説明

光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの精製方法

【課題】光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの実用的な精製方法を提供する。
【解決手段】光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンを塩基との塩に誘導して再結晶を行い、遊離のカルボキシル基に戻すことにより、光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンを精製することができる。また、塩基の中でも有機塩基が好ましく、シクロヘキシルアミン類が特に好ましく、光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンを効果的に精製することができる。さらに、本発明の精製方法における鍵化合物として、新規物質である光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの有機塩基塩、特にシクロヘキシルアミン類塩を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬中間体として重要な光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンは、医薬中間体として重要である(非特許文献1および2)。該化合物の製造方法は数多く知られているが、光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−ヒドロキシプロリンエステルの立体反転を伴う脱ヒドロキシフッ素化(脱離基導入とフッ素置換の2工程に分けて行う場合も含む)と加水分解を経るものが大部分である(スキーム1を参照。R、Bocおよび破線は、それぞれアルキル基、tert−ブトキシカルボニル基、3,4または4,5−デヒドロを表す)。
【0003】
【化1】

【0004】
上記の脱ヒドロキシフッ素化においては、所望の光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンエステル以外に相当量の光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−3,4または4,5−デヒドロプロリンエステルを副生し、引き続く加水分解を経て最終的に光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−3,4または4,5−デヒドロプロリンが不純物として残存する(3,4−デヒドロ体が主であり、加水分解で殆ど増減しない)という製造上の共通の問題点があった。光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンは、医薬中間体として高純度品が要求される。よって、これらの不純物(3,4または4,5−デヒドロ体)に対する効果的な精製方法の開発は重要な課題であるが、実用的な精製方法は知られていなかった。
【0005】
本発明に関連する従来技術としては、不純物の3,4または4,5−デヒドロ体をハロゲン系酸化剤と反応させて除去する精製方法が開示されている(特許文献1)。また、N−ベンジルオキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンをシクロヘキシルアミンとの塩に誘導して再結晶を行い、遊離のカルボキシル基に戻す精製方法が開示されている(特許文献2)。さらに、N−tert−ブトキシカルボニルアミノ酸はシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミンとの塩に誘導することにより結晶化し易いことが知られている(非特許文献3)。最後に、光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの有機塩基塩、特にシクロヘキシルアミン類塩は新規物質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2006/080401号パンフレット
【特許文献2】米国特許4241076号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Organic Process Research & Development(米国),2008年,第12巻,p.183−191
【非特許文献2】Bioorganic & Medicinal Chemistry(オランダ),2006年,第14巻,p.6900−6916
【非特許文献3】第5版実験化学講座16有機化合物の合成IV−カルボン酸・アミノ酸・ペプチド−(日本化学会編平成17年丸善発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの実用的な精製方法を提供することにある。そのためには、従来技術の問題点を解決する必要がある。
【0009】
特許文献1に対しては、具体的に開示されている化合物はN−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−フルオロ−L−プロリンだけであり、本発明で対象とする光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンに適応できるか否かは不明であった。また、不純物をハロゲン系酸化剤と反応させる工程が増えるだけでなく、最終的には所望の目的物からハロゲン系酸化剤との反応による不純物の処理変換体を除去する必要があり、結果的に不純物プロファイルの品質管理も余分に増える。一方、光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−フルオロプロリンに対しては、有機合成における一般的な再結晶精製により問題の不純物を効果的に除去することができ、この様な煩雑なハロゲン系酸化剤での処理自体が必ずしも必要ではなかった。ところが、本発明で対象とする光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンに対しては、本化合物自体での単なる再結晶精製は全く効果がなかった。
【0010】
また、特許文献2に対しては、アミノ保護基がベンジルオキシカルボニル基であり、本発明で対象とするtert−ブトキシカルボニル基ではなかった。よって、煩雑なアミノ保護基の架け替えが必要となり、製造コストも嵩んだ。
【0011】
さらに、非特許文献3に対しては、本発明で対象とする光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンは具体的に開示されておらず、当然、再結晶精製により3,4または4,5−デヒドロ体が効果的に除去できることも知られていなかった。
【0012】
最後に、本発明で開示する光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの精製方法は知られていなかった。
【0013】
この様に、光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンに対して直接的に適応でき、操作が簡便で製造コストが安く、且つ不純物プロファイルの品質管理も行い易い精製方法が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を踏まえて鋭意検討した結果、N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンまたはN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンを塩基との塩に誘導して再結晶を行い、遊離のカルボキシル基に戻すことにより、N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンまたはN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンが精製できることを見出した(態様1、2)。また、塩基の中でも有機塩基が好ましく、シクロヘキシルアミン類が特に好ましく、N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンまたはN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンが効果的に精製できることも見出した(態様3、4)。さらに、本発明の精製方法における鍵化合物として、新規物質であるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの有機塩基塩、特にシクロヘキシルアミン類塩およびN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの有機塩基塩、特にシクロヘキシルアミン類塩を提供する(態様5、6、7、8)。
【0015】
すなわち、本発明は[発明1]から[発明8]を含み、光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの実用的な精製方法を提供する。
[発明1]
式[1]
【0016】
【化2】

