説明

光学測定方法および装置

結晶性の被測定試料の光学測定に際して、その試料に対してラマン散乱が選択則により禁止される偏光方向で励起光を入射し、金属探針を前記被測定試料に近接させて、探針先端近接部のみ局所的に選択則を緩和し、ラマン散乱が活性になるようにすることにより、探針先端近接部のみからのラマン信号を検出する。また、被測定試料に対して、励起光を照射し試料から再放射される信号光を計測する光学配置を備えた光学測定装置において、励起光または信号光の偏光状態を制限する手段と、被測定試料に金属探針を近接させる手段とを備え、前記被測定試料に金属探針を近接させることにより局所的に前記偏光状態の制限を緩和することで得られた信号光を計測する光学測定装置とすることによって,シリコンのラマン散乱光などを、光の回折限界を超える高い空間分解能で測定することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の光学顕微鏡の分解能以上の高い空間分解能で、被測定試料の光学特性、特にラマンスペクトルを測定する方法およびその方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノ構造、ナノデバイスの分野の研究開発が急速に発展しており、これらの分野において種々の試料の特性評価のため、高い分解能をもった光学計測技術が求められている。例えば、シリコンデバイスにおいては、シリコンに入る歪みは易動度等デバイス特性に大きな影響を与えるため、試料中の歪みの空間分布を高分解能で知ることは非常に重要なことである。この歪み計測の一つの手段として従来よりラマン計測による方法が知られている。このラマン計測の原理は、ラマン信号のピーク位置は歪みに応じてシフトするため、ラマン信号のピーク位置のマッピングをとれば、歪みの分布を知ることができる、というものである。
【0003】
従来、高空間分解能で分光測定を行う場合は、顕微鏡を用いた測定が行われてきた。しかし、この顕微分光法では回折限界の壁があり、空間分解能を1ミクロン以下にすることは困難である。現在シリコンデバイスにおいては、その構造サイズはサブミクロン、ナノメートルオーダーに達しているため、より分解能の高い測定手法が求められている。そのため近年、光ファイバー等の探針を用いた近接場分光計測による空間分解能を向上する試みが数多く行われている。
【0004】
しかし、この方法では、探針の先端の極微小な開口部から漏れる近接場光を用いるため、100nm以下の分解能で観測しようとすると、開口部のサイズも100nm以下にしなければならないため、きわめて大きな光量の損失が生じ、信号の大きな試料にしか適用できない等、測定に大きな困難が生じる。特にシリコンのラマン測定の場合には、光ファイバー自体がシリコンを含有しておりラマン信号を発するため妨害要因となって、測定をいっそう困難にしていた。
【0005】
この困難を解決する方法としてラマン分光の分野で提案されている技術の一つに、金属のAFM(原子間力顕微鏡)探針を用いた測定がある。この方法によると、金属探針の先端の局所的な電場により、探針先端近接部のみのラマンシグナルが増強されるため、空間分解能が向上する。この方法においては、2つの金属を極小さな隙間を空けて近接させ、その間に被測定試料を設置したときに大きな増強効果が得られる。そのため、分子や超微粒子の測定においてはある程度の成果が得られているが、固体の測定には適用することができない。それは、固体においては、上記のように2つの金属の間に被測定試料をおくことが不可能なことと、金属探針から離れた位置で励起された遠視野の信号が強く、微弱な近接場の信号を覆い隠してしまうからである。
【0006】
なお、半導体結晶中の微少な結晶歪みを検出するため、試料の透過形電子顕微鏡像から試料での結晶に関する情報を取得する結晶歪み測定法を採用し、その際に透過形電子顕微鏡像をデジタル画像に変換し、その画像の少なくとも一部の領域に対して2次元フーリエ変換を施してその領域の解析パターンを計算する技術として下記特許文献1が存在する。
【特許文献1】特開2000−65762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、近接場光学測定では、ラマン測定のような微弱光の検出がきわめて困難であるという問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に述べるような技術的経緯によって上記課題を解決する手段を見いだしたものである。即ち、単結晶基板試料に対して、選択則により禁止される偏光方向の励起光を入射する。例えば、ラマン散乱においては、単結晶シリコンの(001)面に対し、励起光の偏光方向を[100]方向にして入射し、[100]方向に偏光した散乱光のみを検出する配置にすると、波数520cm−1付近に現れる1次ラマン散乱光は選択則で禁止される。
【0009】
また、同様にラマン散乱においては、単結晶シリコンの(001)面に対し、励起光の偏光方向を[100]方向にして入射し、[100]方向に偏光した散乱光のみを検出する配置にすると、波数520cm−1付近に現れる1次ラマン散乱光は選択則で禁止される。また、単結晶シリコンの(001)面に対し、面に垂直な方向から励起光の偏光方向を[110]方向にして入射し、それと直角な方向に偏光した散乱光のみを検出する配置にすると、波数520cm付近に現れる1次ラマン散乱光は選択則で禁止される。また、(110)面に対しては、[001]方向に平行に偏光した励起光は、[001]方向に平行な偏光の波数520cm−1付近に現れるラマン散乱は禁止される。
【0010】
