説明

光学バイオセンサー

膜融合因子(fusogen)を必要としない、支持された二分子脂質膜(SBLM)を利用したバイオセンサーが開示されている。該バイオセンサーは、
(a) クッション層を繋ぎ止めるための手段を有する基板;
(b) 該基板の表面に繋ぎ止められた前記クッション層;
(c) 該クッション層を介して脂質二分子膜を前記基板に支持させることを可能にする、前記クッション層と結合するための手段と、光学的問い合せ手段とを有する脂質二分子膜
を含む。該脂質二分子膜は膜融合因子を必要とせず、且つ、二次元流体の相にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光学バイオセンサーに関し、特に、支持された二分子脂質膜(supported bilayer lipid membrane (SBLM))を含んだ、一般的な多検体検出能を有する光学バイオセンサープラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年注目を集めている現象により生物学的因子を検出するセンサーの重要性が脚光を浴びてきており、インビボ及び/又はインビトロにおける外来因子の迅速な検出の必要性は民間及び公的研究機関に多くの挑戦を与えるだろう。最も一般的に用いられている今日利用可能なバイオセンサーアッセイは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)である。ELISAは高い検出感度(pg ml-1)と選択性を発揮するが、分析物の検出には時間がかかり、また数多くの工程を要する。さらに、市販品も利用可能である表面プラズモン共鳴(Malmqvist, 1999)、イムノセンサー(Rowe-Tait, 2001)及び比色定量吸光バイオセンサー(colorimetric absorbance biosensor)(Song, 2002)といった、多くの光学バイオセンサー問い合せ技術がある。代替的なアプローチとしては、支持マトリックス及びシグナル変換器の両者としての多孔質シリコンの使用(Volcker, 2003)、並びに共役高分子バイオセンサーの使用が挙げられる。(Wang, 2000)上記した光学的方法の不利な点は、分析物の濃度が低い場合に、他のタンパク質の非特異的な吸着及び分析溶液中の他の成分に起因する「バルク効果」により偽陽性が生じ得る点である。二分子脂質膜バイオセンサーでは、非特異的吸着の障壁として働く脂質のおかげでこれらの影響は見られない。支持された二分子脂質膜をベースとしたセンサーは生体適合性も向上する。
【0003】
支持された又は繋ぎ止められた二分子脂質膜(SBLM)をバイオセンサー用の支持マトリックスとして用いることについては多くの研究者が提唱している(Sackmann, 1996; Skinner, 2001及びKung, 2000)が、これらのうちのほとんど全てにおいて、用いられている問い合せ技術は二分子膜の電気的性質の変化をモニターするものである。(Cornell, 1997及びTerrettaz, 2001)。これらの方法は単一のイオンチャネルの現象をモニターすることを可能にするものである(Cheng, 2001)が、これらの系の安定性については議論の的となっている。Swansonらは、コレラ毒素の光学的検出用マトリックスとしての脂質二分子膜の使用を提唱した(Song, 1999)。Swansonの系では、脂質二分子膜は、マイクロビーズに直接付着させてもよく、あるいは光導波路を適用するためにガラス基板に付着させることもできる(Kelly, 1999及びSong 2000)。この方法の不利な点は、膜貫通型でないタンパク質へのバイオセンサーの適用が制限される点である。二分子膜の下層が基板に近接するために、流動脂質二分子膜の崩壊及びバイオセンサーの最終的な性能低下に関わる長期安定性の問題も生じ得る。
【0004】
本発明の系は、基板と得られた二分子膜との間のストレプトアビジン/ビオチンリンカーのような結合パートナー間の親和性に基づく「クッション」層の使用を提唱するものである。該使用により、基板が脂質二分子膜の安定性に及ぼす損傷効果が減少するだろう。他のグループ(Delrouye, 2002及びBerquand, 2003)も類似の系を研究しているが、それらはストレプトアビジンクッション層上で小胞融合(vesicle fusion)を引き起こすために膜融合因子(fusogen) (すなわちPEG)の使用を必要とする。我々は脂質組成物が得られた二分子膜の流動性に及ぼす影響も調べた。膜融合因子を使用することの第一の不利益は、バイオセンサーの最終的な適用にかかわる。PEGのような膜融合因子を用いる系では、脂質二分子膜内にPEGが存在することにより引き起こされる、バイオセンシング作用への有害な影響があり得る。PEGはまた、バイオセンシング作用において偽陽性又は偽陰性反応を引き起こし得る。さらに、脂質二分子膜センサーの安定性に対する膜融合因子の添加の長期効果は不明であるが、(PEGを添加することにより)自然状態よりも二分子膜の流動性が増大することで、バイオセンサーの長期安定性は低下するだろう。最後に挙げる点としては、PEGは生体内では一般的な存在ではないため、PEGの存在はバイオセンサーの生体適合性を減少させるおそれがあるが、一方、我々の系では将来的に生体内に適用することが想定されている。
【0005】
【非特許文献1】BERQUAND, A., Mazeran, P-E., Pantigny, J., Proux-Delrouyre, V., Laval. J-M,. Bourdillon, C., 2003. Two Step formation of Strepatavidin Supported Lipid Bilayers by PEG-Triggered Vesicle Fusion. Fluorescence and Atomic Force Microscopy Characterization, Langmuir, 19, 1700-1707.
【非特許文献2】Boger, D.L., goLdberg, J., Silletti, S., Kessler, T., Cheresh, D.A., 2001, Identification of a Novel Class of Small-Molecule Anitangiogenic agents through the Screening of Combinatorial Libraries Which Function by Inhibiting the Binding and Localization of Proteinase MMP2 to Integrin αVβ3., Journal of the American Chemical Society, 123, 1280-1288.
【非特許文献3】Brooks, P.C., Clark, R.F., Cheresh, D.A., 1994, Requirement of Vascular Integrin αVβ3 for angiogenesis, Science, 264, 569-571.
【非特許文献4】Cheng, Y.L., Bushby, R.J., Evans, S.D., Knowles, P.F., Miles, R.E. Ogier, S.D., 2001, Single Channel activity in Suspended Bilayer Films, Langmuir, 17, 1240-1242.
【非特許文献5】Cornell. B.A, Braach-Maksvytis. V.L.B, King. L.G, Osman. P.D.J, Raguse. B, Wieczorek. L and Pace R.J, 1997, A biosensor that uses ion-channel switches, Nature, 387, 580-583
【非特許文献6】Delrouye, V.P., Elie, C., Laval, J-M., Moiroux. J., Bourdillon, C., 2002, Formation of Tethered and Streptavidin-Supported Lipid Bilayers on A Microporous Electrode for the Reconstitution of Membranes of Large Surface Area, Langmuir, 18, 3263-3272.
【非特許文献7】D' Souza, S.E., Haas, T.A., Piotrowicz, R.S., Byers-Ward, V., McGrath, D.E., Soule, H.R., Cierniewski,C., Plow, E.F., Smith, J.W., 1994, Ligand and cation binding are dual functions of a discrete segment of the integrin beta 3 subunit: cation displacement is involved in ligand binding, Cell, 79, 659-667
【非特許文献8】GHADIRI, MR.,1999, Porous silicon-based biosensors. Abstracts of papers of the American Chemical Society, 217:2, 325-ORGN.
【非特許文献9】Holmberg, E, Maruyama, K., Litzinger, D.C., Wright, S., Davis, M., Kabalka, G.W., Kennel, S.J., Huang, L., 1989, Highly efficient immunoliposomes prepared with a method which is compatible with various lipid compositions, Biochem. Biophys. Res. Commun., 165, 1272-1278.
【非特許文献10】Hynes, R.O, 1992, Integrins: versatility, modulation, and signalling in cell adhesion, Cell, 69:1, 11-25.
【非特許文献11】JANSHOFF,A., DANCIL, K.P.S., STEINEM, C., GREINER, D.P., LIN, V.S.Y., GURTNER, C., MOTESHAREI, K., SAILOR, M.J., GHADIRI, M.R.,1998, Macroporous p-type silicon Fabry-Perot layers. Fabrication, characterization and applications in biosensing, Journal of the American Chemical Society, 120:46,12108-12116.
【非特許文献12】Kelly, D., Grace, K.M., Song, X., Swanson, B.I., Frayer, D., Mendes, S.B., Peyghambarian, N., 1999, Integrated Optical Biosensor for Detection of Multivalent Proteins, Optics Letters, 24:23, 1723-1725.
【非特許文献13】Kung, L.A., Kam, L., Hovis, J.S., Boxer, S.G., 2000, Patterning Hybrid Surfaces of Proteins and Supported Lipid Bilayers, Langmuir, 16, 6773-6776.
【非特許文献14】LIN VSY., MOTESHAREI, K., DANCIL, KPS., SAILOR, M.J., GHADIRI M.R.,1997, A porous silicon-based optical interferometric biosensor, Science, 278, 840-843.
【非特許文献15】Malmqvist, M., 1999, BIACORE: an affinity biosensor system for characterization of biomolecular interactions, Biochem Soc. Trans., 27, 335-340.
