説明

光学フィルム及び光学シート

【課題】色素としてヨウ素を用いた液晶表示装置用偏光板において、偏光能の持続に優れた光学フィルム及び光学シートを提供する。
【解決手段】光学フィルム又は光学シートは、下記一般式(1)で表されるトリアジン化合物を含有する樹脂から形成された偏光板用保護フィルム又は保護シート。


(式中、R1は炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基又はアルケニル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜18のアルキルアリール基又はアリールアルキル基を表し、R2は炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数3〜8のアルケニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の偏光能の持続に優れた、特定のトリアジン化合物を含有してなる樹脂製の光学フィルム及び光学シートに関するものであり、特に液晶表示装置等に用いられる偏光板用の保護フィルム及び保護シート、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム及び光拡散シート、レンズフィルム及びレンズシート、防曇フィルム、帯電防止フィルムや導光板の他、各種基板、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム等の各種機能フィルム、並びに有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等にも利用する事が出来る光学フィルム及び光学シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルム及び光学シートとは、波長の選択の有無によらず光を吸収したり、蛍光やりん光等の発光機能を有するもの、電圧等により透過と遮断をスイッチングできるもの、偏光機能を有するもの、防眩機能を有するもの等様々な光学機能を有するものをいう。
【0003】
液晶表示装置においては、光拡散フィルム及び光拡散シートや偏光板用の保護フィルム及び保護シート等種々の光学フィルム及び光学シートが積層して用いられており、商品開発においてプラズマディスプレイや有機EL等の他のフラットパネルディスプレイに対する優位性を主張する上で重要な機能を担っている。
【0004】
液晶表示装置に不可欠な偏光板は、ポリビニルアルコール等のポリマーをヨウ素や二色性色素で染色して延伸により配向させた偏光フィルム(偏光子)に、必要に応じてトリアセチルセルロース等の保護フィルム又は保護シートを両側から張り合わせることにより製造されているが、長時間の使用により偏光能が低下してコントラストが低下する。特にヨウ素を用いた偏光板は二色性色素に比べ安価な反面、安定性に欠けるという問題がある。また、ポリビニルアルコールは紫外線に暴露されると黄色に着色するという欠点がある。
【0005】
従来から、偏光板や保護フィルム又は保護シートの光劣化を防止するために、偏光板用の保護フィルム又は保護シートに紫外線吸収剤を配合することが検討されており、特許文献1には、トリアジン系紫外線吸収剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを併用することが提案され、特許文献2には、特定のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いることが提案されている。何れも偏光板と偏光板用の保護フィルムとの接着性に優れたり、フィルムに用いたポリマーの耐光性を向上する効果は示すものの偏光板の偏光能の維持には必ずしも満足のいくものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2007−004199号公報
【特許文献2】特開2007−108775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、色素としてヨウ素を用いた偏光板において、該偏光板の偏光能の持続に優れた光学フィルム及び光学シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するトリアジン化合物が偏光板の偏光能の持続に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、色素としてヨウ素を用いた偏光板若しくは該偏光板を用いた液晶表示装置に用いられる光学フィルム又は光学シートであって、下記一般式(1)で表されるトリアジン化合物を含有する樹脂から形成された光学フィルム又は光学シートを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
【化1】

