光学フィルム、面光源装置及び液晶表示装置
【課題】波長選択性を有しながら、液晶表示装置に用いたときに、輝度を増強する機能を有する光学フィルム、面光源装置及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る光学フィルム10は、第1及び第2の層31ia,31ibが積層された基本対31iを複数有するスタック30iを備える。スタック数、第1及び第2の層間の所定方向の屈折率差|Δni|、第1及び第2の層の厚さ及び基本対の数は、光学フィルム10による反射スペクトルが目標反射スペクトル50に合うように設定される。目標反射スペクトルは、波長範囲400〜700nm内の第1の偏光光の反射スペクトル51において所定波長幅内に50%以上の反射率を有するスペクトル領域51Aaを含む反射ピーク領域51Aを有しかつ上記波長範囲内の第2の偏光光の反射スペクトル52において反射率が20%以下である、スペクトルである。
【解決手段】一実施形態に係る光学フィルム10は、第1及び第2の層31ia,31ibが積層された基本対31iを複数有するスタック30iを備える。スタック数、第1及び第2の層間の所定方向の屈折率差|Δni|、第1及び第2の層の厚さ及び基本対の数は、光学フィルム10による反射スペクトルが目標反射スペクトル50に合うように設定される。目標反射スペクトルは、波長範囲400〜700nm内の第1の偏光光の反射スペクトル51において所定波長幅内に50%以上の反射率を有するスペクトル領域51Aaを含む反射ピーク領域51Aを有しかつ上記波長範囲内の第2の偏光光の反射スペクトル52において反射率が20%以下である、スペクトルである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルム、面光源装置及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネルに用いたときに輝度を増強する機能を有する光学フィルムとして、反射偏光光学フィルムが提案されている(特許文献1参照)。この光学フィルムは、ポリエチレンナフタレートからなる光学材料層とグリコール変性ジメチルクロロヘキサンテレブタレートからなる光学材料層を交互に合計800層以上積層し、延伸して製造される。
【0003】
該光学フィルムは偏光分離及び偏光反射機能を有する。該光学フィルムは、波長400−700nmの可視光の範囲において、特定の偏光方向の光は89.7%を透過し、該偏光方向に垂直な偏光は反射する。該光学フィルムの波長400−700nmの範囲の透過率のばらつきは1.05%であり、可視光を均一に透過することができる。
【0004】
該光学フィルムは、液晶ディスプレイパネルの光源より観察者側に設置される。光学フィルムは、光源から出射された光のうち該液晶ディスプレイパネルのバックライト側偏光板の透過軸に平行な偏光光を透過するとともに、これと垂直な偏光光を反射してバックライト側に戻す。このバックライト側に戻ってきた光は、光源より観察者と反対側に設置した反射板によって再度観察者側に光を出射されるとともに偏光方向が一部変更される。従って、反射板で反射され偏光方向が一部変更された光を再利用(リサイクル)し、該光学フィルムの偏光方向に平行な偏光の光が該光学フィルムを透過し、透過液晶ディスプレイパネルの画面より出射する。このようにして該光学フィルムは液晶ディスプレイパネルの輝度を増強する機能を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−509331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶ディスプレイパネルを照射するバックライトとして、近年、環境保護の観点から、3種類(例えば、赤、緑、青)の発光ダイオードを利用する傾向にある。この場合、バックライトにおいては、各発光ダイオードから出力される光の波長帯域により高い強度を有する。液晶ディスプレイパネルは、通常、カラーフィルタを備えており、カラーフィルタは、波長に応じた吸光特性といった光学特性を有する。このように、液晶ディスプレイパネル自体や、液晶ディスプレイパネルを照明する照明光には波長依存性が生じるため、このような波長依存性を考慮しながら、輝度の増強が図れる光学フィルムが求められていた。
【0007】
本発明の目的は、波長選択性を有しながら、液晶表示装置に用いたときに、輝度を増強する機能を有する光学フィルム並びにその光学フィルムを含む面光源装置及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る光学フィルムは、所定方向の屈折率が互いに異なる第1の層及び第2の層が積層された基本対を複数有する、少なくとも一つのスタックを備える。スタックの個数、及び、少なくとも一つのスタックそれぞれにおける、第1の層と第2の層との所定方向の屈折率差、第1及び第2の層の厚さ、基本対の数は、少なくとも一つのスタック全体による反射スペクトルが目標反射スペクトルに合致するように設定されている。目標反射スペクトルは、400〜700nmの波長範囲における特定の方向に偏光した第1の偏光光の反射スペクトルにおいて、50%以上の反射率を有するすスペクトル領域であって波長幅が20〜60nmである上記スペクトル領域を含む反射ピーク領域を少なくとも一つ有し、かつ、400〜700nmの波長範囲における第1の偏光光の偏光方向に対して直交する方向に偏光した第2の偏光光の反射スペクトルにおいて、反射率が20%以下である、スペクトルである。
【0009】
上記光学フィルムでは、上述した目標反射スペクトルに合致する反射スペクトルを有するように、上記スタックの個数、及び、上記スタックにおける、第1の層と第2の層との所定方向の屈折率差、第1及び第2の層の厚さ、基本対の数が決定された、少なくとも一つのスタックを備える。そのため、光学フィルムに光が入射すると、第2の偏光光を透過しながら、第1の偏光光を波長選択的に反射する。このような光学フィルムを液晶表示装置に適用すると、第1の偏光光をリサイクル可能であるので、輝度の増強を図り得る。
【0010】
一実施形態において、上記第1の層の面内において、第1の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をna,xとし、上記第2の層の面内において、第1の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をnb,xとしたとき、|Δn|=|nb,x−na,x|が、0.02以上0.23以下であり得る。
【0011】
|Δn|が上記範囲である場合、波長選択性を有しながら、第1及び第2の偏光光を分離し得る。
【0012】
一実施形態において、第1の層の面内において、第2の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をna,yとし、第2の層の面内において、第2の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をnb,yとしたとき、|nb,y−na,y|は、0.02未満であり得る。
【0013】
|nb,y−na,y|は、0.02未満である場合、第1及び第2の偏光光をより確実に分離し得る。
【0014】
一実施形態において、第1の層の厚み方向の屈折率をna,zとし、第2の層の厚み方向の屈折率をnb,zとしたとき、|nb,z−na,z|が、0.02未満であってもよい。
【0015】
一実施形態において、基本対の数は、25〜50であり得る。
【0016】
一実施形態において、第1の層及び第2の層の厚みは、それぞれ5〜400nmであってもよい。
【0017】
一実施形態において、スタックの数は、目標反射スペクトルにおける第1の偏光光の反射スペクトルが有する反射ピーク領域の数以上であり得る。
【0018】
この構成では、反射ピーク領域の数以上にスタックを有するので、反射ピーク領域に対応して少なくとも一つのスタックを割り当てられ得る。よって、スタックは対応する反射ピーク領域を生成するように設計されればよい。
【0019】
一実施形態において、スタックの数が1〜3であり得る。
【0020】
一実施形態において、目標反射スペクトルにおける第1の偏光光の反射スペクトルが、430〜480nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有し、510〜560nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有し、600〜660nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有してもよい。
【0021】
この場合、青色、緑色及び赤色に対応する波長を選択的に反射することが可能である。
【0022】
本発明の他の側面は、面光源装置に関する。面光源装置は、光源部と、光源部からの光を面状の光に変換して出射面部から出射する面発光素子と、面発光素子に対して出射面部と反対側に配置され面発光素子からの光を、その光の偏光状態を変化させながら面発光素子側に反射する反射部と、面発光素子の出射面部上に配置されており、面状の光が入射される本発明の一側面に係る光学フィルムと、を備える。
【0023】
この構成では、面発光素子から出射された面状の光が入射光として光学フィルムに入射される。入射光のうち、第2の偏光光は、光学フィルムを透過する。一方、反射ピーク領域の波長範囲の第1の偏光光は反射されて、面発光素子側に戻される。この戻された光は、面発光素子から反射部側に出射され、反射部で反射されて面発光素子を通って光学フィルムに入射する。反射部によって反射することで、第1の偏光光の偏光状態が変化すると、反射部によって反射した光は、第1の偏光光と第2の偏光光とを含む。従って、反射部によって反射した光が、光学フィルムに入射されると、その入射光のうち第2の偏光光が光学フィルムを透過する傾向にある。このように、面光源装置では、光学フィルムによって、反射された第1の偏光光をリサイクル可能である。その結果、面光源装置を液晶表示装置に適用すると、輝度の向上を図ることが可能である。そして、光学フィルムによって反射されリサイクルされる第1の偏光光は、反射ピーク領域の波長範囲であるので、光学フィルムからは、反射ピーク領域の波長範囲の光がより多く出射される。従って、反射ピーク領域を液晶表示装置の光源はカラーフィルタの特性に応じて設定することによって、面光源装置を適用した液晶表示装置において画像表示により寄与する波長範囲の光の輝度を向上可能である。
【0024】
本発明の更に他の側面は、液晶表示装置に関する。液晶表示装置は、光源部と、光源部からの光を面状の光に変換して出射面部から出射する面発光素子と、面発光素子に対して出射面部と反対側に配置され面発光素子からの光を、その光の偏光状態を変化させながら面発光素子側に反射する反射部と、面発光素子の出射面部上に配置されており、面状の光が入射される本発明の一側面に係る光学フィルムと、光学フィルムに対して面発光素子と反対側に配置される液晶パネルと、を備える。
【0025】
この構成では、面発光素子から出射された面状の光が入射光として光学フィルムに入射される。入射光のうち、第2の偏光光は、光学フィルムを透過して液晶パネルに照射される。一方、反射ピーク領域の波長範囲の第1の偏光光は反射されて、面発光素子側に戻される。この戻された光は、面発光素子から反射部側に出射され、反射部で反射されて面発光素子を通って光学フィルムに入射する。反射部によって反射することで、第1の偏光光の偏光状態が変化すると、反射部によって反射した光は、第1の偏光光と第2の偏光光とを含む。従って、反射部によって反射した光が、光学フィルムに入射されると、その入射光のうち第2の偏光光が光学フィルムを透過し、液晶パネルに照射される。従って、液晶表示装置では、光学フィルムによって、反射された第1の偏光光をリサイクル可能である。その結果、液晶表示装置で表示される画像の輝度の向上を図ることが可能である。そして、光学フィルムによって反射されリサイクルされる第1の偏光光は、反射ピーク領域の波長範囲であるので、光学フィルムからは、反射ピーク領域の波長範囲の光がより多く出射される。従って、反射ピーク領域を液晶表示装置の光源はカラーフィルタの特性に応じて設定することによって、液晶表示装置において画像表示により寄与する波長範囲の光の輝度を向上可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、波長選択性を有しながら、液晶表示装置に用いたときに、輝度を増強する機能を有する光学フィルム並びにその光学フィルムを含む面光源装置及び液晶表示装置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態に係る光学フィルムの概略構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した光学フィルムが有するスタックの斜視図である。
【図3】(a)及び(b)は、一つのスタックにおいて、x方向を特定方向とした場合のs偏光成分及びp偏光成分の反射及び透過状態を模式的に示す図面である。
【図4】図1に例示した光学フィルムに対する目標反射スペクトルの一例を示す図面である。
【図5】反射ピーク領域の一例を示す模式図である。
【図6】図1に示した光学フィルムを適用した液晶表示装置の構成の模式図である。
【図7】光学フィルムを透過した光の透過率スペクトルの一例を模式的に示す図面である。
【図8】実施例における目標反射スペクトルが有する第1の偏光光に対する反射スペクトルの一例を示す図面である。
【図9】実施例1において設計された光学フィルムの反射率の波長による変化(スペクトル)を示す図面である。
【図10】実施例1において設計された光学フィルムの反射率の角度スペクトルを示す図面である。
【図11】実施例2において設計された光学フィルムの反射率の波長による変化(スペクトル)を示す図面である。
【図12】実施例2において設計された光学フィルムの反射率の角度スペクトルを示す図面である。
【図13】実施例3において設計された光学フィルムの反射率の波長による変化(スペクトル)を示す図面である。
【図14】実施例3において設計された光学フィルムの反射率の角度スペクトルを示す図面である。
【図15】非等方性の光学材料層の屈折率条件をより厳密に設定して光学フィルムを設計した場合の反射率の波長による変化(スペクトル)を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。説明中、「上」、「下」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
【0029】
図1は、一実施形態に係る光学フィルムの概略構成を説明するための模式図である。光学フィルム10は、目標反射スペクトルに合致する反射スペクトルを有するように設計されている。目標反射スペクトルは、400nm以上700nm以下の波長範囲のうちの所定の波長範囲において、特定の方向に偏光した第1の偏光光を主に反射すると共に、400nm以上700nm以下の波長範囲において、上記特定方向に対して直交する方向に偏光した第2の偏光光を主に透過する。すなわち、光学フィルム10は、偏光分離機能を有すると共に、波長選択機能を有する波長選択性偏光分離フィルムである。光学フィルム10は、例えば、液晶表示装置に適用され得る。
【0030】
上記所定の波長範囲が、青色波長範囲(すなわち、430nm≦λ≦480nm)、緑色波長範囲(すなわち、510nm≦λ≦560)及び赤色波長範囲(すなわち、600nm≦λ≦660nm)である形態を例にして、光学フィルム10の構成について説明する。
【0031】
光学フィルム10は、3個のスタック301,302,303を有する。スタック301,302,303は、基板20上に積層されている。スタック301とスタック302との間及びスタック302とスタック303との間にはスペーサ層S1,S1が配置されてもよい。更に、基板20に対して最も上に位置するスタック303上には、スキン層S2が設けられてもよい。基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2は、光学フィルム10を構成する光学材料層の保護のため、及び/又は、光学フィルム10の強度増強のために用いられ得る。基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2は、着目している400〜700nmの波長範囲において、光学フィルム10の光学特性(波長選択性及び偏光分離機能)に影響をほとんど及ぼさないような構成を有し得る。一実施形態において、基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2は、例えば、着目する上記波長範囲に対して光学的に透明で等方性の材料から構成され得る。一実施形態において、基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2の厚さの例は、上記波長範囲より十分大きな(例えば、数μm〜数百μm)厚さであり得る、又は、400〜700nmの波長範囲内のある波長をλpとした場合に、qλp/2(qは1以上の整数)であり得る。一実施形態において、基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2の屈折率は、表面反射などが生じないように選択される。基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2の材料の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2の材料は、異なっていてもよい。
【0032】
以下の説明では、スタック301,302,303の積層方向をz方向と称する。スタック301,302,303のz方向に直交する方向をx方向及びy方向と称する。x方向及びy方向は直交する。x方向及びy方向は、z方向に直交する面内の方向である。以下の説明では、特に断らない限り、上記第1の偏光光を光学フィルム10への入射光40におけるs偏光成分とする。更に、図1に示したx方向を、s偏光成分の偏光方向(電場の振動方向)とする。この場合、y方向は、入射光40のp偏光成分の偏光方向(電場の振動方向)である。
【0033】
図1及び図2を参照してスタック301〜303の基本構造について、スタック301〜303をスタック30iと称して説明する。iは1,2,3の何れかである。図2は、スタック30iの構成を概略的に示す斜視図である。
【0034】
スタック30iは、第1の光学材料層31iaと、第2の光学材料層31ibとがz方向に積層された基本ブロック(基本対)31iを複数有する。基本ブロック(基本対)31iの数の一例は、25以上100以下であり、好ましくは、25以上50以下である。スタック30iは、複数の基本ブロック31iがz方向に積層された積層体である。従って、スタック30iでは、第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibとが交互に積層されている。スタック30i内の第1の光学材料層31iaの数と第2の光学材料層31ibの数との合計を2M(Mは1以上の整数)とすると、2Mの例は、50以上200以下であり、好ましくは、50以上100以下である。スタック301〜303における基本ブロック311〜313の数或いは層の総数は、スタック301〜303毎に異なっていてもよい。光学フィルム10全体の層の数は、好ましくは、150以上500以下である。
【0035】
厚さ方向(z方向)に直交する面内(xy平面内)の2つの方向(x方向及びy方向)のうちx方向の第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの屈折率は異なる。具体的には、第1の光学材料層のx方向、y方向及びz方向の屈折率をnia,x、nia,y、nia,zとし、第2の光学材料層31ibのx方向、y方向及びz方向の屈折率をnib,x、nib,y、nib,zとしたとき、
nia,x≠nib,x
が成立する。
【0036】
