説明

光学情報読取装置の反射鏡および光学情報読取装置

【課題】反射鏡に起因した光学情報読取装置の読取性能の劣化を抑制し得る光学情報読取装置の反射鏡および光学情報読取装置を提供する。
【解決手段】バーコードリーダ10では、第2ミラー35を取付可能に上ケース11に一体に形成される取付構造として、第2ミラー35の長手方向の両側から当該長手方向および厚さ方向の移動を規制する一方で、第2ミラー35の短手方向の移動を許容して第2ミラー35を保持する一対のガイド部16a、16bと、一対のガイド部16a、16bを第2ミラー35の長手方向に連結する支持部17と、ガイド部16a、16bに保持された第2ミラー35の短手方向の移動を阻止するスナップフィット18a、18bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂からなる矩形板状部の一方の面に金属膜を形成して構成される反射面を有し、光学情報読取装置内に設けられることで、当該光学情報読取装置の読取口から入射した入射光を前記反射面で反射しその光路を設定する光学情報読取装置の反射鏡および光学情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光学情報読取装置は、情報コードに照射する照射光を発光可能な発光手段と、この発光手段から情報コードに照射されて反射した反射光を入射可能な読取口と、この読取口から入射した入射光を受光可能な受光素子と、この受光素子の受光面に入射光による像を結像可能な結像光学系と、この受光素子により受光された情報コードに関する信号を処理可能な電子回路と、を備えており、受光素子に至るまでの入射光の光路は反射鏡により設定されている。
【0003】
ところで、このような反射鏡は、これらの光学系や電子回路を収容するハウジングに取り付けられていることが多く、その取り付けには複数の組付部品が用いられているため、部品点数の増大を招来しやすい。そこで、下記、特許文献1に開示される「光学的情報読取装置」が提案されている。この開示技術では、矩形状からなる反射体(反射鏡)の長手方向の両端部分のみを一対の断面コ字状の反射体固定部材によって支持固定することで、部品点数の削減を可能にしている。
【特許文献1】特開2000−148903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この開示技術によると、矩形状の反射体をその長手方向両端側から挟み込むように一対の反射体固定部材によって支持固定していることから、当該反射体が合成樹脂等の可撓性を有する材料で形成されている場合には、反射体の組付時の状況や経年変化等により反射体が長手方向に反ったり湾曲するおそれがある。また一対の反射体固定部材も、合成樹脂等の可撓性を有する材料で形成されている場合には、経年変化等により反射体の長手方向に反ったり湾曲するおそれがある。
【0005】
このような反射体や反射体固定部材の反りや湾曲は、反射面の変形や歪み、さらには反射体のガタツキに繋がることから、入射光の光路を予定した方向に変更し難くするので、光学情報読取装置としての読取性能の劣化を招いてしまうという問題がある。
【0006】
また、反射鏡は、一般に、小さく取り扱い難いことから、その取り付けに際して作業者が反射面に触れて汚してしまうおそれもある。このような反射面の汚れは、反射鏡の性能劣化を招いたり、組付後の検査工程の増大を招くばかりでなく、光学情報読取装置としての読取性能の劣化という問題にも直結し得る。
【0007】
さらに、上記の開示技術では、反射体の固定には、超音波により溶着するとしている(特許文献1;段落番号0016)。このため、超音波溶着を可能にする製造設備を必要とすることから、その設備コストや維持コストの増大を招くという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、反射鏡に起因した光学情報読取装置の読取性能の劣化を抑制し得る光学情報読取装置の反射鏡を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、部品点数を増加させることなく、反射鏡の固定を容易にし得る光学情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の光学情報読取装置の反射鏡では、合成樹脂からなる矩形板状部の一方の面に金属膜を形成して構成される反射面を有し、光学情報読取装置内に設けられることで、当該光学情報読取装置の読取口から入射した入射光を前記反射面で反射しその光路を設定する光学情報読取装置の反射鏡であって、前記矩形板状部の他方の面に当該矩形の長手方向に延びて形成される線状の凸部を備えることを技術的特徴とする。
