説明

光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物、及び光学シート

【課題】優れた復元性を有し、且つ、傷付き難い凹凸形状を備えた光学シート、及び当該光学シートを形成するための電離放射線硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】少なくともフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性されたフェノキシエチル(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含む、光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物、及び当該電離放射線硬化性樹脂組成物を用いた光学シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用バックライトのプリズムシート等として用いられる光学シート、及び当該光学シートを形成するための電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等のディスプレイ技術の急速な発展に伴って、それに用いられる光学シートについても、新しい機能を有するものや、より高品質なものに対する需要が高まっている。このような光学シートとしては、例えば、液晶表示装置等のバックライトに用いられるプリズムシート、立体写真や投影スクリーン等に用いられるレンチキュラーレンズシート、及びオーバーヘッドプロジェクターのコンデンサーレンズ等に用いられるフレネルレンズシート、カラーフィルタ等に用いられる回折格子等を挙げることができる。
上記光学シートは、通常、基材と、当該基材上に、所定の屈折率を備え表面に微細な凹凸形状を有し、該凹凸形状は、単位プリズム、単位レンズ等の単位凹凸構造を複数配列させて形成されるのが一般的である。また、上記光学シートは、上記凹凸形状において光を屈折、反射等の幾何光学的作用、或は回折等の波動光学的作用によって変調させることによって、所望の機能を発現するものであり、その用途に応じて上記凹凸形状を構成する樹脂材料、及び単位凹凸構造の形状が決定されるものである。
【0003】
上記光学部材のうち、例えば、液晶表示装置などのバックライトとして使用されるプリズムシート(光学シート)は、当該光学シートのプリズム部(凹凸形状)の上に、更に他の光学シートや、拡散板、或いは拡散フィルムが積層されて用いられる。このような積層体を製造する際に、衝撃または振動によって、上記光学シートのプリズム部が磨耗することがある。
【0004】
また、上記光学シートは、エッジライト型の面光源装置や直下型の面光源装置のいずれにおいても表示パネル側の出光面に配置されている。なお、エッジライト型の面光源装置は、通常、透明なアクリル樹脂等の板状導光体の一側端面から光源光を入射し、その導光体の一方の面である出光面から液晶パネル等の背面に光を出射するように構成された装置であり、直下型の面光源装置は、光源を挟んだ態様で液晶パネルと反射板とを配置してなるものであり、通常、光源からの光を反射板によって液晶パネル等の背面に反射させるように構成された装置である。
【0005】
上記光学シートが備えるプリズム部と、面光源装置が有する導光板、(光)拡散フィルム、或は液晶表示パネル等の隣接する他部材とが接触した場合、工程内等で加わる熱と圧力とにより単位プリズムの頂部がつぶれてしまうという所謂「山つぶれ」の問題があり、更には、プリズム部と導光板とが接触して単位プリズムの頂部に欠けが生じてしまうという問題がある。
こうした単位プリズムの頂部の変形や欠けの問題は、表示装置の表示面に白点(白模様)等の表示ムラを生じさせて表示性能を低下させることとなる。
特に、凹凸形状がプリズムの様な尖った凸部を持つ場合に、以上の、凹凸形状の磨耗、欠け、山潰れの発生が顕著となる。勿論、その他の凹凸形状の光学シートの場合も、程度の差はあれ同様の傾向がある。
【0006】
上記問題点を改善するために、従来、プリズム部に用いられる材料としては、弾性率が高く、形成された単位プリズムの形状が変形しにくいものが用いられてきた(例えば特許文献1)。
特許文献1に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物からなる光学物品(光学シート)は、その硬化物が応力−歪曲線で降伏点を持たないものであり、加わる応力が弾性限度内であるときは、応力から開放されると、弾性復元力により元の形状に復元し、永久歪み(変形)が生じることが無い。
しかしながら、上記光学物品に加わる応力が弾性限度を超えると、当該光学物品に亀裂が生じるという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載のレンズ部(プリズム部)は、特定の物性を有することにより、仮に何らかの外的要因によって上記プリズム部の表面に付された単位プリズムが変形した場合でも、これを元の形状に復元させることができる復元性が付与されており、所望の形状を維持することが可能となっている。
しかしながら、上記プリズム部の有する復元性は、当該プリズム部に加わる外力による変形の問題を解消するのには十分なものではなかった。又、復元性を付与した分、プリズム部の欠けが生じ易くなり、復元性と耐傷付き性とが両立し無いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−61601号公報
【特許文献2】特開2009−37204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、優れた復元性を有し、且つ、傷付き難い凹凸形状を備えた光学シート、及び当該光学シートを形成するための電離放射線硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の成分を含む光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物を用いることにより、上記課題が解決されるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物は、少なくとも下記化学式(1)で表わされるフェノキシエチル(メタ)アクリレート、下記化学式(2)で表わされるエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性されたフェノキシエチル(メタ)アクリレート、並びに、下記化学式(3)で表わされるエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする。
【0011】
【化1】

【0012】
(化学式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0013】
