説明

光学フィルムの打ち抜き刃型及びこれを用いた光学フィルム積層体の製造方法

【課題】光学軸の方向が異なる光学フィルムを容易に且つ精度良く作製することができる打ち抜き刃型等を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学フィルムの打ち抜き刃型は、打ち抜く光学フィルムFの寸法に応じた矩形状の打ち抜き刃1が取り付けられた円盤状の内型10と、前記内型10が該内型10の周方向に回転可能に嵌め込まれた外型20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子、保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、セパレータ(剥離フィルム)などの各種の光学フィルムを打ち抜いて作製するための打ち抜き刃型、及び、これを用いた光学フィルム積層体の製造方法に関する。特に、本発明は、光学軸の方向が異なる光学フィルムを容易に作製することができる打ち抜き刃型、及び、これを用いて光学軸の方向が異なる光学フィルムが含まれる光学フィルム積層体を容易に作製可能な光学フィルム積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置においては、偏光子に保護フィルムが貼り合わせられた偏光フィルムのみならず、使用される液晶セルの複屈折性に起因した視認性の欠点を改善するため、位相差フィルムや輝度向上フィルムなどの光学補償フィルムが用いられている。これら偏光フィルムや光学補償フィルムが積層された矩形状の光学フィルム積層体が、液晶表示装置の一部を構成している場合が多い。なお、上記の光学フィルム積層体は、液晶セルに取り付けられる前の状態において、セパレータ(剥離フィルム)が積層されることが多い。
【0003】
上記の光学フィルム積層体のうち、いくつかの光学フィルム(例えば、偏光子、保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム)については、いわゆる光学軸が存在する。そして、光学フィルム積層体における各光学フィルムの光学軸の関係は、光学フィルム積層体の光学特性に非常に大きな影響を及ぼす。例えば、偏光フィルムを挟んで2枚の位相差フィルムを積層した光学フィルム積層体の場合、偏光フィルムの光学軸(吸収軸)と、2枚の位相差フィルムの各光学軸(遅相軸)とは、矩形状の光学フィルム積層体の一辺に対して、それぞれ所定の異なる角度を成すように積層されなければならない。
【0004】
光学フィルム積層体を作製する方法としては、(1)長尺の各光学フィルムから、最終製品となる光学フィルム積層体の形状に応じた矩形状の光学フィルムをそれぞれ打ち抜いた後、この打ち抜いた矩形状の各光学フィルムを積層する方法と、(2)長尺の各光学フィルムを積層した後、この積層体から、最終製品となる矩形状の光学フィルム積層体を打ち抜く方法とが知られている。なお、上記(2)の方法で、光学軸の方向が異なる光学フィルムが積層された光学フィルム積層体を作製するときには、長尺の各光学フィルムをぴったりと積層せずに、互いに斜めにずらした状態で積層した後、この積層体から、最終製品となる矩形状の光学フィルム積層体を打ち抜くことになる。ただし、光学軸の方向が異なる光学フィルムが積層された光学フィルム積層体を大量生産する上では、上記(1)の方法で作製することが効率的であるために好ましい。
【0005】
従来、光学フィルムを打ち抜くために(上記(2)の方法で光学フィルム積層体を打ち抜く場合も含む)、図3に示すような打ち抜き刃型が用いられている。図3(a)に示すように、従来の打ち抜き刃型100Aは、打ち抜く光学フィルムの寸法に応じた矩形状(図3(a)に示す例では長方形)の打ち抜き刃1を備えている。この打ち抜き刃1は、図3(b)に示すように、長尺の光学フィルムF’の光学軸F1に対して所定の角度を成す方向に設けられている。図3(b)に示す例では、打ち抜き刃1の長辺1Lが光学軸F1に対して角度θを成している。この打ち抜き刃型100Aは、トムソンプレス機やダイセットプレス機などのプレス加工機に取り付けられ(図3(b)に示す例では、長尺の光学フィルムF’の下方に取り付けられている)、長尺の光学フィルムF’を挟んで対向するベース(図示せず)に対して相対的に上下動して、図3(c)に示すように、光学フィルムFを打ち抜く。打ち抜かれた光学フィルムFは、その長辺FLに対して光学軸F1が角度θを成している。