【0010】
特許請求の範囲に記載の請求項2の光学情報読取装置の反射鏡では、請求項1記載の光学情報読取装置の反射鏡において、前記凸部は、前記線状の一部または全部の高さが前記他方の面からほぼ4mm以上に設定されていることを技術的特徴とする。
【0011】
特許請求の範囲に記載の請求項3の光学情報読取装置の反射鏡では、請求項1記載の光学情報読取装置の反射鏡において、前記凸部には、当該凸部の高さ方向に延びる板形状または棒形状の把持部が形成されていることを技術的特徴とする。
【0012】
特許請求の範囲に記載の請求項4の光学情報読取装置の反射鏡では、請求項3記載の光学情報読取装置の反射鏡において、前記把持部には、当該把持部の一部または全部を折れ易くし得る溝部が形成されていることを技術的特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項5の光学情報読取装置では、読取口から入射した入射光を受光可能な受光素子、この受光素子の受光面に前記入射光による像を結像可能な結像光学系および前記受光素子に至るまでの前記入射光の光路途中に位置しこの光路を設定する矩形板状の反射鏡を含む光学系と、前記光学系を収容し、前記反射鏡を取付可能な取付部を内側に一体に形成するハウジングと、を備える光学情報読取装置であって、前記取付部は、前記反射鏡の長手方向の両側から当該長手方向および厚さ方向の移動を規制する一方で、前記反射鏡の短手方向の移動を許容して前記反射鏡を保持する一対のガイド部と、前記一対のガイド部を前記反射鏡の長手方向に連結する連結部と、前記ガイド部に保持された前記反射鏡の短手方向の移動を阻止する係止部と、を備えることを技術的特徴とする。
【0014】
特許請求の範囲に記載の請求項6の光学情報読取装置では、請求項5記載の光学情報読取装置において、前記連結部は、前記反射鏡を構成する反射面の裏側をほぼ面状に支持することを技術的特徴とする。
【0015】
特許請求の範囲に記載の請求項7の光学情報読取装置では、請求項4または5記載の光学情報読取装置において、前記反射鏡は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学情報読取装置の反射鏡で、前記取付部は、前記一対のガイド部が前記反射鏡の矩形板状部の長手方向および厚さ方向の移動を規制する一方で前記矩形板状部の短手方向の移動を許容して前記反射鏡を保持し、前記連結部が前記一対のガイド部を前記矩形板状部の長手方向に連結し、前記係止部は、前記取付部に保持された前記反射鏡の前記凸部を係止するスナップフィット構造の爪部であることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、矩形板状部の他方の面に当該矩形の長手方向に延びて形成される線状の凸部を備える。これにより、当該反射鏡が合成樹脂からなるものであっても、一方の面の反射面の裏側にあたる他方の面には、長手方向に延びる線状の凸部が形成されているので、この線状の凸部が背骨として当該反射鏡を長手方向に変形し難くするキール構造として機能することで、当該反射鏡が長手方向に反ったり湾曲することを防止できる。したがって、反射鏡の反りや湾曲による反射方向の狂いや乱れを防ぐことができるので、反射鏡に起因した光学情報読取装置の読取性能の劣化を抑制することができる。
【0017】
請求項2の発明では、線状の凸部は、当該線状の一部または全部の高さが他方の面からほぼ4mm以上に設定されている。これにより、反射面の裏側にあたる他方の面に形成される凸部が掴み代として機能し得るので、このような凸部を作業者が指先や工具で掴むことで、表側の反射面に触れることなく、当該反射鏡の組付作業を行うことができる。したがって、このような掴み代がないものに比べて、反射鏡の取り付けに際して作業者が反射面に触れて汚してしまうおそれが減少するので、反射鏡に起因した光学情報読取装置の読取性能の劣化を抑制することができる。
【0018】
