説明

光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤および粘着シート

【課題】低ヘイズで、エージング期間が短く、ゲル分率の低下を抑制することができ、そして環境への影響の少ない光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤および粘着シートを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする光学フィルター用粘着性材料において、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に、メタクリルアミドを構成成分として含有させ、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中におけるメタクリルアミドの割合を、0.1〜5質量%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネル等に用いられる光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤(粘着性材料を架橋させた材料)および粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ(LCD)やプラズマディスプレイテレビ(PDP)などのフラットパネルディスプレイにおいては、光学フィルターとして、種々の機能を有するフィルムが粘着剤を介して積層されている。かかる用途で用いられる粘着剤の性能としては、フィルムへの高密着性、高透過率、低ヘイズはもちろんのこと、耐湿熱試験に投入しても粘着剤の色相変化が無いこと、粘着剤の発泡等の物理的変化が無いことなどが求められる。
【0003】
LCDやPDPは毎年モデルチェンジを行っており、積層するフィルムの種類や光学フィルター構成がモデルによって異なる。特にPDPの光学フィルター構成は、目まぐるしく変化する。
【0004】
ここで、光学フィルターを構成する層として、金属メッシュや金属スパッタフィルム等が用いられることがある。このような金属材料の表面に、カルボン酸が含まれている粘着剤を貼付すると、カルボン酸によって金属が腐食し、色相が劇的に変化するおそれがある。また、粘着剤中に紫外線吸収剤(UVA)や色素(染料、顔料など)を含有させることもあるが、粘着剤中にカルボン酸が存在すると、UVAや色素に影響を及ぼし、それらの性能が耐久試験で変化するおそれがある。そのため、光学フィルター用の粘着剤にはカルボン酸フリーが求められる。
【0005】
また、光学フィルター用の粘着剤には、凝集力を調整するために、多官能の架橋剤が添加される。そのため、粘着剤を構成するポリマーには、架橋剤と反応するための官能基が必要である。上述したとおり、官能基としてカルボン酸を使用することは回避した方がよいため、官能基としては水酸基が有用である。ただし、水酸基を含むモノマーの導入量を増やすと、耐湿熱試験にて粘着剤に水が浸入して、浮き等の物理的な欠点が発生するおそれがある。
【0006】
一方、上記架橋剤としては、水酸基と反応する官能基を複数有する多官能架橋剤であるイソシアナート系架橋剤が有効である。水酸基とイソシアナートとの反応は室温で進行するが、反応が終了するためには通常2〜3週間必要である。しかしながら、エージング期間が2〜3週間となると、在庫量の増加、客先への納入期日の遅れ等の問題が発生するおそれがある。また、粘着剤にUVAや色素を添加した場合は、それらの影響によりエージング期間が3週間以上になることがあり、設計通りに架橋が進まず、粘着物性が安定しない等の問題が発生する。
【0007】
そこで、水酸基とイソシアナートとの反応に要するエージング期間を短縮する手段として、下記の方法がある。
(1)イソシアナート量に比べて水酸基量を2倍以上増やして、エージング期間を短縮する。
(2)反応を促進する酸や塩基の触媒を添加して、エージング期間を短縮する。
【0008】
上記(1)の方法は、水酸基を増やすと耐湿熱試験にて欠点が発生するおそれがあるため、用いることは困難である。一方、(2)の方法における酸系の触媒は、被着体を腐食するおそれがあるため使用できないが、塩基系の触媒は使用可能であり、有用な方法である。
【0009】
塩基系の触媒としては、アミド系触媒およびアミン系触媒が存在する。アミド系の触媒と比べて、アミン系の触媒の方が反応促進効果が高く、水酸基とイソシアナートとの反応に用いられることが多い。かかる塩基系の触媒として、一般的には、トリエチレンジアミン等の触媒が使用されるが、粘着剤の組成によっては、触媒を添加すると相溶性が悪く、白濁するおそれがある。そこで、触媒効果を有するアミン系のモノマーを共重合した粘着剤が提案されている(特許文献1)。触媒効果を有するアミン系のモノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)等を用いることが有効である。
【0010】
DMAEAは触媒としては非常に効果的であり、白濁せずにエージング期間を1週間以内にすることが可能である。しかしながら、触媒の効果が高いがゆえ、粘着剤にUVAや色素が含まれる場合、架橋剤のイソシアナートとUVAまたは色素の官能基の反応も同時に促進してしまうため、粘着剤と架橋剤との反応が設計通り進まず、粘着剤のゲル分率が低下し、結果的に粘着剤の凝集力が低下するおそれがある。
【0011】
また、触媒効果のあるモノマーとして、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等のアミド系のモノマーが使用されることがある(特許文献2)。アクリルアミドは、凝集力調整等の粘着剤の物性調整に使用され、イソシアナートと水酸基との反応を促進させる触媒効果も有している。しかし、アクリルアミドは、環境負荷物質として懸念されており、使用にあたっては注意が必要である。一方、ジメチルアクリルアミドは、イソシアナートと水酸基の反応を促進させる触媒効果が低く、使用できない。その他、アミン系よりも触媒効果が高いスズ系の触媒が存在するが、当該スズ系の触媒も環境負荷物質として懸念されており、使用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−199148号公報