ここで、照射部に金属の探針を近接させると、探針先端近接部のみ選択則が緩和されラマン散乱が活性になり、さらに探針先端に誘起される表面プラズモンの電場により強度も増強される。探針から離れた部分の信号は禁制遷移であるため微弱であるが、探針に近接する部分のラマン散乱は許容されるので、探針先端部近傍の信号を分離して取り出すことが可能になる。すなわち、探針先端近接部のみからのラマン信号を検出し、高分解能を実現できる。分解能は探針先端径に依存し、探針の先端径を十分小さくすれば、ナノメートル・オーダーの分解能が得られる。
【0011】
また、先端部が励起光に対して散乱能の大きな材質で構成され、それ以外の部分が散乱能の小さな材質で構成された探針を近接させると、探針先端部で励起光が散乱される。この散乱光に対しては、偏光方向が基の励起光から回転し、また、光の進行方向が変化するために、選択則が緩和されラマン散乱が活性になり、さらに探針先端に誘起される表面プラズモンの電場により強度も増強される。探針から離れた部分の信号は禁制遷移であるため微弱であるが、探針を試料に十分に近接させておくと、探針先端からの散乱光が到達する範囲は、探針近傍に限られ、その部分のラマン散乱は許容されるので、探針先端部近傍の信号を分離して取り出すことが可能になる。この時、励起光に波長の短い光、すなわち、紫外線を用い、試料の吸収係数を増加させ、散乱光の試料内部への侵入深さを減少させることが有効である。この構成を採れば、探針先端近接部のみからのラマン信号を検出し、高分解能を実現できる。分解能は探針先端に担持した微粒子の径に依存し、微粒子の径を十分小さくすれば、ナノメートルオーダーの分解能が得られる。
【0012】
探針により選択則が緩和される様子は、理論計算で裏付けられる。図1は、回転楕円体の形状をした銀の探針先端に400nmの波長の光を入射したとき、光と探針の相互作用により誘起される近接場光の偏光方向と強度を、入射光の偏光方向(各図の楕円形の上方に示した矢印)が探針の回転軸(長軸)方向と(a)平行、(b)垂直、(c)45度斜めの各場合について計算した結果である。近接場光の偏光方向と強度は、各図中において楕円の線上の矢印の方向と長さで表されている。入射光の偏光が軸方向と平行の時は、入射偏光方向に平行な強い近接場光が誘起され、垂直の時は、入射偏光方向と平行な弱い近接場光が誘起され、一方、45度斜め方向の偏光で入射したしたときは、入射偏光方向とは平行ではない強い近接場光が誘起されることがわかる。
【0013】
したがって、ラマン散乱が禁止される偏光方向で光を入射しても、偏光方向と探針の軸との角度が例えば上記のように45度となるようにすると、誘起される近接場光は、ラマン活性な偏光方向成分を持つため、近接場光のみで誘起されるラマン散乱信号を観測することができることになる。実際の装置では、探針先端は完全に回転楕円体ではなく、微少な凹凸等が多数あるため、入射光の偏光方向と探針の軸方向を正確に制御しなくても、入射偏光方向とは異なった偏光方向の近接場が誘起される。すなわち、探針を近づけるだけでラマン選択則を緩和することができる。
【0014】
本発明は上記のようにして前記課題を解決したものであるが、より具体的には以下のような方法、及び装置によってその課題を解決する。即ち、本発明の光学測定方法は、被測定試料に対して励起光を照射し、試料から再放射される信号光を計測する光学配置を備えた光学測定方法において、前記光学配置は前記信号光が選択則により禁止される配置であり、探針を前記被測定試料に近接させて探針先端近接部のみを局所的に選択則を緩和することにより信号光を得ることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の他の光学測定方法は、被測定試料に対して励起光を照射し、試料から再放射される信号光を計測する光学配置を備えた光学測定方法において、前記光学配置は前記信号光が選択則により禁止される配置であり、先端部とそれ以外の部分で、少なくとも表面において材質が異なる探針を前記被測定試料に近接させ、信号光を計測することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記先端部は表面処理により前記それ以外の部分と表面の材質を異ならせていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記先端部は前記それ以外の部分と異なる材質の部材から成ることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記探針は、前記先端部に励起光の散乱能が大きい材質を用い、それ以外の部分は励起光に対する散乱能の小さい材質を用いていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記探針は、前記先端部にそれ以外の部分とは異なる材質からなる微粒子を担持したことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記それ以外の部分は、照射する前記励起光に対して透明な材質からなることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記それ以外の部分は、ガラス製またはプラスチック製であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記微粒子は金属微粒子であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記金属は、銀、金、白金、銅のいずれかであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記先端部及びその近傍を、前記それ以外の部分の材質の屈折率と近い屈折率を持つ液体に浸せきし、励起光の探針先端部以外での散乱を減少させて測定することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記励起光を紫外光としたことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の他の光学測定方法