説明

光学活性シアノヒドリン化合物類およびその製造方法

【課題】光学活性なシアノヒドリン化合物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物。


一般式(1)中、R1は分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいシリル基を表す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はアリール基を示す。また、R1とR3が結合してラクトンを形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性なシアノヒドリン化合物類およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シアノヒドリン類は、光学活性なα−ヒドロキシカルボン酸類、α−ヒドロキシアルデヒド類、β−アミノアルコール類などの有用物質合成において鍵となる中間体である。その代表的な合成法の一つとしてアルデヒド類及びケトン類の不斉シアノ化反応があり、反応剤としては容易に入手できるシアン化トリメチルシリルを用いるのが一般的である。シアノシリル化においては、触媒量のキラルなルイス酸やルイス塩基を用いる検討がなされ(J. Chem. Soc. Chem. Commun., 1973, p55-56およびChem. Ber., 1973, 106, p587-593参照)、高いエナンチオ選択性も報告されている。さらに、本発明者らは、シアノシリル化反応の触媒にリチウム塩等を用いることを既に提案している(特開2006-219457号公報参照)。
【0003】
しかしながら、上記したJ. Chem. Soc. Chem. Commun., 1973, p55-56およびChem. Ber., 1973, 106, p587-593に記載の技術の場合、多量((基質/触媒)で表される比が1〜100)の触媒を必要とする、触媒の調製が煩雑である、触媒が不安定である、カルボニル化合物に対してシアン化トリアルキルシリル化合物を過剰量用いる必要がある、反応後の後処理が煩雑である、等の問題がある。
【0004】
又、特開2006-219457号公報記載の技術の場合、触媒の調製は容易であり、触媒の安定性にも優れるが、高いエナンチオ選択性を有する光学活性な生成物が得られないという問題がある。すなわち、この技術においてはLiCl等のアキラルな塩だけを触媒として用いるため、生成物が全てラセミ体(すなわち0% ee)となる。
【0005】
そこで、本発明者らは、上記従来の問題を解決すべく鋭意検討した結果、触媒の調製が容易で触媒の安定性も高く、かつ光学活性なシアノヒドリン化合物を得ることができるシアノ化触媒の製造に成功し、本願に先立ち特許出願した(WO2008-099965A1公報参照)。しかしながら、当該技術分野では、更に多様な構造を持つ光学活性シアノヒドリン化合物を製造することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-219457号公報
【特許文献2】WO2008-099965A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Chem. Soc. Chem. Commun., 1973, p55-56およびChem. Ber., 1973, 106, p587-593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決し、光学活性なシアノヒドリン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、光学活性なシアノヒドリン化合物を得るための基質について鋭意研究した結果、下記一般式(3)で表されるケトエステル化合物を用いることにより、光学活性なシアノヒドリン化合物を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明の一実施形態は、下記一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物である。
【0010】
【化1】

一般式(1)中、R1は分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいシリル基を表す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はアリール基を示す。また、R1とR3が結合してラクトンを形成してもよい。
本発明の好ましい実施形態は、上記一般式(1)におけるR2が水素原子である光学活性シアノヒドリン化合物である。
また、本発明の別の好ましい実施形態は、上記一般式(1)におけるR2がトリメチルシリル(TMS)である光学活性シアノヒドリン化合物である。
本発明の別の実施形態は、
【0011】
下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒の存在下に、
【化2】

(一般式(2)中、R4〜R7は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R4とR5及び/又はR6とR7が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R8〜R11は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R8とR9及び/又はR10とR11が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R12およびR13は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基;W、X、Yは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい結合鎖を表し、但し、X及び/又はYは存在しなくともよい;Mは金属又は金属イオンを示し、Mの各配位子はどのように配置されていてもよい)
下記一般式(3)
【0012】
【化3】

(一般式(3)中、R1は分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はアリール基を示す。)で表されるケトエステル化合物と、下記一般式(4)
【0013】
【化4】

(一般式(4)中、R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいシリル基を表す。)で表されるシアン化化合物とを反応させる工程;および
前記工程で得られた反応生成物中に金属化合物の塩を加え反応させる工程を含む、上記一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法である。
本発明の別の実施形態は、
【0014】
下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒と、金属化合物の塩とを反応させて得られるシアノ化触媒の存在下に、
【化5】

(一般式(2)中、R4〜R7は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R4とR5及び/又はR6とR7が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R8〜R11は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R8とR9及び/又はR10とR11が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R12およびR13は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基;W、X、Yは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい結合鎖を表し、但し、X及び/又はYは存在しなくともよい;Mは金属又は金属イオンを示し、Mの各配位子はどのように配置されていてもよい)
下記一般式(3)
【0015】
【化6】

(一般式(3)中、R1は分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はアリール基を示す。)
で表されるケトエステル化合物と、下記一般式(4)
【0016】
【化7】

(一般式(4)中、R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいシリル基を表す。)
で表されるシアン化化合物とを反応させる工程を含む、上記一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法である。
本発明の好ましい実施形態は、上記一般式(2)におけるMが二価ルテニウムである、上記一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法である。
また、本発明の別の好ましい実施形態は、上記一般式(2)におけるWが1,1'-ビナフチル基又は1,1'-ビフェニル基である、上記一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、光学活性なシアノヒドリン化合物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、上記一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物である。まず、この一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法において用いられるシアノ化触媒について説明する。
本発明では、下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒を用いてもよく、あるいは、第1の触媒としてこの一般式(2)で表されるシアノ化触媒を用い、第2の触媒として金属化合物の塩を用い、これらを反応させて得られたシアノ化触媒を用いてもよい。これらのシアノ化触媒は、本発明の光学活性なシアノヒドリン化合物を製造するための触媒として好適に用いられる。 以下、第1の触媒および第2の触媒の順に説明し、更に、これらを用いた光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法について説明する。
<第1の触媒>
第1の触媒は、一般式(2)
【0019】
【化8】

