説明

光学機器及びその制御方法

【課題】光学フィルタ表面や固体撮像素子のカバーガラス表面に付着した塵埃を、その表面を傷付けること無く除去する技術の実現。
【解決手段】被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段の前段に配設された光学素子とを備える光学機器において、前記光学素子に対向する位置に、当該光学素子の入光面の略全域に対して移動可能に絶縁部材を配設し、前記絶縁部材を少なくとも帯電若しくは除電させるための導電手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルカメラ等の光学機器に関し、詳しくは、光学機器に組み込まれた固体撮像素子や光学フィルタやレンズ等、焦点面もしくは焦点面近傍に配設された光学部材の表面に付着した塵埃を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レンズ交換式デジタル一眼レフカメラの撮影レンズの焦点面近傍に塵埃等が存在すると、その塵埃の影が固体撮像素子に写り込んでしまうという問題がある。このような塵埃は、レンズ交換時に塵埃が外部から侵入したり、カメラ内部でのシャッタやミラーの動作に伴い、その構造部材である樹脂等の微細な磨耗紛が発生したりすることが原因と考えられている。このような原因で発生した塵埃が、特に固体撮像素子の保護用のカバーガラスとカバーガラスの全面に配設されている赤外線カットフィルタや光学ローパスフィルタ(以下、LPFと略称する。)等の光学フィルタの間に入り込んでしまった場合には、その塵埃を除去するためにカメラを分解しなければならなかった。このため、固体撮像素子のカバーガラスと光学フィルタとの間に塵埃が入り込まないように密閉構造にすることは極めて有効なものであった。
【0003】
しかしながら、光学フィルタの固体撮像素子に対向側と反対の表面に塵埃が付着した場合、それが焦点面の近傍である場合にはその塵埃が影となって固体撮像素子に写り込んでしまうという問題が依然として残っている。
【0004】
そこで、上記問題点を解決するために、固体撮像素子のカバーガラス表面をワイパーで清掃するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のようにカメラを構成すると、レンズを外さず、またカメラを分解することなく固体撮像素子のカバーガラス表面もしくは防塵構造の最外面(例えば、光学フィルタ表面)に付着した塵埃を除去することが出来る。
【0006】
しかしながら、固体撮像素子のカバーガラス表面や防塵構造の最外面をワイパーで擦るため、金属紛のような硬い塵埃の場合、固体撮像素子のカバーガラス表面上や防塵構造の最外面上にキズを付ける可能性があるという問題がある。また、ワイパーで除去した塵埃がカメラ内を浮遊するので、一度除去した塵埃が固体撮像素子のカバーガラス表面や防塵構造の最外面に再付着してしまうという問題がある。
【0007】
これとは別に、フォーカルプレンシャッタと撮像装置との間に挿入されたクリーニングフィルムにより、撮像装置の表面に塵埃が付着しないように構成したものがある(例えば、特許文献2)。すなわち、クリーニングフィルム上に塵埃を付着させ、その付着したフィルム部分を巻き取ると同時にその表面に付着した塵埃を除去することによって、撮像装置表面を傷付けることなく、塵埃を除去することが可能となった。
【0008】
しかしながら、クリーニングフィルムを装填したり巻き取ったりするためのスペースが必要になることと、適宜クリーニングフィルムを交換することが必要になるので、カメラの大型化と作業の煩雑化といった不具合があった。
【特許文献1】特開2003-005254号公報(第8頁、図1及び図9)
【特許文献2】特開2002-271662号公報(第7頁、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来の問題点に着眼してなされたもので、その第1の目的は、光学フィルタ表面に付着した塵埃を、その表面を傷付けること無く除去可能な光学機器を実現することである。
【0010】
また、第2の目的は、固体撮像素子のカバーガラス表面に付着した塵埃を、その表面を傷付けること無く除去可能な光学機器を実現することである。
【0011】
また、第3の目的は、光学機器を大型化すること無く、固体撮像素子の光学フィルタ表面に付着した塵埃を除去可能な光学機器を実現することである。
【0012】
また、第4の目的は、単純な操作で固体撮像素子のカバーガラス表面に付着した塵埃を除去可能な光学機器を実現することである。
【0013】
また、第5の目的は、除去した塵埃が固体撮像素子のカバーガラス表面や光学フィルタ表面に再付着しない光学機器を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記第1、第3の目的を達成するために、第1の発明は、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段の前段に配設された光学素子とを備える光学機器において、前記光学素子に対向する位置に、当該光学素子の入光面の略全域に対して移動可能に絶縁部材を配設し、前記絶縁部材を少なくとも帯電若しくは除電させるための導電手段を設けた。
【0015】
また、上記第2、第4の目的を達成するために、第2の発明は、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段を備える光学機器において、前記撮像手段に対向する位置に、当該撮像手段の受光面の略全域に対して移動可能に絶縁部材を配設し、前記絶縁部材を少なくとも帯電若しくは除電させるための導電手段を設けた。
【0016】
また、上記第1、第3の目的を達成するために、第3の発明は、略中央部に被写体光路となる開口部が形成された一対の板材を有し、当該板材の間に前記開口部を開閉するシャッタ羽根が配設されたシャッタ装置と、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段の前段に配設された光学素子とを備える光学機器において、前記シャッタ羽根における前記光学素子に対向する位置に絶縁部材を配設し、前記絶縁部材を少なくとも帯電若しくは除電させるための導電手段を前記シャッタ羽根と前記光学素子との間に配設した。
【0017】
また、上記第2、第4の目的を達成するために、第4の発明は、略中央部に被写体光路となる開口部が形成された一対の板材を有し、当該板材の間に前記開口部を開閉するシャッタ羽根が配設されたシャッタ装置と、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段を備える光学機器において、前記シャッタ羽根における前記撮像手段に対向する位置に絶縁部材を配設し、前記絶縁部材を少なくとも帯電若しくは除電させるための導電手段を前記シャッタ羽根と前記撮像手段との間に配設した。
【0018】
