説明

光学機能膜およびその製造方法、並びに表示装置およびその製造方法

【課題】接着不良による剥離または水分拡散による劣化を抑えることが可能な光学機能膜およびその製造方法、並びに視野角による輝度低下、色変化を抑えることが可能な表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】表示パネル10の有機発光素子の表面に、プラズマCVD法により、高密度の窒化シリコンよりなる下部層22と、低密度の窒化シリコンよりなる中間層23と、高密度の窒化シリコンよりなる表面層24とを順に積層して光学機能膜20を形成する。中間層23の形成中または形成後にプラズマを停止したのち再開することにより、中間層23の内部または上面にシリコン含有粒子25を形成し、このシリコン含有粒子25を核として表面層24を形成することにより、表面層24の上面に凹凸21を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の画質向上のための散乱体膜などに好適な光学機能膜およびその製造方法に係る。また、本発明は、この光学機能膜を備えた表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自発光素子を用いた表示装置の一例として、有機発光素子(有機EL(Electroluminescence)素子)を用いた表示装置がある。しかし、この従来の表示装置では、EL発光の高い指向性に起因して、視野角による輝度低下が生じ、色むら等の色変化の原因となってしまう。そのため、有機発光素子の表面を覆う保護膜と対向基板との間に、散乱体を添加したバインダーなどを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−515129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来構造では、保護膜界面の接着不良による剥離、または吸水されているバインダーからの水分拡散による保護膜の劣化などのおそれがあった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、接着不良による剥離または水分拡散による劣化を抑えることが可能な光学機能膜およびその製造方法、並びにこの光学機能膜を備え、視野角による輝度低下、色変化を抑えることが可能な表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による光学機能膜は、以下の(A),(B)の構成要素を含むものである。
(A)シリコンを含む絶縁材料により構成され、内部または上面にシリコン含有粒子を有する中間層
(B)中間層と同じ材料よりなると共に中間層よりも高密度を有し、下面が中間層の上面に接し、上面に凹凸を有する表面層
【0007】
本発明の光学機能膜では、表面層の上面に凹凸が設けられているので、表面層の上面に入射した光は凹凸により散乱される。
【0008】
本発明による光学機能膜の製造方法は、シリコンを含む絶縁材料よりなる中間層をプラズマCVD法により形成する工程と、中間層の上面に接して、中間層と同じ材料よりなると共に中間層よりも高密度の表面層をプラズマCVD法により形成する工程とを含み、中間層を形成する工程において、中間層の形成中または形成後にプラズマを停止したのち再開することにより、中間層の内部または上面にシリコン含有粒子を形成し、シリコン含有粒子を核として表面層を形成することにより、表面層の上面に凹凸を形成するようにしたものである。
【0009】
本発明による表示装置は、基板に有機発光素子を有する表示パネルと、表示パネルの光取り出し側に設けられた光学機能膜とを備え、光学機能膜は、上記本発明の光学機能膜により構成されているものである。
【0010】
本発明の表示装置では、表示パネルの光取り出し側に上記本発明の光学機能膜が設けられているので、有機発光素子で発生した光は表面層の上面に入射し、凹凸により散乱される。よって、有機発光素子で発生するEL発光の強い指向性が緩和され、視野角による輝度低下が抑えられる。これにより、色変化が抑制される。
【0011】
本発明による第1の表示装置の製造方法は、基板に有機発光素子を有する表示パネルを形成する工程と、有機発光素子の表面に光学機能膜を形成する工程とを含み、光学機能膜を形成する工程を、上記本発明による光学機能膜の製造方法により行うようにしたものである。
【0012】
本発明による第2の表示装置の製造方法は、基板に有機発光素子を有する表示パネルを形成する工程と、封止パネルの一面側に光学機能膜を形成する工程と、表示パネルの有機EL素子側に封止パネルの光学機能素子側を対向させて配置し、表示パネルおよび封止パネルを接着層により全面にわたって貼り合せる工程とを含み、光学機能膜を形成する工程を、上記本発明による光学機能膜の製造方法により行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学機能膜によれば、表面層の上面に凹凸が設けられているので、この凹凸に散乱などの光学機能をもたせることが可能となり、従来のような散乱体を添加したバインダーなどを別途貼り合せる必要をなくすと共に、バインダーからの水分の拡散もなくし、接着不良による剥離または水分拡散による劣化を抑えることが可能となる。この光学機能膜を用いて表示装置を構成すれば、視野角による輝度低下、およびそれによる色変化を抑え、より高品位な表示が可能となる。
【0014】
本発明の光学機能膜の製造方法、または本発明の第1あるいは第2の表示装置の製造方法によれば、中間層の形成中または形成後にプラズマを停止したのち再開することにより、中間層の内部または上面にシリコン含有粒子を形成し、このシリコン含有粒子を核として表面層を形成することにより、表面層の上面に凹凸を形成するようにしたので、本発明の光学機能膜または表示装置を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す等価回路図である。
【図3】図1に示した表示装置の表示領域における構成を表す断面図である。
【図4】図3に示した光学機能膜を拡大して表す断面図である。
【図5】図4に示した光学機能膜の平面図である。
【図6】図3に示した表示装置の製造方法を工程順に表した断面図である。
【図7】図6に続く工程を表す断面図である。
【図8】図7に続く工程を表す断面図である。
【図9】図8に続く工程を表す断面図である。
【図10】段差側壁の被覆率を説明するための図である。
【図11】図9に続く工程を表す断面図である。
【図12】図11に続く工程を表す断面図である。