【0006】
ここで、光学軸F1の方向が異なる(長辺FLに対して光学軸F1の成す角度θが異なる)光学フィルムFを打ち抜くには、光学軸F1に対する打ち抜き刃1の方向が異なる(打ち抜き刃1の長辺1Lが光学軸F1に対して成す角度θが異なる)打ち抜き刃型100Aを複数用意し、打ち抜く光学フィルムFの光学軸F1の方向に応じて、打ち抜き刃型100Aを付け替える必要がある。
【0007】
しかしながら、必要とされる光学フィルムFの光学軸F1の方向は多様であるため、全ての光学軸F1の方向に対応する多数の打ち抜き刃型100Aを予め用意するのは実質的に困難である。このため、特定の方向の光学軸F1を有する光学フィルムFが必要となる毎に、この光学軸F1の方向に対応する打ち抜き刃型100Aが用意されていなければ、これを新たに作製する必要が生じ、光学フィルムFの生産性の低下を招くという問題がある。
【0008】
また、光学軸F1の方向が異なる光学フィルムFを打ち抜くために、打ち抜き刃型100Aが回転する機能を有する専用設備を作製して、これを用いることも考えられる。
しかしながら、このような専用設備を作製するには費用が嵩む上、メンテナンス性が悪くなることも懸念される。
【0009】
一方、長尺の光学フィルム(偏光原板)から光学フィルム(偏光板)を切り出す切断装置として、例えば、特許文献1に記載の切断装置が提案されている。
特許文献1に記載の切断装置は、直線状のカッターブレードが偏光原板の送り方向に対して角度調整可能とされており、これにより偏光原板をその光学軸(吸収軸)に対して任意の角度に切断可能である(特許文献1の特許請求の範囲、第4図等)。
そして、特許文献1に記載の切断装置で吸収軸がθの角度を有する矩形状(W×l)の偏光板を切り出すには、まず偏光原板の吸収軸に対してθの角度となるようにカッタブレードの角度を調整し、偏光原板に幅Wの切込みを入れる。次に、カッタブレードの角度を前記切込みに直交する角度に調整した後、前記切込みを入れた偏光原板に幅lの切込みを入れる。これにより、吸収軸がθの角度を有するW×lの矩形状の偏光板が得られる(特許文献1の第2頁右下欄第2行〜第3頁左欄第4行、第5図、第6図)。
【0010】
特許文献1に記載の切断装置で矩形状の光学フィルム(偏光板)を切り出すには、上記のように、カッタブレードの角度を変えた(カッタブレードの角度をθ及びこれに直交する角度に変えた)切断装置に長尺の光学フィルム(偏光原板)を2回供給しなければならず、光学フィルムの生産効率が良くないという問題がある。
また、特許文献1に記載の切断装置を用いて、光学軸の方向が異なる(角度θが異なる)光学フィルムが積層された光学フィルム積層体を作製するには、積層される各光学フィルムを長尺の光学フィルムから切り出す毎にカッタブレードの角度θを変えると共に、積層される各光学フィルムの寸法(W×l)を一致させる必要がある。各光学フィルムの光学軸の角度θが異なるのに(カッタブレードの角度θが異なるのに)その寸法(W×l)を一致させるには、各光学フィルムの光学軸の角度θに応じて長尺の光学フィルムの送りピッチを極めて精度良く変更する制御が必要である。特許文献1に記載のように、送りローラとプレッシャローラとによって長尺の光学フィルムの送りピッチを極めて精度良く変更することは困難である。換言すれば、特許文献1に記載の装置を用いて光学軸の角度θが異なる各光学フィルムを切り出すことができるとしても、この各光学フィルムの寸法(W×l)を精度良く一致させることは困難である。従って、各光学フィルムを積層する際に各光学フィルム間で位置ズレが生じ、光学フィルム積層体における各光学フィルムの光学軸の軸精度(光学軸の設定角度と実際の角度とのズレ)が劣化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−8297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、光学軸の方向が異なる光学フィルムを容易に且つ精度良く作製することができる打ち抜き刃型、及び、これを用いて光学軸の方向が異なる光学フィルムが含まれる光学フィルム積層体を容易に且つ精度良く作製可能な光学フィルム積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、打ち抜く光学フィルムの寸法に応じた矩形状の打ち抜き刃が取り付けられた円盤状の内型と、前記内型が該内型の周方向に回転可能に嵌め込まれた外型と、を備えることを特徴とする光学フィルムの打ち抜き刃型を提供する。
