説明

光学活性アミノアルキルフェノールの製造方法

本発明は、アミノアルキルフェノールのエナンチオ選択的N−アシル化方法、並びに式(I-S)及び/又は(I-R)の鏡像異性体的に純粋な化合物の製造方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルキルフェノールのエナンチオ選択的N−アシル化方法、並びに式(I-S)及び/又は(I-R)の鏡像異性体的に純粋な化合物の製造方法に関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
光学分割による鏡像異性体的に純粋なアミノアルキルベンゼンの製造は公知である。例として、WO 95/08636 は、第一級及び第二級アミンを加水分解酵素の存在下にエステルと反応させ、次いで一方のエナンチオ選択的にアシル化されたアミンをアシル化されていない対掌体から分離することによる、上記アミンの光学分割方法を記載している。それに対して、アルキルアミノヒドロキシベンゼンの光学分割は記載されていない。
【0003】
US 4,904,680 は、鏡像体混合物をリンゴ酸と反応させることによる、4−(1−アミノエチル)フェノールの光学分割方法を記載している。しかしながら、この反応は劣った収率で進行し、そして光学純度は依然として満足できるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、式(I-S)及び/又は(I-R)の鏡像異性体的に本質的に純粋な化合物の効率的な製造方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、アミン(I-S)及び/又は(I-R)が、これらのアミンの鏡像体混合物、特にラセミ体を、加水分解酵素の存在下にエナンチオ選択的にアシル化する場合に得ることができることを見出した。ベンゼン環上のヒドロキシル官能基をアシル化の前に保護することが前提条件である。
【0006】
従って本発明は、式IIの鏡像体混合物
【化2】

【0007】
(式中、
Pは保護基であり、
nは0、1又は2であり、そして
mは0、1又は2である)を、
加水分解酵素の存在下にアシル化剤と反応させて、一方の鏡像体が本質的にアシル化された形態で存在し、そして他方の鏡像体が本質的にアシル化されていない形態で存在する混合物を得る、アミノアルキルフェノールのエナンチオ選択的アシル化方法(方法A)に関する。
【0008】
本発明は更に、式(I-S)及び/又は(I-R)の鏡像異性体的に純粋な化合物
【化3】

【0009】
(式中、
nは0、1又は2であり、そして
mは0、1又は2である)の製造方法であって、該方法が、下記の段階:
(i) 式IIの鏡像体混合物
【化4】