は、結晶性の被測定試料に対して、ラマン散乱が選択則により禁止される偏光方向で励起光を入射し、探針を前記被測定試料に近接させて、探針先端近接部のみ局所的に選択則を緩和し、ラマン散乱が活性になるようにすることにより、探針先端近接部のみからのラマン信号を検出することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の偏光方向が[100]方向で、[100]偏光の散乱光を検出することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[100]または[010]方向であって、励起光と同じ偏光方向で[001]方向に散乱される信号光を検出することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[110]または[1−10]方向で、励起光と直角な偏光方向の[001]方向へ散乱される信号光を検出することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、単結晶シリコンの(001)面に対し、面に垂直な方向から励起光の偏光方向を[110]方向にして入射して、それと直角な方向に偏光した散乱光のみを検出する配置とし、または、(110)面に対しては、[001]方向に平行に偏光した励起光を入射し、[001]方向に平行な偏光のラマン散乱を禁止することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記探針を走査することにより、ラマン信号の空間分布を測定することを特徴とする。
【0032】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記探針として、銀または金をコーティングした探針を用いることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の他の光学測定方法は、前記光学測定方法において、前記被測定試料がシリコン、ダイアモンド、ゲルマニウム、Si−Ge混晶、ZnS,ZnO,BN,BP,AlP,GaN,GaP,GaAs,InP,InAs,MSe(M=Be,Cd,Hg,Zn,Mn)のいずれか、あるいはそれらの混合結晶であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の光学測定装置は、被測定試料に対して励起光を照射し、試料から再放射される信号光を計測する光学配置を備えた光学測定装置において、励起光または信号光の偏光状態を制限する手段と、被測定試料に探針を近接させる手段とを備え、前記被測定試料に前記探針を近接させ、信号光を計測することを特徴とする。
【0035】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記探針は、先端部とそれ以外の部分で、少なくとも表面において材質が異なるものであることを特徴とする。
【0036】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記先端部は表面処理により前記それ以外の部分と表面の材質を異ならせていることを特徴とする。
【0037】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記先端部は前記それ以外の部分と異なる材質の部材から成ることを特徴とする。
【0038】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記探針は、前記先端部に励起光の散乱能が大きい材質を用い、それ以外の部分は励起光に対する散乱能の小さい材質を用いていることを特徴とする。
【0039】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記探針は、前記先端部にそれ以外の部分とは異なる材質からなる微粒子を担持したことを特徴とする。
【0040】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記それ以外の部分は、照射する前記励起光に対して透明な材質からなることを特徴とする。
【0041】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記それ以外の部分は、ガラス製またはプラスチック製であることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記微粒子は金属微粒子であることを特徴とする。
【0043】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記金属は、銀、金、白金、銅のいずれかであることを特徴とする。
【0044】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記先端部及びその近傍を、前記それ以外の部分の材質の屈折率と近い屈折率を持つ液体に浸せきし、励起光の探針先端部以外での散乱を減少させて測定することを特徴とする。
【0045】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記励起光を紫外光としたことを特徴とする。
【0046】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の偏光方向が[100]方向で、[100]偏光の散乱光を検出することを特徴とする。
【0047】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[100]または[010]方向であって、励起光と同じ偏光方向で[001]方向に散乱される信号光を検出することを特徴とする。