【特許文献2】特開2008−119892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたものであり、低ヘイズで、エージング期間が短く、ゲル分率の低下を抑制することができ、そして環境への影響の少ない光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤および粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする光学フィルター用粘着性材料であって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、メタクリルアミドを構成成分として含有しており、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中における前記メタクリルアミドの割合は、0.1〜5質量%であることを特徴とする光学フィルター用粘着性材料を提供する(発明1)。
【0015】
上記発明(発明1)によれば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体にメタクリルアミドを所定量使用することで、低ヘイズで、エージング期間が短く(1週間以内)、ゲル分率の低下を抑制することができ、そして環境への影響の少ない光学フィルター用粘着剤が得られる。
【0016】
上記発明(発明1)において、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、反応性官能基として水酸基を有する単量体を構成成分として含有しており、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中における前記単量体の割合は、0.5〜5質量%であることが好ましい(発明2)。
【0017】
上記発明(発明1,2)において、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、不飽和カルボン酸を構成成分として含有しないことが好ましい(発明3)。
【0018】
上記発明(発明1〜3)においては、イソシアネート系多官能架橋剤をさらに含有することが好ましい(発明4)。
【0019】
上記発明(発明1〜4)においては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤をさらに含有することが好ましい(発明5)。
【0020】
上記発明(発明1〜5)においては、フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、チオール錯体系化合物およびセシウム酸化タングステン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の近赤外線吸収剤をさらに含有することが好ましい(発明6)。
【0021】
上記発明(発明1〜6)においては、ベンゾトリアゾール系の防錆剤をさらに含有することが好ましい(発明7)。
【0022】
第2に本発明は、前記光学フィルター用粘着性材料(発明1〜7)を架橋してなる光学フィルター用粘着剤を提供する(発明8)。
【0023】
第3に本発明は、基材と、粘着剤層とを備えた光学フィルター用粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記光学フィルター用粘着剤(発明8)からなることを特徴とする光学フィルター用粘着シートを提供する(発明9)。
【0024】
上記発明(発明9)において、前記基材は、光学部材であることが好ましい(発明10)。
【0025】
第4に本発明は、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備えた光学フィルター用粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記光学フィルター用粘着剤(発明8)からなることを特徴とする光学フィルター用粘着シートを提供する(発明11)
【0026】
上記発明(発明9〜11)に係る光学フィルター用粘着シートは、プラズマディスプレイパネルに用いられることが好ましい(発明12)。
【発明の効果】
【0027】
本発明の光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤および粘着シートは、ヘイズが低く光学用途に適しており、また、エージング期間を1週間以内に抑えることができるとともに、UVAや色素を添加した場合でもゲル分率の低下を抑制することができ、さらには環境への影響も少ない、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学フィルター用粘着シートの断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光学フィルター用粘着シートの断面図である。
【図3】光学フィルターの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔光学フィルター用粘着性材料〕
本実施形態に係る光学フィルター用粘着性材料(以下「光学フィルター用」を省略する場合がある。)は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、メタクリルアミドを構成成分として含有する。そして、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中におけるメタクリルアミドの割合は、0.1〜5質量%であり、好ましくは0.3〜4質量%である。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が上記の割合でメタクリルアミドを構成成分として含有することで、得られる粘着剤のエージング期間を1週間以内にすることができ、また、本実施形態に係る粘着性材料に紫外線吸収剤(UVA)や色素を添加しても、ゲル分率の低下を招くことはない。さらには、得られる粘着剤のヘイズが高くなることもない。しかも、メタクリルアミドは、環境への影響も少ない。
