説明

光学活性材料、並びにそれらが使用可能な物品及びシステム

本特許出願の発明者らは、新規な光学活性材料、方法、及び物品を開発した。本特許出願の一実施形態は、光学活性物品であり、その赤外線反射材料は、光学活性基材を赤外線源が照射したときに赤外線センサーによって読取ることが可能なパターンを形成するように光学活性基材に隣接して位置づけられた赤外線反射材料を備える。
本特許出願の別の実施形態は、光学活性物品の製造方法に関し、光学活性シートを得る工程と、光学活性シート上に赤外線反射材料を位置づけてパターンを形成する工程と、を含む。この光学活性物品は、例えばライセンスプレートであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、概して、新規な光学活性物品、及びそれらを作製及び使用する方法、及びそれらの物品が使用可能なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最適には、ライセンスプレートは、様式又は外観の全体的類似性を有することにより、様々な免許発行当局により発行されたライセンスプレートの迅速な認識を可能にして、それにより偽造を阻止する。同時に、ライセンスプレートは、それぞれの車両、州、又は運転者のための明確で個性的な一意の識別コード又は画像を提供しなくてはならない。そのため、多くの免許発行当局は、「バニティ」ライセンスプレートを提供している。そのようなプレートでは、運転者が魅力的な又は意義のあるデザインを選び、ライセンスプレートに印刷することが可能である。そのような「バニティ」ライセンスプレートの生産によって、それぞれの州は数多くの異なるライセンスプレートのデザインをその州の住民に提供するようになっている。
【0003】
これらの個性的なライセンスプレートは著しく増加している。例えば、オレゴン州は、木、鮭、クレーター湖、文化信託(cultural trust)、アマチュア無線技士(ハム)、アンティーク車両、及び特別な関心対象物という7通りの異なるライセンスプレートデザインオプションを標準車両運転者に提供している。また、オレゴン州は、Lions Club、Oregon Masonic Family、Oregon Professional Firefighters、Oregon State Elks、Share the Road、及びSupport Our Troopsという6種類の非営利プレートも標準車両運転者に提供している。加えて、オレゴン州は、Eastern Oregon University、Oregon State University、Portland State University、University of Oregon、University of Portland、及びWillamette Universityという6種類の高等教育機関プレートも標準車両運転者に提供している。更に、オレゴン州は、Congressional Medal of Honor、Disabled Veteran、Ex−POW、First Marine Division、Gold Star Family、National Guard、Non−Commission Officers Association、Purple Heart、Veterans Recognition、及びVietnam Veteransという10通りの退役軍人及び軍務関連プレートを標準車両運転者に提供している。このように、単独の州に標準車両用の合計33通りの異なるパーソナルプレートのオプションがある。50州のそれぞれ及びカナダの10州のそれぞれがほぼ同数のオプションを標準車両に提供したならば、ライセンスプレート用としてほぼ2000通りの異なるデザインオプションが利用可能になる。しかもこれには、モーター付き自転車、オートバイ、キャンピングカー、トレーラー、トラック、商用車、政府車両、代理店車両、及びモーターホームのためのライセンスプレートのオプションは考慮されていない。
【0004】
その一方で、電子料金支払システム、信号無視検知システム、スピード取締りシステム、及びアクセスコントロールシステムを含む自動取締りシステムが普及してきている。そのようなシステムの多くの実施形態は、車両ライセンスプレートの正確な読取りに依存しており、多くの場合、ライセンスプレート自動認識システムによって実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、現在の道路上の広範なライセンスプレートが原因で、車両ライセンスプレートを正確に読み取ることはますます困難になってきている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ライセンスプレートは、次に挙げる因子の少なくともいくつかが原因で、ライセンスプレート自動認識システムで読み取ることが困難である場合がある。(1)ライセンスプレート材料の反射特性のばらつき、(2)ライセンスプレート上の非標準フォント、文字記号、及びデザイン、(3)ライセンスプレートに埋め込まれたセキュリティ技術のばらつき、(4)カメラ又は光学的文字認識システムのばらつき、(5)カメラ又は光学的文字認識システムを通過する車両の速度、(6)カメラ又は光学的文字認識システムを通過する走行中の車両の量、(7)カメラ又は光学的文字認識システムを通過する走行中の車両の車間、(8)ライセンスプレートを取り囲む周囲光の広範なばらつき、(9)天候、(10)ライセンスプレートの装着位置及び/又は傾き、(11)ライセンスプレートグラフィックの広範なばらつき、(12)それぞれの自動取締りシステムに許容可能な、検出器からライセンスプレートまでの距離、及び(13)例えば他の車両、ライセンスプレート上の汚れ、路上の物品、自然のバリヤなどによってライセンスプレートが隠れること。
