説明

光学フィルム用粘着剤組成物および粘着型光学フィルム

【課題】適度な粘着力を有し、かつ、良好な帯電防止性を示すとともに、高温条件下あるいは高温多湿条件下で優れた耐久性を発揮し、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、光漏れの発生等の不具合を低減することができる光学フィルム用粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】下記モノマー成分(a1)〜(a4)から構成され特定分子量のアクリル系ポリマー(A)と、イオン性化合物(B)と、架橋剤(C)とを含み、特定ゲル分率である光学フィルム用粘着剤組成物
モノマー成分(a1):n−ブチル(メタ)アクリレート 10〜89.9質量%
モノマー成分(a2):特定(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー 5〜50質量%
モノマー成分(a3):アルキレンオキサイド基を有するモノマー 5〜40質量%
モノマー成分(a4):水酸基を含有するモノマー 0.1〜10質量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用粘着剤組成物および粘着型光学フィルムに関し、より詳しくは、FPD(フラットパネルディスプレイ)等の画像表示装置に使用される偏光フィルム等の光学フィルムと液晶セル等の被着体とを接着するために用いられる光学フィルム用粘着剤組成物およびそれを用いた粘着型光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
FPD等の画像表示装置は、多くの電子部品から構成されており、製造工程において電子部品を取り扱う際に、「電子部品―帯電物間」あるいは「帯電物により帯電した電子部品―導体部品間」において、放電(ESD)が生じ得る。この放電は電荷の急速な移動を引き起こし、電子部品に電気的衝撃を与えて、電子部品の損傷や破壊が発生する場合がある。電気的衝撃から電子部品を保護するために、絶縁体である帯電物を半導体に変更したり、あるいは導体を半導体に変更したりすることで、この電気的衝撃を低減させている。
【0003】
特に、近年の、液晶テレビ等の画像表示装置の高性能・高機能化に伴って、それに使用される電子部品の精密化も進行している。そのため、電子部品は、電気的衝撃の影響を受けやすくなっており、一層、電気的衝撃からの電子部品の保護が求められている。
【0004】
たとえば、電子部品の表面抵抗値を大きくすることで、該部品に流れる電流の量を小さくし、帯電電荷の移動による電気的衝撃を低減することができる。しかしながら、この表面抵抗値が大き過ぎると、電荷移動の速度が遅くなるので、電荷減衰時間(即ち、帯電している時間、電気的衝撃を受けている時間)が長くなってしまい、精密な電子部品が長時間にわたって高電圧状態に曝露されることになる。
【0005】
一方、電子部品の表面抵抗値が過度に低いと、瞬間的に高電流が流れることになり、電子部品に不具合を生じさせる虞がある。
したがって、過電圧による影響を低減するには、電子部品に流れる電流量、およびその時間を考慮した表面抵抗値を設定する必要があり、表面抵抗値は1.0×108〜9.9×109Ω/□の範囲であることが好ましいとされている。
【0006】
また、FPD等の製造工程において使用される、粘着加工された(光学フィルム用粘着剤からなる粘着層が形成された)偏光フィルム等の光学フィルムは、セパレーターが粘着層に貼り着され、該セパレーターを剥離した後に、パネルに貼着される。このセパレーターを剥離する作業においても、偏光フィルム等の光学フィルムおよびパネル表面は帯電してしまうことがある。さらには、この光学フィルム表面には、表面保護フィルム貼着されていることが多く、該フィルムは、製造工程あるいは検査工程が終了時に、光学フィルムから剥離されるが、この剥離作業においても、光学フィルム表面が帯電してしまうことがある。
【0007】
したがって、FPD等に使用される光学フィルムには、電子部品と同様に、適度な表面抵抗値が要求される。
このような要求に対して、従来から、偏光フィルム等の光学フィルムに帯電防止処理を行い、表面抵抗値を調節して、帯電防止特性を改善する試みが提案されている。この帯電防止処理された光学フィルムは、帯電防止特性に若干の改善が見られるものの、依然として、十分な帯電防止効果を発揮するには至らなかった。そのため、さらなる帯電防止特性を改善するには、光学フィルムと液晶セルなどの被着体とを接着するための粘着剤組成物(光学フィルム用粘着剤組成物)も適度な表面抵抗値(1.0×108〜9.9×109Ω/□)を有することが要求される。
【0008】
ところで、画像表示装置は、近年様々な用途や条件下において使用されており、たとえば、室温条件下のみならず、高温、さらには高温多湿といった過酷な条件下においても使用されることも多くなっており、具体的には、車両内部や野外計測機器等に設置される画像表示装置においての使用が挙げられる。
【0009】
このような条件において、画像表示装置が長時間放置された場合、該装置を構成する偏光フィルム等の光学フィルムはポリビニルアルコール等を原反としているために、該光学フィルムは、吸湿により膨張して、寸法変形が生じてしまう。また、一度、光学フィルムに寸法変形が生じた場合、たとえ、温度条件や湿度条件と変えたとしても、元の寸法には完全に戻ることはない。さらに、この寸法変形により生じた応力が、光学フィルムと液晶セルなどの被着体とを接着している粘着剤組成物に十分に吸収・緩和されない場合、光学フィルムと被着体との間において、ハガレやウキが生じてしまう。さらに、光学フィルムの寸法変化によって生じた応力の影響で、画像表示装置に、光漏れ、表示ムラ(白抜け)などの不具合が発生してしまう。特に、高温多湿条件下においては、光学フィルムの伸長変形(寸法変形)は、より大きくなるので、画像表示装置に上記不具合が一層発生し易くなってしまう。
【0010】
このように、光学フィルム用粘着剤組成物には、上述したような良好な帯電防止性とともに、高温条件下あるいは高温多湿条件下での優れた耐久性が要求されている。
たとえば、特許文献1には、アクリル系重合体、所定のエステル系可塑剤、アルカリ金属塩および多官能性架橋剤を含むアクリル系粘着剤組成物が開示されている。このアクリル系粘着剤組成物は、偏光フィルムを被着体に接着する用途に適しており、良好な帯電防止効果を発揮するものの、高温条件下あるいは高温多湿条件下での耐久性を考慮するものではない。
【0011】
また、特許文献2には、所定のアクリル系重合体および多官能性架橋剤を含むアクリル系感圧性粘着剤組成物が開示されている。このアクリル系感圧性粘着剤組成物は、偏光フィルムを被着体に接着する用途に適しており、高温条件下あるいは高温多湿条件下での耐久性を改善するものであるが、帯電防止効果を考慮するものではない。
【0012】
さらに、特許文献3には、アクリル系共重合体、所定のエステル系可塑剤および所定のアルカリ金属塩を含むアクリル系粘着剤組成物が開示されている。このアクリル系粘着剤組成物は、偏光フィルムを被着体に接着する用途に適しており、良好な帯電防止効果とともに、高温条件下あるいは高温多湿条件下で耐久性を発揮するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2007―536427号公報