この場合、スタック30iは、x方向を特定方向とする第1の偏光光、すなわち、入射光40のうちs偏光成分に対しては屈折率差が生じ、p偏光成分に対して屈折率差は生じない。その結果、スタック30iは、s偏光成分を反射し、p偏光成分を透過する。
【0037】
図3(a)及び図3(b)は、一つのスタックにおいて、s偏光成分及びp偏光成分の反射及び透過状態を模式的に示す図面である。図3(a)及び図3(b)に示したスタック30iが有する第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの数は、図示における便宜的な数であり、他の図とは必ずしも一致していない。
【0038】
図3(a)に示すように、入射光40のうちs偏光成分は、隣接する第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibの界面において一部が反射される。一方、図3(b)に示すように、入射光40のうちp偏光成分は、基本ブロック31iによってほとんど反射されずに各基本ブロック31iをz方向に進行する。よって、スタック30iは、s偏光成分を反射すると共に、p偏光成分を透過する偏光分離機能を有する。
【0039】
第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibについて説明する。第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibのx方向の屈折率差を|Δni|=|nia,x−nib,x|とすると、|Δni|の例は、0.02以上0.23以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23)であり、好ましくは、0.02以上0.15以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.15)である。nia,xの方がnib,xより大きくてもよく、nib,xの方がnia,xより大きくてもよい。
【0040】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、上述した屈折率差に関する条件を満たし得る透明材料であれば特に限定されない。加工の容易性の観点から、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料の例は、透明樹脂である。第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、それぞれ、結晶性、半結晶性、又はアモルファス性の高分子材料から選択され得る。第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの一方が等方性であり、他方が非等方性である場合、等方性である光学材料層の材料は、好ましくは、結晶性、半結晶性、又はアモルファス性の高分子材料から選択され、非等方性である光学材料層の材料は、好ましくは、結晶性又は半結晶性の高分子材料から選択され得る。
【0041】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料の具体例は、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びその異性体(例えば、1,4−PEN、1,5−PEN、2,7―PEN及び2,3−PEN等)、並びに、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、メタクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリスチレン、ポリプロピレン等)、環状ポリオレフィン樹脂を含む。
【0042】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、PENの共重合体、ポリアルカンテレフタレートの共重合体又はスチレン共重合体であってもよい。PENの共重合体の例は、2,6−,1,4−,1,5−,2,7−及び2,3−ナフタレンジカルボン酸又はそのエステルと、a)テレフタル酸又はそのエステル、b)イソフタル酸又はそのエステル、c)フタル酸又はそのエステル、d)アルカングリコール、e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、又は、f)アルカンジカルボキシル酸(例えば、シクロヘキサンジカルボキシル酸)との共重合体である。ポリアルカンテレフタレートの共重合体の例は、テレフタル酸又はそのエステルと、a)ナフタレンジカルボン酸又はそのエステル、b)イソフタル酸又はそのエステル、c)フタル酸又はそのエステル、d)アルカングリコール、e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタルジオール)、f)アルカンジカルボン酸、及び/又は、g)シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)との共重合体である。スチレン共重合体の例は、スチレンーブタジエン共重合体及びスチレンーアクリロニトリル共重合体である。更に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料はABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチルースチレン共重合体樹脂)であってもよい。
【0043】
更に、各第1及び第2の光学材料層31ia,31ibは、例示した高分子又は高分子共重合体の2つ以上の混合物でもよい。上記例示した材料は、吸光係数が小さく、吸収による損失が小さい点でも好ましい。
【0044】
スタック30iにおける第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料の好ましい組み合わせは、PEN/co―PEN、co−PEN/PEN、PET/co―PEN、co−PEN/PET、PEN/sPS、sPS/PEN、PET/sPS、sPS/PET、PEN/EASTER(登録商標)、EASTER/PEN、PET/EASTER又はEASTER/PETである。co―PENは、ナフタレンジカルボン酸に基づく共重合体又は混合物を意味する。EASTERは、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを意味する。更に、sPSは、シンジオタクチックポリスチレンを意味する。
【0045】
スタック301〜スタック303の第1の光学材料層311a〜313aの材料は同じであってもよく、スタック301〜スタック303の第2の光学材料層311b〜313bの材料は同じであってもよい。
【0046】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、上述した屈折率差|Δni|を有すればよい。従って、例えば、第1の光学材料層31iaが等方的な光学材料層であって、第2の光学材料層31ibが非等方的な光学材料層であってもよい。この場合、nia,x=nia,y=nia,z(=nia)及びnia=nib,y=nib,zが成立する。非等方的な光学材料層の材料としては、複屈折性を有する液晶高分子が例示され得る。
【0047】
第1の光学材料層31iaが等方的な光学材料層であって、第2の光学材料層31ibが非等方的な光学材料層である形態では、第1の光学材料層31iaは、必要な加工条件で処理される際に、x、y及びz方向の屈折率が有意な差を生じない材料であり得ると共に、第2の光学材料層の材料は、加工条件の下で、所定方向の屈折率が大きく変化する材料であり得る。
【0048】
より確実に偏光を分離する観点から、第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibのy方向の屈折率差|δniy|(=|nia,y−nib,y|)及びz方向の屈折率差|δniz|(=|nia,z−nib,z|)は、好ましくは、いずれも0.02未満であり、更に好ましくは0.01以下である。
【0049】
第1の光学材料層31iaが等方的であって、第2の光学材料層31ibが非等方的である場合、第1の光学材料層31ia内におけるx方向、y方向及びz方向の屈折率nia,x、nia,y、nia,zのうちの任意の2つの方向の屈折率差の大きさは0が好ましいが、0.01以下であればよい。非等方的な第2の光学材料層31ibについては、δnibyzを|nib,y−nib,z|と定義したとき、δnibyzは、好ましくは0.02未満であり、より好ましくは0.01以下である。更に、Δnibxyを|nib,x−nib,y|と定義し、Δnibzxを|nib,z−nib,x|と定義したとき、|Δnibxy−Δnibzx|は、好ましくは0.02未満であり、より好ましくは0.01以下である。
【0050】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibが有するそれぞれのz方向の厚さtia,tibは、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibそれぞれのx方向及びy方向の長さより十分短い。すなわち、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの形状は薄膜状である。第1及び第2の光学材料層31ia,31ibそれぞれのz方向の厚さtia,tibは、光学フィルム10への入射光40の波長λより小さい。厚さtia,tibの例は、5nm以上400nm以下であり、より好ましい例は、5nm以上200nm以下である。
【0051】
スタック30i内の全ての第1の光学材料層31iaの厚さtiaは同じであり、スタック30i内の全ての第2の光学材料層31ibの厚さtibは同じである。スタック301〜スタック303の第1の光学材料層31iaの厚さt1a〜t3aはそれぞれ異なると共に、スタック301〜スタック303の第2の光学材料層31ibの厚さt1b〜t3bはそれぞれ異なる。すなわち、次の関係が成立する。
t1a≠t2a≠t3a
t1b≠t2b≠t3b
【0052】
上記厚さに関する関係が成立することによって、スタック301〜スタック303は主に異なる波長選択性を備える。
【0053】
光学フィルム10において、スタック30iは、光学フィルム10が目標反射スペクトル50に合致する反射スペクトルを有するように設計されている。
【0054】
目標反射スペクトル50について説明する。図4は、図1に例示した光学フィルム10に対する目標反射スペクトルの一例を示す図面である。図4の横軸は波長(nm)を示し、縦軸は反射率(%)を示す。目標反射スペクトル50は、s偏光成分の反射スペクトル51と、p偏光成分の反射スペクトル52とを含む。図4に示した目標反射スペクトル50のうちp偏光成分の反射スペクトル52は、400〜700nmの波長範囲において反射率Rが20%以下であるスペクトルである。目標反射スペクトル50のうちs偏光成分の反射スペクトル51の例は、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲においてそれぞれ反射ピーク領域51Aを有する。図4に示すように、反射スペクトル51は、反射ピーク領域51Aとしての3つの大きな山部を有する。
【0055】
波長ピーク領域51Aは、50%以上の反射率を有するスペクトル領域51Aaであって、波長幅が20〜60nmであるスペクトル領域51Aaを有する。一実施形態の反射ピーク領域51Aにおいて、スペクトル領域51Aaの波長幅は、反射ピークに対応する波長がスペクトル領域51Aaの最小波長と最大波長の中心になるように設定され得る。反射ピーク領域51Aは、反射スペクトル51において、次式で定義されるηが50%以上となる反射率R1を最大反射率Rmaxとして有する領域であり得る。
η=100×(R1−R2)/(R1+R2)
ηを定義する上記式において、R1は、反射スペクトル51が有する複数の反射ピーク(山部の頂部)のうち、ある反射ピークP1の反射率である。R2は、波長が増加又は減少する方向において、反射ピークP1の前側及び後側における反射ピーク各々と、反射ピークP1との間の2つの最小反射率のうちより大きな最小反射率である。
【0056】
反射ピーク領域51Aの形状の一例について説明する。図5は、一波長範囲における反射ピーク領域51Aの一例を模式的に示す図面である。図5は、反射ピーク領域51Aの形状を説明するための模式図である。一波長範囲の最小波長をλminとし、最大波長をλmaxとする。例えば、一波長範囲が青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲である場合、λminはそれぞれ例えば430nm、510nm及び600nmであり、λmaxはそれぞれ例えば480nm、560nm及び660nmである。一波長範囲内の反射ピーク領域51A内の最大反射率Rmax(図5では、一例としてRmax=100%)に対応するピーク波長をλkと称する。
【0057】
一実施形態において、反射ピーク領域51Aの形状は、以下の条件1を満たす形状である。
条件1:
{λk−(Δλk/2)}≦λ≦{λk+(Δλk/2)}に対して、R≧50%
【0058】
好ましくは、反射ピーク領域51Aの形状は以下の条件2を満たす形状である。
条件2:
{λk−(Δλk/4)}≦λ≦{λk+(Δλk/4)}に対して、R≧80%
【0059】
他の実施形態において、反射ピーク領域51Aの形状は、以下の条件3を満たす形状である。
条件3:
{λk−(Δλk/2)}≦λ≦{λk+(Δλk/2)}に対して、R≧80%
【0060】
条件1〜3において、Δλkは、スペクトル領域51Aaの波長幅であり、Δλkは、20nm〜60nmである。Δλkは20nm〜45nmがより好ましい。図5は、条件1を満たす場合の反射ピーク領域51Aの形状を例示しており、条件1において、Δλkは、半値幅に対応する。条件3は、スペクトル領域51Aaの反射率が80%以上であることを示している。
【0061】
反射ピーク領域51Aが、よりシャープな頂部を有する山形形状を有する場合、光学フィルム10からの出射光の輝度の向上が図られ得る。一方、反射ピーク領域51Aの形状は、より平坦な頂部を有する山形形状、換言すれば、台形状である場合、光学フィルム10における波長選択性が向上し得る。
【0062】
図4には、図1に示した光学フィルム10の構成例に対応した目標反射スペクトル50を例示した。しかしながら、目標反射スペクトル50は、400〜700nmの波長範囲におけるs偏光成分(第1の偏光光)に対する反射スペクトル51において、スペクトル領域51Aaを含む反射ピーク領域51Aを少なくとも一つ有し、かつ、400〜700nmの波長範囲におけるp偏光成分(第2の偏光光)に対する反射スペクトル52において、反射率Rが20%以下であるスペクトルであればよい。
【0063】
一実施形態に係る光学フィルムを製造する方法の一例について説明する。光学フィルムを製造する場合、まず、目標反射スペクトルを決定する。目標反射スペクトルは、400〜700nmの波長範囲において、50%以上の反射率Rを有するスペクトル領域であって波長幅が20〜60nmであるスペクトル領域を含む反射ピーク領域を少なくとも一つ有するs偏光成分(第1の偏光光)の反射スペクトルと、400〜700nmの波長範囲内の反射率Rが20%以下であるp偏光成分(第2の偏光光)に対する反射スペクトルとから構成されていれば、製造する光学フィルムの用途に応じて適宜設定すればよい。製造した光学フィルムを液晶表示装置に採用する場合、例えば、目標反射スペクトルは、液晶表示装置の光源の発光スペクトルの特性に応じたスペクトル形状又は液晶パネルが有するカラーフィルタ層の光学特性(例えば、吸光特性)に応じたスペクトル形状とし得る。
【0064】
ここでは、一例として、図4に例示した目標反射スペクトル50に対応する光学フィルム10を製造する場合について説明する。目標反射スペクトル50は、前述したように、3種類の色の波長範囲に反射ピーク領域51Aを有するような反射スペクトル51と、400nm〜700nmにおいて、反射率Rが20%以下の反射スペクトル52とを有する。反射スペクトル51の形状は、反射ピーク領域51Aが条件1〜3の何れかを満たすように決定されている。
【0065】
次に、目標反射スペクトル50に対応する反射スペクトルが得られるようにスタックの数及び各スタックの構成を設計する。目標反射スペクトル50の反射スペクトル51は、図4に例示したように、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域51Aを有するので、製造する光学フィルム10は、図1に示したように、3つのスタック301〜303を有する。
【0066】
続いて、各スタック30iにおける第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの反射させるべき偏光方向(本実施形態ではx方向)の屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib、基本ブロック31iの数等を設計する方法について説明する。
【0067】
各スタック30iの屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib、基本ブロック31iの数は、反射スペクトル51,52の形状に影響を与える。従って、各スタック30iの屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib、基本ブロック31iの数は、s偏光成分の反射スペクトル51が青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲においてそれぞれ反射ピーク領域51Aを示すと共に、p偏光成分の反射スペクトル52が400〜700nmにおいて反射率Rが20%以下となるように設計される。p偏光成分の反射スペクトル52は、400〜700nmにおいて反射率Rが20%以下であればよいので、反射スペクトル52のスペクトル形状は任意であり得る。s偏光成分の反射スペクトル51は、3種類の色の波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域51Aを有すればよいが、3種類の色の波長範囲それぞれにおける反射ピーク領域51Aの形状は、光学フィルム10における所望の光学特性に応じた形状に設計され得る。3種類の色の波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域51Aは、好ましくは、上記条件1〜3の何れかを満たす形状に設計される。
【0068】
目標反射スペクトル50に応じたスタック30iの構成を設計する方法は少なとも2つある。一つは、λ/4法を用いる方法(例えば、M. Born and E.Wolf, “Principle of Optics,”7th(expanded)edition,Cambridge U. Press, 1999参照)であり、もう一つは最適化アルゴリズムを用いる方法である。
【0069】
目標反射スペクトル50に応じたスタック30iの構成を設計する方法について説明する。以下の説明では、設計モデルとして、図1に示した構成においてスキン層S2を除いた構成を採用する。設計において、入射光40のうちx方向に偏光した成分がs偏光成分である。更に、設計において、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの面内においてx方向の屈折率が異なり、y方向の屈折率は同じである。スタック301〜303は、それぞれ青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲に反射ピーク領域51Aを有するように設計される。よって、図5の説明で述べた反射ピーク波長λk及び波長幅Δλkをスタック301〜303に対応させて反射ピーク波長λi及び波長幅Δλiとも称す。
【0070】
