説明

光学フィルタ

【課題】入射角に対する光学特性の依存性を著しく低減できる光学フィルタを簡便な手段により構成する。
【解決手段】シート状の樹脂基板の上に、薄膜を蒸着により物理膜厚を均一に積層して、所定の波長領域の光線の透過を制限するUVIRカットフィルタである光学フィルタ12を作成し、この光学フィルタ12の周囲を湾曲した枠体21に円柱表面状のような凸形状となるように固定し、凸形状を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の波長領域の透過を制限するエッジフィルタ又はバンドパスフィルタ等の光学フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ等の撮像装置に使用される固体撮像素子は、人間の眼の感度特性に対応させるために、透過波長を調節する光学フィルタと組み合わせて使用されることが多い。具体的には、UV(紫外線)カットフィルタやIR(近赤外線)カットフィルタのエッジフィルタ、或るいはこれらを1枚のフィルタで実現したUVIRカットフィルタ等のバンドパスフィルタがある。
【0003】
これらのエッジフィルタやバンドパスフィルタ等の光学フィルタは、所望の波長領域の光の透過を制限するために、透過を制限する領域のフィルタ素材に吸収材料を練り込んだり、基材上に塗布する吸収タイプのものが知られている。また、基材上に複数層から成る蒸着膜を積層することにより、蒸着膜の干渉を利用し反射させる反射タイプのものも知られている。
【0004】
しかしながら、吸収タイプの光学フィルタにおいては、所望の吸収率を得るためには相応の厚さを必要とし、特にコスト的な要素と、光学系の薄型化の観点等からは、近年では反射タイプのものがより好ましいとされている。
【0005】
図12は複数層の蒸着膜を積層した反射タイプのIRカットフィルタの分光特性グラフ図を示し、図13は図12の一部波長を拡大した分光特性グラフ図である。図12、図13に示すように、反射タイプのIRカットフィルタにおいては、入射光の入射角により、分光特性がシフトしてしまう原理的な問題を有している。なお、シフト量を判断する基準としては、IR側の半値波長の変化量を用いている。
【0006】
例えば図13において、入射角度が0度のときはIR半値波長が約662nmであるのに対して、入射角度が15度になるとIR半値波長は約655nmとなり、入射角度0度から15度で半値波長が約7nm変化する。このように、入射角度により半値波長が大きく変化すると、入射角によって撮影した画像の色目が変化してしまい、実用可能な入射角度領域が制限されてしまう問題がある。
【0007】
特に干渉を利用した反射タイプのエッジフィルタやバンドパスフィルタにおいては、原理的に必然的に発生してしまう問題であり、大きな影響を受けることになる。
【0008】
これに対して、特許文献1、2では反射タイプの光学フィルタにおいても積層膜の構成を工夫することにより、入射角に対する光学特性の変化を低減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−27907号公報
【特許文献2】特開2008−020563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1、2に示すような構成の場合には、膜構成が複雑化したり、交互層の屈折率差が小さくなったりする。これにより、より多くの積層数が必要となり、製品コストを増大させたり、光学特性の一部を犠牲にしたりする問題を有している。更に、角度依存性の問題を低減することは可能であるが、原理的な観点からは、根本的解決策とはならず、理想的に角度依存性の問題を解消することは困難である。
【0011】
また、別の方法として、最初から曲面形状を有する基板にIRカット膜を成膜することが考えられるが、曲面形状を有する基板上に均一な薄膜を成膜させることは極めて困難である。また、曲面形状を有する基板上に薄膜を成膜する特別な機構を成膜装置に設けることが必要であり、大きく生産性を低減させてしまい、製品コストを増大させてしまうと云う問題を有している。