【0031】
なお、メタクリルアミドの割合が0.1質量%未満であると、架橋促進の効果が低く、得られる粘着剤のエージング期間を上記のように短くすることができない。また、メタクリルアミドは共重合し難い化合物であるため、メタクリルアミドの割合が5質量%を超えると、共重合体が得られ難く、また分子量も大きくなり難い。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、メタクリルアミドを構成成分として含有し、好ましくは、各種架橋方法によって架橋が可能な架橋点を有するものが用いられる。
【0033】
上記のような架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に反応性官能基を有する単量体と、メタクリルアミドと、所望により用いられる他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。
【0034】
エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
分子内に反応性官能基を有する単量体の反応性官能基は、水酸基であることが好ましい。水酸基は、後述するイソシアネート系多官能架橋剤との反応性に優れる。
【0036】
分子内に水酸基を有する単量体(水酸基含有モノマー)の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中における水酸基含有モノマーの割合は、0.5〜5質量%であることが好ましく、特に0.8〜4質量%であることが好ましい。水酸基含有モノマーを上記範囲で含有することで、得られる粘着剤の架橋の程度が光学フィルター用として好ましいものとなり、耐久性および貼合適性が良好となる。また、水酸基含有モノマーの含有量が0.5質量%未満では、得られる粘着剤の架橋が十分でなく、それにより耐久性に劣るおそれがある。水酸基含有モノマーの含有量が5質量%を超えると、得られる粘着剤にて耐湿熱試験を行ったときに、粘着剤に水が浸入して、浮き等の物理的な欠点が発生するおそれがある。
【0038】
なお、分子内に架橋性官能基としてカルボキシル基を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸は、金属メッシュを錆び易くし、また、粘着性材料中に含まれる色素の色を変化させるおそれがあるため、使用しない方が好ましい。
【0039】
また、メタクリルアミド以外の、分子内にアミノ基またはアミド基を有する単量体は、得られる粘着剤のヘイズを高くしたり、ゲル分率の低下を招いたりすることがない限り、使用することができる。かかる単量体の具体例としては、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキルなどが挙げられる。
【0040】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量としては、重量平均分子量で40万以上であるものが好ましく用いられる。この重量平均分子量が40万以上であると、被着体との密着性や、高熱・湿熱条件下での接着耐久性が十分となり、浮きや剥がれなどが生じない。密着性及び接着耐久性などを考慮すると、この重量平均分子量は、50万以上が好ましく、特に50万〜200万が好ましい。
【0041】
本実施形態に係る粘着性材料は、好ましくは架橋剤をさらに含有する。この架橋剤は、粘着成分として架橋可能なもの、例えば架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を使用したときに、当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を効果的に架橋し、得られる粘着剤の保持力を向上させ、もって粘着剤層としての形状が良好に維持されることとなる。
【0042】
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物、ポリエポキシ化合物、アジリジン系化合物等のポリイミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属アルコキシド、金属塩等が挙げられるが、中でも反応性官能基との反応性が優れている点からポリイソシアネート化合物(イソシアネート系多官能架橋剤)が好ましい。
【0043】
ここで、ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
【0044】
上記架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋対象となる粘着成分(架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体)100質量部に対して、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部である。
【0045】
本実施形態に係る粘着性材料は、好ましくは紫外線吸収剤をさらに含有する。紫外線吸収剤を含有することで、色調調整等に用いられる色素(当該粘着性材料に含有されてもよいし、他の層に含有されてもよい)を、外部の紫外線から保護することができる。
【0046】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
粘着性材料(不揮発分)中における紫外線吸収剤の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、特に2〜10質量%であることが好ましい。なお、粘着性材料がこのように紫外線吸収剤を含有しても、当該粘着性材料は、メタクリルアミドを構成成分として含有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分としているため、ゲル分率が低下して粘着剤の凝集力が低下することは防止されている。