また、上記第1,3の目的を達成するために、第5の発明は、上記第3の発明において、前記光学機器は、少なくとも被写体の撮像を行う撮像モードと、前記シャッタ羽根を開放状態にして前記光学素子の表面を露呈状態にするクリーニングモードとが切り換え可能であって、前記光学機器が前記クリーニングモードに設定された時にのみ、前記導電手段によって前記絶縁体の帯電若しくは除電を行う。
【0019】
また、上記第2,4の目的を達成するために、第6の発明は、上記第4の発明において、前記光学機器は、少なくとも被写体の撮像を行う撮像モードと、前記シャッタ羽根を開放状態にして前記撮像手段の表面を露呈状態にするクリーニングモードとが切り換え可能であって、前記光学機器が前記クリーニングモードに設定された時にのみ、前記導電手段によって前記絶縁体の帯電若しくは除電を行う。
【0020】
また、上記第5の目的を達成するために、第7の発明は、上記第3の発明において、前記シャッタ羽根と前記光学素子との間の前記シャッタ羽根の全開位置近傍に、粘着部材が配設されている。
【0021】
また、上記第5の目的を達成するために、第8の発明は、上記第4の発明において、前記シャッタ羽根と前記撮像手段との間の前記シャッタ羽根の全開位置近傍に、粘着部材が配設されている。
【0022】
また、上記第5の目的を達成するために、第9の発明は、上記第3の発明において、前記シャッタ羽根と前記光学素子との間の前記シャッタ羽根の全開位置近傍に、第2の導電部材が配設されている。
【0023】
また、上記第5の目的を達成するために、第10の発明は、上記第4の発明において、前記シャッタ羽根と前記撮像手段との間の前記シャッタ羽根の全開位置近傍に、第2の導電部材が配設されている。
【0024】
また、上記第5の目的を達成するために、第11及び13の発明は、略中央部に被写体光路となる開口部が形成された一対の板材を有し、当該板材の間に前記開口部を開閉するシャッタ羽根が配設されたシャッタ装置と、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段の前段に配設された光学素子とを備える光学機器において、前記シャッタ羽根は、少なくとも第1の動作スピードと第2の動作スピードとが切り換え可能であり、前記光学機器は、少なくとも前記シャッタ羽根を開放状態にして前記光学素子若しくは前記撮像手段の表面を露呈状態にするクリーニングモードと、被写体の撮像を行う撮像モードとが切り換え可能であって、前記クリーニングモード時には前記シャッタ羽根を前記第1の動作スピードで動作させると共に、前記撮像モード時には前記シャッタ羽根を前記第2の動作スピードで動作させる。
【0025】
また、上記第5の目的を達成するために、第12及び14の発明は、上記第11及び13の発明において、前記シャッタ羽根は、更に前記第1の動作スピードより速い第3の動作スピードに切り換え可能であり、前記光学機器は、前記クリーニングモード時には前記シャッタ羽根を前記第1の動作スピードで動作させた後に前記第3の動作スピードで少なくとも開き動作をさせる。
【発明の効果】
【0026】
上記第1及び第3の発明によれば、光学機器を大型化すること無く光学フィルタ表面に付着した塵埃を、その表面を傷付けること無く除去可能な光学機器を実現することが可能である。
【0027】
上記第2及び第4の発明によれば、光学機器を大型化すること無く固体撮像素子のカバーガラス表面に付着した塵埃を、その表面を傷付けること無く除去可能な光学機器を実現することが可能である。
【0028】
上記第5,6の発明によれば、光学機器をクリーニングモードに設定する単純操作だけで、光学機器を大型化すること無く光学フィルタ表面もしくは固体撮像素子のカバーガラス表面に付着した塵埃を、その表面を傷付けること無く除去可能な光学機器を実現することが可能である。
【0029】
上記第7及び第9の発明によれば、除去した塵埃の光学フィルタ表面への再付着を防止した光学機器を実現することが可能である。
【0030】
上記第8及び第10の発明によれば、除去した塵埃の固体撮像素子のカバーガラス表面への再付着を防止した光学機器を実現することが可能である。
【0031】
上記第11及び13の発明によれば、光学機器をクリーニングモードに設定する単純操作だけで、光学機器を大型化すること無く光学フィルタ表面もしくは固体撮像素子のカバーガラス表面に付着した塵埃を、その表面を傷付けること無く除去可能な光学機器を実現することが可能である。
【0032】
上記第12及び14の発明によれば、光学機器をクリーニングモードに設定する単純操作だけで、光学機器を大型化すること無く光学フィルタ表面もしくは固体撮像素子のカバーガラス表面に付着した塵埃を、その表面を傷付けること無く除去可能であって、除去した塵埃の再付着を防止した光学機器を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態として適用したレンズ交換式デジタル一眼レフカメラ(以下、D-SLRと略称する。)について詳細に説明する。
【0034】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0035】
また、本発明は、後述する実施形態である各装置の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る実施形態のD-SLR100の撮像部10及びフォーカルプレンシャッタ50の概略構成を説明するための側方断面図、図2はフォーカルプレンシャッタ50の主要部を説明するための前方斜視図、図3はフォーカルプレンシャッタ50の後方斜視図(撮像部10から見た斜視図)、図4はフォーカルプレンシャッタ50の前方斜視図、図5及び図6はフォーカルプレンシャッタ50の動作を説明するための側方断面図である。
【0036】
図1から図6において、撮像部10は、光学素子11と光学素子11を保持する保持部材12及び光学素子11の表面と当接した状態で光学素子11と保持部材12とを一体化させている支持板13、固体撮像素子15bを保護するためのカバー部材15aとで構成された固体撮像装置15、固体撮像装置15のカバー部材15aと光学素子11との間を密封するためのシール部材16、固体撮像装置15の接続端子15cが接続しているとともに、D-SLR100の動作を制御する制御回路を構成する電気素子が搭載されている基板17、固体撮像装置15と一体化して固体撮像装置15を不図示のD-SLR100のシャーシに不図示のビスによって固定するための保持板18と、から主に構成されている。
【0037】
一方、フォーカルプレンシャッタ50は、複数のシャッタ羽根21a〜21dとで構成されている先幕21、同じく複数のシャッタ羽根から構成されている後幕22、フォーカルプレンシャッタ50において先幕21及び後幕22の駆動スペースを分割している中間板23、後幕22の押え板であると同時に、撮像のためにその略中央部に開口24aが設けてある押え板24、先幕21の押え板であると同時に、撮像のためにその略中央部に開口25aが設けられているカバー板25である。
【0038】