請求項3の発明では、線状の凸部には、当該凸部の高さ方向に延びる板形状または棒形状の把持部が形成されている。これにより、このような板形状または棒形状の把持部が線状の凸部よりも掴み易い掴み代として機能し得るので、この把持部を作業者が指先や工具で掴むことで、表側の反射面に触れることがより一層少なくできる。したがって、このような把持部がないものに比べて、反射鏡の取り付けに際して作業者が反射面に触れて汚してしまうおそれが激減するので、反射鏡に起因した光学情報読取装置の読取性能の劣化をさらに抑制することができる。
【0019】
請求項4の発明では、把持部には、当該把持部の一部または全部を折れ易くし得る溝部が形成されている。これにより、この溝部から当該把持部の一部または全部を折ることができるので、例えば、当該把持部の長さが光学情報読取装置のハウジング内に収まらない長さに設定されていても、当該反射鏡の取付後にこの溝部で把持部を折って取り除くことで、組付作業を重視した長さに当該把持部を設定することができる。したがって、このような把持部によって当該反射鏡の組付作業が容易になり、作業者が反射面に触れる可能性をより低くするので、反射鏡に起因した光学情報読取装置の読取性能の劣化をさらに抑制することができる。
【0020】
請求項5の発明では、反射鏡を取付可能にハウジングに一体に形成される取付部は、反射鏡の長手方向の両側から当該長手方向および厚さ方向の移動を規制する一方で、反射鏡の短手方向の移動を許容して反射鏡を保持する一対のガイド部と、一対のガイド部を反射鏡の長手方向に連結する連結部と、ガイド部に保持された反射鏡の短手方向の移動を阻止する係止部と、を備える。これにより、ガイド部により長手方向の両側から保持された反射鏡は、係止部によりその短手方向の移動が阻止されるので、矩形板状の反射鏡を容易に固定することができる。また、一対のガイド部は、連結部により反射鏡の長手方向に連結されることから、経年変化等によりガイド部が反射鏡の長手方向に反ったり撓んだりするのを抑制するので、保持された反射鏡が、このような反りや撓みによってガタつくのを防ぐことができる。さらに、このような反射鏡の取付部は、ハウジングに一体に形成されるので、部品点数の増加を招くこともない。したがって、反射鏡に起因した光学情報読取装置の読取性能の劣化を抑制することができ、また部品点数を増加させることなく、反射鏡の固定を容易にすることもできる。
【0021】
請求項6の発明では、取付部の連結部は、反射鏡を構成する反射面の裏側をほぼ面状に支持する。これにより、一対のガイド部に保持された反射鏡は、その裏側からほぼ面状に支えられるので、裏面方向に張り出す湾曲変形を防止することができる。したがって、このような反射鏡の湾曲変形に起因した光学情報読取装置の読取性能の劣化を抑制することができ、また部品点数を増加させることなく、反射鏡の固定を容易にすることもできる。
【0022】
請求項7の発明では、反射鏡は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学情報読取装置の反射鏡であり、取付部は、一対のガイド部が反射鏡の矩形板状部の長手方向および厚さ方向の移動を規制する一方で矩形板状部の短手方向の移動を許容して反射鏡を保持し、連結部が一対のガイド部を矩形板状部の長手方向に連結し、係止部は、取付部に保持された反射鏡の凸部を係止するスナップフィット構造の爪部である。これにより、上述した請求項1〜4の反射鏡による作用および効果を享受しつつ、さらにスナップフィット構造により反射鏡の固定を容易にすることができる。したがって、これまで述べたような理由により反射鏡に起因した光学情報読取装置の読取性能の劣化を抑制することができることに加えて、部品点数を増加させることなく、反射鏡の固定を一層容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の光学情報読取装置の反射鏡および光学情報読取装置をバーコードリーダに適用した実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。まず、図1〜図3を参照してバーコードリーダ10の構成概要を説明する。なお、図1には、斜視図によりバーコードリーダ10の外観構成が示されており、図2には、縦断面図によりバーコードリーダ10の内部構成が示されている。また、図3には、斜視図によりバーコードリーダの上ケースの構成が示されている。
【0024】
