説明

光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板および液晶表示装置

【課題】タッチロールからの熱可塑性樹脂フィルムの剥離性を向上させ、横段ムラの無い光学フィルムの製造方法及び該製造方法で製造した光学フィルムを提供することである。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延ダイから回転支持体の表面にフィルム状に押し出す流延工程と、流延工程で押し出されたフィルム状の溶融物を、回転支持体と挟圧回転体との挟圧部で挟圧する挟圧工程とを備えた光学フィルムの製造方法において、挟圧部の挟圧回転体の回転方向下流側から、挟圧部側に冷却風を当てることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース樹脂などの熱可塑性樹脂を含む光学フィルムを溶融流延成膜法で製造するための光学フィルムの製造方法、該製造方法で製造した光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、従来のCRT表示装置に比べて、省スペース、省エネルギーであることからモニターとして広く使用されている。さらにTV用としても普及が進んできている。このような液晶表示装置には、偏光板用の保護フィルムや位相差フィルムなどの種々の光学フィルムが使用されている。
【0003】
偏光板用の保護フィルムは、延伸ポリビニルアルコールなどからなる偏光フィルムに貼り付けて偏光フィルムを保護するためのフィルムであり、セルロース樹脂などの熱可塑性樹脂を含むフィルムが用いられている。また、位相差フィルムは、視野角の拡大やコントラストの向上などの目的で用いられるものであり、セルロース樹脂などの熱可塑性樹脂を含むフィルムを延伸するなどしてリタデーションが付与されたものである。光学補償フィルム呼ばれることもある。
【0004】
このような光学フィルムの製造方法には、大別して、溶融流延成膜法と溶液流延成膜法とがある。前者は、ポリマーを加熱溶融して支持体上に流延し、冷却固化し、さらに必要に応じて延伸等を行ってフィルムにする方法であり、後者は、ポリマーを溶媒に溶かして、その溶液を支持体上に流延し、溶媒を蒸発し、さらに必要に応じて延伸等を行ってフィルムにする方法である。
【0005】
従来、膜厚の均一化が容易なこと等の理由により溶液流延成膜法による製造が主流であった。しかし、溶液流延成膜法は、溶剤を大量に使用するため環境負荷が大きいこと、溶剤の回収のため巨大な生産設備が必要となること等の問題があることから、これらの問題の無い溶融流延成膜法による光学フィルムの製造が注目されるようになった。
【0006】
一方、これらの光学フィルムでは、光学的な性能、特にリタデーションが均一であることが要求される。特に、モニターやTVの大型化や軽量化が進み、リタデーションの均一性がますます厳しく要求されると共に、光学フィルムの広幅化、薄膜化、表面平滑性も強く要求されるようになってきた。
【0007】
溶融流延成膜法による光学フィルムの製造は、セルロース樹脂などの熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延ダイから回転支持体(以降、キャストロールとも呼ぶ。)の表面にフィルム状に押し出し、押し出されたフィルム状の溶融物(以降、フィルムとも呼ぶ。)を回転支持体と挟圧回転体(以降、タッチロールとも呼ぶ。)とによって挟圧することによってフィルムを得るのが一般的である。タッチロールの表面は、表面平滑性を得るために、鏡面加工が施されている。
【0008】
この挟圧を行う際、フィルムにかかる圧力が樹脂の配向状態に影響を与え、得られるフィルムのリタデーションが変化するため、リタデーションの均一性が高い光学フィルム、即ち残留位相差の小さい光学フィルムを得るためには、十分に均一な圧力で挟圧を行うことが重要になる。
【0009】
しかし、光学フィルムの広幅化に伴い、流延ダイの幅も広くなることで、押し出されたフィルム状の溶融物をキャストロールとタッチロールとによって均一な圧力で挟圧することが困難となっている。
【0010】
このような問題点に対処する方法として、タッチロールに外周に金属円筒を有する弾性ロール(以下、弾性金属ロールと呼ぶ。)を用いて、挟圧するときの圧力を均一にする方法や、また、特許文献1においては、流延ダイからキャストロールに流下される溶融物の温度を従来より高く設定することで、キャストロールとタッチロールとの挟圧力が多少不均一であっても、残留位相差を少なくする方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−172940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、キャストロール上に押し出された熱可塑性樹脂を含む溶融物に、表面が鏡面加工されたタッチロールを接触加圧すると、タッチロールからのフィルムの剥離不良が発生しやすく、フィルム幅方向に筋状のムラ(横段ムラ)が生じることがあった。さらに、タッチロールに弾性金属ロールを用いたり、特許文献1のように溶融物の温度を高く設定すると、よりタッチロールへの付着力が大きくなり、剥離不良を起こし、横段ムラが発生するという問題があった。
【0012】
従って、本発明の目的は、タッチロールからの熱可塑性樹脂フィルムの剥離性を向上させ、横段ムラの発生しない光学フィルムの製造方法及び該製造方法で製造した光学フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.
熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延ダイから回転支持体の表面にフィルム状に押し出す流延工程と、
前記流延工程で押し出されたフィルム状の溶融物を、前記回転支持体と挟圧回転体との挟圧部で挟圧する挟圧工程とを備えた光学フィルムの製造方法において、
前記挟圧部の前記挟圧回転体の回転方向下流側から、前記挟圧回転体と前記フィルム状の溶融物とが剥離する位置に、冷却風を当てることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0014】
2.
前記冷却風の温度が、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対して、Tg−100〜Tg+20℃であることを特徴とする前記1に記載の光学フィルムの製造方法。
【0015】
3.
前記挟圧回転体と前記フィルム状の溶融物とが剥離する位置から、前記挟圧回転体の下流側に10mm離れ、且つ、前記挟圧回転体の表面からの距離と前記回転支持体の表面から距離とが等しい位置で、前記冷却風の風速が1.0〜20.0m/secであることを特徴とする前記1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
【0016】
4.