【0007】
本特許出願の発明者らは、ライセンスプレートの識別をより容易にすることを目的とした。より具体的には、本特許出願の発明者らは、例えば、車両の所有者、ライセンスプレートが発行された州又は国、ライセンスプレートのタイプ(例えば、商用か個人用か、車、トラック、オートバイなど)をより正確に識別することを促進することができるよう、ライセンスプレートのしるしの識別の精度を改善することを目的とした。
【0008】
本特許出願の一実施形態は、光学活性物品に関し、光学活性基材に隣接して位置づけられた赤外線反射材料を備え、赤外線反射材料は、光学活性基材が赤外線源によって照射されたときに赤外線センサーによって読取ることが可能なパターンを形成する。
【0009】
本特許出願の別の実施形態は、光学活性物品の製造方法に関し、光学活性シートを得る工程と、光学活性シート上に赤外線反射材料を位置づけてパターンを形成する工程と、を含む。
【0010】
本特許出願の別の実施形態は、光学活性物品に関し、光学活性シートの少なくとも一部分を覆う多層光学フィルムを備え、この多層光学フィルムは、第1のスペクトル域内の光に対して比較的高い反射率を呈し、第2のスペクトル域内の光に対して比較的低い反射率を呈する。いくつかの実施形態では、第1のスペクトル域は約700nm〜約1100nmであり、第2のスペクトル域は約400nm〜約700nmである。
【0011】
これらの代替実施形態の全てにおいて、光学活性物品は、例えば、ライセンスプレート、検証ステッカー、使用許可証、識別ラベル、又はタグである場合がある。また、光学活性物品は、例えば、標識に適用された再帰反射タグのような別の物品に適用することもできる。光学活性基材は、例えば、反射性であっても、(例えば、ビード又はプリズムの再帰反射シートのような)再帰反射性であってもよい。赤外線反射材料は、例えば、多層光学フィルムであってもよく、光学活性染料又は顔料を含む材料であってもよい。パターンとしては、例えば、機械読取り可能な情報、グラフィック、画像、バーコード、英数字、又は他のしるしが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】代表的な車両ライセンスプレートの分解図。
【図2】図1の車両ライセンスプレートの分解正面図。
【図3】近赤外スペクトルで視察されたときの図1及び2のライセンスプレートの正面図。
【図4】実施例2のライセンスプレートの略図。
【図5A】周囲可視光で撮った図4のライセンスプレートの一部分のデジタル写真。
【図5B】近赤外線で撮った図4のライセンスプレートの一部分のデジタル写真。
【図6】実施例3のライセンスプレートの略図。
【図7】近赤外線で撮った図6のライセンスプレートのデジタル写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
様々な実施形態及び履行について詳細に説明する。これらの実施形態は、いかなる場合も本特許出願の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、変更及び修正を行うことができる。例えば、それらの実施形態、履行、及び実施例の多くはライセンスプレートを具体的に参照して説明されているが、本特許出願の範囲をこの1つの代表的な履行に限定するものと解釈されるべきではない。更に、いくつかの最終用途のみを本明細書で説明しているが、本明細書に記述されていない最終用途も本特許出願の範囲内に含まれる。したがって、本特許出願の範囲は、その請求項によって決定されるべきではない。
【0014】
図1は、例えば人又はデジタルカメラによって可視光スペクトルで視察されたときの代表的な自動車ライセンスプレートの分解斜視図であり、図2はその正面図である。ライセンスプレート10は、矩形の(例えば再帰反射性の)光学活性シート40の片に隣接して位置づけられる矩形のライセンスプレートブランク20を含む。ライセンスプレートブランク20は、4つの側面26、28、30、及び32が接する厚さによって分離された2つの主表面22及び24を含む。ライセンスプレートブランク20は、例えば金属、プラスチック、又は木材など、所望の剛性を有する任意の材料で形成することができる。再帰反射シート40は、4つの側面46、48、50、及び52が接する厚さによって分離された2つの主表面42及び44を含む。再帰反射シート40には、Tennesseeというグラフィック60、「The Volunteer State」というテキスト62、フローティングセキュリティスレッド(floating security thread image)画像64、「123 456」という英数字66、及び丘陵背景のグラフィック68が印刷されている。ライセンスプレート10はまた、再帰反射シート40とライセンスプレートブランク20とを貫通する4つの穴70もまた含み、これらは、例えばねじ又はリベットで自動車にライセンスプレート10を取り付けることを促進する。これは、1つの代表的な取り付けシステムに過ぎず、当業者は、その他のものも使用可能であることを理解するであろう。所望により、ライセンスプレートブランク20と再帰反射シートとをフレーム70の中間に中心合わせしてともに保持することが可能である。