【0010】
(式中、
Pは保護基であり、
m及びnはそれぞれ上記定義の通りである)を、
加水分解酵素の存在下にアシル化剤と反応させて、一方の鏡像体が本質的にアシル化された形態で存在し、そして他方の鏡像体が本質的にアシル化されていない形態で存在する混合物を取得し;
(ii) 段階(i)で得られた混合物から化合物(II)のアシル化されていない鏡像体を除去し;
(iii) 段階(ii)で得られた化合物(II)のアシル化されていない鏡像体を脱保護してアミン(I-S)又は(I-R)を与え;そして
(iv) 必要に応じて、段階(i)で得られた化合物(II)の本質的にアシル化された鏡像体を加水分解して相当するアミン(II)のアシル化されていない鏡像体を与え、続いてそれを脱保護してアミン(I-S)又は(I-R)を与えることを含む、上記製造方法(方法B)を提供する。
【0011】
本発明に係る方法、反応関与体及び生成物の好ましい実施形態に関して下記で行う言及は、単独での解釈、及び特に相互に組み合わせた解釈の両方に適用される。
【0012】
式(I-S)及び(I-R)の本質的に鏡像異性体的に純粋な化合物は、本発明の文脈において、それらが何れの場合にも少なくとも95%ee、好ましくは少なくとも96%ee、そして特に少なくとも97%eeの鏡像異性体的純度で存在することを意味すると理解すべきである。
【0013】
方法Aにおいて又は方法Bの段階(i)において、S鏡像体が本質的にアシル化されていない形態で存在し、そしてR鏡像体が本質的にアシル化された形態で存在する混合物を与えることが好ましい。
【0014】
「化合物(II)の本質的にアシル化されていない鏡像体」は、化合物(II)のこの鏡像体の少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、特に少なくとも98%がアシル化されていないことを意味すると理解すべきである。「化合物(II)の本質的にアシル化された鏡像体」という表現は、対応して、化合物(II)のこの鏡像体の少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%がアシル化された形態で存在することを意味する。
【0015】
「化合物(II)の本質的にアシル化されていないS鏡像体」は、対応して、化合物(II)のS鏡像体の少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、特に少なくとも98%がアシル化されていないことを意味すると理解すべきである。「化合物(II)の本質的にアシル化されたR鏡像体」という表現は、対応して、化合物(II)のR鏡像体の少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%がアシル化された形態で存在することを意味する。
【0016】
方法Aで又は方法Bの段階(i)で使用される加水分解酵素は、好ましくはプロテアーゼ、そして特にリパーゼである。これは、化合物(II)の二つの鏡像体の一方だけの選択的N−アシル化をもたらす。それは、好ましくは、化合物(II)のR鏡像体の選択的アミド化をもたらす。加水分解酵素は、好ましくは微生物から、より好ましくは細菌又は酵母から得られる。同様に好適なものは、組換え方法により得ることのできる加水分解酵素である。加水分解酵素は精製された若しくは部分精製された形態で、又は微生物それ自体として使用することができる。微生物から加水分解酵素を得るため及び精製するための方法は、例えば EP-A-11149849 又は EP-A-1069183 から、当業者に十分によく知られている。精製された形態の加水分解酵素を使用することが好ましい。
【0017】
加水分解酵素は、遊離形態で(すなわち、天然形態で)又は固定化された形態で使用することができる。固定化酵素は、不活性支持体に固定化されている酵素を意味すると理解される。好適な支持体材料及びそれに固定化された酵素は、EP-A-1149849、EP-A-1 069 183 及び DE-A 100193773 並びにそこで引用された参考文献から公知である。これに関して、これらの文書の完全な開示が参照される。好適な支持体材料は、例えば、粘土、粘土鉱物、例えばカオリナイト、珪藻土、パーライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロース粉末、陰イオン交換材料、合成ポリマー、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、並びにポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンを包含する。支持された酵素を製造するために、支持体材料は典型的には微粉化した微粒子の形態で使用され、多孔質形態が好ましい。支持体材料の粒径は、典型的には5mm以下、特に2mmである(篩グレード)
リパーゼ(トリアシルグリセロールアシル加水分解酵素;EC 3.1.1.3)を使用することが好ましい。これらのなかで、バークホルデリア(Burkholderia)若しくはシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌から又はカンジダ(Candida)属の酵母から得られるリパーゼが好ましい。
【0018】
バークホルデリア種の例は、バークホルデリア・アンビファリア(Burkholderia ambifaria) (例えば菌株 ATCC BAA-244、CCUG 44356、LMG 19182); バークホルデリア・アンドロポゴニス(Burkholderia andropogonis) (例えば菌株 ATCC 23061、CCUG 32772、CFBP 2421、CIP 105771、DSM 9511、ICMP 2807、JCM 10487、LMG 2129、NCPPB 934、NRRL B-14296); バークホルデリア・カレドニカ(Burkholderia caledonica) (例えば菌株 W50D、CCUG 42236、CIP 107098、LMG 19076); バークホルデリア・カリベンシス(Burkholderia caribensis) (例えば菌株 MWAP 64、CCUG 42847、CIP 106784、DSM 13236、LMG 18531); バークホルデリア・カリオフィリ(Burkholderia caryophylli) (例えば菌株 ATCC 25418、CCUG 20834、CFBP 2429、CFBP 3818、CIP 105770、DSM 50341、HAMBI 2159、ICMP 512、JCM 9310、JCM 10488、LMG 2155、NCPPB 2151); バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia) (例えば菌株 Ballard 717、717-ICPB 25、ATCC 25416、CCUG 12691、CCUG 13226、CFBP 2227、CIP 80.24、DSM 7288、HAMBI 1976、ICMP 5796、IFO 14074、JCM 5964、LMG 1222、NCCB 76047、NCPPB 2993、NCTC 10743、NRRL B-14810); バークホルデリア・ココベネナンス(Burkholderia cocovenenans) (例えば菌株 ATCC 33664、CFBP 4790、DSM 11318、JCM 10561、LMG 11626、NCIMB 9450); バークホルデリア・フンゴルム(Burkholderia fungorum) (例えば菌株
Croize P763-2、CCUG 31961、CIP 107096、LMG 16225); バークホルデリア・グラジオリ(Burkholderia gladioli) (例えば菌株 ATCC 10248、CCUG 1782、CFBP 2427、CIP 105410、DSM 4285、HAMBI 2157、ICMP 3950、IFO 13700、JCM 9311、LMG 2216、NCCB 38018、NCPPB 1891、NCTC 12378、NRRL B-793); バークホルデリア・グラテイ(Burkholderia glathei) (例えば菌株 ATCC 29195、CFBP 4791、CIP 105421、DSM 50014、JCM 10563、LMG 14190); バークホルデリア・グルマエ(Burkholderia glumae) (例えば菌株 ATCC 33617、CCUG 20835、CFBP 4900、CFBP 2430、CIP 106418、DSM 9512、ICMP 3655、LMG 2196、NCPPB 2981、NIAES 1169); バークホルデリア・グラミニス(Burkholderia graminis) (例えば菌株 C4D1M、ATCC 700544、CCUG 42231、CIP 106649、LMG 18924); バークホルデリア・クルリエンシス(Burkholderia kururiensis) (例えば菌株 KP 23、ATCC 700977、CIP 106643、DSM 13646、JCM 10599、LMG 19447); バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei) (例えば菌株 ATCC 23344、NCTC 12938); バークホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans) (例えば菌株 ATCC BAA-247、CCUG 34080、CIP 105495、DSM 13243、LMG 13010、NCTC 13007); バークホルデリア・ノリムベルゲンシス(Burkholderia norimbergensis) (例えば菌株 R2、ATCC BAA-65、CCUG 39188、CFBP 4792、DSM 11628、CIP 105463、JCM
10565、LMG 18379); バークホルデリア・フェナジニウム(Burkholderia phenazinium) (例えば菌株 ATCC 33666、CCUG 20836、CFBP 4793、CIP 106502、DSM 10684、JCM 10564、LMG 2247、NCIB 11027); バークホルデリア・ピケッチイ(Burkholderia pikettii) (例えば菌株 ATCC 27511、CCUG 3318、CFBP 2459、CIP 73.23、DSM 6297、HAMBI 2158、JCM 5969、LMG 5942、NCTC 11149); バークホルデリア・プランタリイ(Burkholderia plantarii) (例えば菌株 AZ 8201、ATCC 43733、CCUG 23368、CFBP 3573、CFBP 3997、CIP 105769、DSM 9509、ICMP 9424、JCM 5492、LMG 9035、NCPPB 3590、NIAES 1723); バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei) (例えば菌株 WRAIR 286、ATCC 23343、NCTC 12939); バークホルデリア・ピロシニア(Burkholderia pyrrocinia) (例えば菌株 ATCC 15958、CFBP 4794、CIP 105874、DSM 10685、LMG 14191); バークホルデリア・サッカリ(Burkholderia sacchari) (例えば菌株 CCT 6771、CIP 107211、IPT 101、LMG 19450); バークホルデリア・ソラナセアルム(Burkholderia solanacearum) (例えば菌株 A. Kelman 60-1、ATCC 11696、CCUG 14272、CFBP 2047、CIP 104762、DSM 9544、ICMP 5712、JCM 10489、LMG 2299、NCAIM B.01459、NCPPB 325、NRRL B-3212); バークホルデリア・スタビリス(Burkholderia stabilis) (例えば菌株 ATCC BAA-67、CCUG 34168、CIP 106845、LMG 14