【0014】
本発明に係る打ち抜き刃型は、打ち抜き刃が取り付けられた円盤状の内型と、その内型が該内型の周方向に回転可能に嵌め込まれた外型とを備える。このため、例えば、この外型の形状・寸法をトムソンプレス機やダイセットプレス機などのプレス加工機に取り付けられる従来の打ち抜き刃型の形状・寸法に合致させれば、従来と同様に、本発明に係る打ち抜き刃型を一般的なプレス加工機に取り付けて使用することが可能である。換言すれば、光学軸の方向が異なる(光学フィルムの一辺に対して光学軸の成す角度が異なる)光学フィルムを作製するために、打ち抜き刃型全体が回転する機能を有する専用設備を用意する必要がない。
また、本発明に係る打ち抜き刃型が備える打ち抜き刃は、打ち抜く光学フィルムの寸法に応じた矩形状であるため、長尺の光学フィルムに対して1回の打ち抜き動作を行うだけで矩形状の光学フィルムを寸法精度良く作製することができる。そして、本発明に係る打ち抜き刃型の内型をその周方向に回転させることにより、内型に取り付けられた打ち抜き刃も回転するため、光学軸の方向に対応する多数の打ち抜き刃型を用意する必要がなく、単一の打ち抜き刃型を用いて、光学軸の方向が異なる光学フィルムを軸精度良く作製することができる。
以上のように、本発明に係る打ち抜き刃型によれば、光学軸の方向が異なる光学フィルムを容易に且つ精度良く作製可能である。
【0015】
本発明に係る打ち抜き刃型は、前記内型を前記外型に対して所定の回転位置で固定するための留め具を備えることが好ましい。
【0016】
斯かる好ましい構成によれば、留め具によって、内型を外型に対して所定の回転位置(打ち抜く光学フィルムの光学軸の方向に対応する回転位置)で固定できるため、打ち抜き動作の際に、内型の回転位置(打ち抜き刃の回転位置)がズレるおそれがなく、光学フィルムを確実に精度良く作製可能である。
【0017】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記打ち抜き刃型を用いて、複数枚の光学フィルムを打ち抜く工程と、前記打ち抜かれた複数枚の光学フィルムを積層する工程と、を含むことを特徴とする光学フィルム積層体の製造方法としても提供される。
本発明に係る光学フィルム積層体の製造方法は、必ずしもこれに限るものではないが、複数枚の光学フィルムに光学軸の方向が異なる光学フィルムが含まれる場合に特に有効である。
【0018】
本発明によれば、前記打ち抜き刃型を用いて、複数枚の光学フィルムを打ち抜くことにより、前述のように、各光学フィルムを寸法精度良く且つ光学軸の軸精度良く作製することができる。従って、各光学フィルムを積層する際に各光学フィルム間で位置ズレが生じ難いため、光学フィルム積層体における各光学フィルムの光学軸の軸精度を維持することが可能である。
なお、本発明における「光学軸の方向が異なる光学フィルムが含まれる」とは、複数枚の光学フィルムの光学軸の方向が全て異なる場合に限らず、少なくとも一枚の光学フィルムの光学軸の方向が他の光学フィルムの光学軸の方向と異なることを意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る打ち抜き刃型によれば、光学軸の方向が異なる光学フィルムを容易に且つ精度良く作製可能である。また、本発明に係る光学フィルム積層体の製造方法によれば、光学軸の方向が異なる光学フィルムが含まれる光学フィルム積層体を容易に且つ精度良く作製可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る打ち抜き刃型を用いた光学フィルムの打ち抜き動作を説明する説明図である。図1(a)は、打ち抜き刃型の概略構成を示す平面図である。図1(b)は、図1(a)に示す破線の円で囲んだ部位の拡大図である。図1(c)は、図1(a)に示す打ち抜き刃型を用いて光学フィルムを打ち抜いている状態を示す平面図である。図1(d)は、図1(a)に示す打ち抜き刃型によって打ち抜かれた光学フィルムを示す平面図である。
【図2】図2は、図1(a)に示すX−X断面拡大図である。
