説明

光学測定用セル

【課題】製造コストの削減を図りつつ、セル長を変更することができ、スペーサを確実に所望の位置に位置決めできるセルを提供する。
【解決手段】流路を挟む一対の光学窓23を有するセル100であって、収容凹部11、並びに収容凹部11に連通する液導入部及び液導出部が設けられたセル本体10と、収容凹部11に収容され、一対の光学窓23を形成する一対の透光部材20、21と、一対の透光部材20、21同士の対向面20a、21a間の距離を定めるスペーサ30と、透光部材20、21及びスペーサ30を収容凹部11の底面11dに向かって押圧して、流路を形成する押圧機構80とを具備し、一対の透光部材20、21同士の対向面20a、21aの少なくとも一方に、スペーサ30に対応する形状の位置決め凹部22が設けられており、位置決め凹部22にスペーサ30がはまって略位置決めされるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体等の製造工程において、フッ酸(HF)等の薬液の濃度等を測定するために用いられる光学測定用セルに関し、特に、被検液が流れる流路を挟む一対の光学窓を有する光学測定用フローセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のフローセルは、半導体製造装置に設けられた薬液配管に接続されている。そして、このフローセルの一方の光学窓へ測定光が照射されて、他方の光学窓から出た透過光が受光される。さらに、被検液の透過光強度から当該被検液に含まれる所定成分の濃度等が算出されて、薬液の濃度制御が行われる。
【0003】
従来、このフローセルは、図10に示すように、液導入部及び液導出部に繋がる流路を内部に形成するように、複数の透光性部材を溶着又は分子結合等で固着させて一体成形されている。
【0004】
ところが、この溶着又は分子結合等の固着処理に対する加工費は高く、製造コストが高くなってしまうという問題がある。特に、フッ酸(HF)等の薬液に対して耐蝕性を有する材質(例えばサファイア等)を用いた場合、材質自体が高価であることに加え、サファイアに対する加工費が高価であるため、さらに製造コストが高くなってしまう。また、透光性部材同士が固着されているために、フローセルごとにセル長が決まっており、異なるセル長で測定したい場合には、別のフローセルを用意する必要があり、費用が掛かるという問題もある。
【0005】
これに対して、特許文献1に示すように、固着ではなく、挟持によってフローセルを組み立てたものが考えられている。具体的に言えば、一対の光透過部が所定の間隔で対向配置され、その一対の光透過部の間に、これらを所定の間隔(セル長)に設定するためのスペーサが介在しており、それらを配設した枠体が一対の蓋板で挟持してネジ止め連結されている。このようなものであれば、スペーサの長さを設定して、セル長を決めることができる。
【0006】
しかしながら、挟持されたスペーサが、フローセルの持ち運び又は取り付け時の振動又は衝撃、或いは測定時の被検液の圧力等により位置ずれしてしまい、その結果、流路形状が変化したり、測定光の光路上のような不適当な位置にスペーサが入り込んだりしてしまい、測定誤差が発生するという問題がある。
【0007】
また、フローセルの組立工程において、スペーサを光透過部の間に配置するときに、光透過部に対してスペーサをどこに配置するべきなのかが判断しにくく、さらに、スペーサを配置したり、一対の光透過部の間に挟み込んで固定したりする時に、スペーサが位置ずれしてしまうという問題がある。従って、スペーサの組立作業が難しく、所望の流路形状を形成することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−68746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題を解決すべく、製造コストの削減を図りつつ、セル長を変更することができるとともに、スペーサを所望の位置に確実に位置決めできる光学測定用セルを提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係る光学測定用セルは、被検液が収容される流路