294、NCTC 13011); バークホルデリア・タイランデンシス(Burkholderia thailandensis) (例えば菌株 E 264、ATCC 700388、CIP 106301、DSM 13276); バークホルデリア・ウボネンシス(Burkholderia ubonensis) (例えば菌株 EY 3383、CIP 107078、NCTC 13147); バークホルデリア・バンジイ(Burkholderia vandii) (例えば菌株 VA-1316、ATCC 51545、CFBP 4795、DSM 9510、JCM 7957、LMG 16020); バークホルデリア・ビエトナミエンシス(Burkholderia vietnamiensis) (例えば菌株 TVV 75、ATCC BAA-248、CCUG 34169、CFBP 4796、CIP 105875、DSM 11319、JCM 10562、LMG 10929) である。
【0019】
シュードモナス種の例は、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa) (例えば菌株 ATCC 10145、DSM 50071)、シュードモナス・アガリシ(Pseudomonas agarici) (例えば菌株 ATCC 25941、DSM 11810)、シュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes) (例えば菌株 ATCC 14909、DSM 50342) 、シュードモナス・アミグダレ (Pseudomonas amygdale) (例えば菌株 ATCC 337614、DSM 7298) 、シュードモナス・アングイリセプチカ( Pseudomonas anguiliseptica) (例えば菌株 ATCC 33660、DSM 12111)、シュードモナス・アンチミクロビカ(Pseudomonas antimicrobica) (例えば菌株 DSM 8361、NCIB 9898、LMG 18920)、シュードモナス・アスプレニ(Pseudomonas aspleni) (例えば菌株 ATCC 23835、CCUG 32773)、シュードモナス・オーランチアカ(Pseudomonas aurantiaca) (例えば菌株 ATCC 33663, CIP 106710)、シュードモナス・オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens) (例えば菌株 ATCC 13985、CFBP 2133)、シュードモナス・アベラナエ(Pseudomonas avellanae) (例えば菌株 DSM 11809、NCPPB 3487)、シュードモナス・アゾトフォルマンス(Pseudomonas azotoformans) (例えば菌株 CIP 106744、JCM 7733)、シュードモナス・バレアリカ(Pseudomonas balearica) (例えば菌株 DSM 6083、CIP 105297)、シュードモナス・ベイジェリンスキイ(Pseudomonas beijerinsckii) (例えば菌株 ATCC 19372、DSM 6083)、シュードモナス・ベテリ(Pseudomonas beteli) (例えば菌株 ATCC 19861、CFBP 4337)、シュードモナス・ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) (例えば菌株 ATCC 33662 CIP 106717)、シュードモナス・カルボキシヒドロゲナ(Pseudomonas carboxyhydrogena) (例えば菌株 ATCC 29978、DSM 1083)、シュードモナス・カリカパパヤエ(Pseudomonas caricapapayae) (例えば菌株 ATCC 33615、CCUG 32775)、シュードモナス・シコリイ(Pseudomonas cichorii) (例えば菌株 ATCC 10857、DSM 50259)、シュードモナス・シッシコラ(Pseudomonas cissicola) (例えば菌株 ATCC 33616、CCUG 18839)、シュードモナス・シトロネロリス(Pseudomonas citronellolis) (例えば菌株 ATCC 13674、DSM 50332)、シュードモナス・コロナファシエンス(Pseudomonas coronafaciens) (例えば菌株 DSM 50261、DSM 50262)、シュードモナス・コルガテ(Pseudomonas corrugate) (例えば菌株 ATCC 29736、DSM 7228)、シュードモナス・ドゥードロフィイ(Pseudomonas doudoroffii) (例えば菌株 ATCC 27123、DSM 7028)、シュードモナス・エキノイズス(Pseudomonas echinoids) (例えば菌株 ATCC 14820、DSM 1805)、シュードモナス・エロンガテ(Pseudomonas elongate) (例えば菌株 ATCC 10144、DSM 6810)、シュードモナス・フィクセレクタエ(Pseudomonas ficuserectae) (例えば菌株 ATCC 35104、CCUG 32779)、シュードモナス・フラベッセンス(Pseudomonas flavescens) (例えば菌株 ATCC 51555、DSM 12071)、シュードモナス・フレクテンス(Pseudomonas flectens) (例えば菌株 ATCC 12775、CFBB 3281)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens) (例えば菌株 ATCC 13525、DSM 50090)、シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi) (例えば菌株 ATCC 4973、DSM 3456)、シュードモナス・フルバ(Pseudomonas fulva) (例えば菌株 ATCC 31418、CIP 106765)、シュードモナス・フスコバギナエ(Pseudomonas fuscovaginae) (例えば菌株 CCUG 32780、DSM 7231)、シュードモナス・ゲリディコラ(Pseudomonas gelidicola) (例えば菌株 CIP 106748)、シュードモナス・ゲニクラタ(Pseudomonas geniculata) (例えば菌株 ATCC 19374、LMG 2195)、シュードモナス・グラテイ(Pseudomonas glathei) (例えば菌株 ATCC 29195、DSM 50014)、シュードモナス・ハロフィラ(Pseudomonas halophila) (例えば菌株 ATCC 49241、DSM 3050)、シュードモナス・ヒビシコラ(Pseudomonas hibiscicola) (例えば菌株 ATCC 19867、LMG 980)、シュードモナス・フッチエンシス(Pseudomonas huttiensis) (例えば菌株 ATCC 14670、DSM 10281)、シュードモナス・イネルス(Pseudomonas iners) (例えば菌株 CIP 106746)、シュードモナス・ランセロタ(Pseudomonas lancelota) (例えば菌株 ATCC 14669、CFBP 5587)、シュードモナス・レモイグネイ(Pseudomonas lemoignei) (例えば菌株 ATCC 17989、DSM 7445)、シュードモナス・ルンデンシス(Pseudomonas lundensis) (例えば菌株 ATCC 19968、DSM 6252)、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola) (例えば菌株 ATCC 43273、DSM 6975)、シュードモナス・マルギナリス(Pseudomonas marginalis) (例えば菌株 ATCC 10844、DSM 13124)、シュードモナス・メリアエ(Pseudomonas meliae) (例えば菌株 ATCC 33050、DSM 6759)、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina) (例えば菌株 ATCC 25411、DSM 50017)、シュードモナス・ムシドレンス(Pseudomonas mucidolens) (例えば菌株 ATCC 4685、CCUG 1424)、シュードモナス・モンテイリ(Pseudomonas monteilli) (例えば菌株 ATCC 700476、DSM 14164)、シュードモナス・ナウチカ(Pseudomonas nautica) (例えば菌株 ATCC 27132、DSM 50418) 、シュードモナス・ニトロレデュセンス(Pseudomonas nitroreducens) (例えば菌株 ATCC 33634、DSM 14399)、シュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans) (例えば菌株 ATCC 8062、DSM 1045)、シュードモナス・オリジハビタンス(Pseudomonas oryzihabitans) (例えば菌株 ATCC 43272、DSM 6835)、シュードモナス・パーツシノゲナ(Pseudomonas pertucinogena) (例えば菌株 ATCC 190、CCUG 7832)、シュードモナス・フェナジニウム(Pseudomonas phenazinium) (例えば菌株 ATCC 33666、DSM 10684)、シュードモナス・ピクトルム(Pseudomonas pictorum) (例えば菌株 ATCC 23328、LMG 981)、シュードモナス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes) (例えば菌株 ATCC 17440、DSM 50188)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) (例えば菌株 ATCC 12633、DSM 291)、シュードモナス・ピロシニア(Pseudomonas pyrrocinia) (例えば菌株 ATCC 15958、DSM 10685)、シュードモナス・レシノボランス(Pseudomonas resinovorans) (例えば菌株 ATCC 14235、CCUG 2473)、シュードモナス・ローデシアエ(Pseudomonas rhodesiae) (例えば菌株 CCUG 38732、DSM 