λ/4法を利用して、スタック301〜303を設計する方法について説明する。λ/4法では、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibそれぞれのx方向の屈折率nia,x及び屈折率nib,xを、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのx方向における屈折率差|Δni|を考慮して決定する。
【0071】
通常、屈折率差|Δni|が小さくなるにつれて、全波長においてs偏光成分を反射しにくくなる。そのため、偏光分離機能を実現するために、|Δni|は一定以上の大きさを有する。屈折率差|Δni|が大きくなるにつれて、全波長においてs偏光成分を反射する傾向にあるので|Δni|が大きすぎると、波長選択性が低減する傾向にある。従って、屈折率差|Δni|は、波長選択性を考慮しながら目標反射スペクトル50における主に偏光分離機能の観点から決定される。Δniの大きさの一例は、0.02以上0.23以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23)であり、好ましくは、0.02以上0.15以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.15)である。Δniが上記例示した範囲であれば、所望の反射ピーク領域51Aの形状に設計しやすい。
【0072】
設計では、s偏光成分の反射スペクトル51の反射ピーク波長λiを決定する。図4に例示したように、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域51Aを有する場合、λ1=460mm、λ2=540nm、λ3=640nmとし得る。
【0073】
次に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib及びスタック30iの第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数を次の式に基づいて決定する。
tia=λi/(4nia,x)
tib=λi/(4nib,x)
【0074】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのy方向及びz方向の屈折率は、屈折率nia,x及び屈折率nib,xに応じて、決定すればよい。
【0075】
更に、基本ブロック31iの数は、スタック30iの反射特性における最大反射率をRi,maxとしたとき、最大反射率Ri,maxに基づいて決定され得る。基本ブロック31iの数は、スタック301〜スタック303の間で同じである場合もあるし、異なる場合もあり得る。例えば、基本ブロック31iの数は、以下の式を利用して決定され得る。
【数1】
Ri,maxを示す上記式において、Nはスタック30iが有する第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの数の総和である。すなわち、N=2Mである。この場合、基本対31iの数は、N/2である。Ri,maxを示す上記式では、一例として、入射光のスタック30iへの入射方式は垂直入射であること、nia,x>nib,x、及び、スタック30iへの光の入射側及びスタック30iから光が出射する側の光学媒体は同じであることを仮定している。なお、最大反射率Ri,maxを表す式は、入射光の入射方式や周囲の媒体の屈折率などに応じて適宜算出すればよい。
【0076】
第2の設計方法は、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib及び屈折率並びにスタック30iの第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数(すなわち、基本ブロック31iの数)を決定するために最適化アルゴリズムを用いる方法である。最適化アルゴリズムにおいても、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数は、スタック30iの反射特性における最大反射率Ri,maxに基づいて決定され得る。各スタック30iの第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数もパラメータとなり得る。しかしながら、パラメータ数を減らす観点から、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数、すなわち、基本ブロック31iの数は一定としておくことが好ましい。スタック30iにおける第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数は、例えば、50以上200以下であって、光学フィルム10全体の層の数が、150以上500以下の範囲で選択され得る。
【0077】
最適化アルゴリズムでは、各スタック30iの第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのy方向及びz方向の屈折率、及び厚さtia,tibをパラメータとして、シミュレーションを実施して、各スタック30iの反射スペクトルの反射ピーク領域51Aと、波長幅Δλiに適合するように、各パラメータを最適化する。最適化アルゴリズムを用いた場合でも、屈折率差Δniの大きさは、前述したように、一例として、0.02以上0.23以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23)であり、好ましくは、0.02以上0.15以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.15)である。
【0078】
一実施形態において、第1の光学材料層311a〜313aの材料が同じ且つ第2の光学材料層311b〜313bの材料が同じであると共に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのうちの一方が等方性の光学材料層であり他方が非等方性の光学材料層であるとして、光学フィルム10を設計してもよい。この場合、パラメータ数が更に低減され得る。
【0079】
第1の光学材料層311a〜313aの材料が同じ且つ第2の光学材料層311b〜313bの材料が同じである場合、屈折率の観点からは、第1の光学材料層311a〜313aを区別する必要はなく、第2の光学材料層311b〜313bを区別する必要がない。そのため、屈折率については、第1の光学材料層311a〜313aの各方向の屈折率をna,x、na,y及びna,zと表記する。第2の光学材料層311b〜313bの各方向の屈折率についても同様とする。以下、屈折率の観点からは、第1の光学材料層311a〜313aを区別する必要ななく、第2の光学材料層311b〜313bを区別する必要がない場合は、同様に記載する。
【0080】
第1の光学材料層311a〜313aが等方性の光学材料層であって同じ材料から構成されると共に、第2の光学材料層311b〜313bが非等方性の光学材料層であって同じ材料から構成される場合、以下の2つの関係式(1)及び関係式(2)が成り立つ。
na,x=na,y=na,z(=na)・・・(1)
na=nb,y=nb,z・・・(2)
これらの関係が成立する場合、設計に要するパラメータは、8個である。すなわち、第1の光学材料層31aの屈折率naと、屈折率差|Δn|(=|na,x−nb,x|)と、6つの厚さ(各スタック30に2つの厚さtia,tib)とである。このように、関係式(1)及び(2)が成立する場合、前述のようにパラメータ数を低減され得る。
【0081】
なお、第1の光学材料層311a〜313aの材料が同じ且つ第2の光学材料層311b〜313bの材料が同じであると共に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのうちの一方が等方性の光学材料層であり他方が非等方性の光学材料層であることは、λ/4法を用いてスタック30iを設計する場合も、設計を容易にする観点から有効である。
【0082】
その後、上記光学フィルム10の設計条件に基づいて、光学フィルム10を製造する。
【0083】
光学フィルム10の製造において、屈折率差|Δni|は、例示したような屈折率差|Δni|、すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23を有し得る第1及び第2の光学材料層31ia,31ibをそれぞれ準備することによって、形成してもよい。
【0084】
或いは、第1の光学材料層31iaが等方性の光学材料層であり、第2の光学材料層31ibが非等方性の光学材料層である場合、第2の光学材料層31ibの非等方性は、例えば、光学フィルム10としての多層構造を形成した後に、延伸することによって付与してもよい。この場合、延伸方向がx方向となる。
【0085】
第1の光学材料層31iaが等方的な光学材料層であって、第2の光学材料層31ibが非等方的な光学材料層である形態について、光学フィルム10を製造する方法について説明する。
【0086】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、上記に例示した高分子及びその共重合体などから選択されればよい。第1の光学材料層31iaは、必要な加工条件で処理される際に、x、y及びz方向の屈折率が有意な差を生じない材料であり得ると共に、第2の光学材料層31ibの材料は、上記必要な加工条件の下で、所定方向の屈折率が大きく変化するものであり得る。更に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibは、好ましくは、それらが共押出しされ得るように、同様のレオロジー特性(例えば、溶融粘度)を有する。
【0087】
上述した加工条件は、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの間で所望の屈折率関係が得られるように選択され得る。上記所望の屈折率関係は、種々の方法で達成され得る。所望の屈折率関係を得るための方法の例は、前述したように、光学フィルム10となる多層フィルム構造を形成中又は上記多層フィルム構造を形成した後に所定方向に延伸すること(例えば、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料が有機材料の場合)である。光学フィルム10となる多層フィルム構造を形成する方法は、多層押出法(又は共押出法)(例えば、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibが液晶性の材料の場合)及び多層コーティング技術を含む。多層コーティング技術は、特に限定されず、多層コーティング技術の一般的に手法が利用され得る。多層コーティング技術の例は、スピンコート法、ダイコート法等のウェットプロセス技術、及び、化学蒸着及びスパッタリング等のドライプロセス技術を含む。光学フィルム10の製造の容易性の観点から多層押出法が好適である。光学フィルム10は、別々に製造された各スタックを貼り合せて製造されてもよい。
【0088】
延伸によって配向し得る有機高分子の場合、光学フィルム10となる多層フィルムは、一般的な多層フィルムを形成するように、各層を構成する高分子を共押出しすることによって準備される。その後、ある選択された温度で一つの特定の方向に、その多層フィルムを延伸し(単軸引張り)、多層フィルムを配向させることによって光学フィルム10が得られる。上記特定の方向が、入射光40におけるs偏光成分の偏光方向であるx方向に対応する。多層フィルムが形成された後、上記ある選択された温度にヒートセットする工程を備えてもよい。押出しと延伸とは一つの工程で行われてもよい。延伸方向と直交する方向(垂直方向)における多層フィルムの長さが実質的に縮小しないように、その直交方向において多層フィルムは弛緩されてもよい。所望の光学特性を備えた多層フィルムとしての光学フィルム10を得るために、延伸プロセス前の温度、延伸温度、延伸度、延伸比率、ヒートセット温度、ヒートセット時間、ヒートセット弛緩、及び、垂直方向の延伸弛緩が選択され得る。これらの変数は、相互に関連している。例えば、比較的に低い延伸度は、比較的に低い延伸温度で採用され得る。通常、延伸比率は、1:2〜1:10の範囲が好ましく、1:3〜1:7がより好ましい。
【0089】
なお、上記光学フィルム10となる多層フィルムを構成する層にはスペーサ層S1及びスキン層S2としての層も含む。また、光学フィルム10となる多層フィルムは、基板20となる層を含んでもよい。多層フィルムは光学フィルム10となる多層構造として説明したが、各スタック301〜303となる多層構造を多層フィルムとしてもよい。なお、図1に示したように、光学フィルム10が有するスペーサ層S1及びスキン層S2は、光学フィルム10の製造において多層押出法を利用する場合に役立つ。また、スペーサ層S1及びスキン層S2を備えることで、例えば、多層フィルム構造を形成した後の工程(例えば、延伸工程など)において機械的特性を向上し得る。
【0090】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibにおいて所定方向(x方向)以外の対応する方向の屈折率差はないことが理想的であるが、前述したように、所定方向以外の2つの方向の屈折率差(例えば、y方向又はz方向)が0.02未満であればよく、好ましくは、0.01以下である。
【0091】
以上説明したように、光学フィルム10は、目標反射スペクトル50に合致する反射スペクトルを有するように設計された値に基づいて製造されている。その結果、光学フィルム10は、入射光40に対して所定の反射スペクトルを有するようにs偏光成分を反射する一方、少なくとも可視光の波長範囲においてp偏光成分をほとんど透過し得る。すなわち、光学フィルム10は、偏光分離機能と共に、波長選択性を有する。このような波長選択性偏光分離フィルムとしての光学フィルム10を液晶表示装置に適用することによって、輝度を向上し得る。この点について、図6を参照して説明する。
【0092】
図6は、図1に示した光学フィルムを適用した液晶表示装置の概略構成を示す図面である。図6は、液晶表示装置1の断面構成を分解して示している。
【0093】
液晶表示装置1は、液晶ディスプレイパネル(以下、単に液晶パネルと称す)61と、図6において液晶パネル61の背面側に配置されており面状の光を出射する面光源装置70と、液晶パネル61と面光源装置70との間に配置された光学フィルム10とを備える。図6に示すように、液晶パネル61の厚み方向をZ方向とし、Z方向に直交する2つの方向をX方向及びY方向と称する。図6では、光を模式的に矢印で示している。矢印に付された黒点はp偏光成分を示し、矢印の延在方向に直交する線分はs偏光成分を表す。
【0094】
液晶パネル61は、面光源装置70から出射される光により照明されて画像を表示する。液晶パネル61は、液晶層61Aの両側に偏光板61B,61Cと、を主に備える。偏光板61Bは液晶層61Aの背面側に配置され、偏光板61Cは、液晶層61Aの表側(観察者側或いは視聴者側)に配置される。偏光板61Bと偏光板61Cとは、それらの透過軸が互いに直交するように配置される。図6に示した形態では、偏光板61Bの透過軸が、図6に示すX方向に延びている。液晶層61Aと偏光板61Cとの間にはカラーフィルタ層61Dが配置される。液晶パネル61が備える上記要素の構成は公知の構成とし得る。液晶パネル61は、上記例示した構成要素以外に、配光膜や電極などを有する。すなわち、液晶パネル61は、公知の構成を有してればよい。
【0095】
面光源装置70は、導光板(面発光素子)80と、導光板80の側面80a近傍に配置された光源部90と、反射部100とを備えるエッジライト方式の面光源装置である。
【0096】
導光板80は、側面80aから入射された光を側面80aと交差した(図6では、直交した)出射面部80b及び出射面部80bと反対側に位置する反射面部80cとの間で全反射させながら導光板80内を伝播させる。反射面部80cには、全反射条件とは異なる条件で反射する非全反射領域が適宜設けられている。非全反射領域は、印刷ドットといった拡散ドット、y方向に延在するレンズ部又はドーム状のレンズ部などが付与された領域であり得る。この非全反射領域で反射した光は、出射面部80bで全反射せずに出射面部80bから外部に出ていく。従って、上記構成では、導光板80内を全反射しながら伝搬する光の一部が出射面部80bから取り出されるので、導光板80から面状の光が出射される。通常、非全反射領域は、面状の光の輝度が面内で均一になるようなパターンで設けられている。
【0097】
光源部90は、導光板80の入射面である側面80aに対向して配置された光源91を有する。光源91の例は点光源である。点光源の例は、発光ダイオード、ハロゲンランプ及びタングステンランプを含む。発光ダイオードの例は、赤色光、緑色光及び青色光を発光するRGBタイプの発光ダイオードと、及び、青色発光ダイオードに黄色の蛍光体を組み合わせた又は青色発光ダイオードに緑色及び赤色の蛍光体を組み合わせた白色タイプの発光ダイオードとを含む。
【0098】
光源91が点光源である場合、光源部90は、複数の光源91を含む。この場合、複数の光源91は、側面80aにおいて導光板80の厚み方向に直交する方向に沿って直線状に配列される。光源91は、点光源に限定されず、蛍光管のような線状光源であってもよい。
【0099】
図6に示した面光源装置70においては、導光板の4つの側面のうち1つの側面80aに対向してのみ光源部90が設けられている。しかしながら、このような構成には限定されない。例えば、導光板80の少なくとも一つの側面に対して設けられていればよい。
【0100】
反射部100は、導光板80の反射面部80cから出射されてきた光を導光板80側に反射する。反射部100の例は、光を乱反射する反射板である。反射部100は、例えば、光を乱反射する処理が施された導光板80等を収容する筐体の底面でもよい。
【0101】
光学フィルム10は、図4に示した目標反射スペクトル50に基づいて設計及び製造された波長選択性偏光分離フィルムである。光学フィルム10を液晶表示装置1に適用する場合、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibにおける屈折率差|Δni|が生じている方向が図6に示すX方向であるように、光学フィルム10は、配置される。
【0102】
上記構成では、導光板80の出射面部80bから出射された面状の光は、入射光40として光学フィルム10に入射される。光学フィルム10では、入射光40のうち目標反射スペクトルに合致するように入射光40を反射する。その結果、入射光40のうちp偏光成分はほとんど光学フィルム10を透過し、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲のs偏光成分は選択的に反射される。
【0103】
光学フィルム10によって反射されたs偏光成分は、導光板80側に戻って、反射面部80c側から反射部100に向けて出射される。反射部100は、導光板80側からの光を乱反射して導光板80に戻す。この反射部100での乱反射により、光の偏光状態が擾乱される。偏光状態が擾乱された光は、導光板80から再度出射されて光学フィルム10に入射光40として入射する。その結果、入射光40のうちs偏光成分は反射され、p偏光成分は透過する。
【0104】
以上説明したように、光学フィルム10を備えた液晶表示装置1では、所定波長範囲である青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲のs偏光成分がリサイクルされる。この場合、偏光板61Bによって吸収される光が低減すると共に、リサイクルされた光を利用して液晶パネル61が照明される。その結果、液晶パネル61で表示される画像の輝度が向上する。この点で、光学フィルム10は、輝度向上フィルムである。
【0105】
また、光学フィルム10によって、所定波長範囲である青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲のs偏光成分がリサイクルされるので、図7に示すように、上記所定波長範囲のp偏光成分が選択的により多く透過する。この場合、波長選択性を有しながら、輝度向上が図れるので、光学フィルム10は、彩度を増強する機能も有する。