【0048】
本実施形態に係る粘着性材料は、好ましくは近赤外線吸収剤をさらに含有する。近赤外線吸収剤を含有することで、プラズマディスプレイパネル等から近赤外線が漏れることを防ぎ、他の電気機器の誤作動を防止することができる。
【0049】
近赤外線吸収剤としては、例えば、フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、チオール錯体系化合物、セシウム酸化タングステン系化合物等が挙げられる。これらの近赤外線吸収剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
粘着性材料(不揮発分)中における近赤外線吸収剤の含有量は、0.01〜5質量%であることが好ましく、特に0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る粘着性材料は、好ましくは防錆剤をさらに含有する。防錆剤を含有することで、得られる粘着剤が電磁波遮蔽フィルムの金属メッシュと接触するときに、金属メッシュと添加剤、金属メッシュと粘着剤の相互作用等による透過率の変化を抑制することができる。
【0052】
防錆剤としては、例えば、水酸基を有するアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、リン系化合物、アミン系化合物、亜硝酸塩系化合物、界面活性剤類、シランカップリング剤類等が挙げられるが、中でも腐食防止性能の観点から、ベンゾトリアゾール系の防錆剤が好ましい。なお、防錆剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
ベンゾトリアゾール系の防錆剤としては、例えば、1Hベンゾトリアゾール、トリルベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0054】
粘着性材料(不揮発分)中における防錆剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、特に0.3〜2質量%であることが好ましい。防錆剤がこの範囲内にあることより、上記防錆剤としての効果が良好に発揮され、かつ粘着性も阻害されない。
【0055】
本実施形態に係る粘着性材料は、上記成分の他にも、通常の光学フィルター用粘着性材料に用いられる成分、例えば、ネオン光吸収剤、色調調整用色素、シランカップリング剤、酸化防止剤等を含有していてもよく、また、適宜溶剤を含有してもよい。
【0056】
以上説明した本実施形態に係る粘着性材料は、ヘイズが低く光学用途に適しており、また、エージング期間を1週間以内に抑えることができるとともに、UVAや色素を添加した場合でもゲル分率の低下を抑制することができ、さらには環境への影響も少ない、という利点がある。
【0057】
〔光学フィルター用粘着剤〕
本実施形態に係る光学フィルター用粘着剤は、上記光学フィルター用粘着性材料を架橋してなるものである。上記光学フィルター用粘着性材料を架橋するには、通常は加熱処理を行う。
【0058】
加熱処理を行う場合、加熱温度は、60〜150℃であることが好ましく、特に80〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜3分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。
【0059】
上記の加熱処理により、架橋可能な粘着成分、例えば架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が架橋し、粘着剤層としての形状が良好に維持されることとなる。本実施形態に係る光学フィルター用粘着剤においては、上記光学フィルター用粘着性材料を使用することで、架橋反応が速やかに進行するため、エージング期間を短期間、具体的には1週間以内に抑えることができる。
【0060】
上記のようにして得られる粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.05〜0.25MPaであることが好ましく、特に0.10〜0.15MPaであることが好ましい。この貯蔵弾性率(G’)が0.05MPa以上であれば、外部から衝撃を受けても粘着剤が変形し難く、打痕が付き難い。また、貯蔵弾性率(G’)が0.25MPa以下であれば、金属メッシュへの追従性が良好となり、気泡残りも防止することができる。なお、上記貯蔵弾性率(G’)は、後述するねじり剪断法により測定した値である。
【0061】
また、得られる粘着剤のヘイズ値は、3%以下であることが好ましく、特に1%以下であることが好ましい。ヘイズ値がかかる範囲内にあることで、粘着剤は光学フィルター用として好ましい光透過性を有することとなる。
【0062】
以上説明した粘着剤は、プラズマディスプレイパネル等に使用される光学フィルターに好ましく用いることができ、例えば、金属メッシュフィルム(金属メッシュを有する電磁波遮蔽フィルム)と、他のフィルム(例えばコントラスト向上フィルム)との接着に好適である。
【0063】
〔光学フィルター用粘着シート〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る光学フィルター用粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される。
【0064】
また、図2に示すように、第2の実施形態に係る光学フィルター用粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0065】
いずれの粘着シート1A,1Bにおいても、粘着剤層11は、前述した粘着性材料を架橋してなる粘着剤からなる。
【0066】
粘着剤層11の厚さは、粘着シート1A,1Bの使用目的に応じて適宜決定されるが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲であり、例えば、金属メッシュに貼付される粘着剤層として使用する場合には、10〜50μm、特に20〜40μmであることが好ましい。