(式中、R1は炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数3〜8のアルケニル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜18のアルキルアリール基又は炭素原子数7〜18のアリールアルキル基を表す。但し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基又はイミノ基で中断されていてもよい。また、上記の置換及び中断は組み合わされてもよい。R2は炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数3〜8のアルケニル基を表す。)
【0011】
本発明の光学フィルム及び光学シートとしては、上記一般式(1)におけるR1が炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基(但し、これらのアルキル基はヒドロキシ基、ハロゲン原子又はアルコキシ基で置換されてもよく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基又はイミノ基で中断されてもよい。)であり、R2が炭素原子数1〜8のアルキル基であるトリアジン化合物を含有する光学フィルム及び光学シートが本発明の目的である偏光能の維持に優れるため好ましい。上記トリアジン化合物は、偏光板用の保護フィルム又は保護シート等、バックライトや太陽光、照明等の外光と偏光フィルム(偏光子)との間にあるフィルム又はシートに添加されることでヨウ素による偏光を長期に保持できる。さらに、上記樹脂が、アクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、セルロースエステル系樹脂又はノルボルネン系樹脂である光学フィルム及び光学シートが、透明性、偏光特性及び電気絶縁性に優れるため好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、偏光板の偏光能の持続に優れた光学フィルム及び光学シートを提供する
ことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の光学フィルム及び光学シートについて、好ましい実施形態に基づき、具体的に説明する。
偏光板に用いられる偏光フィルム(偏光子)としては、ポリビニルアルコール等の基材ポリマーを色素で染色して延伸等の配向処理したものであって、色素としてヨウ素を用いたものであれば特に制限されない。ヨウ素はポリヨウ素イオンとなることで幅広い波長に対して偏光能を示すと考えられ、例えば、ヨウ素とヨウ化カリウムの配合比が異なる水溶液に基材ポリマーを含浸させることで会合しているヨウ素原子の数が異なるポリヨウ素イオンを含有する偏光板が得られる。水溶液中のヨウ素濃度は通常0.01〜0.5質量%、好ましくは0.02〜0.4質量%であり、ヨウ化カリウム濃度は通常0.01〜10質量%、好ましくは0.02〜8質量%である。偏光板は、さらにホウ酸処理、ヨウ素イオン処理等を行ってもよい。
【0014】
本発明に用いられるトリアジン化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0015】
【化2】

