説明

光学フィルム、その製造方法、偏光板及び画像表示装置

【課題】反射防止性が高く、耐擦傷性に優れ、かつ大量生産に適した光学フィルムを提供する。
【解決手段】透明支持体上に、最表層として光学機能層を有する光学フィルムであって、該光学機能層の膜厚は50nm以上250nm以下であり、該光学機能層は、屈折率1.45以下の低屈折率微粒子、屈折率1.55以上の高屈折率微粒子、及び含フッ素化合物を含有し、該低屈折率微粒子は透明支持体の反対側の光学機能層表面に実質的に一列配列し、かつ該高屈折率微粒子は透明支持体側の光学機能層下部に偏在する光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、その製造方法、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)や冷陰極線管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラストの低下を防止するために、ディスプレイの表面に配置される。そのため、反射防止フィルムには高い反射防止性の他に高い物理強度(耐擦傷性など)、透過率、耐薬品性、耐候性などが要求される。
【0003】
特に、画像表示装置において外光の映りを防止し、画質を向上させるために反射防止性の高い反射防止フィルムが望まれている。従来よりプラスチック基材上に形成したハードコート層の上に光学機能層(光学干渉層)を設ける手法が用いられてきた。そして、更に高い反射防止性を実現するためには、複数の光学機能層を積層することが有効であることが知られている。しかし、湿式塗工法によってこれを実現するためには、塗布・乾燥・硬化の工程を複数回繰り返すことが必要であり、生産性が著しく低下するとともに塗工コストが上昇する。例えば、光学機能層として低屈折率層と高屈折率層の2層を積層するときは2回の繰り返しが必要となり、更に反射率を低減させるために中屈折率層も加えて塗設する場合は3回の繰り返しが必要である。よって、1回の塗工で複数の層を形成する技術が強く望まれている。
【0004】
また、外光の映りを防止するためにはできるだけ屈折率の低い層を設けて反射率を低減させる方法も有効であり、層の屈折率を下げる手法として、フッ素原子を導入する、内部に中空構造を有する無機微粒子を導入する、という方法が知られている。しかしながら、ともに被膜強度及び密着性が損なわれ耐擦傷性が低下する傾向があり、低い屈折率と高い耐擦傷性の両立は困難であった。
【0005】
これを解決する手法として、特許文献1には、支持体上に微粒子とバインダーを含有する組成物が塗設されて光学機能層が形成されてなる光学フィルムであって、該光学機能層全層中の平均粒子充填率(A)に対する、支持体と反対側の上層側30%膜厚中の平均粒子充填率(B)の比率であるSP値[(B/A)×100]が90%以上333%以下である光学フィルムが提案されている。
【0006】
また特許文献2には、(A)重合性不飽和基を有する有機化合物(Ab)を結合させてなる金属酸化物粒子、(B)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体、(C)アルコキシシリル基を有する含フッ素重合体(Cb)を結合させてなるシリカを主成分とする粒子、(D1)(B)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体の溶解性が高い溶剤、(D2)相対蒸発速度が(D1)の溶剤よりも小さく、かつ、(D1)の溶剤と相溶性である溶剤を含有する硬化性樹脂組成物が開示されている。特許文献2の技術によれば、該硬化性樹脂組成物を塗布して得られる1の塗膜から、2以上の層を形成することができるとされている。
しかしながら、特許文献2の技術により得られた硬化膜は不均一であるため、均一で高い耐擦傷性を実現することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−235198号公報
【特許文献2】特開2007−238897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
反射防止フィルムは、画像表示装置の最表面に配置されることから保護フィルムとしての役割を兼ね備えることが重要であり、高い物理強度を有することが求められる。これを実現するためには、低屈折率微粒子が高密度に最表面に存在することが重要である。同様に、開発においては、高屈折率層の屈折率及び膜厚を任意に変えられるよう、自由度の高い調整が可能であることが求められる。高屈折率微粒子を支持体側にすべて偏在させることが可能になれば、これらの調整が容易となり、使用する高屈折率微粒子の種類や塗布組成物の調整の自由度を高められると期待できる。
更に1回などのできるだけ少ない塗工で低屈折率微粒子が最表面に配置される光学機能層が形成できる光学フィルム及びその製造方法の開発が強く望まれている。
【0009】
本発明の目的は、反射防止性が高く、耐擦傷性に優れ、かつ大量生産に適した光学フィルム及びその製造方法を提供することである。更には、該光学フィルムを具備した偏光板及び画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、以下の手段により上記課題が達成されることを見出した。
[1]
透明支持体上に、最表層として光学機能層を有する光学フィルムであって、
前記光学機能層の膜厚は50nm以上250nm以下であり、
前記光学機能層は、
(a)含フッ素化合物、
(b)屈折率1.55以上の高屈折率微粒子、及び
(c)前記(a)含フッ素化合物により形成される硬化膜との表面自由エネルギー差が10mN/m以上30mN/m以下である、屈折率1.45以下の低屈折率微粒子、
を含有し、
前記(c)低屈折率微粒子は透明支持体の反対側の光学機能層表面に実質的に一列配列し、かつ、前記(b)高屈折率微粒子は透明支持体側の光学機能層下部に偏在する、光学フィルム。
[2]
前記(c)低屈折率微粒子の表面自由エネルギーが、前記(a)含フッ素化合物の表面自由エネルギーより10mN/m〜30mN/m低い、上記[1]に記載の光学フィルム。
[3]
前記(c)低屈折率微粒子が、パーフルオロポリエーテル基を含有するシランカップリング剤によって表面修飾されている上記[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4]
前記(c)低屈折率微粒子が、シリカ微粒子又は中空シリカ微粒子である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の光学フィルム。
[5]
前記(b)高屈折率微粒子の表面自由エネルギーが、前記(a)含フッ素化合物の表面自由エネルギーより20mN/m以上高い、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の光学フィルム。
[6]
前記(b)高屈折率微粒子が、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物微粒子である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルム。
[7]
前記(c)低屈折率微粒子の含有量が、前記光学機能層の全固形分に対し5質量%〜15質量%の範囲である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の光学フィルム。
[8]
前記(b)高屈折率微粒子の含有量が、前記光学機能層の全固形分に対し、30質量%〜50質量%の範囲である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の光学フィルム。
[9]
前記光学機能層全層中の前記(c)低屈折率微粒子の平均粒子充填率PLtに対する前記透明支持体の反対側の前記光学機能層上部30%膜厚中の前記(c)低屈折率微粒子の平均粒子充填率PLuの比率[(PLu/PLt)×100(%)]が200%以上である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の光学フィルム。
[10]
前記光学機能層全層中の前記(b)高屈折率微粒子の平均粒子充填率PHtに対する前記透明支持体側の前記光学機能層下部50%膜厚中の前記(b)高屈折率微粒子の平均粒子充填率PHdの比率[(PHd/PHt)×100(%)]が120%以上である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の光学フィルム。
[11]
光学機能層表面の表面自由エネルギーが22mN/m以下である、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の光学フィルム。
[12]
上記[1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板。
[13]
上記[1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルム又は上記[12]に記載の偏光板を有する画像表示装置。
[14]
上記[1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、
前記(a)〜(c)を含む硬化性組成物を塗布して硬化することにより前記光学機能層を形成する工程を含む、製造方法。
[15]
上記[1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、
前記(a)及び(c)を含む第1の硬化性組成物、及び、前記(b)を含む第2の硬化性組成物の各々を、近接する2つのスロットダイ及びスライド型塗布ヘッドから選ばれる少なくとも1種を含む塗布装置に供給して、該透明支持体をバックアップローラで支持して走行させながら塗布して硬化することにより前記光学機能層を形成する工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学フィルムは、反射率が低く、しかも耐擦傷性に優れる。また、本発明の光学フィルムの製造方法は大量生産に適している。更に、本発明の光学フィルムを用いた偏光板を備えた画像表示装置は、外光の映り込みや背景の映り込みが少なく、視認性が高く、耐擦傷性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光学フィルムの一実施形態の断面模式図である。
【図2】本発明の光学フィルムの別の実施形態の断面模式図である。
【図3】本発明の光学フィルムの別の実施形態の断面模式図である。
【図4】本発明の光学フィルムの別の実施形態である2層型の光学フィルムの層構成を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の光学フィルムの別の実施形態である多層型の光学フィルムの層構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。更に、本発明でいう「支持体上」には、該支持体の直接の表面上をいう場合と、該支持体の上に何らかの層(膜)を設けた表面上をいう場合の両方を含む趣旨である。
【0014】
本発明の光学フィルムは、透明支持体上の最表層として光学機能層を有する。この光学機能層は、
(a)含フッ素化合物、
(b)屈折率1.55以上の高屈折率微粒子、及び
(c)前記(a)含フッ素化合物との表面自由エネルギー差が10mN/m以上30mN/m以下である、
を含有しており、(c)低屈折率微粒子が前記透明支持体と反対側の前記光学機能層表面に実質的に一列配列し、(b)高屈折率微粒子は前記透明支持体側の前記光学機能層下部に偏在している。
光学機能層が上記構造を採ることで、見掛け上、低屈折率層と高屈折率層の2層構成の反射防止層を形成し、なおかつ低屈折率微粒子を表面に一列配列することで耐擦傷性にも優れたものとなる。これに対し、特許文献2(特開2007−238897号)に記載の光学フィルムでは、同文献の図1及び図2に示すように含フッ素重合体含有シリカ粒子が表面に一列に配列していないため、耐擦傷性が不十分である。
更に、本発明では1回の塗布で上記構造の光学機能層を形成することから、生産性にも優れる。
【0015】
本発明の光学フィルムは、透明支持体上に最表層として形成された光学機能層において、低屈折率微粒子が前記光学機能層の最表面に実質的に一列配列している。
ここで、光学機能層表面とは、光学機能層の支持体と最も遠い側から低屈折率微粒子の平均粒径の2倍の深さまでの領域を指す。また、光学機能層の最表面に実質的に一列配列するとは、フィルムの断面を観察したときに、低屈折率微粒子のうち半分以上が、光学機能層表面に略平行に配列している状態を言う。光学機能層表面に存在するもの、バインダーに覆われているもの、粒子の一部が表面からわずかに飛び出しているものもこれに含まれる。また、光学機能層表面において微粒子が二列目以降にも存在する場合もあるが、二列目以降に存在する微粒子よりも一列目に存在する微粒子の方が多ければ、本発明においては、実質的に一列配列しているとみなす。
光学機能層表面の表面自由エネルギーは22mN/m以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の光学フィルムにおいて、高屈折率微粒子は前記透明支持体側の前記光学機能層下部に偏在している。
光学機能層下部とは、光学機能層の支持体に近い側から50%以内の領域を指す。高屈折率微粒子が光学機能層内の下部に偏在するとは、光学機能層の支持体に近い側50%以内の領域に存在する高屈折率微粒子の数が60%以上であることを指し、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。前記領域において高屈折率微粒子の存在割合が低い場合は、光学フィルムの反射率の低下が小さく、ムラの発生が起こりやすくなる。
【0017】
低屈折率粒子及び高屈折率微粒子の存在状態は、光学フィルムの切片をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することができる。例えば、高屈折率微粒子の偏在の状態は、光学機能層の支持体に近い側50%以内に存在する微粒子の数と、光学機能層全層中に存在する微粒子の数を数え、比較すればよい。界面が直線的でない場合は、中心線を引いて界面とする。
【0018】
また、本明細書において、光学機能層中において高屈折率微粒子が分布している領域を高屈折率層と呼び、高屈折率微粒子が分布している領域の中に低屈折率微粒子が混在していても高屈折率層と呼ぶ。それ以外の領域を低屈折率層と呼ぶ。高屈折率微粒子が偏在せずに光学機能層全体に分布している場合は、高屈折率層がないとする。
【0019】
図1を参照しながら本発明の光学フィルムの具体的な形態について更に説明する。但し、本発明の光学フィルムは以下の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の光学フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
図1に示す光学フィルム1は、透明支持体11上の最表層として光学機能層12を有している。光学機能層12においては、透明支持体11と接する側に高屈折微粒子122が偏在し、透明支持体11と接する面とは反対側の表面に低屈折率微粒子121が密に敷き詰められており、ほぼ一列に配列している。
【0020】
図2及び図3は、本発明の光学フィルムの別の実施形態を示す断面模式図である。本発明の光学フィルムでは、光学機能層の表面において低屈折率微粒子が隙間無く配列している必要は無く、図2に示す光学フィルム20のように、各々の低屈折率微粒子121が間隔を空けて存在していてもよい。
また、本発明の光学フィルムは、前述したように低屈折率微粒子が実質的に一列配列していればよく、図3に示す光学フィルム30のように、低屈折率微粒子121が密に敷き詰められているとともに、一部の複数の低屈折率微粒子121が重なっていてもよい。
このように図2及び図3に示す低屈折率微粒子の配列状態も本発明でいう「実質的に一列配列」している状態に包含されるものとする。
【0021】
図1〜3に示すように、高屈折率微粒子122は、透明支持体11側の光学機能層下部において偏在して各微粒子が多層を形成していることが好ましい。
また、上記実施形態では透明支持体11上に直接光学機能層12が形成された形態を示したが、本発明の光学フィルムはこれに限定されず、必要に応じて光学機能層12と透明支持体11との間に任意の機能層を有していてもよい。
なお、ここでいう機能層とは、透明支持体上に形成される、物理的、光学的な機能を有する層を意味する。機能層としては、具体的には、ハードコート層、中屈折率層、帯電防止層等が挙げられる。本発明の光学フィルムでは、光学機能層が他の機能層を兼ねてもよい。
【0022】
低屈折微粒子の配列及び高屈折率微粒子の偏在の様子は、光学フィルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することで確認できる。
また、低屈折率微粒子の分布は、光学機能層全層中の前記低屈折率微粒子の平均粒子充填率PLtに対する透明支持体と反対側の前記光学機能層上部30%膜厚中の平均粒子充填率PLuの比率[(PLu/PLt)×100]で、高屈折率微粒子の分布は、前記光学機能層全層中の高屈折率微粒子の平均粒子充填率PHtに対する前記透明支持体側の前記光学機能層下部50%膜厚中の平均粒子充填率PHdの比率[(PHd/PHt)×100]で求めることができる。
【0023】
Lt、PLu、PHt、PHdは以下の方法で算出する。
光学フィルムを50nmの厚さの切片として、その断面を透過型電子顕微鏡を用いて15万倍の写真を5視野撮影した。光学機能層の厚さに対して50倍の長さの幅にわたり、高屈折微粒子が存在する部分と存在しない部分の膜厚を100点計測し、その平均値をそれぞれ高屈折率層、低屈折率層の膜厚とする。
また、同じ長さの幅における低屈折率粒子の数をカウントし、断面写真上で光学機能層中の単位面積あたりの粒子個数としてPLtを算出した。また、光学機能層の上部30%膜厚中の低屈折率微粒子の数をカウントしてPLuも同様にして算出した。同様の方法により、高屈折率微粒子数をカウントしてPHtを算出し、光学機能層の下部50%膜厚中の粒子数をカウントしてPHdを算出した。