前記挟圧回転体が、外周に金属円筒を有する弾性ロールであることを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0017】
5.
前記冷却風の温度が、50〜150℃であることを特徴とする前記1乃至4の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0018】
6.
前記熱可塑性樹脂がセルロースエステル系樹脂であることを特徴とする前記1乃至5の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0019】
7.
前記熱可塑性樹脂がセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする前記6に記載の光学フィルムの製造方法。
【0020】
8.
前記1乃至7の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
【0021】
9.
前記8記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする偏光版。
【0022】
10.
前記9記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、挟圧回転体とフィルムとの離れ際に、冷却風を当てているので、フィルム表面の温度が低下して、挟圧回転体とフィルムとの剥離性が向上する。よって、剥離不良の発生が無く、横段ムラの無い光学フィルムの製造方法、該製造方法で製造した光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
本発明の光学フィルムの製造方法においては、熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延ダイから回転支持体(キャストロール)の表面にフィルム状に押し出す流延工程と、流延工程で押し出されたフィルム状の溶融物を、回転支持体と挟圧回転体(タッチロール)との挟圧部で挟圧する挟圧工程とを備えた光学フィルムの製造方法において、挟圧部の挟圧回転体の回転方向下流側から、前記挟圧回転体と前記フィルム状の溶融物とが剥離する位置に、冷却風を当てることを特徴とする光学フィルムの製造方法である。
【0026】
図1に本発明の光学フィルムの製造方法を用いた一実施形態の製造装置の流延工程と挟圧工程の概略図を示す。流延工程としては、流延ダイ4から熱可塑性樹脂を含む溶融物Yをキャストロール5上のP1の位置に押しだす。流延ダイ4からキャストロール5上に押し出された溶融物Yは、挟圧工程として挟圧部P2の位置でタッチロール6により挟圧される。タッチロール6とフィルム状の溶融物Yとが剥離する位置P3には、タッチロール6回転方向下流側の送風ノズル100から冷却風が当てられている。その後、挟圧された溶融物Yはフィルム状となってキャストロール5上を搬送され、P4の位置で剥離され、次の工程に移る。
【0027】
送風ノズル100からの冷却風は、フィルム幅方向に渡って均一な風温と風量が当てられるようになっている。
【0028】
このようにタッチロール6とフィルム状の溶融物Yとが剥離する位置P3に、タッチロール6の回転方向下流側から冷却風を当てることにより、フィルムとタッチロール6との剥離部におけるフィルム温度を下げることで、フィルムとタッチロール6との剥離性を良くし、剥離不良に起因する横段ムラを防止することができる。
【0029】
特に、フィルム表面の平滑性を上げるためにタッチロール6の表面を鏡面加工した場合や、フィルムへの圧力を均一にするためにタッチロール6に弾性金属ロールを用いた場合や、また、挟圧工程における押圧ムラを無くし、残留位相差を低減するためにフィルム温度を高温にして挟圧する場合などには、タッチロールとフィルムとの剥離不良が発生しやすいが、本発明により、効果的に剥離不良を無くし、横段ムラの発生を抑止すことができる。
【0030】
図2に、本発明に係る冷却風を、タッチロール6とフィルム状の溶融物Yとが剥離する位置P3に、タッチロール6の回転方向下流側から当てている状態での、送風ノズルと各ローラとの位置関係を説明するための拡大図を示す。
【0031】
本発明に係る冷却風は、タッチロール6とフィルム状の溶融物とが剥離する位置P3から、鉛直方向に100mm下方の点Sに送風ノズル100を配置し、送風ノズル100の出口における風速はフィルムを冷却する能力の観点から1.0m/sec以上が好ましく、また膜面の乱れに伴う厚みムラを抑えるためには20m/sec以下であることが好ましい。さらに好ましくは、風速2.0〜10.0m/secの範囲である。また風温は急冷によるフィルムの不均一な収縮を抑制するためにTg−100℃以上であることが好ましいが、Tg+20℃以上になってしまうと十分な冷却効果が得られないため、Tg−100〜Tg+20℃の範囲が好ましく、Tg−80〜Tgの範囲がさらに好ましい。また、上記風速及び温度は、送風ノズル100出口の位置での値としたが、送風ノズル100が、タッチロール6とフィルム状の溶融物とが剥離する位置P3からさらに離れた位置であっても、上記のように10mm離れ、且つ、タッチロール6の表面からの距離とキャストロール5の表面から距離とが等しい位置Sで測定される風速、温度が上記範囲内であれば良い。
【0032】
また、P3とSの間の距離は50〜150mmが好ましい。この距離にすることでロールと干渉しないだけのスペースが確保でき、且つ風力が適度に保てるので、風当てがより効果的に行える。
【0033】
このように本発明の光学フィルムの製造方法を用いることにより、タッチロールとフィルムとの剥離不良がなくなり、フィルム表面に横段ムラ(フィルム幅方向の筋状のムラで表面に凹凸が発生し視認できるムラである。)の無い光学フィルムを得ることができる。
【0034】
特に、タッチロールの表面を鏡面にした場合や、流延ダイから押し出される溶融物の温度を上げた場合などには、タッチロールとフィルムとの粘着性が高くなり、剥離不良が発生しやすくなるが、本発明の製造方法により、効果的にタッチロールとフィルムとの剥離不良を改善し、フィルム表面の横段ムラのない光学フィルムを得ることができる。
【0035】
以下、本発明による光学フィルムの製造方法について、詳しく説明する。
【0036】
本発明における光学フィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂フィルムの製膜方法としては、溶融樹脂を流延して製膜する溶融流延製膜法を用いて製膜する。
【0037】
本発明による光学フィルムの主材料は、製造が容易であること、偏光膜との接着性がよいこと、光学的に透明であることなどが好ましい要件として挙げられる。
【0038】
上記の性質を有する熱可塑性樹脂フィルムであれば、特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン系ポリマーフィルム、ゼオネックス(商品名、日本ゼオン社製)、ゼオノア(商品名、日本ゼオン社製)、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはガラス板等を挙げることができる。中でも、セルロースエステル系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系フィルムが好ましく、本発明においては、特に、セルロースエステル系樹脂フィルム、または環状オレフィン系付加重合体を80%以上含有する樹脂フィルムであるのが、製造上、コスト面、透明性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
【0039】
本発明の光学フィルムを構成する材料は、これらの樹脂、必要により安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑り剤としてのマット剤、リタデーション制御剤が含まれる。これらの材料は、目的とする光学フィルムの要求特性により適宜選択される。
【0040】
本発明の光学フィルムの材料としてセルロース樹脂を用いる場合、そのセルロース樹脂は、セルロースエステルの構造を有し、脂肪酸アシル基、置換もしくは無置換の芳香族アシル基の中から少なくともいずれかの構造を含む、セルロースの単独または混合酸エステル(以下、単に「セルロース樹脂」という)であり、非晶性のものである。「非晶性」とは、不規則な分子配置で結晶とはならずに固体となっている物質を意味しており、原料時の結晶状態を表わしたものである。