を挟む一対の光学窓を有する光学測定用セルであって、底面の一部に貫通孔が設けられた収容凹部、並びに当該収容凹部の内側周面に連通する液導入部及び液導出部が設けられたセル本体と、前記収容凹部に収容され、前記一対の光学窓を形成する一対の透光部材と、前記一対の透光部材同士の対向面それぞれに接触し、当該対向面間の距離を定めるスペーサと、前記一対の透光部材及び前記スペーサを、前記収容凹部の底面に向かって押圧して密着させ、前記一対の透光部材間に前記液導入部及び前記液導出部に繋がる流路を形成する押圧機構とを具備し、前記一対の透光部材同士の対向面の少なくとも一方に、前記スペーサに対応する形状の位置決め凹部が設けられており、当該位置決め凹部に前記スペーサがはまって略位置決めされるものである。なお、「略位置決めされる」とは、スペーサが位置決め凹部にガタなくはまって位置決めされることだけではなく、測定に支障のない範囲で、スペーサが位置決め凹部に若干のガタつきをもって位置決めされることを含む。
【0011】
このようなものであれば、押圧機構によって各透光部材及びスペーサを押圧して密着させるので、コストの高い固着処理を行う必要がなく、製造コストを抑えることができる。また、各透光部材及びスペーサが固着されず、押圧機構によって部材を押圧して密着させているので、スペーサを厚みや形状等が異なるスペーサに変更することができ、セル長を変更することができる。さらに、透光部材に位置決め凹部が設けられているので、スペーサを位置決め凹部に嵌めることができ、外部からの振動、衝撃や被検液の圧力等によってスペーサが、位置決め凹部が設けられた透光部材に対してずれてしまうことを防止できる。また、スペーサを所望の位置に確実に位置決めでき、所望の流路形状を形成することができる。加えて言えば、位置決め凹部であれば切削又は研磨等によって形成でき、固着等によって位置決め用の部材を別途取り付ける必要がないので、製造コストを抑えることもできる。
【0012】
前記位置決め凹部が、前記対向面の外縁部に設けられるとともに、前記位置決め凹部の底面が、前記透光部材の側面に繋がる段形状として形成されており、前記スペーサが、前記収容凹部の内側周面及び当該内側周面に対向する位置決め凹部の側面の間に挟まれて位置決めされるものであれば、流路をセルの中央部に形成することができる。また、位置決め凹部が外縁部に設けられているので、位置決め凹部が対向面の中央部に設けられている場合よりも、研磨によって形成しやすい。
【0013】
組立工程において、既に配置された透光部材の位置決め凹部の位置を確認して、スペーサを確実に位置決めするためには、前記位置決め凹部が、前記収容凹部の底面側に配置された透光部材の対向面に設けられているものが望ましい。
【0014】
前記収容凹部が、平面視において略円形状をなし、前記一対の透光部材それぞれが、平面視において前記収容凹部にはまる略円形状であり、前記スペーサが、平面視において前記一対の透光部材と略同一円の部分円弧形状をなす側面を有する一対の部分円弧板であり、 前記位置決め凹部が、平面視において、前記スペーサとそれぞれ略同一形状で設けられているとともに、前記液導入部及び前記液導出部を挟んで、前記対向面における外縁部に形成されているものであれば、各部材が主に円形状によって形成されているので、加工が簡単であり、製造コストを抑えることができる。また、Oリング等のシール部材によってシールしやすいという利点もある。さらに、スペーサとして一対の部材のいずれか一方を用いる場合よりも、一対の部材を用いた方が、部材にかかる面圧を低減することができるので、スペーサの破損を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明によれば、製造コストの削減を図りつつ、セル長を変更することができるとともに、スペーサを所望の位置に確実に位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における光学測定用フローセルを用いた模式図。
【図2】同実施形態における光学測定用フローセルを示す斜視図。
【図3】同実施形態における光学測定用フローセルの背面図。
【図4】同実施形態における光学測定用フローセルの縦断面部分拡大図。