【特許文献2】特表2006−521418号公報
【特許文献3】特表2008−517138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記特許文献1〜2にて開示された偏光フィルム用粘着剤組成物は、帯電防止性と高温条件下や高温多湿条件下での耐久性とを両立するものではなく、上記特許文献3にて開示された偏光フィルム用粘着剤組成物は、これらの特性を一応両立するものの、何れの特性も不十分なものであり、依然として改善の余地があった。
【0015】
このような従来技術の問題点を鑑み、本発明は、適度な粘着力を有し、かつ、良好な帯電防止性を示すとともに、高温条件下あるいは高温多湿条件下で、優れた耐久性を発揮し、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、光漏れの発生等の不具合を低減することができる光学フィルム用粘着剤組成物、およびそれを用いた粘着型光学フィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、このような課題を解決すべく、鋭意検討の過程において、以下のような特定のアクリル系モノマーと知見を得た。
まず、アクリル系粘着剤組成物の表面抵抗値を低下させ、好適な表面抵抗値を得るために、イオン性化合物の使用が有効であるが、このイオン性化合物は、経時的に粘着剤組成物からブリードアウトしてしまうことがあり、粘着剤内部に安定的に保持されることは困難である。しかしながら、アクリル系ポリマーの成分として、アルキレンオキサイド基を有するモノマーを使用することにより、この問題を解消できることが分かった。この理由は、親水性の官能基であるアルキレンオキサイド基とイオン性化合物との親和性が高いことにより、粘着剤内部にイオン性化合物が安定的に保持されて、イオン性化合物のブリードアウトが低減されると考えられる。
【0017】
一方で、アクリル系ポリマー中のアルキレンオキサイド基を有するモノマーの配合割合が過剰になると、長時間の高温高湿条件下においては、粘着剤組成物は、雰囲気中の湿気(水分)を吸収し、膨潤してしまい、凝集力が低下してしまう。そのため、この条件下に置かれた場合、偏光フィルムの端部(縁)がガラスパネルから浮き上がってしまい(ウキの発生)、十分な耐久性が達成されないことが分かった。
【0018】
そこで、本発明者らは、さらにモノマー成分として、アクリロイル基にエステル結合したアルキル基の炭素数全数が2〜5であり、かつ、該アルキル基の最長直鎖の炭素数が2〜3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに着目して検討した。特定のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、アルキレンオキサイド基を有するモノマーとを併用して得られたアクリルポリマーを粘着剤成分として用いた場合、粘着剤組成物では、水分の吸収による凝集力の低下が発生し難く、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーはイオン性化合物との親和性も高いために、イオン性化合物は粘着剤組成物内部で安定的に保持されるという知見が得られた。
【0019】
本発明者らは、このような知見に基づいて、特定の成分を含む粘着剤組成物は、良好な帯電防止性を示し、高温条件下、特に高温多湿条件下でも優れた耐久性を発揮することを見出して、本発明を完成させた。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0020】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、下記モノマー成分(a1)〜(a4)から構成され、重量平均分子量が100万以上であるアクリル系ポリマー(A)と、イオン性化合物(B)と、架橋剤(C)とを含み、かつ、架橋後のゲル分率が60重量%以上であることを特徴とする。
【0021】
モノマー成分(a1):n−ブチル(メタ)アクリレート 10〜89.9質量%
モノマー成分(a2):下記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー 5〜50質量%
【0022】
【化1】

(式中、R1は、水素またはメチル基を示し、R2は、直鎖状アルキル基または分枝を有するアルキル基であって、当該アルキル基の炭素全数が2〜5であり、かつ最長直鎖の炭素数が2〜3である。)
モノマー成分(a3):アルキレンオキサイド基を有するモノマー 5〜40質量%
モノマー成分(a4):水酸基を含有するモノマー 0.1〜10質量%
(但し、アクリル系ポリマーの質量を100質量%とし、(a1)〜(a4)の合計質量が90質量%以上である。)
【0023】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物において、前記モノマー成分(a2)が、アクリロイル基の−O−を介して結合するアルキル基の−O−から数えて2個目の炭素原子に少なくとも2個の水素原子が結合していることが好ましい。
【0024】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物において、前記モノマー成分(a2)が、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸‐i‐プロピルおよび(メタ)アクリル酸tert−ブチルからなる群から選択されることが好ましい。
【0025】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物において、前記アクリル系ポリマー(A)が、モノマー成分(a1)〜(a4)とともに、カルボキシル基を有するモノマー(a5)から構成され、当該モノマー成分(a5)の含有量が、アクリル系ポリマーの質量を100質量%とした場合に、10質量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の粘着型光学フィルムは、上記光学フィルム用粘着剤組成物からなる粘着剤層が、光学フィルムの片面あるいは両面に形成されてなることを特徴とする。