【0012】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、簡便に入射角に対する光学特性の依存性を著しく低減できる干渉による反射タイプの光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る光学フィルタは、シート状の樹脂基板の上に薄膜を積層して所定の波長領域の光線の透過を制限するエッジフィルタ又はバンドパスフィルタから成る光学フィルタであって、前記積層された薄膜の物理膜厚を均一とし、外力によって凸形状に変形させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光学フィルタによれば、コストを大きく増大させることなく、入射角に対する光学特性の依存性の問題を低減可能であり、撮像装置に使用した場合に画像等の色目変化等の不具合を著しく低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の樹脂基板にマスクを重ねた状態の平面図である。
【図2】蒸着膜を成膜した後に、光学フィルタを切り抜いた状態の平面図である。
【図3】UVIRカットフィルタの膜構成図である。
【図4】設計上のUVIRカットフィルタの分光透過率特性グラフ図である。
【図5】光学フィルタを枠体により変形する説明図である。
【図6】枠体と光学フィルタとの配置の説明図である。
【図7】実施例2の圧電体を光学フィルタに取り付けた状態の平面図である。
【図8】圧電体の電極の説明図である。
【図9】圧電体により光学フィルタを変形した状態の斜視図である。
【図10】光学フィルタを配置した撮像光学系の説明図である。
【図11】UVIRカットフィルタの分光特性グラフ図である。
【図12】IRカットフィルタの分光特性グラフ図である。
【図13】図12の波長を拡大した分光特性グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を図1〜図11に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
本実施例の光学フィルタは近赤外光領域及び紫外光領域の所定の波長領域の光線の透過を制限するバンドパスフィルタであるUVIRカットフィルタであり、或いは近赤外光領域の所定の光線の透過を制限するエッジフィルタであるIRカットフィルタである。
【0018】
図1に示す樹脂基板1には、板厚0.1mmのノルボルネン系材料であるシート状のArton(JSR製、製品名)フィルムが用いられている。樹脂基板1上には、縦横共に10mmの複数個の正方形状の孔部2を穿けたマスク3を重ね、樹脂基板1の孔部2の範囲に複数層から成る蒸着膜を積層している。
【0019】
図2に示すように、UVIRカットフィルタである光学フィルタ12は、樹脂基板1上に複数層から成る蒸着膜11を成膜した後に、マスク3を剥し蒸着膜11を成膜した周囲を、フィルタ形状に切り抜くことにより製造されている。
【0020】
本実施例においては、樹脂基板1上に蒸着膜11を成膜した後に、何らかの手段を用いて光学フィルタ12を変形させる必要があるため、樹脂基板1として板厚が0.1mmのシート状の樹脂製のArtonフィルムを選択している。このArtonフィルムはガラス転移温度が100℃以上あり、曲げ弾性率が約3000MPa程度と比較的高く、基板の割れやうねりを低減できる理由から選択している。また、本実施例においてはノルボルネン系材料であるArtonを使用したが、ポリイミド系の樹脂フィルム等も好適な基材の1つであり、更にはこれらの基材に限らずPETやPEN、PC等を用いてもよい。
【0021】
本実施例の光学フィルタ12においては、樹脂基板1上に蒸着により複数層の薄膜である蒸着膜11を成膜したが、蒸着以外の物理的成膜方法により成膜してもよいし、スピンコータ等を利用した塗装法を用いてもよい。
【0022】
図3はUVIRカットフィルタである光学フィルタ12の膜構成図を示し、高屈折率材料にはTiO2、低屈折率材料にはSiO2が使用されている。平面状の樹脂基板1上には、SiO2膜11aとTiO2膜11bが交互に積層され、樹脂基板1上の両面にそれぞれ21層/29層を積層し、両面で計50層の膜構成とされている。
【0023】
TiO2は屈折率が高く膜設計上有利な材料であるために用いている。また、SiO2は成膜条件によって勿論微妙に異なりはするが、イオンプレーティングによる成膜条件においては、TiO2と膜応力の発生方向が反対になり、屈折率も低く膜設計上有利な材料であるために選択されている。