【図5】同実施形態における光学測定用フローセルの横断面拡大図。
【図6】同実施形態における収容凹部が設けられた透光部材を示す図。
【図7】同実施形態におけるスペーサを示す平面図。
【図8】同実施形態における光学測定用フローセルを示す分解斜視図。
【図9】他の実施形態におけるスペーサを示す図。
【図10】従来のフローセルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態に係る光学測定用フローセル100について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る光学測定用フローセル100は、図1に示すように、半導体製造装置に設けられた配管Lに接続されて、フッ酸等の薬液(被検液)の濃度等を測定するために用いられる。また、フローセル100は一対の光学窓23を有し、その光学窓23は被検液が流れる流路を挟んで互いに対向している。そして、光源からの光が一方の光学窓23から被検液に照射され、他方の光学窓23から出た透過光が、光検出部によって受光される。そしてその光検出部からの光強度信号を受信した演算部により、被検液に含まれる所定成分の濃度が算出される。このようにして得られた濃度を用いて、薬液の濃度等が制御される。
【0019】
具体的には、光学測定用フローセル100は、図2〜5に示すように、フローセル本体10と、一対の透光部材20、21と、スペーサ30と、押圧機構80とを具備している。
【0020】
フローセル本体10は、図2に示すように、概略直方体形状をなすものであり、図4に示すように、前面に収容凹部11と、収容凹部11の内側周面11cに連通する液導出部13及び液導入部14とが設けられている。フローセル本体10は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いて形成されている。なお、セル内で気泡が留まってしまうのを防止するため、被検液は下部の液導入部14から導入され、上部の液導出部13から導出される。
【0021】
収容凹部11は、一対の透光部材20、21及びスペーサ30を内部に収容するためのものである。そして、収容凹部11は、図3に示すように、略円筒形(平面視において略円形状)であり、その底面11dの中央部に光を通過させるための貫通孔11aと、底面11dの外周部に円環溝11bとが設けられている。収容凹部11、貫通孔11a及び円環溝11bは、平面視において同心円状に形成されている。
【0022】
液導出部13は、収容凹部11から被検液を導出するためのものである。そして、この液導出部13は、図4に示すように、一端が収容凹部11の内側周面11cの上部に開口し、他端が外部配管Lに接続されている内部流路13aを有している。そして、液導出部13の内部流路13aは、フローセル本体10の上面及び下面に垂直、かつ収容凹部11の略円形状の中心を通る一直線状に形成されている。さらに液導出部13の上部が継手としての機能を有している。
【0023】
液導入部14は、収容凹部11に被検液を導入するためのものである。そして、この液導入部14は、図4に示すように、一端が収容凹部11の内側周面11cの下部に開口し、他端が外部配管Lに接続されている内部流路14aを有している。そして、液導入部14の内部流路14aは、フローセル本体10の上面及び下面に垂直、かつ収容凹部11の略円形状の中心を通る一直線状に形成されている。さらに、液導入部14の下部が継手としての機能を有している。また、液導出部13の開口13b及び液導入部14の開口14bは、収容凹部11の略円形状の中心を挟んで対向している。
【0024】
一対の透光部材20、21は、図4及び図5に示すように、収容凹部11に収容されて、所定の距離で対向配置されてフローセル100の一対の光学窓23を形成するものである。そして、この一対の透光部材20、21は、収容凹部11の底面11d側に収容される第1透光部材20と、収容凹部11の開口面側に収容される第2透光部材21から構成される。第1透光部材20及び第2透光部材21は、平面視において略同一形状であり、図6に示すように、それぞれ収容凹部11にはまる略円板形状である。図4及び図5に示すように、各透光部材20、21が収容凹部11に収容された状態において、第1透光部材20の下面20c(対向面20aの反対側の面)は収容凹部11の底面11dと接触するとともに、第1透光部材20の対向面20a及び第2透光部材21の対向面21aそれぞれが収容凹部11の底面11dとそれぞれ平行になる。