14020)、シュードモナス・サッカロフィラ(Pseudomonas saccharophila) (例えば菌株 ATCC 15946、DSM 654)、シュードモナス・サバスタノイ(Pseudomonas savastanoi) (例えば菌株 ATCC 13522、CFBP 1670)、シュードモナス・スピノサ(Pseudomonas spinosa) (例えば菌株 ATCC 14606)、シュードモナス・スタニエリ(Pseudomonas stanieri) (例えば菌株 ATCC 27130、DSM 7027)、シュードモナス・ストラミナエ(Pseudomonas straminae) (例えば菌株 ATCC 33636、CIP 106745)、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzeri) (例えば菌株 ATCC 17588、DSM 5190)、シュードモナス・シンキサンタ(Pseudomonas synxantha) (例えば菌株 ATCC 9890、CFBP 5591)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae) (例えば菌株 ATCC 19310、DSM 6693)、シュードモナス・シジギイ(Pseudomonas syzygii) (例えば菌株 ATCC 49543、DSM 7385)、シュードモナス・タエロレンス(Pseudomonas taetrolens) (例えば菌株 ATCC 4683、CFBP 5592)、シュードモナス・トラアシイ(Pseudomonas tolaasii) (例えば菌株 ATCC 33618、CCUG 32782)、シュードモナス・ベロニイ(Pseudomonas veronii) (例えば菌株 ATCC 700272、DSM 11331)、シュードモナス・ビリディフラバ(Pseudomonas viridiflava) (例えば菌株 ATCC 13223、DSM 11124)、シュードモナス・ブルガリス(Pseudomonas vulgaris)、シュードモナス・ウィスコンシエンシス(Pseudomonas wisconsinensis) 及びシュードモナス種 DSM 8246 である。これらのうち、バークホルデリア・グルマエ、バークホルデリア・プランタリイ、バークホルデリア・グルマエ、シュードモナス・エルギノーサ、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・フラギ、シュードモナス・ルテオラ、シュードモナス・ブルガリス、シュードモナス・ウィスコンシエンシス及びシュードモナス種 DSM 8246 からのリパーゼが好ましい。シュードモナス種 DSM 8246 からのリパーゼが特に好ましい。
【0020】
カンジダ種の例は、カンジダ・アルボマルギナタ(Candida albomarginata) (例えば菌株 DSM 70015)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida Antarctica) (例えば菌株 DSM 70725)、カンジダ・バカルム(Candida bacarum) (例えば菌株 DSM 70854), カンジダ・ボゴリエンシス(Candida bogoriensis) (例えば菌株 DSM 70872)、カンジダ・ボイジニイ(Candida boidinii) (例えば菌株 DSM 70026、70024、70033、70034)、カンジダ・ボビナ(Candida bovina) (例えば菌株 DSM 70156)、カンジダ・ブルンプチイ(Candida brumptii) (例えば菌株 DSM 70040)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi) (例えば菌株 DSM 2226)、カンジダ・カリオシリグニコラ(Candida cariosilignicola) (例えば菌株 DSM 2148)、カンジダ・カルメルシイ(Candida chalmersii) (例えば菌株 DSM 70126)、カンジダ・シフェリイ(Candida ciferii) (例えば菌株 DSM 70749)、カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea )(例えば菌株 DSM 2031)、カンジダ・エルノビイ(Candida ernobii) (例えば菌株 DSM 70858)、カンジダ・ファマタ(Candida famata) (例えば菌株 DSM 70590)、カンジダ・フレイシュッシイ(Candida freyschussii) (例えば菌株 DSM 70047)、カンジダ・フリーデリキイ(Candida friederichii) (例えば菌株 DSM 70050)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata) (例えば菌株 DSM 6425、11226、70614、70615)、カンジダ・ギレルモンジ(Candida guillermondi) (例えば菌株 DSM 11947、70051、70052)、カンジダ・ヘムロニイ(Candida haemulonii) (例えば菌株 DSM 70624)、カンジダ・インコンスピクア(Candida inconspicua) (例えば菌株 DSM 70631)、カンジダ・インゲンス(Candida ingens) (例えば菌株 DSM 70068、70069)、カンジダ・インテルメディア(Candida intermedia) (例えば菌株 DSM 70753)、カンジダ・ケフイル(Candida kefyr) (例えば菌株 DSM 70073、70106)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei) (例えば菌株 DSM 6128、11956、70075、70079、70086)、カンジダ・ラクチスコンデンシ(Candida lactiscondensi) (例えば菌株 DSM 70635)、カンジダ・ランビカ(Candida lambica) (例えば菌株 DSM 70090、70095)、カンジダ・リポリチカ(Candida lipolytica) (例えば菌株 DSM 1345、3286、8218、70561 又は 70562)、カンジダ・ルシタニアエ(Candida lusitaniae) (例えば菌株 DSM 70102)、カンジダ・マセドニエンシス(Candida macedoniensis) (例えば菌株 DSM 70106)、カンジダ・マグノリアエ(Candida magnoliae) (例えば菌株 DSM 70638、70639)、カンジダ・メンブラナエファシエンス(Candida membranaefaciens) (例えば菌株 DSM 70109)、カンジダ・マルチゲムニス(Candida multigemnis) (例えば菌株 DSM 70862)、カンジダ・ミコデルマ(Candida mycoderma) (例えば菌株 DSM 70184)、カンジダ・ネモデンドラ(Candida nemodendra) (例えば菌株 DSM 70647)、カンジダ・ニトラトフィラ(Candida nitratophila) (例えば菌株 DSM 70649)、カンジダ・ノルベギカ(Candida norvegica) (例えば菌株 DSM 70862)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis) (例えば菌株 DSM 5784、4237、11224、70125、70126)、カンジダ・ペリクロサ( Candida pelliculosa) (例えば菌株 DSM 70130)、カンジダ・ピニ(Candida pini) (例えば菌株 DSM 70653)、カンジダ・プルケリマ(Candida pulcherrima) (例えば菌株 DSM 70336)、カンジダ・プニセア(Candida punicea) (例えば菌株 DSM 4657)、カンジダ・プスツレ(Candida pustule) (例えば菌株 DSM 70865)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa) (例えば菌株 DSM 70761)、カンジダ・サケ(Candida sake) (例えば菌株 DSM 70763)、カンジダ・シルビコラ(Candida silvicola) (例えば菌株 DSM 70764)、カンジダ・ソラニ(Candida solani) (例えば菌株 DSM 3315)、カンジダ sp. (例えば菌株 DSM 1247)、カンジダ・スパンドベンシス(Candida spandovensis) (例えば菌株 DSM 70866)、カンジダ・スクシフィラ(Candida succiphila) (例えば菌株 DSM 2149)、カンジダ・ウチリス(Candida utilis) (例えば菌株 DSM 2361、70163 又は 70167)、カンジダ・バリダ(Candida valida) (例えば菌株 DSM 70169、70178、70179)、カンジダ・バーサチリス(Candida versatilis) (例えば菌株 DSM 6956)、カンジダ・ビニ(Candida vini) (例えば菌株 DSM 70184) 及びカンジダ・ゼイラノイデス(Candida zeylanoides) (例えば菌株 DSM 70185) である。
【0021】
本発明に係る方法において、カンジダ属の酵母からの、特にカンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを用いることが特に好ましい。特定の実施形態において、カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼBが使用される。このリパーゼの固定された形態、例えばアクリル樹脂上に固定化されたカンジダ・アンタルクチカからのリパーゼBが好ましく、これは例えば「Novozym 435(登録商標)」の名称で市販されている。
【0022】
方法Aで又は方法Bの段階(i)で用いられるアシル化剤は、好ましくは、酸成分が、カルボニル炭素原子に隣接する電子に富んだヘテロ原子、例えば、フッ素、窒素、酸素及び硫黄原子から選択されるものを有するアシル化剤から選択される。アシル化剤は好ましくはエステルである。アシル化剤は、より好ましくは、エステルの酸成分が、カルボニル炭素原子に対してα、β又はγ位に酸素−、窒素−、フッ素−又は硫黄−含有基を有するエステルから選択される。ヘテロ原子それ自体がカルボニル炭素原子に対してα、β又はγ位で、そして特にα位で結合しているアシル化剤が特に好ましい。
【0023】
酸素−含有基は、例えばヒドロキシル基又はアルコキシ基である。窒素−含有基は、例えばアミノ基であるが、硫黄−含有基はチオール基(SH)又はチオアルキル基であってよい。
【0024】
エステルのアルコール成分は、好ましくは直鎖状又は分枝状のC−C10−アルコールーに由来し、これは置換されていていてもよく又は好ましくは置換されていなくてもよい。しかしながら、アルコール成分は、より好ましくは第二級アルコール、例えばイソプロパノール、2−ブタノール、2−又は3−ペンタノール等に由来する。それは特にイソプロパノールに由来する。
【0025】
特に好適なエステルは、式Vの化合物
【化5】