(式中、R1は炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数3〜8のアルケニル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜18のアルキルアリール基又は炭素原子数7〜18のアリールアルキル基を表す。但し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシ基で置換されてもよい。また、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基で中断されてもよい。また、上記の置換及び中断は組み合わされてもよい。R2は炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数3〜8のアルケニル基を表す。)
【0016】
上記式中、R1で表される炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、第三アミル、ヘキシル、オクチル、第二オクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ウンデシル、ドデシル等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。炭素原子数3〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられ、中でもヘキシル基が、本発明の目的である偏光能の維持に優れるため好ましい。
【0017】
2で表される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、第三アミル、オクチル、第三オクチル等が挙げられ、中でもメチル基が、本発明の目的である偏光能の維持に優れるため好ましい。
【0018】
1及びR2で表される炭素原子数3〜8のアルケニル基としては、直鎖及び分岐のプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルが不飽和結合の位置によらず挙げられる。
【0019】
1で表される炭素原子数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル等が挙げられ、炭素原子数7〜18のアルキルアリール基としては、例えば、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、オクチルフェニル等が挙げられ、炭素原子数7〜18のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、2−フェニルエチル、1−メチル−1−フェニルエチル等が挙げられる。また、置換基や中断を有するアリール基としては、4−メチルフェニル、3−クロロフェニル、4−ベンジルオキシフェニル、4−シアノフェニル、4−フェノキシフェニル、4−グリシジルオキシフェニル、4−イソシアヌレートフェニル等が挙げられる。
【0020】
1で表される置換基及び中断を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基としては、2−ヒドロキシプロピル、2−メトキシエチル、3−スルホニル−2−ヒドロキシプロピル、4−メチルシクロヘキシル等が挙げられる。
【0021】
本発明の光学フィルム及び光学シートに用いられる上記一般式(1)で表されるトリアジン化合物としては、例えば、下記の化合物No.1〜No.5等の化合物が挙げられる。
【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
本発明に用いるトリアジン化合物の使用量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。トリアジン化合物の使用量が0.001質量部未満であると、充分に偏光能が維持できず、トリアジン化合物の使用量が10質量部超であると、樹脂物性の低下や、ブリード等により偏光能を損なう等の問題を生じる。
【0028】
本発明に用いる樹脂としては、可視光の透過率に優れる合成樹脂のいずれも利用可能であり、中でも、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、セルローストリアセテートやセルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル系樹脂、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂等が、透明性、耐久性、偏光特性、電気絶縁性に優れるため好適である。
本発明の光学フィルム及び光学シートの成形方法は、キャスト法でも溶融押出し法でもよく、従来と同様の方法によって成形することができ、その厚さも特に限定されるものではないが、例えばフィルムに成形する場合には、好ましくは5〜300μmであり、より好ましくは5〜150μmであり、シートに成形する場合には、好ましくは200μm〜10mmであり、より好ましくは300μm〜5mmである。
本発明に用いるトリアジン化合物は耐揮散性にも優れるのでキャスト法、溶融押出し法の加工条件として生産性の高い高温条件(200〜350℃)での製造にも適している。
【0029】
本発明の光学フィルム及び光学シートは、偏光板と直接接着してもよく、接着剤層を介して接着してもよく、他の機能性膜を挟んで積層されてもよく、他の機能性を有するフィルムを製造する際に本発明に用いられるトリアジン化合物を配合して多機能フィルムとしてもよい。
【0030】
上記光学フィルム及び光学シートの偏光板を接着させない面は、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0031】
本発明の光学フィルム及び光学シートを用いた液晶表示装置は、偏光能の持続に優れるもので、適用される液晶表示装置は特に制限されず、TN、STN、TFT等の駆動方式、バックライトが蛍光灯かLEDか等の光源の種類、反射型か透過型か等の光源として太陽光等の外部光を利用するか否か、タッチパネル機能の有無等表示装置としての機能の付加、向上のための施策の有無や程度によらず好適に用いることができる。
【0032】
本発明に用いられるトリアジン化合物は、アクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、セルロースエステル系樹脂又はノルボルネン系樹脂等に対して優れた溶解性を有するので、ヨウ素が光で偏光能を失うことを防止する以外にも、偏光板との接着性に優れることやフィルムの物性が安定であること、他の部材を汚染しないこと等の効果が期待できる。
【0033】
本発明の光学フィルム及び光学シートには、用いる樹脂の種類に応じて通常用いられる酸化防止剤(フェノール系、リン系又はチオエーテル系等)、可塑剤、加工助剤等の添加剤を配合することが好ましい。
【0034】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等があげられ、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部用いられる。