本発明の粘着型光学フィルムにおいて、前記光学フィルムが、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルムおよび光拡散フィルムからなる群から選択される光学フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、適度な粘着力を有し、かつ、良好な帯電防止性を示すとともに、高温条件下あるいは高温多湿条件下で、優れた耐久性を発揮し、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、光漏れの発生等の不具合を低減することができる。また、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を使用した粘着型光学フィルムは、液晶セル等の被着体に適度な粘着力で貼り着され、かつ、良好な帯電防止性を示すとともに、高温条件下あるいは高温多湿条件下で、優れた耐久性を発揮し、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、光漏れの発生等の不具合を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明に係る光学フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」と称する場合がある。)は、所定のモノマー成分から構成され、重量平均分子量が100万以上であるアクリル系ポリマー(A)と、イオン性化合物(B)と、架橋剤(C)とを含み、かつ、架橋後のゲル分率が60重量%以上であることを特徴とする。また、粘着剤組成物の各種物性を改良するため、該粘着剤組成物には、必要に応じて、他の成分が含まれていてもよい。
【0029】
以下、本発明について具体的に説明するが、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)、イオン性化合物(B)と、架橋剤(C)については、それぞれ、A成分、B成分、C成分と称する場合がある。
【0030】
本発明の粘着剤組成物に含まれるアクリル系ポリマー(A)は、下記モノマー成分(a1)〜(a4)から構成される。
モノマー成分(a1):n−ブチル(メタ)アクリレート
モノマー成分(a2):下記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー 5〜50質量%
【0031】
【化2】

(式中、R1は、水素またはメチル基を示し、R2は、直鎖状アルキル基または分枝を有するアルキル基であって、当該アルキル基の炭素全数が2〜5であり、かつ最長直鎖の炭素数が2〜3である。)
モノマー成分(a3):アルキレンオキサイド基を有するモノマー 5〜40質量%
モノマー成分(a4):水酸基を含有するモノマー 0.1〜10質量%
(但し、上記各モノマー成分の配合量(質量%)において、アクリル系ポリマー全体の質量を100質量%と、(a1)〜(a4)の合計質量が90質量%以上である。)
【0032】
モノマー成分(a1)は、n−ブチル(メタ)アクリレートであり、アクリル系ポリマー全体の質量を100質量%とした場合、このモノマー成分(a1)の含有量は、アクリル系ポリマー(A)中に10〜89.9質量%であり、好ましくは、12〜85質量%、より好ましくは15〜80質量%である。モノマー成分(a1)の含有量をこのような範囲にすることで、粘着力を調整でき、耐久性を付与することができる。
【0033】
モノマー成分(a2)は、下記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーである。
【0034】
【化3】

ここで、式中のR1は、水素またはメチル基を示す。また、R2は、直鎖状アルキル基または分枝を有するアルキル基であって、好ましくは、R2は、アミノ基、カルボキシル基等の架橋性基で置換されていない、直鎖状アルキル基または分枝を有するアルキル基である。また、当該アルキル基の炭素全数が2〜5であり、好ましくは2〜4である。また、当該アルキル基の最長直鎖の炭素数が2〜3であり、好ましくは2である。
【0035】
上記R2としては、例えば、エチル基(−C25)、プロピル基(−CH2CH2CH3)、イソプロピル基(−CH(CH32)、1−メチルプロピル基(―CH2(CH3)CH2CH3)、2−メチルプロピル基(―CH2CH(CH32)、tert−ブチル基(―C(CH33)、1−エチルプロピル基(―CH(CH2CH32)、1,1−ジメチルプロピル基(―C(CH32CH2CH3)、tert−ペンチル基(―CH2C(CH33)などが挙げられる。
【0036】
また、粘着剤組成物内部にイオン性化合物(B)を安定的に保持できるという観点から、モノマー成分(a2)は、アクリロイル基の−O−を介して結合するアルキル基の−O−から数えて2個目の炭素原子に少なくとも2個の水素原子が結合していることが好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、上記式(1)中のR2が、エチル基(−C25)、イソプロピル基(−CH(CH32)、プロピル基(−CH2CH2CH3)、1−メチルプロピル基(―CH(CH3)CH2CH3)、tert−ブチル基(―C(CH33)、1−エチルプロピル基(―CH(CH2CH32)、1,1−ジメチルプロピル基(―C(CH32CH2CH3)、などが挙げられる。
【0037】
この中でも、粘着剤組成物内部にイオン性化合物(B)を安定的に保持しつつ、モノマー成分(a3)含有量を低減することができるという観点から、上記式(1)中のR2が、エチル基(−C25)、イソプロピル基(−CH(CH32)、またはtert−ブチル基(―CH(CH33)であることが好ましい。すなわち、モノマー成分(a2)が、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸‐i‐プロピルおよび(メタ)アクリル酸tert−ブチルからなる群から選択されることが好ましい。
【0038】
また、アクリル系ポリマー(A)全体の質量を100質量%とした場合、このモノマー成分(a2)の含有量は、アクリル系ポリマー(A)中に5〜50質量%であり、好ましくは、8〜50質量%であり、より好ましくは10〜45質量%である。モノマー成分(a2)の含有量をこのような範囲にすることで、被着体への粘着剤組成物のなじみが良好になるとともに、粘着剤組成物内部に安定的にイオン性化合物(B)を保持することができ、モノマー成分(a3)が比較的少量であっても高い帯電防止特性を発現できる。また、高温条件下でも高温多湿条件下でも、優れた耐久性を発揮することができる。
【0039】
モノマー成分(a3)は、アルキレンオキサイド基を有するモノマーであれば特に限定されないが、例えば、側鎖にアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルモノマー、アルキレンオキサイド基を有する反応性乳化剤が挙げられる。
【0040】
このなかでも、(a1)成分や(a4)成分との共重合性が良好であるという観点から、アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
また、アルキレンオキサイド基としては、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などが挙げられ、また(メタ)アクリルモノマーに対するアルキレンオキサイド構造の付加モル数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
【0041】
また、アルキレンオキサイド基を有するアクリルモノマーの具体例としては、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシエチルアクリレートなどが好ましく用いられる。
【0042】