例えば、光学機能層の上部30%膜厚中に低屈折率微粒子が部分的に観察される場合には、断面写真上で該領域に含まれる粒子の面積の割合を乗じて粒子数を算出し、粒子が重なって観察される場合には、重なった分も1個にカウントするものとした。この場合、粒子の層内分布は層面方向で方向性を有しておらず、切片として選択された特定の断面の粒子のカウント数に基づいて平均粒子充填率を求めることができる。
【0024】
本発明において、[(PLu/PLt)×100]は200%以上あることが望ましい。200%未満になると、光学機能層の表面に存在する低屈折率微粒子数が少なすぎるため、本発明の好ましい効果が得られないことがある。[(PLu/PLt)×100]は230%以上であることがより好ましく、270%以上であることが更に好ましい。
また、[(PHd/PHt)×100]は120%以上あることが望ましい。120%未満になると、光学機能層の上部にまで高屈折率微粒子が多く分布し、反射率が上昇して本発明の好ましい効果が得られないことがある。[(PHd/PHt)×100]は140%以上であることがより好ましく、160%以上であることが更に好ましい。
【0025】
本発明の光学フィルムは図1〜3に示す形態に限定されない。例えば、本発明の光学フィルムは、この光学機能層の他に更に必要に応じて下地層としてその他の機能層を有することができる。
例えば、図4に示す光学フィルム40では、透明支持体41上に下地層としてハードコート性を有する層(ハードコート層44)を有し、その上に最表層として光学機能層42を有する形態である。
また、図5に示す光学フィルム50では、透明支持体51、下地層としてハードコート層54及び中屈折率層56を有し、中屈折率層56の上に最表層として光学機能層52を有する。この場合、透明支持体51、中屈折率層54、光学機能層52の高屈折率層53と低屈折率層55は、以下の関係を満足する屈折率を有することが望ましい。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
【0026】
[光学機能層]
光学機能層を構成する素材について、更に詳述する。
本発明の光学フィルムの特定の構造を有する光学機能層を形成するには、(a)含フッ素化合物、(b)高屈折微粒子、(c)低屈折率微粒子が必須成分となる。
含フッ素化合物は他と混和しにくく、同じ構造を持つ化合物同士で集まろうとする性質がある。これらの必須成分を混合、塗布すると、含フッ素化合物が凝集し、低屈折率微粒子及び高屈折率微粒子を排除するように働くと考えられる。その結果、これらの微粒子は最表面側、或いは支持体側に偏在する。このとき、より熱的に安定な構造をとろうとするため、相対的に表面エネルギーが低い微粒子は最表面側に、高い微粒子は支持体側に排除されることになる。低屈折率微粒子のほうが高屈折率微粒子よりも低表面エネルギーであり、かつ低屈折率微粒子が最表面に存在できる添加量である結果、本発明の光学機能層構造を形成することが可能になったと考えられる。
このとき、含フッ素化合物と微粒子の表面自由エネルギー差が十分大きくなければ、上述のような含フッ素化合物による微粒子の排除効果が十分得られないため含フッ素化合物と微粒子とが混和してしまい、粒子の偏在状態が形成されず、また、低屈折微粒子と高屈折率微粒子の表面自由エネルギー差がなければ、これらが排除される方向(最表面側又は支持体側)が区別されず、粒子が種別ごとに分離した本発明の光学機能層構造を形成できなくなると考えられる。
【0027】
<(a)含フッ素化合物>
本発明の光学フィルムは(a)含フッ素化合物を含む。(a)含フッ素化合物は、熱又は光硬化可能な含フッ素化合物(a1)から形成されるものであることが好ましく、この熱又は光硬化可能な含フッ素化合物(a1)は、シリコーン構造を分子中に有するか、又は光学機能層を形成するための硬化性組成物が架橋性基を含有するシリコーン化合物を含み、その架橋性基と同じ架橋性基を有する含フッ素化合物であることが好ましい。
【0028】
また、(a)含フッ素化合物により形成される硬化膜の表面自由エネルギーは、35mN/m以下の範囲が好ましく、30mN/m以下の範囲がより好ましい。上記の範囲とすることにより、(a)含フッ素化合物同士の凝集力が増大して層分離を効果的に起こすことができる。一方、硬化後の表面自由エネルギーが高すぎると層分離が起き難く、反射率の上昇、ムラなどが発生することがある。表面自由エネルギーは、強度、塗布性の観点から、上記の好ましい上限以下とすることが好ましい。
なお、上記層分離とは、低屈折率微粒子が前記光学機能層表面に実質的に一列配列し、かつ高屈折率微粒子が光学機能層下部に偏在し、両微粒子が実質的に分離している状態を指す。
(a)含フッ素化合物により形成される硬化膜の表面自由エネルギーの下限は特に制限されないが、15mN/m以上であることが好ましく、20mN/m以上であることがより好ましい。
【0029】
上記の熱又は光硬化可能な含フッ素化合物(a1)の例としては、架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素モノマー、オリゴマー、ポリマー、又は含フッ素ゾルゲル素材が挙げられ、これらが熱又は電離放射線により架橋されることが好ましい。
【0030】
{含フッ素ポリマー}
前記架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物に好適な含フッ素ポリマーは、熱又は電離性放射線により架橋する含フッ素ポリマーであるが、ロールフィルムをウェブ搬送しながら塗布、硬化する場合などにおいて生産性向上の点で好ましい。生産性の点からは電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーであることがより好ましく、生産性及び耐擦傷性の点からは分子内に架橋性基としてエチレン性不飽和基を複数有する含フッ素ポリマーが特に好ましい。
【0031】
該含フッ素ポリマーとしては、含フッ素モノマーと架橋性又は重合性の官能基を有するモノマーの共重合体を挙げることができる。含フッ素モノマーとしては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等である。
【0032】
架橋性基付与のためのモノマーとしては、1つの態様としては、グリシジルメタクリレートのように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。また別の態様としては、水酸基等の官能基を有するモノマーを用い含フッ素共重合体を合成後、更にそれら置換基を修飾して架橋性若しくは重合性の官能基を導入するモノマーを使用する方法である。これらモノマーとしては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート等)が挙げられる。後者の態様は特開平10−25388号公報及び特開平10−147739号公報により開示されている。
【0033】
また、架橋性を有する含フッ素化合物を用いることもできる。含フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば−CFCF,−CH(CFH,−CH(CFCF,−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF,CHCF(CF,CH(CH)CFCF,CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCHOCHCFCF,CHCHOCHH,CHCHOCHCH17,CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0034】
架橋性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのコポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。含フッ素化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。
このような架橋性基を有する含フッ素化合物の好ましい例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0035】
上記含フッ素ポリマーには、溶解性、分散性、塗布性、防汚性、帯電防止性などの観点から、適宜共重合可能な成分を含むことができる。特に防汚性・滑り性付与のためには、シリコーン構造を導入することが好ましく、主鎖にも側鎖にも導入することができる。
主鎖へのシリコーン構造導入方法は、例えば特開平6−93100号公報に記載のアゾ基含有ポリシロキサンアミド(市販のものではVPS−0501、1001(商品名;和光純薬工業(株)社製))等のポリマー型開始剤を用いる方法が挙げられる。
また、側鎖に導入する方法は、例えばJ.Appl.Polym.Sci.2000,78,1955、特開昭56−28219号公報等に記載のごとく、反応性基を片末端に有するポリシロキサン(例えばサイラプレーンシリーズ(チッソ株式会社製)など)を高分子反応によって導入する方法、ポリシロキサン含有シリコンマクロマーを重合させる方法によって合成することができ、どちらの方法も好ましく用いることができる。
【0036】
含フッ素ポリマーに対しては特開2000−17028号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、特開2002−145952号公報に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物としては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが好ましい。また、特開2004−170901号公報に記載のオルガノランの加水分解縮合物も好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を含有するオルガノシランの加水分解縮合物が好ましい。
これら化合物は、特に含フッ素ポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
【0037】
含フッ素ポリマー自身が単独で十分な硬化性を有しない場合には、架橋性化合物を配合することにより、必要な硬化性を付与することができる。例えば含フッ素ポリマー本体に水酸基含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用いることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。これら化合物の硬化には、有機酸又はその塩を用いるのが好ましい。
【0038】
これら含フッ素ポリマーの具体例は、特開2003−222702号公報、特開2003−183322号公報等に記載されている。
【0039】
{含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物}
架橋性基を有する含フッ素化合物として、含フッ素オルガノシラン化合物の加水分解縮合物も屈折率が低く、塗膜表面の硬度が高い点で好ましく用いることができる。フッ素化アルキル基に対して片末端又は両末端に加水分解性のシラノールを含有する化合物とテトラアルコキシシランの縮合物が好ましい。具体的組成物は、特開2002−265866号公報、特開2002−317152号公報に記載されている。
【0040】
架橋性基を有する含フッ素化合物として好適な含フッ素化合物は、前述のようにシリコーン構造を分子中に有するのが好ましいが、塗布組成物中に含フッ素化合物と同じ架橋性基を含有するシリコーン化合物を含んでもよい。該シリコーン化合物としては、下記の化合物などが挙げられる。
【0041】
架橋性基を含有するシリコーン化合物としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることがより好ましく、3000〜30000であることが特に好ましく、10000〜20000であることが最も好ましい。シリコーン化合物のシリコーン原子含有量には特に制限はないが18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。好ましいシリコーン化合物の例としては信越化学(株)製、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−164B、X22−164C、X−22−170DX、X−22−176D、X−22−1821(以上商品名)やチッソ(株)製、FM−0725、FM−7725、FM−4421、FM−5521、FM6621、FM−1121やGelest製DMS−U22、RMS−033、RMS−083、UMS−182、DMS−H21、DMS−H31、HMS−301、FMS121、FMS123、FMS131、FMS141、FMS221(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0042】
前述のシリコーン化合物の添加量は、含フッ素化合物の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜7質量%の場合である。
【0043】
<硬化性化合物>
本発明の光学フィルムの光学機能層を形成するための塗布組成物は、架橋性基を有する含フッ素化合物と硬化可能な硬化性化合物を含んでいてもよい。該硬化性化合物の好ましい一例としては、熱又は電離放射線により架橋する反応性基を有するモノマー又はオリゴマーが好ましく、2官能基以上を有する多官能モノマーや多官能オリゴマーを有する樹脂成分がより好ましく、3官能基以上を有する多官能モノマーや多官能オリゴマーを有する樹脂成分が更に好ましい。これらの多官能モノマー、オリゴマーは、機能層にも好ましく含有される。また、多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
【0044】
硬化性化合物としては、含フッ素化合物より表面自由エネルギーが大きいことが好ましい。35mN/m以上の表面自由エネルギーを有する硬化層を形成可能な樹脂であることが好ましく、35〜80mN/mの範囲がより好ましく、40〜60mN/mの範囲が特に好ましい。
上記の範囲とすることにより、層分離がより形成し易くなる。硬化後の表面自由エネルギーが高すぎても、低すぎても、反射率の低下、ムラなどが発生することがある。表面自由エネルギーは、強度、塗布性の観点から、上記の好ましい下限以上とすることが好ましい。
【0045】
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0046】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等を挙げることができる。
【0047】
更にはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0048】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。更に好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。
【0049】
更に、各層の屈折率を制御するために、光重合性多官能モノマーとして高屈折率モノマーを用いることができる。特に高屈折率モノマーの例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が含まれる。また、例えば特開2005−76005号、同2005−36105号に記載されたデンドリマーや、例えば特開2005−60425号記載のようなノルボルネン環含有モノマーを用いることもできる。
【0050】
上記硬化性化合物を用いる場合には、光重合性多官能モノマーの重合反応に用いる光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。上記のモノマーの重合は、光ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射により行うことができる。
【0051】
{光ラジカル重合開始剤}
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号公報等に記載)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物などが挙げられる。
【0052】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
【0053】
ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0054】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
【0055】
「最新UV硬化技術」{発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行}、p.159、及び「紫外線硬化システム」(加藤清視著、平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0056】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・ジャパン(株)製の商品名「イルガキュア(651,184,907)」等が好ましい例として挙げられる。
【0057】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0058】
{光増感剤}
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
【0059】
また、上記硬化性化合物としては、上述の化合物の他に後述のオルガノシラン化合物も好ましく用いることもできる。
【0060】
<(b)屈折率1.55以上の高屈折率微粒子>