で表される。
一般式(2)中、R4〜R7は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、かつそれぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R4とR5及び/又はR6とR7が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよい。
4〜R7の具体例としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、フェニルアルキルなどの炭化水素基が挙げられる。特に、R4〜R7としてフェニル基、トリル基およびキシリル基が好ましい。R4〜R7が有する置換基の具体例としては、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基などが挙げられ、これらの基は許容される各種の置換基を有してもよい。特に、置換基として水素原子、p-メチル基および3,5−ジメチル基が好ましい。
【0020】
4とR5(またはR6とR7)が炭素鎖環を形成する場合には、この炭素鎖上にアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基等の許容される各種の置換基が置換されたものを用いてもよい。R4〜R7としては、フェニル、p-トリル、m-トリル、3,5-キシリル、p-tert-ブチルフェニル、p-メトキシフェニル、シクロペンチル、シクロヘキシル基が好ましい。
【0021】
8〜R11は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、かつそれぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R8とR9及び/又はR10とR11が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよい。
8〜R11の具体例としては、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール基が好ましい。特に、R8〜R11としては、R8とR10が水素原子であり、R9とR11がフェニル基であることが好ましい。
8〜R11が有する置換基の具体例としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基などの許容される各種の置換基が挙げられる。特に、置換基として水素原子、メチル基、メトキシ基が好ましい。
【0022】
8とR9(またはR10とR11)が炭素鎖環を形成する場合には、この炭素鎖上にアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基等の許容される各種の置換基が置換されたものを用いてもよい。R8〜R11として、R8とR10が水素原子であり、R9とR11がフェニル基であることが好ましい。
【0023】
12およびR13は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、かつそれぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。
12およびR13の具体例としては、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、フェニルアルキルなどの炭化水素基が挙げられる。特に、R12およびR13として水素原子が好ましい。R12およびR13が有する置換基の具体例としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基などの許容される各種の置換基が挙げられる。特に、置換基として水素原子、メチル基、メトキシ基が好ましい。
【0024】
一般式(2)におけるWの結合鎖としては、2価の炭化水素鎖(例えば、-CH2-、-(CH22-、-(CH23-、-(CH24-等の直鎖状炭化水素鎖;-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-などの分岐を有する炭化水素鎖;-C64-、-C610-などの環状炭化水素など)、2価のビナフチル、2価のビフェニル、2価のパラシクロファン、2価のビピリジン、2価の環状複素環などが挙げられる。このうち、置換基を有していてもよく2位または2'位がそれぞれホスフィンに結合した1,1'-ビナフチル基または1,1'-ビフェニル基が好ましい。また、これらの結合鎖は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基などの許容される各種の置換基をしていてもよく、置換基同士が炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などを介して結合していてもよい。またWは光学活性を有していることが好ましい。例えば、Wが1,1'-ビナフチル基を含む場合には、(R)-1,1'-ビナフチル基又は(S)-1,1'-ビナフチル基であることが好ましく、Wが1,1'-ビフェニル基を含む場合には(R)-1,1'-ビフェニル基又は(S)-1,1'-ビフェニル基であることが好ましい。
【0025】
なお、Wを含む2座配位子であるジホスフィン誘導体(R12P-W-PR34)がMに配位していることから、Wの好ましい具体例として、このジホスフィン誘導体を例示する。即ち、ジホスフィン誘導体としてはBINAP(2,2' -ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル)、TolBINAP(2,2' -ビス[(4-メチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル)、XylBINAP(2,2' -ビス[(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル)、2,2' -ビス[(4-t-ブチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル、2,2' -ビス[(4-イソプロピルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル、2,2' -ビス[(ナフタレン-1-イル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル、2,2' -ビス[(ナフタレン-2-イル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル、BICHEMP(2,2' -ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)-6,6'-ジメチル-1,1' -ビフェニル)、BPPFA(1-[1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン)、CHIRAPHOS(2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、CYCPHOS(1-シクロヘキシル-1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、DEGPHOS(1-置換-3,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ピロリジン)、DIOP(2,3-イソプロピリデン-2,3-ジヒドロキシ-1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、SKEWPHOS(2,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン)、DuPHOS(置換-1,2-ビス(ホスホラノ)ベンゼン)、DIPAMP(1,2-ビス[(o-メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン)NORPHOS(5,6-ビス(ジフェニルホスフィノ)-2-ノルボルネン)、PROPHOS(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、PHANEPHOS(4,12-ビス(ジフェニルホスフィノ)-[2,2']-パラシクロファン)、置換-2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビピリジン、SEGPHOS((4,4' -ビ-1,3-ベンゾジオキソール)-5,5'-ジイル-ビス(ジフェニルホスフィノ))、BIFAP(2,2' -ビス(ジフェニルホスファニル)-1,1'-ビジベンゾフラニル)などが例示される。
特に、上記ジホスフィン誘導体としてBINAP(2,2' -ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル)、TolBINAP(2,2' -ビス[(4-メチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル)およびXylBINAP(2,2' -ビス[(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル)が好ましい。
【0026】
一般式(2)におけるXおよびYは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、かつそれぞれ置換基を有していてもよい結合鎖である。但し、X及び/又はYは存在しなくともよい。
XおよびYの具体例としては、2価の炭化水素鎖(例えば、-CH2-、-(CH22-、-(CH23-、-(CH24-等の直鎖状炭化水素鎖;-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-などの分岐を有する炭化水素鎖;-C64-、-C610-などの環状炭化水素など)、2価の環状複素環、ヘテロ原子、ヘテロ原子を含むアルキル鎖などが挙げられる。
なお、X及び/又はYが存在しない場合とは、例えば以下の一般式(II)の化合物のように、C=とC(R5)R6とが直接結合しているような場合をいう。
【0027】
一般式(2)におけるMは金属又は金属イオンを示す。Mの具体例としては、Ru、Fe、Pd、Rh、Coなどが挙げられる。特に、Mとして二価ルテニウムが好ましい。
一般式(2)中、Mの各配位子がどのように配置されていてもよいということは、Mに結合しているN、P、O、Oの位置が任意であることを意味する。例えば、式(I)においてOとOがMをはさんで向かい合っているが、例えば、OとN、OとPが向かい合った配置でもよい。
第1の触媒の具体例としては、例えば、一般式(II)
【0028】
【化9】