【図3】図3は、従来の打ち抜き刃型を用いた光学フィルムの打ち抜き動作を説明する説明図である。図3(a)は、従来の打ち抜き刃型の概略構成を示す平面図である。図3(b)は、図3(a)に示す打ち抜き刃型を用いて光学フィルムを打ち抜いている状態を示す平面図である。図3(c)は、図3(a)に示す打ち抜き刃型によって打ち抜かれた光学フィルムを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る打ち抜き刃型を用いた光学フィルムの打ち抜き動作を説明する説明図である。図1(a)に示すように、本実施形態に係る打ち抜き刃型100は、打ち抜く光学フィルムの寸法に応じた矩形状(図1(a)に示す例では長方形)の打ち抜き刃1が取り付けられた円盤状の内型10と、内型10が該内型10の周方向(図1(a)に示す矢符Aの方向)に回転可能に嵌め込まれた外型20とを備えている。図1(a)に示す例では、内型10に対して、打ち抜き刃1が上方(図1(a)の紙面に垂直な方向の手前側)に突出している。
【0022】
また、本実施形態に係る打ち抜き刃型100は、内型10を外型20に対して所定の回転位置で固定するための留め具22を備えている。図1(a)に示す例では、内型10の周方向に約90°ピッチで上下にそれぞれ4つずつ計8つの留め具22が備えられている。
【0023】
さらに、本実施形態では、内型10の外縁に周方向に所定のピッチ(例えば1°ピッチ)で複数の切り込み11が設けられている。同様に、内型10が嵌め込まれる外型20の内縁にも周方向に所定のピッチ(例えば1°ピッチ)で複数の切り込み21が設けられている。
なお、図1(b)に示すように、外型20に設けられた所定の切り込み21の近傍には、この切り込み21が内型10の回転に対する基準位置となることを示す基準位置表示部23が設けられている。また、内型10に設けられた切り込み11の近傍には、所定のピッチ(例えば10°ピッチ)で内型10の回転位置(回転角度)を示す回転角度表示部12が設けられている。これら基準位置表示部23及び回転角度表示部12が設けられることにより、基準位置からどれだけ内型10が回転しているのかを目視で容易に読み取ることができる。図1(b)に示す例では、内型10が45°回転している(図1(c)に示すθ=45°である)ことを読み取り可能である。
【0024】
図2は、図1(a)に示すX−X断面拡大図である。図2に示すように、上側の留め具22も下側の留め具22も、それらの一端側がビス221により外型20にビス留めされている。本実施形態では、後述するように、打ち抜き刃型100が長尺の光学フィルムF’の下方に取り付けられる(従って、打ち抜き刃型100の下面がプレス加工機に取り付けられる)。このため、下側の留め具22や下側のビス221は、内型10及び外型20の下面に形成された凹部内に埋め込む形態とされ、下側の留め具22や下側のビス221が打ち抜き刃型100の下面から突出しないようにしている。一方、上側の留め具22や上側のビス221は、それらの厚みが内型10に取り付けられた打ち抜き刃1の上方への突出長さよりも小さいため、凹部内に埋め込む形態とはされていない。
【0025】
内型10を外型20に対して所定の回転位置に設定し固定するには、まず上側のビス221を緩める。これにより、上側の留め具22と下側の留め具22とで内型10及び外型20を挟み込む力が弱まり、内型10は外型20に対して回転可能となる。このように、上側のビス221を緩めた状態で、内型10を外型20に対して回転させる。そして、所定の回転位置において、上側のビス221を締め込むことにより、上側の留め具22と下側の留め具22とで、内型10及び外型20を挟み込む。以上の動作により、内型10は外型20に対して所定の回転位置で固定される。
【0026】
以下、上記の構成を有する打ち抜き刃型100を用いて光学フィルムを打ち抜く動作について説明する。
打ち抜き刃型100を用いて光学フィルムを打ち抜くにあたっては、まず最初に、前述のように、外型20に対して所定の回転位置(打ち抜く光学フィルムの光学軸の方向に対応する回転位置)となるまで内型10を回転させた後、留め具22を用いて内型10を外型20に対して固定する。これにより、内型10に取り付けられた打ち抜き刃1は、所定の回転位置に固定される。
【0027】