【0106】
従来、カラーフィルタ層61Dには染料が用いられている。この場合、光の透過率が十分ではないので、彩度の増強効果が低い傾向にあった。これに対して、光学フィルム10を用いることで、所定の波長範囲の光を選択的に増強できるので、上記のように彩度増強が図り得る。
【0107】
なお、光源部90として、赤色光、緑色光及び青色光を発光するRGBタイプの発光ダイオードと、又は、青色発光ダイオードに黄色の蛍光体を組み合わせた又は青色発光ダイオードに緑色及び赤色の蛍光体を組み合わせた白色タイプの発光ダイオードを使用する場合、光学フィルム10の設計段階における場合の目標反射スペクトル50は、光源部90の発光特性に合わせることが、彩度向上の観点から好ましい。或いは、目標反射スペクトル90は、カラーフィルタ層61Dの特性(吸収波長等)に応じたスペクトルにすることが彩度向上の観点から好ましい。
【0108】
各スタック30iにおいて、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さ31ia,31ibはそれぞれ一定であることから、光学フィルム10の製造も容易である。更に、各スタック30iにおける第1の光学材料層31iaの数及び第2の光学材料層31ibの数の合計が50以上500以下であることから、光学フィルム10を更に容易に製造可能であると共に、光学フィルム10を低コストで製造し得る。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例の光学フィルムの設計のための各種計算は、Fortran 90とMathcad(バージョン11と15)を用いてコンピュータプログラムを組んで実施した。実施例の説明においては、実施形態で説明した要素に対応する要素には同一符号を付する。
【0110】
設計においては以下の点を仮定した。
(1)光学フィルム10の設計モデルでは図1の構成及び図1に示したx方向、y方向及びz方向を採用した。ただし、設計モデルにおいて光学フィルムは、図1に示したスキン層S2を含まない。
(2)光学フィルム10は、3つのスタック301、スタック302及びスタック303と、スタック301〜303を分離するスペーサ層S1と、基板20とを備える。
(3)スタック301〜スタック303の第1の光学材料層311a〜第1の光学材料層313aは同じ高分子から構成されている。同様に、スタック301〜スタック303の第2の光学材料層311b〜第2の光学材料層313bは同じ高分子から構成されている。従って、屈折率に関しては、第1の光学材料層311a〜第1の光学材料層313aの屈折率を区別する必要はなく、第2の光学材料層311b〜第2の光学材料層313bの屈折率を区別する必要はない。そのため、以下では、屈折率に関する表記では、スタック301、スタック302、スタック303を区別する1,2,3の記載を省略する。
(4)第1の光学材料層31ia(iは、1,2,3のいずれかの数)は等方的な光学材料層であり、第2の光学材料層31ibは非等方的な光学材料層である。
(5)第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibとはx方向の屈折率が異なる。第2の光学材料層31ibにおいて、y方向及びz方向の屈折率は、第1の光学材料層31iaの屈折率と同じである。従って、等方的な光学材料層である第1の光学材料層31iaの屈折率をna(=na,x=na,y=na,z)とすると、次式が成立する。
na=nb,y=nb,z
(6)スタック30iへの光の入射形態は垂直入射を仮定した。
(7)設計のための所定の目標反射スペクトル50が有するs偏光成分の反射スペクトル51として、図8に示したLED発光スペクトルを仮定した。反射スペクトル51において、可視光の青(B)、緑(G)、赤(R)の領域に対応する3つの反射ピーク位置は、それぞれ、462.5nm、532.5nm及び632.5nmとした。p偏光成分の反射スペクトル52は400〜700nmにおける反射率が20%以下であればスペクトル形状は任意でよいため、図8では反射スペクトル52の表示は省略している。
【0111】
以上の(1)〜(7)の仮定に基づいて、設計のためのパラメータは次の記号を用いて表している。
na、Δn、t1a、t1b、t2a、t2b、t3a、t3b
これらの表記において、aとbは、基本的な光学材料層である第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibの2種の高分子を区別するために用いている。naは、第1の光学材料層31iaの屈折率である。Δnは、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのx方向の屈折率差の大きさである。1〜3の数字は3つのスタック301,302,303を区別するために用いている。例えばt1a、t1b、t2a、t2b、t3a、t3bはスタック301、スタック302、スタック303それぞれの基本的な光学材料層の対(基本ブロック)の2つの光学材料層(第1及び第2の光学材料層31ia,31ib)それぞれの厚さを示す。
【0112】
それぞれのパラメータの最小値は、通常はna=1.45、Δn=0.02、t1a=5nm、t1b=5nm、t2a=5nm、t2b=5nm、t3a=5nm、t3b=5nmである。それぞれのパラメータの最大値は、通常はna=1.75、Δn=0.15、t1a=205nm、t1b=205nm、t2a=205nm、t2b=205nm、t3a=205nm、t3b=205nmである。それぞれのパラメータの精度は、通常はnaに対して0.001であり、Δnに対して0.001であり、t1aに対して0.01nmであり、t1bに対して0.01nmであり、t2aに対して0.01nmであり、t2bに対して0.01nmであり、t3aに対して0.01nmであり、及びt3bに対して0.01nmである。
【0113】
(実施例1)
所定の目標反射スペクトル50に対して実施例1ではλ/4法を用いて光学フィルム10を設計した。実施例1の光学フィルム10は、屈折率1.5の基板20上に設置された3つのスタック301,302,303からなる。各スタック30iは、等方的な光学材料層(第1の光学材料層31ia)と、非等方的な光学材料層(第2の光学材料層31ib)の対が、30対積層されて構成されている。naとnb,xの値は、全てのスタック301,302,303について具体的には例えばそれぞれ1.7と1.6である。λ/4法を用いて計算された第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tibは次の通りである。t1a=67.65nm、t1b=71.88nm、t2a=79.41nm、t2b=84.38nm、t3a=94.12nm、t3b=100.00nm。隣り合う各スタック30iは、屈折率1.5で厚さが270nm(=540nm/2)の光学材料層としてのスペーサ層S1で隔てられている。反射スペクトルは、垂直入射光であって偏光方向が互いに垂直であるpモード(p偏光成分)とsモード(s偏光成分)の光に対して計算した。pモードにおいては、電界は入射面(図2におけるyz面)内に偏光し、sモードにおいては、電界は入射面に垂直な面(図2におけるxz面)内で偏光している。光学フィルム10に対する反射スペクトルは400nmから700nmの範囲内で60点の波長をサンプリングして計算した。光学フィルム10に対して入射光が入射する側の媒体は屈折率1.0の空気とした。
【0114】
λ/4法を用いて計算した合計182(2枚のスペーサ層S1を含む)の光学材料層からなる光学フィルム10の反射率の波長による変化(スペクトル)を図9に示した。図9の横軸は波長(nm)であり、縦軸は反射率(%)である。
【0115】
1度の角度間隔で計算した上記垂直な2つのモードにおける反射率の角度スペクトルを図10に示した。図10の横軸は角度(°)であり、縦軸は反射率(%)である。横軸の角度は、入射角に対応する。図10は、波長540nmに対する角度スペクトルである。この図は、2つの偏光モードにおける光学フィルム10の反射率が、18度以下の角度(入射角)では一定であり、更に、2つの偏光モード(sモード及びpモード)をより確実に分離できていることを示している。すなわち、光学フィルム10への光の入射状態が垂直入射に近いほど、この光学フィルム10はより確実に偏光機能を有することがわかる。
【0116】
(実施例2)
所定の目標反射スペクトル50に対して、最適化アルゴリズムを用いて光学フィルム10を設計した。図11は最適化アルゴリズムを用いて、設計した構造の光学フィルムの反射率の波長依存性のスペクトルを示す。図11の縦軸及び横軸は図9の場合と同様である。図11には、図8に示したLEDの発光スペクトルを破線で示している。
【0117】
最適化した設計パラメータの値は、次のようになった。na=1.528、屈折率差Δn=0.148、t1a=28.13nm、t1b=121.84nm、t2a=94.57nm、t2b=71.40nm、t3a=143.00nm、t3b=48.36nmであった。設計において、3つのスタック301,302,303の光学材料層の数(第1の光学材料層の数と第2の光学材料層の数の和)は50とした。また、基板20及びスペーサ層S1の屈折率は、実施例1の場合と同様に、1.5とした。
【0118】
図12は図11の光学フィルム10の反射率の角度依存性のスペクトルを示す。図12は両方の偏光モードの反射率は0°から約10°までは一定であり、より確実に偏光分離できていることを示している。図12における縦軸及び横軸は図10の場合と同様である。
【0119】
(実施例3)
屈折率差Δnを0より大きく0.1以下の範囲に限定した点以外は、実施例2と同様にして最適化アルゴリズムを用いて最適化を行った。この方法で得られ最適化した構造を有する光学フィルム10の反射スペクトルを図13に示した。最適化した設計パラメータの値は次のようになった。na=1.626、屈折率差Δn=0.100、t1a=79.84nm、t1b=57.53nm、t2a=68.30nm、t2b=92.10nm、t3a=102.50nm、t3b=84.50nmであった。図13には、図11と同様に、図8に示したLEDの発光スペクトルを破線で示している。
【0120】
図13は、比較的小さなΔnであっても目標とするスペクトルに適合させることができることを示している。
【0121】
図14は図13の上記光学フィルム10の反射率の角度依存性のスペクトルを示す。図14における縦軸及び横軸は図10の場合と同様である。図14は両方の偏光モードの反射率は0°から約10°までは一定であり、より確実に偏光分離できていることを示している。
【0122】
実施例2及び実施例3において、光学フィルム10が有する光学材料層の総数(2枚のスペーサ層S1を含む)の152は、特許文献1の技術に基づいて製造され市場で入手できる光学フィルムに用いられている光学材料層の総数と比較してずっと少ない。従来品より少ない光学材料層の数しか必要としないので、本発明の光学フィルムは製造が容易であり、製造コストの低減が図れる。
【0123】
最適化した多数のスタックからなる構造の図11、図12、図13及び図14に示した光学的性質は、λ/4法を用いて設計した多数のスタックからなる構造の光学的性質(図9及び図10)とは異なっている。従って、目的又は要求される精度などに応じて、適宜λ/4法及び最適化アルゴリズムを使用する方法を使い分ければよい。ただし、図11、図12、図13及び図14を参照すれば、与えられたLEDの発光スペクトルに光学的性質が密接に適合するように多数のスタックからなる構造を設計する場合には、最適化アルゴリズムを用いる方法が、より好ましい。
【0124】
図9〜図14に示されたスペクトルに結びついた構造すべては共通の性質を有しており、それは、基本的な光学材料層の対の2つの光学材料層の屈折率の関係が次のようになっていることである。na−nb,x≦0.15、na=nb,y=nb,zである。
【0125】
しかしながら、実際の製造過程では一方向を延伸させた場合、他の方向の屈折率も変化する傾向にある。従って、na=nb,y=nb,zであることが好ましいが、na≠nb,x≠nb,y≠nb,zとなる傾向にある。そのような場合の影響を調べるために、基本的な光学材料層の対が2種の現実の材料、例えば、ポリカーボネート(PC)とPEN又はco―PENと、からなる多層構造の光学的性質を計算した。これらの材料の通常の状態でのおよその屈折率は、それぞれ1.59(PC)と1.64(PEN又はco―PEN)である。延伸により延伸方向に0.1程度の屈折率の違いが生じると仮定すれば、152の層を屈折率1.5の基板20の上に堆積させた多層構造の光学的性質を計算することが可能となる。λ/4法を用いて光学材料層の厚さを計算した。そのような多層構造の波長依存性のスペクトルを図15に示した。na≠nb,y≠nb,zである。しかしながら、図15は、偏光の程度が、ある波長においてはかなり低下しているものの、波長範囲を選べば実際上使用することができることを示している。
【0126】
以上、本発明の種々の実施形態及び実施例について説明した。しかしながら、本発明は上述した種々の実施形態及び実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態などの例では、目標反射スペクトルの一例として、反射スペクトル51が青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲に反射ピーク領域51Aを有するとした。しかしながら、前述したように、反射スペクトル51は、50%以上の反射率を有するスペクトル領域51Aaであって波長幅が20〜60nmであるスペクトル領域51Aaを含む反射ピーク領域51Aを少なくとも一つ有すればよい。
【0127】
また、第1及び第2の光学材料層(第1及び第2の層)において、屈折率差が生じる所定方向は、入射光におけるs偏光成分の偏光方向に限らず、p偏光成分の偏光方向であってもよい。更に、上記所定方向は、第1及び第2の光学材料層(第1及び第2の層)の面内(例えば、厚さ方向に直交する面内)の方向あるが、例示したx方向に限定されない。
【0128】
光学フィルムが備えるスタックの数は、目標反射スペクトルにおける反射ピーク領域の数以上であればよい。従って、反射ピーク領域が1個であれば、スタックの数は1個以上である。反射ピーク領域の数以上であれば、反射ピーク領域それぞれに対して少なくともスタックを一つ割り当てられるので、光学フィルムによる反射スペクトルを目標反射スペクトルに合致したものにしやすい。なお、反射ピーク領域の数よりスタック数が多い場合は、例えば、いずれかの波長ピーク領域に応じた反射スペクトルを2個のスタックで実現すればよい。
【0129】
更に、図6に関する説明では、光学フィルム10は、面光源装置70とは別に、面光源装置70と液晶パネル61との間に配置されていた。しかしながら、光学フィルム10は、面光源装置70を構成する要素であってもよい。
【0130】
図6に示した形態では、面発光素子として導光板が例示された。しかしながら、面発光素子としては、いわゆる拡散板であってもよい。この場合、拡散板の背面側に光源部が設けられた直下型の面光源装置或いは液晶表示装置である。
【符号の説明】
【0131】
1…液晶表示装置、10…光学フィルム、30i(iは1,2,3の何れかの数)…スタック、31i(iは1,2,3の何れかの数)…基本ブロック(第1及び第2の層の基本対)、31ia(iは1,2,3の何れかの数)…第1の光学材料層(第1の層)、31ib(iは1,2,3の何れかの数)…第2の光学材料層(第2の層)、31a…光学材料層、50…目標反射スペクトル、51…反射スペクトル(第1の偏光光の反射スペクトル)、51A…反射ピーク領域、51Aa…スペクトル領域、52…反射スペクトル(第2の偏光光の反射スペクトル)、61…液晶パネル、70…面光源装置、80…導光板(面発光素子)、80b…出射面部、90…光源部、100…反射部。
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルム、面光源装置及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネルに用いたときに輝度を増強する機能を有する光学フィルムとして、反射偏光光学フィルムが提案されている(特許文献1参照)。この光学フィルムは、ポリエチレンナフタレートからなる光学材料層とグリコール変性ジメチルクロロヘキサンテレブタレートからなる光学材料層を交互に合計800層以上積層し、延伸して製造される。
【0003】
該光学フィルムは偏光分離及び偏光反射機能を有する。該光学フィルムは、波長400−700nmの可視光の範囲において、特定の偏光方向の光は89.7%を透過し、該偏光方向に垂直な偏光は反射する。該光学フィルムの波長400−700nmの範囲の透過率のばらつきは1.05%であり、可視光を均一に透過することができる。
【0004】
該光学フィルムは、液晶ディスプレイパネルの光源より観察者側に設置される。光学フィルムは、光源から出射された光のうち該液晶ディスプレイパネルのバックライト側偏光板の透過軸に平行な偏光光を透過するとともに、これと垂直な偏光光を反射してバックライト側に戻す。このバックライト側に戻ってきた光は、光源より観察者と反対側に設置した反射板によって再度観察者側に光を出射されるとともに偏光方向が一部変更される。従って、反射板で反射され偏光方向が一部変更された光を再利用(リサイクル)し、該光学フィルムの偏光方向に平行な偏光の光が該光学フィルムを透過し、透過液晶ディスプレイパネルの画面より出射する。このようにして該光学フィルムは液晶ディスプレイパネルの輝度を増強する機能を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−509331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶ディスプレイパネルを照射するバックライトとして、近年、環境保護の観点から、3種類(例えば、赤、緑、青)の発光ダイオードを利用する傾向にある。この場合、バックライトにおいては、各発光ダイオードから出力される光の波長帯域により高い強度を有する。液晶ディスプレイパネルは、通常、カラーフィルタを備えており、カラーフィルタは、波長に応じた吸光特性といった光学特性を有する。このように、液晶ディスプレイパネル自体や、液晶ディスプレイパネルを照明する照明光には波長依存性が生じるため、このような波長依存性を考慮しながら、輝度の増強が図れる光学フィルムが求められていた。
【0007】
本発明の目的は、波長選択性を有しながら、液晶表示装置に用いたときに、輝度を増強する機能を有する光学フィルム並びにその光学フィルムを含む面光源装置及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る光学フィルムは、所定方向の屈折率が互いに異なる第1の層及び第2の層が積層された基本対を複数有する、少なくとも一つのスタックを備える。スタックの個数、及び、少なくとも一つのスタックそれぞれにおける、第1の層と第2の層との所定方向の屈折率差、第1及び第2の層の厚さ、基本対の数は、少なくとも一つのスタック全体による反射スペクトルが目標反射スペクトルに合致するように設定されている。目標反射スペクトルは、400〜700nmの波長範囲における特定の方向に偏光した第1の偏光光の反射スペクトルにおいて、50%以上の反射率を有するすスペクトル領域であって波長幅が20〜60nmである上記スペクトル領域を含む反射ピーク領域を少なくとも一つ有し、かつ、400〜700nmの波長範囲における第1の偏光光の偏光方向に対して直交する方向に偏光した第2の偏光光の反射スペクトルにおいて、反射率が20%以下である、スペクトルである。
【0009】