【化2】

【0014】
(化学式(2)中、R及びRは各々独立に、水素原子又はメチル基であり、kは2〜6の正の整数である。)
【0015】
【化3】

【0016】
(化学式(3)中、Rは各々独立に、水素原子又はメチル基である。また、Rは各々独立に、水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2〜20となるように選ばれる正の整数である。)
【0017】
本発明の光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物は、フェノキシエチル(メタ)アクリレートと共に上記特定の構造を有するエチレンオキサイド変性(EO変性)及び/又はプロピレンオキサイド変性(PO変性)されたフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含むことにより、硬化物に柔軟性が付与され、当該硬化物を傷付き難くし、且つ、当該硬化物に外力が加わって形状が変形した場合でも、元の形状に復元可能な復元性を付与することができる。また、当該電離放射線硬化性樹脂組成物は、上記成分と共に上記特定の構造を有するエチレンオキサイド変性(EO変性)及び/又はプロピレンオキサイド変性(PO変性)されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含有することにより、硬化物の柔軟性が更に高まり、当該硬化物の復元性を優れたものにすることができる。
ここで、EO変性又はPO変性されたモノマー(上記EO変性又はPO変性されたフェノキシエチル(メタ)アクリレート、及び上記EO変性又はPO変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレート)は、もとの分子よりも分子鎖が長くなり、分子自体の動ける自由度が増すため、当該EO変性又はPO変性されたモノマーの柔軟性は増加する。これにより、硬化物の外力を吸収あるいは分散させる能力が向上し、当該硬化物は傷付き難くなると考えられる。
【0018】
本発明に係る光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物においては、前記フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量が、光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、15〜30重量%であることが、硬化物を支持するために表面処理済みポリエチレンテレフタレート(PET)などの基材を用いる場合、当該基材に対する密着性を向上させる点から好ましい。
尚、上記電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量とは、通常、溶剤を含まない固形分の全重量を意味し、当該電離放射線硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合には、溶剤を除く全固形分の全重量を意味する。
【0019】
本発明に係る光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物においては、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートを更に含むことが、硬化後の屈折率を高める点から好ましい。
【0020】
本発明に係る光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物においては、フルオレンジ(メタ)アクリレートを更に含むことが、硬化後の屈折率を高め、且つ、傷付き難くする点から好ましい。
【0021】
本発明に係る光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物においては、当該硬化性樹脂組成物の硬化後の屈折率が1.56以上であることが、輝度向上の点から好ましい。
【0022】
本発明に係る光学シートは、本発明に係る光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有することを特徴とする。
本発明の光学シートは、傷付き難く、凹凸形状に外力が加わって形状が変形した場合でも、元の形状に復元させることが可能な優れた復元性を有する。
従って、本発明によれば、凹凸形状の形状が損なわれ難く、所望の形状を維持することが可能な光学シートを提供することができる。
【0023】
本発明に係る光学シートは、動的粘弾性測定で測定される前記凹凸形状の平衡弾性率(80℃、1Hz)が2.0×10Pa未満であり、且つガラス転移温度(Tg)が10℃以上40℃以下とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物は、硬化物が傷付き難く、且つ、当該硬化物に外力が加わって形状が変形した場合でも、元の形状に復元可能な優れた復元性を付与することができる。
また、本発明の光学シートは、凹凸形状の形状が損なわれ難く、所望の形状を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光学シートの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の光学シートの一例を示す概略図である。
【図3】復元性及び傷付き性を測定するための装置を示す図である。
【図4】図4(a)〜4(d)は、復元性及び傷付き性の評価方法を示すための光学シートの概略図である。
【図5】本発明の光学シートを備える面光源装置の一例を示す斜視図である。
【図6】図5で示した面光源装置を備えた液晶表示装置の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下において本発明を詳しく説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
1.光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物
本発明に係る光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物は、紫外線又は電子線で代表される電離放射線により硬化する樹脂であり、必須成分として、下記化学式(1)で表わされるフェノキシエチル(メタ)アクリレート、下記化学式(2)で表わされるエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性されたフェノキシエチル(メタ)アクリレート、並びに、下記化学式(3)で表わされるエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする。