【0035】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
【0036】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられるトリアジン系紫外線吸収剤は、偏光板の偏光子として用いられるヨウ素の安定化に特に優れるものであるが、液晶表示装置は、偏光板用の保護フィルム及び保護シート、光拡散フィルム及び光拡散シートや輝度向上フィルムに用いられる樹脂、液晶化合物そのもの等、光に対して安定性を付与すべき多くの要素を持つため、本発明の光学フィルム及び光学シートに用いる紫外線吸収剤としては、他の紫外線吸収剤を併用することが好ましい。他の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、他のトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0038】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類が挙げられる。
【0039】
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジビフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類等が挙げられる。
【0040】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類が挙げられる。
【0041】
これら他の紫外線吸収剤は、成分の揮散しやすいフィルム状に成形された樹脂中に配合されることになるので基材樹脂への溶解性に優れた構造が好ましく、また、加工時や使用時の熱で揮散しにくい高分子量の構造のものが好ましく、分子量500以上、より好ましくは分子量700以上であり、重合性基や反応性基を導入して高分子量化したり、樹脂に組み込んだものでもよい。これら他の紫外線吸収剤の使用量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部である。
【0042】
上記可塑剤としては、特に限定されないが、例えばリン酸エステル系可塑剤やポリエステル系可塑剤が挙げられ、これらは、単独或いは2種以上混合して用いることができる。
【0043】
上記リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
【0044】
上記ポリエステル系可塑剤としては、脂肪族二塩基酸や芳香族二塩基酸とジオール化合物からなる鎖状ポリエステルやヒドロキシカルボン酸の鎖状ポリエステルが挙げられる。
【0045】
上記脂肪族二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸等。芳香族二塩基酸としてはフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ターフェニルジカルボン酸等が挙げられる。
【0046】
上記ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパンジオール、1,3−ジメチルプロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、チオジエチレングリコール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0047】
上記ヒドロキシカルボン酸としては、4−ヒドロキシルメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシトリメチル酢酸、6−ヒドロキシカプロン酸、グリコール酸、乳酸等が挙げられる。
【0048】
他のポリエステル系可塑剤としては、3価以上のポリオールとモノカルボン酸化合物のポリエステルが挙げられる。3価以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールやその縮合物であるジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。また、これらポリオールにエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールでもよい。
【0049】
上記モノカルボン酸としては、安息香酸、p−メチル安息香酸、m−メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−クロロ安息香酸、ナフチル酸、ビフェニルカルボン酸等の芳香族カルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式カルボン酸;酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸等の脂肪族酸が挙げられる。モノカルボン酸は単独でも混合でもよい。
【0050】
これら可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、樹脂中、0〜20質量%が好ましい。液晶表示部材用としては、寸法安定性の観点から1〜15質量%が更に好ましく、特に好ましくは、2〜10質量%であり、加水分解の面でポリエステル系可塑剤が好ましい。
【0051】
本発明の光学フィルム及び光学シートは、上記の種々の配合物や液晶表示装置としての使用に限定されず、従来公知の特開2003−84269号公報、特開2002−47357号公報、特開2007−108775号公報や、特開2007−17555号公報等に記載された液晶表示装置及び液晶表示装置に用いられる光学フィルム及び光学シートに公知の配合剤や構成において好適に用いられる。
【実施例】
【0052】
実施例等により本発明を詳細に示す。但し、本発明は以下の実施例等によりなんら制限されるものではない。
【0053】
〔実施例1及び比較例1−1〜1−5〕
<保護フィルムの製造及びその評価>
ノルボルネン樹脂(JSR(株)製、製品名ARTON F5023)3g及び表1〜3記載の紫外線吸収剤30mgを溶媒(トルエン/シクロヘキサン=9/1)7gに溶解し、キャスト法により厚さ40μmのフィルムを作製し、1辺2cmの正方形の保護フィルム試験片を得た。
【0054】
上記製造方法によって得られた保護フィルム試験片を色素がヨウ素である偏光板((株)サンリッツ製、製品名バリライトLL−81−18、厚さ100μm)と張り合わせ、サンシャインウェザオメーター(83℃、雨なし、光源カーボンアーク)で240時間後に光照射していない偏光板と重ね合わせ、透過率が最低となるよう重ねた状態での吸光度を400nm、550nm及び700nmの各波長で測定した。サンシャインウェザオメーターでの光照射前の吸光度と比較して吸光度の保持率が100%であれば偏光子として正常に機能しており、吸光度が低下した場合は偏光能が失われ、偏光子として機能しなくなっていることを示すため、吸光度の保持率によりヨウ素を用いた偏光板における保護フィルムとしての性能を評価した。結果を表1に示す。また、予め偏光板をクロスニコル状態に重ね、これに保護フィルム試験片を貼って、全光線透過率(%)及びサンシャインウェザオメーターで240時間後の波長650nmでの吸光度を測定した結果を表1に併せて記す。
【0055】
【表1】