【0025】
また、第1透光部材20の厚みについて、液導出部13の開口13b及び液導入部14の開口14bとの関係で言うと、図4に示すように、収容凹部11に第1透光部材20が収容された状態において、液導出部13の開口13b及び液導入部14の開口14bが、第1透光部材20によってふさがれないように設定されている。すなわち、収容凹部11の底面11dから、液導出部13の開口13b及び液導入部14の開口14bにおける収容凹部11の開口面側の端までの距離よりも、第1透光部材20の厚みが薄くなるように、第1透光部材20の厚みと、液導出部13の開口13b及び液導入部14の開口14bの位置、形状又は大きさとが相対的に設定されている。なお、一対の透光部材20、21は、フッ酸(HF)等の薬品への耐蝕性、押圧に耐える強度、透光性に優れたサファイアを用いて形成される。
【0026】
スペーサ30は、図4及び図5に示すように、一対の透光部材20、21の対向面20a、21aそれぞれに接触して、対向面20a、21a同士を互いに平行にするとともに、一対の透光部材20、21の対向面20a、21a間の距離を定めるためのものである。また、図7に示すように、スペーサ30は、互いに同一形状である一対の部分円弧板である。この一対の部分円弧板それぞれは、湾曲している外側面30aと、直線状の内側面30bとから形成される。そして、その外側面30aは、平面視において一対の透光部材20、21と略同一円(収容凹部11の略同一円)の部分円弧形状をなしている。スペーサ30は、フッ酸(HF)等の薬液への耐蝕性、押圧に耐える強度に優れるサファイアを用いて形成される。
【0027】
押圧機構80は、図3〜5に示すように、収容凹部11の底面11dから順次配置された第1透光部材20及びスペーサ30及び第2透光部材21を、収容凹部11の底面11dに向かって押圧して密着させ、一対の透光部材20、21及びスペーサ30の間に液導出部13及び液導入部14に繋がる流路を形成するためのものである。そして、押圧機構80は、フローセル本体10を挟む第1挟持板50及び第2挟持板60と、第1挟持板50及び第2透光部材21の間に介在する傾斜リング44と、各挟持板を連結するための例えばボルトである連結部材70とを具備している。なお、フローセル本体10の収容凹部11の周囲には、連結部材70を挿通させるための挿通孔16(ここでは4つ)が前面から背面に貫通している。
【0028】
第1挟持板50は、図3〜5に示すように、フローセル本体10の前面側に取り付けられて、収容凹部11に収容された各部材を抑えるためのものである。第1挟持板50の上部には、光を通す貫通孔51と、連結部材70を挿通させる挿通孔52(ここでは4つ)が設けられている。貫通孔51は、収容凹部11の貫通孔11aに対応する位置に設けられている。挿通孔52それぞれは、フローセル本体10の挿通孔16に対応する位置に設けられている。また、第1挟持板50の下部には、フローセル100を外部装置等に取り付けるための孔が設けられている。
【0029】
第2挟持板60は、図3〜5に示すように、フローセル本体10の背面側に取り付けられるものであり、フローセル本体10の背面よりも一回り小さい略矩形板である。また、第2挟持板60に光を通す貫通孔61、及び連結部材70を螺合させるめねじ孔62(ここでは4つ)が設けられている。貫通孔61は、収容凹部11の貫通孔11aに対応する位置に設けられている。めねじ孔62それぞれは、フローセル本体10の挿通孔16に対応する位置に設けられている。
【0030】
傾斜リング44は、図4及び図5に示すように、第1挟持板50及び第2透光部材21それぞれに接触して、第1挟持板50から第2透光部材21に押圧力を伝えるためのものである。具体的に、この傾斜リング44は、概略円筒形状であり、その外側周面、及び第2透光部材21に接する底面の一部を、斜めに切り欠いて形成されたテーパ状の傾斜面を有している。また、傾斜リング44の内径は収容凹部11の貫通孔11aの径と略一致している。さらに、収容凹部11に、第1透光部材20、スペーサ30、第2透光部材21、傾斜リング44を順次収容した高さが、収容凹部11の深さよりも高くなるように、傾斜リング44の厚みが設定されている。つまり、傾斜リング44の一部が、収容凹部11からはみ出るように設定されている。
