させた。継代数4(P4)で保存株を作成し、5%DMSOを含むそれぞれの培地中における107細胞/バイアルの量を液体窒素中で凍結して貯蔵した。移植当日、細胞を37℃の水浴中で急速に解凍し(約2分間)、洗浄し、PBS/2%血清中に再懸濁した(1200rpmで10分間の遠心)。投与用注射器中に細胞を吸引する際には、常にバイアル内の細胞を完全に混合してから行った。ファインボア注射針(25G)を用いて0.1mlの量の細胞懸濁液を肩及び背中に皮下注射した。次いで、動物をケージに戻し、腫瘍を13〜17日間増殖させた。動物には、5日以上の順化期間を置いてから接種処置を施した。
【0129】
(b)処置
すべての試験物質は、凍結乾燥粉末からPBSを用いて再構成した。白色プリンター用紙の小さな堆積物をイメージ化してフラットフィールド画像を得、これを用いて照明の不均一性を補正した。光学イメージング処置中の不動化のため、酸素をキャリヤーガスとするイソフルラン(通例1.3〜2%)により、動物を同軸オープンマスク内で軽い外科レベル麻酔に麻酔した。動物を麻酔している間に、外科用鉗子及び微小はさみを用いて腫瘍及び隣接する筋肉の部分から小さい皮膚片(3〜5mm)を取り除いた。これは、上方に位置する皮膚組織の妨害なしに腫瘍及び筋肉からの信号を測定するために行った。創傷は、液状の非蛍光性スプレー包帯(3M社、米国ミネソタ州)を適用することで覆った。
【0130】
動物下方の空気圧センサー及び直腸温度プローブを用いるBioVetシステム(m2m Imaging Corp.,米国ニュージャージー州)によって動物の呼吸及び体温をモニターした。BioVetシステムはまた、イメージング処置期間(2時間)中に正常体温を維持するため、加熱マットセットを用いて40℃に外部加熱することを可能にした。造影剤投与のため、尾静脈中にVenflonカテーテルを配置した。各動物に1回の造影剤注射を施した。注射量は0.1mlの試験化合物であり、その直後に0.2mlの食塩水フラッシュを行った。注射の直前に蛍光画像を取得し、次いで2時間にわたり30秒ごとに取得した。
【0131】
(c)イメージング
イメージングは、光源を用いてレポーターを励起しかつ濾光系を用いて蛍光成分を抽出するように改造した臨床用腹腔鏡を通して実施した。レポーター分子の励起のためには635nmレーザーを使用した。検出器としてはHamamatsu ORCA ERG CCDカメラを使用した。カメラは利得0の2×2ビンニングモードで動作させた。結腸イメージング用の標準露光時間は4秒であった。画像中の強度分布は、システム較正データにより、照明の不均一性について補正した。露出腫瘍及び正常筋肉バックグラウンドの上方に位置する検査対象領域から標的/バックグラウンド比を計算した。
【0132】
(d)結果
試験化合物は、下記の平均腫瘍:筋肉比を有していた(表5)。
【0133】
【表5】