【0041】
以下、本発明の使用に有用なセルロース樹脂について例示するがこれらに限定されるものではない。
【0042】
セルロース樹脂が芳香族アシル基を含む場合、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基の例としてハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基及びアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)、−SiH−R、−SiH(−R)、−Si(−R)、−O−SiH−R、−O−SiH(−R)及び−O−Si(−R)が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基である。
【0043】
置換基の数は、1個〜5個、好ましくは1個〜4個、より好ましくは1個〜3個、さらにより好ましくは1個または2個である。さらに、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
【0044】
置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基及びウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基及びカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基が最も好ましい。
【0045】
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。
【0046】
上記アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル及び2−エチルヘキシルが含まれる。
【0047】
上記アルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ及びオクチルオキシが含まれる。
【0048】
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例には、フェニル及びナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
【0049】
上記アリールオキシ基の例には、フェノキシ及びナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
【0050】
上記アシル基の例には、ホルミル、アセチル及びベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
【0051】
上記カルボンアミド基の例には、アセトアミド及びベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
【0052】
上記スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド及びp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
【0053】
上記ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
【0054】
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル及びナフチルメチルが含まれる。
【0055】
上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルが含まれる。
【0056】
上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニルが含まれる。
【0057】
上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。
【0058】
上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイル及びN−メチルカルバモイルが含まれる。
【0059】
上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイル及びN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。
【0060】
上記アシルオキシ基の例には、アセトキシ及びベンゾイルオキシが含まれる。
【0061】
上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル及びイソプロペニルが含まれる。
【0062】
上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例には、チエニルが含まれる。
【0063】
上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
【0064】
上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
【0065】
上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
【0066】
上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
【0067】
上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。
【0068】
上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
【0069】
本発明で使用するセルロース樹脂において、セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
【0070】
本発明において前記脂肪族アシル基とはさらに置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては上述の芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
【0071】
光学フィルムとして位相差フィルムを製造する場合は、セルロース樹脂としてセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0072】
これらの中で特に好ましいセルロース樹脂は、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0073】
混合脂肪酸エステルであるセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすものが好ましい。置換度とは、アシル基に置換された水酸基の数をグルコース単位で示した数値と定義する。
【0074】
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。
【0075】
本発明で用いられるセルロース樹脂の原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロース樹脂は適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。
【0076】
本発明で用いられるセルロース樹脂はフィルムにしたときの輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の光源側の偏光板の透過軸に偏光板保護フィルムの遅相軸が平行に位置するとき他方の偏光板の外側の面に垂直な位置で観察したとき光が漏れてくる原因となる異物を意味する。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロース樹脂に含まれる水酸基のエステル化部分が未反応であることがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロース樹脂を用いることと、加熱溶融したセルロース樹脂を濾過することによって異物を除去し、輝点異物を低減することができる。また、フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロース樹脂の含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向がある。