【0031】
さらに、図4及び図5に示すように、傾斜リング44の傾斜面と、第2透光部材21の上面21b(対向面21aの反対側の面)と、収容凹部11の内側周面11cとの間に、Oリング43等のシール部材が配置される。そして、傾斜リング44が、収容凹部11の底面11dに向かって押圧されると、Oリング43がつぶれる。この状態において、Oリング43及び第2透光部材21の上面21bが気密されるように密着する。一方でOリング43及び収容凹部11の内側周面11cが気密されるように密着する。その結果、流路を流れる被検液が、各透光部材20、21及びスペーサ30の間から収容凹部11の内側周面11cまで漏れ出した場合であっても、外部への液リークを防ぐことができる。なお、このOリング43は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を用いて形成される。
【0032】
そして、図5及び図6に示すように、一対の透光部材20、21同士の対向面20a、21aの少なくとも一方(ここでは、第1透光部材20の対向面20a)に、スペーサ30に対応する形状の位置決め凹部22が設けられている。この位置決め凹部22は、スペーサ30をはめて略位置決めするためのものである。具体的には、収容凹部11に第1透光部材20が収容された状態において、位置決め凹部22は、液導出部13及び液導入部14を挟むように、対向面20aの外縁部の両端にそれぞれ設けられている。そして、位置決め凹部22の底面22bが、透光部材の側面20bに繋がる段形状として形成されている。言い換えれば、位置決め凹部22は、第1透光部材20の外周に対する平行な一対の弦から、径方向に向かってそれぞれ一段低く形成されている。
【0033】
また、図7に示すように、スペーサ30を位置決め凹部22にはめ込んだ状態で、平面視において、スペーサ30の湾曲している外側面30aと、第1透光部材20の側面20bとが一致するとともに、図5に示すように、スペーサ30の直線状の内側面30bと、位置決め凹部22の側面22aとが接触する。また、図5に示すように、位置決め凹部22の側面22aは互いに略平行に設けられており、その側面22a間の距離が、収容凹部11に設けられた貫通孔11aの直径よりも大きく、かつ、液導出部13の開口13b及び液導入部14の開口14bの幅よりも大きくなっている。位置決め凹部22の深さは、適宜設定可能であり、本実施形態では、0.1mm程度に設定されている。また、スペーサ30は、対向面20a、21a間の距離(セル長)を定めており、その距離は、スペーサ30の厚みから、位置決め凹部22の深さを差し引いた値となる。
【0034】
そして、図5に示すように、収容凹部11に、一対の透光部材20、21及びスペーサ30が収容されている状態において、スペーサ30は収容凹部11の内側周面11c及び内側周面11cに対向する位置決め凹部22の側面22aの間に挟まれてずれないように位置決めされる。さらに、図5及び図6に示すように、液導出部13の開口13b及び液導入部14の開口14bの中央が、対向面20a、21a間、かつスペーサ30の内側面30b間、かつ位置決め凹部22の側面22a間にある。
【0035】
さらに、本実施形態のフローセル100は、被検液が流れる流路(サンプルセル)に加えて、参照セル(リファレンスセル)を備えている。参照セルは、光を通過させて、基準の透過光強度を得るためのものであり、図5に示すように、主に、フローセル本体10に設けられた参照収容凹部12と、参照円柱部材41とから構成される。
【0036】
参照収容凹部12は、参照円柱部材41を収容するためのものである。そして、参照収容凹部12は、図3に示すように、フローセル本体10の背面に、収容凹部11と所定距離離間して平面視において略円形状で設けられている。参照収容凹部12の底面の一部には貫通孔12aが設けられている。図3に示すように、参照収容凹部12及び貫通孔12aは、平面視において同心円状に形成されている。