26は、先幕21を図1から図4の状態から開口24a及び開口25aが露呈する状態にするために、後述の先幕駆動源35により駆動されて開き動作を行うための駆動レバーであり、27は駆動レバー26と共に先幕21の開き動作を行うと共に、開き動作を行った先幕21を再び図1や図2に示した閉状態にするために後述のチャージ駆動源36により駆動されて閉じ動作を行うためのチャージレバー、28及び29は後述の後幕駆動源37により駆動されて後幕22の開閉動作を行うための後幕駆動レバーである。
【0039】
つまり、先幕21を構成しているシャッタ羽根21a〜21dは、先幕駆動レバー26及びチャージレバー27によって一体的に開閉動作を行う。また、後幕22を構成している各シャッタ羽根も後幕駆動レバー28及び29により一体的に開閉動作を行う。
【0040】
また、30は光学素子11の表面に付着した塵埃を示している。
【0041】
31は、シャッタ羽根21aと一体化しているポリイミド等の絶縁体、32は絶縁体31を帯電及び除電するためのコイル、33は先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが開いた時にその位置決めとなるストッパー部33aを有するストッパーゴムである。
【0042】
また、35は公知のコイルやヨーク等で構成された電磁アクチュエータと駆動レバー等で構成されている先幕駆動源(簡略化して図示)、36は開き動作を行った先幕21を再び図1や図2に示した閉状態にするために閉じ動作を行うための、駆動レバーやスプリング等で構成されているチャージ源(簡略化して図示)、37は後幕22の開閉動作を行うための、公知のコイルやヨーク等で構成された電磁アクチュエータと駆動レバー等で構成されている後幕駆動源(簡略化して図示)、とから主に構成されている。これらの先幕駆動源35、チャージ源36および後幕駆動源37の制御により、先幕21および後幕22の開閉動作における速度を可変とすることが可能である。
【0043】
図7は、本実施形態におけるD-SLR100のカメラシステムの構成を示す概略図である。このカメラシステムは、カメラ本体(撮像装置)と、該カメラ本体に着脱可能に装着されるレンズ装置とを有している。
【0044】
D-SLR100は、CCDあるいはCMOSセンサなどの撮像素子を用いた単板式のデジタルカラーカメラであり、撮像素子を連続的または単発的に駆動して動画像または静止画像を表わす画像信号を得る。ここで、撮像素子は、露光した光を画素毎に電気信号に変換して受光量に応じた電荷を蓄積し、蓄積された電荷を読み出すタイプのエリアセンサである。
【0045】
図7において、100はD-SLR100、101はD-SLR100に対して取り外し可能なレンズ装置102を接続するマウント機構であって、このマウント機構101を介してレンズ装置102がD-SLR100に電気的、機械的に接続される。そして、焦点距離の異なるレンズ装置102をD-SLR100に装着することによって、様々な画角の撮影画面を得ることが可能である。
【0046】
レンズ装置102が備える撮影光学系103から固体撮像装置15に至る光路L1中には、固体撮像装置15上に物体像(光学像)の必要以上に高い空間周波数成分が伝達されないように撮影光学系103のカットオフ周波数を制限する光学素子11が設けられている。
【0047】
固体撮像装置15から読み出された信号は、後述するように所定の処理が施された後、画像データとしてディスプレイユニット107上に表示される。ディスプレイユニット107はD-SLR100の背面に取り付けられており、ユーザはディスプレイユニット107での表示を直接観察できるようになっている。
【0048】
ディスプレイユニット107を、有機EL空間変調素子や液晶空間変調素子、微粒子の電気泳動を利用した空間変調素子などで構成すれば、消費電力を小さくでき、かつディスプレイユニット107の薄型化を図ることができる。これにより、D-SLR100の省電力化および小型化を図ることができる。
【0049】
固体撮像装置15は、具体的には、増幅型固体撮像素子の1つであるCMOSプロセスコンパチブルのセンサ(以降、CMOSセンサと略称する。)である。CMOSセンサの特長の1つに、エリアセンサ部のMOSトランジスタと撮像装置駆動回路、AD変換回路、画像処理回路といった周辺回路を同一工程で形成できるため、マスク枚数、プロセス工程がCCDと比較して大幅に削減できる。また、任意の画素へのランダムアクセスが可能といった特長も有し、ディスプレイ用に間引いた読み出しが容易であって、ディスプレイユニット107において高い表示レートでリアルタイム表示が行える。
【0050】
固体撮像装置15は、上述した特長を利用し、ディスプレイ画像出力動作(固体撮像装置15の受光領域のうち一部を間引いた領域での読み出し)および高精彩画像出力動作(全受光領域での読み出し)を行う。
【0051】
111は可動型のハーフミラーであり、撮影光学系103からの光束のうち一部を反射させるとともに、残りを透過させる。ハーフミラー111の屈折率はおよそ1.5であり、厚さが0.5mmである。105は撮影光学系によって形成される物体像の予定結像面に配置されたフォーカシングスクリーン、112はペンタプリズムである。
109はフォーカシングスクリーン上に結像された物体像を観察するためのファインダレンズであり、単数もしくは複数のファインダレンズ(不図示)で構成されている。フォーカシングスクリーン105、ペンタプリズム112およびファインダレンズ109は、ファインダ光学系を構成する。
【0052】
ハーフミラー111の背後(像面側)には可動型のサブミラー122が設けられ、ハーフミラー111を透過した光束のうち光軸L1に近い光束を反射させて焦点検出ユニット121に導いている。サブミラー122は不図示のハーフミラー111の保持部材に設けられた回転軸を中央に回転し、ハーフミラー111の動きに連動して移動する。なお焦点検出ユニット121は、サブミラー122からの光束を受光して位相差検出方式による焦点検出を行う。
【0053】
また、ハーフミラー111とサブミラー122から成る光路分割系は、ファインダ光学系に光を導くための第1の光路分割状態、不図示の結像レンズからの光束をダイレクトに固体撮像装置15に導くために撮影光路から退避した第2の光路分割状態(図7中破線で示した位置:111´及び122´)をとることが出来る。
【0054】
114は可動式の閃光発光ユニットであり、D-SLR100に収納される収納位置とD-SLR100から突出した発光位置との間で移動可能である。50は像面に入射する光量を調節するフォーカルプレンシャッタ、119はD-SLR100を起動させるためのメインスイッチである。
【0055】
120は2段階で押圧操作されるレリーズボタンであり、半押し操作(SW1のON)で撮影準備動作(測光動作や焦点調節動作等)が開始され、全押し操作(SW2のON)で撮影動作(固体撮像装置15から読み出された画像データの記録媒体への記録)が開始される。
【0056】