【0024】
成膜工程においては、先ず縦横100mmの正方形の樹脂基板1の表面にマスク3を重ねて、21層から成る蒸着膜11を積層する。その後に、樹脂基板1の表裏を変え、表面を蒸着する際に用いたものと同様のマスク3を重ねて、裏面に29層から成る蒸着膜11を積層する。
【0025】
また本実施例においては、樹脂基板1にノルボルネン系材料である合成樹脂を用いたことにより、成膜プロセスにおいて、熱に起因した問題が発生する。合成樹脂はガラスと比較して、ガラス転移温度が極端に低く、基板と蒸着膜との線膨張係数の差に起因する基板の不規則な反りや、この反りに伴う蒸着膜表面における皺やクラックの発生を生じさせる虞れを有している。そのため、成膜中に発生する熱の対策を施す必要があり、耐熱温度の高い基板材料を選択したり、低温のプロセスで成膜する方法を考える必要がある。
【0026】
本実施例においては、成膜装置に吸熱機構を設け、成膜中に樹脂基板1に発生する熱を強制的に除去する手法を採用している。そこで、成膜プロセスで到達する樹脂基板1上の最高温度を予め測定し、その温度に耐えることができる基板材料を選択する必要がある。本実施例においては、成膜プロセスの安定性を考慮し、先に実験した到達最高温度に或る程度の許容値を加味し、ガラス転移温度を適性判断のパラメータとし、概ね70℃以上のガラス転移温度を有するノルボルネン系材料を選択している。
【0027】
そして、成膜中は成膜開始から成膜終了までの樹脂基板1の裏面を水温10℃の冷却水を用いて、冷却しながら蒸着を行い温度制御を行っている。その結果、予め樹脂基板1の表面に設置しておいた真空中専用のサーモラベルにより測定したところ、成膜中の最大温度は両面共に60℃以下であり、概ね50℃弱程度であった。
【0028】
本実施例における成膜方法としては、アシストを付加した他の成膜方法と比べ、比較的膜に起因する応力を小さい値に制御できる理由から、DCパルス重畳型のRFのイオンプレーティング法を選択している。
【0029】
しかし、成膜中の温度が通常成膜に比べて低くなるため、何らかのアシストを付加したり、スパッタ等の比較的高エネルギで成膜され、膜密度が高くなるプロセスを選択することが好ましい。具体的には、スパッタ法、IAD法、イオンプレーティング法、IBS法、クラスタ蒸着法等が用いられる。成膜方法は膜厚を比較的正確に制御でき、再現性の高い膜を得ることができる成膜方法であればよく、必要とされる膜の性質や、基板を含めた各材料の制約条件等から最適な方法を選択すればよい。
【0030】
上述の方法により製作したUVIRカットの光学フィルタ12を、高温高湿の環境試験を行った結果、1000時間後では環境試験開始前と比較してIR側の半値波長での透過率変化はシフト量が2nm以下となった。同様の環境試験を数サンプルに対して行ったが、全てのサンプルにおいて同様な結果が得られた。
【0031】
また、光学フィルタ12の外観に関しても良好であり、反りや凹凸、更に皺やクラック等は発生せず、環境試験後も皺やクラック等の発生は確認できなかった。同様に作製された別サンプルにおいて、高温試験を実施したが、1000時間経過後であっても、皺やクラック等の発生は確認できなかった。更に、熱衝撃試験を実施したが、1000サイクル経過後であっても、皺やクラック等の発生は確認できなかった。
【0032】
図4は実施例1における設計上のUVIRカットの光学フィルタ12の分光透過率特性グラフ図である。上述の方法により製作されたUVIRカットフィルタである光学フィルタ12は、この図4で示した設計値と略同様の分光透過率特性を得ることができた。
【0033】
一般的なUVIRカットフィルタである光学フィルタ12の場合には、図4に示すように可視波長領域から紫外波長領域にかけての所望する波長領域に第1の阻止波長領域を有している。更に、可視波長領域から近赤外波長領域にかけての所望する波長領域に第2の阻止波長領域、第2の阻止波長領域から更に近赤外波長にかけての所望の波長領域に第3の阻止波長領域を有し、3つの阻止波長領域により構成されている。
【0034】