【0067】
基材13としては、特に制限は無く、通常の光学フィルター用粘着シートの基材として用いられているものは全て使用できる。例えば、所望の光学部材の他、ガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリウレタンアクリレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
【0068】
光学部材としては、例えば、金属メッシュを有する電磁波遮蔽フィルム、コントラスト向上フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム等が挙げられる。
【0069】
基材13の厚さは、その種類によっても異なるが、例えば光学部材の場合には、通常10μm〜500μmであり、好ましくは50μm〜300μmである。
【0070】
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0071】
上記剥離シートの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0072】
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0073】
上記粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、溶剤で希釈した上記粘着性材料を含む塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に基材13を積層する。なお、加熱処理の条件については、前述した通りである。
【0074】
また、上記粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、溶剤で希釈した上記粘着性材料を含む塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。なお、塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0075】
粘着性組成物を希釈して塗布溶液とするための溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0076】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物の濃度が10〜40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物がそのまま塗布溶液となる。
【0077】
上記塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0078】
上記のようにして形成される粘着剤(粘着剤層11)は、ゲル分率が10〜100%であることが好ましく、特に30〜80%であることが好ましい。なお、粘着剤のゲル分率は、エージング期間経過後のものをいい、具体的には、粘着性組成物を剥離シートに塗布し、加熱処理した後、23℃、相対湿度50%RHの環境下にて30日間保管した後のゲル分率をいう。ゲル分率、すなわち架橋の程度がこの範囲にあることで、高温・高湿度環境下に置かれたときの粘着剤の発泡が抑制され、耐久性に優れたものとなり得る。
【0079】
ここで、例えば、図3に示すような、金属メッシュ21を有する電磁波遮蔽フィルム2と、コントラスト向上フィルム3とから構成される、プラズマディスプレイパネル用の光学フィルター4を製造する方法について説明する。
【0080】
粘着シート1Aを使用する場合、粘着シート1Aの基材13としてコントラスト向上フィルム3を使用し、当該粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着剤層11と電磁波遮蔽フィルム2とを貼合するか、粘着シート1Aの基材13として電磁波遮蔽フィルム2を使用し、当該粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着剤層11とコントラスト向上フィルム3とを貼合する。
【0081】
また、粘着シート1Bを使用する場合、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、露出した粘着剤層11とコントラスト向上フィルム3とを貼合し、次いで他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、露出した粘着剤層11と電磁波遮蔽フィルム2とを貼合するか、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、露出した粘着剤層11と電磁波遮蔽フィルム2とを貼合し、次いで他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、露出した粘着剤層11とコントラスト向上フィルム3とを貼合する。
【0082】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0083】
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、各成分の配合量は、全て固形分換算値で示す。
【0085】
〔実施例1〕
アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびメタクリルアミドを68.5/30/1/0.5の質量比で共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体(重量平均分子量:70万)100質量部と、イソシアネート系多官能架橋剤(日本ポリウレタン社製,トリレンジイソシアネート系架橋剤,コロネートL)0.15質量部とを混合し、次いで溶剤としてのメチルエチルケトンにて希釈して、不揮発分濃度25質量%の粘着性組成物の塗布溶液を調製した。
