説明

光学シート、及び該光学シートを備える表示装置

【課題】コントラストを維持しつつ、透過率及び視野角を向上させることのできる光学シートを提供する。
【解決手段】映像源より観察者側に配置され、該映像源から出射された光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シート10であって、複数の層のうち少なくとも1層が、光を透過可能にシート面に沿って並列されるプリズム部12、12、…、と、プリズム部間に形成され、光を吸収可能であるとともに光の一部は透過する光吸収部13、13、…と、を有する光学機能シート層11とされ、シート厚方向断面における光吸収部の辺のうち、光学機能シート層の層面側となる辺の少なくとも一方がシート厚方向に曲線又は折れ線状に窪みを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像源より観察者側に配置されて映像光や外光を適切に制御することができる光学シート、及び該光学シートを備える表示装置に関し、詳しくは透過率及び視野角特性を向上させることができる光学シート、及び該光学シートを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と記載することがある。)を用いたテレビ等の表示装置では、PDPよりも観察者側に光学シートが配置されている。この光学シートは、観察者に良質な映像を提供する役割を有する。このために光学シートはシート面に沿って並列され、PDPからの映像光を透過させるプリズム部と、該プリズム部間に配置され、映像光や外光を適切に遮断又は反射してコントラストを向上させたり、ゴーストを抑制したりする光吸収部とを備えている(特許文献1等)。
【0003】
当該光吸収部の形状は特許文献1のように、断面において略三角形であり底辺に相当する部分が映像源側に向けられている。そして当該底辺部分は直線状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−189867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光吸収部のこのような形態によれば該光吸収部の底辺部分に到達した映像光は通常光吸収部に吸収されてしまう。しかし、映像光はできるだけ観察者側に透過させた方が好ましく、これにより映像の明るさ等を向上させることができる。一方で、光吸収部は上記したようにコントラスト向上やゴースト抑制のために不可欠であるから安易にその割合や形状を変更することは回避すべきである。
【0006】
このような問題点に鑑み、本発明はコントラストを維持しつつ、透過率及び視野角特性を向上させることのできる光学シート及び該光学シートを備える表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
請求項1に記載の発明は、映像源(2)より観察者側に配置され、該映像源から出射された光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シート(10、20)であって、複数の層のうち少なくとも1層が、光を透過可能にシート面に沿って並列されるプリズム部(12、12、…、22、22、…)と、プリズム部間に形成され、光を吸収可能であるとともに光の一部は透過する光吸収部(13、13、…、23、23、…)と、を有する光学機能シート層(11、21)とされ、シート厚方向断面における光吸収部の辺のうち、光学機能シート層の層面側となる辺の少なくとも一方がシート厚方向に曲線又は折れ線状に窪みを有することを特徴とする光学シートを提供することにより前記課題を解決する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学シート(10、20)における光吸収部(13、23)を形成する材料が屈折率Nbであり、窪み部分で光吸収部に接する部位が屈折率Naであるときに、NbとNaとの間にNb≧Naの関係があることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学シート(10、20)における光吸収部(13、13、…、23、23、…)の窪み(16、26)を有する辺の長さ(B)が、光吸収部が並列されるピッチ(A)に対して10〜50%であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート(10、20)におけるシート厚方向断面において、光学機能シート層(11、21)のプリズム部(12、12、…、22、22、…)は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、光吸収部(13、13、…、23、23、…)は窪み(16、26)を有する辺を底辺とする三角形であることを特徴とする。
【0012】
ここで「三角形」において窪みを有する辺は直線ではないが、この場合であっても当該窪みを有する辺は三角形の1辺である概念とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート(10、20)におけるシート厚方向断面において、光学機能シート層(11、21)のプリズム部(12、12、…、22、22、…)は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、光吸収部(13、13、…23、23、…)は窪み(16、26)を有する辺を長い下底、他方のシート面側に短い上底を具備する台形であることを特徴とする。