で表される化合物(Ru[(S)-phenylglycine]2[(S)-binap])が挙げられる。
第1の触媒の製造方法としては、WO2008-099965A1に記載の方法を挙げることができる。
【0029】
<第2の触媒>
第2の触媒は、金属化合物の塩であり、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム及びランタノイドの群から選ばれる1種以上の塩、及び/又はアンモニウム塩から選ばれる。第2の触媒は、第1の触媒の共触媒である。
リチウムの塩としては、LiOR (R:アルキル、アルケニル又はアリール)、LiR (R:アルキル、アルケニル又はアリール)、ハロゲン化リチウム(LiF, LiCl, LiBr, LiI)、LiClO4、Li(OTf)、Li(OAc)、LiCN、Li2CO3等が挙げられるが、その他の塩でもよい。又、上記特開2006-219457号公報に記載のリチウム塩を用いることもできる(特開2006-219457号公報の段落0008)。特に、LiOC6H5、LiCl及びLiClO4が好ましい。
ナトリウム、カリウム、セシウムの塩としては、上記したリチウム塩に対応するものを用いることができる。マグネシウムの塩としてはマグネシウムトリフラートが挙げられ、ランタノイドの塩としては、イッテルビウムトリフラートが挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば塩化テトラブチルアンモニウム等の有機アンモニウム塩が挙げられる。
本発明で用いることができるシアノ化触媒の一態様は、アキラルな塩(第2の触媒)に加え、光学活性な錯体(第1の触媒)も触媒に用いるため、光学活性な生成物を得ることができる。一方、LiCl等のアキラルな塩だけを触媒として用いる場合(例えば特開2006-219457号公報記載の触媒)、生成物は全てラセミ体(すなわち0% ee)となる。
すなわち、LiCl等のアキラルな塩だけを触媒とするとアキラルな反応が生じるが、本発明においては不斉反応を生じさせることができる。
【0030】
<光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法>
本発明の別の実施形態は、第1の触媒の存在下、上記一般式(3)で表されるケトエステル化合物と、R2CN(一般式(4))で表されるシアン化化合物とを反応させる工程およびこの工程で得られた反応生成物中に第2の触媒を加え反応させる工程を有する、下記一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法である。 更に、本発明の別の実施形態は、第1の触媒と第2の触媒を反応させて得られた触媒の存在下、上記一般式(3)で表されるケトエステル化合物と、上記一般式(4)で表されるシアン化化合物とを反応させる工程を有する、下記一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法である。
【0031】
【化10】

一般式(1)中、R1は分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいシリル基を表す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はアリール基を示す。また、R1とR3が結合してラクトンを形成してもよい。
【0032】
1における環状アルキル基、環状アルケニル基、アリール基、あるいは複素環は、更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ等の許容される各種の置換基を有していてもよい。
1における鎖状アルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、n−ブチル等の分岐を有さないものや、イソプロピル、sec−ブチル等の分岐を有するものなどが挙げられる。
1における環状アルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
1におけるアルケニル基としては、例えばエテニル基、プロペニル基、ブテニル基、プロペニル基などが挙げられる。
1におけるアリール基としては、例えばフェニル、トリル、キシリル、ナフチル等が挙げられる。
1における複素環としては、例えばピロール、チオフェン、フラン、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール等の5員環骨格を有するものや、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン等の6員環骨格を有するものが挙げられる。
【0033】
3におけるアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられる。
3におけるアルケニル基としては、例えばエテニル基、プロペニル基、ブテニル基、プロペニル基などが挙げられる。
3におけるアリール基としては、例えばフェニル、トリル、キシリル、ナフチル等が挙げられる。
【0034】
2におけるアルカリ金属としては、例えば、Li、Na、Kなどが挙げられる。
2における炭化水素基としては、脂肪族、脂環族の飽和又は不飽和の炭化水素基、単環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素、多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素などが挙げられる。又、これらの炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ等の許容される各種の置換基を有していてもよい。また、R2におけるシリル基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ等の許容される各種の置換基を有していてもよい。
炭化水素基の具体例としては、例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、フェニルアルキル等が挙げられる。
シリル基の具体例としては、トリメチルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、ジフェニル−t−ブチルシリルなどが挙げられる。
【0035】
基質であるケトエステル化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物(式中、R1及びR3は一般式(1)と同義である)を用いることができる。
【化11】

基質であるケトエステル化合物の代表例としては、以下の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
【化12】