上記光学フィルムでは、上述した目標反射スペクトルに合致する反射スペクトルを有するように、上記スタックの個数、及び、上記スタックにおける、第1の層と第2の層との所定方向の屈折率差、第1及び第2の層の厚さ、基本対の数が決定された、少なくとも一つのスタックを備える。そのため、光学フィルムに光が入射すると、第2の偏光光を透過しながら、第1の偏光光を波長選択的に反射する。このような光学フィルムを液晶表示装置に適用すると、第1の偏光光をリサイクル可能であるので、輝度の増強を図り得る。
【0010】
一実施形態において、上記第1の層の面内において、第1の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をna,xとし、上記第2の層の面内において、第1の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をnb,xとしたとき、|Δn|=|nb,x−na,x|が、0.02以上0.23以下であり得る。
【0011】
|Δn|が上記範囲である場合、波長選択性を有しながら、第1及び第2の偏光光を分離し得る。
【0012】
一実施形態において、第1の層の面内において、第2の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をna,yとし、第2の層の面内において、第2の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をnb,yとしたとき、|nb,y−na,y|は、0.02未満であり得る。
【0013】
|nb,y−na,y|は、0.02未満である場合、第1及び第2の偏光光をより確実に分離し得る。
【0014】
一実施形態において、第1の層の厚み方向の屈折率をna,zとし、第2の層の厚み方向の屈折率をnb,zとしたとき、|nb,z−na,z|が、0.02未満であってもよい。
【0015】
一実施形態において、基本対の数は、25〜50であり得る。
【0016】
一実施形態において、第1の層及び第2の層の厚みは、それぞれ5〜400nmであってもよい。
【0017】
一実施形態において、スタックの数は、目標反射スペクトルにおける第1の偏光光の反射スペクトルが有する反射ピーク領域の数以上であり得る。
【0018】
この構成では、反射ピーク領域の数以上にスタックを有するので、反射ピーク領域に対応して少なくとも一つのスタックを割り当てられ得る。よって、スタックは対応する反射ピーク領域を生成するように設計されればよい。
【0019】
一実施形態において、スタックの数が1〜3であり得る。
【0020】
一実施形態において、目標反射スペクトルにおける第1の偏光光の反射スペクトルが、430〜480nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有し、510〜560nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有し、600〜660nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有してもよい。
【0021】
この場合、青色、緑色及び赤色に対応する波長を選択的に反射することが可能である。
【0022】
本発明の他の側面は、面光源装置に関する。面光源装置は、光源部と、光源部からの光を面状の光に変換して出射面部から出射する面発光素子と、面発光素子に対して出射面部と反対側に配置され面発光素子からの光を、その光の偏光状態を変化させながら面発光素子側に反射する反射部と、面発光素子の出射面部上に配置されており、面状の光が入射される本発明の一側面に係る光学フィルムと、を備える。
【0023】
この構成では、面発光素子から出射された面状の光が入射光として光学フィルムに入射される。入射光のうち、第2の偏光光は、光学フィルムを透過する。一方、反射ピーク領域の波長範囲の第1の偏光光は反射されて、面発光素子側に戻される。この戻された光は、面発光素子から反射部側に出射され、反射部で反射されて面発光素子を通って光学フィルムに入射する。反射部によって反射することで、第1の偏光光の偏光状態が変化すると、反射部によって反射した光は、第1の偏光光と第2の偏光光とを含む。従って、反射部によって反射した光が、光学フィルムに入射されると、その入射光のうち第2の偏光光が光学フィルムを透過する傾向にある。このように、面光源装置では、光学フィルムによって、反射された第1の偏光光をリサイクル可能である。その結果、面光源装置を液晶表示装置に適用すると、輝度の向上を図ることが可能である。そして、光学フィルムによって反射されリサイクルされる第1の偏光光は、反射ピーク領域の波長範囲であるので、光学フィルムからは、反射ピーク領域の波長範囲の光がより多く出射される。従って、反射ピーク領域を液晶表示装置の光源はカラーフィルタの特性に応じて設定することによって、面光源装置を適用した液晶表示装置において画像表示により寄与する波長範囲の光の輝度を向上可能である。
【0024】
本発明の更に他の側面は、液晶表示装置に関する。液晶表示装置は、光源部と、光源部からの光を面状の光に変換して出射面部から出射する面発光素子と、面発光素子に対して出射面部と反対側に配置され面発光素子からの光を、その光の偏光状態を変化させながら面発光素子側に反射する反射部と、面発光素子の出射面部上に配置されており、面状の光が入射される本発明の一側面に係る光学フィルムと、光学フィルムに対して面発光素子と反対側に配置される液晶パネルと、を備える。
【0025】
この構成では、面発光素子から出射された面状の光が入射光として光学フィルムに入射される。入射光のうち、第2の偏光光は、光学フィルムを透過して液晶パネルに照射される。一方、反射ピーク領域の波長範囲の第1の偏光光は反射されて、面発光素子側に戻される。この戻された光は、面発光素子から反射部側に出射され、反射部で反射されて面発光素子を通って光学フィルムに入射する。反射部によって反射することで、第1の偏光光の偏光状態が変化すると、反射部によって反射した光は、第1の偏光光と第2の偏光光とを含む。従って、反射部によって反射した光が、光学フィルムに入射されると、その入射光のうち第2の偏光光が光学フィルムを透過し、液晶パネルに照射される。従って、液晶表示装置では、光学フィルムによって、反射された第1の偏光光をリサイクル可能である。その結果、液晶表示装置で表示される画像の輝度の向上を図ることが可能である。そして、光学フィルムによって反射されリサイクルされる第1の偏光光は、反射ピーク領域の波長範囲であるので、光学フィルムからは、反射ピーク領域の波長範囲の光がより多く出射される。従って、反射ピーク領域を液晶表示装置の光源はカラーフィルタの特性に応じて設定することによって、液晶表示装置において画像表示により寄与する波長範囲の光の輝度を向上可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、波長選択性を有しながら、液晶表示装置に用いたときに、輝度を増強する機能を有する光学フィルム並びにその光学フィルムを含む面光源装置及び液晶表示装置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態に係る光学フィルムの概略構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した光学フィルムが有するスタックの斜視図である。
【図3】(a)及び(b)は、一つのスタックにおいて、x方向を特定方向とした場合のs偏光成分及びp偏光成分の反射及び透過状態を模式的に示す図面である。
【図4】図1に例示した光学フィルムに対する目標反射スペクトルの一例を示す図面である。
【図5】反射ピーク領域の一例を示す模式図である。
【図6】図1に示した光学フィルムを適用した液晶表示装置の構成の模式図である。
【図7】光学フィルムを透過した光の透過率スペクトルの一例を模式的に示す図面である。
【図8】実施例における目標反射スペクトルが有する第1の偏光光に対する反射スペクトルの一例を示す図面である。
【図9】実施例1において設計された光学フィルムの反射率の波長による変化(スペクトル)を示す図面である。
【図10】実施例1において設計された光学フィルムの反射率の角度スペクトルを示す図面である。
【図11】実施例2において設計された光学フィルムの反射率の波長による変化(スペクトル)を示す図面である。
【図12】実施例2において設計された光学フィルムの反射率の角度スペクトルを示す図面である。
【図13】実施例3において設計された光学フィルムの反射率の波長による変化(スペクトル)を示す図面である。
【図14】実施例3において設計された光学フィルムの反射率の角度スペクトルを示す図面である。
【図15】非等方性の光学材料層の屈折率条件をより厳密に設定して光学フィルムを設計した場合の反射率の波長による変化(スペクトル)を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。説明中、「上」、「下」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
【0029】
図1は、一実施形態に係る光学フィルムの概略構成を説明するための模式図である。光学フィルム10は、目標反射スペクトルに合致する反射スペクトルを有するように設計されている。目標反射スペクトルは、400nm以上700nm以下の波長範囲のうちの所定の波長範囲において、特定の方向に偏光した第1の偏光光を主に反射すると共に、400nm以上700nm以下の波長範囲において、上記特定方向に対して直交する方向に偏光した第2の偏光光を主に透過する。すなわち、光学フィルム10は、偏光分離機能を有すると共に、波長選択機能を有する波長選択性偏光分離フィルムである。光学フィルム10は、例えば、液晶表示装置に適用され得る。
【0030】
上記所定の波長範囲が、青色波長範囲(すなわち、430nm≦λ≦480nm)、緑色波長範囲(すなわち、510nm≦λ≦560)及び赤色波長範囲(すなわち、600nm≦λ≦660nm)である形態を例にして、光学フィルム10の構成について説明する。
【0031】
光学フィルム10は、3個のスタック301,302,303を有する。スタック301,302,303は、基板20上に積層されている。スタック301とスタック302との間及びスタック302とスタック303との間にはスペーサ層S1,S1が配置されてもよい。更に、基板20に対して最も上に位置するスタック303上には、スキン層S2が設けられてもよい。基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2は、光学フィルム10を構成する光学材料層の保護のため、及び/又は、光学フィルム10の強度増強のために用いられ得る。基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2は、着目している400〜700nmの波長範囲において、光学フィルム10の光学特性(波長選択性及び偏光分離機能)に影響をほとんど及ぼさないような構成を有し得る。一実施形態において、基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2は、例えば、着目する上記波長範囲に対して光学的に透明で等方性の材料から構成され得る。一実施形態において、基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2の厚さの例は、上記波長範囲より十分大きな(例えば、数μm〜数百μm)厚さであり得る、又は、400〜700nmの波長範囲内のある波長をλpとした場合に、qλp/2(qは1以上の整数)であり得る。一実施形態において、基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2の屈折率は、表面反射などが生じないように選択される。基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2の材料の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。基板20、スペーサ層S1及びスキン層S2の材料は、異なっていてもよい。
【0032】
以下の説明では、スタック301,302,303の積層方向をz方向と称する。スタック301,302,303のz方向に直交する方向をx方向及びy方向と称する。x方向及びy方向は直交する。x方向及びy方向は、z方向に直交する面内の方向である。以下の説明では、特に断らない限り、上記第1の偏光光を光学フィルム10への入射光40におけるs偏光成分とする。更に、図1に示したx方向を、s偏光成分の偏光方向(電場の振動方向)とする。この場合、y方向は、入射光40のp偏光成分の偏光方向(電場の振動方向)である。
【0033】
図1及び図2を参照してスタック301〜303の基本構造について、スタック301〜303をスタック30iと称して説明する。iは1,2,3の何れかである。図2は、スタック30iの構成を概略的に示す斜視図である。
【0034】
スタック30iは、第1の光学材料層31iaと、第2の光学材料層31ibとがz方向に積層された基本ブロック(基本対)31iを複数有する。基本ブロック(基本対)31iの数の一例は、25以上100以下であり、好ましくは、25以上50以下である。スタック30iは、複数の基本ブロック31iがz方向に積層された積層体である。従って、スタック30iでは、第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibとが交互に積層されている。スタック30i内の第1の光学材料層31iaの数と第2の光学材料層31ibの数との合計を2M(Mは1以上の整数)とすると、2Mの例は、50以上200以下であり、好ましくは、50以上100以下である。スタック301〜303における基本ブロック311〜313の数或いは層の総数は、スタック301〜303毎に異なっていてもよい。光学フィルム10全体の層の数は、好ましくは、150以上500以下である。
【0035】
厚さ方向(z方向)に直交する面内(xy平面内)の2つの方向(x方向及びy方向)のうちx方向の第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの屈折率は異なる。具体的には、第1の光学材料層のx方向、y方向及びz方向の屈折率をnia,x、nia,y、nia,zとし、第2の光学材料層31ibのx方向、y方向及びz方向の屈折率をnib,x、nib,y、nib,zとしたとき、
nia,x≠nib,x
が成立する。
【0036】
この場合、スタック30iは、x方向を特定方向とする第1の偏光光、すなわち、入射光40のうちs偏光成分に対しては屈折率差が生じ、p偏光成分に対して屈折率差は生じない。その結果、スタック30iは、s偏光成分を反射し、p偏光成分を透過する。
【0037】
図3(a)及び図3(b)は、一つのスタックにおいて、s偏光成分及びp偏光成分の反射及び透過状態を模式的に示す図面である。図3(a)及び図3(b)に示したスタック30iが有する第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの数は、図示における便宜的な数であり、他の図とは必ずしも一致していない。
【0038】
図3(a)に示すように、入射光40のうちs偏光成分は、隣接する第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibの界面において一部が反射される。一方、図3(b)に示すように、入射光40のうちp偏光成分は、基本ブロック31iによってほとんど反射されずに各基本ブロック31iをz方向に進行する。よって、スタック30iは、s偏光成分を反射すると共に、p偏光成分を透過する偏光分離機能を有する。
【0039】
第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibについて説明する。第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibのx方向の屈折率差を|Δni|=|nia,x−nib,x|とすると、|Δni|の例は、0.02以上0.23以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23)であり、好ましくは、0.02以上0.15以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.15)である。nia,xの方がnib,xより大きくてもよく、nib,xの方がnia,xより大きくてもよい。
【0040】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、上述した屈折率差に関する条件を満たし得る透明材料であれば特に限定されない。加工の容易性の観点から、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料の例は、透明樹脂である。第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、それぞれ、結晶性、半結晶性、又はアモルファス性の高分子材料から選択され得る。第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの一方が等方性であり、他方が非等方性である場合、等方性である光学材料層の材料は、好ましくは、結晶性、半結晶性、又はアモルファス性の高分子材料から選択され、非等方性である光学材料層の材料は、好ましくは、結晶性又は半結晶性の高分子材料から選択され得る。
【0041】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料の具体例は、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びその異性体(例えば、1,4−PEN、1,5−PEN、2,7―PEN及び2,3−PEN等)、並びに、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、メタクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリスチレン、ポリプロピレン等)、環状ポリオレフィン樹脂を含む。
【0042】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、PENの共重合体、ポリアルカンテレフタレートの共重合体又はスチレン共重合体であってもよい。PENの共重合体の例は、2,6−,1,4−,1,5−,2,7−及び2,3−ナフタレンジカルボン酸又はそのエステルと、a)テレフタル酸又はそのエステル、b)イソフタル酸又はそのエステル、c)フタル酸又はそのエステル、d)アルカングリコール、e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、又は、f)アルカンジカルボキシル酸(例えば、シクロヘキサンジカルボキシル酸)との共重合体である。ポリアルカンテレフタレートの共重合体の例は、テレフタル酸又はそのエステルと、a)ナフタレンジカルボン酸又はそのエステル、b)イソフタル酸又はそのエステル、c)フタル酸又はそのエステル、d)アルカングリコール、e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタルジオール)、f)アルカンジカルボン酸、及び/又は、g)シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)との共重合体である。スチレン共重合体の例は、スチレンーブタジエン共重合体及びスチレンーアクリロニトリル共重合体である。更に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料はABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチルースチレン共重合体樹脂)であってもよい。
【0043】
更に、各第1及び第2の光学材料層31ia,31ibは、例示した高分子又は高分子共重合体の2つ以上の混合物でもよい。上記例示した材料は、吸光係数が小さく、吸収による損失が小さい点でも好ましい。