【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
〔実施例2−1〜2−7及び比較例2−1〜2−4〕
<フィルム試験片の製造及びその耐光性評価>
トリアセチルセルロース樹脂(ダイセル化学工業(株)製、製品名LT−35)100質量部に対して表2又は表3記載の紫外線吸収剤を同表に記載の配合量で配合する以外は、上記実施例1における保護フィルムの製造方法と同様の製造方法にてフィルム試験片を作製した。
【0062】
上記製造方法によって得られたフィルム試験片を、サンシャインウェザオメーター(83℃、雨なし、光源カーボンアーク)にて、360及び480時間後の全光線透過率(%)の保持率(%)を測定し、耐光性を評価した。結果を表2及び表3に併せて記す。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【化13】

【0066】
〔実施例3−1〜3−6〕
<フィルム試験片の製造及びその耐光性評価>
下記表4又は5に記載の樹脂100質量部に対して、同表に記載の紫外線吸収剤を0.2質量部配合する以外は、上記実施例1における保護フィルムの製造方法と同様の製造方法にてフィルム試験片を作製した。
【0067】
上記製造方法によって得られたフィルム試験片を、サンシャインウェザオメーター(83℃、雨なし、光源カーボンアーク)にて、240、360及び480時間後の全光線透過率(%)の保持率(%)を測定し、耐光性を評価した。結果を表4及び5に併せて記す。
尚、表中の使用樹脂の略号はそれぞれ以下の通りである。
TAC:トリアセチルセルロース樹脂:ダイセル化学工業(株)製、製品名LT−35
PC:ポリカーボネート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、製品名E−2000
PMMA:メタクリル樹脂:三菱レイヨン(株)製、製品名アクリペットVH000
NBE:ノルボルネン樹脂:JSR(株)製、製品名ARTON F5023
PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂:帝人化成(株)製、製品名TR−8550
PS:ポリスチレン樹脂:サイエンティフィック・ポリマー・プロダクツ(Scientific Polymer Products)製ポリスチレン、重量平均分子量(Mw)約20万
【0068】
〔比較例3−1〜3−6〕
紫外線吸収剤を配合せずに下記表6に記載の樹脂を用いる以外は、上記実施例1における保護フィルムの製造方法と同様の製造方法にてフィルム試験片を作製し、更に同様の評価方法によって240、360及び480時間後の全光線透過率(%)の保持率(%)を測定した。結果を表6に併せて記す。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
表1の結果から、短波長の400nmでは吸光度の変化は小さいものの、550nm、700nmと長波長になるほど吸光度の低下が大きいという傾向がみられる。
ここで、偏光板としての機能保持には全ての波長で高い保持率を示す必要があるところ、本発明に係る特定のトリアジン化合物は、短波長ではベンゾトリアゾール化合物や他のトリアジン化合物に若干劣るものの90%以上の保持率を示し、長波長域での保持率に優れ、特に他の化合物では87%程度の保持率しか示さない550nmにおいて97%と特異的に優れた保持率を示している。
また、クロスニコル時での結果から、本発明に係るトリアジン化合物は、保時率に関し、特に顕著な効果を示している。
【0073】
表2及び表3の結果から、本発明に係るトリアジン化合物は、従来の紫外線吸収剤と比べ、優れた効果を発揮し、また、従来品である紫外線吸収剤の半分の配合量で同等以上の効果を示していることが分かる。
【0074】
表4、表5及び表6の結果から、本発明に係るトリアジン化合物は、セルロースエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂他、様々な樹脂に対して、顕著な効果を発揮していることが分かる。
【0075】
上記結果より、本発明に係るトリアジン化合物は、偏光板としての機能保持に必要な全ての波長で高い吸光度保持率を示し、特に長波長域及びクロスニコル時での保持率に顕著な効果を発揮する。更に、従来化合物の半分の配合量にて同等以上の効果を発揮し、また、様々な種類の樹脂においても良好な効果を発揮することができる。従って、本発明に係る特定のトリアジン化合物は、色素としてヨウ素を用いた偏光板において、偏光能の持続等の性能に優れた光学フィルム及び光学シートを供給できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素としてヨウ素を用いた偏光板若しくは該偏光板を用いた液晶表示装置に用いられる光学フィルム又は光学シートであって、下記一般式(1)で表されるトリアジン化合物を含有する樹脂から形成された光学フィルム又は光学シート。
【化1】

(式中、R1は炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数3〜8のアルケニル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜18のアルキルアリール基又は炭素原子数7〜18のアリールアルキル基を表す。但し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基又はイミノ基で中断されていてもよい。また、上記の置換及び中断は組み合わされてもよい。R2は炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数3〜8のアルケニル基を表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)におけるR1が炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基(但し、これらのアルキル基はヒドロキシ基、ハロゲン原子又はアルコキシ基で置換されていてもよく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基又はイミノ基で中断されていてもよい。)であり、R2が炭素原子数1〜8のアルキル基である請求項1に記載の光学フィルム又は光学シート。
【請求項3】
上記樹脂が、アクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂又はノルボルネン系樹脂である請求項1又は2に記載の光学フィルム又は光学シート。
【請求項4】
上記光学フィルム又は光学シートが、液晶表示素子に接している偏光板の外表面側に設置される光学フィルム若しくは光学シート、又は該偏光板用の保護フィルム若しくは保護シートである請求項1〜3の何れかに記載の光学フィルム又は光学シート。
【請求項5】
上記光学フィルム又は光学シートが、偏光板用の保護フィルム又は保護シートである請求項1〜4の何れかに記載の光学フィルム又は光学シート。

【公開番号】特開2009−98701(P2009−98701A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−318772(P2008−318772)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】