実施例5:代謝及び毒性予測
Lhasa Ltd(22−23 Blenheim Terrace,Leeds LS2 9HD,英国)からソフトウェアツールDerek及びMeteorを入手した。Derekは、既知の構造依存毒性に基づいて新しい化学的実在物の毒性を予測するために使用される。同様に、Meteorは新規化学物質から生じ得る代謝産物を予測する。両ツールは、化合物に関する公表データ及び未公表(だが確認済みの)データに基づいている。色素DY−652の化学構造を入力した。インビボでの潜在的に危険な代謝産物は予測されなかった。
【0134】
実施例6:化合物6の毒性試験
前臨床イメージング用量(50nmol/kg体重)の100倍での化合物6の許容性を調べるため、限定急性用量毒性試験を行った。
【0135】
雄ラットに化合物を静脈内注射し、注射後(p.i.)1日目、14日目、21日目及び28日目に屠殺した。検死時に、主要器官の肉眼的病理状態を検査し、以後の組織形態学的評価のために腎臓を中性緩衝ホルマリン中に採取した。注射直後には皮膚の弱い青色着色及び尿の中等度の青色着色が認められたが、注射後1日以内に消失した。検死時には、腎臓は注射後1日目で全般的に緑色であった。光学顕微鏡検査によれば、腎臓には化合物6に関連する所見は見られなかった。見られた他の小変化は偶発的なものであり、若い実験用ラット成体では普通のものであった。腎臓における血管の強い蛍光染色が注射後1日目に認められた。染色は注射後14日目までに減少し、注射後21日目には対照と識別できなかった。
【0136】
いずれの処理動物でも変性、壊死又は炎症の形跡は認められず、これは化合物の腎毒性が低いことを示唆している。予想される臨床用量の100倍で雄ラットに化合物6を1回だけ静脈内投与することは、いかなる薬物関連の副作用も生じることなく十分に許容されるという結論が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の身体のインビボ光学イメージングのために適したイメージング剤を生体適合性キャリヤーと共に含んでなる、哺乳類への投与に適した形態の医薬品組成物であって、前記イメージング剤が下記式Iのコンジュゲートを含んでいる医薬品組成物。
[BTM]−(L)n−BzpM
(I)
(式中、
BTMは生物学的標的化部分であり、
nは0又は1の値を有する整数であり、
Lは式−(A)m−(式中、mは1〜20の値を有する整数であり、各Aは独立に−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基又はC3-12ヘテロアリーレン基、或いはアミノ酸、糖又は単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成単位であり、各Rは独立にH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシアルキル及びC1-4ヒドロキシアルキルから選択される。)の合成リンカー基であり、
BzpMは下記式IIのベンゾピリリウム色素である。
【化1】

(式中、
1は下記式Ya又はYbの基であり、
【化2】

1〜R4及びR9〜R13はH、−SO31(式中、各M1は独立にH又はBcであり、Bcは生体適合性陽イオンである。)、Hal、Ra及びC3-12アリールから独立に選択され、
5はH、C1-4アルキル、C1-6カルボキシアルキル、C3-12アリールスルホニル又はClであり、或いは任意にはR6、R14、R15又はR16の1つと共に五員又は六員の不飽和脂肪族環、不飽和ヘテロ脂肪族環又は芳香環を形成でき、
6及びR16は独立にRa基であり、
7及びR8は独立にC1-4アルキル、C1-4スルホアルキル又はC1-6ヒドロキシアルキルであり、或いは任意にはR9及び/又はR10の一方又は両方と共に五員又は六員のN含有複素環又はヘテロアリール環を形成でき、
Xは−CR1415−、−O−、−S−、−Se−、−NR16−又は−CH=CH−(式中、R14〜R16は独立にRa基である。)であり、
aはC1-4アルキル、C1-4スルホアルキル、C1-6カルボキシアルキル又はC1-6ヒドロキシアルキルであり、
wは1又は2であり、
Jは生体適合性陰イオンであり、
BzpMはR1〜R16基から選択される1以上のスルホン酸置換基を含むことを条件とする。))
【請求項2】
BzpMが下記式IIaを有する、請求項1記載の組成物。
【化3】

【請求項3】
BzpMが下記式IIbを有する、請求項1記載の組成物。
【化4】

【請求項4】
BzpMが2〜4のスルホン酸置換基を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
BzpMが1以上のC1-4スルホアルキル置換基を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
スルホアルキル置換基が式−(CH2k−SO31(式中、M1は独立にH又はBcであり、kは1〜4の値を有する整数である。)を有する、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
wが1である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
5がHである、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
Xが−CR1415−である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
BzpMが下記式IIIを有する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の組成物。
【化5】

(式中、Y1、R1〜R4、R6、R14、R15及びJは請求項1に定義した通りである。)
【請求項11】
下記式IIIc、IIId又はIIIeを有する、請求項1記載の組成物。
【化6】