123はD-SLR100の光学素子11の表面に付着した塵埃を除去するためにD-SLR100を被写体の撮像を行う撮像モードからクリーニングモードにするためのモード切り換えスイッチ、180は、フォーカシングスクリーン105上に特定の情報を表示させるための光学ファインダ内情報表示ユニットである。
【0057】
図8は、本実施形態におけるD-SLR100のカメラシステムの電気的構成を示すブロック図である。ここで、図7で説明した部材と同じ部材については同一符号を付している。まず、物体像の撮像、記録に関する部分から説明する。
【0058】
カメラシステムは、撮像系、画像処理系、記録再生系および制御系を有する。撮像系は、撮影光学系103および固体撮像装置15を有し、画像処理系は、A/D変換器130、RGB画像処理回路131およびYC処理回路132を有する。また、記録再生系は、記録処理回路133および再生処理回路134を有し、制御系は、カメラシステム制御回路(制御手段)135、操作検出回路136、撮像装置駆動回路137を有する。
【0059】
138は、外部のコンピュータ等に接続され、データの送受信を行うために規格化された接続端子である。上述した電気回路は、不図示の小型燃料電池からの電力供給を受けて駆動する。
【0060】
撮像系は、物体からの光を、撮影光学系103を介して固体撮像装置15の撮像面に結像させる光学処理系である。撮影光学系103内に設けられた絞り104の駆動を制御するとともに、必要に応じてフォーカルプレンシャッタ50の駆動をシャッタ制御回路145を介して行うことによって、適切な光量の物体光を固体撮像装置15で受光させることができる。
【0061】
固体撮像装置15として、正方画素が長辺方向に3700個、短辺方向に2800個並べられ、合計約1000万個の画素数を有する撮像素子が用いられている。そして、各画素にR(赤色)、G(緑色)、B(青色)のカラーフィルタが交互に配置され、4画素が一組となるいわゆるベイヤー配列を構成している。
【0062】
ベイヤー配列では、観察者が画像を見たときに強く感じやすいGの画素をRやBの画素よりも多く配置することで、総合的な画像性能を上げている。一般に、この方式の撮像素子を用いる画像処理では、輝度信号は主にGから生成し、色信号はR,G,Bから生成する。
【0063】
固体撮像装置15から読み出された信号は、A/D変換器130を介して画像処理系に供給される。この画像処理系での画像処理によって画像データが生成される。
【0064】
A/D変換器130は、固体撮像装置15の各画素から読み出された信号の振幅に応じて、例えば固体撮像装置15の出力信号を10ビットのデジタル信号に変換して出力する信号変換回路であり、以降の画像処理はデジタル処理にて実行される。
【0065】
画像処理系は、R,G,Bのデジタル信号から所望の形式の画像信号を得る信号処理回路であり、R,G,Bの色信号を輝度信号Yおよび色差信号(R−Y)、(B−Y)にて表わされるYC信号などに変換する。
【0066】
RGB画像処理回路131は、A/D変換器130の出力信号を処理する信号処理回路であり、ホワイトバランス回路、ガンマ補正回路、補間演算による高解像度化を行う補間演算回路を有する。
【0067】
YC処理回路132は、輝度信号Yおよび色差信号R−Y、B−Yを生成する信号処理回路である。このYC処理回路132は、高域輝度信号YHを生成する高域輝度信号発生回路、低域輝度信号YLを生成する低域輝度信号発生回路および、色差信号R−Y、B−Yを生成する色差信号発生回路を有している。輝度信号Yは、高域輝度信号YHと低域輝度信号YLを合成することによって形成される。
【0068】
記録再生系は、不図示のメモリへの画像信号の出力と、ディスプレイユニット107への画像信号の出力とを行う処理系である。記録処理回路133はメモリへの画像信号の書き込み処理および読み出し処理を行い、再生処理回路134はメモリから読み出した画像信号を再生して、ディスプレイユニット107に出力する。
【0069】
また、記録処理回路133は、静止画データおよび動画データを表わすYC信号を所定の圧縮形式にて圧縮するとともに、圧縮されたデータを伸張させる圧縮伸張回路を内部に有する。圧縮伸張回路は、信号処理のためのフレームメモリなどを有しており、このフレームメモリに画像処理系からのYC信号をフレーム毎に蓄積し、複数のブロックのうち各ブロックから蓄積された信号を読み出して圧縮符号化する。圧縮符号化は、例えば、ブロック毎の画像信号を2次元直交変換、正規化およびハフマン符号化することにより行われる。
【0070】
再生処理回路134は、輝度信号Yおよび色差信号R−Y、B−Yをマトリクス変換して、例えばRGB信号に変換する回路である。再生処理回路134によって変換された信号はディスプレイユニット107に出力され、可視画像として表示(再生)される。再生処理回路134およびディスプレイユニット107は、Bluetoothなどの無線通信を介して接続されていてもよく、このように構成すれば、このカメラで撮像された画像を離れたところからモニタすることができる。
【0071】
一方、制御系における操作検出回路136は、メインスイッチ119、レリーズボタン120、モード切り換えスイッチ123等(他のスイッチは不図示)の操作を検出して、この検出結果をカメラシステム制御回路135に出力する。
【0072】
カメラシステム制御回路135は、操作検出回路136からの検出信号を受けることで、検出結果に応じた動作を行う。また、カメラシステム制御回路135は、撮像動作を行う際のタイミング信号を生成して、撮像装置駆動回路137に出力する。
【0073】
撮像装置駆動回路137は、カメラシステム制御回路135からの制御信号を受けることで固体撮像装置15を駆動させるための駆動信号を生成する。情報表示回路142は、カメラシステム制御回路135からの制御信号を受けて光学ファインダ内情報表示ユニット180の駆動を制御する。
【0074】
制御系は、D-SLR100に設けられた各種スイッチの操作に応じて撮像系、画像処理系および記録再生系での駆動を制御する。例えば、レリーズボタン120の操作によってSW2がONとなった場合、制御系(カメラシステム制御回路135)は、固体撮像装置15の駆動、RGB画像処理回路131の動作、記録処理回路133の圧縮処理などを制御する。さらに、制御系は、情報表示回路142を介して光学ファインダ内情報表示ユニット180の駆動を制御することによって、光学ファインダ内での表示(表示セグメントの状態)を変更する。
【0075】
次に、撮影光学系103の焦点調節動作に関して説明する。
【0076】
カメラシステム制御回路135はAF制御回路140に接続している。また、レンズ装置101をD-SLR100に装着することで、カメラシステム制御回路135は、マウント接点100a、101aを介してレンズ装置101内のレンズシステム制御回路141と接続される。そして、AF制御回路140およびレンズシステム制御回路141と、カメラシステム制御回路135とは、特定の処理の際に必要となるデータを相互に通信する。
【0077】