【0026】
であり、式中、
はC−C10−アルキルであり、
は水素又はC−C10−アルキルであり、
は水素、C−C10−アルキル、又はフェニルであり、C−C10−アルキル、又はフェニルは場合によりNH、OH、C−C−アルコキシ若しくはハロゲンで置換されたものであり、
XはO、S又はNRであり、
は水素、C−C10−アルキル、又はフェニルであり、C−C10−アルキル、又はフェニルは場合によりNH、OH、C−C−アルコキシ若しくはハロゲンで置換されたものであり、そして
aは0、1又は2である。
【0027】
は、好ましくは直鎖状又は分枝状C−C−アルキルである。Rは、より好ましくは第二級アルコールに由来し、従ってより好ましくは第四級炭素原子を介して結合したC−C−アルキル基、例えばイソプロピル又は2−ブチルである。特に、Rはイソプロピルである。
【0028】
Xは好ましくはOである。
【0029】
は水素又はC−C−アルキル、そして特に水素である。
【0030】
は好ましくはC−C−アルキル、より好ましくはメチル又はエチル、そして特にメチルである。
【0031】
本発明の文脈において、C−C−アルキルは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル又はtert-ブチルである。
【0032】
−C−アルキルは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキル基である。その例は、上記C−C−アルキル基、並びにペンチル、ネオペンチル及びヘキシルである。
【0033】
−C10−アルキルは1〜10個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキル基である。その例は、上記C−C−アルキル基、並びにヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ネオノニル、デシル及びネオデシルである。
【0034】
−C−アルコキシは、1〜4個の炭素原子を有し、そして酸素を介して結合したアルキル基である。その例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ及びtert−ブトキシである。
【0035】
−C10−アルコールは、1〜10個の炭素原子を有し、そして少なくとも1個のヒドロキシル基で置換された脂肪族炭化水素である。C−C10−アルコールは、好ましくはヒドロキシル基で置換されたアルカンである。その例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール及びデカノールである。
【0036】
本発明の文脈において、ハロゲンは、好ましくはフッ素、塩素又は臭素、より好ましくはフッ素又は塩素である。
【0037】
式(I-S)及び (I-R)、そしてまた(II)の化合物において、nは好ましくは0又は2、そして特に0である。
【0038】
mは好ましくは0又は1、そして特に0である。
【0039】
化合物(I-S)及び(I-R)のヒドロキシル官能基並びに化合物(II)の保護されたヒドロキシル官能基(PO−)は、アミノアルキル基(−(CH)−CH(NH)−(CH)−CH)に対してオルト、メタ又はパラ位にあってよい。化合物(I-S)及び(I-R)のヒドロキシル官能基又は化合物(II)の保護されたヒドロキシル官能基(PO−)は、アミノアルキル基に対して好ましくはメタ又はパラ位に、そして特にパラ位にある。
【0040】
化合物(II)において、保護基Pは、好ましくはC−C−アルキル又はベンジル基である。Pは、より好ましくはtert−ブチル又はベンジル基、そして特にtert−ブチルである。
【0041】
方法Aにおける又は方法Bの段階(i)における反応において、アシル化される化合物(II)のその鏡像体含有量に基づいて、1〜5モル当量、より好ましくは1〜4モル当量、そして特に1〜3モル当量のアシル化剤を使用することが好ましい。モル当量は、アシル化される式(II)の化合物の鏡像体1モルと反応できるアシル化剤のカルボキシル基の数(モル単)を意味すると理解すべきである。従って、式(V)のエステルを用いる場合には、アシル化される式(II)の化合物の鏡像体1モルに基づいて、1〜5モル当量、より好ましくは1〜4モル当量、そして特に1〜3モル当量のエステルを使用することが好ましい。別法として、式(V)のエステルを用いる場合は、式(II)の鏡像体混合物1モルに基づいて、0.5〜2.5モル、より好ましくは0.5〜2モル、そして特に0.5〜1.5モルのエステルを使用することが好ましい。
【0042】
添加すべき加水分解酵素の量は、その種類及び酵素調製物の活性に依存する。反応にとって最適な酵素量は、簡単な予備実験により容易に決定することができる。一般的に、1000単位の加水分解酵素/ミリモルの化合物(II)が用いられる。
【0043】
好ましい実施形態において、方法Aにおける又は方法Bの段階(i)における反応は、非水性反応媒質中で行われる。非水性反応媒質は、反応媒質の総重量に基づいて、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満の水、より好ましくは0.1重量%未満の水、そして特に0.05重量%未満の水を含む反応媒質を意味すると理解すべきである。この反応は好ましくは有機溶剤中で行われる。好適な溶剤は、例えば、脂肪族炭化水素、好ましくは5〜8個の炭素原子を有するもの、例えばペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン若しくはシクロオクタン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、好ましくは1若しくは2個の炭素原子を有するもの、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン若しくはテトラクロロエタン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン類、クロロベンゼン若しくはジクロロベンゼン、脂肪族の非環式及び環式エーテル、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するもの、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン、又は上記溶剤の混合物である。上記のエーテル及び芳香族炭化水素を使用することが特に好ましい。特にトルエンが用いられる。
【0044】
代わりとなる好ましい実施形態において、方法Aにおける又は方法Bの段階(i)における反応は、バルクで、すなわち、水性溶剤又は有機溶剤を用いないで行われる。
【0045】
方法Aにおける又は方法Bの段階(i)における反応は、用いられる加水分解酵素の失活温度未満の温度で、そして好ましくは少なくとも−10℃で行われる。それは、より好ましくは0〜80℃、特に20〜40℃の範囲である。この反応は、特に室温で行われる。
【0046】
実施するために、例えば、最初に式(II)の鏡像体混合物に加水分解酵素、アシル化剤及び適切ならば溶剤を装入し、そしてこの混合物を、例えば攪拌又は振盪により混合することが可能である。しかしながら、加水分解酵素を反応器に、例えばカラムに固定化し、そして鏡像体混合物及びアシル化剤を含む混合物を該反応器に通すことも可能である。この目的のために、所望の変換率が達成されるまで該混合物を該反応器に循環して通すことができる。これは、アシル化剤のカルボキシル基を順次に変換して、エナンチオ選択的にアシル化される化合物(II)のその鏡像体のアミドにするが、他の鏡像体は本質的に変化しないままである。一般的に、アシル化は、混合物中に存在し、かつエナンチオ選択的にアシル化される化合物(II)の鏡像体に基づいて、少なくとも95%の、好ましくは少なくとも99%の、そして特に少なくとも99.5%の変換率まで行われるだろう。反応の進行、すなわち順次のアミド形成は、慣例の方法、例えばガスクロマトグラフィー又はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によりモニターすることができる。
【0047】
用いられる鏡像体混合物(II)は、一般的にアミンのラセミ体である;しかしながら、一方の鏡像体が富化している混合物も適している。
【0048】
反応混合物は慣例の方法により、例えば、最初に加水分解酵素を反応混合物から除去し、例えば濾別又は遠心分離し、適切ならば溶剤を濾液又は遠心分離物から除去し、次いで残留物を分離操作に付することによって仕上げ処理することができる。
【0049】
式(II)の鏡像体混合物のエナンチオ選択的変換は、化合物(II)の本質的にアシル化された鏡像体(すなわちアミド)及び本質的にアシル化されていない反対鏡像体を含む反応生成物を形成する。今存在するアミン及びアミドのこの混合物は、慣例の方法により容易に分離することができる。好適な分離操作は、例えば、抽出、蒸留、結晶化又はクロマトグラフィーである。アミン及びアミドを蒸留により分離することが好ましい。代わりとなる好ましい分離方法において、有機溶剤に溶解又は懸濁した反応混合物を、アシル化されていない鏡像体のアンモニウム塩を形成して沈殿させる酸と混合する。次いでこれを、濾過又は遠心分離により、化合物(II)の一方の鏡像体のアミドを含む上澄み液から除去することができる。好適な酸は、例えば、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸又は硝酸である。しかしながら、有機酸、例えばトリフルオロ酢酸又はトリフルオロメタンスルホン酸も適しているが、無機酸、そして特に硫酸が好ましい。酸は、酸処理により典型的に切り離されるOH官能基の保護基Pが除去されないような量で好ましく使用される。これは、保護基としてtert−ブチルを用いる場合には特にそうである。酸は、アシル化されていない鏡像体に対してほぼ等モル量で、例えば、アシル化されていない鏡像体1モルに基づいて、0.9〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル、そして特に約1モルの量で用いることが好ましい。多塩基酸、例えば硫酸の場合には、モル比は当然のことながら酸に存在するプロトンの数に関する。
【0050】
段階(iii)において、段階(ii)で除去された化合物(II)の本質的にアシル化されていない鏡像体を最後に脱保護し、そして相当する遊離の本質的に鏡像異性体的に純粋なアミンに変換する。特に、段階(ii)で除去されたアシル化されていない鏡像体は、化合物(II)のS鏡像体であり、これを段階(iii)で脱保護して化合物(I-S)に変換する。
【0051】
脱保護は、特定の保護基Pの切り離しのために先行技術から公知の反応条件下で一般的に行われる。好適な脱保護方法は、例えば、T.W. Greene, P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, Wiley Interscience 1999、又は P.J. Kocienski, Protective Groups, Thieme 2000 に記載されており、これらは全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
例として、tert−ブチル保護基は、好ましくは、保護された化合物を酸で処理することにより切り離される。好適な酸は上記の無機酸及び有機酸である。好ましい酸は無機酸、例えば塩酸及び硫酸である。酸による脱保護操作を高められた反応温度で、例えば50〜150℃、好ましくは70〜100℃で行うことが好ましい。
【0053】
ベンジル保護基Pが用いられた場合には、ベンジル成分を好ましくは水素化分解により切り離す。水素化分解は公知の条件下で、例えば、パラジウム、水酸化パラジウム又は白金のような好適な水素化触媒を用いて一般的に行われる。
【0054】
アミンが、保護基を切り離した後に、例えば、保護された生成物が酸で脱保護されてしまったため、又は段階(ii)における除去を沈殿により行ったために、まだアンモニウム塩として存在している場合には、アミンを好適な塩基によりアンモニウム塩から遊離させる。好適な塩基は、例えば、水酸化アルカリ金属、例えば水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム、水酸化アルカリ土類金属、例えば水酸化カルシウム若しくは水酸化マグネシウム、炭酸アルカリ金属又は重炭酸アルカリ金属、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム若しくは炭酸カルシウムである。水酸化アルカリ金属、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用することが好ましい。中和を水性媒質中で行うことが好ましい。アミンをより容易に分離するために、塩基は、一方ではアミン官能基が中和されるが、他方ではフェノール環上のヒドロキシル官能基が脱保護されず、そして中性分子が沈殿するような量で好ましく用いられる。従って、pHを好ましくは等電点に調節する。得られたアミンは続いて、必要に応じて更なる精製段階に付することができる。
【0055】
他方の鏡像体であって、その保護された誘導体が方法Aで又は方法Bの段階(i)でエナンチオ選択的にアシル化される前記鏡像体は、段階(ii)で得られた化合物(II)の本質的にアシル化された鏡像体を加水分解して、アシル官能基を切り離して化合物(II)の相当する鏡像体を得ることにより得られる。この鏡像体は好ましくは化合物(II)のR鏡像体である。
【0056】
加水分解は、アミドの加水分解のために公知の反応条件下で一般的に行われる。反応条件は、例えば、DE-A-19534208 に、又は Organikum, VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften, Berlin 1988, 17th ed., p. 419 に、又は Jerry March, Advanced Organic Chemistry, 3rd ed., John Wiley and Sons, p. 338 ff. に記載されており、これらは全体として参照により本明細書に組み込まれる。アミンへの加水分解を塩基との反応により行うことが好ましい。好適な塩基は、例えば、水酸化アルカリ金属、例えば水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム、水酸化アルカリ土類金属、例えば水酸化カルシウム、炭酸アルカリ金属及びアルカリ土類金属、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸カルシウム、アンモニア、アミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン及びジイソプロピルエチルアミン、又はアミノアルコール、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンである。水酸化アルカリ金属を、適切ならばアミン又はアミノアルコールと組み合わせて用いることが特に好ましい。加水分解は、水中又は溶剤中又は水と溶剤との混合物中で行うことができる。好適な溶剤は、アルコール、好ましくは1〜3個の炭素原子を有するもの、例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノール、グリコール、特に2〜8個の炭素原子を有するもの、例えばエチレングリコール、ジ−及びトリエチレングリコール、アミン及びアミノアルコール、例えば上記のアミン及びアミノアルコール、そしてまた上記溶剤の混合物、並びに水とのその混合物である。加水分解は、好ましくは高められた温度で、例えば使用される溶剤の沸点で行われる。得られた化合物(II)の加水分解された鏡像体は続いて、反対鏡像体のために記載したのと同じ反応条件下で脱保護し、そして反対アミン(I-S)又は好ましくは(I-R)に変換することができる。
【0057】
本発明に係る方法は、アミン(I-S)及び(I-R)を、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、よりいっそう好ましくは少なくとも97%、そして特に少なくとも98%、例えば少なくとも99%の鏡像体過剰率(ee)で与える。
【0058】
化合物4−(1−アミノエチル)フェニルの場合には特に、本発明に係る方法は、S鏡像体を、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、そして特に少なくとも99.4%の鏡像体過剰率(ee)で与える。対応するR鏡像体の鏡像異性体的純度は、好ましくは少なくとも98%ee、そしてより好ましくは少なくとも99%eeである。
【0059】
化合物3−(1−アミノエチル)フェニルの場合には特に、本発明に係る方法は、S鏡像体を、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、そして特に少なくとも99.5%の鏡像体過剰率(ee)で与える。対応するR鏡像体の鏡像異性体的純度は、好ましくは少なくとも98%ee、そしてより好ましくは少なくとも98.5%eeである。
【0060】
アミン(I-S)及び(I-R)の鏡像体過剰率は、普通の方法により、例えば旋光度の決定により、又はキラル相上でのクロマトグラフィー、例えばキラルカラムを用いるHPLC若しくはガスクロマトグラフィーにより決定することができる。
【0061】
鏡像体(I-S)若しくは(I-R)の一方又はその反応生成物に興味がない場合には、それをラセミ化し、そして方法Aで又は方法Bの段階(i)で再使用することができる。このリサイクリングは、鏡像体混合物(II)から全体として50%より多い所望の鏡像体(I-S)又は(I-R)を得ることを可能にする。好適なラセミ化条件は公知であり、そして例えば、WO 00/209357 又は WO 00/47546 に記載されており、これらは明示的に参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
本発明に係る方法(A又はB)の好ましい実施形態において、式(II)の化合物は、好ましくは、
(a) 式(III)の化合物
【化6】