図1〜図3に示すように、バーコードリーダ10は、主に、ハウジングを構成する上ケース11および下ケース12、このハウジング内に収容されるプリント配線板20、光学系30、さらにこのハウジングから外部に延びるケーブル40から構成されている。
【0025】
上ケース11は、ABS樹脂等の合成樹脂からなる成形部材で、主に、バーコードリーダ10の表側の外観を形成している(図1、図2参照)。この上ケース11の一端側11aには、読取口13が形成され、また他端側11bにはケーブル取付部14が形成されている(図3参照)。この読取口13が形成される一端側11aは、裏面側に大きく前傾する首曲がり形状に形成されている。これにより、作業者がバーコードリーダ10を当該上ケース11側から把持した状態で、読取対象物に貼付されたラベル等のバーコード(情報コード)に読取口13を当て易くしている。なお、この上ケース11の内側には、後で図3を参照して説明するように、光学系30を構成する各光学部品を取り付け可能にするミラーホルダ15a、レンズホルダ15b、ガイド部16a、16b、支持部17、スナップフィット18a、18b等がそれぞれ一体に形成されている。
【0026】
下ケース12も、ABS樹脂等の合成樹脂からなる成形部材で、主に、バーコードリーダ10の裏側の外観を形成している(図1、図2参照)。この下ケース12の一端側12aにも、上ケース11と同様に、読取口13が形成され、また他端側12bにもケーブル取付部14が形成されている(図3参照)。またこの読取口13が形成される一端側12aも、上ケース11の一端側11aと同様に、裏面側に大きく前傾する首曲がり形状に形成されている。なお、この下ケース12と前述した上ケース11とは、それぞれの開口部を組み合わせた状態で、これらを嵌合可能な図略のスナップフィット構造を有しており、プリント配線板20や光学系30を収容可能な内部空間を形成可能に構成されている。
【0027】
プリント配線板20は、上ケース11および下ケース12により形成される内部空間に収容可能な短冊状の矩形状に形成されており、一端側に入射光の通過を可能にする開口部21が設けられている。このプリント配線板20には、発光ダイオード23や電子部品25が実装されているほか、次に説明する光学系30を構成する受光センサ37も実装されている。なお、図2等には図示されていないが、このプリント配線板20は、上ケース11に形成されたスナップフィット構造の爪部により当該内部空間内で支持固定され得るように構成されている。またプリント配線板20には、図略の2次電池から駆動電力が供給されて、これらの電子部品25等で構成される信号処理回路等を駆動し得るように構成されている。
【0028】
光学系30は、主に、第1ミラー31、結像レンズ33、第2ミラー35、受光センサ37等から構成されている。第1ミラー31は、アクリル樹脂等の合成樹脂からなる矩形板状の部材で、一方の面に金属膜等を蒸着した反射面を備えることで、当該反射面に入射した入射光Lを反射する機能を有する反射鏡である。この第1ミラー31は、上ケース11に一体に形成されるミラーホルダ15aにより所定角度で保持されることで、発光ダイオード23からバーコードに照射されて反射した反射光のうち、読取口13に入射してプリント配線板20の開口部21を通過した入射光Lを、結像レンズ33の方向に向けて反射可能に構成されている。なお、ミラーホルダ15aは、スナップフィット構造により第1ミラー31の長手方向両側を挟持することで当該第1ミラー31を上ケース11に取り付け能にしている。
【0029】
結像レンズ33は、ガラスやアクリル樹脂等からなる所定開口の凸レンズで、第1ミラー31で反射された入射光Lによる像を第2ミラー35を介して受光センサ37の受光面37aで結像可能に構成されている。この結像レンズ33も、上ケース11に一体に形成されるレンズホルダ15bにより保持されることで、上ケース11に取り付け可能に構成されている。
【0030】
第2ミラー35は、第1ミラー31と同様に、アクリル樹脂等の合成樹脂からなる矩形板状部を有する部材で、当該矩形板状部の一方の面35aに金属膜等を蒸着した反射面αを備えることで、当該反射面αに入射した入射光Lを反射する機能を有する反射鏡である。この第2ミラー35は、後述するように、上ケース11に一体に形成されるガイド部16aや支持部17等により所定角度で保持されることで、結像レンズ33を介して入射した入射光Lを受光センサ37の受光面37aの方向に向けて反射可能に構成されている。つまり、光路LLを設定可能に構成されている。