【0027】
【化4】

【0028】
(化学式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0029】
【化5】

【0030】
(化学式(2)中、R及びRは各々独立に、水素原子又はメチル基であり、kは2〜6の正の整数である。)
【0031】
【化6】

【0032】
(化学式(3)中、Rは各々独立に、水素原子又はメチル基である。また、Rは各々独立に、水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2〜20となるように選ばれる正の整数である。)
【0033】
上記化学式(1)で表わされるフェノキシエチル(メタ)アクリレートは樹脂の密着性を高めるために電離放射線硬化性樹脂組成物中に含有され、その含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、15〜30重量%であることが好ましく、更に20〜30重量%であることが好ましく、特に22〜27重量%であることが好ましい。15重量%未満の場合、硬化物を支持するための基材、特にポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂の基材を用いる場合、当該基材に対する密着性が損なわれる恐れがあり、30重量%超過の場合、粘度、復元性など所定の物性を保てなくなる恐れがある。
【0034】
また、上記化学式(2)で表わされるEO変性及び/又はPO変性されたフェノキシエチル(メタ)アクリレートは、上記フェノキシエチル(メタ)アクリレートと共に電離放射線硬化性樹脂組成物中に含有されることにより、当該電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物に柔軟性が付与され、当該硬化物を傷付き難くし、且つ、当該硬化物に外力が加わって形状が変形した場合でも、元の形状に復元可能な復元性を付与することができる。
上記化学式(2)において、kは2〜6の正の整数であり、硬化物の柔軟性を高める観点から、好ましくは2〜4の正の整数、更に好ましくは2〜3の正の整数である。
【0035】
EO変性及び/又はPO変性されたフェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、5〜20重量%であることが好ましく、更に5〜15重量%であることが好ましく、特に5〜10重量%であることが好ましい。5重量%未満の場合、復元性が損なわれる恐れがあり、20重量%超過の場合、プリズム稜線の削れ、摩耗の恐れがある。
【0036】
また、上記化学式(3)で表わされるEO変性及び/又はPO変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレートは、上記2成分と共に電離放射線硬化性樹脂組成物中に含有されることにより、当該電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物の柔軟性が更に高まり、当該硬化物の復元性を優れたものにすることができる。
上記化学式(3)において、n及びmは、n+m=2〜20となるように選ばれる正の整数である。n、mの個々の値及び両者の組合せの例としては、例えば、n=1、m=1でn+m=2、n=1、m=3でn+m=4、n=2、m=2でn+m=4、n=4、m=6でn+m=10、n=2、m=8でn+m=10、n=5、m=5でn+m=10、n=8、m=12でn+m=20、n=10、m=10でn+m=20等である。また、硬化物の柔軟性を高める観点から、n及びmは、好ましくはn+m=2〜12、更に好ましくはn+m=4〜10となるように選ばれる。
【0037】
EO変性及び/又はPO変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、25〜50重量%であることが好ましく、更に30〜45重量%であることが好ましく、特に35〜45重量%であることが好ましい。25重量%未満の場合、プリズム稜線等凹凸部先端の削れ、摩耗の恐れがあり、50重量%超過の場合、粘度、屈折率など所定の物性を保てなくなる恐れがある。
【0038】
また、本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物中に含まれる上記化学式(1)で表わされるフェノキシエチル(メタ)アクリレート、上記化学式(2)で表わされるEO変性及び/又はPO変性されたフェノキシエチル(メタ)アクリレート、及び上記化学式(3)で表わされるEO変性及び/又はPO変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの合計量は、当該電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、45〜80重量%であることが好ましく、更に55〜75重量%であることが好ましく、特に65〜75重量%であることが好ましい。上記必須成分の合計量を上記範囲内とすることにより、粘度、復元性、及び密着性などの所定の物性を得ることができる。
【0039】
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物は、硬化した後の屈折率が1.56以上であることが、該樹脂組成物の硬化物から図1の如きプリズムシートを形成し、図5の如き面光源装置に組み込んだ形態で使用する場合において、輝度向上の点から好ましい。屈折率を1.56以上の高屈折率とする観点から、上記電離放射線硬化性樹脂組成物は、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。当該電離放射線硬化性樹脂組成物がオルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む場合、その含有量は、当該電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、5〜25重量%であることが好ましく、更に8〜15重量%であることが好ましい。5重量%未満の場合、輝度低下の恐れがあり、25重量%超過の場合、復元性、傷付き性など所定の物性を保てなくなる恐れがある。
【0040】
また、本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物は、硬化物を傷付き難くするために硬化反応性の高いフルオレンジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。当該電離放射線硬化性樹脂組成物がフルオレンジ(メタ)アクリレートを含む場合、その含有量は、当該電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、5〜20重量%であることが好ましく、更に5〜15重量%であることが好ましく、特に7〜13重量%であることが好ましい。5重量%未満の場合、所定の屈折率が得られない恐れがあり、20重量%超過の場合、粘度、復元性など所定の物性を保てなくなる恐れがある。