【0015】
図3は、図1及び2のライセンスプレートを近赤外スペクトル(約800nm〜約850nmの範囲の光を発するLED光源を使用)で視察したときの正面図である。図3は、ライセンスプレート10がバーコード80及びバーコード90もまた含むことを示す。バーコード80はグラフィック60及び62と重なり、バーコード90はグラフィック68の一部分と重なる。可視光スペクトルでは、バーコート80及び90は不可視であるがグラフィック60、62、及び68は可視である。近赤外線スペクトルでは、バーコード80及び90は可視である。
【0016】
図1〜3に示す実施形態の1つの代表的な履行では、バーコード80及び90は、1つ以上の見た目に透明の近赤外線反射性の多層光学フィルムを再帰反射シート40に恒久的に又は一時的に付着することによって形成される。そのような付着は、例えば、接着剤の使用によって行うことができる。見た目に透明の近赤外線反射性の多層光学フィルムをライセンスプレート10上で使用すると、ライセンスプレート10への近赤外線の入射が、別の再帰反射性である光の通り道から反射されることになるので、近赤外線で視察されたときのライセンスプレート10上にハイコントラストの領域が創出される。多層光学フィルムは、可視スペクトルの光をよく透過するとともに、効果的にIRを反射する鏡である。一方、ライセンスプレート10上の画像、グラフィック、しるし、パターンは、可視光で視察されたとき多層光学フィルムの存在による影響をほぼ受けないまま残される。見た目に透明の近赤外線反射性の多層光学フィルムは可視光スペクトルでは有意に可視ではないので、多層光学フィルムを用いて創出された画像、グラフィック、しるし、パターンは、可視光スペクトルでは人の目に見えない。このように、多層光学フィルムを使用して、ライセンスプレート自動認識システムの車両識別装置として作用することができる、ライセンスプレート上の秘密の又は隠された画像、グラフィック、しるし、パターンを作り出すことができる。これらの用途では波長選択性の多層光学フィルムが好ましい材料であるが、見た目の透明さ及びIR反射性を呈する他のフィルムもまたよく機能する。
【0017】
図1〜3に示す実施形態の1つの代表的な履行では、グラフィック(具体的には、数字「456」)66は、これらのグラフィックを印刷するために使用するインクに近赤外染料を添加することによって形成される。近赤外線反射性の染料を含むインクをライセンスプレート10上で使用すると、ライセンスプレート10への近赤外線の入射が、別の再帰反射性である光の通り道から反射されることになるので、近赤外線で視察されたときのライセンスプレート10上にハイコントラストの領域が創出される。したがって、「456」というグラフィックは可視光スペクトルでも赤外線スペクトルでも可視となる。代表的な市販入手可能な染料としては、H.W.Sands Corporation及びEpolin,Inc.により製造されているものが挙げられる。
【0018】
任意の特定の履行のために選択される光学活性材料は、所望の光学的性質、構造的特徴、及び耐久性に依存することになる。したがって、望ましい光学活性材料は意図される用途に基づいて変化することになる。光学活性材料は、反射性基材及び再帰反射性基材を含む。本明細書で言うところの「再帰反射性」なる用語は、斜め方向の入射光線をその入射方向に逆平行又はほぼ逆平行な方向に反射することによって、入射光線が光源又はその近傍に戻るような属性のことを指して言う。再帰反射シートとして知られる2つのタイプは、ミクロスフェアベースのシート及びキューブコーナーシート(しばしばプリズムシートと呼ばれる)である。マイクロスフェアに基づいたシートは、しばしば「ビード」シートと呼ばれ、通常少なくとも部分的に結合剤層に包埋され、付属の正反射又は拡散反射材料(例えば、顔料粒子、金属フレーク、蒸着コーティング)を有する多数のマイクロスフェアを使用することによって入射光を再帰反射するようになっている。代表的な例は、米国特許第3,190,178号(McKenzie)、同第4,025,159号(McGrath)、及び同第5,066,098号(Kult)に記載されている。しばしば「プリズム」シートと呼ばれる、キューブコーナー再帰反射シートは、ほぼ平面の正面と、複数のキューブコーナー要素を備える構造化された背面とを典型的に有する本体部分を備える。それぞれのキューブコーナー素子は、3つのほぼ相互に垂直の光学面を備える。実例は、例えば、米国特許第1,591,572号(Stimson)、同第4,588,258号(Hoopman)同第4,775,219号(Appledornら)、同第5,138,488号(Szczech)、及び同第5,557,836号(Smithら)に記載されている。構造化された表面にシール層を適用して、個々のキューブコーナーへの汚染物質の付着を防ぐことができる。例えば米国特許第5,450,235号(Smithら)に記載されているような可撓性のキューブコーナーシートを本特許出願の実施形態又は履行に組み込んでもよい。本特許出願とともに使用するための再帰反射シートは、例えば、マットのものでも光沢のあるものでもよい。