成分(a3)のアルキレンオキサイド構造を有する(メタ)アクリル系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
アクリル系ポリマー全体の質量を100質量%とした場合、このモノマー成分(a3)の含有量は、アクリル系ポリマー(A)中に5〜40質量%であり、好ましくは、5〜38質量%であり、より好ましくは5〜35質量%である。モノマー成分(a3)の含有量をこのような範囲にすることで、イオン性化合物(B)を粘着剤組成物内に安定的に保持することができ、B成分のブリードアウトの発生を低減することができる。また、高温多湿条件下においても、粘着剤組成物の吸水を低減させて、優れた耐久性を発揮することができる。
【0043】
また、モノマー成分(a4)は、水酸基を含有するモノマーであり、水酸基を有するモノマーであれば特に限定されないが、例えば、水酸基を含有する、(メタ)アクリルモノマー、ビニルモノマー等が挙げられる。
【0044】
このなかでも、(a1)成分との共重合性が良好であるという観点から、水酸基を含有するアクリルモノマーが好ましい。
水酸基を含有するアクリルモノマーの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のようなアルキレンジオールのモノ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0045】
この中でも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが好ましく用いられる。
上記成分(a4)の水酸基含有モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0046】
また、アクリル系ポリマー全体の質量を100質量%とした場合、このモノマー成分(a4)の含有量は、アクリル系ポリマー(A)中に0.1〜10質量%であり、好ましくは、0.2〜8質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。モノマー成分(a4)の含有量をこのような範囲にすることで、架橋剤(C)との反応により適度な架橋構造が形成され、粘着剤組成物の粘着物性が良好になる。
【0047】
また、本発明の効果を阻害しない範囲において、アクリル系共重合体(A)は、モノマー成分(a1)〜(a4)とともに、その他のモノマー成分(a5)を含んで構成されていてもよい。ここで、モノマー成分(a5)とは、モノマー成分(a1)〜(a4)成分とともに、アクリル系共重合体(A)を構成するモノマーであって、成分(a1)〜(a4)は除かれるモノマー成分である限り特に限定されるものではない。
【0048】
その他のモノマー成分(a5)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
【0049】
この中でも、モノマー成分(a1)〜(a4)とともに、モノマー成分(a5)として、少量のカルボキシル基含有モノマーあるいはアミノ基含有モノマーを共重合させてアクリル系共重合体(A)を調製した場合、アクリル系共重合体の架橋を促進する効果を発揮することができる観点から、モノマー成分(a5)は、カルボキシル基含有モノマーあるいはアミノ基含有モノマーであることが好ましい。
【0050】
アクリル系ポリマー(A)全体の質量を100質量%とした場合、アクリル系ポリマー(A)はモノマー成分(a5) 10質量%以下で構成されていることが好ましい。
モノマー成分(a5)がカルボキシル基またはアミノ基を含有するモノマーである場合、アクリル系ポリマー(A)におけるモノマー成分(a5)の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。このような範囲で構成されると、モノマー成分(a4)と架橋剤(C)との反応を適度に促進することができる。
【0051】
また、アクリル系ポリマー全体の質量を100質量%とした場合、モノマー成分((a1)〜(a4)、(a5)が含まれる場合は、(a1)〜(a5))の合計質量は、90質量%〜100質量%であり、好ましくは95質量%〜100質量%以上であり、より好ましくは98質量%〜100質量%である。このような範囲で構成されると、粘着力を適当な範囲に調整することができる。
【0052】
アクリル系共重合体(A)は、下記式[I](FOXの式)により算出されるガラス転移温度(Tg(℃))が0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましい。
【0053】
1/TgA=Wa1/Tga1+Wa2/Tga2+Wa3/Tga3+Wa4/Tga4+Wa5/Tga5・・・・・[I]
(TgAは、共重合体(A)のガラス転移温度(K)を示し、
Tga1、Tga2、Tga3、Tga4、Tga5は、それぞれ、構成モノマー(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)から調製されたホモポリマーのガラス転移温度(Tg(K))を示し、
a1、Wa2、Wa3、Wa4、Wa5は、それぞれ、共重合体(A)中に含まれる、構成モノマー(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)の重量分率を示す。)
なお、上記式により、Tgaは、絶対温度(K)として算出されるので、必要に応じて摂氏温度(℃)に換算される。
【0054】
また、代表的なモノマーから調製されたホモポリマーのガラス転移温度は、下記表1に示されるが、より具体的には、たとえば、ポリマーハンドブック3版(Polymer Handbook Third Edition, Wiley-Interscience,1989)などに記載されている。
【0055】
【表1】

また、本発明に用いられるアクリル系共重合体(A)の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、重合により得られた共重合体の混合物を用いて、本発明の粘着剤組成物を製造するにあたり、処理工程が比較的簡単でかつ短時間で行えることから溶液重合により重合することが好ましい。
【0056】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、各単量体、重合開始剤、および必要に応じて用いられる連鎖移動剤等を仕込み、窒素気流又は有機溶媒の還流温度の下で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行われる。
【0057】
なお、この場合において、有機溶媒、単量体及び/又は重合開始剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
上記の重合用有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;などを挙げることができる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0058】