本発明に用いられる(b)屈折率1.55以上の高屈折率微粒子(以下、高屈折率微粒子(b)ともいう)は、その平均粒径が例えば2nm以上100nm以下の無機微粒子であり、好ましくは平均粒径が5nm以上80nm以下の無機微粒子であり、更に好ましくは10nm以上60nm以下の無機微粒子である。
平均粒径が2nm未満であると、凝集し易く、分散が難しくなる傾向があり、100nmを超えると、ヘイズが大きくなる傾向がある。
上記高屈折率微粒子(b)としては、下記無機微粒子等が挙げられ、使用に際しては単独若しくは2種以上混合して用いることができる。高屈折率微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0061】
高屈折率微粒子(b)としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物微粒子であることが好ましい。これらの酸化物無機微粒子は、光学機能層の下部に偏在した際に、下部を高屈折率化し、本発明の光学フィルムの反射率を十分に低減するために、高屈折率であることが好ましく、屈折率が1.60〜3.00であることが好ましく、1.80〜2.90であることが更に好ましく、1.90〜2.80であることが特に好ましい。
【0062】
高屈折率微粒子(b)としては、チタン、ジルコニウムのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物を用いることが特に望ましい。また両者のうちでは、耐光性の観点からは、光触媒作用のないジルコニウムが好ましいが、光触媒作用を抑制したチタンを用いることも好ましい。
また、帯電防止の観点からは、導電性の無機微粒子を用いることが望ましく、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物を用いることが望ましい。
高屈折率微粒子(b)は、本発明の光学フィルムで用いられるその他の各層においても、例えば、ハードコート層、中屈折率層において、屈折率調整用の無機微粒子として好適に用いられる。
【0063】
{高屈折率微粒子(b)の表面処理}
また、前記高屈折率微粒子(b)は、表面処理されたものであることが好ましい。表面処理の具体的手段としては、塗布組成物に添加する分散液中で、分散安定化又はバインダーなどの樹脂成分との親和性・結合性を向上することができれば、特に限定されるものではない。表面処理については、[高屈折率微粒子(b)の分散剤・表面処理剤]の項にて詳述する以外に、オルガノシラン化合物、該オルガノシランの加水分解物、該オルガノシランの加水分解物の部分縮合物が好ましく用いられる。
【0064】
{高屈折率微粒子(b)の分散剤・表面処理剤}
本発明で使用する高屈折率微粒子(b)は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされるのが好ましい。
【0065】
表面処理は、無機化合物又は有機化合物の表面処理剤を用いて実施することができる。表面処理に用いる無機化合物の例には、コバルトを含有する無機化合物(CoO,Co,Coなど)、アルミニウムを含有する無機化合物(Al,Al(OH)など)、ジルコニウムを含有する無機化合物(ZrO,Zr(OH)など)、ケイ素を含有する無機化合物(SiOなど)、鉄を含有する無機化合物(Feなど)などが含まれる。
コバルトを含有する無機化合物、アルミニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを含有する無機化合物が特に好ましく、コバルトを含有する無機化合物、Al(OH)、Zr(OH)が最も好ましい。
表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。特にシランカップリング剤(オルガノシラン化合物)、その部分加水分解物、及びその縮合物の少なくとも一種で表面処理されていることが好ましい。
【0066】
チタネートカップリング剤としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタンなどの金属アルコキシド、プレンアクト(KR−TTS、KR−46B、KR−55、KR−41Bなど;味の素(株)製)などが挙げられる。
表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、その他アニオン性基を有する有機化合物などが好ましく、特に好ましいのは、カルボキシル基、スルホン酸基、又は、リン酸基を有する有機化合物である。ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などが好ましく用いることができる。
表面処理に用いる有機化合物は、更に、架橋又は重合性官能基を有することが好ましい。架橋、又は、重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する基である。
【0067】
これらの表面処理剤は、2種類以上を併用することもでき、アルミニウムを含有する無機化合物とジルコニウムを含有する無機化合物を併用することが、特に好ましい。
【0068】
表面処理にはカップリング剤も好ましく用いられる。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。シランカップリング剤は部分加水分解物又は縮合物として用いても良い。
上記カップリング剤は、無機微粒子の表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時に更に添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
高屈折率微粒子(b)は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
好ましく用いることのできる表面処理剤及び表面処理用の触媒の具体的化合物は、例えば、国際公開第2004/017105号パンフレットに記載のオルガノシラン化合物及び触媒を挙げることができる。
【0069】
高屈折率微粒子(b)の分散には下記の各種の分散剤も好ましく用いることができる。
分散剤は、更に架橋又は重合性官能基を含有することが好ましい。架橋又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する官能基である。
【0070】
高屈折率微粒子(b)の分散、特にTiOを主成分とする無機粒子の分散にはアニオン性基を有する分散剤を用いることが好ましく、アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有することがより好ましく、該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤であることが特に好ましい。架橋又は重合性官能基の具体例としては、上述の官能基が挙げられる。
【0071】
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(スルホ)、リン酸基(ホスホノ)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、又はその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基又はその塩が好ましく、カルボキシル基、リン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1分子中に複数種類が含有されていてもよいが、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
【0072】
側鎖にアニオン性基を有する分散剤において、アニオン性基含有繰返し単位の組成は、全繰返し単位のうちの10−4〜100mol%の範囲であり、好ましくは1〜50mol%、特に好ましくは5〜20mol%である。
【0073】
1分子当たりの分散剤に含有される架橋又は重合性官能基の数は、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有される架橋又は重合性官能基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
【0074】
本発明に用いる好ましい分散剤において、側鎖にエチレン性不飽和基を有する繰返し単位の例としては、ポリ−1,2−ブタジエン及びポリ−1,2−イソプレン構造あるいは、(メタ)アクリル酸のエステル又はアミドの繰返し単位であって、それに特定の残基(−COOR又は−CONHRのR基)が結合しているものが利用できる。上記特定の残基(R基)の例としては、−(CH)n−CR21=CR2223、−(CHO)n−CHCR21=CR2223、−(CHCHO)n−CHCR21=CR2223、−(CH)n−NH−CO−O−CHCR21=CR2223、−(CH)n−O−CO−CR21=CR2223及び−(CHCHO)−X(R21〜R23はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、R21とR22又はR23は互いに結合して環を形成してもよく、nは1〜10の整数であり、そしてXはジシクロペンタジエニル残基である)を挙げることができる。エステル残基のRの具体例には、−CHCH=CH(特開昭64−17047号公報記載のアリル(メタ)アクリレートのポリマーに相当)、−CHCHO−CHCH=CH、−CHCHOCOCH=CH、−CHCHOCOC(CH)=CH、−CHC(CH)=CH、−CHCH=CH−C、−CHCHOCOCH=CH−C、−CHCH−NHCOO−CHCH=CH及び−CHCHO−X(Xはジシクロペンタジエニル残基)が含まれる。アミド残基のRの具体例には、−CHCH=CH、−CHCH−Y(Yは1−シクロヘキセニル残基)及び−CHCH−OCO−CH=CH、−CHCH−OCO−C(CH)=CHが含まれる。
【0075】
上記のエチレン性不飽和基を有する分散剤においては、その不飽和結合基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、分子間で直接、又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、分子間に架橋が形成されて硬化する。あるいは、分子中の原子(例えば不飽和結合基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0076】
アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが1000以上であることが好ましい。分散剤のより好ましい重量平均分子量(Mw)は2000〜1000000であり、更に好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。
【0077】
架橋又は重合性官能基の含有単位は、アニオン性基含有繰返し単位以外の全ての繰返し単位を構成していてもよいが、好ましくは全架橋又は繰返し単位のうちの5〜50mol%であり、特に好ましくは5〜30mol%である。
【0078】
分散剤は、架橋又は重合性官能基、アニオン性基を有するモノマー以外の適当なモノマーとの共重合体であっても良い。共重合成分に関しては特に限定はされないが、分散安定性、他のモノマー成分との相溶性、形成皮膜の強度等種々の観点から選択される。好ましい例としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
【0079】
分散剤の形態は特に制限はないが、ブロック共重合体又はランダム共重合体であることが好ましくコスト及び合成的な容易さからランダム共重合体であることが特に好ましい。
【0080】
分散剤の高屈折率微粒子(b)に対する使用量は、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。好ましく用いられる分散剤に関しては、特開2007−293313号公報に詳細な記載がある。
【0081】
{高屈折率微粒子(b)の分散}
高屈折率微粒子(b)は、分散機を用いて分散することができる。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが含まれる。
高屈折率微粒子(b)は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、好ましい重量平均径は前述の粒径に順ずるものである。
【0082】
{高屈折率微粒子(b)の表面自由エネルギー}
前記高屈折率微粒子(b)の表面自由エネルギーは、前記含フッ素化合物の表面自由エネルギーよりも高く、かつ前記低屈折率微粒子より高いことが、層分離構造を有利に形成する上で好ましい。
より具体的には、(b)高屈折率微粒子の表面自由エネルギーは、前記(a)含フッ素化合物の表面自由エネルギーより20mN/m以上高いことが好ましく、前記(a)含フッ素化合物の表面自由エネルギーより20mN/m以上40mN/m以下の範囲で高いことがより好ましく、前記(a)含フッ素化合物の表面自由エネルギーより20mN/m以上35mN/m以下の範囲で高いことがより好ましく、
また、(b)高屈折率微粒子の表面自由エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、55mN/m以上70mN/m以下であるのがより好ましく、55mN/m以上65mN/m以下であるのが特に好ましい。上記の範囲とすることにより層分離構造を形成しやすい。一方、表面自由エネルギーが高すぎると、反射率の低下、ムラなどが発生することがある。表面自由エネルギーは、強度、塗布性の観点から、上記範囲とすることが好ましい。
【0083】
高屈折率微粒子(b)の表面自由エネルギーは、塗布組成物を静止沈降又は遠心分離後、溶剤洗浄を繰り返し、高屈折率微粒子(b)以外の成分を取り除いた後、洗浄した硝子板上にキャスト、溶剤を乾燥し、薄膜状にした高屈折率微粒子(b)の水及びヨウ化メチレンの接触角を用いて算出することができる。樹脂成分など他の成分の表面自由エネルギーも同様にして算出することができる。
高屈折率微粒子(b)の光学機能層における配合割合は、光学機能層の全固形分に対し、30質量%〜50質量%の範囲であるのが好ましく、30質量%〜40質量%の範囲であるのが更に好ましい。
【0084】
<(c)屈折率1.45以下の低屈折率微粒子>
本発明に用いられる(c)屈折率1.45以下の低屈折率微粒子(以下、低屈折率微粒子(c)ともいう)は、例えば、その平均粒径が10nm以上100nm以下の無機微粒子であり、好ましくは平均粒径が15nm以上80nm以下の無機微粒子であり、更に好ましくは20nm以上60nm以下の無機微粒子である。低屈折率微粒子(c)の平均粒径はコールターカウンター法により測定される。
低屈折率微粒子(c)の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると光学機能層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。低屈折率微粒子(c)は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球形が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
【0085】
低屈折率微粒子(c)の屈折率は、1.45以下、好ましくは1.17〜1.45、特に好ましくは1.17〜1.40、更に好ましくは1.17〜1.35、最も好ましくは1.17〜1.32である。無機微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定できる。前述のように低屈折率微粒子(c)が光学機能層の表面に一列配列することにより、耐擦傷性の向上及び屈折率の低下に寄与することができる。
低屈折率微粒子(c)としては、無機微粒子等が挙げられる。使用に際しては単独若しくは2種以上混合して用いることができる。
無機微粒子としては、例えば、フッ化マグネシウムや酸化珪素(シリカ)の微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。
【0086】
低屈折率微粒子(c)は、中空構造である場合も好ましい。中空構造の無機微粒子の場合に屈折率は外殻の無機質のみの屈折率を表すものではなく、粒子全体の平均の値を示す。
中空構造の無機微粒子において、は下記式(II)で表される空隙率xは、好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
(式II):x=(4πa/3)/(4πb/3)×100であり、
aは粒子内の空腔の半径を、bは粒子外殻の半径を表す。
中空の低屈折率微粒子(c)の屈折率をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点からは屈折率1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
【0087】
低屈折率微粒子(c)としては、特に、シリカ微粒子又は中空構造のシリカ微粒子(中空シリカ微粒子)が好ましい。
【0088】
低屈折率微粒子(c)の含有量は、光学機能層の全固形分に対し5質量%〜15質量%の範囲が好ましく、8質量%〜15質量%であることがより好ましく、10〜15質量%であることが特に好ましい。量が多すぎると高屈折微粒子層中で凝集して下部偏在し、反射率低減効果が薄れる。また少なすぎると表面に偏在する粒子の数が減少して、反射率低減効果が薄れるだけでなく、光学機能層の物理強度が弱くなる。
【0089】
{低屈折率微粒子の表面処理}
低屈折率微粒子(c)は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。中でもカップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。
【0090】
前記(c)低屈折率微粒子がパーフルオロポリエーテル基を含有するシランカップリング剤によって表面修飾されていることが特に好ましい。