【0077】
輝点の個数としては、面積250mm当たり、偏光クロスニコル状態で認識される大きさが5〜50μmの輝点が、フィルムを観察時のとして300個以下、50μm以上の輝点が0個であることが好ましい。さらに好ましくは、5〜50μmの輝点が200個以下である。
【0078】
輝点が多いと、液晶ディスプレイの画像に重大な悪影響を及ぼす。位相差フィルムを偏光板保護フィルムとして機能させた場合、この輝点の存在は複屈折の乱れの要因であり、画像に及ぼす悪影響は大きなものとなる。
【0079】
輝点異物を溶融濾過によって除去する場合、輝点異物の除去工程を含め、連続して溶融流延の製膜工程を実施できる。
【0080】
熱溶融による輝点異物の濾過工程を含む溶融流延製膜法は、後述の可塑剤とセルロース樹脂を組成物とした場合、可塑剤が添加しない系と比較して、熱溶融温度を低下させる観点から、そして輝点異物の除去効率の向上と熱分解の回避の観点から好ましい方法である。また、後述する他の添加剤として紫外線吸収剤、やマット材も適宜混合したものを同様に濾過することもできる。
【0081】
濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下のものが用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することもできる。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることができるが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましい。
【0082】
別の実施態様では、加熱してフィルム構成材料を溶融する前に、該構成材料の少なくともセルロース樹脂においては、該材料の合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくともいずれかにおいて、一度、溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することもできる。このとき、好ましくはセルロース樹脂に安定化剤が存在することが好ましく、また後述する可塑剤、あるいはその他の添加剤として紫外線吸収剤、マット剤等と共に溶媒に溶解させた後、溶媒を除去し乾燥することによってセルロース樹脂を主体としたフィルム構成材料の固形分を得るようにしてもよい。
【0083】
また、上記溶液状態とするために該構成材料の溶媒への溶解の過程で−20℃以下に冷却した工程を介することもできる。セルロース樹脂への安定化剤、可塑剤、その他添加剤のいずれか一種以上の添加を行うときは、用いるセルロース樹脂の合成(調製)工程過程において、特に限定はないが該樹脂の合成(調製)工程後期までに少なくとも一度溶液状態で輝点異物や不溶物を濾別するために濾過を行い、その後他の添加剤の添加を行い、溶媒の除去または酸析によって固形分を分離して乾燥してもよく、ペレット化するときに粉体混合したフィルム構成材料を得てもよい。
【0084】
フィルム構成材料のセルロース樹脂以外の構成材料を該樹脂と均一に混合することは、加熱時の溶融性において均一な溶融性を与えることに寄与できる。
【0085】
セルロース樹脂以外の高分子材料やオリゴマーを、適宜選択してセルロース樹脂と混合してもよい。このような高分子材料やオリゴマーはセルロース樹脂と相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの全可視域(400nm〜800nm)に渡り透過率が80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上が得られるようにする。セルロース樹脂以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。この高分子材料やオリゴマーは、その他添加剤としての概念として捉えてもよい。
【0086】
可塑剤としては、特に限定しないが、好ましく用いられる可塑剤としては、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を使用するのが好ましい。
【0087】
上記の可塑剤は、必要に応じて、2種類以上を併用しても良い。この場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率を50%以下とすることが、結果として、セルロースエステル系樹脂フィルムの加水分解を引き起こしにくく、耐久性に優れるため、好ましい。
【0088】
リン酸エステル系の可塑剤比率は、少ない方がさらに好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが、特に好ましい。
【0089】
さらに、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステル系樹脂に対する質量%で、3〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%、さらに好ましくは15〜25質量%である。ここで、可塑剤の添加量が30質量%を超えると、セルロースエステル系樹脂フィルムの機械強度・寸法安定性が劣化するので、好ましくない。
【0090】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が適当であり、その具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。とくに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、その効果を得るために、セルロースエステル系樹脂に対し、質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがとくに好ましい。
【0091】
セルロースエステル系樹脂フィルムには、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。ここで、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが、好ましく用いられる。
【0092】
特に、波長370nmでの紫外線の透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは該透過率が5%以下、更により好ましくは2%以下である。
【0093】
用いる紫外線吸収剤としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
これら紫外線吸収剤の1種以上を用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0095】
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤等である。不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をセルロースエステル系樹脂フィルムに添加するという態様が特に好ましい。
【0096】
紫外線吸収剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル系樹脂中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0097】
紫外線吸収剤の使用量は、セルロースエステル系樹脂に対する質量%で、0.1〜2.5質量%、好ましくは、0.5〜2.0質量%、より好ましくは0.8〜2.0質量%である。紫外線吸収剤の使用量が2.5質量%を超えると、セルロースエステル系樹脂フィルムの透明性が悪くなる傾向があり、好ましくない。
【0098】
また、セルロースエステル系樹脂フィルムには、フィルム同士の張り付きを防止したり、滑り性を付与したりして、ハンドリングしやすくするために、マット剤として微粒子を添加してもよい。
【0099】
微粒子の種類としては、無機化合物でも有機化合物でもよい。無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL−200、200V、300、R972、R972V、R974、R976、R976S、R202、R812,R805、OX50、TT600、RY50、RX50、NY50、NAX50、NA50H、NA50Y、NX90、RY200S、RY200、RX200、R8200、RA200H、RA200HS、NA200Y、R816、R104、RY300、RX300、R106などが挙げられる。これらのうち、分散性や粒径を制御する点では、AEROSIL−200V、R972Vが好ましい。