また、フルオレンジ(メタ)アクリレートは硬化後の屈折率を高める効果を有するため、上記オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートと併用することで、密着性を損なうことなく、硬化後の屈折率を高めることができる。このような観点からフルオレンジ(メタ)アクリレートの含有量は、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート100重量部に対して、30〜180重量部であることが好ましく、更に50〜150重量部であることが好ましく、特に80〜130重量部であることが好ましい。
【0041】
また、本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物は、硬化物に適度な硬さを付与するために多官能モノマーを含有してもよい。
多官能モノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性したジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性したイソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性またはプロピレンオキサイド変性したトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、多官能モノマーの含有量としては、電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、0〜10重量%であることが好ましく、更に0〜5重量%であることが好ましく、特に0〜3重量%であることが好ましい。10重量%超過の場合、硬化物が硬くなり過ぎて復元性を損なう恐れがある。
尚、電離放射線硬化性樹脂組成物が上記多官能モノマーを含有しない場合、硬化物に適度な硬さを付与し傷付き難くするために、硬化反応性の高い上記フルオレンジ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0042】
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物は、該組成物を紫外線或は可視光線で硬化せしめる場合には、任意成分として、光重合開始剤を含有することができる。光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。該光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して0.1〜5重量%程度である。
【0043】
(その他の成分)
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物には、前記の成分以外に必要に応じて、シリコーン、酸化防止剤、重合禁止剤、増粘剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線安定剤、消泡剤、溶剤、非反応性アクリル樹脂、非反応性ウレタン樹脂、非反応性ポリエステル樹脂、顔料、染料、拡散剤等も併用することができる。
尚、本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物は、通常、当該電離放射線硬化性樹脂組成物中に含まれる上記必須成分と当該必須成分以外の硬化後に光学シートのマトリクスを形成する成分の合計量が、当該電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、通常、90重量%以上となるように適宜調製される。
【0044】
2.光学シート
本発明に係る光学シートは、前記本発明に係る光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、その表面に複数の単位凹凸構造を配列して成る凹凸形状を有することを特徴とする。
本発明の光学シートは、傷付き難く、凹凸形状に外力が加わって形状が変形した場合でも、元の形状に復元させることが可能な優れた復元性を有する。
従って、本発明によれば、凹凸形状の形状が損なわれ難く、所望の形状を維持することが可能な光学シートを提供することができる。
尚、かかる上記光学シートとしては、その作用機構から大別して、プリズムシート、或はレンズシート等のように、凹凸形状において光を屈折、反射等の幾何光学的作用によって変調して、集光、拡散、屈折、反射等の所望の機能を発現するものと、回折格子、ホログラム等のように、回折等の波動光学的作用によって変調させることによって、回折、分光等の所望の機能を発現するものとが有る。
これらの中でプリズムシートの具体的な形状(構造)を例示すると、三角柱(図1参照)、四角柱、五角柱等の角柱状の単位プリズム(単位凹凸構造)をその稜線方向(延在方向)と直交する方向に多数配列したもの(プリズム線状配列)、三角錘(或は三角錐台)、四角錘(或は四角錐台)、或は円錘(或は円錐台)、等の角錘(台)或は円錐(台)の単位プリズムを透明基材表面において2方向に多数配列したものが挙げられる。
又、レンズシートの具体的な形状(構造)を例示すると、半円柱、或は半楕円柱等の曲面柱状の単位レンズ(単位凹凸構造)をその稜線方向(延在方向)と直交する方向に多数配列したもの(レンチキュラーレンズ)、半球、或は回転楕円体の半裁形状等の曲面状の単位レンズ(単位凹凸構造)をその透明基材表面において2方向に多数配列したもの(蠅の目レンズ)、或は環状又は線状のフレネルレンズが挙げられる。
尚、以下、これらの中でも代表的な、単位プリズムを配列したプリズムシートを具体例として詳述する。
【0045】
図1は本発明の光学シートの一例を示す概略図である。本発明の光学シート1は、一方の面上に複数の三角柱の単位プリズム3からなるプリズム部2を有する。また、プリズム部2は、単位プリズム3をその稜線が平行になるように多数配列させてなるプリズム群である。プリズム部2を有する光学シート1は、1枚構成で用いることもできるが、2方向(上下方向、左右方向)の光拡散角を制御するためには、プリズム部2を有する2枚の光学シート1をその稜線が直交するように積層してもよい。この場合プリズム部2のプリズム面(プリズム頂部)の向きは、2枚とも同じ向きにするのが、光の透過性が高く最も良好であるが、プリズム部2のプリズム頂部が対向して向き合うように構成してもよい。
また、単位プリズム3の構造は、光学機能を発現させることができる構造であれば特に限定されるものではなく、その他、例えば、前記の各種構造のものも用いられる。