パーフルオロポリエーテル基を含有するシランカップリング剤で粒子表面を修飾することにより、エーテル構造を有さないフッ素化合物と比較して表面自由エネルギーを更に低下させることができ、含フッ素化合物(a)と低屈折率微粒子(c)の表面自由エネルギー差を付け、一列配列を可能とする。加えて、上記の低屈折率微粒子が表面に一列配列配列することにより、パーフルオロポリエーテル基が光学機能層表面を覆い、機能層の表面自由エネルギーを著しく低下させることから、防汚性を付与することができる。
パーフルオロポリエーテル基含有のシランカップリング剤及びその合成方法については、下記文献などが参照できる。
・P.O.Sherman,S.Smith and B.Johannessen,Textile Res.J.,39,449(1969)
・特開平9−157388号公報
・国際公開第98/49218号
パーフルオロポリエーテル基の構造としては、特に制限は無いが、より具体的には、
(CF2CF2CF2O)−(CF2CF2O)−(CF2O)−(CF(CF)CF2O)
(式中a〜dはそれぞれ独立に0〜20の整数である)を含んでなることが好ましく、パーフルオロポリエーテル基は、化合物中に複数個有していても良い。
【0091】
[パーフルオロポリエーテル基を含有するシランカップリング剤]
重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤の数平均分子量Mnは、10000未満であることが望ましい。Mnは100〜5000が好ましく、100〜3000が更に好ましく、100〜2000が最も好ましい。Mnが100未満であると低屈折率微粒子の表面自由エネルギーの低下効果が低減し、10000以上であると、低屈折微粒子への表面修飾が困難となる。
【0092】
なお、(a)含フッ素化合物との表面自由エネルギーの関係が前記範囲内とすることができれば、上記パーフルオロポリエーテル基を含有するシランカップリング剤のほかに、フッ素を含むシランカップリング剤や、フッ素を含有しないシランカップリング剤、架橋性基を有するカップリング剤等を併用することができる。これらのシランカップリング剤としては、特開2009−098658号公報の段落[0045]〜[0070]に記載のものを用いることができる。
【0093】
前記カップリング剤は、低屈折率微粒子(c)の表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられることが好ましく、該層塗布液調製時に更に添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
低屈折率微粒子(c)は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
【0094】
本発明においては、金属キレート化合物、無機酸類及び有機酸類の酸触媒を用いるのが好ましい。無機酸では塩酸、硫酸が好ましく、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、更には、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸が好ましく、特に、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、具体的には、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
【0095】
金属キレート化合物としては、一般式ROH(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールとRCOCHCOR(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる金属キレート化合物は、一般式Zr(ORp1(RCOCHCORp2、Ti(ORq1(RCOCHCORq2、及びAl(ORr1(RCOCHCORr2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす。
【0096】
金属キレート化合物中のR及びRは、同一又は異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などである。また、Rは、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1、及びr2は、それぞれp1+p2=4、q1+q2=4、r1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
【0097】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタンなどのチタンキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
【0098】
上記金属キレート化合物の具体例のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することができる。
【0099】
表面処理された低屈折率微粒子(c)の分散液には、β−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物を添加することが好ましい。
β−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物としては、一般式RCOCHCORで表されるβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物が好ましい。ここで、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を表す。
このようなβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物は、表面処理剤の安定性向上剤として作用することができる。すなわち、このような化合物が前記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタン及び/又はアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる表面処理剤の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。β−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物を構成するR及びRは、前記金属キレート化合物を構成するR及びRと同様である。
【0100】
このβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。本発明においてβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物は、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3〜20モル用いられる。上記範囲内において、良好な保存安定性が得られる。
【0101】
{低屈折率微粒子(c)の表面自由エネルギー}
前記低屈折率微粒子(c)は、(a)含フッ素化合物により形成される硬化膜との表面自由エネルギー差が10mN/m以上30mN/m以下であり、その差は10mN/m以上25mN/m以下であることが好ましく、その差は10mN/m以上20mN/m以下であることがより好ましい。
また、前記低屈折率微粒子(c)の表面エネルギーは、含フッ素化合物(a)及び高屈折率微粒子(b)の表面自由エネルギーよりも低いことが好ましい。
より具体的には、該低屈折率微粒子(c)の表面自由エネルギーが含フッ素化合物(a)よりも大きい場合は、35〜55mN/mであることが好ましく、35〜50であることがより好ましい。該低屈折率微粒子(c)の表面自由エネルギーが含フッ素化合物(a)よりも小さい場合は、5〜25mN/mであることが好ましく、5〜20mN/mであることがより好ましい。上記の範囲とすることで、塗布組成物を塗布した際に両粒子が分離して層を形成しやすくなる。
なお、表面エネルギーは、前述の高屈折率微粒子(b)の表面エネルギーと同様の方法で測定できる。
含フッ素化合物(a)により形成される硬化膜の表面自由エネルギーは、硬化しない含フッ素化合物とほぼ同じ値であると考えられ、これと低屈折率微粒子(c)の表面自由エネルギー差が10mN/m以上30mN/m以下であることにより本発明の光学機能層が形成される。表面自由エネルギー差が10mN/m未満の場合は、含フッ素化合物(a)と低屈折率微粒子(c)がエネルギー的に近いためにこれらが混和し、低屈折微粒子が含フッ素化合物中に取り込まれて表面に一列配列せず、耐擦傷性が低下してしまう。
表面自由エネルギー差が30mN/mより大きく、表面自由エネルギーが低屈折率微粒子(c)の方が含フッ素化合物(a)より大きい場合は、低屈折率微粒子が高屈折率微粒子と混和し、機能層下部に偏してしまうため、反射率、耐擦傷性、防汚性いずれにおいても期待する性能が得られなくなる。また、表面自由エネルギーが低屈折率微粒子(c)の方が含フッ素化合物(a)より小さくなる化合物は、実質的に存在しない。
【0102】
<防汚剤>
低屈折率微粒子(c)の表面自由エネルギーが、含フッ素化合物(a)より大きい場合は、防汚性を付与する目的で更に防汚剤を添加してもよい。防汚剤は撥水撥油性を有する基と架橋性基をともに有する化合物が好ましく、オルガノシリコーン化合物や含フッ素オリゴマー等が用いられる。特に、指紋汚れの拭取り性を向上させる目的としては含フッ素モノマー或いはオリゴマーが好ましく、以下に記載の化合物などが好ましく用いられる。
【0103】
(A)重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤
本発明の低屈折率層は防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、含フッ素防汚剤を必須成分として含有する。また、該含フッ素防汚剤は、重合性不飽和基を有することを特徴とし、これによって塗布物のロール状態での保存時のフッ素化合物の裏面転写の抑制及び塗膜の耐擦傷性改良、また、汚れの繰り返しの拭取りに対する耐久性を向上させることができる。従来、防汚性を発現させるためにジメチルシロキサン構造を有するシリコーン化合物を用いることが知られているが、含フッ素防汚剤を使用することで更に優れた防汚性を発現できる場合がある。重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤は、フッ素化合物を含む防汚剤であり、重合性不飽和基に特に制限はないが、不飽和二重結合を有する官能基が好ましく、最も好ましくは、メタアクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基である。
【0104】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば−CFCF,−CH(CFH,−CH(CFCF,−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF,CHCF(CF,CH(CH)CFCF,CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCHOCHCFCF,CHCHOCHH,CHCHOCHCH17,CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0105】
フッ素系化合物は、更に低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833、オプツールDAC(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300、MCF−323 (以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0106】
また、本発明において重合性不飽和基を有する含フッ素化合物の好ましい態様(一般式(F))について詳細に述べる。重合性不飽和基を有する含フッ素化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマーいずれでも良い。
【0107】
好ましい第1の態様として、下記一般式(F)で表される化合物を挙げることができる。
【0108】
一般式(F):
(Rf)− [(W)−(R]
(式中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは連結基、Rは不飽和二重結合を有する官能基を表す。nは1〜3、mは1〜3の整数を表す。
【0109】
一般式(F)で表される化合物において、Wとしては、例えばアルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、又はそれらの組み合わさった連結基を表す。それらの連結基は、更に、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミド等やそれらの組み合わさった官能基を含有しても良い。
【0110】
一般式(F)において、nとmが同時に1である場合について、以下の好ましい態様の具体例として(F−1)〜(F−3)が挙げられる。
【0111】
一般式(F−1):
Rf(CF2CF2nCH2CH22OCOCR1=CH2
【0112】
(式中、Rfは、フッ素原子又は炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれかを示し、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は単結合又はアルキレン基を含む基を示し、nは重合度を示す整数であり、重合度nはk(kは3以上の整数のいずれかを示す)以上である。)
【0113】
一般式(F−1)におけるフッ素原子を含むテロマー型アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類等が挙げられる。
【0114】
一般式(F−1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0115】
【化1】

【0116】
上記の一般式(F−1)で表される化合物は、合成の際にテロメリゼイションを用いると、テロメリゼイションの条件及び反応混合物の分離条件等によっては一般式(F−1)の基Rf(CF2CF2)nR2CH2CH2O−のnがそれぞれk、k+1、k+2、...等の複数の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含むことがある。
【0117】
一般式(F−2):
F(CF−CH−CHX−CH
(式中、pは1〜20の整数、X及びYは(メタ)アクリロイルオキシ基又は水酸基のいずれかであり、少なくとも一方は(メタ)アクリロイルオキシ基である。)
【0118】
(F−2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、この末端にトリフルオロメチル基(CF3−)をもつ炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有しており、この含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは少量でもトリフルオロメチル基が表面に有効に配向される。特に、前記成膜性を有し、重合性二重結合をもつ高フッ素含有量の含フッ素化合物による塗膜中であってもトリフルオロメチル基が表面に有効に配向される。従って、得られる含フッ素硬化性塗膜は、防汚性、低屈折率化等の特性を発揮することができる。防汚性及び製造の容易性から、炭素数6〜20のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数8〜10のフルオロアルキル基が特に好ましい。炭素数8〜10のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、他の鎖長のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと比較しても特異的な機能を発揮できる。
【0119】
(F−2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン及び1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシ4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン等が挙げられる。本発明においては、1−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカンが好ましい。
【0120】
一般式(F−3):
F(CF2nO(CF2CF2O)CF2CH2OCOCR=CH2
一般式(F−3)中、Rは水素原子又はメチル基であり、mは1〜20の整数であり、nは1〜4の整数を表す。
上記一般式(F−3)で表されるフッ素原子含有単官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(FG−3)
【0121】
一般式(FG−3):
F(CFO(CFCFO)CFCHOH
【0122】
(一般式(FG−3)中、mは1〜20の整数の整数であり、nは1〜4の整数を表す。)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させることにより得ることができる。
【0123】