【0037】
参照円柱部材41は、光を通過させて、基準の透過光強度を得るためのものであり、平面視において、参照収容凹部12にはまる略円柱形状である。参照円柱部材41の長さは、測定しようとする所定成分の屈折率に応じて、適宜設定される。参照円柱部材41は石英ガラスを用いて形成されている。
【0038】
さらに、フローセル本体10の参照収容凹部12の周囲に、連結部材70を貫通させるための連結孔17(ここでは2つ)が、前面から背面に貫通している。そして、第2挟持板60に、連結部材70を螺合させるめねじ孔63(ここでは2つ)が、連結孔17に対応する位置に設けられている。また、第2挟持板60に、光を通す貫通孔61が、参照収容凹部12の貫通孔12aに対応する位置に設けられている。
【0039】
次に、本実施形態のフローセル100を組み立てる手順の一例を、図8を参照しながら説明する。
【0040】
まず、参照セル(リファレンスセル)の組み立てについて説明する。フローセル本体10の背面を上に向けて、フローセル本体10の参照収容凹部12に、参照円柱部材41と、Oリング43とを順次収容する。さらに参照収容凹部12の開口面(フローセル本体10の背面)に第2挟持板60を載せ、連結部材70であるボルトを、フローセル本体10の前面側から、フローセル本体10の参照収容凹部12側の連結孔17に挿通させ、さらに、その連結孔17に対応する第2挟持板60のめねじ孔63に螺合させる。その結果、第2挟持板60及び参照円柱部材41がフローセル本体10に取り付けられ、参照セルが形成される。
【0041】
次に、被検液が流れる流路(サンプルセル)の組み立てについて説明する。上記の参照セル組み立て後、フローセル本体10を裏返して、フローセル本体10の前面を上に向ける。次に、図5及び図8に示すように、フローセル本体10の収容凹部11の円環溝11bに、Oリング43を収容し、続いて、第1透光部材20を収容する。この時、位置決め凹部22が、収容凹部11の開口面側すなわちフローセル本体10の前面側に向けられているとともに、位置決め凹部22が、液導出部13及び液導入部14を挟むように配置されている。さらに、スペーサ30の下面30cが位置決め凹部22にはまるように、スペーサ30を配置する。この状態において、スペーサ30が、収容凹部11の内側周面11cと、当該内側周面11cに対向する位置決め凹部22の側面22aの間に挟まれているので、スペーサ30が第1透光部材20に対してずれないように位置決めされる。
【0042】
そして、各部材を収容した収容凹部11の開口面に、第1挟持板50を載せる。続いて連結部材70であるボルトを、第1挟持板50に設けられた挿通孔52、及びフローセル本体10の前面側から、フローセル本体10の収容凹部11側の挿通孔16に挿通させ、さらに、第2挟持板60に設けられためねじ孔62に螺合させる。その結果、第1挟持板50がフローセル本体10に取り付けられる。さらに、ボルトを締め付けていくと、図5に示すように、一対の透光部材20、21及びスペーサ30が収容凹部11の底面11dに向かって押圧されて密着し、一対の透光部材20、21及び収容凹部11の間に、液導出部13及び液導入部14に繋がる流路が形成される。この状態において、スペーサ30は、対向面20a、21a間の距離(セル長)を定めており、その距離は、スペーサ30の厚みから、位置決め凹部22の深さを差し引いたものとなる。
【0043】
さらに、一対の透光部材20、21の対向面20a、21a間の距離(セル長)を変更する場合の手順の一例を説明する。まず、第1挟持板50を取り外した後、傾斜リング44と、Oリング43と、第2透光部材21と、スペーサ30とを取り外す。そして、異なる厚みのスペーサ30と、第2透光部材21と、Oリング43と、傾斜リング44を順次収容し、第1挟持板50を再び取り付ける。その結果、一対の透光部材20、21の対向面20a、21a間の距離(セル長)が異なる流路が形成される。
【0044】
