光学シート、及び表示装置
【課題】画面内における色彩ムラ抑制し、色合い適切なものとすることが可能な光学シート、及び表示装置を提供する。
【解決手段】映像光源2より観察者側に配置され、該映像光源から出射された光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シート10、20、30、40、50であって、映像光源からの映像光の色彩を観察者にとって適切に色彩補正する色調補正層18と、光を透過可能にシート面に沿って並列されるプリズム部12、12、…、32、32、…、及びプリズム部間に具備され、色調補正層の色彩と補色の関係にある着色剤を含有する楔形部13、13、…、33、33、…を有する光学機能シート層11とを備える。
【解決手段】映像光源2より観察者側に配置され、該映像光源から出射された光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シート10、20、30、40、50であって、映像光源からの映像光の色彩を観察者にとって適切に色彩補正する色調補正層18と、光を透過可能にシート面に沿って並列されるプリズム部12、12、…、32、32、…、及びプリズム部間に具備され、色調補正層の色彩と補色の関係にある着色剤を含有する楔形部13、13、…、33、33、…を有する光学機能シート層11とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像光源より観察者側に配置されて映像光や外光を適切に制御することができる光学シート及び表示装置に関し、詳しくは、画面内おける色彩ムラの低減や色合いの適正化をすることのできる光学シート及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と記載することがある。)を用いたテレビ等の表示装置では、PDPよりも観察者側に光学シートが配置されている。この光学シートは、観察者により質の高い映像を提供する役割を有する。そのため該光学シートには、各種機能を有する層が積層される。その中の1つに映像光の色彩を補正するための層がある。これは、PDPから出射した映像光には、赤外線やNe(ネオン)線、又は光源の性質等による不要な色彩(波長)の光が含まれることがあり、これを除去して観察者に適切な色合いの映像を提供するものである。色調補正層と呼ばれることがある。
【0003】
このような色調補正層の使用は例えば特許文献1等に開示されている。このような層をPDP用の色調補正層として用いることができる。
【特許文献1】特表2006−514339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような色調補正層を用いた場合において、画面を正面から見たときには目的とする色調補正がおこなわれるが、例えば当該色調補正層を斜めに透過する映像光は、色彩の補正が過剰になる場合があった。すなわちこのように斜めに透過する映像光は通常よりも長い距離色調補正層内を透過するので、その分色調補正層の影響を多く受け過ぎるものである。このように斜めに透過する光が観察者に届く場合の例として、画面の上下位置から観察者に向けて出射される映像光を挙げることができる。これにより画面内において色彩ムラを発生することがある。特に近年における大画面化によりその傾向も大きなものとなっている。
【0005】
また、映像光に限らず、画面の非点灯時又は黒の映像出射時において、画面に入射した外光が反射して観察者に出射される場面では、画面が全体として色調補正層に影響された色味を帯びてしまうことがあった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、画面内における色彩ムラ抑制し、色合い適切なものとすることが可能な光学シート、及び表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
請求項1に記載の発明は、映像光源(2)より観察者側に配置され、該映像光源から出射された光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シート(10、20、30、40、50)であって、映像光源からの映像光の色彩を観察者にとって適切になるように色彩を補正する色調補正層(18)と、光を透過可能にシート面に沿って並列されるプリズム部(12、12、…、32、32、…、42、42、…)、及びプリズム部間に具備され、色調補正層の色彩と補色の関係にある着色剤を含有する楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)を有する光学機能シート層(11、31、41)と、を備える光学シートにより前記課題を解決する。
【0009】
ここで、「補色」とは、通常の補色と同じであり、補色関係にある2色により無彩色になる関係をいう。また、「着色剤」とは楔形部を着色するために該楔形部に含有される媒体を意味し、染料や顔料を挙げることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学シート(10、20、30、40、50)における着色剤が顔料又は染料であることを特徴とする。
【0011】
ここで、「顔料」、「染料」は上記のように着色剤の一種であり、特に「顔料」は、色彩を有するが水や溶剤に溶けない微粉末を意味する。また「染料」は色彩を有する有機化合物で水や溶媒に溶ける性質を有するものを意味する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学シート(40)における楔形部(43、43、…)には平均粒径が1μm以上の粒子が含有され、該粒子に着色剤が含まれていることを特徴とする。
【0013】
ここで「平均粒径が1μm以上」であることにおける「平均粒径が1μm」とは、重量分布法による粒度測定で、粒径が0.5μm以上で、1.5μmより小さい粒子を対象とし、粒度分布において標準偏差が0.3以上であることを意味する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、30、40、50)において、楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)はさらに光を吸収可能に形成されていることを特徴とする。
【0015】
ここで「光を吸収可能」とは、特に可視光領域において波長を選択することなしに光を吸収することが可能であることを意味する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光学シート(10、20、30、40、50)の楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)は、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
ここで「透過率」は、対象であるシートを配置する前後における輝度の比を意味し、最大で100%の値をとる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光学シート(30)における楔形部(33、33、…)は、カーボンブラックを含有することにより光を吸収可能に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、40、50)における楔形部(13、13、…、43、43、…)には、平均粒径が1μm以上の光吸収粒子(15、15、…)を含有することを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、30、40、50)のシート厚方向断面において、光学機能シート層(11、21、31、41)のプリズム部(12、12、…、22、32、32、…、42、42、…)は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)は一方のシート面側を底辺とする三角形であることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シートのシート厚方向断面において、光学機能シート層(11’’)のプリズム部(12’’)は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、楔形部(13’’)は一方のシート面側に長い下底、前記他方のシート面側に短い上底を有する台形であることを特徴とする。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の光学シート(10、20、30、40、50)において、プリズム部(12、12、…、22、32、32、…、42、42、…)の上底と下底との間に具備される台形の斜辺がシート面の法線に対して0度より大きく10度以下であることを特徴とする。
【0023】
請求項11に記載の発明は、請求項8〜10に記載の光学シートにおける台形の斜辺が折れ線状、又は曲線からなることを特徴とする。
【0024】
ここで、斜辺が曲線状である場合における該曲線とシート面の法線との成す角は、次のように求める。上記曲線をシート厚方向に10等分し、得られる各曲線の端点を結び、直線を得る。そして得られた各直線とシート面の法線との成す角がいずれも0度より大きく10度以下である。
【0025】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、30、40、50)におけるプリズム部(12、12、…、22、32、32、…、42、42、…)を形成する材料の屈折率がNp、及び楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)を形成する材料の屈折率がNbであるとき、いずれも1.49〜1.56の値であることを特徴とする。
【0026】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の光学シート(10、20、30、40、50)におけるNpとNbとがNp≧Nbの関係があることを特徴とする。