【0014】
ここで光吸収部の「台形」において窪みを有する下底は直線ではないが、この場合であっても当該窪みを有する下底は台形の下底である概念とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光学シート(10、20)におけるプリズム部(12、12、…、22、22、…)の上底と下底との間に具備される台形の斜辺がシート面の法線に対して0度より大きく10度以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学シート(10、20)におけるプリズム部(12、12、…、22、22、…)の上底と下底との間に具備される台形の斜辺が折れ線状、又は曲線からなることを特徴とする。
【0017】
ここで、斜辺が曲線状である場合における該曲線とシート面の法線との成す角は、次のように求める。上記曲線をシート厚方向に10等分し、得られる各曲線の端点を結び直線を得る。そして得られた各直線とシート面の法線との成す角がいずれも0度より大きく10度以下であることが好ましい。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シート(10)における光吸収部(13、13、…)に平均粒径が1μm以上の光吸収粒子(15、15、…)を含有することを特徴とする。
【0019】
ここで「平均粒径が1μm以上」であることにおける「平均粒径が1μm」とは、重量分布法による粒度測定で、粒径が0.5μm以上で、1.5μmより小さい粒子を対象とし、粒度分布において標準偏差が0.3以上であることを意味する。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学シート(10、20)におけるプリズム部(12、12、…、22、22、…)を形成する材料が屈折率Npであり、光吸収部(13、13、…、23、23、…)を形成する材料が屈折率Nbであるときに、NpとNbとの間にNp≧Nbの関係があるとともに、該Np及びNbが1.49〜1.56の値であることを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学シート(30)における光学機能シート層のプリズム部及び光吸収部が所定の断面を有して長手方向に延在して形成されるとともに、光学機能シート層が2層積層(11、31)され、該2層の光学機能シート層の長手方向が一方と他方とで直交するように積層されることを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学シート(10、20)における窪み(16、26)が一方のシート面側に露出して配置されていることを特徴とする。
【0023】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学シート(10、20)にさらに電磁波シールド、調色、反射防止、及び防眩から選ばれる少なくとも1つの作用を有する層が積層されることを特徴とする光学シートを提供することにより前記課題を解決する。
【0024】
請求項13に記載の発明は、映像源(2)、及び請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学シート(10、20)が備えられ、光学シートは、光学機能シート層のうち、窪み(16、26)が設けられた側の層面が映像源側となるように配置されることを特徴とする表示装置(1)を提供することにより前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来の光学シートに比べてコントラストを維持したまま、透過率及び視野角特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第一実施形態にかかる光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図2】図1に示した光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図3】変形例にかかる光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図4】光吸収部が台形である例にかかる光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図5】第二実施形態にかかる光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図6】図5に示した光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図7】第三実施形態にかかる光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図8】第四実施形態にかかる光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図9】図8に示した光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図10】光学シートがガラスパネル方式のプラズマテレビに取り付けられた場面においてPDP及び光学シート部分の層構成を示した図である。
【図11】光学シートが直貼り方式のプラズマテレビに取り付けられた場面においてPDP及び光学シート部分の層構成を示した図である。
【図12】光路例を示す図である。
【図13】光路例を示す他の図である。