【非特許文献16】Rowe-Taitt, C.A., Hazzard, J.W., Hoffman, H.E., Cras, J.J., Golden, J.P., Ligler, F.S., 2001, Simultaneous detection of six biohazardous agents using a planar waveguide array biosensor, Biosensors & Bioelectronics, 15, 579-589.
【非特許文献17】Sackmann, E, 1980, Physical Basis of Trigger Process and Membrane Structures Chapman.D Ed, Academic Press, London, 105-143.
【非特許文献18】Sackmann, E., 1996, Supported membranes: scientific and practical applications, Science, 271, 43-48.
【非特許文献19】SAGHATELIAN, A., BURIAK, J., LIN, VSY., GHADIRI, M.R., 2001, Transition metal mediated surface modification of porous silicon, Tetrahedron, 57:24, 5131-5136.
【非特許文献20】Selvin, P.R., 2000, The renaissance of fluorescence resonance energy transfer, Nature Structural Biology, 7:9, 730-734.
【非特許文献21】Salafsky, J., Groves, J.T., BoxeR, S.G., 1996, Architecture and Function of Membrane Proteins in Planar Supported Bilayers: A study with Photosynthetic Reaction Centres, Biochemistry, 35, 14773-14781.
【非特許文献22】Skinner, E.K., Knoll, W., 2001, Current Opinion in Chemical Biology, 5, 705-711.
【非特許文献23】Song, J., Cheng, Q., Zhu, S., Stevens, R.C., 2002, "Smart" Materials for Biosensing Devices: Cell-Mimicking Supramolecular Assemblies and Colorimetric Detection of Pathogenic Agents, Biomedical Microdevices, 4:3, 213-221.
【非特許文献24】Song, X., Swanson, B.I., 1999, Direct, Ultrasensitive and Selective Optical Detection of Protein Toxins using Multivalent Interactions, Analytical Chemistry, 71, 2097-2107.
【非特許文献25】Song, X., Shi., J., Swanson, B., 2000, Flow Cytometry Biosensor for Detection of Multivalent Interactions, Analytical Biochemistry, 284, 35-41.
【非特許文献26】Stupack, D.G., Cheresh, D.A., 2002, Get a Ligand, get a life: Integrins, signaling and cell survival, Journal of Cell Science, 115, 3729-3738.
【非特許文献27】Terrettaz, S., Ulrich, W.P., Guerrini, R., Verdini, A., Vogel, H., 2001, Immunosensing by a Synthetic Ligand-Gated Ion Channel, Angew. Chem., Int., Ed., 40:9, 1740-1742.
【非特許文献28】VOELCKER, N.H., ALFONSO, I., GHADIRI, M.R., 2003, Porous silicon based biosensors: signal amplification by catalyzed pore degradation, Advanced Materials and Nanotechnology Conference, Wellington (2003).
【非特許文献29】Wang, J., Wang, D., Miller, E.K., Moses, D., Bazan, G.C., Heeger, A.J., 2000, Photoluminescence of Water-Soluble Conjugated Polymers: Origin of Enhanced Quenching by Charge Transfer, Macromolecules, 33, 5153-5158.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、膜融合因子を必要としない、支持された二重脂質膜(SBLM)を利用するバイオセンサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、膜融合因子を用いることなくSBLMを利用するバイオセンサーを作製することに成功し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のものを提供する:
1. (a) クッション層を繋ぎ止めるための手段を有する基板;
(b) 該基板の表面に繋ぎ止められた前記クッション層;
(c) 該クッション層を介して脂質二分子膜を前記基板に支持させることを可能にする、前記クッション層と結合するための手段と、光学的問い合せ手段とを有する脂質二分子膜
を含み、前記脂質二分子膜は膜融合因子(fusogen)を必要とせず、且つ、二次元流体の相にあるバイオセンサー。
【0009】
2. 前記クッション層を繋ぎ止めるための手段が、前記基板の表面上に形成された脂質単分子膜(lipid monolayer)と、該脂質単分子膜上に結合された第一の結合パートナーとを含み;前記クッション層は第一の結合パートナーと結合し得る第二の結合パートナーを含むものであって、該クッション層は、前記第一及び第二の結合パートナー間の結合によって該脂質単分子膜を介して基板に繋ぎ止められる、1記載のバイオセンサー。
【0010】
3. 前記第一の結合パートナーがビオチンであり、前記クッション層が前記第二の結合パートナーとしてのアビジン又はその誘導体から本質的に成る2記載のバイオセンサー。
【0011】
4. 前記脂質二分子膜の前記クッション層と結合するための手段が第三の結合パートナーを含み、該第三の結合パートナーは、少なくとも基板表面に面する側の二分子膜表面から突き出しており、且つ、前記第二の結合パートナーと結合し得るものである、1ないし3のいずれか1つに記載のバイオセンサー。
【0012】
5. 前記第三の結合パートナーがビオチンである4記載のバイオセンサー。
【0013】
6. 前記脂質二分子膜が、該脂質二分子膜の二次元流動性を促進するのに有効な量のコレステロール又はその誘導体を含む、1ないし5のいずれか1つに記載のバイオセンサー。
【0014】
7. 前記コレステロール誘導体が式[I]:
【0015】
【化1】

【0016】
(ここでR及びRは独立してアルキル、ベンジル、アルケニル、ヒドロキシル、アミノ、カルボニル、チオール又はシロキシルを表す)
で表される6記載のバイオセンサー。
【0017】
8. 前記アルキル又はアルケニルが1ないし10個の炭素原子を含有する7記載のバイオセンサー。
【0018】
9. コレステロール又はコレステロール誘導体の含有量が、前記脂質二分子膜を構成する脂質分子に対して20モル%ないし35モル%である6ないし8のいずれか1つに記載のバイオセンサー。
【0019】
10. 前記脂質二分子膜が本質的にホスファチジルコリンから成る1ないし9のいずれか1つに記載のバイオセンサー。
【0020】
11. 前記脂質単分子膜が本質的にホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンから成る2ないし10のいずれか1つに記載のバイオセンサー。
【0021】
12. 前記光学的問い合せ手段が、フェルスター共鳴エネルギー転移要素と、生物学的標的に対する特異親和性を有する親和性要素とから成る1ないし11のいずれか1つに記載のバイオセンサー。
【0022】
13. 前記フェルスター共鳴エネルギー転移要素が、それぞれが第一の色素部分(moiety)で標識された第一の脂質分子と、それぞれが第二の色素部分で標識された第二の脂質分子とを含み、該第一の色素の光学発光と該第二の色素の光吸収とが類似のスペクトル特性を有する12記載のバイオセンサー。
【0023】
14. 前記親和性要素が、少なくとも二分子膜の外層中に位置する、検出すべき分析物に対する特異親和性を有する分子部分であって、該親和性要素のそれぞれが二分子膜を構成する脂質分子の一部と連結される13記載のバイオセンサー。
【0024】
15. 前記分析物に対する特異親和性を有する分子部分が、ペプチド、核酸、ホルモン及び生物活性を有する有機化合物から成る群より選ばれる14記載のバイオセンサー。
【0025】
16. 前記分析物に対する特異親和性を有する分子部分が、インテグリンの検出のためのRGD部位を含むオリゴペプチドである14記載のバイオセンサー。
【0026】