なお、プリズム部2のプリズム頂部から平面部2a(光学シートのプリズム部が存在しない側の面)までの厚さは、通常、20〜1000μm程度である。
又、図1及び図2においては、単位プリズムはその主切断面(稜線と直交する断面)の形状が二等辺三角形であるが、要求される光学特性によっては、不等辺三角形とすることも出来る。主切断面における三角形の頂角の値は図1の例では90度であるが、求められる特性に応じて、40〜120度程度の範囲内で各種の値をとることが可能である。
又、図1及び図2においては、プリズム頂部は尖った理想的な三角柱を構成するが、主切断面において、頂部近傍が曲率半径1〜10μm程度の円となるように構成しても良い。この様な形状は、力学的及び幾何学的に、頂部に集中する応力を分散させ頂部の変形及び欠けを低減し得る。それ故、かかる形状の形態は、本発明特定の電離放射線硬化性樹脂組成物の作用と相俟って、傷付き防止性と復元性を良好にする上で好ましい。
【0046】
本発明のプリズム部2は、動的粘弾性測定で測定される平衡弾性率(80℃、1Hz)を2.0×10Pa未満とすることができる。当該プリズム部2の平衡弾性率(80℃、1Hz)は、より好ましくは、0.5×10Pa〜1.7×10Paの範囲内、更に好ましくは0.8×10Pa〜1.7×10Paの範囲内である。当該プリズム部2の平衡弾性率(80℃、1Hz)を2.0×10Pa未満とすることにより、本発明のプリズム部(光学シート)を形状の復元性に優れたものとすることができる。
【0047】
また、本発明のプリズム部2は、動的粘弾性測定で測定される損失弾性率(E”)と貯蔵弾性率(E’)の比である損失正接(tanδ)の極大値を0.6〜3.0の範囲内にすることができる。当該プリズム部2の損失正接(tanδ)の極大値は、より好ましくは0.7〜3.0の範囲内、更に好ましくは0.8〜2.0の範囲内である。当該プリズム部2の損失正接(tanδ)の極大値を0.6〜3.0の範囲内とすることにより、当該プリズム部2のガラス転移温度(Tg)を10℃以上40℃以下、より好ましくは10℃以上30℃以下、更に好ましくは15℃以上28℃以下とすることができる。当該ガラス転移温度(Tg)を上記範囲内とすることにより、本発明のプリズム部(光学シート)の単位プリズムの形状を変形させるものの磨耗性に優れたものとすることができる。
【0048】
ここで、上記平衡弾性率(80℃、1Hz)、損失正接(tanδ)及び、ガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定装置で測定することができる。当該動的粘弾性測定装置では、弾性に相当する貯蔵弾性率(E’)、粘性に相当する損失弾性率(E”)、E”とE’の比であって振動吸収性を反映する損失正接(tanδ)の温度依存性や周波数依存性等を測定することができ、その測定結果により、プリズム部2(単位プリズム3の頂部)を構成する樹脂硬化物の分子内構造に起因するガラス転移温度(Tg)や平衡弾性率等を評価できる。本発明では、引っ張り正弦波、周波数1Hzにて測定し、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度をガラス転移温度(Tg)とし、80℃における貯蔵弾性率(E’)を平衡弾性率とした。
尚、動的粘弾性測定装置としては、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の「粘弾性スぺクトロメータ」(商品名)、(株)ユービーエム社製の「Rheogel E4000」(商品名)を挙げることができる。
【0049】
本発明のプリズム部(光学シート)は、上記特定の物性を有することにより、当該プリズム部の有する単位プリズムの形状が損なわれ難くなり、所望の形状を維持することができる。
尚、プリズム部の復元性及び耐傷付き性は、下記の方法により評価することができる。
すなわち、図3に示すように、耐摩耗試験機の可動盤11上に試験片12(プリズム部)を設定し、当該試験片12上に面積12cmの偏光フィルム13を介して荷重部14に250gの荷重をかける。尚、荷重部の底面は外径20mm、内径10mmのドーナツ状であり、底面積は2.36cmである。そして、当該可動盤11を一方向に20秒間で移動距離100mmを速度5mm/sの条件で図3の矢印方向に移動させた時の試験片12(プリズム部)の頂部の状態を目視及び顕微鏡観察により評価する。測定装置としては、テスター産業(株)製の「AB−301 学振型摩擦堅牢度試験機」(商品名)を挙げることができる。
【0050】
尚、復元性及び耐傷付き性の評価基準は、次の通りである。
[復元性評価]
・評価5:顕微鏡観察(倍率100〜1000の範囲)で形状の変形が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察(倍率100〜1000の範囲)で形状の変形が確認されたが、バックライト上で目視では確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視で確認されたが、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元された。
・評価2:バックライト上で目視で確認されたが、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元されなかったが、35℃に加熱した場合、5分以内に元の形状に復元された。
・評価1:バックライト上で目視で確認されたが、35℃で加熱し5分以内に元の形状に復元されなかったが、80℃で1分加熱した場合、元の形状に復元された。
[耐傷付き性評価]
・評価5:顕微鏡観察(倍率100〜1000の範囲)で傷が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察(倍率100〜1000の範囲)で傷が1本確認されたが、バックライト上で目視では傷が確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視により傷が2〜3本確認された。
・評価2:バックライト上で目視により傷(スジ)が多数確認された。
・評価1:バックライト上で目視によりプリズム表面全面に削れた後が確認された。
尚、上記顕微鏡観察は、顕微鏡の倍率を100〜1000倍の範囲内で適宜調節して行う。
【0051】
ここで、復元性評価3、及び耐傷付き性評価5とは、例えば、試験片12(プリズム部)の単位プリズム頂部に、偏光フィルム13の幅Lの凹みが形成された後(図4(a))、室温(25℃)で10分以内にプリズム形状が元の形状に復元され、且つ顕微鏡観察で傷が確認されなかった場合をいう(図4(b))。また、復元性評価3、及び耐傷付き性評価3とは、例えば、試験片12(プリズム部)の単位プリズム頂部に、偏光フィルム13の幅Lの凹みと、偏光フィルム13の幅Lよりも小さい幅lが形成された後(図4(c))、室温(25℃)で10分以内に、プリズム形状が元の形状に復元されるが、当該プリズム頂部近傍の表面に復元せずに残った傷が2〜3本形成され、当該傷がバックライト上で目視により確認された場合をいう(図4(d))。