【図14】全光線透過率及び拡散反射率の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の上記のような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0028】
図1は第一実施形態にかかる光学シート10の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図1では、見易さのため繰り返しとなる符号は一部省略することがある(以降に示す各図において同じ。)。光学シート10は、光学機能シート層11と、基材層としてのPETフィルム層17と、粘着剤層18とを備えている。上記各層は図1で示した断面を維持して紙面奥/手前方向に延在する。以下に各層について説明する。
【0029】
光学機能シート層11は、光学シート10のシート厚方向断面において略台形であるプリズム部12、12、…と、該プリズム部12、12、…の間に配置された光吸収部13、13、…とを備えている。図2に1つの光吸収部13及びこれに隣接するプリズム部12、12に着目した拡大図を示した。図1、図2、及び適宜示す図を参照しつつ光学機能シート層11について説明する。
【0030】
プリズム部12、12、…は一方のシート面側が上底、他方のシート面側が下底となるように配置された略台形断面を有する要素である。また、プリズム部12、12、…は、屈折率がNpである光透過性樹脂で構成されている。これは通常、電離放射線、紫外線等により硬化する特徴を有する例えばエポキシアクリレート等により形成されている。屈折率Npの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。プリズム部12、12、…内を映像光が透過することにより観察者に映像光が提供される。
【0031】
光吸収部13、13、…は、プリズム部12、12、…の間に配置される部位である。従って、該光吸収部13、13、…はプリズム部12、12、…の上底側を底辺とし、これに対向する頂点をプリズム部12、12、…の下底側とした略三角形形状となる。該光吸収部13、13、…は、屈折率がNbである物質が充填されたバインダー部14と、該バインダー部14に混入された光吸収粒子15、15、…とを備えている。
【0032】
バインダー部14に充填されるバインダー材は、プリズム部12、12、…の屈折率Np以下の屈折率Nbである材料により構成される。屈折率Nbの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。NpとNbとの屈折率の差は特に限定されるものではないが、0〜0.06であることが好ましい。そして該バインダー材として用いられるものも特に限定されることはないが、例えば、電離放射線、紫外線等により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0033】
当該屈折率差と映像光の入射角との関係により、該映像光の一部は光吸収部13、13、…に入射せずにその界面で全反射することができ、これは観察者に提供されるので、明るい映像を提供することが可能となる。
【0034】
ここで、バインダー部14において、図1、図2の紙面左側に配置される辺、すなわちプリズム部12、12、…の短い上底側に配置される光吸収部13の底辺に相当する辺は該辺に対向する頂点側に凸となるように曲線(円弧)状の窪み16が形成されている。従って該窪み16の端部16a、16bの部位はバインダー部14が特に薄くなる。また、当該窪み16を介して光吸収部13に接する部位は屈折率Naを有し、上記したNbとの関係でNa≦Nbであることが好ましい。NaとNbとの差は後述するように光学シートの層構成によって異なり、当該Naの部位が空気層の場合にはNaは1.0となるので、その差がNaとNbとの差になる。一方、ここに粘着剤層が配置された場合には粘着剤の屈折率の観点から、当該NaとNbとの差は通常0〜0.01の範囲であり、0.003程度であることが多い。これにより底辺に入射した映像光であっても観察者側に透過して明るい映像を提供することができるようになる。またその際には映像光が屈折により角度が変えられて出射されるので視野角特性も向上させることが可能となる。具体的な光路については後で説明する。
【0035】
図2にCで示した窪み16の深さは、プリズム部12、12、…の上底面から窪み16の最も深い部位までの距離で定義される。この距離は特に限定されることないが、製造上及び性能の観点から光学機能シート層11の厚さに対して2〜4%であることが好ましい。従って該光学機能シート層11の厚さが100μmの場合であれば当該距離は2〜4μmであることが好ましい。さらに、本実施形態では窪み16は曲線(円弧)状であるが、これが折れ線状であってもよい。
【0036】
光吸収粒子15、15、…は、入手性及び取り扱いの観点から平均粒径が1μm以上の粒子が好ましく、カーボン等の顔料又は赤、青、黄等の染料にて所定の濃度に着色されている。これには例えば市販の着色樹脂微粒子を使用することもできる。当該光吸収粒子15、15、…の屈折率Nrは特に限定されるものではない。
【0037】
ここで、光吸収部13、13、…の光吸収性能は目的によって適宜調整可能であるが、該光吸収部を構成する材料のみで形成された6μm厚さのシートの透過率測定において、透過率が40〜70%となるような光吸収性能を有するように構成されていることが好ましい。透過率を40〜70%とするための手段は特に限定されるものではないが、例えば光吸収粒子の含有量や光吸収性能を調整して適用することを挙げることができる。