【0027】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学シート(20)における光学機能シート層(11、21)のプリズム部(12、22)及び楔形部(13)が所定の断面を有して長手方向に延在して形成されるとともに、光学機能シート層が2層積層され、該2層の光学機能シート層の長手方向が一方と他方で直交するように積層されることを特徴とする。
【0028】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、30、40、50)が備えられることを特徴とする表示装置(1、1’)を提供することにより前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、画面の色調を従来に比べて適切なものとすることができる。特に、映像光に対しては画面内における色調のムラを改善し、外光に対しては、画面全体の色合いを本来意図した色に近づけることが可能となる。
【0030】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0032】
図1は第一実施形態にかかる本発明の光学シート10の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図1では、見易さのため繰り返しとなる符号は一部省略することがある(以降に示す各図において同じ。)。光学シート10は、光学機能シート層11と、基材層としてのPETフィルム層16と、粘着剤層17と、色調補正層18とを備えて形成されている。上記各層は図1で示した断面を維持して紙面奥/手前方向に延在する。以下に各層について説明する。
【0033】
光学機能シート層11は、光学シート10のシート面に直交する断面において断面が略台形であるプリズム部12、12、…と、該プリズム部12、12、…の間に配置された楔形部13、13、…とを備えている。図2に1つの楔形部13及びこれに隣接するプリズム部12、12に着目した拡大図を示した。図1、図2、及び適宜示した図を参照しつつ光学機能シート層11について説明する。
【0034】
プリズム部12、12、…は一方のシート面側が上底、他方のシート面側が下底となるように配置された略台形断面を有する要素である。また、プリズム部12、12、…は、屈折率がNpである光透過性樹脂で構成されている。これは通常、電離放射線、紫外線等により硬化する特徴を有する例えばエポキシアクリレート等により形成されている。Npの大きさは特に限定されることはないが材料の入手性の観点から1.49〜1.56であることが好ましい。従ってプリズム部12、12、…内を映像光が透過することにより観察者に映像光が提供される。
【0035】
楔形部13、13、…は、プリズム部12、12、…の間に配置される部位である。従って楔形部13、13、…はプリズム部12、12、…の上底側を底辺とし、これに対向する頂点をプリズム部12、12、…の下底側とする略三角形である。該楔形部13、13、…は、屈折率がNbである物質が充填されたバインダー部14と、該バインダー部14に混入された光吸収粒子15、15、…とを備えている。
【0036】
バインダー部14は、着色剤が含有されることにより着色された透光性を有する部位である。バインダー部14の色は、色調補正層18の色に対して補色の関係にある色とされる。これにより画面における色彩ムラを抑制し、色合いを適切なものに近づけることが可能となる。その理由については後で説明する。
【0037】
バインダー部14に充填されるバインダー材は特に限定されるものではないが、上記補色の関係となるように顔料や染料が混入された電離放射線、紫外線等により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート等により形成される。また、当該バインダー材は、プリズム部12、12、…の屈折率Np以下の屈折率Nbである材料により構成されることが好ましい。Nbの大きさは特に限定されることはないが材料の入手性の観点から1.49〜1.56であることが好ましく、NpとNbとの屈折率の差は、0〜0.06であることがさらに好ましい。
【0038】
当該屈折率差と映像光の入射角との関係により、該映像光の一部は楔形部13、13、…に入射せずにその界面で反射することができ、これは観察者に提供されるので、明るい映像を提供することが可能となる。
【0039】
着色剤は、バインダー部14が適切に着色されればその材料は特に限定されるものではないが、「顔料」や「染料」等を挙げることができる。さらに詳しくは、橙系が好ましく、これには例えばピラゾロンオレンジ、ピラゾロンレッド、ベンツイミダゾロンオレンジ、等を挙げることができる。
【0040】
光吸収粒子15、15、…は、入手性及び取扱いの観点から平均粒径が1μm以上の粒子が好ましく、これはカーボン等の顔料又は赤、青、黄等の染料にて所定の濃度に着色されている。これには例えば市販の着色樹脂微粒子を使用することもできる。当該光吸収粒子15、15、…の屈折率Nrは特に限定されるものではない。楔形部13、13、…に入射した外光の一部が当該光吸収粒子15、15、…に吸収されることにより映像のコントラストを向上させることができる。
【0041】
ここで、楔形部13、13、…の光吸収性能は目的によって適宜調整可能であるが、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることが好ましい。透過率が40〜70%とするための手段は特に限定されるものではないが、例えば光吸収粒子の含有量や光吸収性能を調整して適用することを挙げることができる。
【0042】
さらに、楔形部13、13、…の斜辺(シート厚さ方向に延在する2つの辺)のシート面法線に対する角度θは特に限定されるものではないが、適切な外光及び映像光の反射・吸収の観点から多くの場合、0度より大きく10度以下であることが好ましく、0度より大きく6度以下であることがさらに好ましい。
【0043】
光学機能シート層11の形状は、図1、図2に示したように、プリズム部12、12、…が略台形断面を有し、これらに挟まれて形成される楔形部13、13、…は三角形断面を有している。しかし、適切に光を制御することができれば、これら形状は特に限定されることなく適宜適切な形状が採用される。図3に変形例を示した。図3は図2に対応する図で、1つの楔形部13’と、その両側に配置されるプリズム部12’、12’に注目して示した図である。図3からわかるように、楔形部13’の断面における斜辺(プリズム部12’、12’の斜辺)は、1つの斜辺からではなく、2つの斜辺13a’、13a’、13b’、13b’から構成されている。すなわち断面において折れ線状の斜辺を有している。詳しくは、プリズム部12’、12’の上底(短い側の底)側(紙面左側)に配置される斜辺13a’、13a’は光学シートのシート面の法線に対して角度θ1を有している。一方、プリズム部12’、12’の下底(長い側の底)側(紙面右側)に配置される斜辺13b’、13b’は光学シートのシート面の法線に対して角度θ2を有している。
【0044】
この角度θ1、θ2は、θ1>θ2の関係であるとともにいずれも0度より大きく10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。また、2つの斜辺13a’、13b’は、光学機能シート層11の厚み方向(紙面左右方向)にT1とT2に分ける位置で交差する。T1とT2とは同じ大きさであることが好ましい。
【0045】
当該変形例は、2つの斜辺により構成されている例であるが、さらに多くの斜辺で構成されることにより、断面において折れ線状であっても良い。さらにはこれが曲線状であっても良い。
【0046】
本実施形態では、楔形部が三角形である場合を示して説明したが楔形部の形状はこれに限定されるものではなく台形であってもよい。図4に、楔形部が台形である例における光学機能シート層11’’の楔形部13’’及びこれに隣接するプリズム部12’’、12’’を示した。この形態では図4のように楔形部13’’が台形であり、このときには該台形における長い底辺(下底)をPETフィルム層(不図示)とは反対側(紙面左側)に、短い底辺をPETフィルム層側(紙面右側)に配置することができる。ここで図4にBで示した上底の長さは2〜25μmの範囲であることが好ましい。
【0047】
図1に戻り、光学シート10の他の構成について説明する。PETフィルム層16は、該PETフィルム層16上に上記光学機能シート層11を形成するためのベースとなるフィルム層で、PETを主成分として形成されている。当該PETフィルム層16はPETを主成分として含有していれば良く、他の樹脂が含まれてもよい。ここで主成分とはPETフィルム層全体に対して50質量%以上を意味する。また、各種添加剤を適宜な量添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。
【0048】
粘着剤層17は、後述するように例えばプラズマテレビ1に配置される他のシートや部材に光学シート10を接着させるための粘着剤が配置された層である。粘着剤層17に用いられる粘着剤は光を透過するとともに、適切に光学シート10を他に接着させることができればその材質は特に限定されるものではない。これには例えばアクリル系の共重合体等を挙げることができ、その粘着力は例えば数N/25mm〜20N/25mm程度である。
【0049】
色調補正層18は、Tint層と称されることもあり、PDPからの映像光の色を補正して観察者にとって適切な色合いの映像を提供するフィルムが配置された層である。また、ネオン線も遮断するように構成されていてもよい。このフィルムには目的の色補正をすることができるように染料や顔料が含有されている。
【0050】