【0086】
上記粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン樹脂で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET382150,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmとなるようにナイフコーターを用いて塗布し、90℃で60秒間乾燥し、粘着剤層を形成した。
【0087】
次いで、上記粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン樹脂で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET381031H)の剥離処理面に貼合し、これをサンプル形態(1)(剥離フィルム/粘着剤/剥離フィルム)とした。また、上記剥離フィルム上に形成された粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製,PET100A4300)に貼合し、これをサンプル形態(2)(PETフィルム/粘着剤/剥離フィルム)とした。
【0088】
〔実施例2〕
アクリル酸エステル系共重合体として、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびメタクリルアミドを66/30/1/3の質量比で共重合して得られたものを使用する以外は、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0089】
〔実施例3〕
アクリル酸エステル系共重合体として、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびメタクリルアミドを66.5/30/3/0.5の質量比で共重合して得られたものを使用する以外は、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0090】
〔実施例4〕
粘着性組成物として、紫外線吸収剤(シプロ化成社製,SEESORB 107)6質量部をさらに添加したものを使用する以外、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0091】
〔実施例5〕
粘着性組成物として、近赤外線吸収色素(APIコーポレーション社製,APE−004)7質量部、防錆剤(城北化学社製,1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール)0.5質量部、および紫外線吸収剤(シプロ化成社製,SEESORB 107)6質量部をさらに添加したものを使用する以外、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0092】
〔比較例1〕
アクリル酸エステル系共重合体として、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチルおよびアクリル酸2−ヒドロキシエチルを69/30/1の質量比で共重合して得られたものを使用する以外は、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0093】
〔比較例2〕
粘着性組成物として、アミン系触媒(サンアプロ社製,1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN))1質量部をさらに添加したものを使用する以外、比較例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0094】
〔比較例3〕
メタクリアミドをジメチルアミノエチルアクリレートに変更した以外、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0095】
〔比較例4〕
メタクリアミドをジメチルアクリルアミドに変更した以外、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0096】
〔比較例5〕
メタクリアミドをジメチルメタクリルアミドに変更した以外、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0097】
〔試験例1〕(貯蔵弾性率測定)
実施例または比較例で得られた粘着剤層(25μm)を積層し、直径8mm×厚さ3mmの円柱状の試験片を作製し、ねじり剪断法により下記の条件で貯蔵弾性率(G’)を測定した。結果を表1に示す。
・測定装置:レオメトリック社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDAII」
・周波数:1Hz
・温度:23℃
【0098】
〔試験例2〕(エージング評価)
実施例または比較例で得られた粘着剤層形成直後のサンプル形態(2)を、標準環境下(23℃・50%)に所定期間放置した。放置3日、5日、7日、14日、21日、28日後の各段階で、当該サンプル形態(2)を25mm×250mmに切り出した。次いで、剥離フィルムを剥離して、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(コーニング社製,イーグルXG)に2kgのゴムローラを使用して貼付し、これをサンプル形態(3)(PETフィルム/粘着剤/ソーダライムガラス)とした。
【0099】
サンプル形態(3)を標準環境下(23℃・50%)に1時間放置し、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、JIS Z 0237に準拠して、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。そして、その粘着力が放置により変化しなくなるまでの期間(エージング期間)を観測した。結果を表1に示す。なお、エージング期間が7日以内のものは良品、7日を超えるものは不良品と判断した。
【0100】
〔試験例3〕(ヘイズ値測定)