上記のようにして内型10を外型20に対して固定した打ち抜き刃型100は、従来の打ち抜き刃型と同様に、トムソンプレス機やダイセットプレス機などのプレス加工機に取り付けられる。図1(c)に示す例では、打ち抜き刃型100は、長尺の光学フィルムF’の下方に取り付けられている。このプレス加工機に、長尺の光学フィルムが供給される。図1(c)に示すように、プレス加工機(図示せず)に取り付けられた打ち抜き刃型100が備える打ち抜き刃1は、矢符Bの方向に供給される長尺の光学フィルムF’の光学軸F1に対して、所定の角度を成す(図1(c)に示す例では、打ち抜き刃1の長辺1Lが光学軸F1に対して角度θを成す)方向に位置決めされている。打ち抜き刃型100は、長尺の光学フィルムF’を挟んで対向するベース(図示せず)に対して相対的に上下動して、図1(d)に示すように、光学フィルムFを打ち抜く。打ち抜かれた光学フィルムFは、その長辺FLに対して光学軸F1が角度θを成している。
【0028】
光学軸F1の方向が異なる(長辺FLに対して光学軸F1が成す角度θが異なる)光学フィルムFを打ち抜く場合には、打ち抜き刃型100をプレス加工機から取り外し、留め具22を緩めた後、新たな角度θに対応する回転位置となるまで、外型20に対して内型10を回転させる。その後、留め具22を用いて内型10を外型20に対して固定し、この打ち抜き刃型100を再びプレス加工機に取り付ければよい。
【0029】
以上に説明した本実施形態に係る打ち抜き刃型100によれば、光学軸F1の方向が異なる(長辺FLに対する光学軸F1の方向が異なる)光学フィルムFを容易に且つ精度良く作製可能である。
【0030】
なお、本実施形態に係る打ち抜き刃型100を用いて光学フィルム積層体を作製するには、打ち抜き刃型100を用いて複数枚の光学フィルムFを打ち抜く工程と、打ち抜かれた複数枚の光学フィルムFを積層する工程とを実施すればよい。複数枚の光学フィルムFを積層する工程については、公知の積層方法を適用可能であるため、ここでは説明を省略する。
【0031】
本実施形態に係る打ち抜き刃型100を用いて、複数枚の光学フィルムFを打ち抜くことにより、各光学フィルムFを寸法精度良く且つ光学軸F1の軸精度(光学軸F1の設定角度と実際の角度とのズレ)良く作製することができる。従って、各光学フィルムFを積層する際に各光学フィルムF間で位置ズレが生じ難いため、光学フィルム積層体における各光学フィルムFの光学軸の軸精度を維持することが可能である。
【0032】
以上に説明した打ち抜き刃型100を用いて打ち抜いた光学フィルムFにおける光学軸F1の実際の角度(光学フィルムFの長辺FLに対して光学軸F1が成す角度θ)を専用の光学軸測定機によって測定し、軸精度を評価したところ、±0.5°以内の軸精度が得られることが確認できた。これは、図2を参照して説明した従来の打ち抜き刃型100Aを用いて打ち抜いた光学フィルムFの光学軸F1の軸精度と同等である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・打ち抜き刃
10・・・内型
11・・・切り込み
12・・・回転角度表示部
20・・・外型
21・・・切り込み
22・・・留め具
23・・・基準位置表示部
100・・・打ち抜き刃型
F・・・光学フィルム
F’・・・長尺の光学フィルム
F1・・・光学軸
θ・・・光学軸の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち抜く光学フィルムの寸法に応じた矩形状の打ち抜き刃が取り付けられた円盤状の内型と、
前記内型が該内型の周方向に回転可能に嵌め込まれた外型と、
を備えることを特徴とする光学フィルムの打ち抜き刃型。
【請求項2】
前記内型を前記外型に対して所定の回転位置で固定するための留め具を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの打ち抜き刃型。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の打ち抜き刃型を用いて、複数枚の光学フィルムを打ち抜く工程と、
前記打ち抜かれた複数枚の光学フィルムを積層する工程と、
を含むことを特徴とする光学フィルム積層体の製造方法。
【請求項4】
前記複数枚の光学フィルムに、光学軸の方向が異なる光学フィルムが含まれることを特徴とする請求項3に記載の光学フィルム積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−157933(P2012−157933A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19411(P2011−19411)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】