【0019】
赤外線反射材料は、例えば多層光学フィルムであってもよい。任意の特定の履行のために選択される多層光学フィルムは、所望の光学的性質、構造的特徴、及び耐久性に依存することになる。したがって、望ましい多層光学フィルムは、意図される用途に基づいて変化することになる。いくつかの代表的な多層光学フィルムは、例えば、米国特許第6,024,455号及びPCT公開特許第WO 95/17692号に記載されている。代表的な市販の多層光学フィルムとしては、例えば、Vikuiti Clear Card Filter、Solar Reflective Film、及びSM 857が挙げられ、いずれも3M Company(St.Paul)が製造している。特定の多層光学フィルムの反射率及び透過スペクトルは、様々な軸に沿った個々の層の光学的厚さにある程度依存し、公知のフレネル係数によってほぼ決定される。フィルムは、選択される適切な光学的厚さによって、赤外線、可視光、又は紫外光を反射するように設計することができる。高分子層の屈折率の間の望ましい関係は、適切な材料及び適切な加工条件の選択によって達成することができる。
【0020】
代替方法として、又は組み合わせとして、材料は赤外線反射性又は吸収性の染料を含むことができる。そのような染料の例示的な説明は、例えば米国特許第2007/0082963号に見出すことができる。市販の赤外線反射性染料としては、例えば、H.W.Sands Corporation(フロリダ州Juniper)及びEpolin Corporation(ニュージャージー州Newark)が製造しているものが挙げられる。多層光学フィルムを使用することの1つの代表的な利点は、特に高い可視光透過性を有する多層光学フィルムでは、近赤外線吸収性の染料と異なり、着色(tinting)又は変色をほとんど避けること又は最低限にすることが可能であることである。
【0021】
多層光学フィルムは、例えば、ラミネーション、ボンディング、機械的な貼付、又は接着剤の使用によって光学活性シートに一時的に又は恒久的に取り付けることができる。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「パターン付き(patterned)」は、少なくともその一部が情報伝達するものであり得るデザイン又は画像を指す。代表的なデザイン又は画像としては、例えば、しるし、パターン、英数字、正弦波曲線、バーコード(例えば、直線バーコード、2次元バーコード等を含む)、デザイン、画像、記号、機械読取り可能な情報、及びグラフィックが挙げられる。光学活性材料は、例えば、正弦波曲線、英数字的特徴、又はバーコードを含む任意のタイプの仮想のしるしを含んでもよい。代表的なセキュリティ画像は、例えば、米国特許第6,288,842号、同第D517610号、及び同第D511187号に記載されている。
【0023】
本明細書に記載されている光学活性物品は、所与の物体又は基材に適用可能な、多層フィルムとパターン付き再帰反射層との様々な組み合わせを組み込むことができるシートを含むように通常は構成される。それらの物品は、概して光学的に片面である。すなわち、片面(表側と指定する)は、光源からの入射光の受容と、デテクター(例えば観察者の目)に向かって反射又は再帰反射される光の発光との両方に概して適応し、もう一方の面(裏側と指定する)は、例えば接着層によって物体に適用されるように概して適応される。表側は、光源及びデテクターに面する。物品は、通常、表側から裏側へ及び裏側から表側へは有意な量の光を透過しないが、これは、少なくとも部分的に、金属蒸着コート、シールフィルム、及び/又は接着層のような、再帰反射材上の物質又は層の存在による。
【0024】
本明細書に記載する光学活性物品の1つの用途は、ライセンスプレート検知又は認識システムによって検知されるライセンスプレートにおける用途である。1つの代表的なライセンスプレート検知システムは、カメラ及び照明システムを使用してライセンスプレート画像を捉える。ライセンスプレートを含む場面の画像は、周囲光及び指定光源(例えば、カメラが画像を記録する準備をしているときに光線をライセンスプレートの方に向ける同軸照明)によって追加される光から作ることができる。同軸照明が発光する光線とライセンスプレートの再帰反射性との組み合わせは、別の大きい画像場面で、プレートの位置からの強い輝度信号を生成する。この輝度信号を使用して、ライセンスプレートの位置を識別する。次いで、ライセンスプレート自動認識(ALPR)は、関心領域(輝度の領域)に焦点を当て、認識可能なコントラストパターンを探すことによって、期待されるしるしとのマッチを検索する。認識されたしるしには、しばしば、観察されたライセンスプレートに関する情報を伝送するための別のコンピュータ又は他の通信装置への、そのマッチの信頼度のいくらかの評価が伴う。