【0037】
シアン化化合物としては、R2CN(式中、R2は一般式(1)と同義である)を用いることができる。
なお、原料であるシアン化化合物(R2CN)としては、NaCNやKCNなどを用いることができる。従って、この場合、R2は、NaやKなどのアルカリ金属であってもよい。
【0038】
本発明におけるシアノ化触媒に対するケトエステル化合物のモル比S/C(Sは基質であるケトエステル化合物、Cは触媒)は1〜1000000が好ましく、1〜100000がより好ましい。また、ケトエステル化合物に対するシアン化化合物のモル比は1〜3が好ましく、1〜1.3がより好ましい。
【0039】
シアノヒドリン化合物を製造するためのシアノ化反応は、アルゴンなどの不活性雰囲気下、常圧で行うのが好ましい。
また、シアノ化反応は、無溶媒であっても反応溶媒中であっても進行する。反応溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド(DMSO)などヘテロ原子を含む溶媒が挙げられる。なお、本発明におけるシアノ化触媒を溶解させて反応に用いる際、上記したのと同様の溶媒を用いることができる。
【0040】
反応温度は特に限定されないが、-78〜50℃が好ましく、-70〜40℃がより好ましい。反応時間は基質の種類などによって異なるが、多くの場合は1分〜12時間の範囲である。反応終了後に反応混合液からシアノヒドリン化合物を採取する方法としては、蒸留や抽出を採用すればよい。
シアノヒドリン化合物は、上述したシアノ化触媒の存在下、ケトエステル化合物とシアン化化合物とを反応させることにより対応するシアノヒドリン化合物を製造することができる。具体的には、例えば、ケトエステル化合物とシアン化化合物を入れた容器へ、シアノ化触媒を有機溶媒に溶解して得た触媒溶液又はシアノ化触媒の固形物(触媒固形物)を加えて撹拌することにより、ケトエステル化合物とシアン化化合物とを反応させることができる。
ここで、ケトエステル化合物が油状の場合、ケトエステル化合物とシアン化化合物とを入れた無溶媒の容器へ、触媒溶液又は触媒固形物を加えて反応させてもよい。また、ケトエステル化合物が固体の場合、ケトエステル化合物とシアン化化合物と反応溶媒とを入れた容器へ、触媒溶液又は触媒固形物を加えて反応させてもよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(A)分析方法
(i)ヘリウムキャリアガスを用いてShimadzuGC−17AまたはGC−2010装置により、ガスクロマトグラフィー(GC)分析を実施した。
(ii)JEOL JNM−EX270またはJNM−A400分光計によりNMRスペクトルを得た。
(iii)DEPT実験によって炭素多重度を測定した。
(iv)JASCO FT/IR−4100分光光度計でIRスペクトルを記録した。
(v)JASCO DIP−360偏光計で旋光度を測定した。
(vi)シリカゲル60N(63〜210μm;関東化学株式会社)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。
(vii)Merckシリカゲル60PF254(Merck Ltd)で分取薄層クロマトグラフィーを実施した。
(viii)北海道大学機器分析センターにおいて質量分析測定を実施した。
【0042】
(B)出発原料の調製
下記構造式で表されるケトエステル1aおよび1bは市販品を入手できる。その他のケトエステルは既知の方法により合成した。
【化13】

【0043】
下記構造式(但し、Ar=C65)で表されるルテニウム錯体(S,S,S)−3aは従来報告されている方法により調製した。
【化14】

【0044】
上記構造式(但し、Ar=3,5−(CH3)263)で表されるルテニウム錯体:Ru[(S)−phenylglycine]2[(S)−キシリル−binap][(S,S,S)−3b]を下記のように合成した。
アルゴン(99.99%の純度)の供給系に連結された乾燥した100mLのシュレンク管(Schlenk tube)(すべての装置は使用前に55℃オーブンで乾燥した)に、テフロン(登録商標)(Teflon)コーティングした磁気撹拌子とガラス製のストッパーを取り付けた。容器に[RuCl2(ベンゼン)]2(Aldrich Co.から入手)(90mg、0.18ミリモル)および(S)−キシリル−BINAP(Strem Chemicals,Inc.から入手)(250mg、0.34ミリモル)を入れ、気層部をアルゴンで置換した。アルゴン雰囲気下、シリンジでN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(無水DMF(99.5%純度)を関東化学株式会社から入手し、使用前に凍結融解サイクルに3回かけて脱ガスした)(6mL)を導入した。赤褐色の懸濁液を100℃で10分間撹拌し、得られたBINAP−Ru(II)錯体を含む透明赤褐色溶液を25℃に冷却した。
【0045】
別の乾燥した50mLのシュレンク管にナトリウム(S)−フェニルグリシネート(Acros Co.から入手)(205mg、1.18ミリモル)とメタノール(無水メタノール(99.9%純度)を関東化学株式会社から入手)(10mL)を入れ、その溶液を凍結融解サイクルに3回かけて脱ガスした。アルゴン雰囲気下、これを、シリンジで上記のBINAP−Ru(II)錯体のDMF溶液に移し、得られた淡赤色溶液を25℃で12時間撹拌した。強く撹拌しながら、この溶液に水(30mL)を加え、黄色がかった橙色の固体を沈澱させた。ろ過した後、集めた固体を酢酸エチル(50mL)に溶解した。その溶液を3分量の50mLの水で洗浄し、次いで50mlの飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥した。セライト(celite)パッドでろ過した後、その溶液を減圧下(0.4mmHg)で濃縮して黄色がかった橙色の固体を得た。その粗生成物を分取TLC(シリカゲル、溶離液;酢酸エチル)で精製した。得られた黄色の固体をEt2O(5mL)とペンタン(95mL)の混合液で再沈澱させ、続いてろ過し、減圧下で乾燥してルテニウム錯体(S,S,S)−3bを淡黄色粉末として得た(255mg、66%収率); 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 1.80 (s, 12H, CH3 of xylyl moiety), 2.23 (brs, 2H, NHH), 2.42 (s, 12H, CH3 of xylyl moiety), 3.17 (brs, 2H, NHH), 3.70 (t, 2H, J = 7.8 Hz, 2PhCH), 5.95 (s, 2H, aromatic H), 6.24 (d, 2H, J = 8.8 Hz, aromatic H), 6.66 (brs, 4H, aromatic H), 6.72 (m, 4H, aromatic H), 6.80 (m, 2H, aromatic H), 7.107.19 (m, 10H, aromatic H), 7.407.85 ppm (m, 8H, aromatic H), 8.13 (m, 2H, aromatic H); 31P NMR (161.7 MHz, CDCl3): δ= 52.3 ppm (s); ESI-MS: m/z calcd for C68H64N2O4P2Ru: 1136.34 ([M]+); found: 1136.33.
【0046】
(C)不斉シアノシリル化(S/C=1,000)の概略手順
メチルベンゾイルホルメート(1a)のシアノシリル化を、以下の反応式に示すように行った。
ルテニウム錯体(S,S,S)−3a(5.1mg、5.0ミリモル)をテフロン(登録商標)コーティングした磁気撹拌子を備えた500mLのシュレンクフラスコ(Schlenk flask)に加えた。そのシュレンクフラスコ中の空気をアルゴン(99.99%の純度)で置換した。t−C49OCH3(無水tBuOMe(99.5%純度)を関東化学株式会社から入手)(50mL)、メチルベンゾイルホルメート(1a)(0.82g、5.0ミリモル)およびC65OLi(Li2CO3をAldrich Co.,Ltd.から入手)(50μL、1.0ミリモル)の100mM−THF溶液(THF(99.5%純度)を関東化学株式会社から入手)をシュレンクフラスコに加え、その混合物を30分間撹拌した。得られた黄色の溶液を−60℃に冷却した。次いで(CH33SiCN(和光純薬工業株式会社から入手した(CH33SiCNを、使用前に蒸留して精製した)(0.99g、10.0ミリモル)を15分間かけて滴下し、その混合物を18時間撹拌した。減圧下、大気温度でその溶媒と揮発性化合物を蒸発させた後、その残留物をヘキサン(100mL)に懸濁させた。その懸濁液をセライトパッドでろ過し、減圧下、大気温度で濃縮した。その残留物を単蒸留により精製して、以下に示す化合物番号2a(1.27g、収率;97%、光学純度;99%e.e.)を無色油状物として得た。
【0047】
沸点;116〜119℃/1mmHg;IR(KBr非希釈(neat))2958、1767、1451、1255、1148、870、850cm-11H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.26(s,9H,Si(CH33),3.79(s,3H,OCH3),7.40−7.45(m,3H,芳香族),7.63−7.67(m,2H,芳香族);13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.66(CH3),54.0(CH3),74.8(C),117.9(C),125.5(CH),128.8(CH),129.8(CH),136.4(C),167.5(C);HRMS(EI+),m/z(M+)計算値263.0978,実測値263.0970;元素分析 C1317NO3Siの計算値:C,59.29,H,6.51,N,5.32.実測値:C,59.23,H,6.45,N,5.25;キラルGC分析:カラム、InertCap CHIRAMIX(0.25mm×30m);キャリアガスヘリウム(100kPa):カラム温度、0.5℃/分の速度で70℃から135℃へ昇温;少量成分のtR、133.5分(0.5%);主成分のtR、134.7分(99.5%);[α]D24 24.00°(c 1.127、CH3Cl)
【0048】
以下に示すような出発原料およびシアノ化触媒を使用し、以下に示すような製造条件を用いた以外は、化合物番号2aと同様にして様々な光学活性シアノヒドリン化合物を製造した。
【化15】