焦点検出ユニット121(焦点検出用センサ167)は、撮影画面内の所定位置に設けられた焦点検出領域での検出信号をAF制御回路140に出力する。AF制御回路140は、焦点検出ユニット121からの出力信号に基づいて焦点検出信号を生成し、撮影光学系103の焦点調節状態(デフォーカス量)を検出する。そして、AF制御回路140は、検出したデフォーカス量を撮影光学系103の一部の要素であるフォーカスレンズの駆動量に変換し、フォーカスレンズの駆動量に関する情報を、カメラシステム制御回路135を介してレンズシステム制御回路141に送信する。
【0078】
ここで、移動する物体に対して焦点調節を行う場合、AF制御回路140は、レリーズボタン120が全押し操作されてから実際の撮像制御が開始されるまでのタイムラグを勘案して、フォーカスレンズの適切な停止位置を予測する。そして、予測した停止位置へのフォーカスレンズの駆動量に関する情報をレンズシステム制御回路141に送信する。
【0079】
一方、カメラシステム制御回路135が、固体撮像装置15の出力信号に基づいて物体の輝度が低く、十分な焦点検出精度が得られないと判定したときには、閃光発光ユニット114又は、D-SLR100に設けられた不図示の白色LEDや蛍光管を駆動することによって物体を照明する。
【0080】
レンズシステム制御回路141は、カメラシステム制御回路135からフォーカスレンズの駆動量に関する情報を受信すると、レンズ装置101内に配置されたAFモータ147の駆動を制御することによって、不図示の駆動機構を介してフォーカスレンズを上記駆動量の分だけ光軸L1方向に移動させる。これにより、撮影光学系103が合焦状態となる。なお、上述したようにフォーカスレンズが液体レンズ等で構成されている場合には、界面形状を変化させることになる。
【0081】
また、レンズシステム制御回路141は、カメラシステム制御回路135から露出値(絞り値)に関する情報を受信すると、レンズ装置101内の絞り駆動アクチュエータ143の駆動を制御することによって、上記絞り値に応じた絞り開口径となるように絞り104を動作させる。
【0082】
また、シャッタ制御回路145は、カメラシステム制御回路135からのシャッタ速度に関する情報を受信すると、フォーカルプレンシャッタ50の先幕22、後幕21の駆動源である駆動源27、29及びチャージ部28の駆動を制御することによって、上記シャッタ速度になるように先幕22及び後幕21を動作させる。
【0083】
このフォーカルプレンシャッタ50と絞り104の動作により、適切な光量の物体光を像面側に向かわせることができる。
【0084】
また、AF制御回路140において物体にピントが合ったことが検出されると、この情報はカメラシステム制御回路135に送信される。このとき、レリーズボタン120の全押し操作によってSW2がON状態になれば、上述したように撮像系、画像処理系および記録再生系によって撮影動作が行われる。
【0085】
図5、図6及び図9を用いて、クリーニングモード時における、先幕21等の各部材の動作について説明する。
【0086】
ステップS100にて、D-SLR100のモード切り換えスイッチ123が操作されてクリーニング(CLN)モードにあるかどうかの検出がカメラシステム制御回路135において行われる。この時、モード切り換えスイッチ123が操作をカメラシステム制御回路135が検出してクリーニングモードに移行することが検知されたら、ステップS101へと進む。
【0087】
ステップS101では、クリーニングモードに移行する前のD-SLR100が設定していたシャッタ速度、絞り値等の撮影条件をカメラシステム制御回路135中にある不図示のメモリ部に記憶してステップS102へと進む。
【0088】
ステップS102では、先幕駆動源35を動作させることにより、先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dの開き動作を行って先幕21が全開した状態にして、ステップS103へと進む。
【0089】
ステップS103では、先幕21のシャッタ羽根21aと一体化している絶縁体31を帯電させるために、コイル32に所定の電圧を印加する。
【0090】
ステップS103とほぼ同時に、ステップS104ではカメラシステム制御回路135により、先幕21の駆動速度VをV1に設定する旨の命令がシャッタ制御回路145に送られる。これにより、チャージ駆動源36は、先幕21が設定速度V1にて閉じ動作を行うように設定される。なお、この設定速度V1は、D-SLR100が撮像モードにある時に、先幕21の開閉動作が行われる速度(後述の設定速度V2)よりも遅い設定となっている。これは、次ステップであるS105にて光学素子11の表面に付着した塵埃30を絶縁体31に引き付ける時には、絶縁体31の移動速度が遅い方が有利だからである。
【0091】
ステップS105では、先のステップS104にて設定された設定速度V1にて先幕21の閉じ動作が行われる。この時、絶縁体31は帯電しているので、光学素子11の表面に塵埃30が付着していた場合は、既述したように塵埃30は帯電しているので、お互いに帯電している塵埃30と絶縁体31との間で静電気力が発生する。絶縁体31は先幕21のシャッタ羽根21aに固定されているので、塵埃30は光学素子11の表面との付着力に抗してこの静電気力(静電吸着)によって塵埃30が絶縁体31に引き寄せられる。そして、上記静電気力等によって絶縁体31に引き寄せられた塵埃30は、絶縁体30の表面に留まり続ける。
【0092】
ステップS106では、フォーカルプレンシャッタ50に設けられた不図示の検出手段により、先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが全て閉じ動作を完了したかどうかの検出が行われる。ステップS106にて先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが全て閉じ動作を完了したことが検知されると、ステップS107へと進む。
【0093】
ステップS107では、ステップS104にて設定した速度速度V1にて、先幕21の開き動作が先幕駆動源35を駆動することにより開始する。
【0094】
ステップS108では、ステップS103にて印加した電圧とは逆の電圧をコイル32に印加する。
【0095】
ステップS109では、フォーカルプレンシャッタ50に設けられた不図示の検出手段により、先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが全て開き動作を完了したかどうかの検出が行われる。ステップS109にて先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが全て開き動作を完了したことが検知されると、ステップS110へと進む。
【0096】