【0044】
スタック30iにおける第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料の好ましい組み合わせは、PEN/co―PEN、co−PEN/PEN、PET/co―PEN、co−PEN/PET、PEN/sPS、sPS/PEN、PET/sPS、sPS/PET、PEN/EASTER(登録商標)、EASTER/PEN、PET/EASTER又はEASTER/PETである。co―PENは、ナフタレンジカルボン酸に基づく共重合体又は混合物を意味する。EASTERは、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを意味する。更に、sPSは、シンジオタクチックポリスチレンを意味する。
【0045】
スタック301〜スタック303の第1の光学材料層311a〜313aの材料は同じであってもよく、スタック301〜スタック303の第2の光学材料層311b〜313bの材料は同じであってもよい。
【0046】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、上述した屈折率差|Δni|を有すればよい。従って、例えば、第1の光学材料層31iaが等方的な光学材料層であって、第2の光学材料層31ibが非等方的な光学材料層であってもよい。この場合、nia,x=nia,y=nia,z(=nia)及びnia=nib,y=nib,zが成立する。非等方的な光学材料層の材料としては、複屈折性を有する液晶高分子が例示され得る。
【0047】
第1の光学材料層31iaが等方的な光学材料層であって、第2の光学材料層31ibが非等方的な光学材料層である形態では、第1の光学材料層31iaは、必要な加工条件で処理される際に、x、y及びz方向の屈折率が有意な差を生じない材料であり得ると共に、第2の光学材料層の材料は、加工条件の下で、所定方向の屈折率が大きく変化する材料であり得る。
【0048】
より確実に偏光を分離する観点から、第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibのy方向の屈折率差|δniy|(=|nia,y−nib,y|)及びz方向の屈折率差|δniz|(=|nia,z−nib,z|)は、好ましくは、いずれも0.02未満であり、更に好ましくは0.01以下である。
【0049】
第1の光学材料層31iaが等方的であって、第2の光学材料層31ibが非等方的である場合、第1の光学材料層31ia内におけるx方向、y方向及びz方向の屈折率nia,x、nia,y、nia,zのうちの任意の2つの方向の屈折率差の大きさは0が好ましいが、0.01以下であればよい。非等方的な第2の光学材料層31ibについては、δnibyzを|nib,y−nib,z|と定義したとき、δnibyzは、好ましくは0.02未満であり、より好ましくは0.01以下である。更に、Δnibxyを|nib,x−nib,y|と定義し、Δnibzxを|nib,z−nib,x|と定義したとき、|Δnibxy−Δnibzx|は、好ましくは0.02未満であり、より好ましくは0.01以下である。
【0050】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibが有するそれぞれのz方向の厚さtia,tibは、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibそれぞれのx方向及びy方向の長さより十分短い。すなわち、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの形状は薄膜状である。第1及び第2の光学材料層31ia,31ibそれぞれのz方向の厚さtia,tibは、光学フィルム10への入射光40の波長λより小さい。厚さtia,tibの例は、5nm以上400nm以下であり、より好ましい例は、5nm以上200nm以下である。
【0051】
スタック30i内の全ての第1の光学材料層31iaの厚さtiaは同じであり、スタック30i内の全ての第2の光学材料層31ibの厚さtibは同じである。スタック301〜スタック303の第1の光学材料層31iaの厚さt1a〜t3aはそれぞれ異なると共に、スタック301〜スタック303の第2の光学材料層31ibの厚さt1b〜t3bはそれぞれ異なる。すなわち、次の関係が成立する。
t1a≠t2a≠t3a
t1b≠t2b≠t3b
【0052】
上記厚さに関する関係が成立することによって、スタック301〜スタック303は主に異なる波長選択性を備える。
【0053】
光学フィルム10において、スタック30iは、光学フィルム10が目標反射スペクトル50に合致する反射スペクトルを有するように設計されている。
【0054】
目標反射スペクトル50について説明する。図4は、図1に例示した光学フィルム10に対する目標反射スペクトルの一例を示す図面である。図4の横軸は波長(nm)を示し、縦軸は反射率(%)を示す。目標反射スペクトル50は、s偏光成分の反射スペクトル51と、p偏光成分の反射スペクトル52とを含む。図4に示した目標反射スペクトル50のうちp偏光成分の反射スペクトル52は、400〜700nmの波長範囲において反射率Rが20%以下であるスペクトルである。目標反射スペクトル50のうちs偏光成分の反射スペクトル51の例は、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲においてそれぞれ反射ピーク領域51Aを有する。図4に示すように、反射スペクトル51は、反射ピーク領域51Aとしての3つの大きな山部を有する。
【0055】
波長ピーク領域51Aは、50%以上の反射率を有するスペクトル領域51Aaであって、波長幅が20〜60nmであるスペクトル領域51Aaを有する。一実施形態の反射ピーク領域51Aにおいて、スペクトル領域51Aaの波長幅は、反射ピークに対応する波長がスペクトル領域51Aaの最小波長と最大波長の中心になるように設定され得る。反射ピーク領域51Aは、反射スペクトル51において、次式で定義されるηが50%以上となる反射率R1を最大反射率Rmaxとして有する領域であり得る。
η=100×(R1−R2)/(R1+R2)
ηを定義する上記式において、R1は、反射スペクトル51が有する複数の反射ピーク(山部の頂部)のうち、ある反射ピークP1の反射率である。R2は、波長が増加又は減少する方向において、反射ピークP1の前側及び後側における反射ピーク各々と、反射ピークP1との間の2つの最小反射率のうちより大きな最小反射率である。
【0056】
反射ピーク領域51Aの形状の一例について説明する。図5は、一波長範囲における反射ピーク領域51Aの一例を模式的に示す図面である。図5は、反射ピーク領域51Aの形状を説明するための模式図である。一波長範囲の最小波長をλminとし、最大波長をλmaxとする。例えば、一波長範囲が青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲である場合、λminはそれぞれ例えば430nm、510nm及び600nmであり、λmaxはそれぞれ例えば480nm、560nm及び660nmである。一波長範囲内の反射ピーク領域51A内の最大反射率Rmax(図5では、一例としてRmax=100%)に対応するピーク波長をλkと称する。
【0057】
一実施形態において、反射ピーク領域51Aの形状は、以下の条件1を満たす形状である。
条件1:
{λk−(Δλk/2)}≦λ≦{λk+(Δλk/2)}に対して、R≧50%
【0058】
好ましくは、反射ピーク領域51Aの形状は以下の条件2を満たす形状である。
条件2:
{λk−(Δλk/4)}≦λ≦{λk+(Δλk/4)}に対して、R≧80%
【0059】
他の実施形態において、反射ピーク領域51Aの形状は、以下の条件3を満たす形状である。
条件3:
{λk−(Δλk/2)}≦λ≦{λk+(Δλk/2)}に対して、R≧80%
【0060】
条件1〜3において、Δλkは、スペクトル領域51Aaの波長幅であり、Δλkは、20nm〜60nmである。Δλkは20nm〜45nmがより好ましい。図5は、条件1を満たす場合の反射ピーク領域51Aの形状を例示しており、条件1において、Δλkは、半値幅に対応する。条件3は、スペクトル領域51Aaの反射率が80%以上であることを示している。
【0061】
反射ピーク領域51Aが、よりシャープな頂部を有する山形形状を有する場合、光学フィルム10からの出射光の輝度の向上が図られ得る。一方、反射ピーク領域51Aの形状は、より平坦な頂部を有する山形形状、換言すれば、台形状である場合、光学フィルム10における波長選択性が向上し得る。
【0062】
図4には、図1に示した光学フィルム10の構成例に対応した目標反射スペクトル50を例示した。しかしながら、目標反射スペクトル50は、400〜700nmの波長範囲におけるs偏光成分(第1の偏光光)に対する反射スペクトル51において、スペクトル領域51Aaを含む反射ピーク領域51Aを少なくとも一つ有し、かつ、400〜700nmの波長範囲におけるp偏光成分(第2の偏光光)に対する反射スペクトル52において、反射率Rが20%以下であるスペクトルであればよい。
【0063】
一実施形態に係る光学フィルムを製造する方法の一例について説明する。光学フィルムを製造する場合、まず、目標反射スペクトルを決定する。目標反射スペクトルは、400〜700nmの波長範囲において、50%以上の反射率Rを有するスペクトル領域であって波長幅が20〜60nmであるスペクトル領域を含む反射ピーク領域を少なくとも一つ有するs偏光成分(第1の偏光光)の反射スペクトルと、400〜700nmの波長範囲内の反射率Rが20%以下であるp偏光成分(第2の偏光光)に対する反射スペクトルとから構成されていれば、製造する光学フィルムの用途に応じて適宜設定すればよい。製造した光学フィルムを液晶表示装置に採用する場合、例えば、目標反射スペクトルは、液晶表示装置の光源の発光スペクトルの特性に応じたスペクトル形状又は液晶パネルが有するカラーフィルタ層の光学特性(例えば、吸光特性)に応じたスペクトル形状とし得る。
【0064】
ここでは、一例として、図4に例示した目標反射スペクトル50に対応する光学フィルム10を製造する場合について説明する。目標反射スペクトル50は、前述したように、3種類の色の波長範囲に反射ピーク領域51Aを有するような反射スペクトル51と、400nm〜700nmにおいて、反射率Rが20%以下の反射スペクトル52とを有する。反射スペクトル51の形状は、反射ピーク領域51Aが条件1〜3の何れかを満たすように決定されている。
【0065】
次に、目標反射スペクトル50に対応する反射スペクトルが得られるようにスタックの数及び各スタックの構成を設計する。目標反射スペクトル50の反射スペクトル51は、図4に例示したように、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域51Aを有するので、製造する光学フィルム10は、図1に示したように、3つのスタック301〜303を有する。
【0066】
続いて、各スタック30iにおける第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの反射させるべき偏光方向(本実施形態ではx方向)の屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib、基本ブロック31iの数等を設計する方法について説明する。
【0067】
各スタック30iの屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib、基本ブロック31iの数は、反射スペクトル51,52の形状に影響を与える。従って、各スタック30iの屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib、基本ブロック31iの数は、s偏光成分の反射スペクトル51が青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲においてそれぞれ反射ピーク領域51Aを示すと共に、p偏光成分の反射スペクトル52が400〜700nmにおいて反射率Rが20%以下となるように設計される。p偏光成分の反射スペクトル52は、400〜700nmにおいて反射率Rが20%以下であればよいので、反射スペクトル52のスペクトル形状は任意であり得る。s偏光成分の反射スペクトル51は、3種類の色の波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域51Aを有すればよいが、3種類の色の波長範囲それぞれにおける反射ピーク領域51Aの形状は、光学フィルム10における所望の光学特性に応じた形状に設計され得る。3種類の色の波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域51Aは、好ましくは、上記条件1〜3の何れかを満たす形状に設計される。
【0068】
目標反射スペクトル50に応じたスタック30iの構成を設計する方法は少なとも2つある。一つは、λ/4法を用いる方法(例えば、M. Born and E.Wolf, “Principle of Optics,”7th(expanded)edition,Cambridge U. Press, 1999参照)であり、もう一つは最適化アルゴリズムを用いる方法である。
【0069】
目標反射スペクトル50に応じたスタック30iの構成を設計する方法について説明する。以下の説明では、設計モデルとして、図1に示した構成においてスキン層S2を除いた構成を採用する。設計において、入射光40のうちx方向に偏光した成分がs偏光成分である。更に、設計において、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの面内においてx方向の屈折率が異なり、y方向の屈折率は同じである。スタック301〜303は、それぞれ青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲に反射ピーク領域51Aを有するように設計される。よって、図5の説明で述べた反射ピーク波長λk及び波長幅Δλkをスタック301〜303に対応させて反射ピーク波長λi及び波長幅Δλiとも称す。
【0070】
λ/4法を利用して、スタック301〜303を設計する方法について説明する。λ/4法では、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibそれぞれのx方向の屈折率nia,x及び屈折率nib,xを、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのx方向における屈折率差|Δni|を考慮して決定する。
【0071】
通常、屈折率差|Δni|が小さくなるにつれて、全波長においてs偏光成分を反射しにくくなる。そのため、偏光分離機能を実現するために、|Δni|は一定以上の大きさを有する。屈折率差|Δni|が大きくなるにつれて、全波長においてs偏光成分を反射する傾向にあるので|Δni|が大きすぎると、波長選択性が低減する傾向にある。従って、屈折率差|Δni|は、波長選択性を考慮しながら目標反射スペクトル50における主に偏光分離機能の観点から決定される。Δniの大きさの一例は、0.02以上0.23以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23)であり、好ましくは、0.02以上0.15以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.15)である。Δniが上記例示した範囲であれば、所望の反射ピーク領域51Aの形状に設計しやすい。
【0072】
設計では、s偏光成分の反射スペクトル51の反射ピーク波長λiを決定する。図4に例示したように、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲にそれぞれ反射ピーク領域51Aを有する場合、λ1=460mm、λ2=540nm、λ3=640nmとし得る。
【0073】
次に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib及びスタック30iの第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数を次の式に基づいて決定する。
tia=λi/(4nia,x)
tib=λi/(4nib,x)
【0074】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのy方向及びz方向の屈折率は、屈折率nia,x及び屈折率nib,xに応じて、決定すればよい。
【0075】
更に、基本ブロック31iの数は、スタック30iの反射特性における最大反射率をRi,maxとしたとき、最大反射率Ri,maxに基づいて決定され得る。基本ブロック31iの数は、スタック301〜スタック303の間で同じである場合もあるし、異なる場合もあり得る。例えば、基本ブロック31iの数は、以下の式を利用して決定され得る。
【数1】
Ri,maxを示す上記式において、Nはスタック30iが有する第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの数の総和である。すなわち、N=2Mである。この場合、基本対31iの数は、N/2である。Ri,maxを示す上記式では、一例として、入射光のスタック30iへの入射方式は垂直入射であること、nia,x>nib,x、及び、スタック30iへの光の入射側及びスタック30iから光が出射する側の光学媒体は同じであることを仮定している。なお、最大反射率Ri,maxを表す式は、入射光の入射方式や周囲の媒体の屈折率などに応じて適宜算出すればよい。
【0076】
第2の設計方法は、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tib及び屈折率並びにスタック30iの第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数(すなわち、基本ブロック31iの数)を決定するために最適化アルゴリズムを用いる方法である。最適化アルゴリズムにおいても、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数は、スタック30iの反射特性における最大反射率Ri,maxに基づいて決定され得る。各スタック30iの第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数もパラメータとなり得る。しかしながら、パラメータ数を減らす観点から、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数、すなわち、基本ブロック31iの数は一定としておくことが好ましい。スタック30iにおける第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの層数は、例えば、50以上200以下であって、光学フィルム10全体の層の数が、150以上500以下の範囲で選択され得る。
【0077】
最適化アルゴリズムでは、各スタック30iの第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの屈折率差|Δni|、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのy方向及びz方向の屈折率、及び厚さtia,tibをパラメータとして、シミュレーションを実施して、各スタック30iの反射スペクトルの反射ピーク領域51Aと、波長幅Δλiに適合するように、各パラメータを最適化する。最適化アルゴリズムを用いた場合でも、屈折率差Δniの大きさは、前述したように、一例として、0.02以上0.23以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23)であり、好ましくは、0.02以上0.15以下(すなわち、0.02≦|Δni|≦0.15)である。