【0063】
(式中、m及びnは上記定義の通りである)
をOH基において保護して化合物(IV)
【化7】

【0064】
(式中、Pは上記定義の通りである)
を取得し;
そして
(b) 化合物(IV)を還元的アミノ化に付して式(II)の化合物を得る
ことによって得られる。
【0065】
これらの段階の逆の順序、すなわち、最初に化合物(III)の還元的アミノ化により式VIのアミン化合物
【化8】

【0066】
を取得し、その次にのみ、生成したアミンVI上にヒドロキシル保護基を導入して化合物(II)を得ることも想定される。
【0067】
好適な保護基Pは、一方では容易に取り付けることができるが、他方では方法Aにおいて又は方法Bの段階(i)及び(ii)においても生き延びることができ、それでもなお、例えば更に方法Bの段階(iii)及び(iv)で除去できるものである。ヒドロキシル官能基のための慣例の保護基は、対応するアルキルエーテル、ベンジルエーテル及びシリルエーテルである。それらは通常、適切なアルキルハライド、ベンジルハライド又はシリルハライドを保護すべき化合物と反応させることによって得られる。しかしながら、化合物(III)の場合には、それらを対応するベンジルエーテル若しくはベンジル基のフェニル環上で置換されたベンジルエーテル、又は特にtert−ブチルエーテル(P=ベンジル、置換されたベンジル又はtert−ブチル)に変換することが特に好ましいことを見出した。
【0068】
置換されたベンジル基は、好ましくはメチル−又はジメチルベンジル基である。このような置換されたベンジル基を用いる利点は、段階(b)の水素化分解条件に対するそれらの感受性が、置換されていないベンジルと比較して低いことにある。
【0069】
保護基は、段階(a)において、適切な保護基の導入のために先行技術から公知の慣例の反応条件下で一般的に導入される。これに関しては、T.W. Greene, P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, Wiley Interscience 1999、及び P.J. Kocienski, Protective Groups, Thieme 2000 が引用され、これらは全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
例として、化合物(III)は、例えば、(III)を、場合によりフェニル環上で置換されたベンジルハライドと、例えばベンジルブロミド又はベンジルクロリドと反応させることによって、対応するベンジルエーテルに変換され、この反応は塩基の存在下に一般的に行われる。好適な塩基は、上記の水酸化アルカリ金属及びアルカリ土類金属、そしてまた炭酸アルカリ金属及びアルカリ土類金属である。
【0071】
対応するtert−ブチルエーテルへの変換は、好ましくは、化合物(III)を酸の存在下にイソブテンと反応させることによって行われる。好適な酸は、無機酸、例えば硫酸、及び強い有機酸、例えばトリフルオロ酢酸又はトリフルオロメタンスルホン酸である。トリフルオロメタンスルホン酸を使用することが特に好ましい。酸は触媒量で用いられる。イソブテンは、保護すべき化合物に対して少なくとも等モル量で、例えば保護すべき化合物1モルに基づいて1〜10モルの量で用いられる。しかしながら、それを過剰量で用いることが好ましい。イソブテン対保護すべき化合物のモル比は、好ましくは2:1〜10:1、より好ましくは3:1〜7:1、例えば約5:1である。基を保護する操作は一般的に溶剤中で行われる。好適な溶剤は、反応関与体又は生成物の何れによっても反応に入らないものである。この目的のために適する溶剤の例は、段階(i)のために記載したものである。ハロゲン化アルカン、例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素又はジクロロエタンを用いることが好ましい。反応温度は、典型的には−80〜40℃、より好ましくは−50〜30℃、そして特にほぼ室温である。この反応は周囲圧力下又は高められた圧力下の何れでも行うことができる。周囲圧力下で実施する場合には、手順は一般的に、最初にイソブテンを−7℃未満に冷却することにより凝縮させ、次いでそれを化合物(III)と、酸触媒及び溶剤の存在下に所望の反応温度で反応させることである。加圧下に実施する場合には、イソブテンを凝縮する必要はない。圧力は好ましくは1.5〜20バール、より好ましくは2〜20バールである。
【0072】
保護された化合物(IV)を続いて慣例の方法により単離し、そして適切ならば精製する。例えば、反応溶液を、好ましくは過剰のイソブテンを除去した後に、最初に、例えば塩基性水溶液と共に攪拌し、そして/又は水若しくは塩基性水溶液で抽出し、有機溶剤相を乾燥し、そして溶剤を除去することによって中和することができる。必要に応じて、生成物(IV)を、例えばクロマトグラフィー又は抽出により更に精製することができる。
【0073】
続いて、保護された化合物(IV)を還元的アミノ化に付してラセミ体アミン(II)を与える。還元的アミノ化のための好適な反応条件は、例えば、Jerry March, Advanced Organic Chemistry, 3rd ed., John Wiley and Sons, p. 798 ff. に記載されており、これは全体として参照により本明細書に組み込まれる。用いられるアミノ化及び還元成分は、好ましくはアンモニア及び水素である。しかしながら、この反応、他の還元剤、例えば亜鉛及びHClと、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)と、水素化ナトリウムと、アルコール性KOHと一緒のペンタカルボニル鉄と、又はセレノフェノール(PhSeH)と組み合わせたアンモニアを用いて行うことも可能である。しかしながら、水素と組み合わせたアンモニアを用いることが好ましい。この場合には、反応は一般的に水素化触媒の存在下に行われ、その場合の水素化触媒は均一系又は不均一系の何れであってもよい。
【0074】
段階(a)で導入された保護基がベンジル基である場合には、水素化触媒は、好ましくは、極めて温和な反応条件を可能にし、従って還元的アミノ化の過程でベンジル保護基の水素化分解的な切り離しが防止されるように選択される。別法として、異なる還元剤、例えばシアノ水素化ホウ素ナトリウムを、水素の代わりに、ベンジル保護基の存在下に用いる。
【0075】
上記の条件下で好適な水素化触媒は、ケトン及びアルデヒドの還元的アミノ化を触媒して対応するアミンにする全ての先行技術の触媒である。水素化触媒は、好ましくは少なくとも一つのVIII族金属を含む。
【0076】
特に好適なVIII族金属は、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム及び白金から選択される。
【0077】
金属は混合物の形態でも使用できる。更に、触媒は、VIII族金属に加えて、少量の他の金属、例えばVIIa族金属、特にレニウム、又はIb族金属、すなわち銅、銀又は金を含むこともできる。特に好ましいVIII族金属は、ルテニウム、ニッケル、パラジウム及び白金、特にルテニウム、ニッケル及びパラジウム、そしてより好ましくはルテニウム及びニッケルである。触媒は、触媒活性種として特にニッケルを含む。
【0078】
不均一系触媒を用いる場合には、それは好適には微粉化した形態で存在する。微粉化した形態は、例えば下記のようにして得られる:
a) ブラック触媒:触媒として使用するすぐ前に、金属をその塩のひとつの溶液から還元的に析出させる。
【0079】
b) アダムス触媒:金属酸化物、特に白金及びパラジウムの酸化物を、水素化に用いる水素によりその場で還元する。
【0080】
c) 骨格又はラネー触媒:金属(特にニッケル又はコバルト)とアルミニウム又はケイ素との二成分合金から、一方のパートナーを酸又はアルカリで浸出することにより、触媒を「金属スポンジ」として製造する。元の合金でのパートナーの残存物は協働的に機能することが多い。
【0081】
d) 担持触媒:ブラック触媒を支持体物質の表面上に沈殿させることもできる。好適な支持体及び支持材料は、以下に記載される。
【0082】
このような不均一系触媒は、一般的な形で、例えば、Organikum, 17th edition, VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften, Berlin, 1988, p. 288 に記載されている。
【0083】
支持体は、金属又は非金属の、多孔質又は非多孔質の材料からなっていてよい。
【0084】
好適な金属材料は、例えば、高合金ステンレス鋼である。好適な非金属材料は、例えば、無機材料、例えば天然及び合成無機物、ガラス若しくはセラミック、プラスチック、例えば合成若しくは天然ポリマー、又は上記二つの組み合わせである。
【0085】
好ましい支持材料は、炭素、特に活性炭、二酸化ケイ素、特に無定形二酸化ケイ素、アルミナ、そしてまたアルカリ土類金属の硫酸塩及び炭酸塩、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸バリウム及び硫酸バリウムである。
【0086】
触媒は、慣例の方法により、例えば、触媒及びその好適な前駆体を含む溶液で支持体を含浸し、湿潤させ、又は支持体に該溶液を噴霧することによって支持体に付着させることができる。
【0087】
好適な支持体及びそれに触媒を付着させる方法は、例えば、DE-A-10128242 に記載されており、これは全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
均一系水素化触媒を本発明に係る方法に使用することも可能である。その例は、EP-A-0668257 に記載されたニッケル触媒である。しかしながら、均一系触媒を使用する欠点は、それらの製造コスト、そしてまたそれらを一般的に再生できないという事実である。
【0089】
従って、不均一系水素化触媒を本発明に係る方法に使用することが好ましい。
【0090】
金属は、より好ましくは、担持形態で又は金属スポンジとして用いられる。担持触媒の例はとりわけ、炭素、特に活性炭、二酸化ケイ素、特に無定形二酸化ケイ素、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム又はアルミナの上のパラジウム、ニッケル又はルテニウムであり、そして支持体は上記の形状で存在できる。好ましい支持体の形状は、上記の成形体である。
【0091】
金属触媒はまた、それらの酸化物の形態で、特に酸化パラジウム、酸化白金又は酸化ニッケルの形態で使用することができ、次いでそれらは水素化条件下で対応する金属に還元される。
【0092】
用いられる金属スポンジは、特にラネーニッケルである。
【0093】
本発明に係る方法に用いられる水素化触媒は、とりわけラネーニッケルである。
【0094】
使用すべき触媒量は、特定の触媒活性金属及びその使用形態を包含する要因に依存し、そしてそれぞれの場合に当業者により決定することができる。
【0095】
還元的アミノ化は、好ましくは20〜200℃、より好ましくは50〜150℃、そして特に70〜120℃の温度で行われる。
【0096】
還元的アミノ化の反応圧力は、好ましくは2〜300バール、より好ましくは50〜150バールの範囲である。
【0097】
反応圧力及び反応温度の両者は、用いられる水素化触媒の活性及び量を包含する要因に依存し、そしてそれぞれの場合に当業者により決定することができる。
【0098】
段階(b)の還元的アミノ化は、好適な溶剤中で行うことができる。好適な溶剤は、ハロゲン化炭化水素を除いて、段階(i)のために上記したものである。しかしながら、有機溶剤の不存在下に反応を行うことが好ましい。その代わりに、好ましい実施形態において、過剰量で用いられる凝縮アンモニアが溶剤として使用される。
【0099】
反応が終了し、そして反応容器を減圧した後に、一般的に過剰のアンモニアを蒸発除去し、そして触媒を除去する。不均一系触媒は、好ましくは、濾過によるか又は沈降させて上方の生成物含有相を除去することによって除去される。溶液から固体を除去するための他の除去方法、例えば遠心分離もまた、不均一系触媒を除去するために適している。均一系触媒は、同一相混合物を分離するための慣例の方法により、例えばクロマトグラフィー法により除去される。適切ならば、触媒の種類に応じて、除去の前にそれを不活性化する必要がある場合がある。これは、慣例の方法により、例えば反応溶液を、必要に応じて塩基性化又は酸性化しておいた極性溶剤で、例えば水又はメタノール、エタノール、プロパノール若しくはイソプロパノールのようなC−C−アルカノールで洗浄することによって行うことができる。反応に溶剤が用いられていたならば、それは一般的に同様に除去され、これは慣例の方法により、例えば蒸留、特に減圧下での蒸留により行うことができる。
【0100】
反応生成物は、慣例の方法により、例えば蒸留、昇華、抽出又はクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0101】
反応を逆の順序で、すなわち、最初に還元的アミノ化を、その次にのみ保護基の導入を行う場合には、上記で行った記載は、特定の保護基をアミノ化条件下で切り離す際に問題が存在しないこと以外は、還元的アミノ化の段階に適用される。しかしながら、ベンジル保護基をこの反応順序に用いることができない。なぜならば、それは得られたアミノ基と優先的に反応し、そして形成されたベンジルアミンもまた脱保護がベンジルエーテルよりも困難だからである。ここでは、保護基としてアルキルエーテル、そして特にtert−ブチルエーテルを用いることが好ましい。保護基の導入のために、上記で行った記載が適用され、そして酸触媒作用下での反応の場合には、酸が少なくとも部分的にアミノ官能基によって結合されるので、酸を等モル量より多量に使用する必要があることに注意すべきである。
【0102】
段階(a)の次ぎに(b)の反応順序で化合物(II)を製造することが好ましい。
【0103】
化合物(III)、(IV)及び(VI)においても、nは好ましくは0又は2、そして特に0である。mは好ましくは0又は1、そして特に0である。これらの化合物においても、ヒドロキシル官能基(化合物(III)及び(VI)において)又は保護されたヒドロキシル官能基PO(化合物(IV)において)は、アルキルカルボニル基又はアミノアルキル基に対してオルト、メタ又はパラ位にあってよい。ヒドロキシル官能基又は保護されたヒドロキシル官能基POは、アルキルカルボニル基又はアミノアルキル基に対して好ましくはメタ又はパラ位に、そして特にパラ位にある。
【0104】
最後に、本発明は、式(I-S)及び/又は(I-R)の化合物
【化9】

【0105】
(式中、n及びmはそれぞれ上記定義の通りである)の光学活性化合物の製造方法であって、該方法が、
(a) 式(III)の化合物
【化10】

【0106】
をOH基において保護して化合物(IV)
【化11】

【0107】
(式中、Pは上記定義の通りである)を取得し;
(b) 化合物(IV)を還元的アミノ化に付して式(II)の鏡像体混合物
【化12】

【0108】
を取得し;
(c) 式(II)の鏡像体混合物を加水分解酵素の存在下にアシル化剤と反応させて、一方の鏡像体が本質的にアシル化された形態で存在し、そして他方の鏡像体が本質的にアシル化されていない形態で存在する混合物を取得し;
(d) 段階(i)で得られた混合物から化合物(II)のアシル化されていない鏡像体を除去し;
(e) 段階(ii)で得られた化合物(II)のアシル化されていない鏡像体を脱保護してアミン(I-S)又は(I-R)を与え;そして
(f) 必要に応じて、段階(i)で得られた化合物(II)の本質的にアシル化された鏡像体を加水分解してアミン(II)の対応するアシル化されていない鏡像体となし、次いでそれを脱保護してアミン(I-S)又は(I-R)となすこと
による、上記製造方法を提供する。
【0109】
本発明の及び本方法の好適な及び好ましい実施形態に関して上記で行った言及は、ここで対応して適用される。
【0110】
本発明に係る方法は、特に段階(a)及び(b)を含むその実施形態において、化合物(I-S)及び/又は(I-R)を高い収率で、かつきわめて高い鏡像異性体的純度で与える。
【0111】
本発明を下記の非限定的な実施例により説明する。
【実施例】
【0112】
実施例1
(S)-4-(1-アミノエチル)フェノール及び (R)-4-(1-アミノエチル)フェノールの合成
【化13】