【図13】図12に続く工程を表す断面図である。
【図14】図11(A)に示したシリコン含有粒子の写真である。
【図15】図11(B)に示した表面層の上面の凹凸の写真である。
【図16】図4に示した光学機能膜の、発光時の作用を説明するための断面図である。
【図17】図4に示した光学機能膜の、非発光時の作用を説明するための断面図である。
【図18】従来の保護膜の、発光時の作用を説明するための断面図である。
【図19】従来の保護膜の、非発光時の作用を説明するための断面図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の表示領域における構成を表す断面図である。
【図21】図20に示した光学機能膜を拡大して表す断面図である。
【図22】図20に示した表示装置の製造方法を工程順に表した断面図である。
【図23】図22に続く工程を表す断面図である。
【図24】図23に続く工程を表す断面図である。
【図25】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図26】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図27】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図28】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図29】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図30】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【図31】上記実施の形態の光学機能膜を含む太陽電池の概略構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(有機発光素子の表面に光学機能膜を設ける例)
2.第2の実施の形態(封止パネルに光学機能膜を設ける例)
3.適用例(表示装置の適用例、光学機能膜の適用例)
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、例えば、基板11の上に、表示領域110として、後述する複数の有機発光素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されたものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0018】
表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。画素駆動回路140は、後述する第1電極13の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。すなわち、この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機発光素子10R(または10G,10B)とを有する。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0019】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0020】
図3は、図1に示した表示装置の表示領域110における断面構成を表したものである。この表示装置は、表示パネル10の光取り出し側に光学機能膜20を有している。表示パネル10および光学機能膜20上には、封止パネル30が接着層40により全面にわたって貼り合わせられている。
【0021】
表示パネル10は、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板11に、赤色の光を発生する有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機発光素子10Gと、青色の光を発生する有機発光素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に配置されたものである。なお、有機発光素子10R,10G,10Bは短冊形の平面形状を有し、隣り合う有機発光素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
【0022】
有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、基板11の側から、上述した画素駆動回路140および平坦化層12を間にして、陽極としての第1電極13、絶縁膜14、後述する発光層を含む有機層15、および陰極としての第2電極16がこの順に積層された構成を有している。
【0023】
第1電極13は、有機発光素子10R,10G,10Bの各々に対応して形成され、絶縁膜14により互いに電気的に分離されている。また、第1電極13は、発光層で発生した光を反射させる反射電極としての機能を有しており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。第1電極13は、例えば、厚みが100nm以上1000nm以下、具体的には50nm程度であり、アルミニウム(Al)あるいはアルミニウム(Al)を含む合金、または、銀(Ag)あるいは銀(Ag)を含む合金により構成されている。また、第1電極13は、クロム(Cr),チタン(Ti),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),モリブデン(Mo),銅(Cu),タンタル(Ta),タングステン(W),白金(Pt)あるいは金(Au)などの他の金属元素の単体または合金により構成されていてもよい。
【0024】
絶縁膜14は、第1電極13と第2電極16との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものであり、例えば、感光性のアクリル,ポリイミド,ポリベンズオキサゾールなどの有機材料、または酸化シリコン(SiO2 )などの無機絶縁材料により構成されている。絶縁膜14は、第1電極13の発光領域に対応して開口部を有している。なお、有機層15および第2電極16は、発光領域だけでなく絶縁膜14の上にも連続して設けられていてもよいが、発光が生じるのは絶縁膜14の開口部だけである。
【0025】