【0031】
この第2ミラー35には、このような反射面αを備える矩形板状部のほかに、矩形板状部の他方の面35b、つまり反射面αの裏側にあたる非反射面に当該矩形の長手方向に延びる線状の凸部としての掴み代35dが形成されている。なお、この第2ミラー35の構成については、図4を参照して詳述する。
【0032】
受光センサ37は、画素が一列に並んだラインセンサタイプの、CCDやC−MOS等による受光素子で、固体撮像素子とも称されるものである。この受光センサ37は、受光面37aに入射した光の強弱に応じた電気信号をアナログ出力可能な機能部品で、これにより出力されたアナログ信号は、前述したプリント配線板20の電子部品25等で構成される信号処理回路によって所定のフィルタリング処理やディジタル信号に変換される処理等がなされた後、RS−232C仕様のケーブル40を介して外部に出力される。なお、このケーブル40の先端には、POS端末やパーソナルコンピュータ等のホストシステムと電気的に接続可能な図略のコネクタ等が接続されている。
【0033】
次に、図3〜図5に参照して、第2ミラー35の構成と、上ケース11に形成される第2ミラー35の取付構造とを説明する。なお、図4(A) には第2ミラー35の側面、図4(B) には図4(A) に示す4B方向から見た第2ミラー35の平面、図4(C) には図4(A) に示す4C方向から見た第2ミラー35の背面が、それぞれ示されている。また、図5には、第2ミラー35の組付工程が図示されている。
【0034】
図4(A) 〜図4(C) に示すように、第2ミラー35は、一方の面35aに金属膜等を蒸着した反射面αを備えた短冊状の矩形板状部と、この矩形板状部の他方の面35b(裏)側に当該矩形の長手方向に延びて形成される線状の凸部35cと、この線状の凸部35cからさらに他方の面35b(裏)側で当該矩形の短手方向に向かって当該矩形の長手方向に延びて形成される掴み代35dと、を有する形状に形成されている。なお、一方の面35aに形成される反射面αは、蒸着した金属膜の剥離を抑制するため、当該一方の面35aの端面いっぱいに形成されるのではなく、当該端面から内側に若干の余地を確保して形成されている。
【0035】
このように第2ミラー35では、その他方の面35bに長手方向に延びる線状の凸部35cが形成されているので、この線状の凸部35cが背骨として当該第2ミラー35を長手方向に変形し難くするキール構造として機能することで、当該第2ミラー35が長手方向に反ったり湾曲することを防止している。これにより、第2ミラー35の反りや湾曲による反射方向の狂いや乱れ、例えば、予定外の方向に入射光Lを反射したり、乱反射等を防止できるので、第2ミラー35に起因したバーコードリーダ10の読取性能の劣化を抑制することができる。
【0036】
また、この第2ミラー35には、凸部35cから延びる掴み代35dが形成されているので、例えば、この掴み代35dの他方の面35bからの高さHを4mm以上に設定することで、この凸部35cの延長として位置づけられるものが掴み代35dとして機能し得る。これにより、当該第2ミラー35の組付作業を行う作業者が、この掴み代35dを指先や工具で掴むことで、表側の反射面αに触れることなく、当該第2ミラー35の組付作業を行うことができる。したがって、このような掴み代35dがないものに比べて、第2ミラー35の取り付けに際して作業者が反射面αに触れて汚してしまうおそれが減少するので、第2ミラー35に起因したバーコードリーダ10の読取性能の劣化を抑制することができる。
【0037】
なお、掴み代35dの角度θは、本実施形態では、例えば、20°〜40°に設定されている。この角度θは、当該第2ミラー35を組み付ける上ケース11の形状による条件、ハウジングの内部空間に収容される電子部品25や光学系30の条件あるいは作業者の作業基準等の組付条件等の諸条件によって適宜設定される。
【0038】
このように構成される第2ミラー35は、図3に示すように、上ケース11に一体に形成される第2ミラー35の取付構造、即ち、一対のガイド部16a、16b、支持部17、スナップフィット18a、18b、によって上ケース11に取り付け可能に構成されている。
【0039】