前記一般式(FG−3)表されるフッ素原子含有アルコール化合物の具体例としては、例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサオクタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサノナデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサイコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサドコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサペンタコサン−1−オール等を挙げることができる。これらは市場で入手でき、その具体例としては例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール:商品名:C5GOL:エクスフロアー社製、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール:商品名:C7GOL:エクスフロアー社製、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール:商品名:C8GOL:エクスフロアー社製、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール:商品名:C10GOL:エクスフロアー社製、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール:商品名:C12GOL:エクスフロアー社製等が挙げられる。本発明においては、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサトリデカン−1−オールを用いることが好ましい。
【0124】
また、前記一般式(FG−3)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と反応させる(メタ)アクリル酸ハライドとしては、(メタ)アクリル酸フルオライド、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド、(メタ)アクリル酸アイオダイドを挙げることができるが、通常、入手しやすさ等の観点から(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。
【0125】
以下に一般式(F−3)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
(b−1):FOCOCOCFCHOCOCH=CH
(b−2):FOCOCOCFCHOCOC(CH)=CH
【0126】
更に(F−3)で表される化合物の具体例として、下記一般式(F−3)’で表される化合物も好ましく用いることができる。
【0127】
一般式(F−3)’:
Rf−[(O)(O=C)(CX)−CX=CX]
(式中、X及びXは同じか又は異なり、H又はF;XはH、F、CH又はCF;X及びXは同じか又は異なり、H、F、又はCF3;a、b、及びcは同じか又は異なり0又は1;dは1〜4の整数;Rfは炭素数18〜200のエーテル結合を含む含フッ素アルキル基)であって、Rf基中に式(FG−3)’:−(CXCFCFO)−(式中、XはF又はH)で示される繰り返し単位を6個以上有する含フッ素不飽和化合物。
【0128】
前記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物の例としては、
(c−1)Rf−[(O)(O=C)−CX=CX]
(c−2)Rf−[(O)(O=C)−CX=CX]
(c−3)Rf−[(O)(O=C)−CF=CH]
などを挙げることができ、上記含フッ素ポリエーテル化合物の重合性不飽和基としては、以下のようなものを好ましく用いることができる。
【0129】
【化2】

【0130】
また、前記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物は、重合性不飽和基を複数個有していても良く、
【0131】
【化3】

【0132】
などの構造が好ましく挙げられる。本発明においては−O(C=O)CF=CHの構造を有するものが重合(硬化)反応性が特に高く、効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0133】
前記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物においてRf基は、式(FG−3)’の含フッ素ポリエーテル鎖は繰り返し単位で6個以上Rf中に含んでいることが重要であり、それによって防汚性を付与できる。
また更に詳しくは、後述する具体的な含フッ素重合体の構造単位、光重合性組成物及びコーティング用組成物として使用する際に、含フッ素ポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上のものを含んでいる混合物でもよいが、混合物の形で使用する場合、前記繰り返し単位が6個未満の含フッ素不飽和化合物と6個以上の含フッ素不飽和化合物との分布においてポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上の含フッ素不飽和化合物の存在比率が最も高い混合物とするのが好ましい。
【0134】
式(FG−3)’の含フッ素ポリエーテル鎖は6.5〜8個、更には10個以上、また18〜22個、より好ましくは20個以上の繰り返し単位を有することが好ましく、それによって、撥水性だけでなく、防汚性、特に油成分を含む汚れに対する除去性を改善できる点で好ましい。また、気体透過性もより一層効果的に付与できる点で好ましい。また、含フッ素ポリエーテル鎖はRf基の末端にあっても、鎖中の途中に存在していても良い。
【0135】
Rf基は、具体的には、式(c−4):
(c−4) R−(CXCFCFO)−(R
式中、Xは式(FG−3)’と同じ、Rは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含むアルキル基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキル基から選ばれる少なくとも1種、Rは二価以上の有機基、nは6〜66の整数、eは0又は1)の構造であることが好ましい。
【0136】
つまり、Rf基は、二価以上の有機基Rを介して、反応性の炭素−炭素二重結合と結合し、更に末端にRを有する含フッ素有機基である。
【0137】
は、式(FG−3)’の含フッ素ポリエーテル鎖を反応性の炭素−炭素二重結合に結合させることができる有機基であれば、如何なるものでもよいが、例えば、アルキレン基、含フッ素アルキレン基、エーテル結合を含むアルキレン基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基から選ばれ、中でも含フッ素アルキレン基、エーテル結合を含む含フッ素アルキレン基であることが、透明性、低屈折率性の面で好ましい。
【0138】
一般式(F−3)’で表される含フッ素ポリエーテル化合物の具体例としては、再公表特許WO2003/022906に挙げられる化合物などが好ましく用いられる。本発明においては、CH=CF−COO―CHCFCF−(OCFCFCF20−OC17を特に好ましく用いることができる。
【0139】
一般式(F)において、nとmが同時に1でない場合については、以下の好ましい態様の具体例として(F−4)〜(F−5)が挙げられる。
【0140】
一般式(F−4):
(Rf)− [(W)−(R]
【0141】
一般式(F−4)中、Rfは(パー)フルオロポリエーテル基、Wは連結基、Rは(メタ)アクリル基を表す。nは1〜3、mは1〜3の整数を表し、nとmは同時に1であることはない。
【0142】
Rfの好ましい構造としては、以下の構造を挙げることができる。
【0143】
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−
【0144】
ここでpの平均値は4〜15である。
【0145】
一般式(F−4)で表される化合物の数平均分子量は、400〜5000が好ましく、800〜4000が更に好ましく、最も好ましくは1000〜3000である。
一般式(F−4)で表される化合物の好ましい具体例や合成方法は国際公開第2005/008570号に記載されている。
【0146】
以下では、F(CF(CF)CFO)CF(CF)−においてpの平均値が6〜7のものを“HFPO−”と記載し、一般式(F−4)の具体的化合物を示すが、これらに限定されるものではない。
【0147】
(d−1):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CHCHCH
(d−2):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
(d−3):HFPO−CONH−CNHCHとトリメチロールプロパントリア
クリレートの1:1マイケル付加重合物
(d−4):CH=CHCOOCH−C−CONH−HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
【0148】
更に、一般式(F−4)の具体例として(F−5)を挙げる。
【0149】
一般式(F−5):
CH=CX−COO−CHY−CH−OCO−CX=CH
(式中X1及びX2は、同一若しくは異なる基であって、水素原子又はメチル基を示し、Yは、フッ素原子を3以上有する炭素数2〜20のフルオロアルキル基又はフッ素原子を4個以上有する炭素数4〜20のフルオロシクロアルキル基を示す。)
【0150】
本発明において、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物は、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していても良い。含フッ素防汚剤が複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していることにより、硬化させた際には、三次元網目構造を呈し、ガラス転移温度が高く、防汚剤の転写性が低く、また汚れの繰り返しの拭取りに対する耐久性を向上させることができる。更には、耐熱性、耐候性等に優れた硬化被膜を得ることができる。
【0151】
前記一般式(F−5)表されるフッ素原子含有アルコール化合物の具体例としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルエチレングリコール等を好ましく挙げることができ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。このようなジ(メタ)アクリル酸エステル1を調製するには、特開平6−306326に挙げられるような公知の方法により製造できる。本発明においては、ジアクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコールが好ましく用いられる。
【0152】
本発明において、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物として好ましい第2の態様として、一分子中に複数個の(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を有している化合物が挙げられる。
【0153】
更に、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物は、シロキサン化合物であってもよい。含フッ素防汚剤がシロキサン骨格を有することにより、防汚剤が表面に偏在し易くなり、硬化後の基材上面が優れた撥水撥油性を示し、防汚性に優れる。更に、だけでなく、耐擦傷性を付与することができる。更に、好ましい態様(一般式(F−6))について以下に述べる。
【0154】
一般式(F−6):
afbAcSiO(4-a-b-c)/2
【0155】
(式中、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基であり、Rfはフッ素原子を含有する有機基であり、RAは(メタ)アクリル基を含有する有機基であり、a+b+c<4である。)で表される含フッ素(メタ)アクリレート化合物。
【0156】
aは1〜1.75、好ましくは1〜1.5であり、1より小さいと化合物の合成が工業的に困難となり、1.75より大きいと硬化性、防汚性の両立ができなくなる。
【0157】
fはフッ素原子を含有する有機基であり、Cx2x+1(CH2p−(式中、xは1〜8の整数、pは2〜10の整数である。)で示される基又はパーフルオロポリエーテル置換アルキル基であることが好ましい。bは0.2〜0.4、好ましくは0.2〜0.25であり、0.2より小さいと防汚性が低下し、0.4より大きいと硬化性が悪化する。
【0158】
Aは(メタ)アクリル基を含有する有機基であり、工業的な合成のし易さからSi原子への結合がSi−O−C結合であることがより好ましい。
cは0.4〜0.8、好ましくは0.6〜0.8であり、0.4より小さいと硬化性が悪化し、0.8より大きいと防汚性が低下する。
【0159】
また、a+b+cは2〜2.7、好ましくは2〜2.5であり、2より小さいと表面への偏在化が起こりにくくなり、2.7より大きいと硬化性、防汚性の両立ができなくなる。
【0160】
本発明の多官能アクリレートは、1分子中にF原子を3個以上及びSi原子を3個以上、好ましくはF原子を3〜17個及びSi原子を3〜8個含有するものである。F原子が3個未満では防汚性が不十分となり、Si原子が3個未満では表面への偏在化が不足するためか、防汚性が不十分となる。
【0161】
本発明の多官能(メタ)アクリレート化合物の、特開2007−145884号公報に挙げられる公知の方法などを用いて製造することができる。
【0162】
シロキサン構造としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、これらの中で特に分岐状、環状のものが、後述する他の多官能(メタ)アクリレート等と相溶性がよく、ハジキがなく、表面への偏在化が起こりやすいために好ましい。
【0163】
ここで、シロキサン構造が分岐状の多官能(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式
fSiRk〔OSiRm(ORA3-m3-k(式中、R、Rf、RAは上記と同様であり、m=0,1又は2、特にm=2であり、k=0又は1である。)
で表されるものが好ましい。
【0164】
また、シロキサン構造が環状構造の多官能(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式
(RfRSiO)(RARSiO)n
(式中、R、Rf、RAは上記と同様であり、n≧2、特に3≦n≦5である。)で表されるものが好ましい。
【0165】
このような多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられ、本発明においては、Rfは炭素数8のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0166】
【化4】

【0167】
<レベリング剤>
ムラ防止を目的として各種のレベリング剤を使用することができる。レベリング剤としては、具体的にはフッ素系レベリング剤、又はシリコーン系レベリング剤が好ましく、特にフッ素系レベリング剤はムラ防止能が高く、好ましい。
また、レベリング剤は、低分子化合物よりもオリゴマーやポリマーであることが好ましい。
このような単量体としては、Polymer Handbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wileylnterscience(1975)Chapter2,Page1〜483記載のものを用いることが出来る。
例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等をあげることができる。シリコーン系レベリング剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のオリゴマー等の各種の置換基で、側鎖、主鎖の末端が変性されたポリジメチルシロキサン等が挙げられ、信越化学社製のKF−96、X−22−945などがある。その他、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤も好ましく用いることができる。塗布組成物に対する上記含フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤の添加量は、0.001質量%〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜0.2質量%である。
【0168】
塗布組成物の粘度を調整するために増粘剤を用いることができる。ここでいう増粘剤とは、それを添加することにより液の粘度が増大するものを意味する。
レベリング剤、増粘剤に関する詳細は、特開2007−293313号公報に記載がある。
【0169】
<膜厚>
光学機能層の膜厚は、50nm以上250nm以下である。100〜230nmの範囲がより好ましく、150〜220nmの範囲が更に好ましい。50nm未満であると、均一な膜を形成することが困難であるために膜厚ムラを生じ易く、干渉ムラが発生しやすい。250nmより厚いと、光路長が長くなるため好ましい反射防止性が得られない。
【0170】
[下地層]
上記塗布組成物より形成される光学機能層の下地層としては、ハードコート層が好ましく、該ハードコート層は前記硬化性化合物及び高屈折微粒子の少なくとも1種を含む組成物から形成されることが好ましい。この2成分の少なくともいずれか一方を含有させることで、層間の密着性が向上し、耐擦傷性が向上する、また、上記塗布組成物から形成された光学機能層内で高屈折率微粒子(b)を下部偏在し易くすることができる。また、前記ハードコート層は防眩機能を付与するために、表面に凹凸構造を有していてもよい。
下地層が更に他の機能層を有していても良いことは、前述の通りである。
【0171】
[透明支持体]
本発明の光学フィルムの支持体としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスなど、特に限定は無い。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、脂環式構造を有するポリマー(ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製))等が使用できる。支持体の厚さは通常25μm〜1000μm程度のものを用いることができるが、好ましくは25μm〜200μmであり、30μm〜150μmであることがより好ましく、30〜90μmであることが更に好ましい。