【0100】
フィルム中での微粒子の平均粒径は、滑り性付与と透明性確保の観点から50nm〜2μmが良い。好ましくは、100nm〜1000nm、さらに好ましくは、100nm〜500nmである。フィルム中での平均粒径は、断面写真を撮影して観察することで確認できる。
【0101】
微粒子の場合は、1次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルムに添加された後の粒径が変化する場合が多く、重要なのは、最終的にフィルム中で微粒子がセルロースエステル系樹脂と複合し凝集して形成される粒径をコントロールすることである。
【0102】
微粒子の添加量は、セルロースエステル系樹脂フィルム中に対して、0.02〜0.5質量%、好ましくは、0.04〜0.3質量%である。
【0103】
図3は、本発明の光学フィルムの製造方法を溶融流延製膜法をもちいて実施する装置の第一の実施形態の概略フローシートである。
【0104】
フィルム(溶融物)が最初にキャストロール5の表面に接触した点(P1)と、フィルムがタッチロール(挟圧回転体)6の表面に接触した点(P2)が異なっている実施形態を示しているが、場合によっては、フィルムが最初にキャストロール5の表面に接触した点(P1)と、フィルムがタッチロール(挟圧回転体)6の表面に接触した点(P2)が同一の場合もある。また、フィルムが先にタッチロール6に接触した後にP2に至る場合もある。
【0105】
本実施形態においては、セルロース樹脂等の樹脂を含むフィルム材料を混合して樹脂混合物を得た後、押出し機1を用いて、流延ダイ4からキャストロール5上に溶融押し出しする。押し出されたフィルム状の溶融物は、キャストロール5に外接するとともに、挟圧部でタッチロール6によりキャストロール5表面に所定の圧力で押圧される。この挟圧部には、タッチロール6の回転方向下流側から、送風ノズル100により所定の風量及び温度の冷却風が当てられている。この冷却風により挟圧部下流側のフィルム表面が冷却され、タッチロール6とフィルムとの剥離が安定して行われる。タッチロール6から剥離したフィルムは、キャストロール5により搬送され、さらに、冷却ロール7、8のロールに順に外接して冷却固化し、剥離ロール9によって剥離される。剥離されたフィルム17は、縦延伸装置10と横延伸装置20によりフィルムの縦(搬送方向)及び横(幅手方向)に延伸した後、巻取り装置60により巻き取られる。
【0106】
流延ダイ4から押し出されたフィルム(樹脂混合物)は冷却機能を有する少なくとも2つの回転体(回転支持体と挟圧回転体)で冷却、面矯正される。回転支持体、及び挟圧回転体はロールに限定されるものではなく、ドラムやベルトなどでもよい。
【0107】
キャストロール5の温度は、樹脂混合物のガラス転移温度(Tg)以下、添加剤の融点以上に設定するのが、好ましい。
【0108】
ここで、タッチロール6は、フィルムに対してキャストロール5の反対側よりキャストロール5の方向にフィルムを挟圧する目的の回転体である。
【0109】
タッチロール6の表面は金属であることが好ましく、厚みは1mmから10mmである。好ましくは2mm〜6mmである。挟圧回転体の表面は、クロムメッキなどの処理が施されており、表面粗さは、最大高さRyで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできる。
【0110】
挟圧工程において、タッチロール6が、外周に金属円筒を有する弾性ロール(弾性金属ロール)よりなるものであることが好ましい。
【0111】
すなわち、タッチロール6の圧力が不均一になると、フィルムに配向ムラが発生し、これがクロスニコル下では明暗のムラになってしまう。均一な圧力でフィルムを面矯正するためには、上記のような外周に金属円筒を有する弾性のタッチロールが好ましい。
【0112】
タッチロール6の表面の金属の材質は、平滑で、適度な弾性があり、耐久性があることが求められる。炭素鋼、ステンレス、チタン、電鋳法で製造されたニッケルなどが好ましく用いることができる。さらにその表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。表面加工した表面はさらに研磨し、上述した表面粗さとすることが好ましい。
【0113】
タッチロール6は、金属製外筒と内筒との2重構造になっており、その間に冷却流体を流せるように空間を有する二重筒の構成である。
【0114】
内筒は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの軽量で剛性のある金属製内筒であることが好ましい。内筒に剛性をもたせることで、ロールの回転ぶれを抑えることができる。内筒の肉厚は、外筒の2〜10倍とすることで十分な剛性が得られる。内筒にはさらにシリコーン、フッ素ゴムなどの樹脂製弾性材料が被覆されていてもよい。
【0115】
冷却流体を流す空間の構造は、ロール表面の温度を均一に制御できるものであればよく、例えば幅手方向に行きと戻りが交互に流れるようにしたり、スパイラル状に流れるようにすることでロール表面の温度分布の小さい温度制御ができる。冷却流体は、特に制限はなく、使用する温度域に合わせて、水やオイルを使用できる。
【0116】
挟圧回転体であるタッチロール6は、中央部の外径が両端部の外径よりも大きい太鼓型に設定される。タッチロールは、その両端部を加圧手段でフィルムに押圧するのが一般的であるが、この場合、タッチロールが撓むため、端部にいくほど強く押圧されてしまう現象がある。ロールを太鼓型にすることで高度に均一な押圧が可能となる。
【0117】
挟圧回転体であるタッチロール6の直径は、200mmから500mmの範囲であることが好ましい。タッチロール6の有効幅は、挟圧するフィルム幅よりも広い必要がある。タッチロール6の中央部の半径と端部の半径との差(以下、クラウニング量と呼ぶ)により、フィルムの中央部に発生するスジなどのむらを防止することができる。クラウニング量は、50〜300μmの範囲が好ましい。
【0118】
キャストロール5とタッチロール6とは、フィルムを挟圧するように、フィルムの平面に対して反対側の位置に設置する。キャストロール5とタッチロール6とは、フィルムと面で接触しても、線で接触してもかまわない。
【0119】
本実施形態による光学フィルムの製造方法において、溶融押し出しの条件は、他のポリエステルなどの熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行うことができる。材料は予め乾燥させておくことが好ましい。真空または減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機などで水分を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に乾燥させることが望ましい。
【0120】
例えば熱風や真空または減圧下で乾燥したセルロースエステル系樹脂を押出し機1を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルター2などで濾過し、異物を除去する。
【0121】
供給ホッパー(図示略)から押出し機1へ導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして、酸化分解等を防止することが好ましい。
【0122】
可塑剤などの添加剤を予め混合しない場合は、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー3などの混合装置を用いることが好ましい。
【0123】
セルロース樹脂等の樹脂と、その他必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましい。混合は、混合機等により行ってもよく、また、前記したようにセルロース樹脂等の樹脂調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、一般的な混合機を用いることができる。
【0124】