【0025】
カメラが検出する光は、数々の任意の光源を出所とすることができる。特に関心対象となるのは、ライセンスプレートからの反射光と、ライセンスプレート上のその関心領域の内側のそれぞれの区域から反射される光の量である。カメラ又は検知システムはライセンスプレート上のそれぞれのしるしの間の差(コントラスト)を生成することを目標として、ライセンスプレートのそれぞれの領域から光を収集する。同軸照明を使用して周囲光源からの光の量を制圧する(overwhelm)など、様々な方法でコントラストをもたらすことができる。カメラのフィルターの使用は、光スペクトルの不要な部分を選択的に取り除き、光のスペクトルの望ましい部分だけを通すことによって、しるしと背景との間の差の強調を補助することができる。
【0026】
ドライビング及びALPR環境における光は、約400〜約700nmの間の領域にある可視光と、約700〜約1100nmの間の領域にある赤外線との光域に分けることができる。典型的なカメラは、これらの領域を両方含むが、標準的なカメラシステムの感度は波長が1100nmを超えると有意に減少する。様々な発光ダイオード(LED)がこの波長域全体にかけて発光することができ、典型的には、ほとんどのLEDは、中心波長と、その波長の周囲の狭い分布を特徴とする。例えば、830nm+/−20nmの波長を有する光線を発するLEDを含むシステムでは、適切に装備されたカメラは、車両の運転者には見えない光を有する近赤外線スペクトルでライセンスプレートを検知することができる。したがって、運転手はLEDの「ストローブ」光の影響を見ることはなく、それらによって気が散ることはない。
【0027】
これらのシステムのカメラ及び光は、典型的には、車両の運動の方向に対していくらかの角度でライセンスプレートを視野に捉えるように装着される。代表的な装着場所としては、交通の流れより上の位置又は道路の脇からの位置が挙げられる。画像は、典型的には、法線入射(正面から)からライセンスプレートまで20度〜45度の角度で収集される。
【0028】
適切な赤外線又は紫外線に敏感に反応するデテクターを使用して、可視スペクトルの外の再帰反射光を検知することになる。代表的なカメラとしては、PIPS Corporation(テネシー州Knoxville)が販売するP372が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
本明細書に記載されている再帰反射物品を使用して、これらのライセンスプレートの検知又は認識システムの捕捉効率を改善することができる。捕捉効率は、しるし、プレートの型式、及びプレートの起源を含むが、これに限定されない、ライセンスプレートデータを正しく発見及び識別するプロセスとして説明することができる。これらの自動システムの用途としては、限定はしないが、電子料金支払システム、信号無視検知システム、スピード取締りシステム、車両追跡システム、旅行タイミングシステム、自動識別及び警告システム、車両アクセスコントロールシステムが挙げられる。上述のように、現在のライセンスプレート自動認識システムが有する捕捉効率は、例えばしるしのコントラストが低い又は矛盾していることが原因で、及びライセンスプレートの絵図及び/又はしるしのコントラストが曖昧である又は混乱させるものであることが原因で、望ましい捕捉効率より低い。
【0030】
本特許出願の光学活性物品はまた、標識にも使用することができる。本明細書で言うところの「標識」という用語は、通常、英数字、記号、グラフィック、又は他のしるしによって情報を伝える物品のことを指して言う。具体的な標識の例としては、交通整理、道路標識、識別材料(例えば免許証)、及び車両ライセンスプレートのために使用される標識が含まれるが、これらに限定されない。用途によっては、本特許出願の物品を使用して、可視光の下での標識の外観を変化させずに、視察されるしるしの望ましい特性を採用することが有利となるであろう。そのような再帰反射物品は、一般消費用に意図された標識の特定の情報の読み取りを可能にする一方で、「隠されている」マーキングの不要な検知、及び/又はそれによって運転者又は標識視察者の気を散らすことを避けることを可能にする。そのような開発は、セキュリティ目的、識別、及び在庫調整のための、物品の目立たないマーキング及び/又はそれらの物品による情報伝達を促進する。例えば、見た目に透明の多層光学フィルム又は標識基材の色に近い色を有する多層光学フィルムによって、そのように目立たないようにすることができる。例えばPCT公開特許第WO 96/35196号に記載されているように、隠されたしるしは標識在庫調整を助けることができる。例えば、隠されたしるしは、例えば標識材料ロット番号、設置日、再注文情報、又は製品寿命のような標識特定の情報を含むことができる。
【0031】