支持体の巾は任意のものを使うことができるが、ハンドリング、得率、生産性の点から通常は100〜5000mmのものが用いられ、800〜3000mmであることが好ましく、1000〜2000mmであることが更に好ましい。
【0172】
支持体の表面は平滑であることが好ましく、平均粗さRaの値が1μm以下であることが好ましく、0.0001〜0.5μmであることが好ましく、0.001〜0.1μmであることが更に好ましい。
透明支持体は、プラスチックフィルムであることが好ましい。プラスチックフィルムとしてはセルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)が含まれる。トリアセチルセルロース、及びポリオレフィンがレターデーションが小さく、光学的均一性も高いため、偏光板用途として好ましく、特に、液晶表示装置に用いる場合、トリアセチルセルロースであることが好ましい。
【0173】
[ハードコート層]
本発明の光学フィルムは、フィルムの物理的強度を付与するために、透明支持体の一方の面にハードコート層を設けることが好ましい。
【0174】
本発明におけるハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜1.75の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.49〜1.65であり、更に好ましくは1.50〜1.55である。本発明では、ハードコート層の屈折率は反射率、色味、ムラ、コストの点から、この範囲にあることが好ましい。
【0175】
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜30μm、更に好ましくは2μm〜20μm、最も好ましくは3μm〜15μmである。ハードコート層の厚さは、カール、生産性、コストの点から上述の範囲にあることが好ましい。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に好ましくは5H以上である。
更に、JISK5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0176】
また、本発明の光学フィルムは、表面散乱に起因するヘイズ(以後、表面ヘイズと呼称する)は0.3%〜20%が好ましく、0.5%〜10%が特に好ましく、であり、0.5%〜5%であることが好ましく、0.5〜2%であることが特に好ましい。表面ヘイズが大きすぎると明室コントラストが悪化し、小さすぎると映り込みが悪化する。
【0177】
また、本発明の光学フィルムは、その光学特性を内部散乱に起因するヘイズ(以後、内部ヘイズと呼称する)が0%〜60%であることが好ましく、1%〜40%であることがより好ましく、10%〜35%であることが特に好ましく、15%〜30%であることが更に好ましい。内部ヘイズが大きすぎると正面コントラストが低下し、白茶け感が増す。
小さすぎると使用できる素材の組合せが限定され、防眩性その他の特性値の合わせこみが困難となり、また、高コストとなる。
【0178】
ハードコート層のヘイズは、光学フィルムに付与させる機能によって異なる。
【0179】
表面の反射率を抑える機能に加えて、ハードコート層の表面散乱にて、防眩機能を付与する場合は、表面ヘイズ(全ヘイズ値から内部ヘイズ値を引いた値。内部ヘイズ値はフィルム表面の凹凸をフィルム表面と同じ屈折率の物質により無くすことで測定可能である。
)が0.1%〜20%が好ましく、0.2%〜10%が特に好ましく、であり、0.2%〜5%であることが好ましく、0.2〜2%であることが特に好ましい。表面ヘイズが大きすぎると明室コントラストが悪化し、小さすぎると映り込みが悪化する。
【0180】
また、ハードコート層に透光性粒子を含有して内部散乱を付与する場合、内部ヘイズは目的により好ましい範囲が異なるが、内部散乱により液晶パネルの模様や色ムラ、輝度ムラ、ギラツキなどを見難くしたり、散乱により視野角を拡大する機能を付与する場合は、内部ヘイズ値は0%〜60%であることが好ましく、1%〜40%であることがより好ましい、10%〜35%であることが特に好ましく、15%〜30%であることが更に好ましい。内部ヘイズが大きすぎると正面コントラストが低下し、白茶け感が増す。小さすぎると使用できる素材の組合せが限定され、防眩性その他の特性値の合わせこみが困難となり、また、高コストとなる。一方、正面コントラストを重視する場合は、0%〜30%が好ましく、更に好ましくは1%〜20%であり、最も好ましくは1%〜10%である。
本発明の光学フィルムは、目的に応じて、表面ヘイズ及び内部ヘイズを自由に設定可能である。
【0181】
また、ハードコート層の表面散乱にて、防眩機能を付与する場合、表面凹凸形状については、中心線平均粗さ(Ra)を0.30μm以下とすることが好ましい。Raは、より好ましくは0.01〜0.20μmであり、更に好ましくは0.01〜0.12μm以下である。Raが大きいと表面散乱起因の白ボケ感がでたり、ハードコート層上に形成する層の均一性が得づらいなどの問題がある。本発明のフィルムにおいては、フィルムの表面凹凸にはハードコート層の表面凹凸が支配的であり、ハードコート層の中心線平均粗さを調節することにより、光学フィルムの中心線平均粗さを上記範囲とすることができる。なお、表面散乱にて防眩機能を付与するには、粒径が1μm〜50μmの粒子をハードコート層に添加すれば良い。
【0182】
画像の鮮明性を維持する目的では、表面の凹凸形状を調整することに加えて、透過画像鮮明度を調整することが好ましい。光学フィルムの透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般にフィルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フィルムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。透過画像鮮明度は好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
【0183】
[中屈折率層]
本発明のフィルムには、中屈折率層を設けることにより、反射防止性を高めることができる。中屈折率層の屈折率は、1.55以上1.80以下であることが好ましい。
【0184】
本発明に用いる中屈折率層はバインダー(例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と、屈折率を制御する目的の高屈折率無機微粒子を含有してなる。本発明で中屈折率層を形成する場合は、ハードコート層と中屈折率層を1回の塗布で形成するのがより好ましい。すなわち、同時重層塗布用のコーターを用い、1回の巻取りでハードコート層と中屈折率層とを形成するのが好ましく、ハードコート層、中屈折率層、及び光学機能層を同時に形成するのが更に好ましい。
【0185】
本発明の好ましい態様は、上記中屈折率層の上に、熱架橋又は光架橋可能な含フッ素化合物(a1)、高屈折率微粒子(b)、低屈折率微粒子(c)、更に硬化性化合物を含有する塗布組成物を塗布して、低屈折率層と高屈折率層を同時に形成する。
【0186】
[透明導電性層]
本発明の光学フィルムは、帯電防止の目的で透明導電性層を設けることがフィルム表面での静電気防止の点で好ましい。透明導電性層は、ディスプレイ側からの表面抵抗値を下げる等の要求がある場合、表面等へのゴミつきが問題となる場合に有効である。透明導電性層を形成する方法としては、例えば、通電性粒子と反応性硬化樹脂を含む導電性塗工液を塗工する方法、或いは透明膜を形成する金属や金属酸化物等を蒸着やスパッタリングして導電性薄膜を形成する方法等の公知の方法を挙げることができる。塗工する場合、その方法は特に限定されず、塗工液の特性や塗工量に応じて、例えば、ロールコート、グラビアコート、バーコート、押出しコート等の公知の方法より最適な方法を選択して行えばよい。透明導電性層は、透明支持体又はハードコート層上に直接又はこれらとの接着を強固にするプライマー層を介して形成することができる。
【0187】
導電性層の表面抵抗値(SR)は、LogSR≦12を満たすことが好ましい。
LogSRが、5〜12であることがより好ましく、5〜9であることが更に好ましく、5〜8であることが最も好ましい。導電性層の表面抵抗(SR)は、四探針法、又は円電極法により測定することができる。
導電性層は、実質的に透明であることが好ましい。具体的には、導電性層のヘイズが、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。波長550nmの光の透過率が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
【0188】
[光学フィルムの製造方法]
次に、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
本発明の光学フィルムは、前記(a)〜(c)を含む硬化性組成物を塗布して硬化することにより前記光学機能層を形成する工程を含む製造方法により製造することができる。
硬化性組成物は、前述の[光学機能層]で述べた成分のほかに有機溶剤を含むことができる。
有機溶剤としては、粒子以外の各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。
溶媒は1種類でも良いし、2種類以上のものを混合して用いても良い。特に、乾燥負荷の観点から、常圧室温における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶剤を少量(沸点が100℃以下の溶剤100質量部に対して沸点が100℃以上の溶剤1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、特に好ましくは3〜30質量部)含有させることが好ましい。沸点の異なる有機溶剤を少なくとも2種併用することで、高屈折率微粒子(b)が下部偏在し易くなる。
【0189】
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル(90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0190】
沸点が100℃以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBKと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0191】
2種類以上の有機溶剤を使用するもう1つの好ましい例としては、沸点の差が特定の値より大きい2種類の溶剤を使うことが挙げられる。2種の溶媒の沸点の差が25℃以上であることが好ましく、35℃以上が特に好ましく、50℃以上が更に好ましい。沸点の差が大きいことで、高屈折率微粒子(B)が下部偏在し易くなる。
【0192】
上記有機溶剤の配合割合は、固形分濃度が2〜30質量%になるように添加するのが好ましく、3〜20質量%になるように添加するのがより好ましく、5〜15質量%になるように添加するのが特に好ましい。固形分濃度が低すぎると乾燥に時間がかかる、乾燥起因の膜厚ムラが出易いなどの懸念があり、固形分濃度が高すぎると粒子の偏在が十分に起こらない、塗布量が少なくなり、塗布ムラが出易いなどの懸念がある。
【0193】
光学機能層を形成するための硬化性組成物は、いずれの塗布方法により塗布してもよい。具体的には、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許2681294号明細書参照)、マイクログラビアコート法等の方法を用いることができる。その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
ダイコート法を用いる場合、本発明における光学機能層のような一般にウエット塗布量の少ない領域(20cc/m以下)で好ましく用いることができるダイコーターについては、特開2007−293313号公報を参考にできる。
【0194】
なお、硬化性組成物を支持体上に塗布、乾燥させる過程において、塗布組成物中の低屈折率微粒子が塗膜の最表面側に、高屈折率微粒子が支持体側界面側に自発的に偏在するような塗布組成物とすることで目的を達成しているが、添加した低屈折率微粒子と高屈折率微粒子をそれぞれの界面側により効果的に偏在させるため、表面側に偏在する成分と支持体側界面側に偏析する成分とに分け、それぞれの組成物を2つの塗布ヘッドを有する塗布装置(例えば特開2007−293313号公報図6A、B)等にて、同時又はほぼ同時に積層塗布することも可能である。この場合、予め2液に分けて塗設するので偏析が行われやすくなり、その効果として微小領域での粒子の凝集欠陥などが軽減するため、反射防止性能や耐擦傷性の向上が見込まれる上、特に大面積でも安定したムラのない層形成が可能となる。
例えば、前記(a)及び(c)を含む第1の硬化性組成物、及び、前記(b)を含む第2の硬化性組成物の各々を、近接する2つのスロットダイ及びスライド型塗布ヘッドから選ばれる少なくとも1種を含む塗布装置に供給して、該透明支持体をバックアップローラで支持して走行させながら塗布して硬化することにより前記光学機能層を形成する方法が好ましい。
【0195】
塗布後、適宜乾燥を行うことができる。また、塗布・乾燥後、熱又は光照射を行うことにより硬化することができる。
【0196】
ハードコート層及び中屈折率層等の機能層を光学フィルムを製造する場合、上記の光学機能層を形成する工程の前に、各層を形成するための塗布組成物を塗布、乾燥及び硬化する工程を行うことにより、各層を形成することができる。
各層を形成するための塗布組成物には、各層の項において前述した成分の他に、前記有機溶剤を用いることができる。
塗布方法も光学機能層の形成において述べた方法と同様である。
また、透明支持体を送り出してから巻取りまでの間に、塗布ステーションと乾燥、硬化ゾーンのセットを層の数と同じ数、縦列して設けた設備により製造すると、生産性、コストの面で有利である。
【0197】
以上説明した製造方法によれば、光学機能層を1回の塗布で形成することができるため、高屈折率層と低屈折率層とを別々の工程で形成する製造方法に比べ、塗布ステーションと乾燥、硬化ゾーンのセットの数を1つ減らすことができ、設備面で大きなメリットが得られる。例えば、透明支持体の上にハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の4層を形成する場合は、本発明の技術を用いれば、透明支持体上にハードコート層、中屈折率層を形成し、更に光学機能層を形成するので、透明支持体を送り出してから巻取りまでの間に、塗布ステーションと乾燥、硬化ゾーンのセットを3個並べるだけでよく、生産性、コスト面で効果がある。また、更にハードコート層と中屈折率層を同時に形成する技術を取り入れれば、透明支持体を送り出してから巻取りまでの間に、塗布ステーションと乾燥、硬化ゾーンのセットを2個並べるだけでよく、非常に大きな効果がある。
【0198】
[偏光板用保護フィルム]
本発明の光学フィルムを液晶表示装置に用いる場合は、偏光板を作成するにあたり、光学フィルムを偏光膜の表面保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いるために、光学機能層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化することで、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良することが好ましい。
【0199】
透明支持体としては、トリアセチルセルロースフィルムを用いることが特に好ましい。
本発明における偏光板用保護フィルムを作製する手法としては、(1)予め鹸化処理した透明支持体の一方の面に上記の各層(例、ハードコート層、中屈折率層、光学機能層など)を塗設する手法、(2)透明支持体の一方の面に上記の各層を塗設した後、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理する手法、の2つが考えられるが、(1)はハードコート層を塗設するべき面まで親水化されるため、支持体とハードコート層との密着性の確保が困難となるため、(2)の手法が好ましい。
【0200】
[鹸化処理]
(1)浸漬法
アルカリ液の中に光学フィルムを適切な条件で浸漬して、フィルム全表面のアルカリと反応性を有する全ての面を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3mol/lであり、特に好ましくは1〜2mol/lである。
好ましいアルカリ液の液温は30〜70℃、特に好ましくは40〜60℃である。
上記の鹸化条件の組合せは比較的穏和な条件同士の組合せであることが好ましいが、光学フィルムの素材や構成、目標とする接触角によって設定することができる。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
【0201】
鹸化処理することにより、透明支持体の光学機能層を有する表面と反対の表面が親水化される。偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする接着層との接着性を改良するのに有効である。
鹸化処理は、光学機能層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が低いほど、偏光膜との接着性の観点では好ましいが、一方、浸漬法では同時に光学機能層を有する表面までアルカリによるダメージを受ける為、必要最小限の反応条件とすることが重要となる。アルカリによる反射防止層の受けるダメージの指標として、光学機能層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち光学フィルムの貼り合わせ面の、水に対する接触角を用いた場合、特に支持体がトリアセチルセルロースであれば、20度〜50度、好ましくは30度〜50度、より好ましくは40度〜50度を上記接触角とするのが好ましい。50度以下であれば、偏光膜との接着性に問題が生じることがないため好ましい。一方、20度以上であると、光学機能層の受けるダメージが大きくないため、物理強度、耐光性を損なうことがなく、好ましい。