上記のようにフィルム構成材料を混合した後に、その混合物を押出し機1を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、フィルム構成材料をペレット化した後、該ペレットを押出し機1で溶融して製膜するようにしてもよい。また、フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、半溶融物(溶融した融点の低い材料と、固体のままの融点の高い材料が混合した状態)を作製し、半溶融物を押出し機1に投入して製膜することも可能である。フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
【0125】
押出し機1は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でも良い。フィルム構成材料からペレットを作製せずに、直接製膜を行う場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト型、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。フィルム構成材料として、一旦、ペレットや半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。
【0126】
押出し機1内および押し出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
【0127】
押出し機1内のフィルム構成材料の溶融温度は、フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、フィルム(樹脂混合物)のガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+100℃以下、好ましくはTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。押出し時の溶融粘度は、10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。また、押出し機1内でのフィルム構成材料の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出し機1の種類、押し出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
【0128】
押出し機1のスクリューの形状や回転数等は、フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本実施形態において押出し機1でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。押出し機1としては、一般的にプラスチック成形機として市販されている押出し機を使用することができる。
【0129】
押出し機1から押し出されたフィルム構成材料は、流延ダイ4に送られ、流延ダイ4からフィルム状に押し出される。
【0130】
押出し機1から吐出される溶融物は、流延ダイ4に供給される。流延ダイ4はシートやフィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。流延ダイ4の材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)などを溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨などの加工を施したものなどがあげられる。
【0131】
流延ダイ4のリップ部の好ましい材質は、流延ダイ4と同様である。またリップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
【0132】
本実施形態においては、溶融させた樹脂混合物を押し出し機にとりつけた流延ダイ4からフィルム状樹脂に押し出し、押し出されたフィルム状樹脂を少なくとも2つの回転体に密着させて成形して引き取る工程を有する。
【0133】
図3に示すように、フィルムが最初にキャストロール5表面に接触してからタッチロール6表面に接触するまでの温度低下は20℃以内が望ましい。フィルムが最初にキャストロール5表面に接触してからタッチロール6表面に接触するまでの温度低下が大きすぎると、不均一な収縮により膜厚のむらが大きくなってしまう。またフィルムがタッチロール6に接触した時点の温度が低すぎると、フィルムの粘度の高さのため、タッチロール6より挟圧してもフィルムの平面性や膜厚ムラの矯正が十分できなくなる。
【0134】
キャストロール5、タッチロール6に好ましい材質は、炭素鋼、ステンレス鋼などが挙げられる。また、表面精度は高くすることが好ましく、表面粗さは、最大高さRyで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。
【0135】
タッチロール6は、押圧手段により、フィルムをキャストロール5に押し付けることが好ましい。このときのタッチロール6がフィルムを押し付ける線圧は、油圧ピストン等によって調整でき、好ましくは0.1〜100N/mm、より好ましくは1〜50N/mmである。
【0136】
またキャストロール5、もしくはタッチロール6はフィルムとの接着の均一性を高めるためにロールの両端の直径を細くしたり、フレキシブルなロール面を持たせることもできる。
【0137】
流延ダイ4の開口部(リップ)からキャストロール5までの部分を70kPa以下に減圧させると、上記のダイラインの矯正効果がより大きく発現する。好ましくは減圧は50kPa以上70kPa以下である。流延ダイ4のリップからキャストロール5までの部分の圧力を70kPa以下に保つ方法としては、特に制限はないが、流延ダイ4からロール周辺を耐圧部材で覆い、減圧するなどの方法がある。このとき、吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱するなどの処置を施すことが好ましい。吸引圧が小さすぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
【0138】
流延ダイ4から溶融状態のフィルム状のセルロースエステル系樹脂を、キャストロール5、冷却ロール7、及び冷却ロール8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、セルロースエステル系樹脂フィルム17を得る。
【0139】
図3に示す本発明の実施形態では、冷却ロール8から剥離ロール9によって剥離した冷却固化されたフィルム17は、縦延伸装置10に導入されて、搬送方向(MD方向)にロール延伸される。
【0140】
ついで、縦延伸後のフィルムは、横延伸装置(テンター)20に導き、そこでフィルム17を横方向(幅手方向)に延伸する。この横延伸により、フィルム中の分子が配向される。
【0141】
横延伸後、フィルム17の端部をスリッター19により製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング53及びバックロール52よりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施し、巻取り装置60によって巻き取ることにより、光学フィルム(元巻き)F中の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。
【0142】
ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
【0143】
使用する巻取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0144】
なお、横延伸後のナール加工を施す工程、及びフィルム端部の厚膜部を切除するスリッター加工工程を巻き取り工程の前に行っても良い。
【0145】
上記のように本発明の光学フィルムの製造方法を用いて製造された本発明の光学フィルムは、異物故障が無く高品質を有することから、液晶表示用部材、特に偏光板用保護フィルムに用いられ、偏光板に用いることができる。
〈偏光板〉
偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如き延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、十分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
【0146】