有機層15は、例えば、第1電極13の側から順に、正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を積層した構成を有するが、これらのうち発光層以外の層は必要に応じて設ければよい。また、有機層15は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層は、発光層への正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層は、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層と第2電極16との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0026】
有機発光素子10Rの正孔注入層の構成材料としては、例えば、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)が挙げられる。有機発光素子10Rの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)が挙げられる。有機発光素子10Rの発光層の構成材料としては、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものが挙げられる。有機発光素子10Rの電子輸送層の構成材料としては、例えば、Alq3 が挙げられる。
【0027】
有機発光素子10Gの正孔注入層の構成材料としては、例えば、m−MTDATAあるいは2−TNATAが挙げられる。有機発光素子10Gの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、α−NPDが挙げられる。有機発光素子10Gの発光層の構成材料としては、例えば、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものが挙げられる。有機発光素子10Gの電子輸送層の構成材料としては、例えば、Alq3 が挙げられる。
【0028】
有機発光素子10Bの正孔注入層の構成材料としては、例えば、m−MTDATAあるいは2−TNATAが挙げられる。有機発光素子10Bの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、α−NPDが挙げられる。有機発光素子10Bの発光層の構成材料としては、例えば、スピロ6Φ(spiro6Φ)が挙げられる。有機発光素子10Bの電子輸送層の構成材料としては、例えば、Alq3 が挙げられる。
【0029】
第2電極16は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。また、第2電極15は、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されていてもよい。
【0030】
光学機能膜20は、最表面に凹凸21を有し、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光または封止パネル30側から入射する外光を凹凸21により散乱させる散乱体膜としての機能を有するものである。また、この光学機能膜20は、窒化シリコン(SiN),酸化シリコン(SiO2)または酸化窒化シリコン(SiON)等のシリコンを含む絶縁材料により構成され、有機発光素子10R,10G,10Bを保護する保護膜としての機能も有している。光学機能膜20は、表示領域110の全体にわたって有機発光素子10R,10G,10Bの表面に設けられており、その厚みは、例えば、数百nm以上10000nm以下である。
【0031】
図4および図5は、図3に示した光学機能膜20の一部を拡大して、その断面構成および平面構成をそれぞれ表したものである。光学機能膜20は、例えば、表示パネル10側から順に、高密度の窒化シリコンよりなる下部層22と、低密度の窒化シリコンよりなる中間層23と、高密度の窒化シリコンよりなる表面層24とを積層した3層構造を有している。ここで「高密度」とは中間層23よりも膜密度が高いことをいい、「低密度」とは表面層24または下部層22よりも膜密度が低いことをいう。また、高密度の表面層24または下部層22と、低密度の中間層23との膜密度の差は、例えば0.4×1022(atoms/cm3)以上であることが望ましい。
【0032】
高密度の表面層24および下部層22の膜密度は、例えば、6.2×1022(atoms/cm3)以上であることが望ましい。膜密度が高くなるほど湿度透過係数を低く抑えることが可能となり、封止特性(パッシベーション特性)の向上が可能となるからである。具体的には、表面層24および下部層22の膜密度を6.2×1022(atoms/cm3)以上とした場合には、湿度透過係数を8.0×10-4(g・mm/m2・d)未満に抑えることが可能となる。なお、表面層24の膜密度と下部層22の膜密度とは同じである必要はない。
【0033】
一方、低密度の中間層23の膜密度は、例えば、5.8×1022(atoms/cm3)以下であることが望ましい。この場合、中間層23の湿度透過係数は、例えば、8.0×10-4(g・mm/m2・d)以上となる。
【0034】
下部層22は、中間層23の下面に接すると共に第2電極16上に直接設けられ、有機発光素子10R,10G,10Bを直接被覆して保護するものであり、上述したように封止特性の高い高密度の窒化シリコンにより構成されている。下部層22の厚みは、例えば1000nm程度である。
【0035】
中間層23は、上述したように低密度の窒化シリコンにより構成されている。これにより、後述する製造工程において表示パネル10表面の段差側壁の被覆性を高め、ダークスポット等の欠陥の発生を抑えることが可能となる。中間層23の厚みは、例えば、数百nmないし数千nmである。
【0036】
表面層24は、下面が中間層23の上面に接しており、上述したように高密度の窒化シリコンにより構成されている。これにより、後述する製造工程において表面層24の上面に異物が付着するのを抑え、膜品質を向上させることが可能となる。表面層24の厚みは、例えば、1000nm程度である。
【0037】
中間層23は、内部または上面にシリコン含有粒子25を有している。表面層24は、上面に凹凸21を有している。これにより、この光学機能膜20では、接着不良による剥離または水分拡散による劣化を抑え、表示装置の視野角による輝度低下、色変化を抑えることが可能となっている。
【0038】
凹凸21は、表面層24の上面(すなわち光学機能膜20の最表面)の半球状または略半球状の曲面よりなる微小凹凸であり、上述したように光学機能膜20における散乱体としての機能を有するものである。凹凸21の幅(直径)W21は、例えば、0.5μmないし5μm程度である。このような凹凸21は、後述する製造工程においてシリコン含有粒子25を核として表面層24が成長することにより形成されたものであり、シリコン含有粒子25の真上に位置している。なお、図中の点線はシリコン含有粒子25と凹凸21との位置的な対応関係を表すものに過ぎず、点線で示したような粒界や柱状粒子が形成されていることを表すものではない。