【0078】
一実施形態において、第1の光学材料層311a〜313aの材料が同じ且つ第2の光学材料層311b〜313bの材料が同じであると共に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのうちの一方が等方性の光学材料層であり他方が非等方性の光学材料層であるとして、光学フィルム10を設計してもよい。この場合、パラメータ数が更に低減され得る。
【0079】
第1の光学材料層311a〜313aの材料が同じ且つ第2の光学材料層311b〜313bの材料が同じである場合、屈折率の観点からは、第1の光学材料層311a〜313aを区別する必要はなく、第2の光学材料層311b〜313bを区別する必要がない。そのため、屈折率については、第1の光学材料層311a〜313aの各方向の屈折率をna,x、na,y及びna,zと表記する。第2の光学材料層311b〜313bの各方向の屈折率についても同様とする。以下、屈折率の観点からは、第1の光学材料層311a〜313aを区別する必要ななく、第2の光学材料層311b〜313bを区別する必要がない場合は、同様に記載する。
【0080】
第1の光学材料層311a〜313aが等方性の光学材料層であって同じ材料から構成されると共に、第2の光学材料層311b〜313bが非等方性の光学材料層であって同じ材料から構成される場合、以下の2つの関係式(1)及び関係式(2)が成り立つ。
na,x=na,y=na,z(=na)・・・(1)
na=nb,y=nb,z・・・(2)
これらの関係が成立する場合、設計に要するパラメータは、8個である。すなわち、第1の光学材料層31aの屈折率naと、屈折率差|Δn|(=|na,x−nb,x|)と、6つの厚さ(各スタック30に2つの厚さtia,tib)とである。このように、関係式(1)及び(2)が成立する場合、前述のようにパラメータ数を低減され得る。
【0081】
なお、第1の光学材料層311a〜313aの材料が同じ且つ第2の光学材料層311b〜313bの材料が同じであると共に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのうちの一方が等方性の光学材料層であり他方が非等方性の光学材料層であることは、λ/4法を用いてスタック30iを設計する場合も、設計を容易にする観点から有効である。
【0082】
その後、上記光学フィルム10の設計条件に基づいて、光学フィルム10を製造する。
【0083】
光学フィルム10の製造において、屈折率差|Δni|は、例示したような屈折率差|Δni|、すなわち、0.02≦|Δni|≦0.23を有し得る第1及び第2の光学材料層31ia,31ibをそれぞれ準備することによって、形成してもよい。
【0084】
或いは、第1の光学材料層31iaが等方性の光学材料層であり、第2の光学材料層31ibが非等方性の光学材料層である場合、第2の光学材料層31ibの非等方性は、例えば、光学フィルム10としての多層構造を形成した後に、延伸することによって付与してもよい。この場合、延伸方向がx方向となる。
【0085】
第1の光学材料層31iaが等方的な光学材料層であって、第2の光学材料層31ibが非等方的な光学材料層である形態について、光学フィルム10を製造する方法について説明する。
【0086】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料は、上記に例示した高分子及びその共重合体などから選択されればよい。第1の光学材料層31iaは、必要な加工条件で処理される際に、x、y及びz方向の屈折率が有意な差を生じない材料であり得ると共に、第2の光学材料層31ibの材料は、上記必要な加工条件の下で、所定方向の屈折率が大きく変化するものであり得る。更に、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibは、好ましくは、それらが共押出しされ得るように、同様のレオロジー特性(例えば、溶融粘度)を有する。
【0087】
上述した加工条件は、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの間で所望の屈折率関係が得られるように選択され得る。上記所望の屈折率関係は、種々の方法で達成され得る。所望の屈折率関係を得るための方法の例は、前述したように、光学フィルム10となる多層フィルム構造を形成中又は上記多層フィルム構造を形成した後に所定方向に延伸すること(例えば、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの材料が有機材料の場合)である。光学フィルム10となる多層フィルム構造を形成する方法は、多層押出法(又は共押出法)(例えば、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibが液晶性の材料の場合)及び多層コーティング技術を含む。多層コーティング技術は、特に限定されず、多層コーティング技術の一般的に手法が利用され得る。多層コーティング技術の例は、スピンコート法、ダイコート法等のウェットプロセス技術、及び、化学蒸着及びスパッタリング等のドライプロセス技術を含む。光学フィルム10の製造の容易性の観点から多層押出法が好適である。光学フィルム10は、別々に製造された各スタックを貼り合せて製造されてもよい。
【0088】
延伸によって配向し得る有機高分子の場合、光学フィルム10となる多層フィルムは、一般的な多層フィルムを形成するように、各層を構成する高分子を共押出しすることによって準備される。その後、ある選択された温度で一つの特定の方向に、その多層フィルムを延伸し(単軸引張り)、多層フィルムを配向させることによって光学フィルム10が得られる。上記特定の方向が、入射光40におけるs偏光成分の偏光方向であるx方向に対応する。多層フィルムが形成された後、上記ある選択された温度にヒートセットする工程を備えてもよい。押出しと延伸とは一つの工程で行われてもよい。延伸方向と直交する方向(垂直方向)における多層フィルムの長さが実質的に縮小しないように、その直交方向において多層フィルムは弛緩されてもよい。所望の光学特性を備えた多層フィルムとしての光学フィルム10を得るために、延伸プロセス前の温度、延伸温度、延伸度、延伸比率、ヒートセット温度、ヒートセット時間、ヒートセット弛緩、及び、垂直方向の延伸弛緩が選択され得る。これらの変数は、相互に関連している。例えば、比較的に低い延伸度は、比較的に低い延伸温度で採用され得る。通常、延伸比率は、1:2〜1:10の範囲が好ましく、1:3〜1:7がより好ましい。
【0089】
なお、上記光学フィルム10となる多層フィルムを構成する層にはスペーサ層S1及びスキン層S2としての層も含む。また、光学フィルム10となる多層フィルムは、基板20となる層を含んでもよい。多層フィルムは光学フィルム10となる多層構造として説明したが、各スタック301〜303となる多層構造を多層フィルムとしてもよい。なお、図1に示したように、光学フィルム10が有するスペーサ層S1及びスキン層S2は、光学フィルム10の製造において多層押出法を利用する場合に役立つ。また、スペーサ層S1及びスキン層S2を備えることで、例えば、多層フィルム構造を形成した後の工程(例えば、延伸工程など)において機械的特性を向上し得る。
【0090】
第1及び第2の光学材料層31ia,31ibにおいて所定方向(x方向)以外の対応する方向の屈折率差はないことが理想的であるが、前述したように、所定方向以外の2つの方向の屈折率差(例えば、y方向又はz方向)が0.02未満であればよく、好ましくは、0.01以下である。
【0091】
以上説明したように、光学フィルム10は、目標反射スペクトル50に合致する反射スペクトルを有するように設計された値に基づいて製造されている。その結果、光学フィルム10は、入射光40に対して所定の反射スペクトルを有するようにs偏光成分を反射する一方、少なくとも可視光の波長範囲においてp偏光成分をほとんど透過し得る。すなわち、光学フィルム10は、偏光分離機能と共に、波長選択性を有する。このような波長選択性偏光分離フィルムとしての光学フィルム10を液晶表示装置に適用することによって、輝度を向上し得る。この点について、図6を参照して説明する。
【0092】
図6は、図1に示した光学フィルムを適用した液晶表示装置の概略構成を示す図面である。図6は、液晶表示装置1の断面構成を分解して示している。
【0093】
液晶表示装置1は、液晶ディスプレイパネル(以下、単に液晶パネルと称す)61と、図6において液晶パネル61の背面側に配置されており面状の光を出射する面光源装置70と、液晶パネル61と面光源装置70との間に配置された光学フィルム10とを備える。図6に示すように、液晶パネル61の厚み方向をZ方向とし、Z方向に直交する2つの方向をX方向及びY方向と称する。図6では、光を模式的に矢印で示している。矢印に付された黒点はp偏光成分を示し、矢印の延在方向に直交する線分はs偏光成分を表す。
【0094】
液晶パネル61は、面光源装置70から出射される光により照明されて画像を表示する。液晶パネル61は、液晶層61Aの両側に偏光板61B,61Cと、を主に備える。偏光板61Bは液晶層61Aの背面側に配置され、偏光板61Cは、液晶層61Aの表側(観察者側或いは視聴者側)に配置される。偏光板61Bと偏光板61Cとは、それらの透過軸が互いに直交するように配置される。図6に示した形態では、偏光板61Bの透過軸が、図6に示すX方向に延びている。液晶層61Aと偏光板61Cとの間にはカラーフィルタ層61Dが配置される。液晶パネル61が備える上記要素の構成は公知の構成とし得る。液晶パネル61は、上記例示した構成要素以外に、配光膜や電極などを有する。すなわち、液晶パネル61は、公知の構成を有してればよい。
【0095】
面光源装置70は、導光板(面発光素子)80と、導光板80の側面80a近傍に配置された光源部90と、反射部100とを備えるエッジライト方式の面光源装置である。
【0096】
導光板80は、側面80aから入射された光を側面80aと交差した(図6では、直交した)出射面部80b及び出射面部80bと反対側に位置する反射面部80cとの間で全反射させながら導光板80内を伝播させる。反射面部80cには、全反射条件とは異なる条件で反射する非全反射領域が適宜設けられている。非全反射領域は、印刷ドットといった拡散ドット、y方向に延在するレンズ部又はドーム状のレンズ部などが付与された領域であり得る。この非全反射領域で反射した光は、出射面部80bで全反射せずに出射面部80bから外部に出ていく。従って、上記構成では、導光板80内を全反射しながら伝搬する光の一部が出射面部80bから取り出されるので、導光板80から面状の光が出射される。通常、非全反射領域は、面状の光の輝度が面内で均一になるようなパターンで設けられている。
【0097】
光源部90は、導光板80の入射面である側面80aに対向して配置された光源91を有する。光源91の例は点光源である。点光源の例は、発光ダイオード、ハロゲンランプ及びタングステンランプを含む。発光ダイオードの例は、赤色光、緑色光及び青色光を発光するRGBタイプの発光ダイオードと、及び、青色発光ダイオードに黄色の蛍光体を組み合わせた又は青色発光ダイオードに緑色及び赤色の蛍光体を組み合わせた白色タイプの発光ダイオードとを含む。
【0098】
光源91が点光源である場合、光源部90は、複数の光源91を含む。この場合、複数の光源91は、側面80aにおいて導光板80の厚み方向に直交する方向に沿って直線状に配列される。光源91は、点光源に限定されず、蛍光管のような線状光源であってもよい。
【0099】
図6に示した面光源装置70においては、導光板の4つの側面のうち1つの側面80aに対向してのみ光源部90が設けられている。しかしながら、このような構成には限定されない。例えば、導光板80の少なくとも一つの側面に対して設けられていればよい。
【0100】
反射部100は、導光板80の反射面部80cから出射されてきた光を導光板80側に反射する。反射部100の例は、光を乱反射する反射板である。反射部100は、例えば、光を乱反射する処理が施された導光板80等を収容する筐体の底面でもよい。
【0101】
光学フィルム10は、図4に示した目標反射スペクトル50に基づいて設計及び製造された波長選択性偏光分離フィルムである。光学フィルム10を液晶表示装置1に適用する場合、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibにおける屈折率差|Δni|が生じている方向が図6に示すX方向であるように、光学フィルム10は、配置される。
【0102】
上記構成では、導光板80の出射面部80bから出射された面状の光は、入射光40として光学フィルム10に入射される。光学フィルム10では、入射光40のうち目標反射スペクトルに合致するように入射光40を反射する。その結果、入射光40のうちp偏光成分はほとんど光学フィルム10を透過し、青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲のs偏光成分は選択的に反射される。
【0103】
光学フィルム10によって反射されたs偏光成分は、導光板80側に戻って、反射面部80c側から反射部100に向けて出射される。反射部100は、導光板80側からの光を乱反射して導光板80に戻す。この反射部100での乱反射により、光の偏光状態が擾乱される。偏光状態が擾乱された光は、導光板80から再度出射されて光学フィルム10に入射光40として入射する。その結果、入射光40のうちs偏光成分は反射され、p偏光成分は透過する。
【0104】
以上説明したように、光学フィルム10を備えた液晶表示装置1では、所定波長範囲である青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲のs偏光成分がリサイクルされる。この場合、偏光板61Bによって吸収される光が低減すると共に、リサイクルされた光を利用して液晶パネル61が照明される。その結果、液晶パネル61で表示される画像の輝度が向上する。この点で、光学フィルム10は、輝度向上フィルムである。
【0105】
また、光学フィルム10によって、所定波長範囲である青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲のs偏光成分がリサイクルされるので、図7に示すように、上記所定波長範囲のp偏光成分が選択的により多く透過する。この場合、波長選択性を有しながら、輝度向上が図れるので、光学フィルム10は、彩度を増強する機能も有する。
【0106】
従来、カラーフィルタ層61Dには染料が用いられている。この場合、光の透過率が十分ではないので、彩度の増強効果が低い傾向にあった。これに対して、光学フィルム10を用いることで、所定の波長範囲の光を選択的に増強できるので、上記のように彩度増強が図り得る。
【0107】
なお、光源部90として、赤色光、緑色光及び青色光を発光するRGBタイプの発光ダイオードと、又は、青色発光ダイオードに黄色の蛍光体を組み合わせた又は青色発光ダイオードに緑色及び赤色の蛍光体を組み合わせた白色タイプの発光ダイオードを使用する場合、光学フィルム10の設計段階における場合の目標反射スペクトル50は、光源部90の発光特性に合わせることが、彩度向上の観点から好ましい。或いは、目標反射スペクトル90は、カラーフィルタ層61Dの特性(吸収波長等)に応じたスペクトルにすることが彩度向上の観点から好ましい。
【0108】
各スタック30iにおいて、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さ31ia,31ibはそれぞれ一定であることから、光学フィルム10の製造も容易である。更に、各スタック30iにおける第1の光学材料層31iaの数及び第2の光学材料層31ibの数の合計が50以上500以下であることから、光学フィルム10を更に容易に製造可能であると共に、光学フィルム10を低コストで製造し得る。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例の光学フィルムの設計のための各種計算は、Fortran 90とMathcad(バージョン11と15)を用いてコンピュータプログラムを組んで実施した。実施例の説明においては、実施形態で説明した要素に対応する要素には同一符号を付する。
【0110】
設計においては以下の点を仮定した。
(1)光学フィルム10の設計モデルでは図1の構成及び図1に示したx方向、y方向及びz方向を採用した。ただし、設計モデルにおいて光学フィルムは、図1に示したスキン層S2を含まない。
(2)光学フィルム10は、3つのスタック301、スタック302及びスタック303と、スタック301〜303を分離するスペーサ層S1と、基板20とを備える。
(3)スタック301〜スタック303の第1の光学材料層311a〜第1の光学材料層313aは同じ高分子から構成されている。同様に、スタック301〜スタック303の第2の光学材料層311b〜第2の光学材料層313bは同じ高分子から構成されている。従って、屈折率に関しては、第1の光学材料層311a〜第1の光学材料層313aの屈折率を区別する必要はなく、第2の光学材料層311b〜第2の光学材料層313bの屈折率を区別する必要はない。そのため、以下では、屈折率に関する表記では、スタック301、スタック302、スタック303を区別する1,2,3の記載を省略する。
(4)第1の光学材料層31ia(iは、1,2,3のいずれかの数)は等方的な光学材料層であり、第2の光学材料層31ibは非等方的な光学材料層である。
(5)第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibとはx方向の屈折率が異なる。第2の光学材料層31ibにおいて、y方向及びz方向の屈折率は、第1の光学材料層31iaの屈折率と同じである。従って、等方的な光学材料層である第1の光学材料層31iaの屈折率をna(=na,x=na,y=na,z)とすると、次式が成立する。
na=nb,y=nb,z
(6)スタック30iへの光の入射形態は垂直入射を仮定した。
(7)設計のための所定の目標反射スペクトル50が有するs偏光成分の反射スペクトル51として、図8に示したLED発光スペクトルを仮定した。反射スペクトル51において、可視光の青(B)、緑(G)、赤(R)の領域に対応する3つの反射ピーク位置は、それぞれ、462.5nm、532.5nm及び632.5nmとした。p偏光成分の反射スペクトル52は400〜700nmにおける反射率が20%以下であればスペクトル形状は任意でよいため、図8では反射スペクトル52の表示は省略している。
【0111】
以上の(1)〜(7)の仮定に基づいて、設計のためのパラメータは次の記号を用いて表している。
na、Δn、t1a、t1b、t2a、t2b、t3a、t3b
これらの表記において、aとbは、基本的な光学材料層である第1の光学材料層31iaと第2の光学材料層31ibの2種の高分子を区別するために用いている。naは、第1の光学材料層31iaの屈折率である。Δnは、第1及び第2の光学材料層31ia,31ibのx方向の屈折率差の大きさである。1〜3の数字は3つのスタック301,302,303を区別するために用いている。例えばt1a、t1b、t2a、t2b、t3a、t3bはスタック301、スタック302、スタック303それぞれの基本的な光学材料層の対(基本ブロック)の2つの光学材料層(第1及び第2の光学材料層31ia,31ib)それぞれの厚さを示す。
【0112】
それぞれのパラメータの最小値は、通常はna=1.45、Δn=0.02、t1a=5nm、t1b=5nm、t2a=5nm、t2b=5nm、t3a=5nm、t3b=5nmである。それぞれのパラメータの最大値は、通常はna=1.75、Δn=0.15、t1a=205nm、t1b=205nm、t2a=205nm、t2b=205nm、t3a=205nm、t3b=205nmである。それぞれのパラメータの精度は、通常はnaに対して0.001であり、Δnに対して0.001であり、t1aに対して0.01nmであり、t1bに対して0.01nmであり、t2aに対して0.01nmであり、t2bに対して0.01nmであり、t3aに対して0.01nmであり、及びt3bに対して0.01nmである。