17. 前記第一の色素が2-(4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカノイル)-1-ヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン 4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカン酸であり、前記第二の色素が4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカン酸である13ないし16のいずれか1つに記載のバイオセンサー。
【0027】
18. 前記第一の色素が4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカン酸であり、前記第二の色素が6-(((4-(4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-イル)フェノキシ)アセチル)アミノ)ヘキサン酸サクシニミジルエステルである13ないし16のいずれか1つに記載のバイオセンサー。
【0028】
19. 前記基板が第一の結合パートナーを有する多孔質シリコンで作られる1ないし18のいずれか1つに記載のバイオセンサー。
【0029】
20. 前記多孔質シリコンがその表面上にアミノ基を有するように修飾され、前記第一の結合パートナーが該多孔質シリコンに該アミノ基を介して結合する19記載のバイオセンサー。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、膜融合因子を必要としない、支持された二分子脂質膜(SBLM)を利用したバイオセンサーが初めて提供された。以下により具体的に記載するように、我々は新規な支持された二分子脂質膜系をベースとした光学的バイオナノセンサー構造を実証した。2種類の別個のバイオセンサーデザインを利用した。バイオセンサーAでは、蛍光ドナー部分はRGD-BODIPY 530/550コンジュゲートであり、蛍光アクセプター部分はBODIPY 558/568であった。バイオセンサーBでは、蛍光ドナー部分はRGD-BODIPY 558/568コンジュゲートであり、蛍光アクセプター部分はBODIPY TR-X, SEであった。ストレプトアビジン「クッション」系上のバイオセンサーAデザイン脂質二分子膜の膜流動性(2.8 x 10-8 cm2 s-1)はFRAP技術を用いて算出した。膜融合因子は不要であった。ストレプトアビジン「クッション」系上のバイオセンサーBデザイン脂質二分子膜の膜流動性(D = 2.6x10-8cm2s-1)は同様の値であり、光学バイオセンサーに用いられる蛍光色素を変えても膜流動性にはほとんど影響がないということを示していた。NaOH処理したガラス基板を用いて得られた脂質二分子膜の流動性(D = 8x10-8cm2s-1)は、HMDS/ビオチン−ストレプトアビジンクッション層系及び非処理表面の場合と比較して高かったが、これはNaOH処理によりガラス基板表面の滑らかさが増大することに起因しているものと考えることができる。もっとも、親水性及び/又はイオン変化の影響も調べる必要がある。バイオセンサーAデザインを用いた場合には、検出されるHUVEC'感度は細胞1000個ml−1であった。しかしながら、バイオセンサーBデザインを用いた場合では、検出可能なHUVEC感度は細胞25個ml−1と向上していた。
【0031】
本発明の系のための基板としては、無機基板でも有機基板でもよい。基板は好ましくは、表面が親水性を有するように処理されたガラス、酸化アルミニウム又はシリコーンジオキシドの固体板のような、クッション層を繋ぎ止めるための手段に対する親和性を有する無機固体基板であり得る。
【0032】
本発明の二分子脂質膜系は、基板表面上に形成された脂質単分子膜と、該脂質単分子膜上に結合された第一の結合パートナーとを含む、クッション層を繋ぎ止めるための手段を有し得る;該クッション層は、第一の結合パートナーと結合可能な第二の結合パートナーを含んで形成される。第一の結合パートナーはビオチンであり得、クッション層は第二の結合パートナーとしてアビジンを含み得る。脂質二分子膜のクッション層と結合するための手段は、少なくとも基板表面側の二分子膜表面に突き出した、第二の結合パートナーに結合可能な第三の結合パートナーを含み得る。該第三の結合パートナーは、好ましくはビオチンであり得る。二分子脂質膜は、好ましくは、膜融合因子(すなわちPEG)又は外部から添加される他の膜融合因子を用いることなく形成することができる二次元流体膜の相にある。
【0033】
本発明のバイオセンサーでは、光学的問い合せ手段は、フェルスター共鳴エネルギー移動(以下FRETと略す)要素と、生物学的標的に対する特異親和性を有する親和性要素とから成り得る。FRET要素は、第一の色素部分で標識された脂質分子と、第二の色素部分で標識された脂質分子とを含み得、該第一の色素の光学発光と該第二の色素の光吸収とは類似のスペクトル特性を有する。親和性要素は、少なくとも二分子膜の外層中に位置し得る、検出すべき分析物に対する特異親和性を有する分子部分であって、各要素は、二次元流体の相にある二分子膜の脂質分子と連結される。分析物に対する特異親和性を有する分子部分は、ペプチド、核酸、ホルモン及び生物活性を有する有機化合物から成る群より選ばれる。
【0034】
本発明のバイオセンサーは、上記した分析物としての生体物質の検出に適用可能であり得る。例えば、分析物に対する特異親和性を有する分子部分がRGD部位を含むオリゴペプチドである場合、該バイオセンサーはインテグリンの検出に有用であろう。インテグリンαvβ3は、細胞−細胞間及び細胞−細胞外マトリックス(ECM)間の相互作用に重要な、細胞表面結合型の接着受容体である。(Hynes, 1992)腫瘍細胞におけるインテグリンαvβ3の発現は、細胞遊走に重要であると考えられており、腫瘍の増殖阻害のための標的のひとつである。(Brooks, 1994)インテグリンはα及びβサブユニットから成るヘテロダイマーであり、RGDを含むペプチドリガンドがβ3鎖の結合に重要であること(D' Souza, 1994)、及び「低分子の」合成有機分子がαv鎖に選択的に結合可能であること(Boger, 2000)が示されているが、インテグリン上のリガンド認識部位の実際の機構については依然として不明である。しかしながら、インテグリンシグナル伝達経路の第一義的な機構は、ECM由来のリガンドを認識し、細胞表面上に固着させ次いで多量体化する能力である。(Stupack, 2002)インテグリンαvβ3の整列(多量体化)に基づき、本発明のバイオセンサーシグナル変換器が形成されるだろう。リガンドを結合するRGDペプチドは、BODIPY蛍光標識脂質分子と共有結合し、ドナー発色団として働き得る。インテグリン存在下で、RGDを結合させたドナー分子はセンサー表面上に並び、SBLM中にも存在するアクセプター標識された脂質可溶性物質のスペクトル特性に影響するドナーの能力に影響を及ぼすだろう。
【0035】
本発明のバイオセンサーは、第一の色素としてBODIPY 530/550誘導体を、また第二の色素としてBODIPY 558/568誘導体を用いることにより構築することができる。第一の色素としてBODIPY 558/568誘導体を、また第二の色素としてBODIPY TR-X誘導体を組み合わせても好ましく用いることができる。
【0036】
定義
本発明で用いられる「脂質」という語は、水には不溶性だが有機溶媒には易溶性の特徴を示す脂肪質、蝋質又は油質の化合物を意味する。本発明で使用するのに適した脂質としては、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルセリンのようなリン脂質;カルジオリピン;スフィンゴミエリンのようなスフィンゴ脂質が挙げられる。このような脂質は両親媒性である。
本発明で用いられる脂質は、好ましくは二次元の相において流体である。例えば、そのような脂質としては、好ましくは12〜18個の炭素原子を有するカルボニル部分を有する。該カルボニル部分は、脂質膜に流動性を与えるであろう1つ又は2つの不飽和結合を有し得る。
【0037】
本発明で用いられる「二分子脂質膜」という語は、親水基が水相に面し、疎水基が非水相に面した、大部分の生物学的に関心のある分子に対する強力な障壁として働く厚さ5〜10nmの二重の脂質層を意味する。本発明において、二分子脂質膜は基板上に支持されており、細胞表面模倣物(生体模倣)として働く。膜の流動性を高めるため、該二分子脂質膜中にコレステロール又はコレステロール誘導体、好ましくはコレステロールを含ませてもよい。コレステロール含量は二分子膜中の脂質の性質に依存して変わり得るが、好ましくは脂質の20モル%から35モル%である。
【0038】
コレステロール誘導体は、好ましくは上記式[I]で表される。式[I]中、R及びRは独立してアルキル、ベンジル、アルケニル、ヒドロキシル、アミノ、カルボニル、チオール又はシロキシルを表す。アルキル又はアルケニルは好ましくは1ないし10個の炭素原子を含み得る。
【0039】
本発明で用いられる「光学バイオセンサー」という語は、タンパク質、炭水化物、ホルモン、ウイルス、細菌及びペプチドを包含する生物学的に関連した多数の分析物を検出することができる装置を意味する。検出方法は、所望の分析物の存在下における、蛍光色素のような光学活性分子の光学応答の変化を介するものである。
【0040】
本発明で用いられる「基板」という語は、可搬性及び安定性を提供する脂質二分子膜のための支持体を意味する。該基板は有機物であってもよいが通常無機物起源であり、該基板としては、表面上に金、銀、アルミニウム及びクロムのような何らかの金属を被着させた、ガラス、シリコン、酸化アルミニウムベースの物質が挙げられる。該基板としては、多孔質シリコンも好ましく用いることができる。
【0041】
本発明で用いられる「クッション層」という語は、脂質二分子膜と基板との間の生物学的に安定な障壁層を意味する。該「クッション層」は、脂質二分子膜と基板との間に空洞を形成することを可能とし、サイトカイン受容体のような膜貫通タンパク質を、立体化学的理由に起因する生物学的機能の崩壊を生じることなく組み込むことを容易にする。二分子膜を基板から引き離し、しかしクッション層で基板表面に繋ぎ止めることにより、該脂質二分子膜の下の液体量が増大し、それにより得られるバイオセンサーの安定性が向上する。本発明では、「クッション層」としてストレプトアビジンが好ましく用いられる。ストレプトアビジンはビオチンタグが結合された脂質を介して二分子膜に結合される。