【0039】
シリコン含有粒子25は、後述する製造工程において中間層23をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する際に生成されるシリコン系粒子であり、シリコン(Si)を主成分とし、窒素(N),炭素(C),酸素(O)等を含有している。シリコン含有粒子25の大きさ(直径)W25は、例えば0.2μm程度である。
【0040】
中間層23は、複数の層、例えば表示パネル10側から順に第1中間層23Aおよび第2中間層23Bの二つの層を含んでいる。中間層21の内部のシリコン含有粒子25は、第1中間層23Aおよび第2中間層23Bの境界面に位置している。中間層23の上面のシリコン含有粒子25は、第2中間層23Bの上面に位置している。なお、中間層23は3層以上の積層構造を有していてもよい。
【0041】
図3に示した封止パネル30は、表示パネル10の光取り出し側すなわち第2電極16側に設けられ、透明な封止用基板31の表面に、カラーフィルタ32およびブラックマトリクスとしての遮光膜33を有している。
【0042】
封止用基板31は、例えば、ガラス、耐熱性樹脂よりなる樹脂基板あるいは樹脂フィルム、または溶融石英により構成されている。
【0043】
カラーフィルタ32および遮光膜33は、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機発光素子10R,10G,10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するためのものである。
【0044】
カラーフィルタ32は、赤色フィルタ32R,緑色フィルタ32Gおよび青色フィルタ32Bを有しており、有機発光素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。赤色フィルタ32R,緑色フィルタ32Gおよび青色フィルタ32Bは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ32R,緑色フィルタ32Gおよび青色フィルタ32Bは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0045】
遮光膜33は、赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bの境界に沿って設けられている。遮光膜33は、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。このうち黒色の樹脂膜により構成するようにすれば、安価で容易に形成することができるので好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、クロムと酸化クロム(III)(Cr2 3 )とを交互に積層したものが挙げられる。なお、遮光膜33は必ずしも設けなくてもよい。
【0046】
図3に示した接着層40は、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などにより構成されている。上述した光学機能膜20は、単独では最表面の凹凸21により白濁(すりガラス)状態となっているが、接着層40の樹脂が凹凸21を埋め込むことにより透明化される。光学機能膜20の下部層22,中間層23(第1中間層23Aおよび第2中間層23B)および表面層24の屈折率n1,n2,n3は、例えば、1.60ないし1.95程度である。一方、接着層40の屈折率n4は、例えば、1.57以下である。
【0047】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0048】
(表示パネル10を形成する工程)
まず、図6(A)に示したように、上述した材料よりなる基板11の上に、画素駆動回路140を形成する。
【0049】
次いで、図6(B)に示したように、基板11の全面に、例えばスピンコート法により、例えば感光性ポリイミドよりなる平坦化層12を塗布形成し、露光、現像処理により所定の形状にパターニングすると共に接続孔12Aを形成したのち、焼成する。
【0050】
続いて、図7(A)に示したように、平坦化層12の上に、例えばスパッタ法により、例えば上述した厚みおよび材料よりなる第1電極13を形成したのち、例えばリソグラフィー技術およびエッチングにより、第1電極13を所定の形状にパターニングする。これにより、平坦化層12の上に、複数の第1電極13が形成される。
【0051】
そののち、図7(B)に示したように、基板11の全面にわたり感光性樹脂を塗布し、露光および現像処理により開口部を設けたのち、焼成して、絶縁膜14を形成する。
【0052】
続いて、図8(A)に示したように、例えば真空蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる有機発光素子10Rの正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を順次成膜し、有機発光素子10Rの有機層15を形成する。そののち、同じく図8(A)に示したように、有機発光素子10Rの有機層15と同様にして、上述した厚みおよび材料よりなる有機発光素子10Gの正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を順次成膜し、有機発光素子10Gの有機層15を形成する。続いて、同じく図8(A)に示したように、有機発光素子10Rの有機層15と同様にして、上述した厚みおよび材料よりなる有機発光素子10Bの正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を順次成膜し、有機発光素子10Bの有機層15を形成する。
【0053】
有機発光素子10R,10G,10Bの有機層15を形成したのち、図8(B)に示したように、基板11の全面にわたり、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる第2電極16を形成する。以上により、図3に示したように、基板11に有機発光素子10R,10G,10Bを有する表示パネル10が形成される。
【0054】
(表示パネル10の光取り出し側に光学機能膜20を形成する工程)