ガイド部16a、16bは、いずれも角柱形状で対峙して上ケース11の裏側からハウジングの内部空間側に立ち上がるように形成される部材で、これらの間をつなぐように形成される支持部17との間にガイド溝19a、19bを形成可能に構成されている。このように形成されるガイド溝19a、19bは、第2ミラー35の長手方向の両端が挿入された場合に、その溝長さおよび溝幅が、当該第2ミラー35の長手方向および厚さ方向の移動を規制するように設定されている。
【0040】
また、ガイド部16a、16bの間に設けられる支持部17は、ガイド部16a、16bとともに、ガイド溝19a、19bを形成する断面三角形状のほぼ面状に第2ミラー35の他方の面35bを支える部材で、これらのガイド溝19a、19bに挿入された第2ミラー35を所定角度に維持可能にその斜面の角度が設定されている。これにより、一対のガイド部16a、16bに保持された第2ミラー35は、その他方の面35b(裏側)からほぼ面状に支えられるので、裏面方向に張り出す湾曲変形を防止することができる。なお、この所定角度は、前述したように、当該第2ミラー35が受光センサ37に向けて入射光Lを反射する角度である。
【0041】
スナップフィット18a、18bは、このようなガイド溝19a、19bに保持された第2ミラー35をその短手方向の移動を阻止する部材で、ガイド部16a、16bと同様に、対峙して上ケース11の裏側からハウジングの内部空間側に立ち上がる柱部18a1、18b1と、この柱部18a1、18b1の先端に形成される爪部18a2、18b2とから構成される(図5参照)。この爪部18a2、18b2は、前述した第2ミラー35の凸部35cの側部35eに係止可能なスナップフィット構造に構成されているので、後述するように、第2ミラー35の組付工程においてワンタッチで上ケース11に第2ミラー35を固定可能にしている(図5参照)。
【0042】
なお、本実施形態のようにガイド部16a、16bをいずれも角柱形状にすることなく、例えば、いずれも断面コ字形状で「コ」の開口が対向するように対峙して上ケース11の裏側から立ち上がるように形成し、またこれらとの隙間(ガイド溝19a、19b)を形成することなく、支持部17で直接連結するように形成しても良い。この場合、断面コ字形状の「コ」の開口が、ガイド溝19a、19bとなる。
【0043】
このように上ケース11に第2ミラー35の取付構造が構成されることで、図5に示すような組付工程によって第2ミラー35を上ケース11に取り付けることが可能となる。なお、図5(A) 〜図5(C) には、上ケース11および第2ミラー35の半分が図示されているため、実際には、このような上ケース11の取付構造および第2ミラー35が両側に存在することに留意されたい。
【0044】
図5(A) に示すように、第2ミラー35の組付工程では、まず作業者により掴み代35dが把持された第2ミラー35の矩形板状部の長手方向両側を、ガイド溝19a(19b)に挿入するように近づける(図5(A) に示す破線矢印)。このとき第2ミラー35の一方の面35a(反射面α)は、ガイド部16a、16b側に位置する。
【0045】
そして、図5(B) に示すように、この姿勢を確保したままガイド溝19a(19b)に第2ミラー35の矩形板状部の両側を挿入すると、やがて第2ミラー35の掴み代35dの側部35eがスナップフィット18a(18b)の爪部18a2(18b2)の斜面を滑って押し拡げるので、さらに第2ミラー35の矩形板状部の短手方向上側が上ケース11の内壁に当接するまで第2ミラー35を押し込む。
【0046】
すると、図5(C) に示すように、それまでスナップフィット18a(18b)の爪部18a2(18b2)を押し拡げていた掴み代35dの側部35eがその斜面を乗り越えるため、爪部18a2(18b2)が内側に戻って掴み代35dを係止する。つまり、作業者は、第2ミラー35の組付けの開始から終了まで第2ミラー35の掴み代35dを把持する以外は、第2ミラー35の他の部分に触れることなく、当該第2ミラー35の組付作業を実施することができる。また、第2ミラー35の係止には、スナップフィット18a、18bによるスナップフィット構造を採用しているので、第2ミラー35をワンタッチで上ケース11に組付つけることができる。
【0047】