【0048】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[110]または[1−10]方向で、励起光と直角な偏光方向の[001]方向へ散乱される信号光を検出することを特徴とする。
【0049】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記探針を走査することにより、ラマン信号の空間分布を測定することを特徴とする。
【0050】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記探針として、銀または金をコーティングした探針を用いることを特徴とする。
【0051】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記被測定試料がシリコン、ダイアモンド、ゲルマニウム、Si−Ge混晶、ZnS,ZnO,BN,BP,AlP,GaN,GaP,GaAs,InP,InAs,MSe(M=Be,Cd,Hg,Zn,Mn)のいずれか、あるいはそれらの混合結晶であることを特徴とする。
【0052】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記探針と前記被測定試料表面との距離を変化させる手段と、前記探針を前記被測定試料表面に近接させたときの信号光強度と、離間させたときの信号光強度の差分をとる手段とを備えたことを特徴とする。
【0053】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記励起光を前記被測定試料表面にほぼ垂直に入射させ、試料表面からほぼ垂直に放射される信号光を検出する手段を備えたことを特徴とする。
【0054】
また、本発明の他の光学測定装置は、前記光学測定装置において、前記探針を前記被測定試料表面に斜め方向から近接させる手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0055】
本発明は上記のように構成することにより、近接場光学測定ではラマン測定のような微弱光の検出がきわめて困難であるという問題点を解決し、特に、金属探針を用いた近接場光学測定において、遠視野の信号が近接場の信号を覆い隠してしまい測定の空間分解能を低下させてしまう問題を解決し、従来は不可能であった、シリコンのラマン散乱光などを、光の回折限界を超える高い空間分解能で測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】回転楕円体の形状をした銀の探針先端に400nmの波長の光を入射したとき、光と探針の相互作用により誘起される近接場光の偏光方向と強度を、入射光の偏光方向が探針の回転軸(長軸)方向と(a)平行、(b)垂直、(c)45度斜めの各場合について計算した結果を示す図である。
【図2】本発明による光学測定配置の模式図を示す図である。
【図3】Si(001)面の禁制配置で、探針を試料表面から遠く離して計測したラマンスペクトル(下方グラフ)と、試料表面に探針を接触させたときのスペクトル(上方グラフ)を示すグラフである。
【図4】(a)は測定構成及び歪みSOIアイランドのエッジ付近のラマンスペクトルの変化を示すグラフであり、(b)は得られたラマンピーク端数の変化を示すグラフである。
【図5】Si基板上に直径50nmと直径40nmの銀粒子を配置し、反射スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
【図6】直径50nmの銀粒子を配置したSi基板の514.5nm、632.8nm、782nmの各励起波長におけるSiのラマンスペクトルを、銀粒子が存在するところと存在しないところについて示したグラフである。(縦軸のスケールが各グラフで異なっていることに注意)
【図7】50nmの銀粒子を230nm間隔で配置したSi基板上に、銀をコーティングしたAFM探針を接触させながら走査し、特許の方法に従い520cm−1におけるラマン信号強度をプロットしたグラフである。
【図8】本発明による他の実施例である銀粒子を嘆じした探針を用いた光学測定配置の模式図を示す図であり、主要構成は前記実施例にも用いられる模式図である。
【図9】同実施例の実験結果を示し、Siのラマンスペクトルのグラフである。
【図10】本発明の他の実施例に用いる試料構造の例を示す図である。
【図11】同試料を用いて測定を行った結果を示すグラフであり、(a)はAMF探針を用いないで測定したとき、(b)は銀端子を担持したAMF探針を用いて測定したときのグラフである。
【図12】シリコン基板中に直径約100nmの穴を開け、穴の内壁を熱酸化した試料の模式図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A部分断面図である。
【図13】図12の試料について、先端に銀微粒子を担持した探針(a)と、銀を全体にコーティングした探針(b)を用いて、穴位置を起点に走査したときのラマンピーク波数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明は、シリコンのラマン散乱光などを、光の回折限界を超える高い空間分解能で測定することを可能にする課題を、被測定試料に対して励起光を照射し、試料から再放射される信号光を計測する光学配置を備えた光学測定方法において、前記光学配置は前記信号光が選択則により禁止される配置であり、先端部とそれ以外の部分で材質が異なる探針を前記被測定試料に近接させ、信号光を計測する光学計測方法により実現し、本発明の被測定試料に対して励起光を照射し、試料から再放射される信号光を計測する光学配置を備えた光学測定装置において、励起光または信号光の偏光状態を制限する手段と、被測定試料に探針を近接させる手段とを備え、前記探針は先端部とそれ以外の部分で材質が異なるものであり、前記被測定試料に前記探針を近接させ、信号光を計測する光学計測装置によって実現した。
【実施例1】
【0058】