表示パネル10を形成したのち、図9(A)に示したように、表示パネル10の有機発光素子10R,10G,10Bの表面に、例えばプラズマCVD法により、例えば高密度の窒化シリコンよりなる下部層22を例えば1000nm程度の厚みで形成する。
【0055】
ここで、下部層22,中間層23および表面層24の膜密度の制御について説明する。下部層22,中間層23および表面層24を構成する窒化シリコンの膜密度は、CVD法の成膜条件により制御することが可能である。すなわち、CVD法による成膜は、成膜表面における表面反応と、成膜雰囲気における気相反応とによって成膜が進行する。このとき、例えば原料ガスの流量を増加させて気相反応を多くすることで、成膜速度が速くなると共に膜密度が低くなる。一方、原料ガスの流量を減少させて表面反応を多くすることで、成膜速度が遅くなると共に膜密度が高くなる。
【0056】
下部層22,中間層23および表面層24を窒化シリコンにより構成する場合、原料ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガスおよびシラン(SiH4)ガスを用いる。よって、アンモニアガスおよびシランガスの合計流量を調整することにより、下部層22,中間層23および表面層24の膜密度を制御することが可能となる。
【0057】
よって、高密度の窒化シリコンよりなる下部層22および表面層24は、表面反応を主とした、成膜速度が比較的低速度なCVD法により成膜する。一方、低密度の窒化シリコンよりなる中間層23は、下部層22および表面層24に比較して、気相反応を主とした、成膜速度が高速度なCVD法により成膜する。
【0058】
なお、CVD成膜における気相反応と表面反応とは、上述した原料ガスの流量のほか、例えば基板温度や成膜雰囲気内のガス圧力によっても制御することが可能である。例えば、基板温度を下げ、室温以上150℃以下の低温で成膜を行うこと、または成膜雰囲気のガス圧力を高くすることにより、気相反応が多くなり、成膜速度が速まって膜密度が低くなる。
【0059】
更に、このようなCVD法による成膜では、成膜条件によって段差の側壁の被覆性に差が生じる。すなわち、気相反応を主とした低密度の膜ほど段差側壁の被覆率が高められる。上述したように低密度の中間層23の膜密度を5.8×1022(atoms/cm3)以下とすることにより、図10に示したように、段差50の側壁の被覆率(上面膜厚th/側壁膜厚tv)th/tv≧2/3とすることが可能となる。これに対して、表面層24および下部層22の膜密度を6.2×1022(atoms/cm3)以上とすることにより、段差側壁の被覆率はth/tv<2/3となる。ここに段差側壁の被覆率とは、図10に示したように、テーパー角θ=90°、高さh=1μmの段差50の被覆率をいう。
【0060】
加えて、以上のCVD成膜では、気相反応を主とした成膜速度が速い条件で成膜を終了した場合には、膜表面に50nmないし300nmの異物が付着しやすい。そのため、光学機能膜20の最表面は、表面反応を主とした成膜速度が比較的遅い条件で成膜される高密度の窒化シリコンよりなる表面層24により構成する。
【0061】
下部層22を形成したのち、図9(B)に示したように、例えばプラズマCVD法により、例えば窒化シリコンよりなる第1中間層23Aを形成する。このとき、例えば、原料ガスであるアンモニアガスおよびシランガスの合計流量を多くすると共に、室温以上150℃以下の低温で成膜を行うことにより、気相反応を多くして成膜速度を速め、第1中間層23Aを低密度の窒化シリコンにより形成することが可能である。
【0062】
第1中間層23Aを形成したのち、プラズマを停止したのち再開する。これにより、第1中間層23Aの上面にシリコン含有粒子25が形成される。
【0063】
このようなシリコン含有粒子25の形成原理は以下のように考えられる。原料ガスであるアンモニアガスおよびシランガスの合計流量が多く、特にシランガスが過剰な状態で成膜を行うことにより、気相中で過剰な未反応シリコンラジカルナノ粒子が形成される。また、室温以上150℃以下、より好ましくは100℃以下の低温で成膜することにより、シリコンラジカルの熱分解が抑制される。更に、ナローギャッププラズマを用いることにより、シランガスが過剰な状態となる体積空間が形成される。よって、急速にシリコンラジカルナノ粒子が形成されると共に、シリコンラジカルナノ粒子の形状がある程度維持される。
【0064】
その後、プラズマ放電を停止し、電位をオフにすることにより、電位と重力のバランスが崩れ、シリコンラジカルナノ粒子が重力により落下し、第1中間層23Aの上面にシリコンラジカル種が固着する。
【0065】
続いてプラズマを再開し、固着を安定化させるために、N2などの不活性ガスによるプラズマ処理を行う。これにより、第1中間層23Aの上面に堆積したシリコンラジカル種が凝縮あるいは結合し、表面の電位を抑えたシリコン含有粒子25が形成される。
【0066】
シリコン含有粒子25を形成したのち、図11(A)に示したように、例えばプラズマCVD法により、例えば窒化シリコンよりなる第2中間層23Bを形成する。このとき、第1中間層23Aと同様に、例えば、原料ガスであるアンモニアガスおよびシランガスの合計流量を多くすると共に、室温以上150℃以下の低温で成膜を行うことにより、気相反応を多くして成膜速度を速め、第2中間層23Bを低密度の窒化シリコンにより形成することが可能である。
【0067】
第2中間層23Bを形成したのち、プラズマを停止したのち再開する。これにより、第1中間層23Aと同様にして、第2中間層23Bの上面にシリコン含有粒子25が形成される。このようにして、内部(第1中間層23Aと第2中間層23Bとの境界面)および上面(第2中間層23Bの上面)にシリコン含有粒子25を有する中間層23が形成される。
【0068】
中間層23を形成したのち、図11(B)に示したように、例えばプラズマCVD法により、例えば高密度の窒化シリコンよりなる表面層24を形成する。表面層24はシリコン含有粒子25を核として成長し、表面層24の上面に凹凸21が形成される。これにより、図12に示したように、最表面に凹凸21を有する光学機能膜20が形成される。
【0069】
(封止パネル30を形成する工程)
また、封止パネル30を形成する。まず、図13(A)に示したように、上述した材料よりなる封止用基板31に、上述した材料よりなる遮光膜33を成膜し、所定の形状にパターニングする。次いで、図13(B)に示したように、封止用基板31の上に、赤色フィルタ32Rの材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタ32Rを形成する。パターニングの際には、赤色フィルタ32Rの周縁部が遮光膜33にかかるようにしてもよい。続いて、図13(C)に示したように、赤色フィルタ32Rと同様にして、青色フィルタ32Bおよび緑色フィルタ32Gを順次形成する。これにより、封止用基板31の表面に、カラーフィルタ32および遮光膜33を有する封止パネル30が形成される。