これら重合用有機溶媒のうち、前記アクリル系共重合体(A)の重合に際しては、重合反応中に連鎖移動を生じにくい有機溶媒、例えば、エステル類、ケトン類を使用することが好ましく、特に、アクリル系共重合体(A)の溶解性、重合反応の容易さなどの点から、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンなどの使用が好ましい。
【0059】
前記重合開始剤としては、通常の溶液重合で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。
このような有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ−i−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられ、アゾ化合物としては、例えば、2,2´−アゾビス−i−ブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2´−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどを挙げることができる。
【0060】
これら有機過酸化物のうち、前記アクリル系共重合体(A)の重合反応中に、グラフト反応を起こさない重合開始剤が好ましく、特にアゾ系が好ましい。その使用量は、通常、単量体合計100重量部に対して0.01〜2重量部であり、好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0061】
また、本発明の粘着剤組成物に含まれるアクリル系共重合体(A)の製造に際しては、連鎖移動剤を使用しないのが普通であるが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて使用することは可能である。
【0062】
このような連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレンなどの芳香族化合物類;p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロトルエンなどの芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類;トリブチルボランなどのボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペンなどのハロゲン化炭化水素類;クロラール、フラルデヒドなどのアルデヒド類:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類;チオフェノール、トルエンメルカプタンなどの芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ピネン、ターピノレンなどのテルペン類;などを挙げることができる。
【0063】
重合温度としては、一般に約30〜180℃であり、好ましくは40〜150℃であり、より好ましくは50〜90℃の範囲である。
なお、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応の単量体が含まれる場合は、該単量体を除くために、メタノールなどによる再沈澱法で精製することも可能である。
【0064】
成分(A)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される重量平均分子量(Mw)は100万以上であり、好ましくは100万〜200万である。成分(A)の重量平均分子量(Mw)をこのような範囲に規定すると、粘着剤組成物の凝集力を高めることができ、粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着型光学フィルムを被着体に貼り着した場合、高温条件でも高温多湿条件でも、発泡やハガレ等の不具合を防ぐことができる。
【0065】
成分(A)のTg(ガラス転移点)は、好ましくは−70〜0℃であり、好ましくは−60〜−10℃である。成分(A)のTgをこのような範囲に規定すると、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を介して、光学フィルムと光学フィルムとを貼着した際に、被着体に対する該粘着剤層の密着性を一定に保つことができる。
【0066】
また、本発明の粘着剤組成物は、イオン性化合物(B)を含む。イオン性化合物(B)としては、アニオンとカチオンとからなる、25℃で液体状、または固体状のイオン性化合物が挙げられ、具体的には、アルカリ金属塩、イオン性液体(25℃で液体状)、界面活性剤等が挙げられる。
【0067】
上記アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオンと、アニオンとからなる化合物が挙げられ、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、LiBr、LiI、LiBF4、LiPF6、LiSCN、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、Li(CF3SO2)IN、Li(C25SO22N、Li(C25SO2)IN、Li(CF3SO23C等が挙げられる。
【0068】
上記イオン性液体を構成するカチオンとしては、
ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられ、
上記イオン性液体を構成するアニオンとしては、Cl-、Br-、I-、AlCl4-、Al2Cl7-、BF4-、PF6-、ClO4-、NO3-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3-、CF3SO3-、(CF3SO22-、(CF3SO23-、AsF6-、SbF6-、NbF6-、TaF6-、F(HF)n-(n=2〜3)、(CN)2-、C49SO3-、(C25SO22-、C37COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-等があげられる。
【0069】
そして、上記イオン性化合物としては、これらのカチオンとアニオンとから構成され、25℃で液状のイオン性化合物が挙げられる。具体的には2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0070】
上記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤の何れも使用することができる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニエルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;例えば、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレン類及びそれらのブロックコポリマーが挙げられる。
【0071】
上記カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム塩、アルキルジメチルアンモニウムエトサルフェート等が挙げられる。
【0072】