光学シート10は、例えば次のように製造される。PETフィルム層16、の一面側に、プリズム部の材料となる液状体を塗布する。次に、プリズム部形状を形成するロール金型とPETフィルムとの間に、上記プリズム部となる材料を挟んだ状態で紫外線を照射することにより硬化させてプリズム部12、12、…を形成する。そして、プリズム部12、12、…の間に、バインダー部の材料となる上記補色となる色彩が付された樹脂中に黒色の光吸収粒子が添加された液状体を充填し、スキージする等して余分な材料を取り除くとともに、紫外線を照射することで硬化させて楔形部13、13、…を形成する。これにより光学機能シート層11が製造される。このように製造された光学機能シート層11に上記粘着剤層17や色調補正層18が積層される。
【0051】
図5は第二実施形態にかかる本発明の光学シート20の断面で、層構成を模式的に表した図である。光学シート20は、第一実施形態の光学シート10の光学機能シート層11とPETフィルム層16との間にもう1枚の光学機能シート層21が挟まれて配置されたものである。このとき、プリズム部22及び楔形部(図には表れない。)が光学機能シート層11のプリズム部12、12、…及び楔形部13、13、…と直交するように配置される。従って、光学機能シート層21のプリズム部22と楔形部とは紙面奥/手前方向に交互に並列されている。
【0052】
図6は、第三実施形態にかかる本発明の光学シート30の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。光学シート30は、第一実施形態の光学シート10のうち光学機能シート層11の代わりに、光学機能シート層31が配置されたものである。光学シート30の他の層は上記した説明と共通するのでここでは説明を省略する。
【0053】
光学シート30では、光学機能シート層31において、楔形部33、33、…に光吸収粒子が具備されず、バインダー樹脂に補色による上記機能と、光吸収作用とを備えた光学シートである。すなわち、楔形部33、33、…には、バインダー材の中に色調補正層18に対して補色の関係となる着色剤と、光吸収性を有する染料又は顔料とが混ぜられる。バインダー材の例としては、上記と同様電離放射線、紫外線等により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート等を挙げることができる。また、光吸収性を有する染料又は顔料としては例えばカーボンブラックを挙げることができる。このような光学シート30であっても本発明の光学シートをすることが可能である。
【0054】
ここでも、楔形部33、33、…の光吸収性能は目的によって適宜調整可能であるが、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることが好ましい。透過率が40〜70%とするための手段は特に限定されるものではないが、例えば光吸収性を有する染料又は顔料の濃度を調整することを挙げることができる。
【0055】
図7は、第四実施形態にかかる本発明の光学シート40の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。光学シート40は、第一実施形態の光学シート10のうち光学機能シート層11の代わりに、光学機能シート層41が配置されたものである。また、図8には光学機能シート層41のうち1つの楔形部43とこれに隣接するプリズム部42、42を拡大して示した。
【0056】
図7、図8からわかるように、光学シート40では、光学機能シート層41において、楔形部43、43、…のバインダー部44内に光吸収粒子45、45、…及び上記補色である着色剤を含有する着色粒子46、46、…を含んでいる。これにより光吸収粒子45、45、…による光吸収性能と、着色粒子46、46、…による補色機能とを有する光学シートを提供することができる。従ってこのときのバインダー部44に具備される樹脂には着色剤を必要とせず、透明なものをそのまま使用することも可能である。
【0057】
着色粒子46、46、…は、入手性及び取扱いの観点から平均粒径が1μm以上の粒子が好ましく、これは着色剤により上記補色となるように着色されている。これには例えば市販の着色樹脂微粒子を使用することもできる。
【0058】
ここでも、楔形部43、43、…の光吸収性能は目的によって適宜調整可能であるが、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることが好ましい。透過率が40〜70%とするための手段は特に限定されるものではないが、例えば光吸収粒子の含有量や濃度を調整することを挙げることができる。
【0059】
図9は第五実施形態にかかる本発明の光学シート50の断面で、層構成を模式的に表した図である。光学シート50は第一実施形態にかかる本発明の光学シート10に対して粘着剤層17が色調補正層18の面のうち光学機能シート層11とは反対側の面に積層された例である。光学シート50に備えられる各層については上記した説明と共通するのでここでは説明を省略する。かかる構成の光学シート50も本発明の光学シートとすることができる。光学シート50のかかる構成により、後述するように光学シート50を映像源であるPDP等に直接に貼付することができるようになる。
【0060】
上記説明した光学シート10、20、30、40、50に具備される基材層については、必ずしもPETを材料とすることはなく、その他にもポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、又はポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂等の「ポリエステル系樹脂」を用いることができる。本実施形態では、性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点からPETを主成分とする樹脂が好ましい材料であるとして説明した。
【0061】
また、色調補正層18は、上記したいずれの光学シート10、20、30、40、50でも光学機能シート層11、31、41に積層されている態様であったがこれに限定されるものではなく、例えばPETフィルム層16の光学機能シート層11、31、41とは反対側の面に積層されてもよい。
【0062】
また、光学シート10、20、30、40、50には、電磁波を遮断するフィルム層、反射を防止するフィルム層、帯電を防止するフィルム層、防眩を目的とするフィルム層等の機能フィルム層が備えられてもよい。
【0063】
次に、以上のような本発明の光学シート10が表示装置であるプラズマテレビ1に取り付けられた時の構成について説明する。図10は光学シート10がPDP2の映像光出射側に配置され、当該PDP2及び光学シート10がプラズマテレビ1に備えられたときの該PDP2及び光学シート10が配置される部分に注目して示した断面図である。図10では紙面右が観察者側である。ここでは、光学シート10が適用された場合について説明するが、光学シート20、30、40についても同様である。
【0064】
図10に示したように、本発明の光学シート10は、映像源であるPDP2に対してAで示した間隙を有して観察者側に配置される。また粘着剤層17の観察者側には、ガラス層6やAS、ARの機能を有する各種層(3、4)が設けられている。ここで、「AS」とは「アンチスタティック」の略で帯電防止機能をいい、「AR」とは「アンチリフレクション」の略で光の反射率を抑える機能を意味する。またARの代わりに画面のぎらつきを防止することができる「AG(アンチグレア)」層が設けられてもよい。
【0065】
ここでは、他に備えられる層としてAR、ASの各種層を例に挙げたが、その他必要に応じてさらに他の機能を有する層を備えることができる。これには例えば、電磁波を遮断する層等を挙げることができる。
【0066】
図11は光学シート50がPDP2の映像光出射側に直接積層され、当該PDP2及び光学シート50がプラズマテレビ1’に備えられたときの該PDP2及び光学シート50が配置される部分に注目して示した断面図である。図11では紙面右が観察者側である。
【0067】
図11からわかるように、プラズマテレビ1’では光学シート50は、映像源であるPDP2に粘着剤層17により直接積層される。またPETフィルム層16の観察者側には、上記したと同様にAS、ARの機能を有する各種層(3、4)が設けられている。そしてここでもその他必要に応じてさらに他の機能を有する層を備えることができる。これには例えば、電磁波を遮断する層等を挙げることができる。
【0068】
プラズマテレビ1’によれば、プラズマテレビ1の間隙Aを有しない他、ガラス層6も必要としないのでプラズマテレビのさらなる薄型化が可能となる。
【0069】
次に本発明の光学シートにより色調がどのように観察されるかについて説明する。図12は画面中央からその法線方向に所定の距離離隔する観察者Cに観察される光L1、L2の光路の例を模式的に示した図である。光L1は、画面中央から観察者Cに出射する光の例であり、光L2は、画面の下端部から観察者Cに出射する光の例である。
【0070】
光L1については、PDPから出射された光が色調補正され(光路L1a)、プリズム部12を透過し、これがL1として観察者に到達する。このとき、光路L1aにおいて、光L1は色調補正層18の厚さ方向を該層の法線方向に横切るように透過するので、意図した色調補正がおこなわれている。
【0071】
一方、光L2については、光路L2a及び光路L2bを含んだ光路により観察者Cに到達する。ここで、光路L2aでは色調補正層18の厚さ方向を斜めに透過するので、該光路L2aは上記光路L1aに比べて色調補正層18内を透過する距離が長い分、より色調補正層18の色彩の強い色が出射されてしまう。もしこのままの光が観察者に提供されてしまうと、観察者は光L1と異なる色彩を感じることとなり色ムラとして認識する。そこで、本発明の光学シート10では楔形部13のバインダー部14に上記のような補色の関係を有するように構成しているので、光路L2bにおいてバインダー部14内を透過することにより色彩がさらに補正される。これにより観察者はL1とL2とを概ね同じ色彩であると認識し、色彩ムラを抑制することができる。
【0072】