【0042】
本発明で用いられる「結合パートナー」という語は、他の分子種との特異的結合性を有し、そのような分子ペアで特異的結合を形成することができる分子種を意味する。基板上の結合パートナーとクッション層の他の結合パートナーとの間の結合により、該クッション層を基板に繋ぎ止めることができ、また、クッション層の結合パートナーと二分子膜の他の結合パートナーとの間の結合により、クッション層を介して該二分子膜を基板に支持させることができる。そのような結合パートナーの好ましい例は、ストレプトアビジンクッション層と、脂質二分子膜中に存在するビオチン脂質及び基板表面上に単分子膜として存在する第二のビオチン脂質との結合を形成することができる。その他の結合パートナーの例としては、コンカナバリンAと、例えばα−D−マンノース及びα−D−グルコースのような糖を挙げることができる。
【0043】
本発明で用いられる「二次元流体の相」という語は、脂質二分子膜が常に動いている二次元の流動する流体であるということを意味する。この二分子膜の流動性は、バイオセンシング作用が生じるために重要である。脂質の流動性はまた、分子の特定の「相」(ゲル、液体ゲル、液体又は固体状態)に依存し、各個の脂質の組成及びそれらのバルクに及ぼす効果により影響を受ける。
【0044】
本発明で用いられる「膜融合因子(fusogen)」という語は、脂質で構成される小胞の崩壊を引き起こして基板及び/又はクッション層表面上でそれらが解きほぐれるようにするための、外部からの試薬(例えばポリエチレングリコール)の添加を意味する。
【0045】
本発明で用いられる「光学的問い合せ手段」という語は、検出下で特定の分析物の濃度をモニターする方法としての、蛍光色素の光学的性質の変化の使用を意味する。
【0046】
本発明で用いられる「RGD」という語は、正しい順序で特定のRGD成分を含むペプチド分子の存在を意味する。ここで、R、G及びDはそれぞれアミノ酸残基アルギニン、グリシン及びアスパラギン酸である。
【0047】
本発明で用いられる「インテグリン」という語は、細胞表面受容体として機能し細胞外マトリックスへの細胞の接着を媒介する、α及びβヘテロダイマーから成るタンパク質を意味する。インテグリンは癌細胞の増殖及び遊走に重要である。とりわけ、ペプチドのRGD成分は、細胞表面上のインテグリンαvβ3に対して高い親和性を示し、インテグリンのクラスター化を生じさせて細胞遊走と増殖を引き起こす。
【0048】
本発明で用いられる「BODIPY 530/550誘導体」という語は、MOLECULAR PROBES (米国オレゴン州Eugene)から購入可能な2-(4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカノイル)-1-ヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミンを意味する。
【0049】
本発明で用いられる「BODIPY 558/568誘導体」という語は、MOLECULAR PROBES (米国オレゴン州Eugene)の4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカン酸を意味する。
【0050】
本発明で用いられる「BODIPY TR-X誘導体」という語は、MOLECULAR PROBES (米国オレゴン州Eugene)から購入可能な6-(((4-(4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-イル)フェノキシ)アセチル)アミノ)ヘキサン酸サクシニミジルエステル(BODIPY(登録商標) TR-X, SE)を意味する。
【0051】
本発明で用いられる「フェルスター共鳴エネルギー移動」という語は、本発明において標的分析物の検出のために用いられる特異的な光学的問い合せ方法に関連する。フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)とは、ある物質(ドナー)から他の物質(アクセプター)へエネルギーを移動させる非放射性の機構である。FRETを生じさせるためには、ドナーの発光とアクセプターの吸光との間に強いスペクトル重複がなければならない(Selvin, 2000)。FRETを起こす色素を用いることで感受性が増大する。なぜなら、該エネルギー移動は下記方程式で表されるように10の相関をもって距離に関係するからである。
1/T = Ke + Ke(R0 / R)6
ここでT=測定されたドナーの寿命(フェルスター移動あり)
Ke=通常のドナーの寿命(フェルスター移動なし)
R0=フェルスター距離
R=ドナー−アクセプター距離
該等式より、シグナル応答において6乗の関係が存在することが分かる。
【0052】
脂質二分子膜及び下層にあるクッション層の流動性は、それぞれ光退色後の蛍光回復(Fluorescence Recovery After Photobleaching (FRAP))及びラングミュア単分子膜(Langmuir monolayer)研究を用いて特徴付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
ここに記載されるバイオセンサーを製造するための一般的な方法は、以下のとおりである。適当な基板(特にガラス、シリコン、酸化アルミニウム)を順次洗浄剤、水及び溶媒中で超音波処理することにより洗浄する。次いで、洗浄し乾燥させた基板表面に対し、1M NaOHのような強アルカリ水溶液中に浸漬させることにより親水性を、あるいはヘキサメチルジシラザン(HMDS)中に浸漬させることにより疎水性を付与する。
【0054】
HMDS処理した基板上に、ラングミュア−ブロジェット(LB)脂質単分子膜を被着させる。そのようなラングミュア−ブロジェット脂質単分子膜混合物は、例えば卵PCを主成分とするような第一の脂質、及びビオチン−PEのような第一の結合パートナーを含有する第二の脂質から成り得る;ここで、これらの脂質は、ビオチン(第一の結合パートナー)基が基板から見て外側に向くようにしてHMDS処理基板上に被着させる。基板上に被着させる脂質混合物は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルセリン;カルジオリピン;スフィンゴミエリンのようなスフィンゴ脂質からなる群より選ばれ得る、2種類又は3種類以上の異なる種類の脂質を含ませて成り得る。基板上の単分子層は、クッション層を繋ぎ止めるための第一の結合パートナーを有しなければならない。上記したとおり、第一の結合パートナーの好適な例の一つはビオチンであり、単分子層を形成する脂質のある一部分と共有結合され得る。そのような第一の結合パートナーを含有する脂質の割合は、単分子層の全脂質の約1モル%から約20モル%、好ましくは約5モル%から約15モル%である。基板上に被着させる単分子膜は、従来のラングミュアトラフを用いることにより気液界面で調製することができる。クロロホルム又はクロロホルム:メタノール混合物のような単分子膜に適した溶媒中に溶解した脂質溶液を該界面に展開することができ、溶媒の蒸発後、所望の表面圧(典型的には27 mN m-1)に達するまで該界面面積を減少させて単分子膜を圧縮することができる。単分子膜が安定化した後、液相中に浸漬したHMDS処理基板を気/水界面を通して引き上げることにより、該基板上に単分子膜を疎水的に被着させる。
【0055】
あるいは、上記した基板及び脂質単分子膜に代えて、第一の結合パートナーを有する多孔質シリコン基板を好ましく用いることもできる。好ましくは、その表面上にアミノ基を有するように多孔質シリコンを修飾することができ、第一の結合パートナーは該アミノ基を介して多孔質シリコンに結合する。多孔質シリコン基板の表面は、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、末端アミン化シロキサンのような、アミノ基を含有するシラン化合物で処理され得る。APTESで処理したシリコン表面の構造を図15下段に示す。アミノ基を用いて、ビオチンのような第一の結合パートナーを多孔質シリコン基板に結合させることができる。一方の末端にカルボキシル基、他方の末端にアミノ基を有するリンカーを利用して又は利用せずに、ビオチンのカルボキシル基を用いてビオチンをアミノ基に結合させることができる。一方の末端にカルボキシル基及び他方の末端にアミノ基を有するリンカーを介して、末端アミン化シロキサンとビオチンが結合した構造例を図15上段に示す。多孔質シリコンの孔の大きさは好ましくは約30nmから400nmであり得る。そのような多孔質シリコンは、ナノ多孔質シリコンと呼ばれる。ナノ多孔質シリコン及びその製造工程自体、並びに末端アミン化シロキサンによるその表面の修飾はこの分野で周知である(Saghatelian et al, 2001; Ghadiri, 1999; Janshoff et al, 1998)。しかしながら、アミノ修飾ナノ多孔質シリコンを光学バイオセンサーにおける脂質二分子膜の基板に適用することは新規である。
【0056】
基板上に被着させた単分子膜の上には、生物模倣「クッション」層を形成することができる。クッション層の例としては、ストレプトアビジン層をビオチン−PE:卵PC単分子膜上に被着させて、基板と脂質二分子膜との間に生物学的に適合性のクッション層を形成することができる。
【0057】
次いで、ストレプトアビジン表面、末端アミノ化基板又はNaOH処理ガラス基板のいずれかと共に小型単層小胞(Small Unilamellar Vesicle(SUV'))をインキュベートする。SUV'が解きほぐれて基板上に脂質二分子膜を形成するために十分な時間をおいた後、過剰の小胞を洗い流す。脂質SUV'は、好ましくは、ストレプトアビジンクッション層に取り付けるためのビオチンタグ付加脂質を含み得る。SUV'のその他の構成成分は、好ましくは、卵ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、コレステロール及び脂質色素ドナー:アクセプターの組み合わせであり得る。好ましくは、ビオチンタグ付加脂質、脂質(例えばホスファチジルコリン+ホスファチジルエタノールアミン)、コレステロール、脂質色素ドナー及びアクセプターの含有量は、それぞれ5ないし20モル%、50ないし70モル%、25ないし35モル%、0.2ないし2モル%及び0.2ないし2モル%(ただし合計が100%を超えず、好ましくは100%)である。