ところでステップS109では、ステップS108にてコイル32にはステップS103にて印加した電圧とは逆の電圧をコイル32に印加されているので、先幕21の開き動作により絶縁体31とコイル32とが当接すると、絶縁体31が除電される。この除電操作により、静電気力で絶縁体31の表面に付着していた塵埃30は、絶縁体31が除電されたことにより、塵埃30との間に働いていた静電気力がなくなってしまうので、重力により絶縁体31の表面から離れて、ストッパーゴム33の表面に設けられた吸着部33bに捕獲される。これにより、光学素子11の表面から除去した塵埃30は、D-SLR100のボディ内で漂うようなことはなくなるので、光学素子11の表面に再付着する虞もなくなる。
【0097】
ステップS110では、カメラシステム制御回路135が有する不図示のタイマ部にて、所定秒時のカウントが行われる。これは、ステップS109にて絶縁体31の表面から離れた塵埃30が、吸着部33bに捕獲される前に先幕21の閉じ動作が行われることによって、フォーカルプレンシャッタ50の周囲で塵埃30が漂流して光学素子11の表面に再付着することを防止するためである。
【0098】
ステップS111では、カメラシステム制御回路135により、先幕21の駆動速度Vを通常の開閉動作速度であるV2に設定する旨の命令がシャッタ制御回路145に送られる。これにより、チャージ駆動源36は、先幕21が設定速度V2にて閉じ動作を行うように設定される。
【0099】
ステップS112では、ステップS111にて設定した速度V2にてチャージ駆動源36が駆動されて、先幕21の閉じ動作が行われる。
【0100】
ステップS113では、ステップS112での先幕21の閉じ動作の完了を待って、クリーニングモードが解除されると同時に、ステップS114でディスプレイユニット107にクリーニングモードが解除された(もしくはクリーニング動作が完了した)旨のメッセージが表示される。
【0101】
その後、ステップS115において、ステップS101にて記憶した撮影条件等にD-SLR100が復帰して、一連のシーケンスを終了する。
【0102】
以上の構成によれば、光学素子表面に付着した塵埃を、光学素子に触れること無く除去可能である光学機器を実現することができる。
【0103】
また、光学素子表面に付着していた塵埃を除去する絶縁体は、先幕を構成するシャッタ羽根と一体化しているので、絶縁体を駆動するための別の駆動部材も不要であるばかりではなく、該絶縁体を帯電/除電するためのコイルも、フォーカルプレンシャッタと光学素子の間のスペースに設けられているので、コイルを配設するための専用スペースはほとんど必要ない。よって、光学機器を大型化すること無く、光学素子表面に付着した塵埃を除去することが可能な光学機器を実現することが出来る。
【0104】
また、光学素子表面に付着した塵埃を、光学機器をクリーニングモードに設定するだけで除去可能なので、簡単な操作で塵埃除去が可能な光学機器を実現することができる。
さらには、光学素子表面に付着した塵埃を、光学素子表面への再付着を防止して除去可能な光学機器を実現することができる。
[第2の実施形態]
ところで、絶縁体31に塵埃30が付着している時に作用している力が静電気力以外にもあり、絶縁体31がコイル32により除電されて静電気力が消滅しても、重力だけではストッパーゴム33の吸着部33bには落下せずに、そのまま絶縁体31の表面に付着し続ける塵埃30が存在する可能性がある。よって、本実施形態では、光学素子11の表面から除去した塵埃30をさらに確実に吸着部33bに捕獲するための方法について説明する。
【0105】
本実施形態のD-SLR100の構成は、第1の実施形態と全く同一であるが、D-SLR100がクリーニングモードに移行してからの先幕21の駆動シーケンスのみが異なるので、図10に示したフローチャートを用いて本実施形態におけるD-SLR100のクリーニングモード時の動作について以下に説明する。
【0106】
ステップS200からステップS207の、速度速度V1にて、先幕21の開き動作が先幕駆動源35を駆動することにより先幕21が開き動作を開始するところまでは、ステップS100からステップS107と同一なので、その説明を省略する。
【0107】
ステップS208では、ステップS203にて印加した電圧とは逆の電圧をコイル32に印加して、絶縁体31を除電する。この除電操作により、静電気力で絶縁体31の表面に付着していた塵埃30の一部は、絶縁体31が除電されたことにより、塵埃30との間に働いていた静電気力がなくなってしまうので、重力により絶縁体31の表面から離れて、ストッパーゴム33の表面に設けられた吸着部33bに捕獲される。これにより、光学素子11の表面から除去した塵埃30は、D-SLR100のボディ内で漂うようなことはなくなるので、光学素子11の表面に再付着する虞もなくなる。
【0108】
ステップS209では、フォーカルプレンシャッタ50に設けられた不図示の検出手段により、先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが全て開き動作を完了したかどうかの検出が行われる。ステップS208にて先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが全て開き動作を完了したことが検知されると、ステップS210へと進む。
【0109】
ステップS210では、ステップS204にて設定した速度V1のままチャージ駆動源36が駆動されて、先幕21の閉じ動作を開始する。
【0110】
ステップS211では、カメラシステム制御回路135が有する不図示のタイマ部にて、所定秒時のカウントが行われる。これは、ステップS203にて絶縁体31の表面から離れた塵埃30が、吸着部33bに捕獲される前に先幕21の閉じ動作が行われることによって、フォーカルプレンシャッタ50の周囲で塵埃30が漂流して光学素子11の表面に再付着することを防止するためである。
【0111】
ステップS212では、先幕21の閉じ動作が停止される。これにより先幕21は、ある所定の量だけ閉じた(例えば図5及び図6で示した状態の中間の閉じ具合)状態となる。
【0112】
ステップS213では、カメラシステム制御回路135により、先幕21の駆動速度VをステップS204にて設定した開閉動作速度V1以上の速度であるV3に設定する旨の命令がシャッタ制御回路145に送られる。これにより、先幕駆動源35は、先幕21が設定速度V3にて開き動作を行うように設定される。
【0113】
ステップS214では、ステップS213にて設定した速度V3にて先幕駆動源35が駆動されて、先幕21の開き動作が行われる。これにより、先幕21のシャッタ羽根21aは、速度V2よりも速い速度にてストッパーゴム33のストッパー部33aに衝突するので、ステップS209にて絶縁体31の表面に残っていた塵埃30も、この衝撃力により絶縁体31から離れて吸着部33bに捕獲される。これにより、光学素子11の表面から除去した塵埃30は、D-SLR100のボディ内で漂うようなことはなくなるので、光学素子11の表面に再付着する虞もなくなる。
【0114】