例えば、再帰反射性ハイウェー標識は、その標識の再帰反射シートに付着された赤外線反射性のしるしを含むことができる。そのような付着は、例えば、生産中、設置時、又は設置後に行うことができる。そのような標識の1つの利点は、しるしが運転者に見えないために、標識を通過する際に標識をすばやく読取る運転者をしるしが妨害しないことである。しかし、赤外線カメラを装備したハイウェー職員又は機械は、しるしを見ることができる。この識別を、例えば標識のメンテナンス、耐用期間の記録、再注文に使用すること、又はしるしの情報に基づいて標識の性能を測定するために使用することができる。
【0032】
本特許出願の目的及び利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に引用されている材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではなく、当業者は、他のパラメータ、材料、及び設備を使用してもよいことを認識するであろう。本明細書における部、百分率、及び比率は全て、特に指定しない限り重量基準である。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
埋め込まれたセキュリティ機能と、Ensure(商標)Virtual Security Threadを有する「Digital License Plate(DLP)Sheeting Series 9250T」(商品名)の下で3M Company(ミネソタ州)が市販するタイプの裏側にコーティングされた感圧性接着剤とを有する白色反射シートのロールに、米国特許第6,712,532号(Look)、同第6,246,428号(Lookら)、同第5,818,492号(Lookら)、同第5,508,105号(Orensteenら)、及び同第4,847,237号(Vanderzanden)に記載されているデジタルライセンスプレートシステムの熱質量部移動印刷技術を用いて印刷した。印刷パターンは、図1〜3に示すような丘陵背景グラフィック68を形成した。この実施例では、ライセンスプレートには言葉「Tennessee」60がその上部の中心にわたって水平に記されており、この言葉「Tennessee」の上に言葉「The Volunteer State」62が、より小さい文字で記されていた。次いで、印刷されたシートに、3M Companyが市販する「Clear Protective Film 9097」フィルムをラミネートした。
【0034】
印刷された反射シートを6インチ×12インチ(15cm×30cm)のアルミニウム基材(例えば、ライセンスプレートブランク20)に圧搾ロールで適用して、ライセンスプレート10を形成した。3M Companyが製造・販売する「Scotch Double Stick Tape」感圧性接着テープを使用して、文字「123 456」をライセンスプレートに接着した。グラフィックのうち「123」の部分は、Penn Colorが製造するPerrindo Red 12R1412Dを等しい重量のメチルエチルケトン(MEK)で希釈したもので形成した。グラフィックのうち「456」の部分は、Penn Colorが製造するPerrindo Red 12R1412Dを25gと、25gのシクロヘキサノン及び0.5gのEpolin 5588(赤外線反射性染料)との混合物で形成した。
【0035】
バーコードのしるしは、3M Companyが製造・販売する「Vikuiti Clear Card Filter」多層IR反射性フィルムの矩形片と、「Dual−Purpose Transparency Film CG5000」の商品名で3M Companyが市販しているポリエステルフィルムの矩形片とを、縦方向に交互に置いて形成した。この特定の実施例では、幅1インチ(25mm)とし、長さ0.7インチを(18mm)、0.35インチ(9mm)、0.24インチ(6mm)、及び0.12インチ(3mm)として、多層フィルムの4つの矩形片を提供した。同じ寸法のポリエステルフィルムの4つの矩形片も提供した。しるしのパターンは、材料の矩形片をポリエステルの材料片と交互にして、最長の多層フィルム片(0.7インチ(18mm))とポリエステルフィルムから始め、長さが減っていく順序で続けることによって作り出した。
【0036】
「Vikuiti Clear Card Filter」多層IR反射性フィルムは、赤外(IR)放射線を鏡面的に反射することによりそれが入射光を再帰反射するのを防ぐようにあつらえた。対照的に、ポリエステルフィルムはIR放射線を再帰反射させる。近赤外線照射条件(800〜850nm)で視察したとき、しるしはバーコード80のようであり、多層フィルム片は暗く見え、ポリエステルフィルムはIRを再帰反射し、より明るく見える。バーコードをライセンスプレートの上部の言葉「Tennessee」に重ねて位置づけ、「Scotch Double Stick Tape」感圧性接着テープで定位置に保持した。しるしのパターン/バーコードは、裸眼に見た目には透明であり、したがって、ライセンスプレートの近くにいる一般人の目にはあまり見えない。背景グラフィック及び言葉「Tennessee」は、バーコードを通して可視であった。