【0070】
(表示パネル10と封止パネル30とを貼り合せる工程)
表示パネル10,光学機能膜20および封止パネル30を形成したのち、封止パネル30を表示パネル10の有機発光素子10R,10G,10B側に対向配置し、接着層40により全面にわたって貼り合わせる。以上により、図1ないし図3に示した表示装置が完成する。
【0071】
なお、上述した製造方法によりガラス板上に窒化シリコンよりなる光学機能膜20を実際に作製し、中間層23の形成後にその上面の状態を調べたところ、図14に示したように、多数のシリコン含有粒子25が生成されていることが確認された。引き続いて、表面層24の形成後にその上面の状態を調べたところ、図15に示したように、多数の凹凸21が形成されていることが確認された。すなわち、本実施の形態の製造方法により中間層23内部または上面にシリコン含有粒子25を形成し、表面層24の上面に凹凸21を形成することが可能となることが分かった。
【0072】
この表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第2電極16,光学機能膜20,接着層40,カラーフィルタ32および封止用基板31を透過して取り出される。
【0073】
ここでは、表示パネル10の光取り出し側に、最表面に凹凸21を有する光学機能膜20が設けられているので、図16に示したように、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光h1は表面層24の上面に入射し、凹凸21により散乱される。よって、有機発光素子10R,10G,10Bで発生するEL発光の強い指向性が緩和され、視野角による輝度低下、色変化が抑えられる。
【0074】
また、本実施の形態では、有機発光素子10R,10G,10Bの非発光時において、図17に示したように、外光h2が有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極13や第2電極16で反射した場合には、その反射光は表面層24の上面に入射し、凹凸21により散乱される。また、外光h2が表面層24の上面に直接入射した場合にも、やはり凹凸21により散乱される。よって、第1電極13や第2電極16のパターンが封止用基板31に映り込み、映像むらの原因となってしまうことがなくなる。
【0075】
一方、従来では、有機発光素子10R,10G,10Bの発光時には、図18に示したように、保護膜17の最表面に凹凸が設けられていないので、有機発光素子10R,10G,10Bで発生するEL発光の強い指向性により、正面では輝度が強くなる一方、視聴角度によっては発光輝度が弱くなり、色変化が生じてしまっていた。
【0076】
また、従来では、有機発光素子10R,10G,10Bの非発光時においては、図19に示したように、外光h2が有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極13や第2電極16で反射し、封止用基板31上に映り込み10RA,10GA,10BAを生じ、映像むらの原因となってしまっていた。
【0077】
合わせて、屈折成分を有する絶縁膜14を介して、高反射率の金属である第1電極13の表面に入射する光は、絶縁膜14内で多重干渉を引き起こし、屈折成分に由来する干渉パターンの反射光が封止用基板31上に発生し、見た目の外観を損ねていた。従来では、干渉パターンの影響を抑制するために、絶縁膜14の構造の制約による画素開口率を変更することで対策を実施していた。この画素開口率を変更することにおいて、狭めた場合には、必要輝度を得るための出力を高めることとなり、発光寿命時間の低下といった問題が発生していた。
【0078】
しかし、本実施の形態では、上述したように外光h2またはその反射光は表面層24の上面において凹凸21により散乱されることで干渉パターンの反射光が抑制され、封止用基板31上に発生していた外観損傷の対策である、絶縁膜14の構造に制約を設ける必要がなくなる。
【0079】
このように本実施の形態の光学機能膜20では、表面層24の上面に凹凸21が設けられているので、この凹凸21に散乱などの光学機能をもたせることが可能となり、従来のような散乱体を添加したバインダーなどを別途貼り合せる必要をなくすと共に、バインダーからの水分の拡散もなくし、接着不良による剥離または水分拡散による劣化を抑えることが可能となる。この光学機能膜20を用いて表示装置を構成すれば、視野角による輝度低下、色変化を抑え、より高品位な表示が可能となる。
【0080】
本実施の形態の光学機能膜20の製造方法、または本実施の形態の表示装置の製造方法では、中間層23の形成中または形成後にプラズマを停止したのち再開することにより、中間層23の内部または上面にシリコン含有粒子25を形成し、このシリコン含有粒子25を核として表面層24を形成することにより、表面層24の上面に凹凸21を形成するようにしたので、凹凸21を制御性よく形成することが可能となり、本実施の形態の光学機能膜20または表示装置を容易に製造することが可能となる。また、シリコン含有粒子25および凹凸21は製造工程のプラズマCVDを用いて形成することが可能であり、保護膜の形成と同時に光学機能膜20をin−situで形成することが可能となる。
【0081】
(第2の実施の形態)
図20は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置における表示領域110の断面構成を表したものである。この表示装置は、光学機能膜20が封止パネル30の接着層40側に設けられていることを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0082】
表示パネル10は、第1の実施の形態と同様に、基板11上に有機発光素子10R,10G,10Bを有している。有機発光素子10R,10G,10Bは、必要に応じて、窒化シリコンまたは酸化シリコンよりなる保護膜17で覆われている。
【0083】
光学機能膜20は、封止パネル30のカラーフィルタ32および遮光膜33の上に設けられていることを除いては、第1の実施の形態と同様の構成を有している。すなわち、光学機能膜20は、図21に示したように、例えば、封止パネル30側から順に、高密度の窒化シリコンよりなる下部層22と、低密度の窒化シリコンよりなる中間層23と、高密度の窒化シリコンよりなる表面層24とを積層した3層構造を有している。