【0049】
(D)不斉シアノシリル化生成物の分析データ
上記で製造した光学活性シアノヒドリン化合物の分析データを以下に示す。
(R)−(+)−メチル2−シアノ−2−フェニル−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2a)
【化16】

98%収率;
無色油状物;
116〜119℃/1mmHg(バルブ/バルブ(bulb−to−bulb));
IR(KBr)2958,1767,1451,1255,1198,1148,870,850,cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.26(s,9H,Si(CH33),3.79(s,3H,OCH3),7.40−7.45(m,3H,芳香族),7.63−7.67(m,2H,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.66(CH3),54.0(CH3),74.8(C),117.9(C),125.5(CH),128.8(CH),129.8(CH),136.4(C),167.5(C);
HRMS(EI+),m/z(M+)計算値263.0978,実測値263.0970;
元素分析:C1317NO3Siの計算値:C,59.29,H,6.51,N,5.32.実測値:C,59.23,H,6.45,N,5.25;
キラルGC分析:カラム、InertCap CHIRAMIX(0.25mm×30m);キャリアガスヘリウム(100kPa):カラム温度、0.5℃/分の速度で70℃から135℃へ加熱;少量成分のtR、133.5分(0.5%);主成分のtR、134.7分(99.5%);
[α]D24 24.00°(c 1.127、CHCl3)、99%ee。
【0050】
(+)−エチル2−シアノ−2−フェニル−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2b)
【化17】

97%収率;
無色油状物;
90〜93℃/0.9mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr)2963,1763,1450,1255,1195,1148,880,848,cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.27(s,9H,Si(CH33),1.24(t,3H,J=7.1Hz,CH3),4.16−4.31(m,2H,CH2),7.39−7.43(m,3H,芳香族),7.64−7.67(m,2H,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.70(CH3),13.8(CH3)63.4(CH2),74.9(C),118.0(C),125.5(CH),128.7(CH),129.7(CH),136.5(C),167.0(C);
HRMS(EI+),m/z(M+)計算値277.1134,実測値277.1127;
キラルGC分析:カラム、InertCap CHIRAMIX(0.25mm×30m);キャリアガスヘリウム(100kPa);カラム温度、0.6℃/分の速度で70℃から150℃へ加熱;少量成分のtR、122.7分(6.2%);主成分のtR、123.6分(93.8%);
[α]D21 15.72°(c 1.052、CHCl3)、87%ee。
【0051】
(+)−イソプロピル2−シアノ−2−フェニル−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2c)
【化18】

94%収率;
無色油状物;
87℃/0.1mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈(neat))2983,1759,1451,1254,1195,1149,1102,876,847cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.28(s,9H,Si(CH33),1.15(d,3H,J=6.34Hz,CH3),1.29(d,3H,J=6.34Hz,CH3),5.01(七重線,1H,J=6.34Hz,CH),7.40−7.42(m,3H,芳香族),7.63−7.66(m,2H,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.77(CH3),21.2(CH3),21.4(CH3),71.7(CH),75.0(C),118.1(C),125.4(CH),128.6(CH),129.6(CH),136.6(C),166.5(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値314.1188,実測値314.1184;
元素分析:C1317NO3Siの計算値:C,61.82,H,7.26,N,4.81.実測値:C,61.80,H,7.34,N,4.79;
キラルGC分析:カラム、CP−Chirasil−Dex(0.32mm×25m);キャリアガスヘリウム(72kPa);カラム温度、0.3℃/分の速度で70℃から110℃へ加熱;少量成分のtR、117.5分(25.4%);主成分のtR、119.2分(74.6%);
[α]D26 5.95°(c 1.061、CHCl3)、49%ee。
【0052】
(−)−tert−ブチル2−シアノ−2−フェニル−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2d)
【化19】