また、本発明のプリズム部の復元性評価は、評価3以上であることが好ましく、更に好ましくは評価4以上であり、特に好ましくは評価5以上である。また、当該プリズム部の耐傷付き性評価は、評価3以上であることが好ましく、更に好ましくは評価4以上であり、特に好ましくは評価5以上である。
【0052】
本発明のプリズム部2は、所望の屈折率を備えることにより、単位プリズム3の形状と相俟って特定の機能を発現できるものである。従って、当該プリズム部2の屈折率としては、
本発明の光学シートの用途に応じ、上記単位プリズム3の形状との関係において、所望の機能を発現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、1.50以上であることが好ましく、更に1.50〜1.60の範囲内であることが好ましい。プリズム部2の屈折率が上記範囲内であることにより、例えば、本発明の光学シートを液晶表示装置用バックライトのプリズムシートとして用いた場合に、液晶表示装置の視野角と輝度とを両立可能なように、上記単位プリズム3の形状を制御することが容易になる。
【0053】
(その他の層)
本発明の光学シートにおいては図2に示すように、光学シート1の複数の単位プリズム3が形成された面とは反対側の面に、プリズム部2を支持する透明基材4が設けられていても良い。
透明基材4は、プリズム部2の基材として作用すると共に、光源からの光の多くをプリズム部2側に透過するように作用する。透明基材4は、樹脂材料からなる光透過性の基材であればよく、特に基材単体での透過率が85%以上のものが好ましく用いられる。
透明基材4の厚さは特に限定されないが、通常、ロール巻き可能な50〜500μmの範囲内である。
【0054】
透明基材4としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等で構成された透明性基材を好ましく挙げることができる。
【0055】
また、本発明の光学シート1には、光拡散機能を付与することができる。光拡散機能の付与としては、例えば図2にその一例を示したように、透明基材4の少なくとも一方の面に光拡散層5を設けたり、いわゆるマット処理(光拡散性の微小凹凸の形成)を行ったりすることができる。
【0056】
図2に例示した光拡散層5は、好ましく設けられる任意の層であって、光を拡散させる作用があればよく、一般的な光拡散シートに形成されているものである。例えば光拡散性微粒子が透光性樹脂中に分散した層を適用できる。当該光拡散層5は、透明基材4のプリズム形成面とは反対側の面S2に設けられていてもよいし、透明基材4のプリズム側の面S1とプリズム部2との間(図示しない)に設けられていてもよい。
【0057】
光拡散層5を構成する透光性樹脂としては、上記の透明基材4と同様の樹脂を挙げることができる。また、光拡散性微粒子としては、一般的に光拡散シートに用いられる光拡散性の微粒子が用いられ、例えば、ポリメタクリル酸メチル(アクリル)系ビーズ、ポリメタクリル酸ブチル系ビーズ、ポリカーボネート系ビーズ、ポリウレタン系ビーズ、炭酸カルシウム系ビーズ、シリカ系ビーズ等が挙げられる。
なお、光拡散層5の厚さは、通常、1〜20μmの範囲である。
【0058】
(光学シートの用途)
本発明の光学シートは、例えば、液晶表示装置等のバックライトに用いられるプリズムシート、プロジェクションテレビ等の投影スクリーンに用いられるフレネルレンズシートやレンチキュラーシート等を挙げることができる。本発明の光学シートはこれらのいずれにおいても好適に用いることができるが、中でも液晶表示装置用バックライトのプリズムシートとして好適に用いることができる。
【0059】
<面光源装置>
図5は、本発明の光学シートを備える面光源装置の一例を示す斜視図である。図5の面光源装置20は、いわゆるエッジライト型の面光源装置であり、少なくとも1つの側端面22Aから導入された光を一方の面である光放出面22Bから出射する導光体22と、その導光体22の少なくとも前記1つの側端面22Aから内部に光を入射させる光源24と、導光体22の光放出面22Bに例えば(光)拡散フィルム21を介して設けられ、その光放出面22Bから出射する光を透過する上記本発明に係る光学シート1とを有している。
【0060】
導光体22は、透光性材料からなる板状体であって、図5において左側の側端面22Aから導入された光を、上側の光放出面22Bから出射するように構成されている。導光体22は、光学シート1の材料と同様の透光性材料で形成されるが、通常、アクリル又はポリカーボネート樹脂で形成される。導光体22の厚さは通常1〜10mm程度であり、その厚さは全範囲で一定であってもよいし、図5に示すように、光源24側の側端面22Aの位置で最も厚く、反対方向に徐々に薄くなるテーパ形状であってもよい。この導光体22は、光を広い面(光放出面22B)から出射させるために、その内部又は表面に光散乱機能が付加されていることが好ましい。
【0061】
光源24は、導光体22の少なくとも1つの側端面22Aから内部に光を入射させるものであり、導光体22の側端面22Aに沿って配置されている。光源24としては、図5に示すような線状の光源に限定されるものでなく、白熱電球、LED(発光ダイオード)等の点光源を側端面22Aに沿ってライン状に配置してもよい。また、小形の平面蛍光ランプを側端面22Aに沿って複数個配置するようにしてもよい。
単位プリズムの頂角が80度未満の場合は、図5の場合とは逆に、プリズム部2の側が導光体22側に対峙する向きで配置される。
【0062】
導光体22の光放出面22Bには、上述した本発明に係る光学シート1が、例えば(光)拡散フィルム21を介して設けられる。光学シート1は、そのプリズム部2の反対面が導光体22の光放出面22Bになるように設けられる。
【0063】
光反射板26は、導光体22の光放出面22Bと反対側の面に設けられると共に、側端面22A以外の側端面に設けられ、これらの面から出射する光を反射して導光体22内に戻すためのものである。光反射板26は、薄い金属板にアルミニウム等を蒸着したもの、又は、白色の発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)等が用いられる。
【0064】
<表示装置>
図6は、図5で示したエッジライト型の面光源装置を備えた液晶表示装置の一例を示す概略斜視図である。図6に示す液晶表示装置30は、平面状の透光性表示体である液晶パネル32と、その液晶パネル32の背面に配置され、液晶パネル32を背面から光照射するエッジライト型の面光源装置20とを備えている。この液晶表示装置30は、いわゆるバックライト型の液晶表示装置であり、液晶画面を形成する各画素を面光源装置20からの出射光によって裏側から照明するように構成されている。