【0084】
中間層23は、内部または上面にシリコン含有粒子25を有している。表面層24は、上面に凹凸21を有している。これにより、この光学機能膜20では、第1の実施の形態と同様に、接着不良による剥離または水分拡散による劣化を抑え、表示装置の視野角による輝度低下を抑えることが可能となっている。
【0085】
封止パネル30および接着層40は、第1の実施の形態と同様の構成を有している。
【0086】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。なお、第1の実施の形態と重複する工程については、図6ないし図13を参照して説明する。
【0087】
まず、第1の実施の形態と同様にして、図13に示した工程により、封止パネル30を形成する。
【0088】
次いで、図22(A)に示したように、封止パネル30のカラーフィルタ32および遮光膜33の上に、例えばプラズマCVD法により、例えば高密度の窒化シリコンよりなる下部層22を例えば1000nm程度の厚みで形成する。
【0089】
続いて、図22(B)に示したように、例えばプラズマCVD法により、例えば窒化シリコンよりなる第1中間層23Aを形成する。このとき、例えば、原料ガスであるアンモニアガスおよびシランガスの合計流量を多くすると共に、室温以上150℃以下の低温で成膜を行うことにより、気相反応を多くして成膜速度を速め、第1中間層23Aを低密度の窒化シリコンにより形成することが可能である。
【0090】
第1中間層23Aを形成したのち、プラズマを停止したのち再開する。これにより、第1中間層23Aの上面にシリコン含有粒子25が形成される。
【0091】
シリコン含有粒子25を形成したのち、図23(A)に示したように、例えばプラズマCVD法により、例えば窒化シリコンよりなる第2中間層23Bを形成する。このとき、第1中間層23Aと同様に、例えば、原料ガスであるアンモニアガスおよびシランガスの合計流量を多くすると共に、室温以上150℃以下の低温で成膜を行うことにより、気相反応を多くして成膜速度を速め、第2中間層23Bを低密度の窒化シリコンにより形成することが可能である。
【0092】
第2中間層23Bを形成したのち、プラズマを停止したのち再開する。これにより、第1中間層23Aと同様にして、第2中間層23Bの上面にシリコン含有粒子25が形成される。このようにして、内部(第1中間層23Aと第2中間層23Bとの境界面)および上面(第2中間層23Bの上面)にシリコン含有粒子25を有する中間層23が形成される。
【0093】
中間層23を形成したのち、図23(B)に示したように、例えばプラズマCVD法により、例えば高密度の窒化シリコンよりなる表面層24を形成する。表面層24はシリコン含有粒子25を核として成長し、表面層24の上面に凹凸21が形成される。これにより、図24(A)に示したように、最表面に凹凸21を有する光学機能膜20が形成される。
【0094】
(表示パネル10を形成する工程)
また、第1の実施の形態と同様にして、図6ないし図8に示した工程により、基板11に有機発光素子10R,10G,10Bを有する表示パネル10を形成する。そののち、図24(B)に示したように、例えばCVD法により、有機発光素子10R,10G,10Bの表面に上述した厚みおよび材料よりなる保護膜17を形成する。
【0095】
(表示パネル10と封止パネル30とを貼り合せる工程)
表示パネル10,光学機能膜20および封止パネル30を形成したのち、封止パネル30を表示パネル10の有機発光素子10R,10G,10B側に対向配置し、接着層40により全面にわたって貼り合わせる。以上により、図20に示した表示装置が完成する。
【0096】
この表示装置の作用および効果は第1の実施の形態と同様である。
【0097】
(表示装置のモジュールおよび適用例)
以下、上記実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0098】
(表示装置のモジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図25に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、封止パネル30および接着層40から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0099】
(表示装置の適用例1)
図26は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0100】
(表示装置の適用例2)
図27は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0101】
(表示装置の適用例3)
図28は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0102】
(表示装置の適用例4)
図29は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0103】
(表示装置の適用例5)
図30は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0104】
(光学機能膜の適用例)
上記実施の形態の光学機能膜20は、例えば、太陽電池での光り閉じ込め膜あるいは液晶表示装置の反射防止膜(AR(Anti-Reflection)膜)、また、シリコン含有粒子25は、例えば、量子ドット太陽電池の微粒子核の形成といったように、多岐にわたる電子機器への応用が可能である。
【0105】
(光学機能膜の適用例1)
図31は、上記実施の形態の光学機能膜20が適用される色素増感型太陽電池の構成を表したものである。この色素増感型太陽電池は、透明基板810と基板820とが対向配置され、全体がケース830に収納・封止されている。
【0106】
透明基板810は光入射側の基板であり、内側には、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極811および金属酸化物半導体層(半導体電極)812が設けられている。金属酸化物半導体層812は、金属酸化物半導体微粒子が透明電極811上に焼結されたものであり、増感色素(図示せず)を担持している。
【0107】