【0037】
追加的なしるしは、3M Companyが「CM 875」の商品名で市販している第2の多層IR反射性フィルムの矩形片と上述のポリエステルフィルムの矩形片とを交互にした全く同じバーコードパターン90を提供することによって生成した。第2のバーコードのしるしは、ライセンスプレートの下部に、数字「123 456」の下に配置し、「Scotch Double Stick Tape」感圧性接着テープで固定した。
【0038】
当業者は、グラフィック又はしるしを光学活性材料に直接印刷すること又は付着することができることを理解するであろう。そのような印刷は、例えば、サーマルプリンターで実現することができる。
【0039】
組み立てたライセンスプレートの画像は、高赤外線感度及び赤外発光ダイオード(LED)を有する、PIPS Technology Inc.(米国テネシー州)が市販する「P372」又は「Spike Plus」電荷結合デバイス(CCD)カメラで撮影した。カメラには35mmレンズを装着した。カメラのLEDの出力は、Ocean Optics Inc.(米国フロリダ州)が製造・市販する「USB2000」スペクトル検出器及び付随の「OOIBase32」Spectrometer Operating Softwareを用いて測定した。観察された出力ピーク強度は約830nmであった。組み立てたライセンスプレートを、約10°の縦傾斜のある支持体上で、カメラから約42ft(12.8m)に位置づけた。
【0040】
(実施例2)
(1)背景グラフィックが森と湖の場面であること、(2)言葉「Explore Minnesota」がライセンスプレートの上部にわたって印刷されていること、及び(3)言葉「10,000 Lakes」がライセンスプレートの下部にわたって印刷されていることを除き、実施例1で説明したようなライセンスプレートを提供した。ライセンスプレートのほぼ中央に、英数字「NSTIG8R」を印刷した。図4は、このライセンスプレートの略図である。
【0041】
この実施例では、「Vikuiti Clear Card Filter」多層フィルムの3つの0.5インチ×0.5インチ(1.3cm×1.3cm)の正方形片を中心合わせすることによって、ライセンスプレートの右側に縦にしるしを作り出した。正方形のしるしを実施例1の感圧性接着テープでライセンスプレートに貼付し、手で圧力を付加した。
【0042】
Sony Corporation(日本、東京)が製造・販売する「DSC−S85」デジタルカメラを使用して、近赤外線条件下でライセンスプレートの画像を撮影した。カメラを解体し、IRブロックフィルタを、Cyro Industries(米国ニュージャージー州)が製造する「1146−0 IRT」近赤外(NIR)可視放射線ブロックフィルターと交換した。この可視ブロックフィルターは、元来のIRブロックフィルターと同等のサイズ及び厚さであった。このカメラで撮影した画像を図5Aに示す。
【0043】
また、可視光画像も周囲条件下で瞬間フラッシュ付きの「A2」デジタルカメラ(同じく日本、東京のKonica Minoltaが製造している)を用いて撮影し、それによって、反射シートの再帰反射性の観察を促進した。このカメラで撮影した画像を図5Bに示す。これらの画像の双方で、ライセンスプレートアセンブリは、約30°の縦の傾斜のある支持体上に配置した。
【0044】
(実施例3)
ライセンスプレートは、白色反射シートを印刷しないまま残したことを除き、実施例1で説明したように提供した。しるしを作製し、次の順序でライセンスプレートに縦に中心合わせした。(1)市販の多層IR反射性フィルム「CM 875」から形成した、円形バーコードの第1のしるしをライセンスプレートに配置し、(2)3M Companyが商品化した市販の多層IR反射性フィルム「Solar Reflecting Film」から形成した文字「I」及び「R」の形の第2のしるしをライセンスプレートに配置し、(3)3M Companyが商品化した市販の見た目に透明な感圧性接着テープ「Scotch Magic Tape」から文字「T」の形の第3のしるしを形成し、ライセンスプレートに貼付した。図6は、このライセンスプレートの略図である。
【0045】
ライセンスプレートを取り扱うときにしるしを保護することを目的として、6インチ×12インチ(15.2cm×30.5cm)の寸法を有する矩形のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、しるしが取り付けられたライセンスプレートに重ねて置いた。次いで、このアセンブリを、ドイツ、SiegenのUTSCH AGが製造・販売する「RB 230D」高温型打機のコンベヤベルトに載せた。ロールの温度を150℃に設定し、設備の型打アームを下げてライセンスプレートに接触させた。加熱したロールの下でコンベヤベルトを前進させ、ライセンスプレートアセンブリを運んで高温型打機を通過させることにより、しるしをライセンスプレートに軽く付着させた。ラミネーションの後、PETフィルムを取り除いた。
【0046】