【0065】
この液晶表示装置30は、本発明に係る光学シートを備えた面光源装置20を構成部材として有するので、表示面に白点(白模様)等の表示ムラを生じさせることがなく、安定で良好な表示性能を与えることができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0068】
(実施例1)
厚みが125μmのPETフィルム(ルミラーT−60:商品名、東レ社製)上に、塗膜の厚みが、150μmになるように、下記の表1に示す組成の樹脂組成物1を塗布し、水銀燈を用い、780mJ/cmで当該樹脂組成物1に紫外線を照射し、該塗膜を硬化せしめた。その後、上記PETフィルムから当該樹脂組成物1の塗膜を剥離し、これを動的粘弾性評価用サンプルとした。
【0069】
(実施例2〜6、及び比較例1〜2)
下記の表1に示す組成の樹脂組成物2〜8を用い、前記実施例1と同様にして、各実施例及び比較例の動的粘弾性評価用サンプルを作製した。
【0070】
【表1】

*1)フェノキシエチルアクリレート(SR339A:商品名、サートマー社製)
*2)フェノキシエチルアクリレート(EO2モル変性)(ライトアクリレート P−200A:商品名、共栄社化学(株)製)
*3)アクリロイルモルホリン(ACMO:商品名、(株)興人製)
*4)イソボルニルアクリレート(ライトアクリレート IB−XA:商品名、共栄社化学(株)製)
*5)オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート(NKエステル A−LEN−10:商品名、新中村化学工業(株)製)
*6)オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート(MIRAMER M1142:商品名、MIWON社製)
*7)ビスフェノールAジアクリレート(EO4モル変性)(ライトアクリレート BP−4EA:商品名、共栄社化学(株)製)
*8)ビスフェノールAジアクリレート(EO10モル変性)(MIRAMER M2100:商品名、MIWON社製)
*9)ビスフェノールAジメタクリレート(EO2モル変性)(ライトアクリレート BP−2EM:商品名、共栄社化学(株)製)
*10)フルオレンジアクリレート(オグソール F−5503:商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
*11)フルオレンジアクリレート(オグソール F−5010:商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
*12)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(カプロラクトン2モル変性)(KAYARAD DPCA−20:商品名、日本化薬(株)製)
*13)イソシアヌル酸トリアクリレート(EO3モル変性)(アロニックス M−315:商品名、東亞合成(株)製)
*14)ビスフェノールAエポキシジアクリレート(分子量2000)(FLEA−POA(全重量に対するビスフェノールAエポキシジアクリレートの含有量49重量%、フェノキシエチルアクリレートの含有量51重量%):商品名、共栄社化学(株)製)
*15)フェノキシレジン(PAPHEN PKHJ:商品名、インケム社製)
*16)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE184:商品名、チバ・ジャパン株式会社製)
*17)2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリンTPO:商品名、BASF社製)
*18)有機シリコーン(KF618:商品名、信越化学工業(株)製)
【0071】
(評価)
(1)動的粘弾性評価
実施例1〜6及び比較例1〜2で作製した各サンプルを用いて動的粘弾性評価を行った。評価は動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型番:DMS6100)を用い、引っ張り正弦波、周波数1Hz、歪み振幅0.05%、昇温速度3℃/minの条件下で損失正接(tanδ)の極大値、ガラス転移温度(Tg)、及び平衡弾性率(80℃、1Hz)を測定した。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
(実施例7)
単位プリズムの線状配列の凹凸形状が形成されたプリズム型に、上記の表1に示す組成の樹脂組成物1を滴下した後、ポリエチレンテレフタレート基材(PET、商品名:A4300 厚み:125μm 東洋紡績株式会社製)を重ね、ラミネーターでPET全面を上記樹脂組成物1に圧着した。
次に、水銀燈を用い、780mJ/cmで、上記樹脂組成物1に対して紫外線照射を行い、多数の単位プリズムを有するプリズム部を硬化させ、ポリエチレンテレフタレート基材と一体化させた。その後、上記プリズム型を剥離することによって、実施例7の光学シートを得た。
ここで、上記単位プリズムの形状は三角柱形状とした。より詳しくは、単位プリズムの主切断面形状は、高さ25μm、底辺50μm、頂角が90°となる二等辺三角形状とした。そして、各単位プリズムの稜線が互いに平衡になるように複数の単位プリズムを、配列周期50μmで該稜線と直交する方向に多数隣接して配列させて、プリズム線状配列の凹凸形状を表面に有するプリズム型を得た。
【0074】
(実施例8〜12及び比較例3〜4)
上記の表1に示す組成の樹脂組成物2〜8を用い、前記実施例7と同様にして、各実施例及び比較例の光学シートを作製した。
【0075】
(評価)
(2)屈折率
上記で得られた光学シートを長さ20mm、幅10mmに切断したものを試験片とした。当該試験片の屈折率を屈折率計(商品名:NAR−1T SOLID、ATAGO社製)を用い、当該試験片温度25℃、ナトリウム原子スペクトルのD線(λ=589nm)にて、JIS K7105に準拠し測定した。
(3)復元性及び耐傷付き性
上記で得られた光学シートを長さ150mm、幅40mmに切断したものを試験片12とした。図3に示した耐摩耗試験機(商品名:AB−301、テスター(株)製)の荷重部14の可動盤10側の面に、面積12cmの下偏光フィルム13(商品名:H25、大日本印刷(株)製)のマット層とは反対側の面を向け、当該荷重部14に対して当該下偏光フィルム13を巻き込むように固定した。次に、可動盤11の上に、上記試験片12(プリズム部)の頂部が荷重部14側を向くように載置した。当該試験片12(プリズム部)の頂部に、当該下偏光フィルム13のマット層が擦り合さるように荷重部14に250gの荷重をかけ、可動盤11を一方向に20秒間で移動距離100mmを速度5mm/sの条件で移動させた後、試験片12(プリズム部)の頂部の状態を目視及び顕微鏡観察(デジタルマイクロスコープ VHX−200N、(株)キーエンス社製)により観察した。尚、復元性及び耐傷付き性の評価基準は以下の通りである。また、結果を表3に示す。