97%収率;
無色油状物;
125℃/0.08mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2979, 1758, 1371, 1255, 1147, 880, 845cm-1;
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.28(s,9H,Si(CH33),1.40(s,9H,CH3),7.38−7.40(m,3H,芳香族),7.62−7.64(m,2H,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.77(CH3),27.4(CH3),75.1(C),84.7(C),118.3(C),125.4(CH),128.5(CH),129.4(CH),136.8(C),165.7(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値328.1345,実測値328.1340;
キラルGC分析:カラム、CP−Chirasil−Dex(0.32mm×25m);キャリアガスヘリウム(72kPa);カラム温度、0.4℃/分の速度で70℃から120℃へ加熱;少量成分のtR、104.1分(76.6%);主成分のtR、105.5分(23.4%);
[α]D26 −18.81°(c 1.092、CHCl3)、53%ee。
残りIR、旋光度
【0053】
(+)−メチル2−シアノ−2−(2−メチルフェニル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2e)
【化20】

98%収率;
無色油状物;
110℃/0.1mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2957,1765,1254,1190,1136,873,849cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.24(s,9H,Si(CH33),2.39(s,3H,CH3),3.82(s,3H,OCH3),7.18−7.32(m,3H,芳香族),7.68(dd,1H,J=1.4,6.2Hz,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.73(CH3),19.8(CH3)54.0(CH3),75.5(C),117.5(C),126.2(CH),126.9(CH),129.6(CH),132.4(CH),134.1(C),136.2(C),167.4(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値300.1026,実測値300.1028;
元素分析:C1419NO3Siの計算値:C,60.62,H,6.90,N,5.05.実測値:C,60.63,H,6.78,N,5.02;
キラルHPLC分析:カラム、CHIRALPAK IC;溶離液、ヘキサン:2−プロパノール=99:1;流量0.5mL/分;カラム温度、40℃;検出、UV220nm;少量成分のtR、10.5分(2.8%);主成分のtR、11.3分(97.2%);
[α]D26 28.92°(c 0.998、CHCl3)、94%ee。
【0054】
(+)−メチル2−シアノ−2−(3−メチルフェニル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2f)
【化21】

97%収率;
無色油状物;
95℃/0.07mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2957,1767,1255,1167,1141,871,848cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.26(s,9H,Si(CH33),2.39(s,3H,CH3),3.79(s,3H,OCH3),7.19−7.31(m,2H,芳香族),7.44(m,2H,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.72(CH3),21.5(CH3)54.0(CH3),74.9(C),118.0(C),122.6(CH),126.0(CH),128.7(CH),130.5(CH),136.2(C),138.7(C),167.6(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値300.1026,実測値300.1028;
元素分析:C1419NO3Siの計算値:C,60.62,H,6.90,N,5.05.実測値:C,60.59,H,6.72,N,4.96;
キラルGC分析:カラム、CHIRALDEX G−TA(0.25mm×30m);キャリアガスヘリウム(100kPa):カラム温度、0.2℃/分の速度で50℃から150℃へ加熱;少量成分のtR、317.4分(1.5%);主成分のtR、319.8分(98.5%);
[α]D25 25.30°(c 1.015、CHCl3)、97%ee。
【0055】
(+)−メチル2−シアノ−2−(4−メチルフェニル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2g)
【化22】

92%収率;
無色油状物;
90℃/0.09mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2957,1767,1255,1183,1148,874,849cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.25(s,9H,Si(CH33),2.37(s,3H,CH3),3.78(s,3H,OCH3),7.21(d,2H,J=8.2Hz,芳香族),7.52(d,2H,J=8.2Hz,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.72(CH3),21.2(CH3),54.0(CH3),74.8(C),118.0(C),125.5(CH),129.5(CH),133.5(C),139.9(C),167.6(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値300.1032 実測値300.1018;
元素分析:C1419NO3Siの計算値:C,60.62,H,6.90,N,5.05.実測値:C,60.62,H,6.74,N,5.03;
キラルHPLC分析:カラム、CHIRALPAK AD−H;溶離液、ヘキサン:2−プロパノール=99:1;流量0.5mL/分;カラム温度、40℃;検出、UV254nm;主成分のtR、6.4分(97.8%);少量成分のtR、7.0分(2.2%);
[α]D27 27.08°(c 1.203、CHCl3)、95%ee。
【0056】
(+)−メチル2−シアノ−2−(3−クロロフェニル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2h)
【化23】

97%収率;
無色油状物;
100℃/0.05mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2958, 1769, 1474, 1426, 1256, 1196, 1155, 851, 769cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.29(s,9H,Si(CH33),3.81(s,3H,OCH3),7.33−7.40(m,2H,芳香族),7.54(dt,1H,J=1.8,7.3Hz,芳香族),7.63(t,1H,J=1.8Hz,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.66(CH3),54.3(CH3),74.2(C),117.5(C),123.7(CH),125.7(CH),130.0(CH),130.1(CH),134.9(C),138.3(C),167.1(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値320.0480,実測値320.0479;
元素分析:C1316ClNO3Siの計算値:C,52.43,H,5.42,N,4.70,Cl,11.90.実測値:C,52.28,H,5.26,N,4.77,Cl,11.97;
キラルGC分析:カラム、CHIRALDEX G−TA(0.25mm×30m);キャリアガスヘリウム(100kPa):カラム温度、0.3℃/分の速度で70℃から140℃へ加熱;主成分のtR、194.1分(98.9%);少量成分のtR、196.0分(1.1%);[α]D27 13.48°(c 1.031、CHCl3)、98%ee。
【0057】
(+)−メチル2−シアノ−2−(4−クロロフェニル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2i)
【化24】