図2は測定配置の模式図である。銀をコーティングしたAFM探針が、ピエゾ素子に装着されており、コントローラーからの信号により、上下に振動させることが可能である。また、試料ホルダーが装着されているステージにもピエゾ素子が装着されており、コントローラーからの信号により上下、左右に駆動することができる。励起レーザー光は対物レンズで試料面上に集光され、集光部に銀をコーティングしたAFM探針を近接させる。AFM探針の動作はレーザーダイオードの光とディテクターによって制御される。同図のように、励起用のレーザー光は[100]に偏光するように入射し、対物レンズで集光した散乱光は[100]に偏光した散乱光のみを分光器に導き、分光する。
【0059】
より具体的には、Siの(001)基板に対して、514.5nmあるいは、632.8nmのレーザー光を偏光方向が[100]方向になるように垂直に入射し、対物レンズにより試料面上で1〜2μmに絞り、銀をコーティングした先端径100nmのAFM探針を置く。散乱された光は、同じく対物レンズで集光され、分光器へ導かれるという測定配置をとる。
【0060】
この配置で、金属探針を試料表面から離したとき、試料表面から500nm程度離した際に、金属探針を試料表面に近接させたときのラマンスペクトルを比較したのが図3である。即ち、Si(001)面の禁制配置で、銀探針を試料表面から遠く離して計測したラマンスペクトル(下方グラフ)と、試料表面から500nm程度離したとき(中間グラフ)、銀探針を接触させた時のスペクトル(上方グラフ)を示している。金属探針無しでは、波数520cm−1のピークがほぼ抑制されるが、金属探針を接触させたときは、520cm−1のピークを観測することができる。この金属探針を近接させたときのピークは、探針先端で局所的に選択則が破れたことに起因し、探針先端の極近くの試料からの信号である。一方、探針を500nm離したときも、接触させたときよりはかなり弱いがピークが現れる。これは、励起光が金属探針に当たった時、偏光方向が近接場光だけでなく遠視野光も若干の影響を受けることによる。したがって、近接場光の効果だけを取り出すには、金属探針を試料表面に近接させたときの信号光強度と、距離を離したときの信号強度の差分をとることで、近接場による信号のみを取り出すことが可能で、これにより、空間分解能、S/N比を向上させることができる。例えば、ピエゾ素子を用いて試料を上下に10Hz、500nmの振幅で振動させ、これと同期してCCDの信号をコンピューターに取り込み、試料が探針先端に近接した時と、離れたときの信号の差を100回積算することにより、SN比を10倍改善することができた。
【実施例2】
【0061】
本測定法の空間分解能が高いことを実証するために、次の測定を行った。測定する試料は、図4(a)のように、40nm厚のSiGe(Ge組成28%)の(001)面の上にSiを14nmの厚さにエピタキシャル成長した、ひずみSOI(Silicon on Insulator)薄膜を幅5μmの縞状にエッチング加工したものである。ここに、偏光方向が[100]に平行になるように514.5nmのレーザー光を入射する。偏光素子を用いて偏光方向が[100]に平行な散乱光のみを検出する。なお、図4(a)は歪みSOIアイランドのエッジ付近のラマンスペクトルの変化を示しており、(b)はラマンピーク波数の変化を示している。
【0062】
SiGeとSiは格子定数が違うため、Siの格子が歪みラマンスペクトルのピーク位置が通常の520cm−1から、515cm−1にシフトする。そこで、515cm−1のピークをモニターしながら、縞の端から内部に向けて探針を走査した。すると、パターン端に探針があるときは、ラマンのピークは、516cm−1であるが、内部に向かうにつれ、515cm−1となった。空間分解能はおおよそ100nmである。
【実施例3】
【0063】
実施例2と同様の測定において、先端径50nmの探針を用いたところ、空間分解能はおおよそ50nmとなった。
【実施例4】
【0064】
Si基板上に直径50nmと直径40nmの銀粒子を配置し、反射スペクトルを測定したところ、図5の結果が得られた。50nmの銀粒子の反射スペクトルにおける600nm付近のピークは、プラズモンが励起されたためで、散乱光の偏光方向が変化する。一方、40nmの銀粒子では、このようなピークは観測されず、偏光方向は保存される。
【0065】
この配置で、波長632.8nmの励起光を用いて、励起光の偏光方向を[100]方向にして入射し、[100]方向に偏光した散乱光のみを検出する配置(520−1cmのラマンピークに対しては禁制配置となる)で、ラマンスペクトルを測定したところ、直径50nmの銀粒子についてのみ、増強効果が得られた。これは、50nmの銀粒子により励起光の偏光方向が変化し、選択則が緩和されたためである。
【0066】
図6には、直径50nmの銀粒子を配置したSi基板の514.5nm、632.8nm、782nmの各励起波長におけるSiのラマンスペクトルを、銀粒子が存在するところと存在しないところについて示したものである。520cm−1のピークは、633nm励起の時のみ銀粒子により増強されている。これは、図5の反射スペクトルからわかるように、514.5nm、782nmの波長では、励起光と銀粒子の相互作用が小さく、偏光方向が変化しないためである。なお、950cm−1付近のピークはSiにおける、2次の光学フォノンによるピークであるが、このピークは今回の光学配置では許容遷移であるため、偏光方向による強度変化は起こらないはずで、グラフからわかるように、実際にそのことが確認されている。
【0067】
以上の結果は、Si基板上の銀粒子に対して得られたものだが、金属探針に対しても適用することができる。即ち、反射率測定で、励起光と金属探針が相互作用する波長がわかり、測定に適した励起光波長が予測できる。また、実施例1で示された金属探針による遠視野光の偏光に対する影響も、励起波長を選択することにより抑えることができる。