上記アニオン系界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、N-アシル-N-メチルグリシンナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム等のカルボン酸塩、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、ジメチル-5-スルホイソフタレートナトリウム等のスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリル燐酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等の燐酸エステル塩等が挙げられる。
【0073】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムペタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドが挙げられる。
また、その他に、伝導性ポリマー、伝導性カーボン、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化鉄、硫酸アンモニウム等を使用することができる。
【0074】
このなかでも、アルカリ金属塩が好ましく、特に過塩素酸リチウムが好ましく用いられる。
本発明の粘着剤組成物における(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。
【0075】
本発明の粘着剤組成物に含まれる(C)成分としては、例えば、常温又は加熱下で(メタ)アクリル系化合物(A)の分子中に水酸基と架橋し得る架橋剤であれば特に限定されないが、例えばイソシアネート基を有するイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレ―ト架橋剤が挙げられる。
【0076】
このイソシアネート系架橋剤としては、具体的には、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーや、それらをトリメチロールプロパンなどの2価以上のアルコール化合物等に付加反応させたイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物等が例示される。
【0077】
また、公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどにイソシアネート化合物を付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等も挙げられる。これらのうち、キシリレンジイソシアネートおよびその誘導体などが好ましく用いられる。
【0078】
この成分(C)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、通常0.5〜10重量部の範囲であり、好ましくは、2〜5重量部の範囲である。このような範囲で含まれることにより、粘着剤組成物を架橋した後のゲル分率を調節しやすくなる。
【0079】
また、本発明の粘着剤組成物の架橋後のゲル分率は、60%以上であり、好ましくは70〜90%である。ゲル分率をこのような範囲に調節することにより、粘着剤組成物を硬化させた場合において、未架橋成分のブリードアウトによる汚染を抑制することができる。
【0080】
上記ゲル分率は、粘着剤組成物に含まれる(A)成分のモノマー成分(a4)の種類や使用量、(C)成分の架橋剤の種類や使用量によって調製することができる。
なお、上記ゲル分率は、架橋された粘着剤を乾燥重量で0.1g(乾燥重量(1))をサンプル瓶に採取し、更に、サンプル瓶に、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥重量(乾燥重量(2))を測定し、次式[2]により求められる。
ゲル分率(%)=(乾燥重量(2)/乾燥重量(1))×100・・・・[2]
本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、可塑剤等が配合されていても良い。
【0081】
本発明の粘着剤組成物は、通常、前記(A)〜(C)成分および必要に応じて任意成分を、同時にあるいは任意の順番で混合して、調製される。
また、(A)成分と(C)成分とを混合するにあたり、(A)成分を溶液重合により調製した場合は、重合完了後の(A)成分を含む溶液に(C)成分を添加してもよく、(A)成分を塊状重合により調製する場合は、重合完了後では均一混合が困難になるため、この重合の途中で(C)成分を添加して混合することが好ましい。
【0082】
本発明に係る粘着型光学フィルムは、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層が光学フィルムの片面あるいは両面に形成されてなる。
また、本発明の粘着型光学フィルムを作製するにあたり、上記粘着剤層は、光学フィルム上に、上記粘着剤組成物をグラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等により塗布し、光学フィルム上に塗布された粘着剤組成物を常温または加熱により乾燥および架橋して形成されてもよく、また粘着剤層を剥離フィルム上に設け、これを上記光学フィルムに転写して形成されてもよい。また、粘着剤層の厚みは、通常は1〜50μm、好ましくは5〜30μm程度である。なお、粘着型光学フィルムの使用前に、粘着剤層を保護するために、該粘着剤層の表面に剥離フィルムを積層させてもよい。
【0083】
本発明の粘着型光学フィルムに使用される光学フィルムとしては、FPDなどの画像表示装置等で使用されるものが挙げられ、具体的には、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルムなどが挙げられる。
【0084】
本発明の粘着型光学フィルムに使用される光学フィルムの厚さは、使用目的に応じて適宜選択することができるが、通常、10〜500μmであり、好ましくは15〜300μm程度である。
【実施例】
【0085】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(i)粘着剤組成物の原料
各実施例および比較例の粘着型偏光フィルム1〜11に使用された粘着剤組成物1〜11を構成する各成分の種類は下記の通りであり、成分比率は表1に示す。なお、表中、数値は固形分(不揮発分)換算の重量部を示す。
(A)アクリル系ポリマーのモノマー成分
(a1)成分:n−ブチルアクリレート(BA)
(a2)成分
(a2)−1:エチルアクリレート(EA)
(a2)−2:t−ブチルアクリレート(tBA)
(a2´)成分:メチルアクリレート(MA)
(なお、エチルアクリレート、t−ブチルアクリレートのアクリロイル基の−O−を介して結合するアルキル基において、該アルキル基の炭素全数は、それぞれ2、4であり、最長直鎖の炭素数は、それぞれ2、3である。一方、メチルアクリレートのアクリロイル基の−O−を介して結合するアルキル基において、該アルキル基の炭素全数は1であり、最長直鎖の炭素数は1である。)
(a3)成分