ここで、1つの阻止波長領域を構成する薄膜積層構造を1つのブロックとして考えると、第1〜第3の阻止波長領域を形成する3つのブロックにより形成される。この3つのブロックはそれぞれは異なる中心波長を有し、その波長をλとした場合に、基本的に高屈折率材料と低屈折率材料を交互にλ/4ずつ積層している。所望の光学特性を得るために、各層の膜厚に概ね0.7〜1.3倍程度の微調を加え、積層された構成等が一般的である。
【0035】
UVIRカットフィルタやIRカットフィルタは比較的積層する膜数が多く、膜応力に起因した反りの問題を引き起こし易く、特に樹脂基板1が合成樹脂の場合には顕著な問題となる。そこで、この問題を低減するために、樹脂基板1の両面に同じ材料、同じ膜厚で積層した場合が最も膜応力を低減でき好ましい。
【0036】
しかし、この場合には蒸着膜11の構成設計が困難となり、樹脂基板1の片面に設計した場合と同じ積層数となるように膜設計を行った場合に、光学特性が大きく犠牲となる可能性が高い。また、光学特性と膜応力の緩和を同時に満足するために積層数が増え、光学フィルタ12の製作の工数アップの要因となる。そこで、或る阻止波長領域を有する薄膜積層構造体を樹脂基板1の両面に分割することが最適である。
【0037】
このように、通常の平板状の樹脂基板1に薄膜積層体を構成するため、成膜の管理がし易く、光学フィルタ12の平面性を維持でき、また均一な特性とすることができる。なお、ここで云う均一な特性とは、製造時の意図しない要素による透過率の変化であるばらつき等も含んでいる。
【0038】
本実施例のように、樹脂基板1の表裏両面に成膜する構成の光学フィルタ12の場合に、樹脂基板1の両面での蒸着膜11の膜応力を意図して異ならせることにより、光学フィルタ12を任意形状に変形させることも可能である。
【0039】
しかし、このような場合に、片面側の膜応力が強くなってしまうことに起因して、成膜プロセス中にうねりを発生しまう虞れがある。また、湿度や熱雰囲気の条件によっては、膜応力が変化して初期形状が変化する可能性を有している。そして、上述の方法により製作した光学フィルタ12を、光学フィルタ12への入射光の入射角が、変形前よりも小さくなるように外力によって変形させて固定する。
【0040】
そのため本実施例1においては、図5に示すようにUVIRカットフィルタである光学フィルタ12の周囲を、湾曲した枠体21に円柱表面状のような凸形状となるように固定する。変形させる方法としては、後述するように圧電体を取り付ける方法等があるが、安定して変形させた形状を維持できれば、特に限定されることはない。
【0041】
また、本実施例におけるUVIRカットフィルタのように、両面膜構成の場合に膜応力が両面で完全に一致させることは困難であり、多少なりとも光学フィルタ12自体も面方向に対して全体的に凹形状、或いは凸形状を有している。
【0042】
枠体21に固定時に光学フィルタ12に掛かるストレスを考慮すると、例えば図6(a)よりも(b)に示すように、枠体21の形状により近い形状で配置し固定することが望ましい。
【0043】
なお、枠体21は周囲の温度や湿度が変化した場合であっても、変形しない材質、構造とする必要がある。場合によっては、或る程度の強度も必要とされるが、製品仕様によって最適な材質や形状を決定すればよい。
【実施例2】
【0044】
実施例2においては、図7に示すように光学フィルタ12の上辺、下辺に沿って、長方形状の圧電体(PZT)31を取り付け、接着剤で固定する。この際に、図8に示すように圧電体31には、絶縁層32を介して予め電極33a、33bが形成されており、電極配線の都合により電極構造を有する素子を選択している。この圧電体31の電極33a、33bに電圧を印加し、圧電体31を変位させることにより、光学フィルタ12を図9に示すように変形させることができる。また、この電圧を調整することにより、任意の曲率形状に光学フィルタ12を変形させることができる。
【0045】
更に、これにフィードバック機構を設ければ、形状の経時的変化等に対応して、系全体としてゴースト光の影響を低減できるように自動的に調整する機構を実現することも可能となる。このフィードバック機構に関しては様々な手法が考えられる。
【0046】
例えば、撮像装置に組込んだ場合に、撮影画像をソフト的に解析し、圧電体31の印加電圧を調整することにより、光学フィルタ12の変形量を調整し、自動補正する方法や、撮影画像から撮影者が判断し、外部入力により手動操作で補正する方法等が考えられる。また、光学フィルタ12に圧電体31を積層する代りに、光学フィルタ12の表面に直接に圧電膜を貼り付けてもよい。