基板820には電極821および対極822が設けられている。電極821はガラス,透明導電性ガラス,金属またはポリマーフィルム等により構成されている。対極822は白金(Pt)などの金属を担持したカーボンとバインダーポリマーとを有している。金属酸化物半導体層812および対極822は所定の間隔をもって対向配置され、その間の空間には電解質層840が設けられている。透明電極812と対極822とは導線で接続され、アンメータ851付きの電流回路850が構成されている。
【0108】
透明基板810の外側の光入射面には、上記実施の形態の光学機能膜20が設けられている。これにより、この色素増感型太陽電池では、光が光学機能膜20に入射すると、凹凸21により反射光が抑えられ、色素増感型太陽電池の内部に効率よく光が閉じ込められる。
【0109】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、封止パネル30にカラーフィルタ32を形成したCF一体型の場合について説明したが、本発明は、カラーフィルタ32を設けないCFレス構造の場合にも適用可能である。
【0110】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0111】
更に、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10B,10Gの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【符号の説明】
【0112】
10…表示パネル、10R,10G,10B…有機発光素子、11…基板、13…第1電極、14…絶縁膜、15…有機層、16…第2電極、17…保護膜、20…光学機能膜、21…凹凸、22…下部層、23…中間層、24…表面層、25…シリコン含有粒子、30…封止パネル、31…封止用基板、32…カラーフィルタ、33…遮光膜、40…接着層、110…表示領域、140…画素駆動回路、Cs…キャパシタ、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書き込みトランジスタ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含む絶縁材料により構成され、内部または上面にシリコン含有粒子を有する中間層と、
前記中間層と同じ材料よりなると共に前記中間層よりも高密度を有し、下面が前記中間層の上面に接し、上面に凹凸を有する表面層と
を備えた光学機能膜。
【請求項2】
前記絶縁材料は窒化シリコンである
請求項1記載の光学機能膜。
【請求項3】
前記中間層は複数の層を含み、
前記中間層の内部の前記シリコン含有粒子は、前記複数の層の境界面に位置している
請求項2記載の光学機能膜。
【請求項4】
前記中間層の下面に接して設けられ、前記中間層と同じ材料により構成されていると共に前記中間層よりも高密度の下部層を備えた
請求項3記載の光学機能膜。
【請求項5】
前記表面層の上面に入射する光を前記凹凸により散乱させる散乱体膜である
請求項4記載の光学機能膜。
【請求項6】
シリコンを含む絶縁材料よりなる中間層をプラズマCVD法により形成する工程と、前記中間層の上面に接して、前記中間層と同じ材料よりなると共に前記中間層よりも高密度の表面層をプラズマCVD法により形成する工程とを含み、
前記中間層を形成する工程において、前記中間層の形成中または形成後にプラズマを停止したのち再開することにより、前記中間層の内部または上面にシリコン含有粒子を形成し、
前記シリコン含有粒子を核として前記表面層を形成することにより、前記表面層の上面に凹凸を形成する
光学機能膜の製造方法。
【請求項7】
前記中間層を室温以上150℃以下の温度で形成する
請求項6記載の光学機能膜の製造方法。
【請求項8】
基板に有機発光素子を有する表示パネルと、前記表示パネルの光取り出し側に設けられた光学機能膜とを備え、
前記光学機能膜は、
シリコンを含む絶縁材料により構成され、内部または上面にシリコン含有粒子を有する中間層と、
前記中間層と同じ材料よりなると共に前記中間層よりも高密度を有し、下面が前記中間層の上面に接し、上面に凹凸を有する表面層と
を備えた表示装置。
【請求項9】
前記光学機能膜は、前記有機EL素子の表面に設けられている
請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示パネルの前記有機発光素子側に対向配置された封止パネルと、
前記表示パネルおよび前記封止パネルの間の全面に設けられた接着層と
を備え、前記光学機能膜は前記封止パネルの前記接着層側に設けられている
請求項8記載の表示装置。
【請求項11】
基板に有機発光素子を有する表示パネルを形成する工程と、前記有機発光素子の表面に光学機能膜を形成する工程とを含み、
前記光学機能膜を形成する工程は、シリコンを含む絶縁材料よりなる中間層をプラズマCVD法により形成する工程と、前記中間層の上面に接して、前記中間層と同じ材料よりなると共に前記中間層よりも高密度の表面層をプラズマCVD法により形成する工程とを含み、
前記中間層を形成する工程において、前記中間層の形成中または形成後にプラズマを停止したのち再開することにより、前記中間層の内部または上面にシリコン含有粒子を形成し、
前記シリコン含有粒子を核として前記表面層を形成することにより、前記表面層の上面に凹凸を形成する
表示装置の製造方法。
【請求項12】
基板に有機発光素子を有する表示パネルを形成する工程と、封止パネルの一面側に光学機能膜を形成する工程と、前記表示パネルの前記有機発光素子側に前記封止パネルの前記光学機能素子側を対向させて配置し、前記表示パネルおよび前記封止パネルを接着層により全面にわたって貼り合せる工程とを含み、
前記光学機能膜を形成する工程は、シリコンを含む絶縁材料よりなる中間層をプラズマCVD法により形成する工程と、前記中間層の上面に接して、前記中間層と同じ材料よりなると共に前記中間層よりも高密度の表面層をプラズマCVD法により形成する工程とを含み、
前記中間層を形成する工程において、前記中間層の形成中または形成後にプラズマを停止したのち再開することにより、前記中間層の内部または上面にシリコン含有粒子を形成し、
前記シリコン含有粒子を核として前記表面層を形成することにより、前記表面層の上面に凹凸を形成する
表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2011−204377(P2011−204377A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68123(P2010−68123)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】