【0068】
次に、50nmの銀粒子を230nm間隔で配置したSi基板上に、銀をコーティングしたAFM探針を接触させながら、先の方法に従い520cm−1におけるラマン信号強度を計測した。励起波長は782nmである。この励起波長を選んだのは、上記実験結果から得られたように、銀粒子そのものによる偏光方向の影響を抑え、AFM探針による近接場のみの影響を取り出すことができる波長であるからである。
【0069】
図7のグラフに示すように、AFM探針を走査し、探針が銀の粒子上に来たときは、Si表面に、AFM探針による近接場の影響が届かないためラマン信号の増強は見られないが、AFM探針が銀粒子の上にないときは、AFM探針による近接場の影響のためラマン信号が増強される。グラフから空間分解能は100nm以下であることがわかる。
【実施例5】
【0070】
図8は本発明の他の実施例を示し、前記各実施例においては本発明における探針を被測定試料に近接させて探針先端近接部のみを局所的に選択則を緩和する手段として、先端部とそれ以外の部分で、少なくとも表面において材質が異なる探針を前記被測定試料に近接させ、信号光を計測する手段を採用したものにおいて、探針先端部近接部は探針の表面に銀をコーティングする等によって少なくとも表面において材質を異ならせるようにしたものであるが、図8に示す実施例においては、探針先端部に銀、金、白金、銅等の金属微粒子を担持することによって少なくとも表面において材質を異ならせるようにしている。
【0071】
図8にはその測定配置図を示しており、この測定配置図は前記実施例1〜4においても、上記のように探針先端部及びその近傍以外の構成は同様に適用することができる。図8において、励起レーザー光は対物レンズで試料面上に集光され、ナノニクス社より購入した、先端部に直径50nm程度の銀粒子を担持した石英製探針を近接させる。探針の動作はレーザーダイオードの光とディテクターによって制御される。図中の拡大図のように、励起用のレーザー光は試料面内の[110]に偏光するように入射し、対物レンズで集光した散乱光はそれと直角方向に偏光した散乱光のみを分光器に導き、分光する。尚、励起光は紫外線を用いても良い。
【0072】
Siの(001)基板に対して、波長364nmのレーザー光を偏光方向が[110]方向になるように垂直に入射し、対物レンズにより試料面上で1〜2μmに絞り、直径50nm程度の銀粒子を担持した探針を近接させる。また、試料表面にはグリセロール液を滴下し、探針の励起光が照射される部分が浸せきされる様にしておく。これは、グリセロールの屈折率が石英と等しいため、探針先端の銀粒子以外の部分で光が散乱されることを抑制するためである。試料で散乱された信号光は、同じく対物レンズで集光され、分光器へ導かれるという測定配置をとる。364nmの励起光に対するシリコンの吸収係数は極めて大きく、光は10nm程度しかSi中に進入することができない。よって、空間分解能が良くなることが期待される。
【0073】
この測定装置系で、探針を試料表面に近接させたときと、試料表面から離したときの、Si基板のラマンスペクトルを比較したのが図9である。即ち、Si(001)面の禁制配置で、探針を試料表面から遠く離して計測したラマンスペクトル(下方グラフ)と、試料表面に探針を接触させた時のスペクトル(上方グラフ)を示している。探針無しでは、波数520cm−1のピークが抑制されるが、探針を接触させたときは、520cm−1のピークを観測することができる。この探針を近接させたときのピークは、探針先端で散乱された励起光に対しては選択則が破れたことに起因する。図9は上記のように銀粒子を担持した探針を基板に近接したときと離したときのSiのラマンスペクトルであるが、Siの520cm−1のピークは探針がないと強度が弱いことがわかる。また、800−1200cm−1のピークはグリセロールに起因する。
【0074】
なお、被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であるとき、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[100]または[010]方向であって、励起光と同じ偏光方向で[001]方向に散乱される信号光を検出することにより実施することができる。また、同被測定試料に対して、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[110]または[1−10]方向で、励起光と直角な偏光方向の[001]方向へ散乱される信号光を検出することによって実施することもできる。また、単結晶シリコンの(001)面に対し、面に垂直な方向から励起光の偏光方向を[110]方向にして入射して、それと直角な方向に偏光した散乱光のみを検出する配置とし、または、(110)面に対しては、[001]方向に平行に偏光した励起光を入射し、[001]方向に平行な偏光のラマン散乱を禁止することによっても実施することができる。
【実施例6】
【0075】
図10に示すように、(110)面のSOI基板に、幅400nm、厚さ100nmのシリコンの帯が形成された試料において、直径50nmの銀粒子を担持したAFM探針を用いた顕微ラマンの測定を行った。シリコンの帯はSiO2で挟まれており、歪んでいると考えられ、520−1cmのシリコンのラマンピークはシフトしていると期待される。
【0076】
励起波長は364nmである。対物レンズで集光された励起光のスポット径は1μm程度で、帯の幅よりも大きい。測定配置は実施例5と同様である。スポットの中心位置を50nm間隔でシリコンの帯に直角な方向に走査した時、探針を用いたときと用いないときのラマン信号のピーク位置をスポットの中心位置の関数として図11にプロットした。探針がないと、シリコンの帯の部分とそれ以外の部分でほとんどピーク位置が変わらない。これは、励起光のビームスポット径が1μmと帯の幅より大きいため、空間分解能が十分でないためである。一方銀粒子を担持したAFM探針をもちいると、ピーク位置がシリコンの帯の部分とそれ以外でピーク位置がシフトしていることがわかる。これは、銀粒子を担持した探針を用いることで、空間分解能が向上していることがわかる。