図13は、外光L3及びその反射光Lf3の光路例を示した図である。特に図13に示したような斜め上方から光学シート10に向けて照射される外光L3は、所定の光路を経てPDP2の表面で反射して反射光L3fとして観察者側に再度出射される。詳しくは、プリズム部12を透過した後該外光L3は、楔形部13に達する。楔形部13に侵入した外光L3はバインダー部14を透過する(光路L3a)。このとき該バインダー部14は上記したように補色の機能を有しているので、ここを透過した光は補色の色彩となる。さらにバインダー部14を透過した光は色調補正層18を透過し(光路L3b)、PDP2に達する。
【0073】
このようにしてPDP2に達した外光L3の一部は、該PDP2の表面で反射し、反射光Lf3となる。当該反射光Lf3は、色調補正層18を透過して(光路Lf3b)観察者側に出射される。
【0074】
ここで、図13からもわかるように外光L3が光学シート10に入射して、反射光Lf3として出射する間に色調補正層18を2度透過する。すなわちバインダー部14に補色の機能がなかったとすれば、反射光Lf3は色調補正層の色彩を色濃く有することとなり、これが観察者に認識されてしまう。しかし本発明の光学シート10によれば、一部の外光L3について少なくとも1度はバインダー部14を透過するので、このような不適切な色合いが緩和される。
【0075】
以上のように、本発明の光学シート10、20、30、40、50によれば、映像光については画面の色ムラを抑制することができ、外光に対しては色合いをより適正化することが可能となる。
【0076】
以上のような構成を備える光学シートに関して、以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。ただし、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
実施例として、2つの例(実施例1、実施例2)について補色を決定し、その補色を有する楔形部を備えた光学シートを製作して色調に関する試験をおこなった。その概要を以下に説明する。
【0078】
はじめに色調補正層の光学的特性を明確するために、色調補正層に対して0度(色調補正層の法線方向)から入射した白色光の透過光について分光透過率を測定した。分光透過率の測定は分光光度計(UV−2400PC、島津製作所)にて測定した。詳しくは、試料を透過しない100%の参照信号に対し、該試料を透過した信号の割合を測定することによりおこなう。また、同様に色調補正層に対して、その法線から45度の角度を有して入射した白色光の透過光についても分光透過率を測定した。これによりそれぞれ各波長における透過率を得ることができる。
【0079】
次に得られた0度の分光透過率、及び45度の分光透過率について波長ごとに差をとった。そして算出された分光特性に対する補色を楔形部が備える補色とした。
【0080】
図14、図15に、上記0度の分光透過率、45度の分光透過率、0度の分光透過率と45度の分光透過率との差、及び補色の分光透過率をそれぞれ示した。図14は実施例1、図15は実施例2である。図中では、0度の分光透過率を「0度特性P」、45度の分光透過率を「45度特性Q」と表示し、その差を「P−Q」とした。そして、得られた補色の分光透過率を「補色R」と記載した。
【0081】
このようにして得た補色を用いて、光学シートを製作し、白色点灯時及び黒色時(非点灯時)の色調を目視で観察した。黒色時には上方45度から外光として白色光を画面に向けて照射した。また、目視は画面の中心から該画面の法線方向に所定の距離離隔した位置から観察をおこなった。ここで所定の距離は画面の高さ方向大きさの3倍とした。
【0082】
その結果、白色点灯時においては色ムラが改善され、黒色時には画面全体に亘って色調をより意図する色彩(ここでは黒色)に近づけることができた。すなわち、本発明の光学シートでは、このようにして求めた補色Rを有する着色剤により着色された楔形部を適用することにより、図12、図13を示して説明したように上記効果を奏することができた。一方、補色Rを有する着色材を用いない従来の光学シートでは、P−Qの特徴が観察者に観察され、色ムラ等を生じてしまう。
【0083】
以上、現時点において最も実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光学シート、及び表示装置も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第一実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図2】図1に示した光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図3】変形例にかかる本発明の光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図4】楔形部が台形である例における本発明の光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図5】第二実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図6】第三実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図7】第四実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図8】図7に示した光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図9】第五実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図10】本発明の光学シートがプラズマテレビに取り付けられた例においてPDP及び光学シート部分に着目して示した図である。
【図11】本発明の光学シートがプラズマテレビに取り付けられた他の例においてPDP及び光学シート部分に着目して示した図である。
【図12】映像光の光路を説明するための図である。
【図13】外光の光路を説明するための図である。
【図14】実施例1における各分光透過率特性を示したグラフである。
【図15】実施例2における各分光透過率特性を示したグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 プラズマテレビ(表示装置)
2 プラズマディスプレイパネル(PDP)
10、20、30、40、50 光学シート
11、21、31、41 光学機能シート層
12、22、32、42 プリズム部
13、33、43 楔形部
14 バインダー部
15 光吸収粒子
16 PETフィルム層
17 粘着剤層
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像光源より観察者側に配置されて映像光や外光を適切に制御することができる光学シート及び表示装置に関し、詳しくは、画面内おける色彩ムラの低減や色合いの適正化をすることのできる光学シート及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と記載することがある。)を用いたテレビ等の表示装置では、PDPよりも観察者側に光学シートが配置されている。この光学シートは、観察者により質の高い映像を提供する役割を有する。そのため該光学シートには、各種機能を有する層が積層される。その中の1つに映像光の色彩を補正するための層がある。これは、PDPから出射した映像光には、赤外線やNe(ネオン)線、又は光源の性質等による不要な色彩(波長)の光が含まれることがあり、これを除去して観察者に適切な色合いの映像を提供するものである。色調補正層と呼ばれることがある。
【0003】
このような色調補正層の使用は例えば特許文献1等に開示されている。このような層をPDP用の色調補正層として用いることができる。
【特許文献1】特表2006−514339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような色調補正層を用いた場合において、画面を正面から見たときには目的とする色調補正がおこなわれるが、例えば当該色調補正層を斜めに透過する映像光は、色彩の補正が過剰になる場合があった。すなわちこのように斜めに透過する映像光は通常よりも長い距離色調補正層内を透過するので、その分色調補正層の影響を多く受け過ぎるものである。このように斜めに透過する光が観察者に届く場合の例として、画面の上下位置から観察者に向けて出射される映像光を挙げることができる。これにより画面内において色彩ムラを発生することがある。特に近年における大画面化によりその傾向も大きなものとなっている。
【0005】
また、映像光に限らず、画面の非点灯時又は黒の映像出射時において、画面に入射した外光が反射して観察者に出射される場面では、画面が全体として色調補正層に影響された色味を帯びてしまうことがあった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、画面内における色彩ムラ抑制し、色合い適切なものとすることが可能な光学シート、及び表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
請求項1に記載の発明は、映像光源(2)より観察者側に配置され、該映像光源から出射された光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シート(10、20、30、40、50)であって、映像光源からの映像光の色彩を観察者にとって適切になるように色彩を補正する色調補正層(18)と、光を透過可能にシート面に沿って並列されるプリズム部(12、12、…、32、32、…、42、42、…)、及びプリズム部間に具備され、色調補正層の色彩と補色の関係にある着色剤を含有する楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)を有する光学機能シート層(11、31、41)と、を備える光学シートにより前記課題を解決する。