【0017】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンを塩基との塩に誘導して再結晶を行い、遊離のカルボキシル基に戻すことを特徴とする、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの精製方法。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す]
[発明2]
式[2]
【0018】
【化3】

【0019】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンを塩基との塩に誘導して再結晶を行い、遊離のカルボキシル基に戻すことを特徴とする、式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの精製方法。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す]
[発明3]
発明1または発明2において、塩基が一般式[3]
【0020】
【化4】

【0021】
で示される有機塩基であることを特徴とする、発明1または発明2に記載の精製方法。
[式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から12のアルキル基を表し、2つのアルキル基が共有結合により環状アミノ基を形成することもある。但し、R1、R2およびR3の3つが同時に水素原子を採ることはない]
[発明4]
発明3において、有機塩基が一般式[4]
【0022】
【化5】

【0023】
で示されるシクロヘキシルアミン類であることを特徴とする、発明3に記載の精製方法。
[式中、Cyはシクロヘキシル基を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から8のアルキル基を表す]
[発明5]
一般式[5]
【0024】
【化6】

【0025】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの有機塩基塩。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から12のアルキル基を表し、2つのアルキル基が共有結合により環状アミノ基を形成することもある。但し、R1、R2およびR3の3つが同時に水素原子を採ることはない]
[発明6]
一般式[6]
【0026】
【化7】

【0027】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのシクロヘキシルアミン類塩。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。Cyはシクロヘキシル基を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から8のアルキル基を表す]
[発明7]
一般式[7]
【0028】
【化8】

【0029】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの有機塩基塩。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から12のアルキル基を表し、2つのアルキル基が共有結合により環状アミノ基を形成することもある。但し、R1、R2およびR3の3つが同時に水素原子を採ることはない]
[発明8]
一般式[8]
【0030】
【化9】

【0031】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンのシクロヘキシルアミン類塩。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。Cyはシクロヘキシル基を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から8のアルキル基を表す]
【発明の効果】
【0032】
本発明が従来技術に比べて有利な点を以下に述べる。
【0033】
本発明は、精製の対象が光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンそのものであり、直接的に適応できる。また、煩雑なアミノ保護基の架け替えも不要で、安価な塩基との塩の再結晶精製のため、操作が簡便で製造コストが安い。さらに、本発明の精製方法を通して不純物の光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−3,4または4,5−デヒドロプロリンは構造が変化しないため、不純物プロファイルの品質管理も行い易い。
【0034】
また、本発明の精製方法では、スキーム1の脱ヒドロキシフッ素化が立体保持で進行して副生した不純物の光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−フルオロプロリンも同時に除去することができる(図1を参照)。
【0035】
【化10】