【0058】
脂質色素ドナーは、標的インテグリンを含んだHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)分析物の存在下で凝集するだろう適切に設計されたRGDペプチド分子と結合させる。この凝集機構を通じて、流動脂質二分子膜中のドナー及びアクセプター色素脂質間の平均距離は増大し、それ故にドナーからアクセプター脂質色素部分へのフェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)の減少が起きる。FRETの減少は、RGD−ドナー脂質色素部分の蛍光強度の増加及びアクセプター脂質色素部分における減少によって可視化される。ここには2つの異なるドナー:アクセプター色素分子を記載する。一つ目のデザイン(バイオセンサーA)では、それぞれ、ドナー分子はRGDペプチドを結合させたBodipy 530/550であり、アクセプター分子はBodipy 558/568誘導体である。二つ目のデザイン(バイオセンサーB)では、それぞれ、ドナー分子はRGDペプチドを結合させたBodipy 558/568であり、アクセプター分子はBodipy TR-X, SEである。二分子脂質膜の流動性は、光退色後の蛍光回復(FRAP)を用いて確認した。バイオセンシング作用は、標的インテグリンを含んだ濃度既知のHUVECに曝露させた薄膜バイオセンサーの蛍光をモニターすることにより確認した。
【0059】
本バイオセンサーの主な用途は、生物学的に重要なタンパク質であるインテグリンαvβ3の検出である。本発明の他の考え得る用途としては、インテグリンαvβ3と結合する薬剤に癌細胞を曝露し、次いで薄膜バイオセンサーへのこれらの物質の添加を観察して応答をモニターすることによる、抗癌剤の同定が挙げられる。ここに記載されたバイオセンサーはまた、細菌、ウイルス、ホルモン又は他のタンパク質において見出されたものを包含する、多数の多重リガンド結合受容体の検出にも適用できる可能性がある。記載したバイオセンサーにはまた、脂質二分子膜構想の高い生体親和性のために、持続性の生体診断用インビボ医療装置として用いる可能性もある。
【0060】
本発明の光学バイオセンサーの長期安定性は、該光学バイオセンサーをトレハロース水溶液で処理することにより向上する。該トレハロース溶液は好ましくは5%ないし15%の濃度(w/v)を有し得る。処理は、好ましくは室温で10分間ないし60分間行なわれ得る。下記実施例に具体的に記載されるように、バイオセンサーの長期安定性が向上する。とりわけ、該バイオセンサーが長期間乾燥状態で保たれた場合であっても脂質二分子膜の流動性が維持される。このことにより、本発明のバイオセンサーの実用的価値が上昇する。
【実施例】
【0061】
材料
市販品を購入した試薬は全てそのまま用いた。卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、N-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニル1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン(PDP-PE)、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン−ローダミンコンジュゲート及び1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン-N-(キャップビオチニル) (ナトリウム塩) (BPE)はAvanti (米国アラバマ州Birmingham)から得た。コレステロール(CHOL)、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、水酸化カリウム(KOH)、カプリル酸、塩化カリウム(KCl)、リン酸ナトリウム(第一及び第二型)、トレハロース(99+%)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)、n-オクチル-D-グルコピラノシド(OG). HEPES及びMESはSigma Chemical(米国ミズーリ州St. Louis)から得た。メタノール及びクロロホルムは和光(日本国大阪)から得た。2-(4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカノイル)-1-ヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン(BODIPY 530/550)、4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカン酸(BODIPY 558/568)及び6-(((4-(4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-イル)フェノキシ)アセチル)アミノ)ヘキサン酸サクシニミジルエステル(BODIPY(登録商標) TR-X, SE)はMolecular Probes (米国オレゴン州Eugene)から得た。セファデックスG-25及びセファデックスG-75はPharmacia Biotech (スウェーデン国Uppsala)から得た。スルホサクシニミジル6-[3'(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノエート(スルホ-SPDP)はPierce (米国イリノイ州Rockford)から得た。GRGDSPC及びSPSDGRGペプチド配列(HPLC純度: >90%)はQiagen (日本国東京)により合成された。精製水はMILLIPORE ELIX 10純水製造システムを用いて得た。リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液は10mM Na2HPO4、10mM NaH2PO4及び150mM KClから成り、pHは7.4に調製した。
HUVECはCell Applications, Inc.(米国カリフォルニア州San Diego)から購入した。細胞はGrowth Supplement 211-GS (Cell Applications, Inc.)を添加した基本培地210-485 (Cell Applications, Inc.)中で増殖させた。抗インテグリンαvβ3抗体(LM609)はCHEMICON International, 米国カリフォルニア州Temecula)から購入した。
【0062】
実施例1:
基板の作製
マイクロカバーガラス(22 x 24 mm − 厚さ = 0.12-0.17 mm; 松浪)を順次洗浄剤、水、メタノール中で超音波処理することにより洗浄し、次いでクロロホルムで15分間実質的に洗浄した。各工程間でN下での乾燥処理を行なった。洗浄した基板は次いで下記のとおり保存し(非処理基板)又はHMDS中に12時間以上浸漬して疎水性を付与し、メタノール中で全面的に洗浄し、窒素を用いて乾燥させて必要になるまで80℃で保存した。あるいは、洗浄した基板は1M NaOH中に1〜24時間間隔で浸漬し、エッチングして表面に親水性を付与した。
【0063】
原子間力顕微鏡
画像によりNaOHエッチング液の時間がガラス基板に及ぼす効果が示された。1時間後には、最大高低差216nmのミクロンサイズの細孔が顕著に現れる。2時間後には、ミクロンサイズの細孔は残存するが高低差は348nmまで増大する。5時間後には、認められる最初の細孔壁は腐食されてしまうが、表面が顕著に粗くなる。NaOHエッチングの24時間後には平坦な表面が形成される。NaOH処理ガラスサンプルの表面粗さの特性を、表1に示す他の表面修飾法と比較する。NaOH処理ガラス基板のRMS平均表面粗さ(0.58nm)は、HMDS処理ガラス基板(0.837nm)及び非処理ガラス基板(1.66nm)よりも小さい。
【0064】
【表1】

AFMガラス基板表面粗さ ここでRa=算術平均粗さ、Rq=RMS平均粗さ、Rzjis=10ポイント平均粗さ、Rz=高さの最大値及び最小値間の差
【0065】
実施例2:RGD-BODIPY 530/550コンジュゲートを含む大型単層小胞(LUV')の調製−バイオセンサーA
大型単層小胞(LUV')は、もともとは膜タンパク質の再構成のために発達した界面活性剤透析法(detergent dialysis method)により調製した(Holmberg, 1989)。2%(wt/vol)OGと共に50mM MES緩衝液pH5.5中に溶解させた100μgのBODIPY 530/550にスルホ−SPDP(1mg)を加え、該混合物を室温にて1時間インキュベートした。結合しなかったスルホ−SPDPは、セファデックスG−25カラムを用いて50mM HEPES/0.1 % (wt/vol) OG, pH 8.0で除去し、SPDP活性化BODIPY 530/550溶液にGRGDSPCペプチドを添加した。該溶液を室温で2.5時間インキュベートし、遊離したピリジン−2−チオンの濃度を343nmで分光光度測定した(モル吸光係数:8.08 x 103 M-1cm-1)。この濃度はGRGDSPCペプチドで置換された2−ピリジルジスルフィド残基の濃度と等しい。GRGDSPCペプチド-BODIPY 530/550コンジュゲート(RGD-BODIPY 530/550コンジュゲート)の収量は55.2%と推計された。EPCとCHOLのモル比2:1の薄膜を、OGと共にRGD-BODIPY 530/550コンジュゲートの溶液中に溶解させ、得られた溶液を4℃で一晩インキュベートした。RGD-BODIPY 530/550コンジュゲートを含む小胞は、次いで、セファデックスG−75カラム及びPBSに対する透析を用いて精製した。小胞サイズはサブミクロン粒子アナライザーN4 PLUS (Beckman Coulter)で161.1 ± 34.8 nmと測定された。RGD-BODIPY 530/550コンジュゲートの化学構造を図1に示す。RGD-BODIPY 530/550コンジュゲートをドナー、BODIPY 558/568をアクセプターとして用いることをバイオセンサーAの基盤とした。