【0047】
図10は画像読取装置等の撮像装置で使用される撮影手段のCIS(コンタクトイメージセンサ)41の前面に、UVIRカットフィルタである光学フィルタ12を配置した場合の説明図である。撮像装置の内部には、光源42が内蔵され、図10において図示は省略されているが、光源42にはCIS41の結像面に入射光を結像させる撮像光学系も含まれている。このような画像読取装置においては、光源42から発生した光線は、光学フィルタ12に対して斜めに入射することになる。
【0048】
図10(a)は光学フィルタ12を変形させず、平面に近い形状のまま、光路上に配置した場合の撮像光学系の概略図を示している。フィルタ面の有効領域内において、光源42から発した入射光の光学フィルタ12への入射角度は0度から最大で25度まで変化し、光学フィルタ12上の光線の通過領域においてそれぞれで異なる。
【0049】
図11の点A、Bは図10(a)の状態のUVIRカットフィルタである光学フィルタ12の分光特性グラフ図を示し、IR側半値波長のシフト量を示している。入射光が垂直に入射する光学フィルタ12の中心部の点AではIR半値波長が約662nmであるのに対し、最大入射角である点BではIR半値波長が約642nmとなり、光学フィルタ12の有効領域で約20nmのシフトが発生する。
【0050】
これに対して、図10(b)で示すように光学フィルタ12を凸形状に変形させて凸面をCIS41に向けた場合には、フィルタ面の有効領域内で比較すると、入射光に対する光学フィルタ12への入射角度が0度から最大で5度までと大きく低減される。この際のIR側半値波長のシフト量は図11の点Cに示すように、入射光が垂直に入射する光学フィルタ12の図10(b)で示す中心部の点Aでは、IR半値波長が約662nmである。それに対して最大入射角である点CではIR半値波長が約661nmとなり、光学フィルタ12の有効領域内で約1nmのシフト量となる。
【0051】
このように、図10(b)に示すように凸形状に変形させた光学フィルタ12は、図10(a)に示す光学フィルタ12の形状を特に変形させないフラットタイプの場合と比較すると、約19nmもシフト量を低減させることができる。
【0052】
また、理想的には、入射角度の差異を0にすることも可能であり、入射角度に対する光学特性の変化を著しく低減することが可能である。このように、上述の方法により光学フィルタ12を作製することにより、均一な物理膜厚で光学フィルタ12への光線の入射角に対する光学特性の依存性を低減することができる。
【0053】
なお、実施例における凸形状は円柱表面状としたが、球形状や楕円球状とすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 樹脂基板
2 孔部
3 マスク
11 蒸着膜
11a SiO2
11b TiO2
12 光学フィルタ
21 枠体
31 圧電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の樹脂基板の上に薄膜を積層して所定の波長領域の光線の透過を制限するエッジフィルタ又はバンドパスフィルタから成る光学フィルタであって、前記積層された薄膜の物理膜厚を均一とし、外力によって凸形状に変形させたことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
前記樹脂基板の上に異なる複数の膜を積層した後に、外力を与えることにより変形させたことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
湾曲した枠体に周囲を固定することによって変形させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
表面に圧電体又は圧電膜を取り付け、前記圧電体又は前記圧電膜による変位によって変形させことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタを光学系に組込んだことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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