【0009】
ここで、「補色」とは、通常の補色と同じであり、補色関係にある2色により無彩色になる関係をいう。また、「着色剤」とは楔形部を着色するために該楔形部に含有される媒体を意味し、染料や顔料を挙げることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学シート(10、20、30、40、50)における着色剤が顔料又は染料であることを特徴とする。
【0011】
ここで、「顔料」、「染料」は上記のように着色剤の一種であり、特に「顔料」は、色彩を有するが水や溶剤に溶けない微粉末を意味する。また「染料」は色彩を有する有機化合物で水や溶媒に溶ける性質を有するものを意味する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学シート(40)における楔形部(43、43、…)には平均粒径が1μm以上の粒子が含有され、該粒子に着色剤が含まれていることを特徴とする。
【0013】
ここで「平均粒径が1μm以上」であることにおける「平均粒径が1μm」とは、重量分布法による粒度測定で、粒径が0.5μm以上で、1.5μmより小さい粒子を対象とし、粒度分布において標準偏差が0.3以上であることを意味する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、30、40、50)において、楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)はさらに光を吸収可能に形成されていることを特徴とする。
【0015】
ここで「光を吸収可能」とは、特に可視光領域において波長を選択することなしに光を吸収することが可能であることを意味する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光学シート(10、20、30、40、50)の楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)は、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
ここで「透過率」は、対象であるシートを配置する前後における輝度の比を意味し、最大で100%の値をとる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光学シート(30)における楔形部(33、33、…)は、カーボンブラックを含有することにより光を吸収可能に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、40、50)における楔形部(13、13、…、43、43、…)には、平均粒径が1μm以上の光吸収粒子(15、15、…)を含有することを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、30、40、50)のシート厚方向断面において、光学機能シート層(11、21、31、41)のプリズム部(12、12、…、22、32、32、…、42、42、…)は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)は一方のシート面側を底辺とする三角形であることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シートのシート厚方向断面において、光学機能シート層(11’’)のプリズム部(12’’)は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、楔形部(13’’)は一方のシート面側に長い下底、前記他方のシート面側に短い上底を有する台形であることを特徴とする。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の光学シート(10、20、30、40、50)において、プリズム部(12、12、…、22、32、32、…、42、42、…)の上底と下底との間に具備される台形の斜辺がシート面の法線に対して0度より大きく10度以下であることを特徴とする。
【0023】
請求項11に記載の発明は、請求項8〜10に記載の光学シートにおける台形の斜辺が折れ線状、又は曲線からなることを特徴とする。
【0024】
ここで、斜辺が曲線状である場合における該曲線とシート面の法線との成す角は、次のように求める。上記曲線をシート厚方向に10等分し、得られる各曲線の端点を結び、直線を得る。そして得られた各直線とシート面の法線との成す角がいずれも0度より大きく10度以下である。
【0025】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、30、40、50)におけるプリズム部(12、12、…、22、32、32、…、42、42、…)を形成する材料の屈折率がNp、及び楔形部(13、13、…、33、33、…、43、43、…)を形成する材料の屈折率がNbであるとき、いずれも1.49〜1.56の値であることを特徴とする。
【0026】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の光学シート(10、20、30、40、50)におけるNpとNbとがNp≧Nbの関係があることを特徴とする。
【0027】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学シート(20)における光学機能シート層(11、21)のプリズム部(12、22)及び楔形部(13)が所定の断面を有して長手方向に延在して形成されるとともに、光学機能シート層が2層積層され、該2層の光学機能シート層の長手方向が一方と他方で直交するように積層されることを特徴とする。
【0028】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学シート(10、20、30、40、50)が備えられることを特徴とする表示装置(1、1’)を提供することにより前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、画面の色調を従来に比べて適切なものとすることができる。特に、映像光に対しては画面内における色調のムラを改善し、外光に対しては、画面全体の色合いを本来意図した色に近づけることが可能となる。
【0030】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0032】
図1は第一実施形態にかかる本発明の光学シート10の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図1では、見易さのため繰り返しとなる符号は一部省略することがある(以降に示す各図において同じ。)。光学シート10は、光学機能シート層11と、基材層としてのPETフィルム層16と、粘着剤層17と、色調補正層18とを備えて形成されている。上記各層は図1で示した断面を維持して紙面奥/手前方向に延在する。以下に各層について説明する。
【0033】
光学機能シート層11は、光学シート10のシート面に直交する断面において断面が略台形であるプリズム部12、12、…と、該プリズム部12、12、…の間に配置された楔形部13、13、…とを備えている。図2に1つの楔形部13及びこれに隣接するプリズム部12、12に着目した拡大図を示した。図1、図2、及び適宜示した図を参照しつつ光学機能シート層11について説明する。
【0034】
プリズム部12、12、…は一方のシート面側が上底、他方のシート面側が下底となるように配置された略台形断面を有する要素である。また、プリズム部12、12、…は、屈折率がNpである光透過性樹脂で構成されている。これは通常、電離放射線、紫外線等により硬化する特徴を有する例えばエポキシアクリレート等により形成されている。Npの大きさは特に限定されることはないが材料の入手性の観点から1.49〜1.56であることが好ましい。従ってプリズム部12、12、…内を映像光が透過することにより観察者に映像光が提供される。
【0035】
楔形部13、13、…は、プリズム部12、12、…の間に配置される部位である。従って楔形部13、13、…はプリズム部12、12、…の上底側を底辺とし、これに対向する頂点をプリズム部12、12、…の下底側とする略三角形である。該楔形部13、13、…は、屈折率がNbである物質が充填されたバインダー部14と、該バインダー部14に混入された光吸収粒子15、15、…とを備えている。
【0036】
バインダー部14は、着色剤が含有されることにより着色された透光性を有する部位である。バインダー部14の色は、色調補正層18の色に対して補色の関係にある色とされる。これにより画面における色彩ムラを抑制し、色合いを適切なものに近づけることが可能となる。その理由については後で説明する。
【0037】
バインダー部14に充填されるバインダー材は特に限定されるものではないが、上記補色の関係となるように顔料や染料が混入された電離放射線、紫外線等により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート等により形成される。また、当該バインダー材は、プリズム部12、12、…の屈折率Np以下の屈折率Nbである材料により構成されることが好ましい。Nbの大きさは特に限定されることはないが材料の入手性の観点から1.49〜1.56であることが好ましく、NpとNbとの屈折率の差は、0〜0.06であることがさらに好ましい。
【0038】
当該屈折率差と映像光の入射角との関係により、該映像光の一部は楔形部13、13、…に入射せずにその界面で反射することができ、これは観察者に提供されるので、明るい映像を提供することが可能となる。
【0039】
着色剤は、バインダー部14が適切に着色されればその材料は特に限定されるものではないが、「顔料」や「染料」等を挙げることができる。さらに詳しくは、橙系が好ましく、これには例えばピラゾロンオレンジ、ピラゾロンレッド、ベンツイミダゾロンオレンジ、等を挙げることができる。