【実施例7】
【0077】
銀粒子を担持した探針を用いたラマン測定の空間分解能を確認するため、図12のようにシリコン基板中に直径100nmの穴を開け、内壁を熱酸化することにより応力を発生させた試料を、先端に銀微粒子を担持した探針と、銀を全体にコーティングした探針を用いてラマン測定を行い、探針を走査したときのラマンピークの位置の変化を測定した。結果を、下のグラフに示す。測定の配置は、実施例6と同様である。探針位置を穴の上から離していくと、ラマンピークの位置が520.7cm−1から520.3cm−1へと変化していく。これは、穴の周囲のシリコンには応力がかかっているが、穴から離れるにつれ応力が小さくなっていくことを反映している。励起光のスポットサイズは1μm程度であるから、探針を用いたことにより、空間分解能が向上していることがわかる。
【0078】
さらに、銀粒子を担持した探針を用いた場合の方が、銀をコーティングした探針を用いた場合よりも、探針を走査したときピーク位置の変化が急峻で、空間分解能が良いことがわかる。これは、銀粒子を担持した探針では、先端部分のみで励起光が散乱されるためである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は近年研究開発が進んでいるナノ構造、ナノデバイスの分野等の種々の試料の特性評価のため、高い分解能をもった光学計測技術として広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定試料に対して励起光を照射し、試料から再放射される信号光を計測する光学配置を備えた光学測定方法において、
前記光学配置は前記信号光が選択則により禁止される配置であり、
探針を前記被測定試料に近接させて探針先端近接部のみを局所的に選択則を緩和することにより信号光を得ることを特徴とする光学測定方法。
【請求項2】
被測定試料に対して励起光を照射し、試料から再放射される信号光を計測する光学配置を備えた光学測定方法において、
前記光学配置は前記信号光が選択則により禁止される配置であり、
先端部とそれ以外の部分で、少なくとも表面において材質が異なる探針を前記被測定試料に近接させ、信号光を計測することを特徴とする光学測定方法。
【請求項3】
前記先端部は表面処理により前記それ以外の部分と表面の材質を異ならせていることを特徴とする請求項2記載の光学測定方法。
【請求項4】
前記先端部は前記それ以外の部分と異なる材質の部材から成ることを特徴とする請求項2記載の光学測定方法。
【請求項5】
前記探針は、前記先端部に励起光の散乱能が大きい材質を用い、それ以外の部分は励起光に対する散乱能の小さい材質を用いていることを特徴とする請求項2記載の光学測定方法。
【請求項6】
前記探針は、前記先端部にそれ以外の部分とは異なる材質からなる微粒子を担持したことを特徴とする請求項4記載の光学測定方法。
【請求項7】
前記それ以外の部分は、照射する前記励起光に対して透明な材質からなることを特徴とする請求項6記載の光学測定方法。
【請求項8】
前記それ以外の部分は、ガラス製またはプラスチック製であることを特徴とする請求項6記載の光学測定方法。
【請求項9】
前記微粒子は金属微粒子であることを特徴とする請求項6記載の光学測定方法。
【請求項10】
前記金属は、銀、金、白金、銅のいずれかであることを特徴とする請求項9記載の光学測定方法。
【請求項11】
前記先端部及びその近傍を、前記それ以外の部分の材質の屈折率と近い屈折率を持つ液体に浸せきし、励起光の探針先端部以外での散乱を減少させて測定することを特徴とする請求項5記載の光学測定方法。
【請求項12】
前記励起光を紫外光としたことを特徴とする請求項1記載の光学測定方法。
【請求項13】
結晶性の被測定試料に対して、ラマン散乱が選択則により禁止される偏光方向で励起光を入射し、
探針を前記被測定試料に近接させて、探針先端近接部のみ局所的に選択則を緩和し、ラマン散乱が活性になるようにすることにより、探針先端近接部のみからのラマン信号を検出することを特徴とする光学測定方法。
【請求項14】
前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の偏光方向が[100]方向で、[100]偏光の散乱光を検出することを特徴とする請求項13記載の光学測定方法。
【請求項15】
前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[100]または[010]方向であって、励起光と同じ偏光方向で[001]方向に散乱される信号光を検出することを特徴とする請求項13記載の光学測定方法。
【請求項16】
前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[110]または[1−10]方向で、励起光と直角な偏光方向の[001]方向へ散乱される信号光を検出することを特徴とする請求項13記載の光学測定方法。
【請求項17】
単結晶シリコンの(001)面に対し、面に垂直な方向から励起光の偏光方向を[110]方向にして入射して、それと直角な方向に偏光した散乱光のみを検出する配置とし、または、(110)面に対しては、[001]方向に平行に偏光した励起光を入射し、[001]方向に平行な偏光のラマン散乱を禁止することを特徴とする請求項13記載の光学測定方法。
【請求項18】
前記探針を走査することにより、ラマン信号の空間分布を測定することを特徴とする請求項13記載の光学測定方法。
【請求項19】