偏光板は、上記のセルロースエステルフィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板用保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものである。
【0147】
偏光板は、上記の偏光フィルムに、本発明の光学フィルムであるセルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の光学フィルムであるセルロースエステルフィルムを、位相差フィルム及び保護フィルムを兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。
【0148】
また、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと、長尺の本発明の光学フィルムであるセルロースエステルフィルムよりなる位相差フィルムとを貼り合わせることによって、長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
〈液晶表示装置〉
本発明の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に貼合した液晶表示装置とすることによって、輝度が向上出来、視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することが出来る。本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上の大画面の表示装置では、色むらや波打ちむらが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
【0149】
液晶表示装置における偏光板の配置位置については、特に限定はなく視認側に配置することも出来るが、散乱偏光板による後方散乱に基づく視認阻害を回避する点などから、液晶パネルの光源側における偏光板として配置することが好ましい。
【0150】
図4に本発明に好ましい液晶表示装置の構成例について示すが、これに限定されるものではない。
【0151】
本発明の液晶表示装置は、光反射板64、バックライト67、導光板65、光拡散板66に隣接して、本発明に係る偏光板70(本発明に係る光学フィルム61/二色性物質による光吸収作用を利用した二色性偏光子62/偏光板保護フィルム63の構成)、液晶表示パネル68、視認側偏光板69の順に積層された構成をとることが好ましい。
【0152】
導光板の具体例としては、透明な樹脂板の側面に(冷,熱)陰極管等の線状光源や発光ダイオード、EL等の光源を配置し、その樹脂板に板内を伝送される光を拡散や反射、回折や干渉等により板の片面側に出射するようにしたものなどが挙げられる。導光板を含む積層偏光板の形成に際しては、光の出射方向を制御するためのプリズムシート等からなるプリズムアレイ層、均一な発光を得るための光拡散板、線状光源からの出射光を導光板の側面に導くための光源ホルダなどの補助手段を導光板の上下面や側面などの所定位置に必要に応じ1層又は2層以上を配置して適宜な組合せ体とすることが出来る。
【0153】
液晶表示装置のバックライトは直下式バックライト方式であることが好ましい。具体的な直下式バックライト方式としては、特開2001−215497号公報、特開2001−305535号公報、特開2003−215585号公報、特開2004−29091号公報、特開2004−102119号公報等に記載のバックライトが有効に用いられる。
【0154】
特に、本発明の偏光板を用いた液晶表示装置ではサイズが15インチ以上で、光源と偏光板の距離を短くした熱の影響が大きい薄型液晶表示装置で本発明は有効である。
【0155】
なお、本発明の光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
【0156】
また、本発明によるセルロースエステルフィルムは、その他、反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
【実施例】
【0157】
光学フィルムの製造方法として実施例、比較例を以下に示す。
(実施例1〜9)
(樹脂混合物)
セルロースアセテートプロピオネート 89質量%
(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.35、
数平均分子量60000)
トリメチロールプロパントリベンゾエート 9質量%
(可塑剤、融点85℃)
酸化防止剤(IRGANOX XP 420/FD) 0.25質量%
(チバ・ジャパン社製)
紫外線吸収剤 1.6質量%
(TINUVIN 928、チバ・ジャパン社製、融点115℃)
マット剤(シリカ微粒子) 0.15質量%
(シーホスターKEP−30:日本触媒株式会社製、平均粒径0.3μm)
なお、セルロースアセテートプロピオネートのアセチル基、プロピオニル基等のアシル基の置換度の測定は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定した。
【0158】
上記材料をV型混合機で30分混合した後、ストランドダイを取り付けた2軸押出し機を用いて窒素雰囲気下で230℃で溶融させ、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作成した。得られたペレットのガラス転位点(Tg)は、135℃であった。
(光学フィルムの製造)
上記ペレットを100℃で5時間乾燥させ、含水率100ppmとし、図3に示すTダイ4を取り付けた単軸押出し機1に該ペレットを供給して製膜を行った。溶融物には、樹脂以外の添加剤が11%質量含まれていた。
【0159】
単軸押出し機1は、スクリュー径90mm、L/D=30、押出し量が140kg/hとなるようにスクリューの回転数を調整した。材料供給口付近より窒素ガスを封入して、押出し機1内を窒素雰囲気に保った。押出し機1およびTダイ4は、温度を240℃に設定した。Tダイ4はコートハンガータイプで、幅が1500mm、内壁にハードクロムメッキを施しており、面粗度0.1Sの鏡面に仕上げられている。Tダイ4のリップ間隙は2mmに設定した。
【0160】
図3に示すように、Tダイ4から出たフィルム状溶融物を、表面温度を120℃に温度調整されたロール幅1600mmのクロムメッキ鏡面のキャストロール5上に落下させ、同時に120℃に温度調整されたロール幅1600mmのタッチロール(挟圧回転体)6により挟圧部P2でフィルムを押圧した。また、タッチロール(挟圧回転体)6は、5N/mmの線圧でフィルムを押圧した。
【0161】
挟圧部P2の下部、即ちタッチロール6とフィルム状の溶融物とが剥離する位置P3から、タッチロール6の下流側に10mm離れ、且つ、タッチロール6の表面からの距離とキャストロール5の表面から距離とが等しい位置Sに送風ノズル100の出口が来るように送風ノズル100が配置され、送風ノズル100の出口からは、表1に示す風速及び温度の冷却風を挟圧部P2に向けて送風し、実施例1〜9の光学フィルムの製造条件とした。
【0162】
キャストロール5には、ステンレス鋼を用いて、表面粗さは、最大高さRyで0.1μm以下とした。
【0163】
また、タッチロール6は、金属外筒、内筒、空隙部を備えている二重筒構造のものを用いた。金属外筒の材質は、ステンレスで、表面粗さは、最大高さRyで0.05μm以下とし、肉厚は、3mmとした。内筒は、アルミニウムで肉厚は、30mmとした。金属外筒と内筒との空隙部は5mmとした。この空隙部47にオイルを流し、金属外筒の表面の温度を120℃にした。
【0164】
キャストロール5とタッチロール(挟圧回転体)6に押圧されたフィルムは、引き続いて冷却ロール7、及び冷却ロール8のロールに順に外接させて冷却固化し、剥離ロール9によって剥離する。フィルムの搬送速度は、10m/minとした。
【0165】
その後、縦延伸装置10において、縦延伸を行った。
【0166】
この縦延伸装置10における延伸工程において、挟圧後の未延伸フィルム17を長手方向に、2.0倍に延伸した。
【0167】
縦延伸後、横延伸装置20としてテンター装置を用い横延伸した、横延伸時の延伸倍率は、2.0倍とした。
【0168】
延伸後のフィルムを幅1300になるようにスリッターでスリットした後、巻き取り装置60で巻き取り、幅1300mm、膜厚100μm、長さ1000mの実施例1〜5の光学フィルムを製造した。
(光学フィルムの評価)