98%収率;
無色油状物;
103℃/0.07mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2958,1768,1490,1255,1198,1153,1094,872,851cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.28(s,9H,Si(CH33),3.80(s,3H,OCH3),7.37−7.40(m,2H,芳香族),7.57−7.61(m,2H,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.68(CH3),54.2(CH3),74.3(C),117.6(C),127.0(CH),129.0(CH),134.9(C),135.9(C),167.2(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値320.0486,実測値320.0496;
元素分析:C1419NO3Siの計算値:C,52.43,H,5.42,N,4.70,Cl,11.90.実測値:C,52.48,H,5.29,N,4.66,Cl,11.93;
キラルGC分析:カラム、CHIRALDEX G−TA(0.25mm×30m);キャリアガスヘリウム(100kPa):カラム温度、0.5℃/分の速度で50℃から160℃へ加熱;主成分のtR、218.2分(98.9%);少量成分のtR、220.6分(1.1%);
[α]D25 22.19°(c 1.326、CHCl3)、98%ee。
【0058】
(+)−メチル2−シアノ−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2j)
【化25】

92%収率;
無色油状物;
101℃/0.23mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2961, 1770, 1327, 1257, 1172, 1132, 1070, 873, 849cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.30 (s, 9H, Si(CH3)3), 3.81 (s, 3H, OCH3), 7.69 (d, 2H, J = 8.61 Hz, aromatic H), 7.80 (d, 2H, J = 8.61 Hz, aromatic H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 0.59 (CH3), 54.3 (CH3), 74.4 (C), 117.6 (C), 123.6 (q, C, 1JC-F = 272.8 Hz), 125.8 (q, CH, 3JC-F = 3.49 Hz), 126.1 (CH), 132.0 (q, C, 2JC-F = 32.4 Hz), 140.2 (C), 167.0 (C)
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値354.0744,実測値354.0754;
元素分析:C1419NO3Siの計算値:C, 50.74, H, 4.87, N, 4.23.実測値:C, 50.47, H, 4.79, N, 4.20;
キラルGC分析:カラム、CHIRALDEX G−TA(0.25mm×30m);キャリアガスヘリウム(100kPa):カラム温度、3℃/分の速度で50℃から170℃へ加熱;主成分のtR、35.4分(96.2%);少量成分のtR、35.7分(3.8%);
[α]D26 12.71° (c 0.990, CHCl3)、92%ee。
【0059】
(+)−メチル2−シアノ−2−(4−メトキシェニル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2k)
【化26】

96%収率;
無色油状物;
112℃/0.06mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2958,2838,1765,1509,1254,872,846cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.24(s,9H,Si(CH33),3.78(s,3H,OCH3),3.82(s,3H,OCH3),6.92(m,2H,芳香族),7.55(m,2H,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.69(CH3),53.9(CH3),55.3(CH3),74.5(C),114.1(CH),118.0(C),127.0(CH),128.3(C),160.6(C),167.6(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値316.0981,実測値316.0991;
元素分析:C1419NO3Siの計算値:C,57.31,H,6.53,N,4.77.実測値:C,57.11,H,6.41,N,4.70;
キラルHPLC分析:カラム、CHIRALPAK AD−H;溶離液、ヘキサン:2−プロパノール=99:1;流量0.2mL/分;カラム温度、40℃;検出、UV254nm;主成分のtR、24.1分(97.6%);少量成分のtR、26.1分(2.4%);[α]D26 29.81°(c 1.270、CHCl3)、95%ee。
【0060】
(+)−メチル2−シアノ−2−(ナフト−2−イル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2l)
【化27】

97%収率;
無色油状物;129℃/0.07mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)3059,2957,2901,1767,1256,1173,1138,874,849cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.29(s,9H,Si(CH33),3.78(s,3H,OCH3),7.52−7.56(m,2H,芳香族),7.67−7.70(dd,1H,J=1.8,8.6Hz,芳香族),7.83−7.93(m,3H,芳香族),8.16(d,1H,J=1.8Hz,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.79(CH3),54.1(CH3),75.1(C),118.0(C),122.4(CH),125.4(CH),126.9(CH),127.3(CH),127.7(CH),128.5(CH),128.9(CH),132.7(C),133,6(C),133.7(C),167.5(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値336.1032,実測値336.1034;
元素分析:C1719NO3Siの計算値:C,65.15,H,6.11,N,4.47.実測値:C,65.30,H,6.19,N,4.25;
キラルHPLC分析:カラム、CHIRALPAK AD−H;溶離液、ヘキサン:2−プロパノール=99:1;流量0.5mL/分;カラム温度、40℃;検出、UV254nm;主成分のtR、9.1分(99.0%);少量成分のtR、10.4分(1.0%);
[α]D24 48.89°(c 0.995、CHCl3)、98%ee。
【0061】
(+)−メチル2−シアノ−2−(フル−3−イル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2m)
【化28】

94%収率;
無色油状物;113℃/0.50mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)3153, 2959, 1771, 1255, 1168, 1146, 873, 849;1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ0.25 (s, 9H, Si(CH3)3), 1.55 (s, 3H), OCH3), 6.52 (dd, 1H, J = 0.91, 1.81 Hz, 芳香族H), 7.42 (dd, 1H, J = 1.81, 1.81 Hz, 芳香族H), 7.66 (dd, 1H, J = 0.91, 1.81 Hz, 芳香族H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ0.70 (CH3), 54.1 (CH3), 69.2 (C), 108.5 (CH), 117.4 (C), 123.6 (C), 141.1 (CH), 144.1 (CH), 166.9 (C);HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値276.0663,実測値276.0669;キラルHPLC分析:カラム、CHIRALPAK AD−H;溶離液、ヘキサン:2−プロパノール=99:1;流量0.2mL/分;カラム温度、40℃;検出、UV254nm;主成分のtR、16.7分(95.7%);少量成分のtR、15.0分(4.3%);
[α]D27 21.64°(c 0.975、CHCl3)、92%ee。
【0062】
(+)−メチル2−シアノ−2−(チエン−2−イル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2n)
【化29】