【0036】
この様に、本発明は従来技術の問題点を全て解決した実用的な精製方法である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの精製方法について詳細に説明する。
【0038】
本発明の精製方法は「塩基との塩への誘導」、「再結晶」および「カルボキシル基への遊離」の3工程から成り、この順序で行う。これらの工程は、有機合成における一般的な操作として行うことができる。具体的には、第5版実験化学講座1−基礎編I実験・情報の基礎−(日本化学会編平成15年丸善発行)、第5版実験化学講座4−基礎編IV有機・高分子・生化学−(日本化学会編平成15年丸善発行)、第5版実験化学講座5−化学実験のための基礎技術−(日本化学会編平成17年丸善発行)等を参考にして同様に行うことができる。また、必要に応じて任意の工程で活性炭処理や吸着樹脂による処理等を行うことができる。
【0039】
最初に、「塩基との塩への誘導」について詳細に説明する。
【0040】
「塩基との塩への誘導」は、問題となる不純物の光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−3,4または4,5−デヒドロプロリンを含む光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンを塩基と接触させることにより行う。本工程は、溶媒(以下、塩誘導溶媒とする)を用いることにより円滑に且つ効率良く塩に誘導できる場合がある(好適な「塩基との塩への誘導」の条件を組み合わせて採用することにより、必ずしも塩誘導溶媒を用いる必要はない)。
【0041】
式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンおよび式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンのBocは、tert−ブトキシカルボニル基を表す。
【0042】
式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンまたは式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンは、特開2006−290870号公報、Tetrahedron Letters(英国),1998年,第39巻,p.1169−1172等を参考にして同様に製造することができる。
【0043】
塩基としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等の無機塩基、下記の一般式[3]で示される有機塩基、特に下記の一般式[4]で示されるシクロヘキシルアミン類、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等が挙げられる。
【0044】
一般式[3]で示される有機塩基のR1、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1から12のアルキル基を表し、2つのアルキル基が共有結合により環状アミノ基を形成することもある。但し、R1、R2およびR3の3つが同時に水素原子を採ることはない。該アルキル基は、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数が3以上の場合)を採ることができる。該環状アミノ基は、環員数が3から12を採ることができる。
【0045】
一般式[4]で示されるシクロヘキシルアミン類のCyは、シクロヘキシル基を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から8のアルキル基を表す。該アルキル基は、上記と同じである。
【0046】
塩基の中でも一般式[3]で示される有機塩基が好ましく、一般式[4]で示されるシクロヘキシルアミン類が特に好ましく、具体的には、シクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−n−プロピルシクロヘキシルアミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン、N−シクロプロピルシクロヘキシルアミン、N−n−ブチルシクロヘキシルアミン、N−n−アミルシクロヘキシルアミン、N−n−ヘキシルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0047】
塩基の使用量は、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンまたは式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリン1モルに対して0.35モル以上を用いれば良く、0.4から5モルが好ましく、0.45から3モルが特に好ましい。
【0048】
塩誘導溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系、水等が挙げられる。その中でもn−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよび水が好ましく、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよび水が特に好ましい。これらの塩誘導溶媒は単独または組み合わせて用いることができる。
【0049】
塩誘導溶媒の使用量は、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンまたは式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリン1モルに対して0.05L以上を用いれば良く、0.1から20Lが好ましく、0.2から10Lが特に好ましい。
【0050】
「塩基との塩への誘導」の温度条件は、+150℃以下で行えば良く、−30から+125℃が好ましく、−20から+100℃が特に好ましい。
【0051】
「塩基との塩への誘導」の時間条件は、48時間以内で行えば良いが、塩基の種類および誘導条件により異なるため、種々の分析手段により誘導の進捗状況を追跡し、さらなる進捗が殆ど認められなくなった時点を終点とすることが好ましい。
【0052】
「塩基との塩への誘導」における塩の回収は、塩誘導溶媒の濃縮や析出結晶の濾過等により塩を単離することができる。しかしながら、塩誘導溶媒と次工程の再結晶溶媒を揃えて「塩基との塩への誘導」と「再結晶」を1つの反応容器で連続的に行うことが好ましく、操作が簡便である。