実施例または比較例で得られた粘着剤層形成直後のサンプル形態(1)を、標準環境下(23℃・50%)に7日間放置した。その後、一方の剥離フィルムを剥離して粘着剤層をソーダライムガラスに貼合し、そして他方の剥離フィルムを剥離し、これをサンプル形態(4)とした。ソーダライムガラスでバックグラウンド測定を行った上で、上記サンプル形態(4)について、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH−2000)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表1に示す。なお、ヘイズ値が1%未満のものは良品、ヘイズ値が1%以上のものは不良品である。
【0101】
〔試験例4〕(ゲル分率測定)
実施例または比較例で得られた粘着剤層形成直後のサンプル形態(1)を、標準環境下(23℃・50%)に7日間放置した。その後、サンプル形態(1)を50mm×90mmに裁断し、両方の剥離フィルムを剥離して粘着剤のみをテフロン(登録商標)製のメッシュ(#380)で包み、これをサンプル形態(5)とし、200mlの酢酸エチルに48時間浸漬した。そして、サンプル形態(5)を取り出し、80℃のオーブンで2時間乾燥させた。酢酸エチルに浸漬する前の粘着剤の質量、およびオーブンで乾燥させた後の粘着剤の質量から、下記式に基づいてゲル分率を算出した。結果を表1に示す。
ゲル分率(%)=(乾燥後の粘着剤質量/浸漬前の粘着剤質量)×100
なお、ゲル分率が20%以上のものは良品、ゲル分率が20%未満のものは不良品である。
【0102】
【表1】

【0103】
表1から分かるように、実施例のサンプルは、エージング期間が短く、またヘイズ値は低く、ゲル分率は高かった。これに対し、比較例1、3、4および5のサンプルは、エージング期間が長かった。また、比較例2のサンプルは、ヘイズ値が高かった。さらに、比較例3のサンプルは、ゲル分率が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の粘着性材料、粘着剤および粘着シートは、光学フィルター、特にプラズマディスプレイパネルの光学フィルター用の粘着剤層を構成するのに好適である。
【符号の説明】
【0105】
1A,1B…粘着シート
11…粘着剤層
12,12a,12b…剥離シート
13…基材
2…電磁波遮蔽フィルム
21…金属メッシュ
3…コントラスト向上フィルム
4…光学フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする光学フィルター用粘着性材料であって、
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、メタクリルアミドを構成成分として含有しており、
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中における前記メタクリルアミドの割合は、0.1〜5質量%である
ことを特徴とする光学フィルター用粘着性材料。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、反応性官能基として水酸基を有する単量体を構成成分として含有しており、
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中における前記単量体の割合は、0.5〜5質量%である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、不飽和カルボン酸を構成成分として含有しないことを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項4】
イソシアネート系多官能架橋剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項5】
ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項6】
フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、チオール錯体系化合物およびセシウム酸化タングステン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の近赤外線吸収剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項7】
ベンゾトリアゾール系の防錆剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の光学フィルター用粘着性材料を架橋してなる光学フィルター用粘着剤。
【請求項9】
基材と、粘着剤層とを備えた光学フィルター用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項8に記載の光学フィルター用粘着剤からなる
ことを特徴とする光学フィルター用粘着シート。
【請求項10】
前記基材は、光学部材であることを特徴とする請求項9に記載の光学フィルター用粘着シート。
【請求項11】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層と
を備えた光学フィルター用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項8に記載の光学フィルター用粘着剤からなる
ことを特徴とする光学フィルター用粘着シート。
【請求項12】
プラズマディスプレイパネルに用いられる請求項9〜11のいずれかに記載の光学フィルター用粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−102225(P2012−102225A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251320(P2010−251320)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】