【0038】
また、図1にBで示した光吸収部13、13、…の底辺の幅は必要とされる光学的な性能を得ることがでれば特に限定されることはないが、図1にAで示した光吸収部13、13、…のピッチに対して10〜50%であることが好ましい。10%より小さくなると光吸収の効果が小さく、コントラスト低下やゴースト発生が顕著になり、50%より大きくなると逆に光吸収の効果が大きくなり透過率低下により画面が暗くなってしまう場合が多いからである。
【0039】
さらに、光吸収部13、13、…の斜辺(シート厚さ方向に延在する2つの辺)のシート面法線に対する角度θ(図2参照)は特に限定されるものではないが、光吸収部13、13、…による適切な外光及び映像光の吸収、反射の観点から0度より大きく10度以下であることが好ましく、0度より大きく6度以下であることがさらに好ましい。
【0040】
光学機能シート層11の形状は、図1、図2に示したように、プリズム部12、12、…が略台形断面を有し、これらに挟まれて形成される光吸収部13、13、…は略三角形断面を有している。しかし、適切に光を制御することができれば、これら形状は特に限定されることなく適宜適切な形状が採用される。図3に変形例を示した。図3は図2に相当する図で、光学機能シート層11’における1つの光吸収部13’と、その両側に配置されるプリズム部12’、12’に注目して示した図である。図3からわかるように、光吸収部13’の断面における斜辺(プリズム部12’、12’の斜辺)は、1つの斜辺からではなく、2つの斜辺13a’、13a’、13b’、13b’から構成されている。すなわち断面において折れ線状の斜辺を有している。詳しくは、プリズム部12’、12’の上底(短い側の底)側(紙面左側)に配置される斜辺13a’、13a’は光学シートのシート面の法線に対して角度θを有している。一方、プリズム部12’、12’の下底(長い側の底)側(紙面右側)に配置される斜辺13b’、13b’は光学シートのシート面の法線に対して角度θを有している。そして光吸収粒子15’、15’、…及び窪み16’は、上記した光吸収粒子15、15、…及び窪み16と同様に当該変形例にも備えられている。
【0041】
この角度θ、θは、θ>θの関係であるとともにいずれも上記と同様の理由により0度より大きく10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。また、2つの斜辺13a’、13b’は、光学機能シート層11’の厚み方向(紙面左右方向)にTとTに分ける位置で交差する。TとTとは同じ大きさであることが好ましい。
【0042】
当該変形例は、2つの斜辺により構成されている例であるが、さらに多くの斜辺で構成されることにより、断面において折れ線状であっても良い。さらにはこれが曲線状であっても良い。
【0043】
本実施形態では、光吸収部が三角形である場合を示して説明したが光吸収部の形状はこれに限定されるものではなく台形であってもよい。図4に、光吸収部が台形である例における光学シートの光学機能シート層11’’の光吸収部13’’及びこれに隣接するプリズム部12’’、12’’を示した。ここでは、図4のように光吸収部13’’が台形であり、このときには該台形における長い底辺(下底)をプリズム部12’’、12’’、…の上底側に、短い底辺(上底)をプリズム部12’’、12’’、…の下底側に配置することができる。ここで図4にFで示した上底の長さは2〜25μmであることが好ましい。
【0044】
図1に戻り、光学シート10の他の構成について説明する。PETフィルム層17は、該PETフィルム層17上に上記光学機能シート層11を形成するためのベースとなるフィルム層で、PETを主成分として形成されている。当該PETフィルム層17はPETを主成分として含有していれば良く、他の樹脂が含まれてもよい。ここで主成分とはPETフィルム層全体に対して50質量%以上を意味する。また、各種添加剤を適宜な量添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。
【0045】
粘着剤層18は、後述(図10参照)するようにプラズマテレビ1のPDP2より映像出射側に光学シート10を配置させるために他の層等に該光学シートを接着させる粘着剤が配置された層である。粘着剤層18に用いられる粘着剤は光を透過するとともに、適切に光学シート10を他に接着させることができればその材質は特に限定されるものではない。これには例えばアクリル系の共重合体等を挙げることができ、その粘着力は例えば数N/25mm〜20N/25mm程度である。
【0046】
以上説明した光学シート10は例えば次のように製造される。PETフィルム層17の一面側に、プリズム部12、12、…の材料となる液状体を塗布する。次に、プリズム部形状を形成するロール金型とPETフィルムとの間に、上記プリズム部12、12、…となる材料を挟んだ状態で紫外線を照射することにより硬化させてプリズム部12、12、…を形成する。そして、プリズム部12、12、…の間に、バインダー部14の材料となる透明樹脂中に黒色の光吸収粒子15、15、…が添加された液状体を充填し、紫外線を照射することで硬化させて光吸収部13、13、…を形成する。この際、紫外線を照射させる前にバインダー部14の底辺側のシート面をブレードの先端が接触するように走査する。これによりバインダー部14となる樹脂の底辺側の一部がかき取られ、紫外線の照射により窪み16、16、…が形成される。このようにして光学機能シート層11が製造される。さらに、当該製造された光学機能シート層11、PETフィルム層17に粘着剤層18が積層される。