【0053】
次に、「再結晶」について詳細に説明する。
【0054】
「再結晶」は、問題となる不純物の光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−3,4または4,5−デヒドロプロリン(または塩)を含む光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロプロリンの塩を再結晶することにより行い、不純物の3,4または4,5−デヒドロ体(または塩)を選択的に除去するものである。
【0055】
再結晶溶媒としては、前工程の塩誘導溶媒と同じものが挙げられる。また、好適な再結晶溶媒も好適な塩誘導溶媒と同じである。さらに、これらの再結晶溶媒は単独または組み合わせて用いることができる。塩誘導溶媒と次工程の再結晶溶媒を揃えて「塩基との塩への誘導」と「再結晶」を1つの反応容器で連続的に行う場合は、「再結晶」の工程で貧溶媒を新たに追加することもできる。
【0056】
再結晶溶媒の使用量は、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの塩または式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの塩1モルに対して0.05L以上を用いれば良く、0.1から20Lが好ましく、0.2から10Lが特に好ましい。
【0057】
「再結晶」は、種結晶を加えることにより円滑に且つ効率良く結晶が析出する場合がある(好適な「再結晶」の条件を組み合わせて採用することにより、必ずしも種結晶を加える必要はない)。
【0058】
種結晶の使用量は、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの塩または式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの塩1モルに対して0.00001モル以上を用いれば良く、0.0001から0.1モルが好ましく、0.0002から0.05モルが特に好ましい。
【0059】
「再結晶」の温度条件は、+150℃以下で行えば良く、−30から+125℃が好ましく、−20から+100℃が特に好ましい。また、+45℃以下まで徐々に降温し、+15℃以下で熟成することが好ましい。
【0060】
「再結晶」の時間条件は、48時間以内で行えば良いが、塩の種類および再結晶条件により異なるため、種々の分析手段により再結晶の進捗状況を追跡し、さらなる進捗が殆ど認められなくなった時点を終点とすることが好ましい。
【0061】
「再結晶」における精製品の回収は、析出した結晶を濾過し、必要に応じて貧溶媒で洗浄し、乾燥することにより、不純物の3,4または4,5−デヒドロ体(または塩)を低減できた精製品を得ることができる。また、「再結晶」を繰り返すことによりさらに高純度の精製品を得ることができる。当然、未乾燥品(湿ケーキ)を次工程に供することもできる。
【0062】
最後に、「カルボキシル基への遊離」について詳細に説明する。
【0063】
「カルボキシル基への遊離」は、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの塩または式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの塩の精製品を酸で中和することにより行う。
【0064】
具体的には、塩化水素、臭化水素、硝酸、硫酸等の無機酸の水溶液で中和し、トルエン、キシレン、塩化メチレン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル等の有機溶媒(以下、抽出溶媒とする)で抽出し、回収有機層を必要に応じて水洗し、無水硫酸ナトリウムまたは無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮することにより、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンまたは式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの高純度品(遊離のカルボキシル基)を得ることができる。また、濃縮の途中で種結晶と再結晶溶媒の内、脂肪族炭化水素系等の貧溶媒を加え、結晶を析出させ、熟成後に濾過し、乾燥することにより、流動性の高い白色結晶として回収することもできる。
【0065】
無機酸の使用量は、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの塩または式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの塩1モルに対して0.35モル以上を用いれば良く、0.4から5モルが好ましく、0.45から3モルが特に好ましい。
【0066】
無機酸の水溶液の濃度は、0.05N以上を用いれば良く、0.1から12Nが好ましく、0.2から8Nが特に好ましい。
【0067】
抽出溶媒の使用量は、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの塩または式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの塩1モルに対して0.1L以上を用いれば良く、0.3から50Lが好ましく、0.5から30Lが特に好ましい。
[実施例]
実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。Boc、Me、Et、i−PrおよびCyは、それぞれtert−ブトキシカルボニル基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基を表す。参考例1の出発原料であるN−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルは、EP0367130等を参考にして同様に製造した。遊離のカルボキシル基を有する化合物のガスクロマトグラフィー分析は、ジアゾメタンまたはトリメチルシリルジアゾメタンでメチルエステル体に誘導してから実施した。塩のガスクロマトグラフィー分析は、「カルボキシル基への遊離」に従って遊離のカルボキシル基に戻してから、上記の通り実施した。
[参考例1]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式
【0068】
【化11】