【0066】
実施例3:RGD-Bodipy (558/568)コンジュゲートの調製−バイオセンサーB
SUVの組み込みに先立ち、下記の方法を用いてSPSDGRGペプチド配列をBODIPY 558/568脂質可溶性色素に共有結合させた。200μLの2%(wt/vol) OGと共に50 mM MES緩衝液pH5.5中に溶解させたBODIPY 558/568にNHSS (3.5 mg)とEDCI (7.7 mg)を加え、該混合物を室温で10分間インキュベートした。NHSS活性化カルボキシル誘導体を有するBODIPY 558/568は、セファデックスG−25カラムを用いて50 mM HEPES/0.1 %(wt/vol) OG, pH 8.0で精製し、5mgのRGD含有ペプチドSPSDGRGに添加して、穏やかに撹拌しながら4℃にて12時間インキュベートした。得られたRGD-BODIPY (558/568)コンジュゲートは、4℃にて12時間、PBSに対して透析することにより精製した。MASSデータ:計算値:1129.04、実測値:1129.69。RGD-BODIPY (558/568)コンジュゲートの化学構造を図2に示す。RGD-BODIPY 558/568コンジュゲートをドナー、BODIPY TR-X, SE(図3に示すをアクセプターとして用いることをバイオセンサーBの基盤とした。
【0067】
実施例4:小型単層小胞−SUV'の調製
小型単層小胞(SUV')は、Salafskyにより提唱された方法の変法を用いて調製した。(Salafsky, 1996) クロロホルムに溶解させた保存液から、以下のモル%比の各成分をガラスバイアルに加えた。EPC−47モル%, DOPE−12モル%, CHOL−29モル%, BPE−11モル%, 色素脂質=1モル%(ドナー:アクセプター=モル比で50:50)。次いでN下で溶媒を除去し、真空乾燥器を用いて2時間さらに乾燥させた。乾燥させた脂質は次いで、必要に応じ溶解を補助するためにボルテックスしながら、3mlのPBS溶液中で再水和させた。(必要に応じLUV'と共に)封入された溶液は、チップ式の装置で、溶液が透明になるまで(40分)15%の出力で4℃にて超音波破砕した。次いで該溶液を、Beckmann-Coulter超遠心機を用いて4℃にて2時間、60000回転で超遠心し、チタン粒子及び大型/多重膜小胞を除去した。種々の色素脂質ドナー:アクセプター比の組み合わせをSUV'として作製し、分光学的に調べた。SUV'の粒子径解析は、Beckmann-Coulter N4 PLUSサブミクロン粒子アナライザーを用いて行い、該方法を用いて直径47 nm (SD= 9.2 nm)のSUV'をルーチン的に製造した。
【0068】
実施例5:ラングミュア単分子膜/ラングミュア−ブロジェット被着研究
NIMA 601ラングミュアトラフ上で、PBS又は純水下相(subphase)の気液界面に種々の濃度のEPC:BPEの単分子膜を展開した。10分間溶媒を蒸発させた後、5-50 cm2 min-1からのバリア速度での等温線を記録した。下相の温度は25℃に維持した。単分子膜は典型的に、必要とされる表面圧に達するまで(π = 27 mN m-1) 25cm2 min-1のバリア速度で圧縮された。圧縮された単分子膜を20分間安定化させた後、HMDSで前処理した顕微鏡カバーガラスを5mm min-1で疎水的に被着させた。単分子膜の被着の優良性は伝達比が1であることにより確認した。
【0069】
実施例6:ストレプトアビジンインキュベーション及び脂質二分子膜の形成−バイオセンサーA及びB
LB単分子膜を被着させたHMDS処理スライドグラスをストレプトアビジン60μg ml-1PBS溶液と共に1時間インキュベートした。1時間後、該スライドグラスをPBS中で全面的に洗浄し、0.09 mg ml-1脂質小胞溶液と共に2時間インキュベートした。2時間小胞とインキュベートした後、該スライドグラスをPBS中で全面的に洗浄し、次いで二分子膜の流動性又はスペクトル特性を記録した。バイオセンサーAデザインのバイオセンシングの検討には、脂質二分子膜の形成のために標準的なSUV及びRGDペプチドが組み込まれたSUVの等量濃度溶液を用いた。バイオセンサーBデザインには、先に詳述したとおりに作製したSUV'を利用した。LB単分子膜へのストレプトアビジンの結合は、ストレプトアビジン−ローダミンコンジュゲート及び蛍光顕微鏡検査法/分光法を用いて確認した(データ省略)。あるいは、0.09 mg ml-1脂質小胞溶液を直接NaOH処理ガラス又は非処理ガラス基板のいずれかと共に2時間インキュベートした。PBSにて洗浄後、二分子膜の流動性及びスペクトル特性を記録した。
【0070】
実施例7:脂質二分子膜の特徴づけ
落射蛍光装置を取り付けたニコンECLIPSE TS100-F顕微鏡を用いて、光退色後の蛍光回復(FRAP)測定を行った。適当なフィルターを用いて500〜530nmからの広帯域の励起及び550nm以上の発光を許容した。サンプルは、kalrezのOリングを2つのプレートの間に有する2つの血球計数器プレートホルダーの間に置いた。白色光での15〜30秒間のサンプルの光退色(倍率x20でr = 50 μm)はサンプルに依存していた。画像は、サンプルに応じて122ms〜1000msの露光時間で浜松C4742-95デジタルカメラ上に記録した。該画像はSCION image beta 4.02フリーウェアを用いて解析した。蛍光スペクトル解析はPerkin-Elmer LS55発光分光計を用いて行った。EPC:BPEを被着させたラングミュア−ブロジェット膜をPerkin-Elmerキュベットスライドホルダー中に構築した。ストレプトアビジン及び小胞とのインキュベーション後、サンプルの蛍光スペクトルをPBS溶液中で記録した。スキャン速度 = 25 nm min-1, 励起スリット = 2.5 nm, 発光スリット = 10 nm。励起λ = それぞれ530 nm (バイオセンサーA) 及び545nm (バイオセンサーB)。バイオセンシング実験は、PBS溶液部分を除去し、等量のHUVEC溶液をキュベットに加えることにより行った。バイオセンシング応答の感度は次の方程式で決定した。
S = |F0 Ft|/ F0 x 100
ここでS = バイオセンシング応答の感度, F0 = (任意の波長における)細胞添加前の蛍光、及びFt = (任意の波長における)細胞添加後の蛍光である。
【0071】
提唱するセンサーデザインの概略図を図4に示す。提唱するバイオセンシング機構は、インテグリンを含んだHUVEC'存在下におけるRGDペプチド結合BODIPY脂質ドナーの整列を伴い、それ故にドナー色素の蛍光スペクトルの増大が生じる。次いでドナー/アクセプターの距離が図4に示されるように増大するため、エネルギー転移が減少し、従ってBODIPYアクセプター蛍光が減少する。
【0072】
実施例8:ラングミュア単分子膜/ラングミュア−ブロジェット被着研究
ミリポア水下相上の異なるモル%比のEPC:BPEの表面圧等温線を図5に示す。単分子膜中のBPE濃度を増加することにより、純水下相上のラングミュア単分子膜の性質に有意な効果が及ぼされる。BPE濃度が30モル%まで増加すると、液体膨張相は任意の圧に対してより大きい分子面積以上に伸長するようになり、このことからBPEドーピングレベルが高いと単分子膜は圧縮しにくいということが分かる。さらに、80:20の系では37 mN m-1で、70:30の系では29 mN m-1で相転移が起きるようである。相転移以下で推定される分子当たりの断面積は、表2に示すとおり、低ドーピングから高ドーピングにかけて増加を見せる。
【0073】
【表2】

表2はPBS又は水下相上の混合脂質溶液のラングミュア特性を示す。
【0074】
図6はPBS及び純水下相上におけるEPC:BPE(70:30)及びEPCの等温線を比較するものである。下相を純水からPBS(pH=7.4)に変えると、表2に示されるとおりEPC:BPE(70:30)の断面積が増加し、さらに重要なことには、圧縮に沿ったいずれの点においても相転移が生じない。このことは、2成分系単分子膜は純水よりもPBS下相上でより安定であることを示しているのであろう。低断面積且つ低崩壊圧でPBS下相を用いると、EPCの等温線は曲線の延長を呈する。
【0075】
圧安定性曲線(pressure stability curves)(データ省略)と共に、上記等温線データは、PBS下相上において27-33 mN m-1で5 mm min-1の基板速度にて被着させたEPC:BPE (70:30)混合物から最も望ましい被着単分子膜が作製されるということを示していた。
【0076】
実施例9:光退色後の蛍光回復(FRAP)
脂質二分子膜の流動性は、あらかじめ光退色させた領域中への蛍光タグ脂質の拡散によって表現される。拡散係数は下記方程式から概算した。
【0077】
【数1】

【0078】
ここでDは拡散係数、r=光退色させた領域の半径、及びt50=50%蛍光強度回復に要する時間である。(Sackmann, 1980)
【0079】
実施例10:−FRAP−バイオセンサーA
バイオセンサーAデザインについてのFRAP研究においてもたらされた、表3のサンプル5に相当する特徴的な蛍光顕微鏡写真を撮影した(データ省略)。t50の時間は、本系に対し拡散係数D=2.8 x 10-8 cm2s-1を与える図7に示した部分蛍光回復(fractional fluorescence recovery)曲線から算出される。該拡散係数はガラス上に支持された二分子膜に対し見出されたものと一致している。(Salafsky, 1996) 表3の結果は、色素の比率を変更することは拡散係数には何らの影響も及ぼさないが(サンプル1及び2)、LB EPC単分子膜上に二分子膜を構築することにより拡散係数がわずかに増加する(サンプル2及び3)ということを示している。ちなみに、HMDSガラス上に形成させた脂質単分子膜(サンプル4)は、脂質流動性に関する公知文献との一致していることがわかった。これらの結果は、小胞脂質の含有物を操作することにより、得られる二分子膜の流動性を維持しつつも膜融合因子又は他の物質を用いることなく、ストレプトアビジン「クッション」上に流動脂質二分子膜を形成することができるということを示している。
【0080】
【表3】

表3−異なる基板表面上の二分子膜の拡散係数(D)を示す。