[復元性評価]
・評価5:顕微鏡観察(倍率500)で形状の変形が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察(倍率500)で形状の変形が確認されたが、バックライト上で目視では確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視で確認されたが、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元された。
・評価2:バックライト上で目視で確認されたが、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元されなかったが、35℃に加熱した場合、5分以内に元の形状に復元された。
・評価1:バックライト上で目視で確認されたが、35℃で加熱し5分以内に元の形状に復元されなかったが、80℃で1分加熱した場合、元の形状に復元された。
[耐傷付き性評価]
・評価5:顕微鏡観察(倍率500)で傷が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察(倍率500)で傷が1本確認されたが、バックライト上で目視では傷が確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視により傷が2〜3本確認された。
・評価2:バックライト上で目視により傷(スジ)が多数確認された。
・評価1:バックライト上で目視によりプリズム表面全面に削れた後が確認された。
【0076】
【表3】

【0077】
(結果のまとめ)
上記表2及び3より、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、特定の構造を有するエチレンオキサイド変性(EO変性)されたフェノキシエチル(メタ)アクリレート、及び特定の構造を有するエチレンオキサイド変性(EO変性)されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物1〜6を用いた実施例7〜12では、復元性の評価が5であった。また、実施例7〜12において、樹脂組成物中に含まれるエチレンオキサイド10モル変性したビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの含有量を増加させることにより、耐傷付き性の評価が向上した。
一方、エチレンオキサイド2モル変性したフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含まない樹脂組成物7を用いた比較例3では、復元性の評価が2、耐傷付き性の評価が2であった。また、エチレンオキサイド2モル変性したフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含まない樹脂組成物8を用いた比較例4では、復元性の評価が1、耐傷付き性の評価が1であった。
【符号の説明】
【0078】
1 光学シート
2 プリズム部
2a 平面部
3 単位プリズム
4 透明基材
5 光拡散層
10 測定装置
11 可動盤
12 試験片(プリズム部)
13 偏光フィルム
14 荷重部
16 傷
20 面光源装置
21 (光)拡散フィルム
22 導光体
22A 側端面
22B 光放出面
24 光源
26 光反射板
30 液晶表示装置
32 液晶パネル
S1 透明基材の一方の面
S2 透明基材の他方の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記化学式(1)で表わされるフェノキシエチル(メタ)アクリレート、下記化学式(2)で表わされるエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性されたフェノキシエチル(メタ)アクリレート、並びに、下記化学式(3)で表わされるエチレンオキサイド変性及び/又はプロピレンオキサイド変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含む、光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物。
【化1】

(化学式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【化2】

(化学式(2)中、R及びRは各々独立に、水素原子又はメチル基であり、kは2〜6の正の整数である。)
【化3】

(化学式(3)中、Rは各々独立に、水素原子又はメチル基である。また、Rは各々独立に、水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2〜20となるように選ばれる正の整数である。)
【請求項2】
前記フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量が、光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物の全重量に対して、15〜30重量%である、請求項1に記載の光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートを更に含む、請求項1又は2に記載の光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
フルオレンジ(メタ)アクリレートを更に含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂組成物の硬化後の屈折率が1.56以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学シート用電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学シート。
【請求項7】
動的粘弾性測定で測定される前記凹凸形状の平衡弾性率(80℃、1Hz)が2.0×10Pa未満であり、且つガラス転移温度(Tg)が10℃以上40℃以下である、請求項6に記載の光学シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−21114(P2011−21114A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167791(P2009−167791)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】