ステップS215では、フォーカルプレンシャッタ50に設けられた不図示の検出手段により、先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが全て開き動作を完了したかどうかの検出が行われる。ステップS215にて先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが全て開き動作を完了したことが検知されると、ステップS216へと進む。
【0115】
ステップS216からステップS221の動作は、ステップS110からステップS115と同一なので、その説明を省略する。これにより、一連のシーケンスを終了する。
【0116】
以上の構成によれば、光学素子表面に付着した塵埃を、光学素子に触れること無く除去可能である光学機器を実現することができる。
【0117】
また、光学素子表面に付着していた塵埃を除去する絶縁体は、先幕を構成するシャッタ羽根と一体化しているので、絶縁体を駆動するための別の駆動部材も不要であるばかりではなく、該絶縁体を帯電/除電するためのコイルも、フォーカルプレンシャッタと光学素子の間のスペースに設けられているので、コイルを配設するための専用スペースはほとんど必要ない。よって、光学機器を大型化すること無く、光学素子表面に付着した塵埃を除去することが可能な光学機器を実現することが出来る。
【0118】
また、光学素子表面に付着した塵埃を、光学機器をクリーニングモードに設定するだけで除去可能なので、簡単な操作で塵埃除去が可能な光学機器を実現することができる。
さらには、光学素子表面に付着した塵埃を、光学素子表面への再付着を防止して除去可能な光学機器を実現することができる。
【0119】
なお、本実施形態においては光学素子の表面に付着した塵埃の除去方法について説明してきたが、これに限定されることはなく、フォーカルプレンシャッタの開口を介して固体撮像装置のカバーガラス表面が目視できるようなデジタルカメラの場合であっても本発明を適用できることは言うまでもない。
【0120】
また、本実施形態においては、塵埃30を吸着する絶縁体31を先幕21のシャッタ羽根21aと一体化していたが、これに限定することはなく、例えば図11に示したように別体となって、例えばフォーカルプレンシャッタ50と光学素子11との間に配設された場合においても、コイル32にて帯電/除伝が行われると共に、先幕駆動源35(駆動源を別に備える構成であってもよい)により絶縁体41が駆動されることによって、光学素子11の表面に付着した塵埃30を除去してストッパーゴム33に設けた吸着部33bに捕獲することが可能である。このような構成をとる場合には、本実施形態における先幕と同様のシーケンスを行うことにより、塵埃30を除去することが可能である。
【0121】
また、本実施形態において、絶縁体31もしくは絶縁体41に吸着した塵埃30をストッパーゴム33に設けた吸着部33bに捕獲すると説明してきたが、これに限定されることはなく、例えば図12に示したように、先幕21の全開位置近傍に、その表面に粘着性の吸着部42aを設けた導電部42を配設し、ステップS108やステップS209でコイル32に逆電圧を印加した時に導電部42にも電圧を印加することによって吸着部42aが帯電するので、塵埃30と吸着部42aとの間に静電気力が作用する。
【0122】
よって、この発生した静電気力によって塵埃30が引き寄せられることで絶縁体31もしくは絶縁体41の表面から離れて導電部42の吸着部42aに捕獲される。これにより、塵埃30の再付着を防止することが可能なので、本発明にて説明した内容と同等の効果が得られる。
【0123】
さらには、絶縁体31もしくは絶縁体41を帯電/除電するのにコイル32を用いると説明してきたが、これに限定することはなく、例えばワイヤー状の電極に電圧を印加することによって発生するコロナ放電によって、絶縁体31もしくは絶縁体41を帯電/除電することが可能であることも、言うまでもないことである。
【0124】
また、先幕21、後幕22、絶縁体41、コイル32およびストッパーゴム33の相対位置関係は、本実施形態における位置関係に限定されるものではなく、先幕、後幕の光軸方向についての前後関係、光軸方向に対しての上下関係はいずれでもよく、絶縁体41が、光学素子11に対向するシャッタ羽根のうち入光面の略全域に対して移動可能な羽根上にあれば良い。またこの場合、移動方向は光軸方向に対して上から下へ羽根が開状態になる場合には、コイルおよびストッパーゴムは下方にあればよく、逆に、下から上へ羽根が開状態になる場合には、コイルおよびストッパーゴムは上方にあればよい。ただし、コイルおよびストッパーゴムは、塵埃が重力によって下方に落ちることを鑑みれば、下方にあるほうが望ましい。
【0125】
また、上記のように先幕21、後幕22、絶縁体41、コイル32およびストッパーゴム33の相対位置関係が本実施形態と異なる場合には、塵埃除去のフローは図9および図10で示したフローに限定されるものではなく、例えば、先幕が閉状態で、絶縁体がコイルに対向する位置関係にある場合には、クリーニングモードの開始と同時に絶縁体を帯電させ、先幕の開動作で塵埃を吸着させ、閉動作の完了時に除電および塵埃の除去を実行するようなフローであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施形態における、撮像部10及びフォーカルプレンシャッタ50の概略構成を説明するための側方断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における、フォーカルプレンシャッタ50の先幕21の概略構成を説明するための前方斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における、撮像部10及びフォーカルプレンシャッタ50の概略構成を説明するための後方斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における、フォーカルプレンシャッタ50の概略構成を説明するための前方斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における、先幕21の開き動作時の撮像部10及びフォーカルプレンシャッタ50の概略構成を説明するための側方断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における、先幕21が開き動作を完了した時の撮像部10及びフォーカルプレンシャッタ50の概略構成を説明するための側方断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における、D-SLR100のカメラシステムの構成概略図である。
【図8】D-SLR100のカメラシステムの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施形態において、クリーニングモード時でのD-SLR100の動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態において、クリーニングモード時でのD-SLR100の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の変形例を示す撮像部10及びフォーカルプレンシャッタ50の概略構成を説明するための側方断面図である。