【0047】
図5は第二実施形態にかかる光学シート20の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。光学シート20は、光学機能シート層21と、基材層としてのPETフィルム層27と、粘着剤層28とを備えている。上記各層は図5で示した断面を維持して紙面奥/手前方向に延在する。また、図6には光学機能シート層21における1つの光吸収部23及びこれに隣接するプリズム部22、22に着目した拡大図を示した。
【0048】
光学シート20は、光学シート10の光吸収部13、13、…とは異なり、光吸収部23、23、…に黒又は他の着色された光硬化性の樹脂が充填されることにより光を吸収可能に形成されている。この場合には、上記のようにプリズム部を形成した後、光吸収部となる部位に光吸収性のある当該樹脂を充填し、紫外線等を照射させることにより光吸収部23、23、…を形成することができる。また、光学シート10と同様に光吸収部23、23、…の底辺には窪み26が形成される。光学シート20のかかる構成によっても本発明の光学シートとすることができる。
【0049】
図7は第三実施形態にかかる光学シート30の断面で、層構成を模式的に表した図である。光学シート30は、第一実施形態の光学シート10の光学機能シート層11とPETフィルム層17との間にもう1枚の光学機能シート層31が挟まれて配置されたものである。このとき、プリズム部32及び光吸収部(図には表れない。)が、光学機能シート層11のプリズム部12、12、…及び光吸収部13、13、…と直交する方向に延びるように配置される。従って、光学機能シート層31のプリズム部32と光吸収部とは図7の紙面奥/手前方向に交互に並列されている。
【0050】
図8は第四実施形態にかかる光学シート40の断面で、層構成を模式的に示した図である。また、図9は光学シート40のうちの1つの光吸収部43、該光吸収部43に隣り合うプリズム部42、42、及び粘着剤層48の一部を拡大して示した図である。光学シート40は、光学機能シート層41と、基材層としてのPETフィルム層47と、粘着剤層48とを備えて形成されている。上記各層は図8で示した断面を維持して紙面奥/手前方向に延在する。
【0051】
光学シート40は、上記した光学シート10等と異なり、粘着剤層48が光学機能シート層41の一方の面に備えられている。従って光学機能シート層41は、PETフィルム層47と粘着剤層48との間に配置されている。このような層構成とすることにより、光学シート40を映像源に直接貼り付けるいわゆる直張り方式の映像装置を提供することが可能となる。詳しくは後で説明する。
【0052】
ここで、図9に示したように、本実施形態では、窪み46は粘着剤層48と接触している。ここで粘着剤が上記した屈折率Naである材料であることにより、本発明の効果を奏する光学シートとすることが可能である。
【0053】
以上説明した光学シート10、20、30、40において、基材層については、必ずしもPETを材料とすることはなく、その他にもポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、又はポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂等の「ポリエステル系樹脂」を用いることができる。本実施形態では、性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点からPETを主成分とする樹脂が好ましい材料であるとして説明した。
【0054】
さらに本発明の光学シートには、電磁波を遮断するフィルム層、色調を補正するフィルム層、ネオン線をカットするフィルム層、赤外線をカットするフィルム層、反射を防止するフィルム層、帯電を防止するフィルム層、防眩を目的とするフィルム層等の機能フィルム層が備えられてもよい。
【0055】
次に、上記のような光学シート10が表示装置であるプラズマテレビ1に取り付けられたときの構成について説明する。図10はガラス層6を介して光学シート10がPDP2の映像出射側に積層される形式であるガラスフィルタ方式のプラズマテレビ1における構成を模式的に示した図である。図10では紙面右が観察者側である。ここでは、光学シート10が適用された場合について説明するが、光学シート20、30ついても同様である。
【0056】
図10に示したように、光学シート10は、映像源であるPDP2の映像出射面に積層される。このとき、光学シート10とPDP2との間には図10にEで示した間隙が形成され、ここには通常空気が満たされている。さらに具体的にはガラス層6のPDP2側に光学シート10が粘着剤層18により貼り付けられる。またガラス層6の観察者側には、AS、AR、AGの機能を有する各種層(3、4、5)が設けられている。ここで、「AS」とは「アンチスタティック」の略で帯電防止機能を、「AR」とは「アンチリフレクション」の略で光の反射率を抑える機能を意味する。また「AG」は「アンチグレア」の略でプリズム部表面のぎらつきを防止することができる機能である。
【0057】
ここでは、他に備えられる層としてAS、AR、AGの各種層を例に挙げたが、その他必要に応じてさらに他の機能を有する層を備えることができる。これには例えば、電磁波を遮断する層、赤外線を遮断する層、ネオン線を遮断する層、調色層等を挙げることができる。以下に示す表示装置についても同様である。