【0113】
1.1 保護基の導入: 4-ヒドロキシアセトフェノンから 4-tert-ブトキシアセトフェノンへの変換
ドライアイス凝縮器を備えた3頚フラスコ中で、塩化メチレン (800 ml) 中の p-ヒドロキシアセトフェノン (60 g, 0.44 mol) を、3滴のトリフルオロメタンスルホン酸と混合した。凝集したイソブテン (123 g, 2.2 mol) を反応混合物に加え、その過程で混濁が現れ、微細結晶性固体が析出した。この淡紫色混合物を、ドライアイス凝縮器を取り付けて一夜攪拌し、その過程でドライアイス及び過剰のイソブテンが蒸発した。翌日、この混合物を半濃縮炭酸ナトリウム溶液 (600 ml) に攪拌しながら加えた。相を分離した後、有機相を半飽和炭酸ナトリウム溶液で水相が無色のままになるのに十分な回数だけ洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶剤を減圧下で除去した。66 g (理論値の 78%) の 4-tert-ブトキシアセトフェノンが無色油状物として得られ、これは GC 分析によれば 99.9% の純度を有した。
【0114】
1H NMR (400 MHz; CDCl3): δ = 1.40 (s, 9H); 2.58 (s, 3H); 7.05 及び 7.90 (AA’,BB’ 系; JAB = 10.5 Hz, 4H)。
【0115】
1.2 還元的アミノ化: 1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンの合成
5滴の濃アンモニア溶液で安定化した実施例1.1 からの 4-tert-ブトキシアセトフェノン (44 g, 0.23 mol) 及び1gのラネーニッケルの混合物を、3滴の氷酢酸と混合し、オートクレーブ中で液体アンモニア (100 ml) に溶解した。反応混合物を80℃に加熱し、水素を 100バールの内部圧力まで導入した。次いで、この混合物を100℃で水素が更に吸収されなくなるまで (10〜20時間) 攪拌した。オートクレーブを減圧し、アンモニアが蒸発した後に残留物をメタノール (200 ml) に吸収させ、触媒を珪藻土に通して濾過した。濾液を濃縮し、残った蒸留残留物をオイルポンプ真空中 85℃で再び凝縮した。40 g (理論値の90%) の粗製アミンが得られ、これは GC 分析によれば 95.6% の純度を有した。数個のバッチからの凝縮物をまとめて真空蒸留に付した。1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンが理論値の 75% の収率で純粋な生成物として得られた。
【0116】
沸点: 94〜97℃ (0.4 mm)
1H NMR (400 MHz; CDCl3): δ = 1.65 (s, 9H); 1.80 (d, J = 7Hz, 3H); 4.20 (q, J = 7Hz, 1H); 4.40 (s, broad, 2H); 6.80 及び 7.50 (AA’,BB’ 系; JAB = 10.5 Hz, 4H)。
【0117】
1.3 光学分割
1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアミン (246 g, 1.28 mol) を、メトキシ酢酸イソプロピル (254 g, 1.92 mol) 及び Novozyme(登録商標) 435 (2.5 g) と混合し、室温で攪拌した。1時間後に、白色の微細結晶性残留物が析出した。この混合物を35℃に加温した後、この温度で一夜攪拌した。その後の光学純度の分析は、1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンのS鏡像体が鏡像異性体的に純粋であることを示した。アシル化されたR鏡像体は 98.9% の光学純度を有した。この混合物を珪藻土に通して濾過し、トルエン (200 ml) で洗浄し、濾液を回転蒸発器上で40℃で濃縮した。残留物をトルエン (400 ml) に吸収させ、38% 硫酸 (82 g, 0.31 mol) と滴下混合した。白色の濃密な沈殿が生成し、これをトルエン (500 ml) で希釈した。固体を吸引濾別し、トルエン (300 ml) で洗浄し、真空乾燥棚中 40℃で一夜乾燥した。144.4 g (96%) の (S)-1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンの硫酸塩が得られた。
【0118】
1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンのアシル化されたR鏡像体を単離するために、一緒にした濾液の水相を除去し、有機相をグリース様白色固体 (256 g) が残るまで濃縮した。この固体を溶融し、全ての揮発性成分をオイルポンプ真空中 70℃の浴温度で除去した。180 g (定量的収率) の粗製 (R)-N- 1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルメトキシアセトアミドが得られ、これにはメトキシ酢酸イソプロピル (約5%) がなお混入していた。光学純度は 98.9% ee であった。
【0119】
(R)-N- 1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルメトキシアセトアミドの 1H NMR
1H NMR (400 MHz; CDCl3): δ = 1.30 (s, 9H); 1.50 (d, J = 7Hz, 3H); 3.40 (s, 3H); 3.87 及び 3.95 (AB 系; JAB = 16 Hz, 2H); 5.15 (dq, J = 7Hz 及び 9 Hz, 1H); 6.70 (s, broad, 1H); 6.95 及び 7.20 (AA’,BB’ 系; JAB = 10.5 Hz, 4H)。
【0120】
1.4 アミドの加水分解: (R)-1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンの合成
実施例1.3からの (R)-N- 1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルメトキシアセトアミド (94% の純度を有するもの 180 g; 純物質の 0.64 mol に相当する) を、トリエタノールアミン (20 ml) と攪拌しながら混合し、次いで 50% NaOH (70.8 g, 0.89 mol) と混合した。次いでこの混合物を140℃の浴温で更に7時間攪拌し、その後に GC 分析によればアミドの全てが変換されていた。この混合物を水 (100 ml) で希釈し、冷却し、tert-ブチルメチルエーテル (3 x 100 ml) で抽出した。一緒にした抽出物を飽和塩化ナトリウム溶液 (50 ml) で洗浄し、Na2SO4 上で乾燥した。溶剤を回転蒸発器上で除去した後、123.7 g (73%) の (R)-1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンが淡褐色油状物の形態で得られた。化学的純度は 99.4%、光学純度は 98.9% ee であった。
【0121】
1H NMR スペクトルは実施例1.2で報告したものと一致する。
【0122】
1.5 保護基の切り離し: (R)-4-(1-アミノエチル)フェノールの合成
(R)-1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアミン (89.4 g, 0.463 mol) を 10% 塩酸 (200 ml) に溶解し、85℃に加熱した。約80℃で、激しいガスの発生が始まった。この混合物を85℃で更に3時間攪拌し、その後にガスの発生は停止した。この淡黄色混合物を室温まで冷却させ、次いで 20% NaOH を pH が 10.2 になるまで滴下した。脱保護されたフェノールは一夜かけて淡黄色粉末の形態で析出した。それを吸引濾別し、乾燥棚中で一夜乾燥した。精製するために、この粗生成物を tert-ブチルメチルエーテル (200 ml) で消化した。この懸濁液を濾過し、濾過残留物を再び減圧下で乾燥した。51.3 g (63%) の(R)-4-(1-アミノエチル)フェノールが淡黄色粉末の形態で得られた。
【0123】
融点: 121℃.
旋光度 [α]D = 27.5° (c = 1, メタノール中).
1H NMR (400 MHz; DMSO-d6): δ = 1.15 (d, J = 7Hz, 3H); 1.75 (s, broad, 2H); 3.90 (q, J = 7 Hz, 1H); 6.65 及び 7.15 (AA’,BB’ 系; JAB =10.5 Hz, 4H); 9.20 (s, broad, 1H)。
【0124】
1.6 保護基の切り離し: (S)-4-(1-アミノエチル)フェノールの合成
実施例1.3 からの (S)-1-(4-tert-ブトキシフェニル)エチルアンモニウム硫酸塩 (144 g, 0.61 mol) を、水 (500 ml) に懸濁した。この懸濁液を濃H2SO4 (3 ml) の添加により pH を 1 に調節し、85℃に加熱した。穏やかなガスの発生が始まった。3時間後に、全ての塩が溶液に移行し、ガスの発生が停止した。この混合物を冷却させ、pH が 10.2 になるまで20% NaOH と混合した。翌日、一夜かけて析出した固体を吸引濾別し、真空乾燥棚中で乾燥した。粗生成物は不溶性硫酸ナトリウムをなお含んでいたので、それをメタノール (1500 ml) に吸収させ、不溶性 Na2SO4 を濾別した。濾液を濃縮し、残留物を tert-ブチルメチルエーテル (200 ml) で消化した。固体を吸引濾別し、減圧下で乾燥した後、68 g (理論値の 58%) の (S)-4-(1-アミノエチル)フェノールが淡黄色粉末の形態で得られた。
【0125】
融点:120℃.
旋光度 [α]D = -28°(c = 1, メタノール中).
生成物の 1H NMR スペクトルは実施例1.5で報告したものと一致する。
【0126】
実施例2
(S)-3-(1-アミノエチル)フェノール及び (R)-3-(1-アミノエチル)フェノールの合成
【化14】