【0069】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル(淡黄色結晶、ガスクロマトグラフィー純度99.4%)300g(1.22mol、1.00eq)、トルエン1.5L(0.81M)、ジイソプロピルエチルアミン474g(3.67mol、3.01eq)とジイソプロピルエチルアミンの3フッ化水素錯体231g(1.22mol、1.00eq)を加え、氷冷下でスルフリルフルオリド(SO22)150g(1.47mol、1.20eq)をボンベより吹き込み、45℃で3時間攪拌した。反応終了液のガスクロマトグラフィー分析より変換率は100%であった。反応終了液に10%炭酸カリウム水溶液1.7Lを加え、酢酸エチル750mLで抽出し、回収水層を酢酸エチル250mLで再び抽出した。回収有機層を合わせて1N塩酸1.3Lで洗浄し、10%食塩水300mLで洗浄し、減圧濃縮し、真空乾燥することにより、下記式
【0070】
【化12】

【0071】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンメチルエステル(目的物の前駆体)、下記式
【0072】
【化13】

【0073】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−3,4−デヒドロ−L−プロリンメチルエステル(3,4−デヒドロ体の前駆体)と下記式
【0074】
【化14】

【0075】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−フルオロ−L−プロリンメチルエステル(シス体の前駆体)の混合物(黄色油状物質)を303g得た。収率は定量的であった(理論収量302g)。目的物の前駆体、3,4−デヒドロ体の前駆体とシス体の前駆体のガスクロマトグラフィー純度は、それぞれ86.2%、10.8%、2.4%(87:11:2)であった。
【0076】
上記で得られた目的物の前駆体、3,4−デヒドロ体の前駆体とシス体の前駆体の混合物全量303g(1.22molとする、1.00eq)のメタノール溶液[溶媒使用量1.2L(1.0M)]に、氷冷下で水酸化ナトリウム水溶液359g[水酸化ナトリウム58.6g(1.47mol、1.20eq)と水300mLから調製]を加え、室温で1時間20分攪拌した。反応終了液を減圧濃縮し、残渣をトルエン1.2Lで共沸濃縮(減圧)し、2N塩酸800mL(1.60mol、1.31eq)を加え、酢酸エチル1.2Lで抽出し、回収水層を酢酸エチル200mLで再び抽出した。回収有機層を合わせて10%食塩水300mLで洗浄し、減圧濃縮し、残渣をトルエン1.2Lと500mLで2回共沸濃縮(減圧)し、真空乾燥することにより、下記式
【0077】
【化15】

【0078】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリン(目的物)、下記式
【0079】
【化16】

【0080】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−3,4−デヒドロ−L−プロリン(3,4−デヒドロ体)と下記式
【0081】
【化17】

【0082】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−フルオロ−L−プロリン(シス体)の混合物(淡黄色結晶)を279g得た。N−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルからの2工程のトータル収率は98%であった。目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度は、それぞれ86.6%、10.7%、1.2%(88:11:1)であった。
【実施例1】
【0083】
参考例1と「塩基との塩への誘導」を参考にして同様に製造した下記式
【0084】
【化18】

【0085】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのシクロヘキシルアミン塩[淡黄色結晶の粗体、目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度はそれぞれ87.1%、10.6%、1.0%(88:11:1)]14.3g(42.9mmol)に、トルエン100mL(0.43M)とメタノール18mL(2.4M)を加え、80℃で加熱溶解し、攪拌しながら室温まで徐々に降温し、氷冷下で熟成した。析出した結晶を濾過し、真空乾燥することにより、上記式で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのシクロヘキシルアミン塩(白色結晶の精製品)を8.80g得た。回収率は62%であった。目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度は、それぞれ95.9%、2.4%、0.1%(97.5:2.4:0.1)であった。
【実施例2】
【0086】
実施例1を参考にして同様に精製した下記式
【0087】
【化19】