【0058】
図11は光学シート40が表示装置であるプラズマテレビ1’に取り付けられた場面を説明するための図である。プラズマテレビ1’はガラスパネルを用いずに、光学シート40を直接にPDP2’の映像出射側に積層する、いわゆる直貼り方式である。従って、光学シート40は粘着剤層48によりPDP2’に貼り付けられて備えられる。また、PETフィルム層47の観察者側には、AS、AR、AGの機能を有する各種層(3、4、5)が設けられている。
【0059】
次に光路について説明する。図12は1つの光吸収部13、113及びこれに隣接するプリズム部12、12、112、112に注目し、光路例を示した図である。図12(a)が光学シート10、図12(b)が従来例の光学シート110を表している。図12(a)からわかるように、光吸収部13の底辺(窪み16)の端部に入射した光L11、L12は、そのバインダー部14の界面形状及び上記した屈折率差によりプリズム部12、12側に広がるように進行する。従って当該光L11及び光L12は光吸収部13に入射したにもかかわらず光学シート10を透過し、映像光として観察者に到達する。これにより透過率を向上させることができる。また上記したように屈折して透過するので視野角特性を向上させることも可能である。
【0060】
一方、図12(b)からわかるように、従来の光学シート110の光吸収部113の底辺端部に入射した光L111、L112は、屈折することなくバインダー114内を直進して光吸収粒子115、115に吸収されてしまう。
【0061】
図13には、光学シートの光吸収部に黒又は他の着色された光硬化性の樹脂が充填されることにより光を吸収可能に形成されている場合の光路例を示した。図13(a)は光学シート20の例、図13(b)は従来の光学シート120の例を表している。図13(a)からわかるように、光吸収部23の底辺(窪み26)の端部に入射した光L21、L22は、該光吸収部23との界面形状及び屈折率差によりプリズム部22、22側に広がるように進行する。この際、光吸収部23は光を吸収できるように形成されてはいるものの、光L21、L22は光吸収部23が薄くなっている部分を進行するので、一部はプリズム部22、22に透過することができる。これにより当該光L21、L22は光吸収部23に入射したにもかかわらず光学シート20を透過し、映像光として観察者に到達する。従って透過率を向上させることができる。また上記したように屈折して透過するので視野角特性の良好な映像光を提供することも可能である。
【0062】
一方、図13(b)からわかるように、従来の光学シート120の光吸収部123の底辺端部に入射した光L121、L122は、屈折することなく光吸収部123内を直進するので該光吸収部123に吸収されてしまう。
【0063】
以上のような構成を備える光学シートに関して、以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。ただし、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例】
【0064】
実施例では、窪みの深さ(図2におけるC)を変更してそのときの透過率、視野角、及びコントラストを測定した。以下具体的に説明する。
【0065】
<試験試料>
試験試料として、光吸収部における窪みの深さを変えた光学シートを作製した。表1に具体的に示した。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示した光学シートについて、全光線透過率、視野角特性及びコントラストの性能試験をおこなった。
【0068】
<視野角特性>
視野角特性は各視野角における相対輝度を求め、正面(視野角が0度)の時の相対輝度に対して1/2の相対輝度となる視野角、及び1/3の相対輝度となる視野角を得ることによりその性能を評価した。
ここで視野角とは、画面の中心からの該画面の法線と、画面の中心へ向けた視線との角度を意味する。視野角の正負は図1における紙面上方を正、紙面下方を負としたものである。相対輝度とは、光学シートを配置しない場合における輝度を100%としたとき、光学シートを配置したときの輝度のこれに対する比率(割合)を意味する。測定は自動変角光度計(村上色彩研究所製、GP−500)により各角度についておこなった。
【0069】
<コントラスト>
コントラストは全光線透過率を拡散反射率で除した値とした。図14に全光線透過率及び拡散反射率の測定方法を説明する図を示した。全光線透過率は、図14(a)に示したように、光学シートを透過した光の全部を対象とし、積分球内の全方位光と照射光との比である。一方、拡散反射率は、全光拡散反射率から45度鏡面反射光分を除外した全方位拡散反射率により定義される。測定は、図14(b)に示したように、光学シートの背面側に標準白色板を配置するとともに、45度鏡面反射光を除外し、そのときの積分球内の全方位光を検出器により得ることで行う。
【0070】
以下に結果について説明する。表2に結果を示した。
【0071】
【表2】

【0072】
表2からわかるように、窪みの深さの増加に伴い若干のコントラスト低下がみられるものの、これに比べて透過率及び視野角特性の向上の方が顕著である。かかる意味で、本発明はコントラストを維持しつつ透過率及び視野角特性を向上することが可能な光学シート、及び該シートを備える表示装置を提供することができる。
【0073】