【図12】本発明の塵埃吸着部の変形例を示す撮像部10及びフォーカルプレンシャッタ50の概略構成を説明するための側方断面図である。
【符号の説明】
【0127】
10 撮像部
11 光学素子
15 固体撮像装置
21 先幕
21a〜21d シャッタ羽根
30 塵埃
31 絶縁体
32 コイル
33 ストッパーゴム
33b 吸着部
50 フォーカルプレンシャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段の前段に配設された光学素子とを備える光学機器において、
前記光学素子に対向する位置に、当該光学素子の入光面の略全域に対して移動可能に絶縁部材を配設し、
前記絶縁部材を少なくとも帯電若しくは除電させるための導電手段を設けたことを特徴とする光学機器。
【請求項2】
被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段を備える光学機器において、
前記撮像手段に対向する位置に、当該撮像手段の受光面の略全域に対して移動可能に絶縁部材を配設し、
前記絶縁部材を少なくとも帯電若しくは除電させるための導電手段を設けたことを特徴とする光学機器。
【請求項3】
略中央部に被写体光路となる開口部が形成された一対の板材を有し、当該板材の間に前記開口部を開閉するシャッタ羽根が配設されたシャッタ装置と、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段の前段に配設された光学素子とを備える光学機器において、
前記シャッタ羽根における前記光学素子に対向する位置に絶縁部材を配設し、
前記絶縁部材を少なくとも帯電若しくは除電させるための導電手段を前記シャッタ羽根と前記光学素子との間に配設したことを特徴とする光学機器。
【請求項4】
略中央部に被写体光路となる開口部が形成された一対の板材を有し、当該板材の間に前記開口部を開閉するシャッタ羽根が配設されたシャッタ装置と、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段とを備える光学機器において、
前記シャッタ羽根における前記撮像手段に対向する位置に絶縁部材を配設し、
前記絶縁部材を少なくとも帯電若しくは除電させるための導電手段を前記シャッタ羽根と前記撮像手段との間に配設したことを特徴とする光学機器。
【請求項5】
前記光学機器は、少なくとも被写体の撮像を行う撮像モードと、前記シャッタ羽根を開放状態にして前記光学素子の表面を露呈状態にするクリーニングモードとが切り換え可能であって、前記光学機器が前記クリーニングモードに設定された時にのみ、前記導電手段によって前記絶縁体の帯電若しくは除電を行うことを特徴とする請求項3に記載の光学機器。
【請求項6】
前記光学機器は、少なくとも被写体の撮像を行う撮像モードと、前記シャッタ羽根を開放状態にして前記撮像手段の表面を露呈状態にするクリーニングモードとが切り換え可能であって、前記光学機器が前記クリーニングモードに設定された時にのみ、前記導電手段によって前記絶縁体の帯電若しくは除電を行うことを特徴とする請求項4に記載の光学機器。
【請求項7】
前記シャッタ羽根と前記光学素子との間の前記シャッタ羽根の全開位置近傍に、粘着部材が配設されていることを特徴とする請求項3に記載の光学機器。
【請求項8】
前記シャッタ羽根と前記撮像手段との間の前記シャッタ羽根の全開位置近傍に、粘着部材が配設されていることを特徴とする請求項4に記載の光学機器。
【請求項9】
前記シャッタ羽根と前記光学素子との間の前記シャッタ羽根の全開位置近傍に、第2の導電部材が配設されていることを特徴とする請求項3に記載の光学機器。
【請求項10】
前記シャッタ羽根と前記撮像手段との間の前記シャッタ羽根の全開位置近傍に、第2の導電部材が配設されていることを特徴とする請求項4に記載の光学機器。
【請求項11】
略中央部に被写体光路となる開口部が形成された一対の板材を有し、当該板材の間に前記開口部を開閉するシャッタ羽根が配設されたシャッタ装置と、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段の前段に配設された光学素子とを備える光学機器において、
前記シャッタ羽根は、少なくとも第1の動作スピードと第2の動作スピードとが切り換え可能であり、
前記光学機器は、少なくとも前記シャッタ羽根を開放状態にして前記光学素子若しくは前記撮像手段の表面を露呈状態にするクリーニングモードと、被写体の撮像を行う撮像モードとが切り換え可能であって、前記クリーニングモード時には前記シャッタ羽根を前記第1の動作スピードで動作させると共に、前記撮像モード時には前記シャッタ羽根を前記第2の動作スピードで動作させることを特徴とする光学機器。
【請求項12】
前記シャッタ羽根は、更に前記第1の動作スピードより速い第3の動作スピードに切り換え可能であり、
前記光学機器は、前記クリーニングモード時には前記シャッタ羽根を前記第1の動作スピードで動作させた後に前記第3の動作スピードで少なくとも開き動作をさせることを特徴とする請求項11に記載の光学機器。
【請求項13】
略中央部に被写体光路となる開口部が形成された一対の板材を有し、当該板材の間に前記開口部を開閉するシャッタ羽根が配設されたシャッタ装置と、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段の前段に配設された光学素子とを備え、前記シャッタ羽根が少なくとも第1の動作スピードと第2の動作スピードとに切り換え可能であって、少なくとも前記シャッタ羽根を開放状態にして前記光学素子若しくは前記撮像手段の表面を露呈状態にするクリーニングモードと、被写体の撮像を行う撮像モードとが切り換え可能な光学機器の制御方法であって、
前記クリーニングモード時には前記シャッタ羽根を前記第1の動作スピードで動作させると共に、前記撮像モード時には前記シャッタ羽根を前記第2の動作スピードで動作させることを特徴とする制御方法。
【請求項14】
前記シャッタ羽根は、更に前記第1の動作スピードより速い第3の動作スピードに切り換え可能であり、
前記クリーニングモード時には前記シャッタ羽根を前記第1の動作スピードで動作させた後に前記第3の動作スピードで少なくとも開き動作をさせることを特徴とする請求項13に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−119461(P2006−119461A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308494(P2004−308494)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】