(a3)−1:エトキシジエチレングリコールアクリレート(EDA)
(a3)−2:メトキシエチルアクリレート(MEA)
(a4)成分:2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)
(a5)成分:アクリル酸(AA)
(B)イオン性化合物
(B)−1:過塩素酸リチウム
(C)架橋剤
(C)−1 キシリレンジイソシアネートのトリメチルプロパン付加物(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「タケネートD−110N」):)
【0086】
(2)各物性評価の評価条件および基準
<耐久性試験(85℃)>
(評価方法)
粘着型偏光フィルム(310×385mm)から、ポリエステルフィルムを剥離して、粘着型偏光フィルムを粘着剤層面で、19インチサイズの無アルカリ処理ガラスに貼り合わせた。次いで、85℃の雰囲気下で500時間、さらに、23℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で2時間放置した。その後、目視により粘着型偏光フィルムの発泡等の外観変化を観察し、以下の4段階の評価基準に基づいて評価した。
【0087】
(評価基準)
○:ほとんど発泡などの外観変化がない。
△:若干、発泡などの外観変化があることが分かる。
×:明らかに、発泡などの外観変化があることが分かる。
【0088】
<耐久性試験(60℃/95%RH(相対湿度))>
(評価方法)
粘着型偏光フィルム(310×385mm)から、ポリエステルフィルムを剥離して、粘着型偏光フィルムを粘着剤層面で、19インチサイズの無アルカリ処理ガラスに貼り合わせた。次いで、60℃、95%RH(相対湿度)の雰囲気下で500時間、さらに、23℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で2時間放置した。その後、目視により粘着型偏光フィルムの剥がれ、発泡等の外観変化を観察し、以下の4段階の評価基準に基づいて評価した。
【0089】
(評価基準)
○:全く剥がれ、発泡などの外観変化がない。
△:若干、剥がれ、発泡などの外観変化があることが分かる。
×:明らかに、剥がれ、発泡などの外観変化があることが分かる。
【0090】
<粘着力試験>
粘着型偏光フィルムを25mm幅に裁断した後、ポリエステルフィルムを剥離し、試験片を粘着剤層面でガラス板の片面に貼付けた。次いで、23℃の乾燥雰囲気の貼着条件で2時間放置した後、貼付した粘着型偏光フィルムを、ガラス板から、引き剥がし速度300mm/minで180°方向に剥離したときの粘着力(単位:g/25mm)を測定した。
【0091】
<帯電防止性試験>
(評価方法)
粘着型偏光フィルムを90mm×90mmに裁断して試験片を作製し、該試験片の剥離処理されたポリエステルフィルムを一気にひきはがし、下記測定器の電極に粘着剤面を貼りつけた。貼り付けてから1分経過後の表面抵抗値(Ω/□)を測定した。
なお、FPD等に使用される偏光フィルム用粘着剤組成物において、表面抵抗値が1.0×108〜9.9×109Ω/□の範囲にあることが好ましい。
【0092】
〈ゲル分率〉
粘着型偏光フィルムから粘着剤を乾燥重量で0.1g(乾燥重量(1))をサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥重量(乾燥重量(2))を測定し、次式[2]により求めた。
ゲル分率(%)=(乾燥重量(2)/乾燥重量(1))×100・・・・[2]
【0093】
(3)実施例および比較例
(3)−1 実施例1
下記表1に示される配合比率となるように、n−ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、エトキシジエチレングリコールアクリレート(EDA)、メトキシエチルアクリレート(MEA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、アクリル酸(AA)を反応容器に入れ混合してモノマー混合物を調製し、このモノマー混合物の量に対して等倍質量の酢酸エチルを加え、さらにモノマー混合物の量に対して1/2000倍質量のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を該反応容器に加え、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
【0094】
その後、窒素雰囲気中で攪拌しながら、この反応容器を65℃に昇温させ、6時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、アクリル系ポリマー溶液1(アクリル系ポリマー濃度:20質量%)を得た。この溶液に含まれるアクリル系ポリマー(アクリル系ポリマー1)の重量平均分子量は120万であった(下記表2に示す。)
【0095】
次いで、下記表2に示されるように、アクリル系ポリマー1 100重量部に対し、過塩素酸リチウム有効成分 0.5重量部(ポリエチレングリコール溶解 10%溶液)と、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体 0.5重量部とを添加し、これを混合して、粘着剤組成物1を得た。粘着剤組成物1の架橋後のゲル分率を、「(2)各物性評価の評価条件および基準」の「ゲル分率」に準拠して、測定したところ、該ゲル分率は71%であった(下記表3に示す。)。
【0096】
得られた粘着剤組成物1を、剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、乾燥炉内で80℃、2分間乾燥させた後、該ポリエステルフィルムの粘着剤層面を偏光フィルムに貼り合わせて、23℃、湿度65%の条件で7日間熟成させて粘着型偏光フィルム1を得た。
次いで、上記の「(2)各物性評価の評価条件および基準」に準拠して、粘着型偏光フィルム1の物性を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0097】
(3)−2 実施例2〜3、比較例1〜8
下記表2に示されるモノマー成分と配合比率で、実施例1と同様にして、アクリル系ポリマー2〜10を含むアクリル系ポリマー溶液2〜10を調製し、表3に示される成分と配合比率で、実施例1と同様にして、粘着剤組成物(粘着剤組成物2〜11)を調製した。
【0098】
さらに、表4に示されるように、粘着剤組成物2〜10を用いて、実施例1と同様にして、粘着型偏光フィルム(粘着型偏光フィルム2〜11)を製造した。得られたアクリル系ポリマー2〜10の分子量、粘着剤組成物2〜11の架橋後のゲル分率、および粘着型偏光フィルムの物性を、上記の「(2)各物性評価の評価条件および基準」に準拠して、評価した。結果は表4に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