【0202】
(2)アルカリ液塗布法
上述の浸漬法における光学機能層へのダメージを回避する手段として、適切な条件でアルカリ液を光学機能層を有する表面と反対側の表面のみに塗布、加熱、水洗、乾燥するアルカリ液塗布法が好ましく用いられる。なお、この場合の塗布とは、鹸化を行う面に対してのみアルカリ液などを接触させることを意味し、この時、光学フィルムの貼り合わせ面の水に対する接触角が、10〜50度となるように鹸化処理を行なうことが好ましい。また、塗布以外にも噴霧、液を含んだベルト等に接触させる、などによって行われることも含む。これらの方法を採ることにより、別途、アルカリ液を塗布する設備、工程が必要となるため、コストの観点では(1)の浸漬法に劣る。一方で、鹸化処理を施す面にのみアルカリ液が接触するため、反対側の面にはアルカリ液に弱い素材を用いた層を有することができる。例えば、蒸着膜やゾル−ゲル膜では、アルカリ液によって、腐食、溶解、剥離など様々な影響が起こるため、浸漬法では設けることが望ましくないが、この塗布法では液と接触しないため問題なく使用することが可能である。
【0203】
上記(1)、(2)のどちらの鹸化方法においても、ロール状の支持体から巻き出して各層を形成後に行うことができるため、前述の光学フィルム製造工程の後に加えて一連の操作で行っても良い。更に、同様に巻き出した支持体からなる偏光板との張り合わせ工程もあわせて連続で行うことにより、枚葉で同様の操作をするよりもより効率良く偏光板を作成することができる。
【0204】
[反射防止フィルム]
本発明の光学フィルムは反射防止性能に優れているため、反射防止フィルムとして使用することができる。該反射防止フィルムは後述の偏光板用保護フィルムなどにも使用することができる。
【0205】
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光膜と、該偏光膜の表側及び裏側の両面を保護する2枚の保護フィルムとを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、上述の本発明の光学フィルムである。透明支持体と偏光膜とは、ポリビニルアルコールからなる接着剤層又は粘着剤層を介して接着することができる。
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、物理強度、優れた反射防止機能を有する偏光板が作製でき、大幅なコスト削減が可能となる。また、本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムの一方に、後述する光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、更に、液晶表示装置の明室でのコントラストを改良し、上下左右及び斜め方向の視野角を非常に広げることができる偏光板を作製できる。
【0206】
[光学補償フィルム]
光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されているディスコティック構造単位を有する化合物を含有する光学異方性を有する層を有し、該ディスコティック化合物と支持体とのなす角度が透明支持体からの距離に伴って変化していることを特徴とする光学補償フィルムが好ましい。
該角度は光学異方性層の支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムとして用いる場合、偏光膜と貼り合わせる側の表面が鹸化処理されていることが好ましく、前記の鹸化処理に従って実施することが好ましい。
また、光学異方性層が更にセルロースエステルを含んでいる態様、光学異方性層と透明支持体との間に配向層が形成されている態様、該光学異方性層を有する光学補償フィルムの透明支持体が、光学的に負の一軸性を有し、かつ該透明支持体面の法線方向に光軸を有し、更に下記の条件を満足する態様も好ましい。
20≦{(nx+ny)/2−nz}×d≦400
上記の条件式において、nxは、フィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率であり、またdは光学補償層の厚みを表す。
【0207】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述の本発明の光学フィルム又は本発明の偏光板の少なくとも1つを有する。
本発明の光学フィルムを有する画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)や陰極管表示装置(CRT)、電界放出ディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)等が挙げられる。本発明の光学フィルムを有する偏光板を有する画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)のような画像表示装置が挙げられる。本発明の画像表示装置においては、本発明の光学フィルムを有する偏光板を、液晶表示装置の液晶セルのガラスに直接又は他の層を介して接着して用いる。
【0208】
本発明の光学フィルムを用いた偏光板は、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
また、透過型又は半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、更に視認性の高い表示装置を得ることができる。
また、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、OLED用表面保護板として表面及び内部からの反射光を低減するのに用いることができる。
【実施例】
【0209】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0210】
(パーフルオロオレフィン共重合体(P1)の合成)
パーフルオロオレフィン共重合体(P1)
【0211】
【化5】

【0212】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は0.53Mpa(5.4kg/cm)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド10.3gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(P1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.421であった。
【0213】
(ゾル液1の調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン(MEK)120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液1を得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0214】
(シランカップリング剤ゾルaの調整)
特許第2874715号明細書の合成例1〜3に記載の方法を用い、合成例3に記載のパーフルオロポリエーテルシランカップリング剤のゾル液a30部を調整した。
【0215】
(シランカップリング剤ゾルbの調整)
特許第2874715号明細書の合成例1で用いるF−(CFCFCFO)n−CFCFCOFで表されるω−フルオロポリパーフルオロオキセタンアシルフルオライド(平均分子量3900)の代わりに、同式で表される平均分子量1500の化合物を用いた他は、パーフルオロポリエーテルシランカップリング剤のゾル液b30部を調整した。
【0216】
(シリカ分散液Aの調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径40nm、シェル厚み6nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.30、特開2002−79616号公報の調製例4に準じサイズを変更して作成)500部に、ゾル液a10部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加した。
この分散液500gにほぼシリカの含量一定となるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力20kPaで減圧蒸留による溶媒置換を行った。分散液に異物の発生はなく、固形分濃度をシクロヘキサノンで調整し、22質量%にしたときの粘度は25℃で9mPa・sであった。得られたシリカ分散液Aのイソプロピルアルコールの残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1.0%であった。
【0217】
(シリカ分散液Bの調製)
ゾル液aの代わりにゾル液bを使用した以外はシリカ分散液Aと同様の方法を用いてシリカ分散液Bを調整した。
【0218】
(シリカ分散液Cの調製)
ゾル液a 10部の代わりにアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)2部、ゾル液b 2部を用いた以外はシリカ分散液Aと同様の方法を用いてシリカ分散液Cを調整した。
【0219】
(シリカ分散液Dの調製)
ゾル液a 10部の代わりにアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)8部、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)2部を用いた以外はシリカ分散液Aと同様の方法を用いてシリカ分散液Dを調整した。
【0220】
(シリカ分散液Eの調製)
ゾル液a 10部の代わりにアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)10部)を用いた以外はシリカ分散液Aと同様の方法を用いてシリカ分散液Eを調整した。
【0221】
(シリカ分散液Fの調製)
反応時間を6時間に変更した以外は、シリカ分散液Eと同様の方法を用いてシリカ分散液Fを調整した。
【0222】
(分散液Cの調製)
平均粒子径15nmのZrO粒子のメチルイソブチルケトン分散物(ZrO粒子の屈折率2.4、固形分濃度20質量%)500gに、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)10g、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート0.5g加え混合した後に、イオン交換水を3g加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8gを添加して分散液Cを作製した。分散液Cにジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)31.4gを加え、圧力20kPaで減圧蒸留し、固形分濃度62%の溶液を作製した。光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)を0.5g、光重合開始剤(イルガキュア904、チバ・ジャパン(株)製)を0.5gを加え、攪拌して溶解し、メチルエチルケトンを加え濃度調整し、固形分濃度約61%、固形分中ZrO含率約70%の分散液Cを作製した。
【0223】
(ハードコート層用塗布液Aの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)306質量部を、16質量部のメチルエチルケトンと220質量部のシクロヘキサノンの混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)7.5質量部を加え、溶解するまで攪拌した後に、450質量部のMEK−ST(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30質量%のSiOゾルのメチルエチルケトン分散物、日産化学(株)製)を添加し、撹拌して混合物を得て、孔径3μmのポリプロピレン製フィルター(PPE−03)で濾過してハードコート層用塗布液Aを調製した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.50であった。
【0224】
(ハードコート層用塗布液Bの調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET−30、日本化薬(株)製)を71.2g、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)を2.9g、フッ素系表面改質剤(SP−13)0.1g、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)11.8gをメチルイソブチルケトン(MIBK)に添加し、エアーディスパーにて60分間攪拌して溶質を完全に溶解した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.52であった。平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子(共重合組成比=50/50、屈折率1.536)13.7gをポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散し30%メチルイソブチルケトン分散液として添加し、メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンとを加え、固形分濃度を45質量%に調整後、エアーディスパーにて10分間攪拌した。メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンの質量比は9:1になるように調整した。
前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層用塗布液Bを調製した。
【0225】
SP−13:フッ素系の界面活性剤(MEKの10質量%溶液として溶解した後に使用した。)
【0226】
【化6】

【0227】
(中屈折率層用塗布液Aの調製)
分散液C65.6gにジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)57g、光重合開始剤(イルガキュア904、チバ・ジャパン(株)製)3gを加え、固形分濃度が3.5質量%になるようにメチルイソブチルケトンを加え、10分間攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.62であった。
前記混合液を孔径3μmのポリプロピレン製フィルター(PPE−03)で濾過して中屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0228】
(中屈折率層用塗布液Bの調製)
市販の導電性微粒子ATO「アンチモンドープ酸化錫T−1」{比表面積80m/g、三菱マテリアル(株)製}20.0部に、アニオン性基とメタアクリロイル基を有する下記の分散剤(B−1)6.0部、メチルイソブチルケトン74部を添加して撹拌した。
【0229】
【化7】

【0230】
メディア分散機(直径0.1mmのジルコニアビーズ使用)を用いて、上記溶液中のATO粒子を分散した。光散乱法で分散液中のATO粒子の質量平均粒径を評価した結果、55nmであった。このようにして、ATO分散液を作製した。
【0231】
上記ATO分散液100部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)6部、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)0.8部を添加して撹拌した。
このようにして中屈折率層用塗布液Bを調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.62であった。
【0232】
(光学機能層用塗布液Aの調製)
分散液C132gに、パーフルオロオレフィン共重合体(P1)31.5g、シリカ分散液A81.8g、反応性シリコーンX−22−164B(商品名;信越化学工業社製)1.6g、ゾル液1 7.2g、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ・ジャパン(株)製)1.6gを加え、固形分濃度5.4%になるようにメチルエチルケトンとシクロヘキサノンを加え、10分間攪拌した。メチルエチルケトンとシクロヘキサノンの質量比は8:2になるように調整した。
前記混合液を孔径3μmのポリプロピレン製フィルター(PPE−03)で濾過して光学機能層用塗布液Aを調製した。
【0233】
(光学機能層用塗布液B〜Kの調製)
シリカ分散液Aの代わりにシリカ分散液B〜F、又は中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径40nm、シェル厚み6nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.30、特開2002−79616号公報の調製例4に準じサイズを変更して作成)を用いた以外は光学機能層用塗布液Aと同様の方法を用い、表1に記載の比率で各成分を混合して光学機能層用塗布液B〜Kを調整した。
【0234】
(光学機能層用塗布液Lの調製)
分散液Cの代わりにジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)を用いた以外は光学機能層用塗布液Aと同様の方法を用い、表1に記載の比率で各成分を混合して光学機能層用塗布液Lを調整した。
【0235】
(光学機能層用塗布液M〜Nの調製)