【0088】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのシクロヘキシルアミン塩[白色結晶の精製品、目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度はそれぞれ98.7%、0.2%、未検出(99.8:0.2:−)]7.56g(22.7mmol、1.00eq)に、1N塩酸50mL(50.0mmol、2.20eq)を加え、酢酸エチル100mLで抽出し、回収水層を酢酸エチル50mLで再び抽出した。回収有機層を合わせて水50mLで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、抽出溶媒130mLを減圧濃縮し、種結晶を加え、n−ヘプタン50mLを加え、室温で終夜攪拌し、氷冷下で熟成した。析出した結晶を濾過し、真空乾燥することにより、下記式
【0089】
【化20】

【0090】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリン(白色結晶の高純度品)を4.15g得た。回収率は78%であった。目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度は、それぞれ98.8%、0.2%、未検出(99.8:0.2:−)であった。
【実施例3】
【0091】
参考例1で製造した下記式
【0092】
【化21】

【0093】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリン[淡黄色結晶の粗体、目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度はそれぞれ86.6%、10.7%、1.2%(88:11:1)]10.0g(42.9mmol、1.00eq)に、イソプロパノール10mL(4.3M)、n−ヘプタン40mL(1.1M)とN−メチルシクロヘキシルアミン5.10g(45.1mmol、1.05eq)を加え(結晶析出)、70℃で加熱溶解し、攪拌しながら室温まで徐々に降温し、氷冷下で熟成した。析出した結晶を濾過し、真空乾燥することにより、下記式
【0094】
【化22】

【0095】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのN−メチルシクロヘキシルアミン塩(白色結晶の精製品)を7.13g得た。回収率は48%であった。目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度は、それぞれ96.6%、1.7%、0.5%(97.8:1.7:0.5)であった。
【実施例4】
【0096】
参考例1で製造した下記式
【0097】
【化23】

【0098】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリン[淡黄色結晶の粗体、目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度はそれぞれ86.6%、10.7%、1.2%(88:11:1)]を用いて「塩基との塩への誘導」を参考にして同様に製造した下記式
【0099】
【化24】

【0100】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのN−エチルシクロヘキシルアミン塩(淡黄色結晶の粗体)15.5g(42.9mmol)に、イソプロパノール10mL(4.3M)とn−ヘプタン50mL(0.86M)を加え、70℃で加熱溶解し、攪拌しながら室温まで徐々に降温し、氷冷下で熟成した。析出した結晶を濾過し、真空乾燥することにより、上記式で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのN−エチルシクロヘキシルアミン塩(白色結晶の精製品)を7.39g得た。回収率は48%であった。目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度は、それぞれ95.9%、1.9%、0.8%(97.3:1.9:0.8)であった。
【実施例5】
【0101】
参考例1で製造した下記式
【0102】
【化25】

【0103】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリン[淡黄色結晶の粗体、目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度はそれぞれ86.6%、10.7%、1.2%(88:11:1)]10.0g(42.9mmol、1.00eq)に、イソプロパノール30mL(1.4M)、n−ヘプタン30mL(1.4M)とN−イソプロピルシクロヘキシルアミン6.36g(45.0mmol、1.05eq)を加え(結晶析出)、85℃で加熱溶解し、攪拌しながら室温まで徐々に降温し、氷冷下で熟成した。析出した結晶を濾過し、真空乾燥することにより、下記式
【0104】
【化26】

【0105】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのN−イソプロピルシクロヘキシルアミン塩(白色結晶の精製品)を11.6g得た。回収率は72%であった。目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度は、それぞれ91.6%、7.0%、0.3%(92.6:7.1:0.3)であった。
【実施例6】
【0106】
参考例1で製造した下記式
【0107】
【化27】