つぎに、実施例1〜9の光学フィルムについて、光学フィルムの表面を目視観察により、フィルム幅方向の筋状のムラ(横段ムラ)の有無を観察した。横段ムラの無いものを◎、1本以上3本未満のものを○、3本以上あるものを×とした。横段ムラが目視により3本以上観察されると、残留位相差が問題となり、製品としては用いることができない。また、フィルムの平面性の評価として、上記実施例1〜9の各光学フィルムについて、その膜厚を5mm間隔で幅手方向に測定した。膜厚の測定は、東京精密株式会社製の膜厚測定器DH−150を使用して行なった。膜厚ムラとして、フィルムの最大膜厚−フィルムの最小膜厚の数値を算出し、0.5μm未満を◎、0.5μm以上1μm未満を○、1μm以上を×とした。膜厚ムラが1μm以上となると、製品としては用いることができない。
(比較例1)
実施例1の光学フィルムの製造方法において、送風ノズル100によるタッチロール6とフィルム状の溶融物とが剥離する位置P3への冷却風の送風を行わなかった他は、実施例1と同様に作製し、評価した。
【0169】
評価結果を表1に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
表1の結果から、挟圧回転体の回転方向下流側から、挟圧回転体とフィルム状の溶融物とが剥離する位置に冷却風を当てることにより、横段ムラのない光学フィルムを得ることができるといえる。また、実施例1〜9の結果から、冷却風としては、風速が1.0〜20.0m/secで、温度が50〜150℃であることが好ましいことがわかる。
(偏光フィルムの製造)
実施例1〜9で作製した光学フィルムを用いて、工程1〜5に従って偏光板を作製した。
【0172】
工程1
偏光板保護フィルムとして、実施例1〜9で作製した光学フィルムを60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、ついで水洗、乾燥して偏光子と貼合する側をケン化した。
【0173】
同様に、反対側の偏光板保護フィルムとして、市販のセルロースエステルフィルムKC8UCR−5(コニカミノルタオプト(株)製:位相差フィルム)のケン化も行った。
【0174】
工程2
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0175】
工程3
工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した光学フィルムの鹸化した面上にのせ、更に反対側の偏光板保護フィルムとして、工程1で処理した市販のセルロースエステルフィルムKC8UCR−5の鹸化した面が偏光子に接するようにして積層し、偏光板とした。
【0176】
工程4
工程3で積層した偏光板を、圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0177】
工程5
80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光板を2分間乾燥した。
(偏光板の評価)
実施例1〜9の光学フィルムを用いて作製した偏光板を用いて、以下の評価を行った。
【0178】
作製した偏光板の吸収軸を直交させ、暗室中でライトテーブル上に置き1mあたりの輝点(光漏れの発生している故障部分)を数えた。実施例1〜9の光学フィルムを用いて作製した偏光板全て、光漏れの故障が無く、良好であった。
(液晶表示装置の作製)
実施例1〜9の光学フィルムを用いて作製した偏光板を用いて、視認性評価を行う液晶パネルを以下のようにして作製した。
【0179】
IPSモード型液晶表示装置である日立製液晶テレビWooo W17−LC50を用いてあらかじめ貼合されていた両面の偏光板を剥がして上記で作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合した。その際、偏光板の貼合の向きは、該偏光板のセルロースエステルフィルムの面が、バックライト側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置を各々作製した。
(液晶表示装置の視認性評価)
上記で作製した液晶パネルで白および黒を表示させて、その時の輝度ムラ、光漏れを目視で評価した。実施例1〜9で作製した本発明の光学フィルムを用いた偏光板を使用して作製した液晶パネルでは白表示での輝度ムラが少なく、黒表示の光漏れもほとんどなく、良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】本発明の光学フィルムの製造方法を用いた流延工程と挟圧工程の概略図である。
【図2】本発明の光学フィルムの製造方法の実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明に係る冷却風の当て方を説明するための拡大図である。
【図4】本発明に係る液晶表示装置の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0181】
1 押出し機
2 フィルター
3 スタチックミキサー
4 流延ダイ
5 キャストロール、回転支持体
6 タッチロール、挟圧回転体
7、8 冷却ロール
P1 溶融物が最初にキャストロール表面に接触する位置
P2 挟圧部
P3 フィルムがタッチロールと剥離する位置
P4 フィルムがキャストロールから剥離する位置
9 剥離ロール
10 縦延伸装置
17 フィルム
19 スリッター
20 横延伸装置
52 バックロール
53 エンボスリング
60 巻取り装置
70 偏光板
61 本発明に係る光学フィルム
62 二色性偏光子
63 偏光板保護フィルム
64 光拡散板
65 導光板
66 光拡散板
67 バックライト
68 液晶表示パネル
69 視認側偏光板
100 送風ノズル
Y 溶融物
F 光学フィルム(元巻き)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延ダイから回転支持体の表面にフィルム状に押し出す流延工程と、
前記流延工程で押し出されたフィルム状の溶融物を、前記回転支持体と挟圧回転体との挟圧部で挟圧する挟圧工程とを備えた光学フィルムの製造方法において、
前記挟圧部の前記挟圧回転体の回転方向下流側から、前記挟圧回転体と前記フィルム状の溶融物とが剥離する位置に、冷却風を当てることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記冷却風の温度が、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対して、Tg−100〜Tg+20℃であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記挟圧回転体と前記フィルム状の溶融物とが剥離する位置から、前記挟圧回転体の下流側に10mm離れ、且つ、前記挟圧回転体の表面からの距離と前記回転支持体の表面から距離とが等しい位置で、前記冷却風の風速が1.0〜20.0m/secであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記挟圧回転体が、外周に金属円筒を有する弾性ロールであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記冷却風の温度が、50〜150℃であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がセルロースエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂がセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする請求項6に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項9】
請求項8記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする偏光版。
【請求項10】
請求項9記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−76279(P2010−76279A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247610(P2008−247610)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】