パーフルオロオレフィン共重合体(P1)の代わりにジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)を用いた以外は光学機能層用塗布液A〜Kと同様の方法を用い、表1に記載の比率で各成分を混合して光学機能層用塗布液M〜Nを調整した。
【0236】
(光学機能層用塗布液Oの調製)
分散液C132gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)11.1g、反応性シリコーンX−22−164B(商品名;信越化学工業社製)0.8g、ゾル液1 3.6g、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ・ジャパン(株)製)0.8gを加え、固形分濃度5.4%になるようにメチルエチルケトンとシクロヘキサノンを加え、10分間攪拌した。メチルエチルケトンとシクロヘキサノンの質量比は8:2になるように調整した。
前記混合液を孔径3μmのポリプロピレン製フィルター(PPE−03)で濾過して光学機能層用塗布液Oを調製した。
【0237】
(光学機能層用塗布液Pの調製)
パーフルオロオレフィン共重合体(P1)31.5g、シリカ分散液B12.6g、反応性シリコーンX−22−164B(商品名;信越化学工業社製)0.8g、ゾル液1 3.6g、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ・ジャパン(株)製)0.8gを加え、固形分濃度3.6%になるようにメチルエチルケトンとシクロヘキサノンを加え、10分間攪拌した。メチルエチルケトンとシクロヘキサノンの質量比は8:2になるように調整した。
前記混合液を孔径3μmのポリプロピレン製フィルター(PPE−03)で濾過して光学機能層用塗布液Pを調製した。
【0238】
(光学機能層用塗布液Qの調製)
シリカ分散液Bの代わりにシリカ分散液Dを用いた以外は光学機能層用塗布液Pと同様の方法を用い、表1に記載の比率で各成分を混合して光学機能層用塗布液Qを調整した。
【0239】
【表1】

【0240】
[実施例1]
(光学フィルム1−1Aの作製)
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製、屈折率:1.49)に、上記のハードコート層用塗布液Aを、スロットダイコーター(特開2007−293313号公報図3(A)のコーターを使用)を用いて塗布し、100℃で2分間乾燥した。次に窒素パージし、酸素濃度を0.1%にした条件下で紫外線を70mJ/cm照射して、塗布層を硬化させ、ハードコート層(屈折率:1.50、膜厚:6μm)を形成した。続いて、上記の中屈折率層用塗布液Aをスロットダイコーター(特開2007−293313号公報図3(A)のコーターを使用)を用いて塗布し、100℃で乾燥した後、窒素パージし、酸素濃度を0.1%にした条件下で紫外線を200mJ/cm照射して、塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率:1.62、膜厚:60nm)を設けた。中屈折率層の上に、上記の光学機能層用塗布液Aをスロットダイコーター(特開2007−293313号公報図3(A)のコーターを使用)を用いて塗布し、100℃で1分乾燥した後、窒素パージし、酸素濃度を0.05%にした条件下で紫外線を500mJ/cm照射して、塗布層を硬化させ、高屈折率層と低屈折率層を同時に形成して、光学フィルム1−1Aを作製した。形成された膜の切片をTEMを用いて観察したところ、中空シリカ微粒子が表面に一列配列し、ジルコニア微粒子が下部に偏在している様子が確認できた。得られた光学機能層における低屈折率層及び高屈折率層の膜厚は、前述のように断面のTEM画像から計測し、膜厚はそれぞれ、高屈折率層が110nm、低屈折率層が95nmであった。
【0241】
(光学フィルム1−1B〜1−2Fの作製)
光学機能層用塗布液として、表2に記載の塗布液を用いた以外は、光学フィルム1−1Aと同じ方法で光学フィルム1−1B〜1−2Fを作製した。形成された膜の切片をTEM観察したところ、本発明のフィルムではジルコニア微粒子が下部に偏在し、中空シリカ微粒子が表面に一列配列している様子も確認できた。
【0242】
(光学フィルム1−3B、3Eの作製)
光学機能層塗布液として光学機能層用塗布液Aの代わりに、光学機能層用塗布液O〜Qを用い、特開2007−293313号公報図6(A)のコーターを使用し、スロットダイより該塗布液Oを、スライド型塗布ヘッドより該塗布液P又はQを送液すること以外は、光学フィルム1−1Aと同じ方法で光学フィルム1−3B、3Eを作製した。形成された膜の切片をTEM観察したところ、1−3B、3Eでも中空シリカ微粒子は表面に一列配列し、ジルコニア微粒子は下部に偏在しており、1−1B、1Eと比較してシリカ微粒子の配列やジルコニア微粒子層の支持体と反対側の界面平坦性がより均一になっていた。
【0243】
【表2】

【0244】
(表面自由エネルギーの算出)
パーフルオロオレフィン共重合体(P1)と反応性シリコーンX−22−164Bの混合物、熱架橋性含フッ素ポリマー(JTA113、固形分濃度6%、JSR(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)それぞれをMEKに溶かし、塗布、乾燥、硬化し、硬化物を作製し、単独の表面自由エネルギーを求めた。パーフルオロオレフィン共重合体(P1)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)に関しては、固形分濃度5%分の光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ・ジャパン(株)製)を加えた。乾燥、硬化条件は、光学フィルム1−1Aの光学機能層硬化時と同じ条件とした。
表面自由エネルギーは水とヨウ化メチレンの接触角より算出した。
パーフルオロオレフィン共重合体(P1)と反応性シリコーンX−22−164Bの混合物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)、それぞれの表面自由エネルギーは25mN/m、49.0mN/mであった。
【0245】
シリカ分散液A〜F及び中空シリカ微粒子ゾル、分散液Cについて、遠心分離で、粒子を沈降させ、デカンテーションした後、MEK溶剤を添加し、超音波発信機で超音波を2分印加した。その後、遠心分離、デカンテーション、MEK溶剤添加、超音波印加を4回繰り返し、その後洗浄した硝子基板上にキャスト、乾燥し、酸化物微粒子の薄膜サンプルを得た。そのサンプルの接触角測定より、表面自由エネルギーを算出したところ、シリカ分散液A及び分散液Bより作製した酸化物微粒子の薄膜はそれぞれ以下の値であった。
【0246】
【表3】

【0247】
(光学フィルムの評価)
得られた光学フィルムについて、以下の項目の評価を行った。その結果を表1にまとめる。
【0248】
(1)積分反射率
光学フィルムの裏面(光学機能層を有さない面)をサンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、分光光度計V−550(日本分光(株)製)にて積分反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。
【0249】
(2)スチールウール耐傷性評価
スチールウール耐傷性は、ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行うことで、耐擦傷性の指標とすることが出来る。
評価環境条件:25℃、60%RH、こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.0000)試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定、移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、荷重:200g/cm、先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、こすり部分の傷を反射光で目視観察し、以下のとおりの判定を行った。
○:キズが見えない△:キズがほとんど気にならない×:キズが気になる
【0250】
(3)指紋拭取り性試験
試料裏面を油性黒インキを塗りった。表面に指を押し当てて指紋を付着させ、ティシュペーパーで10往復拭き、明室において目視観察し、以下の通りの判定を行った。
○:指紋のあとが見えない △:指紋のあとがうっすら見える ×:指紋が残っている
【0251】
【表4】

【0252】
光学フィルム1−1A〜1Gのうち、低屈折率微粒子の表面自由エネルギーとバインダの表面自由エネルギーの差(△E)が適切な範囲にある試料では、積分反射率はいずれも1.0%以下と良好で、かつ、耐擦傷性に優れていた。特に1−1A、1Bは指紋拭取り性にも優れ、防汚性も兼ね備えていた。一方、△Eが小さ過ぎる場合は積分反射率は良好なものの、耐擦傷性に劣っていた。また、△Eが大きすぎる場合は、ジルコニア粒子と中空シリカ微粒子が混和してしまい、いずれの性能も悪くなった。
【0253】
光学フィルム1−1H〜1Kのうち、中空シリカ微粒子の量が適切な場合はいずれの性能も優れた特性を示した。一方、粒子量が多い場合は、中空シリカ微粒子の一部が光学機能層下部に偏在したジルコニア微粒子と混合しており、耐擦傷性、指紋拭取り性は良好なものの、積分反射率が悪化していた。
【0254】
光学フィルム1−1M〜1Nは、形成された膜の切片をTEM観察したところ微粒子が光学機能層内に均一に存在しており、積分反射率が悪化していた。
【0255】
光学フィルム1−2E〜2Fは、1−1E、1Fと比較して積分反射率、耐擦傷性は良好な性能を維持したまま、指紋拭取り性が良化していた。
【0256】
光学フィルム1−3B〜3Eは、積分反射率が0.30%と最も優れた反射防止性能を示した。更に1−3Bは耐擦傷性、指紋拭取り性も良好で、最も優れていた。
【0257】
[実施例2]
(光学フィルム2−1B〜2Eの作製)
ハードコート用塗布液、中屈折率層用塗布液、光学機能層用塗布液として、表2に記載の塗布液を用いた以外は、光学フィルム1−1Aと同じ方法で光学フィルム2−1B〜2Eを作製した。積分反射率は、いずれも1.0%以下と良好な反射防止性を示した。また、いずれも良好な耐擦傷性を示した。
【0258】
(光学フィルム3−1B〜2Eの作製)
ハードコート用塗布液、中屈折率層用塗布液、光学機能層用塗布液として、表2に記載の塗布液を用いた以外は、光学フィルム1−1Aと同じ方法で光学フィルム3−1B〜2Eを作製した。積分反射率は、いずれも1.0%以下と良好な反射防止性を示した。また、いずれも良好な耐擦傷性を示した。
【0259】
(光学フィルム4−1B〜2Eの作製)
中屈折率層を形成しない以外は、光学フィルム1−1Aと同じ方法で光学フィルム4−1B〜2Eを作製した。積分反射率は、いずれも1.0%以下と良好な反射防止性を示した。また、いずれも良好な耐擦傷性を示した。
【0260】
(光学フィルムの鹸化処理)
前記光学フィルム1−1B、1E、2E、2−1B〜2E、3−1B〜2E、4−1B〜2Eについて、以下の処理を行った。1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した光学フィルムを前記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、前記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済みの光学フィルムを作製した。
【0261】
(偏光板の作製)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)と、鹸化処理済みの光学フィルムを、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面に接着、保護して偏光板を作製した。これらを、偏光板試料1−1B、1E、2E、2−1B〜2E、3−1B〜2E、4−1B〜2Eとする。
【0262】
(偏光板の評価)
作製した偏光板試料1−1B〜4−2Eを、液晶テレビの視認側の偏光板の代わりとして貼り換えたものを作製した。液晶テレビはシャープ(株)製の『LC−37GD4』(MVA方式)を用いた。
本発明の実施例である偏光板試料1−1B〜4−2Eを偏光板として用いた場合は、映り込みの少ない、コントラストのよい映像が得られた。特に2−1B〜2Eを用いた偏光板ではもっとも映り込みが少なく、コントラストに優れた映像が得られた。更に3−1B〜2Eは、1−1B〜2Eと比較してゴミ又は塵埃の付着が明らかに少なかった。4−1B〜2Eでも、中屈折率層を設けていないものの、映り込みが少なく良好な表示性能が得られた。
【0263】
【表5】

【0264】
[実施例3]
(円偏光板の作製)
光学フィルム1−1Bの光学機能層と反対側の面にλ/4板を粘着剤で貼り合せ円偏光板(試料1−1B)を作製した。有機ELディスプレイの表面に光学機能層が外側になるように試料1−1Bを粘着剤で貼り付けたところ、映り込みの少ない、良好な表示性能が得られた。
【0265】
反射型液晶ディスプレイ及び半透過型液晶ディスプレイの表面の偏光板として、低屈折率層が外側になるように試料1−1Bを用いたところ、映り込みの少ない、良好な表示性能が得られた。
【符号の説明】
【0266】
10,20,30 光学フィルム
11,41,51 透明支持体
12,42,52 光学機能層
44,54 ハードコート層
56 中屈折率層
121 低屈折率微粒子
122 高屈折率微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、最表層として光学機能層を有する光学フィルムであって、
前記光学機能層の膜厚は50nm以上250nm以下であり、
前記光学機能層は、
(a)含フッ素化合物、
(b)屈折率1.55以上の高屈折率微粒子、及び
(c)前記(a)含フッ素化合物により形成される硬化膜との表面自由エネルギー差が10mN/m以上30mN/m以下である、屈折率1.45以下の低屈折率微粒子、
を含有し、
前記(c)低屈折率微粒子は透明支持体の反対側の光学機能層表面に実質的に一列配列し、かつ、前記(b)高屈折率微粒子は透明支持体側の光学機能層下部に偏在する、光学フィルム。
【請求項2】
前記(c)低屈折率微粒子の表面自由エネルギーが、前記(a)含フッ素化合物の表面自由エネルギーより10mN/m〜30mN/m低い、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記(c)低屈折率微粒子が、パーフルオロポリエーテル基を含有するシランカップリング剤によって表面修飾されている請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記(c)低屈折率微粒子が、シリカ微粒子又は中空シリカ微粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記(b)高屈折率微粒子の表面自由エネルギーが、前記(a)含フッ素化合物の表面自由エネルギーより20mN/m以上高い、請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記(b)高屈折率微粒子が、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物微粒子である、請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記(c)低屈折率微粒子の含有量が、前記光学機能層の全固形分に対し5質量%〜15質量%の範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記(b)高屈折率微粒子の含有量が、前記光学機能層の全固形分に対し、30質量%〜50質量%の範囲である、請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記光学機能層全層中の前記(c)低屈折率微粒子の平均粒子充填率PLtに対する前記透明支持体の反対側の前記光学機能層上部30%膜厚中の前記(c)低屈折率微粒子の平均粒子充填率PLuの比率[(PLu/PLt)×100(%)]が200%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記光学機能層全層中の前記(b)高屈折率微粒子の平均粒子充填率PHtに対する前記透明支持体側の前記光学機能層下部50%膜厚中の前記(b)高屈折率微粒子の平均粒子充填率PHdの比率[(PHd/PHt)×100(%)]が120%以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項11】
光学機能層表面の表面自由エネルギーが22mN/m以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の光学フィルム又は請求項12に記載の偏光板を有する画像表示装置。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、
前記(a)〜(c)を含む硬化性組成物を塗布して硬化することにより前記光学機能層を形成する工程を含む、製造方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、
前記(a)及び(c)を含む第1の硬化性組成物、及び、前記(b)を含む第2の硬化性組成物の各々を、近接する2つのスロットダイ及びスライド型塗布ヘッドから選ばれる少なくとも1種を含む塗布装置に供給して、該透明支持体をバックアップローラで支持して走行させながら塗布して硬化することにより前記光学機能層を形成する工程を含む、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−39332(P2011−39332A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187576(P2009−187576)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】