周囲条件下では「A2」デジタルカメラで、IR条件下では「PIPS 372」カメラで、ライセンスプレートアセンブリの画像を撮影した。周辺条件下で可視光画像を撮影するときは、便宜上、試料を水平な表面に配置した。その後、IR条件下で画像を撮影するために、支持体に寄りかからせて試料をほぼ垂直位に置いた。しるしは見た目に透明だが近赤外線条件下では暗く見え、したがって赤外放射線ではコントラストを生成する。赤外線条件下での画像を図7に示す。
【0047】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施形態及び実施例の詳細に多くの変更を加えることができることは、当業者に明らかであろう。本出願の範囲は、以下の「特許請求の範囲」によってのみ定められるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性物品であって、
光学活性基材に隣接して位置づけられた赤外線反射材料を備え、前記赤外線反射材料は、前記光学活性基材が赤外線源によって照射されたときに赤外線センサーによって読取ることが可能なパターンを形成する、光学活性物品。
【請求項2】
前記光学活性基材が再帰反射性又は反射性である、請求項1に記載の光学活性物品。
【請求項3】
前記再帰反射性の基材がプリズムシート又はビードシートを含む、請求項2に記載の光学活性物品。
【請求項4】
前記赤外線反射材料が多層光学フィルムである、請求項1に記載の光学活性物品。
【請求項5】
前記赤外線反射材料が可視光に対して透明である、請求項1に記載の光学活性物品。
【請求項6】
前記光学活性基材が可視光に対して実質的に透明である、請求項1に記載の光学活性物品。
【請求項7】
可視光スペクトルで前記光学活性基材を通して可視である下層パターンを更に備える、請求項1に記載の光学活性物品。
【請求項8】
前記パターンが、機械読取り可能な情報、グラフィック、画像、英数字、バーコード、又は他のしるしの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の光学活性物品。
【請求項9】
前記ライセンスプレートを見る角度によって前記パターンの可視性が異なる、請求項1に記載の光学活性物品。
【請求項10】
前記物品が、ライセンスプレート、検証ステッカー、使用許可証、識別ラベル、又はタグから基本的になる群から選択される標識である、請求項1に記載の光学活性物品。
【請求項11】
再帰反射物品の製造方法であって、
再帰反射シートを得る工程と、
パターンを形成するために前記再帰反射シート上に赤外線反射材料を位置づける工程と、を含む、方法。
【請求項12】
前記物品が、ライセンスプレート、検証ステッカー、使用許可証、識別ラベル、又はタグである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記再帰反射シートをライセンスプレートベースに貼付する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
赤外線センサーによって前記パターンを読取ることを促進するために前記再帰反射シートを赤外線源で照射する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記再帰反射シートがプリズムシート又はビードシートのうちの1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記赤外線反射材料が多層光学フィルムである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記赤外線反射材料が可視光に対して実質的に透明である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記パターンが、機械読取り可能な情報、グラフィック、画像、英数字、バーコード、又は他のしるしの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
再帰反射物品であって、
再帰反射シートの少なくとも一部分を覆っている多層光学フィルムを備え、
前記多層光学フィルムは、第1のスペクトル域内の光に対して比較的高い反射率を呈し、第2のスペクトル域内の光に対して比較的低い反射率を呈する、再帰反射物品。
【請求項20】
前記第1のスペクトル域が約700nm〜約1100nmであり、前記第2のスペクトル域が約400nm〜約700nmである、請求項19に記載の再帰反射物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−512428(P2012−512428A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540771(P2011−540771)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/065792
【国際公開番号】WO2010/074875
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】