【0040】
光吸収粒子15、15、…は、入手性及び取扱いの観点から平均粒径が1μm以上の粒子が好ましく、これはカーボン等の顔料又は赤、青、黄等の染料にて所定の濃度に着色されている。これには例えば市販の着色樹脂微粒子を使用することもできる。当該光吸収粒子15、15、…の屈折率Nrは特に限定されるものではない。楔形部13、13、…に入射した外光の一部が当該光吸収粒子15、15、…に吸収されることにより映像のコントラストを向上させることができる。
【0041】
ここで、楔形部13、13、…の光吸収性能は目的によって適宜調整可能であるが、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることが好ましい。透過率が40〜70%とするための手段は特に限定されるものではないが、例えば光吸収粒子の含有量や光吸収性能を調整して適用することを挙げることができる。
【0042】
さらに、楔形部13、13、…の斜辺(シート厚さ方向に延在する2つの辺)のシート面法線に対する角度θは特に限定されるものではないが、適切な外光及び映像光の反射・吸収の観点から多くの場合、0度より大きく10度以下であることが好ましく、0度より大きく6度以下であることがさらに好ましい。
【0043】
光学機能シート層11の形状は、図1、図2に示したように、プリズム部12、12、…が略台形断面を有し、これらに挟まれて形成される楔形部13、13、…は三角形断面を有している。しかし、適切に光を制御することができれば、これら形状は特に限定されることなく適宜適切な形状が採用される。図3に変形例を示した。図3は図2に対応する図で、1つの楔形部13’と、その両側に配置されるプリズム部12’、12’に注目して示した図である。図3からわかるように、楔形部13’の断面における斜辺(プリズム部12’、12’の斜辺)は、1つの斜辺からではなく、2つの斜辺13a’、13a’、13b’、13b’から構成されている。すなわち断面において折れ線状の斜辺を有している。詳しくは、プリズム部12’、12’の上底(短い側の底)側(紙面左側)に配置される斜辺13a’、13a’は光学シートのシート面の法線に対して角度θ1を有している。一方、プリズム部12’、12’の下底(長い側の底)側(紙面右側)に配置される斜辺13b’、13b’は光学シートのシート面の法線に対して角度θ2を有している。
【0044】
この角度θ1、θ2は、θ1>θ2の関係であるとともにいずれも0度より大きく10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。また、2つの斜辺13a’、13b’は、光学機能シート層11の厚み方向(紙面左右方向)にT1とT2に分ける位置で交差する。T1とT2とは同じ大きさであることが好ましい。
【0045】
当該変形例は、2つの斜辺により構成されている例であるが、さらに多くの斜辺で構成されることにより、断面において折れ線状であっても良い。さらにはこれが曲線状であっても良い。
【0046】
本実施形態では、楔形部が三角形である場合を示して説明したが楔形部の形状はこれに限定されるものではなく台形であってもよい。図4に、楔形部が台形である例における光学機能シート層11’’の楔形部13’’及びこれに隣接するプリズム部12’’、12’’を示した。この形態では図4のように楔形部13’’が台形であり、このときには該台形における長い底辺(下底)をPETフィルム層(不図示)とは反対側(紙面左側)に、短い底辺をPETフィルム層側(紙面右側)に配置することができる。ここで図4にBで示した上底の長さは2〜25μmの範囲であることが好ましい。
【0047】
図1に戻り、光学シート10の他の構成について説明する。PETフィルム層16は、該PETフィルム層16上に上記光学機能シート層11を形成するためのベースとなるフィルム層で、PETを主成分として形成されている。当該PETフィルム層16はPETを主成分として含有していれば良く、他の樹脂が含まれてもよい。ここで主成分とはPETフィルム層全体に対して50質量%以上を意味する。また、各種添加剤を適宜な量添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。
【0048】
粘着剤層17は、後述するように例えばプラズマテレビ1に配置される他のシートや部材に光学シート10を接着させるための粘着剤が配置された層である。粘着剤層17に用いられる粘着剤は光を透過するとともに、適切に光学シート10を他に接着させることができればその材質は特に限定されるものではない。これには例えばアクリル系の共重合体等を挙げることができ、その粘着力は例えば数N/25mm〜20N/25mm程度である。
【0049】
色調補正層18は、Tint層と称されることもあり、PDPからの映像光の色を補正して観察者にとって適切な色合いの映像を提供するフィルムが配置された層である。また、ネオン線も遮断するように構成されていてもよい。このフィルムには目的の色補正をすることができるように染料や顔料が含有されている。
【0050】
光学シート10は、例えば次のように製造される。PETフィルム層16、の一面側に、プリズム部の材料となる液状体を塗布する。次に、プリズム部形状を形成するロール金型とPETフィルムとの間に、上記プリズム部となる材料を挟んだ状態で紫外線を照射することにより硬化させてプリズム部12、12、…を形成する。そして、プリズム部12、12、…の間に、バインダー部の材料となる上記補色となる色彩が付された樹脂中に黒色の光吸収粒子が添加された液状体を充填し、スキージする等して余分な材料を取り除くとともに、紫外線を照射することで硬化させて楔形部13、13、…を形成する。これにより光学機能シート層11が製造される。このように製造された光学機能シート層11に上記粘着剤層17や色調補正層18が積層される。
【0051】
図5は第二実施形態にかかる本発明の光学シート20の断面で、層構成を模式的に表した図である。光学シート20は、第一実施形態の光学シート10の光学機能シート層11とPETフィルム層16との間にもう1枚の光学機能シート層21が挟まれて配置されたものである。このとき、プリズム部22及び楔形部(図には表れない。)が光学機能シート層11のプリズム部12、12、…及び楔形部13、13、…と直交するように配置される。従って、光学機能シート層21のプリズム部22と楔形部とは紙面奥/手前方向に交互に並列されている。
【0052】
図6は、第三実施形態にかかる本発明の光学シート30の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。光学シート30は、第一実施形態の光学シート10のうち光学機能シート層11の代わりに、光学機能シート層31が配置されたものである。光学シート30の他の層は上記した説明と共通するのでここでは説明を省略する。
【0053】
光学シート30では、光学機能シート層31において、楔形部33、33、…に光吸収粒子が具備されず、バインダー樹脂に補色による上記機能と、光吸収作用とを備えた光学シートである。すなわち、楔形部33、33、…には、バインダー材の中に色調補正層18に対して補色の関係となる着色剤と、光吸収性を有する染料又は顔料とが混ぜられる。バインダー材の例としては、上記と同様電離放射線、紫外線等により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート等を挙げることができる。また、光吸収性を有する染料又は顔料としては例えばカーボンブラックを挙げることができる。このような光学シート30であっても本発明の光学シートをすることが可能である。
【0054】
ここでも、楔形部33、33、…の光吸収性能は目的によって適宜調整可能であるが、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることが好ましい。透過率が40〜70%とするための手段は特に限定されるものではないが、例えば光吸収性を有する染料又は顔料の濃度を調整することを挙げることができる。
【0055】
図7は、第四実施形態にかかる本発明の光学シート40の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。光学シート40は、第一実施形態の光学シート10のうち光学機能シート層11の代わりに、光学機能シート層41が配置されたものである。また、図8には光学機能シート層41のうち1つの楔形部43とこれに隣接するプリズム部42、42を拡大して示した。
【0056】
図7、図8からわかるように、光学シート40では、光学機能シート層41において、楔形部43、43、…のバインダー部44内に光吸収粒子45、45、…及び上記補色である着色剤を含有する着色粒子46、46、…を含んでいる。これにより光吸収粒子45、45、…による光吸収性能と、着色粒子46、46、…による補色機能とを有する光学シートを提供することができる。従ってこのときのバインダー部44に具備される樹脂には着色剤を必要とせず、透明なものをそのまま使用することも可能である。
【0057】
着色粒子46、46、…は、入手性及び取扱いの観点から平均粒径が1μm以上の粒子が好ましく、これは着色剤により上記補色となるように着色されている。これには例えば市販の着色樹脂微粒子を使用することもできる。
【0058】
ここでも、楔形部43、43、…の光吸収性能は目的によって適宜調整可能であるが、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることが好ましい。透過率が40〜70%とするための手段は特に限定されるものではないが、例えば光吸収粒子の含有量や濃度を調整することを挙げることができる。
【0059】