【0113】
(実施例1)
所定の目標反射スペクトル50に対して実施例1ではλ/4法を用いて光学フィルム10を設計した。実施例1の光学フィルム10は、屈折率1.5の基板20上に設置された3つのスタック301,302,303からなる。各スタック30iは、等方的な光学材料層(第1の光学材料層31ia)と、非等方的な光学材料層(第2の光学材料層31ib)の対が、30対積層されて構成されている。naとnb,xの値は、全てのスタック301,302,303について具体的には例えばそれぞれ1.7と1.6である。λ/4法を用いて計算された第1及び第2の光学材料層31ia,31ibの厚さtia,tibは次の通りである。t1a=67.65nm、t1b=71.88nm、t2a=79.41nm、t2b=84.38nm、t3a=94.12nm、t3b=100.00nm。隣り合う各スタック30iは、屈折率1.5で厚さが270nm(=540nm/2)の光学材料層としてのスペーサ層S1で隔てられている。反射スペクトルは、垂直入射光であって偏光方向が互いに垂直であるpモード(p偏光成分)とsモード(s偏光成分)の光に対して計算した。pモードにおいては、電界は入射面(図2におけるyz面)内に偏光し、sモードにおいては、電界は入射面に垂直な面(図2におけるxz面)内で偏光している。光学フィルム10に対する反射スペクトルは400nmから700nmの範囲内で60点の波長をサンプリングして計算した。光学フィルム10に対して入射光が入射する側の媒体は屈折率1.0の空気とした。
【0114】
λ/4法を用いて計算した合計182(2枚のスペーサ層S1を含む)の光学材料層からなる光学フィルム10の反射率の波長による変化(スペクトル)を図9に示した。図9の横軸は波長(nm)であり、縦軸は反射率(%)である。
【0115】
1度の角度間隔で計算した上記垂直な2つのモードにおける反射率の角度スペクトルを図10に示した。図10の横軸は角度(°)であり、縦軸は反射率(%)である。横軸の角度は、入射角に対応する。図10は、波長540nmに対する角度スペクトルである。この図は、2つの偏光モードにおける光学フィルム10の反射率が、18度以下の角度(入射角)では一定であり、更に、2つの偏光モード(sモード及びpモード)をより確実に分離できていることを示している。すなわち、光学フィルム10への光の入射状態が垂直入射に近いほど、この光学フィルム10はより確実に偏光機能を有することがわかる。
【0116】
(実施例2)
所定の目標反射スペクトル50に対して、最適化アルゴリズムを用いて光学フィルム10を設計した。図11は最適化アルゴリズムを用いて、設計した構造の光学フィルムの反射率の波長依存性のスペクトルを示す。図11の縦軸及び横軸は図9の場合と同様である。図11には、図8に示したLEDの発光スペクトルを破線で示している。
【0117】
最適化した設計パラメータの値は、次のようになった。na=1.528、屈折率差Δn=0.148、t1a=28.13nm、t1b=121.84nm、t2a=94.57nm、t2b=71.40nm、t3a=143.00nm、t3b=48.36nmであった。設計において、3つのスタック301,302,303の光学材料層の数(第1の光学材料層の数と第2の光学材料層の数の和)は50とした。また、基板20及びスペーサ層S1の屈折率は、実施例1の場合と同様に、1.5とした。
【0118】
図12は図11の光学フィルム10の反射率の角度依存性のスペクトルを示す。図12は両方の偏光モードの反射率は0°から約10°までは一定であり、より確実に偏光分離できていることを示している。図12における縦軸及び横軸は図10の場合と同様である。
【0119】
(実施例3)
屈折率差Δnを0より大きく0.1以下の範囲に限定した点以外は、実施例2と同様にして最適化アルゴリズムを用いて最適化を行った。この方法で得られ最適化した構造を有する光学フィルム10の反射スペクトルを図13に示した。最適化した設計パラメータの値は次のようになった。na=1.626、屈折率差Δn=0.100、t1a=79.84nm、t1b=57.53nm、t2a=68.30nm、t2b=92.10nm、t3a=102.50nm、t3b=84.50nmであった。図13には、図11と同様に、図8に示したLEDの発光スペクトルを破線で示している。
【0120】
図13は、比較的小さなΔnであっても目標とするスペクトルに適合させることができることを示している。
【0121】
図14は図13の上記光学フィルム10の反射率の角度依存性のスペクトルを示す。図14における縦軸及び横軸は図10の場合と同様である。図14は両方の偏光モードの反射率は0°から約10°までは一定であり、より確実に偏光分離できていることを示している。
【0122】
実施例2及び実施例3において、光学フィルム10が有する光学材料層の総数(2枚のスペーサ層S1を含む)の152は、特許文献1の技術に基づいて製造され市場で入手できる光学フィルムに用いられている光学材料層の総数と比較してずっと少ない。従来品より少ない光学材料層の数しか必要としないので、本発明の光学フィルムは製造が容易であり、製造コストの低減が図れる。
【0123】
最適化した多数のスタックからなる構造の図11、図12、図13及び図14に示した光学的性質は、λ/4法を用いて設計した多数のスタックからなる構造の光学的性質(図9及び図10)とは異なっている。従って、目的又は要求される精度などに応じて、適宜λ/4法及び最適化アルゴリズムを使用する方法を使い分ければよい。ただし、図11、図12、図13及び図14を参照すれば、与えられたLEDの発光スペクトルに光学的性質が密接に適合するように多数のスタックからなる構造を設計する場合には、最適化アルゴリズムを用いる方法が、より好ましい。
【0124】
図9〜図14に示されたスペクトルに結びついた構造すべては共通の性質を有しており、それは、基本的な光学材料層の対の2つの光学材料層の屈折率の関係が次のようになっていることである。na−nb,x≦0.15、na=nb,y=nb,zである。
【0125】
しかしながら、実際の製造過程では一方向を延伸させた場合、他の方向の屈折率も変化する傾向にある。従って、na=nb,y=nb,zであることが好ましいが、na≠nb,x≠nb,y≠nb,zとなる傾向にある。そのような場合の影響を調べるために、基本的な光学材料層の対が2種の現実の材料、例えば、ポリカーボネート(PC)とPEN又はco―PENと、からなる多層構造の光学的性質を計算した。これらの材料の通常の状態でのおよその屈折率は、それぞれ1.59(PC)と1.64(PEN又はco―PEN)である。延伸により延伸方向に0.1程度の屈折率の違いが生じると仮定すれば、152の層を屈折率1.5の基板20の上に堆積させた多層構造の光学的性質を計算することが可能となる。λ/4法を用いて光学材料層の厚さを計算した。そのような多層構造の波長依存性のスペクトルを図15に示した。na≠nb,y≠nb,zである。しかしながら、図15は、偏光の程度が、ある波長においてはかなり低下しているものの、波長範囲を選べば実際上使用することができることを示している。
【0126】
以上、本発明の種々の実施形態及び実施例について説明した。しかしながら、本発明は上述した種々の実施形態及び実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態などの例では、目標反射スペクトルの一例として、反射スペクトル51が青色波長範囲、緑色波長範囲及び赤色波長範囲に反射ピーク領域51Aを有するとした。しかしながら、前述したように、反射スペクトル51は、50%以上の反射率を有するスペクトル領域51Aaであって波長幅が20〜60nmであるスペクトル領域51Aaを含む反射ピーク領域51Aを少なくとも一つ有すればよい。
【0127】
また、第1及び第2の光学材料層(第1及び第2の層)において、屈折率差が生じる所定方向は、入射光におけるs偏光成分の偏光方向に限らず、p偏光成分の偏光方向であってもよい。更に、上記所定方向は、第1及び第2の光学材料層(第1及び第2の層)の面内(例えば、厚さ方向に直交する面内)の方向あるが、例示したx方向に限定されない。
【0128】
光学フィルムが備えるスタックの数は、目標反射スペクトルにおける反射ピーク領域の数以上であればよい。従って、反射ピーク領域が1個であれば、スタックの数は1個以上である。反射ピーク領域の数以上であれば、反射ピーク領域それぞれに対して少なくともスタックを一つ割り当てられるので、光学フィルムによる反射スペクトルを目標反射スペクトルに合致したものにしやすい。なお、反射ピーク領域の数よりスタック数が多い場合は、例えば、いずれかの波長ピーク領域に応じた反射スペクトルを2個のスタックで実現すればよい。
【0129】
更に、図6に関する説明では、光学フィルム10は、面光源装置70とは別に、面光源装置70と液晶パネル61との間に配置されていた。しかしながら、光学フィルム10は、面光源装置70を構成する要素であってもよい。
【0130】
図6に示した形態では、面発光素子として導光板が例示された。しかしながら、面発光素子としては、いわゆる拡散板であってもよい。この場合、拡散板の背面側に光源部が設けられた直下型の面光源装置或いは液晶表示装置である。
【符号の説明】
【0131】
1…液晶表示装置、10…光学フィルム、30i(iは1,2,3の何れかの数)…スタック、31i(iは1,2,3の何れかの数)…基本ブロック(第1及び第2の層の基本対)、31ia(iは1,2,3の何れかの数)…第1の光学材料層(第1の層)、31ib(iは1,2,3の何れかの数)…第2の光学材料層(第2の層)、31a…光学材料層、50…目標反射スペクトル、51…反射スペクトル(第1の偏光光の反射スペクトル)、51A…反射ピーク領域、51Aa…スペクトル領域、52…反射スペクトル(第2の偏光光の反射スペクトル)、61…液晶パネル、70…面光源装置、80…導光板(面発光素子)、80b…出射面部、90…光源部、100…反射部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の屈折率が互いに異なる第1の層及び第2の層が積層された基本対を複数有する、少なくとも一つのスタックを備え、
前記スタックの個数、及び、前記少なくとも一つのスタックそれぞれにおける、前記第1の層と前記第2の層との前記所定方向の屈折率差、前記第1及び第2の層の厚さ、前記基本対の数は、前記少なくとも一つのスタック全体による反射スペクトルが目標反射スペクトルに合致するように設定されており、
前記目標反射スペクトルは、
400〜700nmの波長範囲における特定の方向に偏光した第1の偏光光の反射スペクトルにおいて、50%以上の反射率を有するすスペクトル領域であって波長幅が20〜60nmである前記スペクトル領域を含む反射ピーク領域を少なくとも一つ有し、かつ、
400〜700nmの波長範囲における第1の偏光光の偏光方向に対して直交する方向に偏光した第2の偏光光の反射スペクトルにおいて、反射率が20%以下である、
スペクトルである、
光学フィルム。
【請求項2】
前記第1の層の面内において、前記第1の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をna,xとし、
前記第2の層の面内において、前記第1の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をnb,xとしたとき、
|Δn|=|nb,x−na,x|が、0.02以上0.23以下である、
請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記第1の層の面内において、前記第2の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をna,yとし、
前記第2の層の面内において、前記第2の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をnb,yとしたとき、
|nb,y−na,y|が、0.02未満である、
請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記第1の層の厚み方向の屈折率をna,zとし、
前記第2の層の厚み方向の屈折率をnb,zとしたとき、
|nb,z−na,z|が、0.02未満である、
請求項2又は3記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記基本対の数が、25〜50である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記第1の層及び前記第2の層の厚みが、それぞれ5〜400nmである、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記スタックの数は、前記目標反射スペクトルにおける前記第1の偏光光の反射スペクトルが有する反射ピーク領域の数以上である、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記スタックの数が1〜3である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記目標反射スペクトルにおける第1の偏光光の反射スペクトルが、430〜480nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有し、510〜560nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有し、600〜660nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有する、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
光源部と、
前記光源部からの光を面状の光に変換して出射面部から出射する面発光素子と、
前記面発光素子に対して前記出射面部と反対側に配置され前記面発光素子からの光を、その光の偏光状態を変化させながら前記面発光素子側に反射する反射部と、
前記面発光素子の前記出射面部上に配置されており、前記面状の光が入射される請求項1〜9の何れか一項に記載の光学フィルムと、
を備える面光源装置。
【請求項11】
光源部と、
前記光源部からの光を面状の光に変換して出射面部から出射する面発光素子と、
前記面発光素子に対して前記出射面部と反対側に配置され前記面発光素子からの光を、その光の偏光状態を変化させながら前記面発光素子側に反射する反射部と、
前記面発光素子の前記出射面部上に配置されており、前記面状の光が入射される請求項1〜9の何れか一項に記載の光学フィルムと、
前記光学フィルムに対して前記面発光素子と反対側に配置される液晶パネルと、
を備える、液晶表示装置。
【請求項1】
所定方向の屈折率が互いに異なる第1の層及び第2の層が積層された基本対を複数有する、少なくとも一つのスタックを備え、
前記スタックの個数、及び、前記少なくとも一つのスタックそれぞれにおける、前記第1の層と前記第2の層との前記所定方向の屈折率差、前記第1及び第2の層の厚さ、前記基本対の数は、前記少なくとも一つのスタック全体による反射スペクトルが目標反射スペクトルに合致するように設定されており、
前記目標反射スペクトルは、
400〜700nmの波長範囲における特定の方向に偏光した第1の偏光光の反射スペクトルにおいて、50%以上の反射率を有するすスペクトル領域であって波長幅が20〜60nmである前記スペクトル領域を含む反射ピーク領域を少なくとも一つ有し、かつ、
400〜700nmの波長範囲における第1の偏光光の偏光方向に対して直交する方向に偏光した第2の偏光光の反射スペクトルにおいて、反射率が20%以下である、
スペクトルである、
光学フィルム。
【請求項2】
前記第1の層の面内において、前記第1の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をna,xとし、
前記第2の層の面内において、前記第1の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をnb,xとしたとき、
|Δn|=|nb,x−na,x|が、0.02以上0.23以下である、
請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記第1の層の面内において、前記第2の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をna,yとし、
前記第2の層の面内において、前記第2の偏光光の偏光方向と平行な方向の屈折率をnb,yとしたとき、
|nb,y−na,y|が、0.02未満である、
請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記第1の層の厚み方向の屈折率をna,zとし、
前記第2の層の厚み方向の屈折率をnb,zとしたとき、
|nb,z−na,z|が、0.02未満である、
請求項2又は3記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記基本対の数が、25〜50である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記第1の層及び前記第2の層の厚みが、それぞれ5〜400nmである、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記スタックの数は、前記目標反射スペクトルにおける前記第1の偏光光の反射スペクトルが有する反射ピーク領域の数以上である、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記スタックの数が1〜3である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記目標反射スペクトルにおける第1の偏光光の反射スペクトルが、430〜480nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有し、510〜560nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有し、600〜660nmの範囲に1つの反射ピーク領域を有する、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
光源部と、
前記光源部からの光を面状の光に変換して出射面部から出射する面発光素子と、
前記面発光素子に対して前記出射面部と反対側に配置され前記面発光素子からの光を、その光の偏光状態を変化させながら前記面発光素子側に反射する反射部と、
前記面発光素子の前記出射面部上に配置されており、前記面状の光が入射される請求項1〜9の何れか一項に記載の光学フィルムと、
を備える面光源装置。
【請求項11】
光源部と、
前記光源部からの光を面状の光に変換して出射面部から出射する面発光素子と、
前記面発光素子に対して前記出射面部と反対側に配置され前記面発光素子からの光を、その光の偏光状態を変化させながら前記面発光素子側に反射する反射部と、
前記面発光素子の前記出射面部上に配置されており、前記面状の光が入射される請求項1〜9の何れか一項に記載の光学フィルムと、
前記光学フィルムに対して前記面発光素子と反対側に配置される液晶パネルと、
を備える、液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−230361(P2012−230361A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−80840(P2012−80840)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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