【0127】
2.1 保護基の導入: 3-ヒドロキシアセトフェノンから 3-tert-ブトキシアセトフェノンへの変換
ドライアイス凝縮器を備えた3頚フラスコ中で、塩化メチレン (1 l) 中のメタヒドロキシアセトフェノン (50 g, 0.37 mol) を、3滴のトリフルオロメタンスルホン酸と混合した。凝集したイソブテン (103 g, 1.84 mol) を反応混合物に加え、その過程で混濁が現れ、微細結晶性固体が析出した。この淡黄色混合物を、ドライアイス凝縮器を取り付けて一夜 (16時間) 攪拌し、その過程でドライアイス及び過剰のイソブテンが蒸発した。翌日、この橙色混合物を半濃縮炭酸ナトリウム溶液 (500 ml) に攪拌しながら加えた。相を分離した後、有機相を毎回 150 ml の半飽和炭酸ナトリウム溶液で4回、水相が無色のままになるまで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶剤を減圧下で除去した。60 g (理論値の 87%) の 3-tert-ブトキシアセトフェノンが無色油状物として得られ、これは GC 分析によれば 95% の純度を有した。
【0128】
1H NMR (400 MHz; CDCl3): δ = 1.40 (s, 9H); 2.58 (s, 3H); 7.20 (m, 1H); 7.35 (dd; J = 10 及び 12 Hz, 1H); 7.58 (m, 1H), 7.68 (m, 1H)。
【0129】
2.2 還元的アミノ化: 1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンの合成
5滴の濃アンモニア溶液で安定化した実施例2.1 からの 3-tert-ブトキシアセトフェノン (60 g, 0.32 mol) 及び1gのラネーニッケルの混合物を、3滴の氷酢酸と混合し、オートクレーブ中で液体アンモニア (100 ml) に溶解した。反応混合物を80℃に加熱し、水素を 100バールの内部圧力まで導入した。次いで、この混合物を100℃で水素が更に吸収されなくなるまで (10〜20時間) 攪拌した。オートクレーブを減圧し、アンモニアが蒸発した後に残留物をメタノール (200 ml) に吸収させ、触媒を珪藻土に通して濾過した。濾液を濃縮し、残った蒸留残留物をオイルポンプ真空中 85℃で再び凝縮した。57.4 g (理論値の93%) の粗製アミンが得られ、これは GC 分析によれば 91% の純度を有した。数個のバッチからの凝縮物をまとめて真空蒸留に付した。1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンが理論値の 72% の収率で純粋な生成物として得られた。
【0130】
沸点: 89〜90℃ (0.4 mm)
1H NMR (400 MHz; CDCl3): δ = 1.35 (s, 9H); 1.38 (d, J = 7Hz, 3H); 1.58 (s, broad, 2H); 4.10 (m, 1H); 6.88 (m, 1H); 6.95 (m, 1H); 7.05 (m, 1H); 7.20 (dd; J = 10 及び 12 Hz, 1H)。
【0131】
2.3 光学分割
1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミン (86 g, 0.45 mol) を、メトキシ酢酸イソプロピル (129 g, 0.98 mol) 及び Novozyme(登録商標) 435 (0.9 g) と混合し、室温で16時間攪拌した。その後の光学純度の分析は、1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンのS鏡像体が鏡像異性体的に純粋であることを示した。アシル化されたR鏡像体は 99.1% の光学純度を有した。この混合物を珪藻土に通して濾過し、トルエン (200 ml) で洗浄し、濾液を回転蒸発器上で40℃で濃縮した。残留物をトルエン (200 ml) に吸収させ、37% 硫酸 (29.5 g, 0.12 mo l) と滴下混合した。グリース様の濾過できない沈殿が生成し、これを水 (250 ml) に溶解した。この水溶液を毎回 50 ml のトルエンで3回洗浄した。一緒にしたトルエン相を 50 ml の水で1回洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶剤を除去した後、残留物から更なる揮発性成分をオイルポンプ真空中 0.5バール及び85℃で除去した。70 g の粗製 (S)-N-1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルメトキシアセトアミドが得られ、その化学的純度は GC 分析によれば93%であった。光学純度は 99% ee であった。
【0132】
(S)-1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンを単離するために、一緒にした水相を水酸化ナトリウムの添加により pH を 14 に調節した。次いで、トルエン (100 ml) を加え、相を分離し、水相を毎回 50 ml のトルエンで更に3回抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し,減圧下に溶剤を除去した。40.9 g (94%) の純粋な (S)-1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンが 99.9% ee を超える鏡像異性体的純度を有する無色油状物として得られた。
【0133】
(R)-N-1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルメトキシアセトアミドの 1H NMR:
1H NMR (400 MHz; CDCl3): δ = 1.35 (s, 9H); 1.52 (d, J = 7 Hz, 3H); 3.40 (s, 3H); 3.90 及び 3.95 (AB 系; JAB = 16 Hz, 2H); 5.15 (dq, J = 7 Hz 及び 9 Hz, 1H); 6.80 (s, broad, 1H); 6.92 (m, 1H); 6.95 (m, 1H); 7.05 (m, 1H); 7.25 (dd; J = 10 及び 12 Hz, 1H)。
【0134】
2.4 アミドの加水分解: (R)-1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンの合成
実施例2.3からの (R)-N-1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルメトキシアセトアミド (93% の純度を有するもの 63.5 g; 0.22 mol の純物質に相当する) を、トリエタノールアミン (6 ml) と攪拌しながら混合し、次いで 50% NaOH (23.2 g, 0.29 mol) を加えた。次いでこの混合物を140℃の浴温で更に16時間攪拌し、その後に GC 分析によればアミドの全てが反応していた。この混合物を水 (100 ml) で希釈し、冷却し、tert-ブチルメチルエーテル (3 x 100 ml) で抽出した。一緒にした抽出物を飽和塩化ナトリウム溶液 (50 ml) で洗浄し、Na2SO4 上で乾燥した。溶剤を回転蒸発器上で除去した後、41 g (92%) の (R)-1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンが無色油状物の形態で得られた。化学的純度は 99.4%、光学純度は 98.9% ee であった。
【0135】
1H NMR スペクトルは実施例2.2で報告したものと一致する。
【0136】
2.5 保護基の切り離し: (R)-3-(1-アミノエチル)フェノールの合成
(R)-1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミン (5 g, 25.9 mmol) を水 (10 ml) に溶解し、pH が 1 になるまで 38% 硫酸と混合した。この混合物を85℃に加熱し、この温度で更に3時間攪拌し、その後にガスの発生は停止した。この無色混合物を室温まで冷却させ、次いで 20% NaOH を pH が 9.1 になるまで滴下するとすぐに、保護されたフェノールが白色固体の形態で析出した。これを吸引濾別し、乾燥棚中で一夜乾燥した。2.6 g (73%) の (R)-3-(1-アミノエチル)フェノールが淡黄色粉末の形態で得られた。
【0137】
融点: 160℃.
旋光度 [α]D = 22.5° (c = 1, メタノール中).
1H NMR (400 MHz; CDCl3): δ = 1.35 (d, J = 7Hz, 3H); 2.15 (s, broad, 3H); 4.05 (q, J = 7 Hz, 1H); 6.75 (m, 1H); 6.50 (m, 2H); 7.15 (m, 1H)。
【0138】
2.6 保護基の切り離し: (S)-3-(1-アミノエチル)フェノールの合成
実施例2.3 からの (S)-1-(3-tert-ブトキシフェニル)エチルアミンから、実施例2.5と同様にして保護基を切り離した。 純粋な (S)-3-(1-アミノエチル)フェノールが理論値の 78% の収率及び 99.9% ee を超える鏡像異性体的純度で得られた。
【0139】
旋光度 [α]D = 22.4°(c = 1, メタノール中).
1H NMR スペクトルは実施例2.5で報告したものと一致する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIの鏡像体混合物
【化1】

(式中、
Pは保護基であり、
nは0、1又は2であり、そして
mは0、1又は2である)を、
加水分解酵素の存在下にアシル化剤と反応させて、一方の鏡像体が本質的にアシル化された形態で存在し、そして他方の鏡像体が本質的にアシル化されていない形態で存在する混合物を得る、アミノアルキルフェノールのエナンチオ選択的アシル化方法。
【請求項2】
化合物(II)の本質的にアシル化されたR鏡像体及び化合物(II)の本質的にアシル化されていないS鏡像体の混合物を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I-S)及び/又は(I-R)の光学活性化合物
【化2】

(式中、
nは0、1又は2であり、そして
mは0、1又は2である)の製造方法であって、該方法が、下記の段階:
(i) 式IIの鏡像体混合物
【化3】

(式中、
Pは保護基である)を、
加水分解酵素の存在下にアシル化剤と反応させて、一方の鏡像体が本質的にアシル化された形態で存在し、そして他方の鏡像体が本質的にアシル化されていない形態で存在する混合物を取得し;
(ii) 段階(i)で得られた混合物から化合物(II)のアシル化されていない鏡像体を除去し;
(iii) 段階(ii)で得られた化合物(II)のアシル化されていない鏡像体を脱保護してアミン(I-S)又は(I-R)を与え;そして
(iv) 必要に応じて、段階(i)で得られた化合物(II)の本質的にアシル化された鏡像体を加水分解して相当する化合物(II)のアシル化されていない鏡像体を与え、続いてそれを脱保護してアミン(I-S)又は(I-R)を与えることを含む、上記製造方法。
【請求項4】
段階(i)で得られた本質的にアシル化されていない鏡像体が化合物(II)のS鏡像体であり、そして本質的にアシル化された鏡像体が化合物(II)のR鏡像体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アシル化剤がエステルから選択され、その酸成分がカルボニル炭素原子に対してα、β又はγ位に酸素−、窒素−、フッ素−又は硫黄−含有基を有する、請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
加水分解酵素が、バークホルデリア(Burkholderia)若しくはシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌からの又はカンジダ(Candida)属の酵母からのリパーゼから選択される、請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
リパーゼが、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)からのリパーゼBである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
nが0である、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
Pが、tert−ブチル(−C(CH))である、請求項1〜8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
アシル化剤との反応が加水分解酵素の存在下に非水性反応媒質中で行われる、請求項1〜9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
式(II)の化合物が、
(a) 式(III)の化合物
【化4】

をOH基において保護して化合物(IV)
【化5】

を取得し;
そして
(b) 化合物(IV)を還元的アミノ化に付して式(II)の化合物を得る
ことによって得られる、請求項1〜10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
化合物(III)を段階(a)で酸の存在下にイソブテンと反応させる、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2008−546381(P2008−546381A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516340(P2008−516340)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063314
【国際公開番号】WO2006/136538
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】