【0081】
実施例11−FRAP−バイオセンサーB
破裂させた小胞の脂質膜流動性を、(a) NaOH処理ガラス、(b) HMDS/ストレプトアビジン処理ガラス及び(c) 非処理ガラスの、3種の異なる表面上で測定した。NaOH処理ガラス基板上に形成された脂質二分子膜についてのこれらのFRAP研究(バイオセンサーB)においてもたらされた特徴的な蛍光顕微鏡写真を撮影した(データ省略)。t50の時間は、本系に対し拡散係数D = 8.3 x 10-8 cm2s-1を与える図8に示す部分蛍光回復曲線から算出される。図8には、非処理ガラス基板に支持された脂質二分子膜及びHMDS/ストレプトアビジンに支持された脂質二分子膜に対する部分蛍光回復曲線も示す。HMDS/ストレプトアビジンに支持された脂質二分子膜(D = 2.6 x 10-8 cm2s-1)及び非処理ガラス基板(D = 3.1 x 10-8 cm2s-1)に対する拡散係数は、類似した値を有する非処理表面やHMDS/ストレプトアビジン「クッション」基板のいずれよりも、NaOH処理ガラス上の脂質二分子膜の流動性の方が大きいということを示している。しかしながら、NaOH処理ガラス上の脂質二分子膜の長期安定性は他の基板表面よりも有意に低い。
【0082】
実施例12:HUVECのバイオセンシング−バイオセンサーA
図9は、インテグリンαvβ3を含んだHUVEC 4x103個ml-1に曝露させたときの、提唱するバイオセンサーAデザインの蛍光スペクトルを示す。細胞を添加すると、572nmにおけるピークで顕著な低下、549nmにおけるピークでわずかな上昇が起こる。24%感度は572nmにおいて記録された。HUVECへの曝露時には、RGD結合ドナー脂質が凝集して、HUVEC上に多量体化したインテグリンαvβ3と結合するものと考えられる。ドナー部分の凝集により、549nmにおけるBODIPYドナー分子の蛍光の増大が生じ、ドナー及びアクセプター分子間の距離が増大してドナーからのエネルギー転移が減少し、572nmにおけるBODIPYアクセプター部分の蛍光の減少が生じる。図10はHUVEC濃度が応答感度に及ぼす影響を示す。このデータより、1000〜3000個ml-1の細胞濃度範囲にわたる応答では直線的に変化し、その後平衡飽和状態が始まるものと考えられる。さらに、該光学バイオセンサーは、ウシ血清アルブミン(3.8μM)の添加時には、24時間暴露した後であっても蛍光強度の変化を示さなかった。また、20μg ml-1抗インテグリンαvβ3抗体(LM609)で25℃、60分間プレインキュベートしたHUVEC'に曝露した場合には、蛍光強度に何らの変化もなかった。インテグリン抗体存在下でのこの応答の欠失は、結合反応の特異性を証明するものである。
【0083】
実施例13:HUVECのバイオセンシング−バイオセンサーB
バイオセンサーBデザインを用いたバイオセンシング実験では、24時間エッチングしたガラス基板、HMDS処理基板及び非処理基板のみを用いた。図11は、NaOH処理ガラス基板上に形成された脂質二分子膜に対し、HUVEC細胞を25個 ml-1の濃度で添加することの効果を示す。HUVECに曝露すると、570 nm においてBODIPY 558/568-ペプチドドナー部分の強度の上昇、625 nmにおいてBODIPY TR-X, SEアクセプター部分の強度の低下が認められる。これらの蛍光スペクトルの変化は、ドナーペプチド部分がHUVEC表面上のインテグリンαvβ3タンパク質と結合する際に、該ドナーペプチド部分が脂質膜表面上で多量体化し、従ってドナーからアクセプター部分へのエネルギー転移が減少するという検出機構から予測される。センサー応答に及ぼす濃度の影響を図12に示す。0〜500個 ml-1の低細胞濃度において応答は急速に上昇し、この濃度以上では平衡飽和状態が始まる。
【0084】
図13は、5000個 ml-1のHUVEC'がストレプトアビジン「クッション」脂質二分子膜構造に及ぼす影響を示す。25個 ml-1のHUVEC濃度におけるNaOH処理ガラス系と比較して、本系では応答の度合いが低く観測される。しかしながら、図14の濃度プロットは、ストレプトアビジン支持系がNaOH処理ガラス系よりも大きいダイナミックレンジを有することを示している。4℃で1ヶ月間保存した後にバイオセンシングを示すストレプトアビジン「クッション」脂質構造に比べて、NaOH処理ガラス系の長期安定性は低下する(およそ1週間)。非処理ガラス基板二分子膜系もまたHUVECへの曝露時に応答を示したが、感度は有意に低かった。
【0085】
実施例14:ナノ多孔質シリコン基板の使用
実験
多孔質シリコンの形成及び表面修飾因子の合成は既に実証されている。(Lin et al, 1997; Voelcker et al, 2003)。簡潔に言えば、150-600mA/cm2の電流密度を印加することにより、p型ドープしたシリコンのサンプルをHF溶液中で新たにエッチングした。該ナノ多孔質シリコンを次いで脱イオン水中でよく洗浄し、オゾン洗浄剤を用いて表面を洗浄した。次いで、表面修飾剤、すなわちアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)又はビオチン結合シロキサンを該基板と共にインキュベートした。新しいエタノールで該基板を洗浄した後、該基板をN2中で乾燥させ、FTIRで調べて表面修飾因子の存在を確認したら、脂質二分子膜形成にすぐに使用できるような状態で保存した。使用した2種の表面修飾剤がナノ多孔質シリコンに共有結合している様子を図15に示す。
【0086】
脂質SUV溶液は先に述べた方法により以下の小胞組成物を用いて調製した。卵PC−48モル%, DOPE−12モル%, BPE−10モル%, コレステロール−29モル%, BODIPY 530/550色素−1モル%
【0087】
SUVインキュベートに先立ち、末端ビオチン化多孔質シリコンマトリックスを1mlの50μg ml-1ストレプトアビジンPBS溶液と共に1時間インキュベートした。サンプルをPBS中で十分に洗浄し、非結合のストレプトアビジンを除去した。末端アミノ化及び末端ストレプトアビジン/ビオチン化多孔質シリコン基板を、1mlの0.08mg ml-1脂質SUV溶液と共に2時間インキュベートした。該サンプルを次いでPBS中で十分に洗浄し、得られた二分子膜の流動性をFRAP法を用いて確認した。
【0088】
結果及び考察
末端ビオチン化ナノ多孔質シリコン基板上のストレプトアビジン「クッション」層上に形成した二分子脂質膜の光退色の蛍光顕微鏡像を観察した。光退色前(b4pb)の蛍光画像の滑らかさは、良好な二分子膜形成の目安である。光退色後の拡散過程において、全ての画像で光退色「周縁部」の回復が遅延する。これは通常は見られないことであり、末端アミノ化ナノ多孔質シリコン基板を用いた実験を含む全てのFRAP実験において観察された。最初の光退色のおよそ3時間後に光退色領域の完全な回復に至る。t50の時間は図16に示す蛍光回復曲線から算出され、本系に対し拡散定数
D = 0.7x10-8cm2s-1
を与えた。最も速い拡散定数(2.5x10-8cm2s-1)は、末端アミノ化ナノ多孔質シリコン上の脂質二分子膜で記録された。該定数はガラス上の二分子膜についての文献の標準拡散定数と同様である。他のサンプルでは、小胞融合を介する外層形成に先立ち、ラングミュア−ブロジェット法により親水性を利用して末端アミノ化基板上に卵PC脂質単分子膜を被着させた。本系の拡散定数(1.5x10-8cm2s-1)は非LB膜よりもわずかに小さいが、これは前述した理由によるものと考えられる。
【0089】
実施例14の結論
末端アミノ化多孔質シリコン表面上の脂質二分子膜の流動性は2.5x10-8cm2s-1と記録された。ビオチン/ストレプトアビジン官能基を持たせた多孔質シリコン基板上の脂質二分子膜の流動性は0.7x10-8cm2s-1と測定された。これらの値は多孔質シリコンに支持された脂質二分子膜ナノ構造及びFRETに基づく機構を利用するバイオセンサーとしての可能性を示すものである。
【0090】
実施例15:トレハロースで処理した支持された脂質二分子膜の長期安定性
SUV及び色素を含む溶液を清浄なスライドグラスと共に2時間インキュベートした。次いでサンプルをPBS中で全面的に洗浄し、得られた二分子膜の流動性をFRAP法を用いて確認した。トレハロース存在下での脂質二分子膜の長期安定性の決定は、支持された脂質二分子膜を脱イオン(DI)水中で洗浄してPBS緩衝溶液を除去することにより行なった。次いで5%(m/v)トレハロース(Aldrich 99%) DI水溶液を脂質二分子膜と共に30分間インキュベートした。脂質二分子膜からバルクの溶液を除去し、残存する液体は表面が乾燥するまで窒素下で乾燥させた。サンプルは次いで、再水和が行なわれるまで室温で保存した。脂質二分子膜の再水和は、乾燥した脂質二分子膜−トレハロース複合体をDI水中でリンスし、結合したトレハロースを除去することにより行なった。次いでDI水をPBS緩衝液と交換し、FRAP実験を用いて脂質二分子膜流動性を確認した。
【0091】
結果及び考察
図17は、トレハロースとのインキュベーション及びそれに続く脱水の前の、ガラス上の流動脂質二分子膜の部分蛍光回復を示す。本系について拡散定数2.3x10-8cm2 s-1が算出された。
【0092】
顕微鏡写真の観察により、トレハロース存在下でドライインキュベーション(25日間)した後のガラス基板上の流動脂質二分子膜の一連の部分蛍光回復が示された。該顕微鏡写真はサンプルの光退色後、光退色後80秒、光退色後380秒及び光退色後580秒で記録した。蛍光の完全な回復が観察され、トレハロース存在下で25日間ドライインキュベーションした後の再水和した脂質二分子膜の流動性が示唆された。図18はトレハロースとインキュベーション(ダイアモンド)した場合の光退色後の脂質二分子膜の部分蛍光回復を示す。本系の拡散定数は1.3x10-8cm2s-1と記録された。この値は、当初記録された拡散定数よりも低く、トレハロース中で25日間ドライインキュベーションした後には脂質二分子膜の流動性が低下するものの、該脂質二分子膜には依然として明確な流動性があるということを示している。比較のため、トレハロース非存在下で乾燥させた脂質の部分蛍光回復の欠失を図18中に四角で示す。脂質二分子膜の流動性はFRETに基づくバイオセンサーへの可能な応用にとって重要である。