以上、現時点において最も実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光学シート、及び該光学シートを備える表示装置も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0074】
1 プラズマテレビ(表示装置)
2 プラズマディスプレイパネル(映像源)
10、20、30、40 光学シート
11、21、31、41 光学機能シート層
12、22、32、42 プリズム部
13、23、33、43 光吸収部
14、34、44 バインダー部
15、35、45 光吸収粒子
16、26、46 窪み
17、27、47 PETフィルム層(基材層)
18、28、48 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源より観察者側に配置され、該映像源から出射された光を制御して前記観察者側に出射する複数の層を備える光学シートであって、
前記複数の層のうち少なくとも1層が、光を透過可能にシート面に沿って並列されるプリズム部と、前記プリズム部間に形成され、光を吸収可能であるとともに光の一部は透過する光吸収部と、を有する光学機能シート層とされ、
シート厚方向断面における前記光吸収部の辺のうち、前記光学機能シート層の層面側となる辺の少なくとも一方が前記シート厚方向に曲線又は折れ線状に窪みを有することを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記光吸収部を形成する材料が屈折率Nbであり、前記窪み部分で前記光吸収部に接する部位が屈折率Naであるときに、前記NbとNaとの間にNb≧Naの関係があることを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記光吸収部の前記窪みを有する辺の長さが、前記光吸収部が並列されるピッチに対して10〜50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学シート。
【請求項4】
シート厚方向断面において、
前記光学機能シート層の前記プリズム部は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、
前記光吸収部は前記窪みを有する辺を底辺とする三角形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項5】
シート厚方向断面において、
前記光学機能シート層の前記プリズム部は、一方のシート面側に短い上底、他方のシート面側に長い下底を有する台形であり、
前記光吸収部は前記窪みを有する辺を長い下底、前記他方のシート面側に短い上底を具備する台形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項6】
前記プリズム部の前記上底と前記下底との間に具備される前記台形の斜辺がシート面の法線に対して0度より大きく10度以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の光学シート。
【請求項7】
前記プリズム部の前記上底と前記下底との間に具備される前記台形の斜辺が折れ線状、又は曲線からなることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項8】
前記光吸収部に平均粒径が1μm以上の光吸収粒子を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項9】
前記プリズム部を形成する材料が屈折率Npであり、前記光吸収部を形成する材料が屈折率Nbであるときに、前記NpとNbとの間にNp≧Nbの関係があるとともに、該Np及びNbが1.49〜1.56の値であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項10】
前記光学機能シート層の前記プリズム部及び前記光吸収部が所定の断面を有して長手方向に延在して形成されるとともに、前記光学機能シート層が2層積層され、該2層の光学機能シート層の前記長手方向が一方と他方とで直交するように積層されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項11】
前記窪みが一方のシート面側に露出して配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学シートにさらに電磁波シールド、調色、反射防止、及び防眩から選ばれる少なくとも1つの作用を有する層が積層されることを特徴とする光学シート。
【請求項13】
映像源、及び請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学シートが備えられ、
前記光学シートは、前記光学機能シート層のうち、前記窪みが設けられた側の層面が前記映像源側となるように配置されることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−137772(P2012−137772A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32790(P2012−32790)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【分割の表示】特願2007−247976(P2007−247976)の分割
【原出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】