図9は第五実施形態にかかる本発明の光学シート50の断面で、層構成を模式的に表した図である。光学シート50は第一実施形態にかかる本発明の光学シート10に対して粘着剤層17が色調補正層18の面のうち光学機能シート層11とは反対側の面に積層された例である。光学シート50に備えられる各層については上記した説明と共通するのでここでは説明を省略する。かかる構成の光学シート50も本発明の光学シートとすることができる。光学シート50のかかる構成により、後述するように光学シート50を映像源であるPDP等に直接に貼付することができるようになる。
【0060】
上記説明した光学シート10、20、30、40、50に具備される基材層については、必ずしもPETを材料とすることはなく、その他にもポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、又はポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂等の「ポリエステル系樹脂」を用いることができる。本実施形態では、性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点からPETを主成分とする樹脂が好ましい材料であるとして説明した。
【0061】
また、色調補正層18は、上記したいずれの光学シート10、20、30、40、50でも光学機能シート層11、31、41に積層されている態様であったがこれに限定されるものではなく、例えばPETフィルム層16の光学機能シート層11、31、41とは反対側の面に積層されてもよい。
【0062】
また、光学シート10、20、30、40、50には、電磁波を遮断するフィルム層、反射を防止するフィルム層、帯電を防止するフィルム層、防眩を目的とするフィルム層等の機能フィルム層が備えられてもよい。
【0063】
次に、以上のような本発明の光学シート10が表示装置であるプラズマテレビ1に取り付けられた時の構成について説明する。図10は光学シート10がPDP2の映像光出射側に配置され、当該PDP2及び光学シート10がプラズマテレビ1に備えられたときの該PDP2及び光学シート10が配置される部分に注目して示した断面図である。図10では紙面右が観察者側である。ここでは、光学シート10が適用された場合について説明するが、光学シート20、30、40についても同様である。
【0064】
図10に示したように、本発明の光学シート10は、映像源であるPDP2に対してAで示した間隙を有して観察者側に配置される。また粘着剤層17の観察者側には、ガラス層6やAS、ARの機能を有する各種層(3、4)が設けられている。ここで、「AS」とは「アンチスタティック」の略で帯電防止機能をいい、「AR」とは「アンチリフレクション」の略で光の反射率を抑える機能を意味する。またARの代わりに画面のぎらつきを防止することができる「AG(アンチグレア)」層が設けられてもよい。
【0065】
ここでは、他に備えられる層としてAR、ASの各種層を例に挙げたが、その他必要に応じてさらに他の機能を有する層を備えることができる。これには例えば、電磁波を遮断する層等を挙げることができる。
【0066】
図11は光学シート50がPDP2の映像光出射側に直接積層され、当該PDP2及び光学シート50がプラズマテレビ1’に備えられたときの該PDP2及び光学シート50が配置される部分に注目して示した断面図である。図11では紙面右が観察者側である。
【0067】
図11からわかるように、プラズマテレビ1’では光学シート50は、映像源であるPDP2に粘着剤層17により直接積層される。またPETフィルム層16の観察者側には、上記したと同様にAS、ARの機能を有する各種層(3、4)が設けられている。そしてここでもその他必要に応じてさらに他の機能を有する層を備えることができる。これには例えば、電磁波を遮断する層等を挙げることができる。
【0068】
プラズマテレビ1’によれば、プラズマテレビ1の間隙Aを有しない他、ガラス層6も必要としないのでプラズマテレビのさらなる薄型化が可能となる。
【0069】
次に本発明の光学シートにより色調がどのように観察されるかについて説明する。図12は画面中央からその法線方向に所定の距離離隔する観察者Cに観察される光L1、L2の光路の例を模式的に示した図である。光L1は、画面中央から観察者Cに出射する光の例であり、光L2は、画面の下端部から観察者Cに出射する光の例である。
【0070】
光L1については、PDPから出射された光が色調補正され(光路L1a)、プリズム部12を透過し、これがL1として観察者に到達する。このとき、光路L1aにおいて、光L1は色調補正層18の厚さ方向を該層の法線方向に横切るように透過するので、意図した色調補正がおこなわれている。
【0071】
一方、光L2については、光路L2a及び光路L2bを含んだ光路により観察者Cに到達する。ここで、光路L2aでは色調補正層18の厚さ方向を斜めに透過するので、該光路L2aは上記光路L1aに比べて色調補正層18内を透過する距離が長い分、より色調補正層18の色彩の強い色が出射されてしまう。もしこのままの光が観察者に提供されてしまうと、観察者は光L1と異なる色彩を感じることとなり色ムラとして認識する。そこで、本発明の光学シート10では楔形部13のバインダー部14に上記のような補色の関係を有するように構成しているので、光路L2bにおいてバインダー部14内を透過することにより色彩がさらに補正される。これにより観察者はL1とL2とを概ね同じ色彩であると認識し、色彩ムラを抑制することができる。
【0072】
図13は、外光L3及びその反射光Lf3の光路例を示した図である。特に図13に示したような斜め上方から光学シート10に向けて照射される外光L3は、所定の光路を経てPDP2の表面で反射して反射光L3fとして観察者側に再度出射される。詳しくは、プリズム部12を透過した後該外光L3は、楔形部13に達する。楔形部13に侵入した外光L3はバインダー部14を透過する(光路L3a)。このとき該バインダー部14は上記したように補色の機能を有しているので、ここを透過した光は補色の色彩となる。さらにバインダー部14を透過した光は色調補正層18を透過し(光路L3b)、PDP2に達する。
【0073】
このようにしてPDP2に達した外光L3の一部は、該PDP2の表面で反射し、反射光Lf3となる。当該反射光Lf3は、色調補正層18を透過して(光路Lf3b)観察者側に出射される。
【0074】
ここで、図13からもわかるように外光L3が光学シート10に入射して、反射光Lf3として出射する間に色調補正層18を2度透過する。すなわちバインダー部14に補色の機能がなかったとすれば、反射光Lf3は色調補正層の色彩を色濃く有することとなり、これが観察者に認識されてしまう。しかし本発明の光学シート10によれば、一部の外光L3について少なくとも1度はバインダー部14を透過するので、このような不適切な色合いが緩和される。
【0075】
以上のように、本発明の光学シート10、20、30、40、50によれば、映像光については画面の色ムラを抑制することができ、外光に対しては色合いをより適正化することが可能となる。
【0076】
以上のような構成を備える光学シートに関して、以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。ただし、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
実施例として、2つの例(実施例1、実施例2)について補色を決定し、その補色を有する楔形部を備えた光学シートを製作して色調に関する試験をおこなった。その概要を以下に説明する。
【0078】
はじめに色調補正層の光学的特性を明確するために、色調補正層に対して0度(色調補正層の法線方向)から入射した白色光の透過光について分光透過率を測定した。分光透過率の測定は分光光度計(UV−2400PC、島津製作所)にて測定した。詳しくは、試料を透過しない100%の参照信号に対し、該試料を透過した信号の割合を測定することによりおこなう。また、同様に色調補正層に対して、その法線から45度の角度を有して入射した白色光の透過光についても分光透過率を測定した。これによりそれぞれ各波長における透過率を得ることができる。
【0079】
次に得られた0度の分光透過率、及び45度の分光透過率について波長ごとに差をとった。そして算出された分光特性に対する補色を楔形部が備える補色とした。
【0080】
図14、図15に、上記0度の分光透過率、45度の分光透過率、0度の分光透過率と45度の分光透過率との差、及び補色の分光透過率をそれぞれ示した。図14は実施例1、図15は実施例2である。図中では、0度の分光透過率を「0度特性P」、45度の分光透過率を「45度特性Q」と表示し、その差を「P−Q」とした。そして、得られた補色の分光透過率を「補色R」と記載した。
【0081】
このようにして得た補色を用いて、光学シートを製作し、白色点灯時及び黒色時(非点灯時)の色調を目視で観察した。黒色時には上方45度から外光として白色光を画面に向けて照射した。また、目視は画面の中心から該画面の法線方向に所定の距離離隔した位置から観察をおこなった。ここで所定の距離は画面の高さ方向大きさの3倍とした。
【0082】
その結果、白色点灯時においては色ムラが改善され、黒色時には画面全体に亘って色調をより意図する色彩(ここでは黒色)に近づけることができた。すなわち、本発明の光学シートでは、このようにして求めた補色Rを有する着色剤により着色された楔形部を適用することにより、図12、図13を示して説明したように上記効果を奏することができた。一方、補色Rを有する着色材を用いない従来の光学シートでは、P−Qの特徴が観察者に観察され、色ムラ等を生じてしまう。
【0083】