【0093】
実施例15の結論
トレハロース存在下での25日間のドライインキュベーション後、ガラス上の支持された流動脂質二分子膜(D = 1.3x10-8cm2s-1)を観察した。これにより、トレハロースとのインキュベーション後に流体様構造を維持しひいては長期安定性とこれらの系のバイオセンシングへの可能な応用とを促進する能力が示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】BODIPY 530/550-RGDペプチドコンジュゲートの化学構造を示す。
【図2】BODIPY 558/568-RGDペプチドコンジュゲートの化学構造を示す。
【図3】BODIPY TR-Xの化学構造を示す。
【図4】標的分析物が提唱されるバイオセンサーに及ぼす影響を示す。上図は分析物添加前の蛍光色素標識脂質二分子膜を示す。下図は標的分析物存在下におけるRGD-BODIPY色素の凝集を示す。
【図5】EPC:BPE濃度比がラングミュア等温性に及ぼす影響を示す。
【図6】下相がEPC:BPE単分子膜のラングミュア等温性に及ぼす影響を示す。
【図7】バイオセンサーA系についての特徴的な部分蛍光回復曲線を示す。
【図8】NaOH処理ガラス、非処理ガラス及びHMDS/ストレプトアビジン処理ガラス基板上の脂質二分子膜(バイオセンサーB)についての特徴的な部分蛍光回復を示す。
【図9】4000個 ml−1のHUVEC'がHMDS処理ガラス基板上のEPC:BPE単分子膜上のストレプトアビジン上の脂質二分子膜(バイオセンサーA)の蛍光スペクトルに及ぼす影響を示す。
【図10】HMDS処理ガラス基板上のEPC:BPE単分子膜上のストレプトアビジン上の脂質二分子膜(バイオセンサーA)に対する%応答感度のHUVEC濃度の影響を示す。
【図11】25個 ml−1のHUVEC'がNaOH処理ガラス基板上の脂質二分子膜(バイオセンサーB)の蛍光スペクトルに及ぼす影響を示す。
【図12】NaOH処理ガラス基板上の脂質二分子膜(バイオセンサーB)に対する%応答感度のHUVEC濃度の影響を示す。
【図13】5000個 ml−1のHUVEC'がHMDS処理ガラス基板上のEPC:BPE単分子膜上のストレプトアビジン上の脂質二分子膜(バイオセンサーB)の蛍光スペクトルに及ぼす影響を示す。
【図14】HMDS処理ガラス基板上のEPC:BPE単分子膜上のストレプトアビジン上の脂質二分子膜(バイオセンサーB)に対する%応答感度のHUVEC濃度の影響を示す。
【図15】実施例14で基板として用いたモノ多孔質シリコンに共有結合させた末端ビオチン化及び末端アミノ化シロキサンの構造を示す。
【図16】ナノ多孔質シリコン基板上のストレプトアビジン/ビオチンリンカー上の、脂質に組み込んだBODIPY 530/550色素についての部分蛍光回復曲線を示す。
【図17】ガラス上の、色素を組み込んだ脂質二分子膜についての部分蛍光回復曲線を示す。
【図18】ガラス上の、色素を組み込んだ脂質二分子膜についての部分蛍光回復曲線を示す。トレハロース中で25日間ドライインキュベーションした後の脂質二分子膜を再水和させてFRAPを行なった(ダイアモンド)。比較のため、トレハロースとのインキュベーションを行なわずに液体を除去した場合の脂質二分子膜の蛍光回復の欠失を四角で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) クッション層を繋ぎ止めるための手段を有する基板;
(b) 該基板の表面に繋ぎ止められた前記クッション層;
(c) 該クッション層を介して脂質二分子膜を前記基板に支持させることを可能にする、前記クッション層と結合するための手段と、光学的問い合せ手段とを有する脂質二分子膜
を含み、前記脂質二分子膜は膜融合因子(fusogen)を必要とせず、且つ、二次元流体の相にあるバイオセンサー。
【請求項2】
前記クッション層を繋ぎ止めるための手段が、前記基板の表面上に形成された脂質単分子膜(lipid monolayer)と、該脂質単分子膜上に結合された第一の結合パートナーとを含み;前記クッション層は第一の結合パートナーと結合し得る第二の結合パートナーを含むものであって、該クッション層は、前記第一及び第二の結合パートナー間の結合によって該脂質単分子膜を介して基板に繋ぎ止められる、請求項1記載のバイオセンサー。
【請求項3】
前記第一の結合パートナーがビオチンであり、前記クッション層が前記第二の結合パートナーとしてのアビジン又はその誘導体から本質的に成る請求項2記載のバイオセンサー。
【請求項4】
前記脂質二分子膜の前記クッション層と結合するための手段が第三の結合パートナーを含み、該第三の結合パートナーは、少なくとも基板表面に面する側の二分子膜表面から突き出しており、且つ、前記第二の結合パートナーと結合し得るものである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
前記第三の結合パートナーがビオチンである請求項4記載のバイオセンサー。
【請求項6】
前記脂質二分子膜が、該脂質二分子膜の二次元流動性を促進するのに有効な量のコレステロール又はその誘導体を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
前記コレステロール誘導体が式[I]:


(ここでR及びRは独立してアルキル、ベンジル、アルケニル、ヒドロキシル、アミノ、カルボニル、チオール又はシロキシルを表す)
で表される請求項6記載のバイオセンサー。
【請求項8】
前記アルキル又はアルケニルが1ないし10個の炭素原子を含有する請求項7記載のバイオセンサー。
【請求項9】
コレステロール又はコレステロール誘導体の含有量が、前記脂質二分子膜を構成する脂質分子に対して20モル%ないし35モル%である請求項6ないし8のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項10】
前記脂質二分子膜が本質的にホスファチジルコリンから成る請求項1ないし9のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項11】
前記脂質単分子膜が本質的にホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンから成る請求項2ないし10のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項12】
前記光学的問い合せ手段が、フェルスター共鳴エネルギー転移要素と、生物学的標的に対する特異親和性を有する親和性要素とから成る請求項1ないし11のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項13】
前記フェルスター共鳴エネルギー転移要素が、それぞれが第一の色素部分(moiety)で標識された第一の脂質分子と、それぞれが第二の色素部分で標識された第二の脂質分子とを含み、該第一の色素の光学発光と該第二の色素の光吸収とが類似のスペクトル特性を有する請求項12記載のバイオセンサー。
【請求項14】
前記親和性要素が、少なくとも二分子膜の外層中に位置する、検出すべき分析物に対する特異親和性を有する分子部分であって、該親和性要素のそれぞれが二分子膜を構成する脂質分子の一部と連結される請求項13記載のバイオセンサー。
【請求項15】
前記分析物に対する特異親和性を有する分子部分が、ペプチド、核酸、ホルモン及び生物活性を有する有機化合物から成る群より選ばれる請求項14記載のバイオセンサー。
【請求項16】
前記分析物に対する特異親和性を有する分子部分が、インテグリンの検出のためのRGD部位を含むオリゴペプチドである請求項14記載のバイオセンサー。
【請求項17】
前記第一の色素が2-(4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカノイル)-1-ヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン 4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカン酸であり、前記第二の色素が4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカン酸である請求項13ないし16のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項18】
前記第一の色素が4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカン酸であり、前記第二の色素が6-(((4-(4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-イル)フェノキシ)アセチル)アミノ)ヘキサン酸サクシニミジルエステルである請求項13ないし16のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項19】
前記基板が第一の結合パートナーを有する多孔質シリコンで作られる請求項1ないし18のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項20】
前記多孔質シリコンがその表面上にアミノ基を有するように修飾され、前記第一の結合パートナーが該多孔質シリコンに該アミノ基を介して結合する請求項19記載のバイオセンサー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−514925(P2007−514925A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520439(P2006−520439)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018075
【国際公開番号】WO2005/054859
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000237204)みらかホールディングス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】