前記探針として、銀または金をコーティングした探針を用いることを特徴とする請求項3記載の光学測定方法。
【請求項20】
前記被測定試料がシリコン、ダイアモンド、ゲルマニウム、Si−Ge混晶、ZnS,ZnO,BN,BP,AlP,GaN,GaP,GaAs,InP,InAs,MSe(M=Be,Cd,Hg,Zn,Mn)のいずれか、あるいはそれらの混合結晶であることを特徴とする請求項1記載の光学測定方法。
【請求項21】
被測定試料に対して励起光を照射し、試料から再放射される信号光を計測する光学配置を備えた光学測定装置において、
励起光または信号光の偏光状態を制限する手段と、
被測定試料に探針を近接させる手段とを備え、
前記被測定試料に前記探針を近接させ、信号光を計測することを特徴とする光学測定装置。
【請求項22】
前記探針は、先端部とそれ以外の部分で、少なくとも表面において材質が異なるものであることを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。
【請求項23】
前記先端部は表面処理により前記それ以外の部分と表面の材質を異ならせていることを特徴とする請求項22記載の光学測定方法。
【請求項24】
前記先端部は前記それ以外の部分と異なる材質の部材から成ることを特徴とする請求項22記載の光学測定方法。
【請求項25】
前記探針は、前記先端部に励起光の散乱能が大きい材質を用い、それ以外の部分は励起光に対する散乱能の小さい材質を用いていることを特徴とする請求項24記載の光学測定装置。
【請求項26】
前記探針は、前記先端部にそれ以外の部分とは異なる材質からなる微粒子を担持したことを特徴とする請求項24記載の光学測定装置。
【請求項27】
前記それ以外の部分は、照射する前記励起光に対して透明な材質からなることを特徴とする請求項24記載の光学測定装置。
【請求項28】
前記それ以外の部分は、ガラス製またはプラスチック製であることを特徴とする請求項24記載の光学測定装置。
【請求項29】
前記微粒子は金属微粒子であることを特徴とする請求項26記載の光学測定装置。
【請求項30】
前記金属は、銀、金、白金、銅のいずれかであることを特徴とする請求項29記載の光学測定装置。
【請求項31】
前記先端部及びその近傍を、前記それ以外の部分の材質の屈折率と近い屈折率を持つ液体に浸せきし、励起光の探針先端部以外での散乱を減少させて測定することを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。
【請求項32】
前記励起光を紫外光としたことを特徴とする請求項22記載の光学測定装置。
【請求項33】
前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の偏光方向が[100]方向で、[100]偏光の散乱光を検出することを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。
【請求項34】
前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[100]または[010]方向であって、励起光と同じ偏光方向で[001]方向に散乱される信号光を検出することを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。
【請求項35】
前記被測定試料がダイアモンド構造または閃亜鉛構造の結晶構造を持つ(001)方位の平板であり、励起光の試料への入射方向が[00−1]で偏光方向が[110]または[1−10]方向で、励起光と直角な偏光方向の[001]方向へ散乱される信号光を検出することを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。
【請求項36】
前記探針を走査することにより、ラマン信号の空間分布を測定することを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。
【請求項37】
前記探針として、銀または金をコーティングした探針を用いることを特徴とする請求項23記載の光学測定装置。
【請求項38】
前記被測定試料がシリコン、ダイアモンド、ゲルマニウム、Si−Ge混晶、ZnS,ZnO,BN,BP,AlP,GaN,GaP,GaAs,InP,InAs,MSe(M=Be,Cd,Hg,Zn,Mn)のいずれか、あるいはそれらの混合結晶であることを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。
【請求項39】
前記探針と前記被測定試料表面との距離を変化させる手段と、
前記探針を前記被測定試料表面に近接させたときの信号光強度と、離間させたときの信号光強度の差分をとる手段とを備えたことを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。
【請求項40】
前記励起光を前記被測定試料表面にほぼ垂直に入射させ、試料表面からほぼ垂直に放射される信号光を検出する手段を備えたことを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。
【請求項41】
前記探針を前記被測定試料表面に斜め方向から近接させる手段を備えたことを特徴とする請求項21記載の光学測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【国際公開番号】WO2005/024391
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513678(P2005−513678)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012840
【国際出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】