(式中、
1は請求項1に定義した通りであり、
17及びR18は独立にC1-4アルキル及びC1-4スルホアルキルから選択され、
19はH又はC1-4アルキルであり、
20はC1-4アルキル、C1-4スルホアルキル又はC1-6カルボキシアルキルであり、
21はC1-4スルホアルキル又はC1-6カルボキシアルキルであり、
22はC1-4アルキル、C1-4スルホアルキル又はC1-6カルボキシアルキルであり、
2、X3及びX4は独立にH又はC1-4アルキルである。)
【請求項12】
BTMが
(i)3〜100量体ペプチド、
(ii)酵素基質、酵素拮抗剤又は酵素阻害剤、
(iii)レセプター結合化合物、
(iv)オリゴヌクレオチド、及び
(v)オリゴDNAフラグメント又はオリゴRNAフラグメント
から選択される、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
BTMが3〜100量体ペプチドである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
下記式IVa又はIVbを有する、請求項13記載の組成物。
[BzpM]−(L)n−[BTM]−Z2 (IVa)
1−[BTM]−(L)n−[BzpM] (IVb)
(式中、
1はBTMペプチドのN末端に結合していて、H又はMIGであり、
2はBTMペプチドのC末端に結合していて、OH、OBc(式中、Bcは請求項1に定義した通りである。)又はMIGであり、
IGは、生体適合性基である代謝抑制基であって、BTMペプチドの酵素代謝を阻止又は抑制する基である。)
【請求項15】
1及びZ2の各々が独立にMIGである、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
1人の患者用に適した用量を有し、適当な注射器又は容器に入れて供給される、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の医薬品組成物を製造するためのキットであって、当該キットは請求項1乃至請求項15に記載された式Iのコンジュゲートを無菌固体形態で含んでいて、生体適合性キャリヤーの無菌供給物で再構成すれば溶解が起こって所望の医薬品組成物が得られる、キット。
【請求項18】
無菌固体形態が凍結乾燥固体である、請求項17記載のキット。
【請求項19】
下記式Iのコンジュゲート。
[BTM’]−(L)n−BzpM
(I)
(式中、L及びnは請求項1に定義した通りであり、BzpMは請求項1〜請求項11のいずれか1項に定義した通りであり、BTM’は請求項12又は請求項13に定義したBTMであると共に合成品である。)
【請求項20】
哺乳類の身体のインビボ光学イメージング方法であって、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の医薬品組成物を用いてインビボでBTMの局在部位の画像を得る段階を含んでなる方法。
【請求項21】
医薬品組成物が前記哺乳類の身体に予め投与されている、請求項20記載の方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法であって、
(i)哺乳類の身体内の検査対象組織表面を励起光で照明する段階、
(ii)BzpMの励起によって生じるイメージング剤からの蛍光を蛍光検出器を用いて検出する段階、
(iii)蛍光検出器によって検出された光を任意に濾光して蛍光成分を分離する段階、及び
(iv)段階(ii)又は(iii)の蛍光から前記検査対象組織表面の画像を形成する段階
を含んでなる方法。
【請求項23】
段階(i)の励起光が連続波(CW)の性質を有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項21記載の方法であって、
(a)不均質組成を有する前記哺乳類の身体の光散乱性生体組織を、所定の経時変動強度を有する光源からの光に暴露してイメージング剤を励起する段階であって、組織が励起光を多重散乱させる段階、
(b)前記暴露に応答した組織からの多重散乱発光を検出する段階、
(c)組織内の様々な位置における蛍光特性のレベルにそれぞれ対応する複数の値をプロセッサーで確定することにより、発光から組織全体の蛍光特性を定量化する段階であって、蛍光特性のレベルが組織の不均質組成に応じて変化する段階、及び
(d)段階(c)の値に従って組織の不均質組成のマッピングを行うことで組織の画像を生成する段階
を含んでなる方法。
【請求項25】
光学イメージング方法が蛍光内視鏡検査からなる、請求項20乃至請求項24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
インビボ光学イメージングが、哺乳類の身体の疾患状態の検出、ステージング、診断、疾患進行のモニタリング又は治療のモニタリングを支援するために使用される、請求項20乃至請求項25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
哺乳類の身体の疾患状態の検出、ステージング、診断、疾患進行のモニタリング又は治療のモニタリングを行う方法であって、請求項20乃至請求項26のいずれか1項記載のインビボ光学イメージング方法を含んでなる方法。

【公表番号】特表2010−534712(P2010−534712A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518652(P2010−518652)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059942
【国際公開番号】WO2009/016181
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】