以上、現時点において最も実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光学シート、及び表示装置も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第一実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図2】図1に示した光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図3】変形例にかかる本発明の光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図4】楔形部が台形である例における本発明の光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図5】第二実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図6】第三実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図7】第四実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図8】図7に示した光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図9】第五実施形態にかかる本発明の光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図10】本発明の光学シートがプラズマテレビに取り付けられた例においてPDP及び光学シート部分に着目して示した図である。
【図11】本発明の光学シートがプラズマテレビに取り付けられた他の例においてPDP及び光学シート部分に着目して示した図である。
【図12】映像光の光路を説明するための図である。
【図13】外光の光路を説明するための図である。
【図14】実施例1における各分光透過率特性を示したグラフである。
【図15】実施例2における各分光透過率特性を示したグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 プラズマテレビ(表示装置)
2 プラズマディスプレイパネル(PDP)
10、20、30、40、50 光学シート
11、21、31、41 光学機能シート層
12、22、32、42 プリズム部
13、33、43 楔形部
14 バインダー部
15 光吸収粒子
16 PETフィルム層
17 粘着剤層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光源より観察者側に配置され、該映像光源からの光を制御して前記観察者側に出射する複数の層を備える光学シートであって、
前記映像光源からの映像光の色彩を前記観察者にとって適切になるように色彩を補正する色調補正層と、
光を透過可能にシート面に沿って並列されるプリズム部、及び前記プリズム部間に具備され、前記色調補正層の色彩と補色の関係にある着色剤を含有する楔形部を有する光学機能シート層と、
を備える光学シート。
【請求項2】
前記着色剤が顔料又は染料であることを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記楔形部には平均粒径が1μm以上の粒子が含有され、該粒子に前記着色剤が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記楔形部はさらに光を吸収可能に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項5】
前記楔形部は、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の光学シート。
【請求項6】
前記楔形部は、カーボンブラックを含有することにより光を吸収可能に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の光学シート。
【請求項7】
前記楔形部には、平均粒径が1μm以上の光吸収粒子が含有されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項8】
シート厚方向断面において、
前記光学機能シート層の前記プリズム部は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、
前記楔形部は前記一方のシート面側を底辺とする三角形であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項9】
シート厚方向断面において、
前記光学機能シート層の前記プリズム部は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、
前記楔形部は前記一方のシート面側に長い下底、前記他方のシート面側に短い上底を有する台形であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項10】
前記プリズム部の前記上底と前記下底との間に具備される前記台形の斜辺がシート面の法線に対して0度より大きく10度以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の光学シート。
【請求項11】
前記台形の斜辺が折れ線状、又は曲線からなることを特徴とする請求項8〜10に記載の光学シート。
【請求項12】
前記プリズム部を形成する材料の屈折率がNp、及び前記楔形部を形成する材料の屈折率がNbであるとき、該Np及びNbのいずれも1.49〜1.56の値であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項13】
前記Npと前記NbとがNp≧Nbの関係があることを特徴とする請求項12に記載の光学シート。
【請求項14】
前記光学機能シート層の前記プリズム部及び前記楔形部が所定の断面を有して長手方向に延在して形成されるとともに、前記光学機能シート層が2層積層され、該2層の光学機能シート層の前記長手方向が一方と他方で直交するように積層されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学シートが備えられることを特徴とする表示装置。
【請求項1】
映像光源より観察者側に配置され、該映像光源からの光を制御して前記観察者側に出射する複数の層を備える光学シートであって、
前記映像光源からの映像光の色彩を前記観察者にとって適切になるように色彩を補正する色調補正層と、
光を透過可能にシート面に沿って並列されるプリズム部、及び前記プリズム部間に具備され、前記色調補正層の色彩と補色の関係にある着色剤を含有する楔形部を有する光学機能シート層と、
を備える光学シート。
【請求項2】
前記着色剤が顔料又は染料であることを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記楔形部には平均粒径が1μm以上の粒子が含有され、該粒子に前記着色剤が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記楔形部はさらに光を吸収可能に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項5】
前記楔形部は、該楔形部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の光学シート。
【請求項6】
前記楔形部は、カーボンブラックを含有することにより光を吸収可能に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の光学シート。
【請求項7】
前記楔形部には、平均粒径が1μm以上の光吸収粒子が含有されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項8】
シート厚方向断面において、
前記光学機能シート層の前記プリズム部は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、
前記楔形部は前記一方のシート面側を底辺とする三角形であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項9】
シート厚方向断面において、
前記光学機能シート層の前記プリズム部は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、
前記楔形部は前記一方のシート面側に長い下底、前記他方のシート面側に短い上底を有する台形であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項10】
前記プリズム部の前記上底と前記下底との間に具備される前記台形の斜辺がシート面の法線に対して0度より大きく10度以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の光学シート。
【請求項11】
前記台形の斜辺が折れ線状、又は曲線からなることを特徴とする請求項8〜10に記載の光学シート。
【請求項12】
前記プリズム部を形成する材料の屈折率がNp、及び前記楔形部を形成する材料の屈折率がNbであるとき、該Np及びNbのいずれも1.49〜1.56の値であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項13】
前記Npと前記NbとがNp≧Nbの関係があることを特徴とする請求項12に記載の光学シート。
【請求項14】
前記光学機能シート層の前記プリズム部及び前記楔形部が所定の断面を有して長手方向に延在して形成されるとともに、前記光学機能シート層が2層積層され、該2層の光学機能シート層の前記長手方向が一方と他方で直交するように積層されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学シートが備えられることを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−139403(P2009−139403A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312309(P2007−312309)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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