表4から明らかなように、本発明の粘着剤組成物(粘着剤組成物1〜3)を使用して製造された粘着型偏光フィルム(粘着型偏光フィルム1〜3)では、適度な粘着力が維持されるとともに、表面抵抗値が1.0×108〜9.9×109Ω/□の範囲内であることから、良好な帯電防止性が発揮されることが確認できた。さらには、乾熱条件(85℃)および湿熱条件60℃/95%RH)の両条件においても、偏光フィルムに貼着された粘着フィルム1〜3では、剥がれや発泡などの外観変化が全くない結果が得られた(評価「○」)。すなわち、粘着型偏光フィルム1〜3では、高温条件および高温高湿条件において、非常に優れた耐久性が発揮されることが確認できた。
【0102】
一方、比較例1〜8で示されるように、本発明の粘着剤組成物ではない粘着剤組成物4〜11を使用して製造された粘着型偏光フィルム(粘着型偏光フィルム4〜11)では、適度な粘着力が維持されるものの、帯電防止性、高温条件および高温高湿条件における耐久性を両立することはできなかった。
【0103】
具体的には、アクリル系ポリマーを構成する(a2)成分の配合量が、過剰あるいは過小である場合(比較例1、2)や、モノマー成分として、アクリロイル基の−O−を介して結合するアルキル基の炭素全数が2〜5でもなく最長直鎖の炭素数が2〜3でもない(a2´)を使用した場合(比較例5)、これらの比較例の粘着型偏光フィルム(粘着型偏光フィルム4〜5、8)は、耐久性試験の高温条件または高温高湿条件の何れかの条件において、優れた耐久性を発揮するものの、両条件とも優れた耐久性を発揮できなかった。特に、(a2)成分の配合量が過小である粘着型偏光フィルム4(比較例1)では、高温高湿条件下での耐久性に劣っているとともに、表面抵抗値も高いことから帯電防止性も不良であることが確認された。
【0104】
また、アクリル系ポリマーを構成する(a3)成分が過少である粘着型偏光フィルム6(場合(比較例3)は、高温条件および高温高湿条件の何れの条件下においても優れた耐久性を発揮するものの、表面抵抗値が1.4×1011Ω/□と、極めて高い値を示すことから良好な帯電防止性を発揮できないことが分かった。逆に、アクリル系ポリマーを構成する(a3)成分が過剰である粘着型偏光フィルム7(比較例4)は、良好な帯電防止性を示すものの、湿熱条件下において、発泡などの明らかな外観変化が見られ、この条件での耐久性に著しく劣っていることが確認された。
【0105】
さらには、粘着剤組成物がイオン性化合物を含まない場合(比較例6の粘着フィルム9)でも、同様に、耐久性は良好な結果が得られるものの、表面抵抗値は、5.2×1013Ω/□と、極めて高い値を示すことから良好な帯電防止性を発揮できないことが分かった。
【0106】
また、比較例7の粘着型偏光フィルム10、比較例8の粘着型偏光フィルム11は、それぞれ、アクリル系ポリマーの分子量、粘着剤組成物の架橋後のゲル分率が低い粘着剤組成物が使用されたものであるが、これらは、良好な帯電防止性および適度な粘着力を示すものの、高温条件および高温高湿条件下にて、優れた耐久性を両立して発揮することができなかった。
【0107】
このように、本発明の粘着剤組成物以外の粘着剤組成物を使用して製造された粘着フィルムでは、適度な粘着力を維持するものの、良好な帯電防止性と、高温条件および高温高湿条件下にて両立された優れた耐久性とを発揮できないのに対して、本発明の粘着剤組成物を使用して製造された粘着フィルムは、光学フィルムと被着体とを接着する用途に非常に適した特性、すなわち、適度な粘着力、良好な帯電防止性、さらには、高温条件および高温高湿条件下での両条件においても優れた耐久性を発揮することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、適度な粘着力を有し、かつ、良好な帯電防止性を示すとともに、高温条件下あるいは高温多湿条件下で、優れた耐久性を発揮し、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、光漏れの発生等の不具合を低減することができる、光学フィルム用粘着剤組成物を提供することができる。
【0109】
また、液晶セル等の被着体に適度な粘着力で貼り着でき、かつ、良好な帯電防止性を示すとともに、高温条件下あるいは高温多湿条件下で、優れた耐久性を発揮し、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、光漏れの発生等の不具合を低減することができる、粘着型光学フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記モノマー成分(a1)〜(a4)から構成され、重量平均分子量が100万以上であるアクリル系ポリマー(A)と、イオン性化合物(B)と、架橋剤(C)とを含み、
かつ、架橋後のゲル分率が60重量%以上であることを特徴とする光学フィルム用粘着剤組成物;
モノマー成分(a1):n−ブチル(メタ)アクリレート 10〜89.9質量%
モノマー成分(a2):下記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー 5〜50質量%
【化1】

(式中、R1は、水素またはメチル基を示し、R2は、直鎖状アルキル基または分枝を有するアルキル基であって、当該アルキル基の炭素全数が2〜5であり、かつ最長直鎖の炭素数が2〜3である。)
モノマー成分(a3):アルキレンオキサイド基を有するモノマー 5〜40質量%
モノマー成分(a4):水酸基を含有するモノマー 0.1〜10質量%
(但し、アクリル系ポリマーの質量を100質量%とし、(a1)〜(a4)の合計質量が90質量%以上である。)
【請求項2】
前記モノマー成分(a2)が、アクリロイル基の−O−を介して結合するアルキル基の−O−から数えて2個目の炭素原子に少なくとも2個の水素原子が結合していることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物
【請求項3】
前記モノマー成分(a2)が、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸‐i‐プロピルおよび(メタ)アクリル酸tert−ブチルからなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマー(A)が、モノマー成分(a1)〜(a4)とともに、カルボキシル基を有するモノマー(a5)から構成され、当該モノマー成分(a5)の含有量が、アクリル系ポリマーの質量を100質量%とした場合に、10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物からなる粘着剤層が、光学フィルムの片面あるいは両面に形成されてなることを特徴とする粘着型光学フィルム。
【請求項6】
前記光学フィルムが、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルムおよび光拡散フィルムからなる群から選択される光学フィルムであることを特徴とする請求項5に記載の粘着型光学フィルム。

【公開番号】特開2012−131963(P2012−131963A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287607(P2010−287607)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】