【0108】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリン[淡黄色結晶の粗体、目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度はそれぞれ86.6%、10.7%、1.2%(88:11:1)]10.0g(42.9mmol、1.00eq)に、イソプロパノール70mL(0.61M)、n−ヘプタン26mL(1.7M)とジシクロヘキシルアミン8.16g(45.0mmol、1.05eq)を加え(結晶析出)、50℃で加熱溶解し、攪拌しながら室温まで徐々に降温し、氷冷下で熟成した。析出した結晶を濾過し、真空乾燥することにより、下記式
【0109】
【化28】

【0110】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのジシクロヘキシルアミン塩(白色結晶の精製品)を9.00g得た。回収率は51%であった。目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度は、それぞれ93.0%、5.1%、0.9%(93.9:5.2:0.9)であった。
【実施例7】
【0111】
参考例1で製造した下記式
【0112】
【化29】

【0113】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリン[淡黄色結晶の粗体、目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度はそれぞれ86.6%、10.7%、1.2%(88:11:1)]10.0g(42.9mmol、1.00eq)に、イソプロパノール100mL(0.43M)、n−ヘプタン10mL(4.3M)とジイソプロピルアミン4.55g(45.0mmol、1.05eq)を加え(結晶析出)、85℃で加熱溶解し、攪拌しながら室温まで徐々に降温し、氷冷下で熟成した。析出した結晶を濾過し、真空乾燥することにより、下記式
【0114】
【化30】

【0115】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのジイソプロピルアミン塩(白色結晶の精製品)を11.2g得た。回収率は78%であった。目的物、3,4−デヒドロ体とシス体のガスクロマトグラフィー純度は、それぞれ91.9%、6.7%、0.3%(92.9:6.8:0.3)であった。
【0116】
N−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル(L体)の代わりにN−tert−ブトキシカルボニル−シス−4−ヒドロキシ−D−プロリンメチルエステル(D体)を用いて参考例と実施例を同様に実施した結果、本発明の精製方法はD体に対しても同様に適応できることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]
【化1】

で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンを塩基との塩に誘導して再結晶を行い、遊離のカルボキシル基に戻すことを特徴とする、式[1]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの精製方法。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す]
【請求項2】
式[2]
【化2】

で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンを塩基との塩に誘導して再結晶を行い、遊離のカルボキシル基に戻すことを特徴とする、式[2]で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの精製方法。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す]
【請求項3】
請求項1または請求項2において、塩基が一般式[3]
【化3】

で示される有機塩基であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の精製方法。
[式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から12のアルキル基を表し、2つのアルキル基が共有結合により環状アミノ基を形成することもある。但し、R1、R2およびR3の3つが同時に水素原子を採ることはない]
【請求項4】
請求項3において、有機塩基が一般式[4]
【化4】

で示されるシクロヘキシルアミン類であることを特徴とする、請求項3に記載の精製方法。
[式中、Cyはシクロヘキシル基を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から8のアルキル基を表す]
【請求項5】
一般式[5]
【化5】

で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンの有機塩基塩。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から12のアルキル基を表し、2つのアルキル基が共有結合により環状アミノ基を形成することもある。但し、R1、R2およびR3の3つが同時に水素原子を採ることはない]
【請求項6】
一般式[6]
【化6】

で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−L−プロリンのシクロヘキシルアミン類塩。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。Cyはシクロヘキシル基を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から8のアルキル基を表す]
【請求項7】
一般式[7]
【化7】

で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンの有機塩基塩。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から12のアルキル基を表し、2つのアルキル基が共有結合により環状アミノ基を形成することもある。但し、R1、R2およびR3の3つが同時に水素原子を採ることはない]
【請求項8】
一般式[8]
【化8】

で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−フルオロ−D−プロリンのシクロヘキシルアミン類塩。
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。Cyはシクロヘキシル基を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1から8のアルキル基を表す]

【公開番号】特開2011−121872(P2011−121872A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278791(P2009−278791)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】