99%収率;
無色油状物;
87℃/0.45mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2959,1770,1436,1255,1134,867,849cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.26(s,9H,Si(CH33),3.86(s,3H,OCH3),7.00(dd,1H,J=3.85,5.21Hz,芳香族),7.33(dd,1H,J=1.14,3.85Hz,芳香族),7.37(dd,1H,J=1.14,5.21Hz,芳香族);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.56(CH3),54.3(CH3),71.9(C),117.3(C),126.7(CH),127.0(CH),127.8(CH),139.9(C),166.7(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値292.0440,実測値292.0431;
元素分析:C1115NO3SSiの計算値:C,49.04,H,5.61,N,5.20,S,11.90.実測値:C,48.67,H,5.38,N,5.22,S,11.74;
キラルGC分析:カラム、InertCap CHIRAMIX(0.25mm×30m);キャリアガスヘリウム(100kPa):カラム温度、0.6℃/分の速度で70℃から160℃へ加熱;主成分のtR、141.2分(95.8%);
[α]D27 28.32°(c 1.020、CHCl3)、91%ee。
【0063】
(−)−メチル2−シアノ−3,3−ジメチル−2−トリメチルシリルオキシブチレート(化合物番号2o)
【化30】

94%収率;
無色油状物;
103℃/0.07mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2962,1762,1255,1149,876,846cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.23(s,9H,Si(CH33),1.07(s,9H,CH3),3.84(s,3H,OCH3);
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ0.29(CH3),24.7(CH3),40.2(C),53.1(CH3),80.1(C),118.0(C),167.8(C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値266.1188,実測値266.1198;
キラルGC分析:カラム、CP−Chirasil−Dex(0.32mm×25m);キャリアガスヘリウム(72kPa):カラム温度、2.0℃/分の速度で50℃から110℃へ加熱;主成分のtR、22.3分(96.8%);少量成分のtR、22.5分(3.2%);
[α]D23 −8.32°(c 1.019、CHCl3)、94%ee。
【0064】
(−)−メチル2−シアノ−2−シクロヘキシル−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2p)
【化31】

98%収率;
無色油状物;119 °C/0.2 mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2935, 2857, 1766, 1255, 1168, 852;
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.23 (s, 9H, Si(CH3)3), 1.11−1.29 (m, 5H), 1.65−1.95 (m, 6H), 3.84 (s, 3H, OCH3); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ0.51 (CH3), 25.6 (CH2), 25.7 (CH2), 26.2 (CH2), 26.8 (CH2), 46.9 (CH), 53.4 (CH3), 77.1 (C), 117.7 (C), 168.4 (C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値292.1339,実測値292.1346;
キラルHPLC分析:カラム、CHIRALPAK IC;溶離液、ヘキサン:2−プロパノール=99:1;流量0.5mL/分;カラム温度、40℃;検出、UV220nm;主成分のtR、9.9分(92.4%);少量成分のtR、9.3分(7.6%);
[α]D27 −1.58° (c 0.997, CHCl3)、85% ee.
【0065】
(−)−メチル2−シアノ−2−(シクロヘキセン−1−イル)−2−トリメチルシリルオキシアセテート(化合物番号2q)
【化32】

98%収率;
無色油状物;107 °C/0.1 mmHg(バルブ/バルブ);
IR(KBr−非希釈)2937, 1765, 1254, 875, 850 cm-1
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ0.26 (s, 9H, Si(CH3)3), 1.54−1.69 (m, 4H, CH2), 1.92−2.12 (m, 4H), 3.84 (s, 3H, OCH3), 6.22−6.24 (m, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ0.70 (CH3), 21.6 (CH2), 22.2 (CH2), 23.1 (CH2), 25.1 (CH2), 53.7 (CH3), 76.4 (C), 117.4 (C), 127.9 (CH), 133.0 (C), 167.5 (C);
HRMS(ESI+),m/z(M+Na+)計算値290.1183,実測値290.1189;
キラルHPLC分析:カラム、CHIRALPAK IC;溶離液、ヘキサン:2−プロパノール=99:1;流量0.2mL/分;カラム温度、40℃;検出、UV230nm;主成分のtR、27.5分(98.4%);少量成分のtR、26.0分(1.6%);
[α]D26 31.07° (c 0.970, CHCl3);、97%ee。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される光学活性シアノヒドリン化合物。
【化1】

(一般式(1)中、R1は分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいシリル基を表す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はアリール基を示す。また、R1とR3が結合してラクトンを形成してもよい。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒の存在下に、
【化2】

(一般式(2)中、R4〜R7は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R4とR5及び/又はR6とR7が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R8〜R11は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R8とR9及び/又はR10とR11が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R12およびR13は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基;W、X、Yは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい結合鎖を表し、但し、X及び/又はYは存在しなくともよい;Mは金属又は金属イオンを示し、Mの各配位子はどのように配置されていてもよい)
下記一般式(3)
【化3】

(一般式(3)中、R1は分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はアリール基を示す。)
で表されるケトエステル化合物と、下記一般式(4)
【化4】

(一般式(4)中、R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいシリル基を表す。)
で表されるシアン化化合物とを反応させる工程;および
前記工程で得られた反応生成物中に金属化合物の塩を加え反応させる工程を含む、請求項1に記載の光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒と、金属化合物の塩とを反応させて得られるシアノ化触媒の存在下に、
【化5】

(一般式(2)中、R4〜R7は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R4とR5及び/又はR6とR7が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R8〜R11は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R8とR9及び/又はR10とR11が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R12およびR13は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基;W、X、Yは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい結合鎖を表し、但し、X及び/又はYは存在しなくともよい;Mは金属又は金属イオンを示し、Mの各配位子はどのように配置されていてもよい)
下記一般式(3)
【化6】

(一般式(3)中、R1は分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。R3はアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はアリール基を示す。)
で表されるケトエステル化合物と、下記一般式(4)
【化7】

(一般式(4)中、R2は水素原子、アルカリ金属、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいシリル基を表す。)
で表されるシアン化化合物とを反応させる工程を含む、請求項1に記載の光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法。
【請求項4】
一般式(2)におけるMが二価ルテニウムである請求項2または3に記載の光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(2)におけるWが1,1'-ビナフチル基又は1,1'-ビフェニル基である請求項2から4のいずれかに記載の光学活性シアノヒドリン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−102282(P2011−102282A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258736(P2009−258736)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】