このように本実施形態に係るバーコードリーダ10では、第2ミラー35を取付可能に上ケース11に一体に形成される取付構造、第2ミラー35の長手方向の両側から当該長手方向および厚さ方向の移動を規制する一方で、第2ミラー35の短手方向の移動を許容して第2ミラー35を保持する一対のガイド部16a、16bと、一対のガイド部16a、16bを第2ミラー35の長手方向に連結する支持部17と、ガイド部16a、16bに保持された第2ミラー35の短手方向の移動を阻止するスナップフィット18a、18bと、を備える。
【0048】
これにより、ガイド部16a、16bにより長手方向の両側から保持された第2ミラー35は、スナップフィット18a、18bによりその短手方向の移動が阻止されるので、矩形板状の第2ミラー35を容易に固定することができる。また、一対のガイド部16a、16bは、支持部17により第2ミラー35の長手方向に連結されることから、経年変化等によりガイド部16a、16bが第2ミラー35の長手方向に反ったり撓んだりするのを抑制するので、保持された第2ミラー35が、このような反りや撓みによってガタつくのを防ぐことができる。さらに、このような第2ミラー35の取付構造は、上ケース11に一体に形成されるので、部品点数の増加を招くこともない。したがって、第2ミラー35に起因したバーコードリーダ10の読取性能の劣化を抑制することができ、また部品点数を増加させることなく、第2ミラー35の固定を容易にすることもできる。
【0049】
次に、本実施形態に係るバーコードリーダ10の第2ミラー35の改変例を図6および図7を参照して説明する。なお、図6(A) には第2ミラー35’の側面、図6(B) には図6(A) に示す4B方向から見た第2ミラー35’の平面、図6(C) には図6(A) に示す4C方向から見た第2ミラー35’の背面が、それぞれ示されている。
【0050】
図6(A) 〜図6(C) に示すように、本改変例による第2ミラー35’では、棒状または長板状の掴み代35d’(把持部)を第2ミラー35の長手方向ほぼ中央にのみ形成し、その長さを前述した第2ミラー35の掴み代35dよりも長く設定している。また、第2ミラー35’では、当該掴み代35d’に掴み代35d’の一部または全部を折れ易くし得る溝部35fを形成している。また、掴み代35d’の長さは、組付作業を重視した長さ、例えば、20mm程度に設定されている。
【0051】
これにより、このような棒形状の掴み代35d’を設けることで、作業者は当該第2ミラー35’をよりつかみやすくなるので、一方の面35a(表側)の反射面αに触れることがより一層少なくできる。したがって、このような掴み代35d’がないものに比べて、第2ミラー35’の取り付けに際して作業者が反射面αに触れて汚してしまうおそれが激減するので、第2ミラー35’に起因したバーコードリーダ10の読取性能の劣化をさらに抑制することができる。
【0052】
このような第2ミラー35’の組付工程では、図6(A) 〜図6(C) に示すように、上ケース11に当該第2ミラー35’を取り付けた後、棒状の掴み代35d’を溝部35fから折って取り除く。これにより、例えば、当該掴み代35d’の長さがバーコードリーダ10のハウジング内に収まらない長さに設定されていても、当該第2ミラー35’の取付後にこの溝部35fで掴み代35d’を折って取り除くことで(切除部分は35d”)、組付作業を重視した長さに設定することができる。したがって、このような掴み代35d’によって当該第2ミラー35の組付作業が容易になり、作業者が反射面αに触れる可能性をより低くするので、第2ミラー35’に起因したバーコードリーダ10の読取性能の劣化をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るバーコードリーダの外観構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るバーコードリーダの内部構成を示す縦断面図である。
【図3】本実施形態に係るバーコードリーダの上ケースの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る第2ミラーを示す図で、図4(A) は側面図、図4(B) は図4(A) に示す4B方向から見た平面図、図4(C) は図4(A) に示す4C方向から見た背面図である。
【図5】本実施形態に係る第2ミラーの組付工程を示す説明図である。
【図6】本実施形態の改変例に係る第2ミラーを示す図で、図6(A) は側面図、図6(B) は図6(A) に示す6B方向から見た平面図、図6(C) は図6(A) に示す6C方向から見た背面図である。
【図7】本実施形態の改変例に第2ミラーの組付工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10…バーコードリーダ(光学情報読取装置)
11…上ケース(ハウジング)
12…下ケース(ハウジング)
13…読取口
16a、16b…ガイド部(一対のガイド部)
17…支持部(連結部)
18a、18b…スナップフィット(係止部、爪部)
19a、19b…ガイド溝
23…発光ダイオード
30…光学系
31…第1ミラー
33…結像レンズ(結像光学系)
35、35’…第2ミラー(反射鏡)
35a…一方の面
35b…他方の面
35c…凸部(線状の凸部)
35d…掴み代(線状の凸部)
35d’…掴み代(把持部)
37…受光セン(受光素子)
37a…受光面
α…反射面
L…入射光
LL…光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂からなる矩形板状部の一方の面に金属膜を形成して構成される反射面を有し、光学情報読取装置内に設けられることで、当該光学情報読取装置の読取口から入射した入射光を前記反射面で反射しその光路を設定する光学情報読取装置の反射鏡であって、
前記矩形板状部の他方の面に当該矩形の長手方向に延びて形成される線状の凸部を備えることを特徴とする光学情報読取装置の反射鏡。
【請求項2】
前記凸部は、前記線状の一部または全部の高さが前記他方の面からほぼ4mm以上に設定されていることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置の反射鏡。
【請求項3】
前記凸部には、当該凸部の高さ方向に延びる板形状または棒形状の把持部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置の反射鏡。
【請求項4】
前記把持部には、当該把持部の一部または全部を折れ易くし得る溝部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の光学情報読取装置の反射鏡。
【請求項5】
読取口から入射した入射光を受光可能な受光素子、この受光素子の受光面に前記入射光による像を結像可能な結像光学系および前記受光素子に至るまでの前記入射光の光路途中に位置しこの光路を設定する矩形板状の反射鏡を含む光学系と、
前記光学系を収容し、前記反射鏡を取付可能な取付部を内側に一体に形成するハウジングと、を備える光学情報読取装置であって、
前記取付部は、
前記反射鏡の長手方向の両側から当該長手方向および厚さ方向の移動を規制する一方で、前記反射鏡の短手方向の移動を許容して前記反射鏡を保持する一対のガイド部と、
前記一対のガイド部を前記反射鏡の長手方向に連結する連結部と、
前記ガイド部に保持された前記反射鏡の短手方向の移動を阻止する係止部と、
を備えることを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項6】
前記連結部は、前記反射鏡を構成する反射面の裏側をほぼ面状に支持することを特徴とする請求項5記載の光学情報読取装置。
【請求項7】
前記反射鏡は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学情報読取装置の反射鏡で、
前記取付部は、前記一対のガイド部が前記反射鏡の矩形板状部の長手方向および厚さ方向の移動を規制する一方で前記矩形板状部の短手方向の移動を許容して前記反射鏡を保持し、前記連結部が前記一対のガイド部を前記矩形板状部の長手方向に連結し、
前記係止部は、前記取付部に保持された前記反射鏡の前記凸部を係止するスナップフィット構造の爪部であることを特徴とする請求項4または5記載の光学情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−133567(P2007−133567A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324832(P2005−324832)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【出願人】(399131770)デンソーエレックス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】