本実施形態によれば、押圧機構80によって各透光部材20、21及びスペーサ30を押圧して密着させるので、コストの高い固着処理を行う必要がなく、製造コストを抑えることができる。また、各透光部材20、21及びスペーサ30が固着されず、押圧機構80によって部材を押圧して密着させているので、スペーサ30を厚みや形状等が異なるスペーサ30に変更することができ、セル長を変更することができる。さらに、透光部材に位置決め凹部22が設けられているので、スペーサ30を位置決め凹部22に嵌めることができ、外部からの振動、衝撃や被検液の圧力等によってスペーサ30が、位置決め凹部22が設けられた透光部材に対してずれてしまうことを防止できる。また、スペーサ30を所望の位置に確実に位置決めでき、所望の流路形状を形成することができる。加えて言えば、位置決め凹部22であれば切削又は研磨等によって形成でき、固着等によって位置決め用の部材を別途取り付ける必要がないので、製造コストを抑えることもできる。
【0045】
また、第1透光部材20が収容凹部11に収容された状態において、位置決め凹部22が、収容凹部11の貫通孔11aよりも外側にあるので、スペーサ30が測定光の光路上に入り込まないようにでき、測定誤差の発生を低減できる。さらに、傾斜リング44の傾斜面を介してOリング43に第1挟持板50からの押圧力が付勢された状態において、Oリング43及び第2透光部材21の上面21bが気密されるように密着するとともに、Oリング43及び収容凹部11の内側周面11cが気密されるように密着するので、流路を流れる被検液が、各透光部材20、21及びスペーサ30の間から収容凹部11の内側周面11cまで漏れ出した場合であっても、外部への液リークを防ぐことができる。
【0046】
加えて言えば、本実施形態では、参照セルが、石英ガラスからなる参照円柱部材41を用いて構成されているので、サファイアで構成した場合よりも、製造コストを抑えることができる。また、継手がフローセル本体10と一体成形されているので、継手及びフローセル本体10の接合部からの液リークを防ぐことができる。
【0047】
なお、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。例えば、本実施形態においては、スペーサを、厚みの異なるスペーサに取り替えることで、セル長を変更するものとしたが、第1透光部材を、位置決め凹部の深さの異なる第1透光部材に取り替えることで、セル長を変更するようにしてもよい。
【0048】
また、継手はフローセル本体に一体成形されるものとしたが、別体の継手をフローセル本体に取り付けるようにしてもよい。
【0049】
さらに、スペーサの厚みや位置決め凹部の深さを変更することで、Oリング、第1透光部材、スペーサ、第2透光部材、Oリング及び傾斜リングを重ねた高さが、収容凹部の深さよりも低くなってしまい(収容凹部に傾斜リング等が完全に収容されてしまい)、第1挟持板によって押圧できなくなってしまった場合、傾斜リングを、厚みがより大きい傾斜リングに変更するようにすればよい。また、第1挟持板と、傾斜リングとは別体で設けられるものとしたが、第1挟持板及び傾斜リングが固着等により取り付けられていたり、一体成形されていたりしてもよい。
【0050】
加えて言えば、位置決め凹部は一段だけ低い段形状としたが、複数段の階段形状等であってもよい。また、スペーサは、平面視において一対の透光部材と略同一円の部分円弧形状をなす側面を有する略三日月形状又は略紡錘形状であってもよい。
【0051】
また、スペーサ30が、図9に示すように、円筒形状のホルダ90と、ホルダ90の端面の少なくとも一方に設けられた位置決め凹部22と対応する形状の位置決め凸部93と、ホルダ90の周壁及びホルダ90の位置決め凸部93を軸方向に貫通する長さ規定部材91と、ホルダ90の外側周面において対向する位置に貫通する導入路92とを具備するものであってもよい。
【0052】
そして、長さ規定部材91の長さは、ホルダ90における位置決め凸部93が設けられた部分の軸方向の長さとほぼ同じである。材質面で言えば、ホルダ90が、例えばPFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で形成され、長さ規定部材91が、サファイア等で形成されているものが好ましい。このようなものであれば、スペーサ30の全てがサファイアで構成されたものよりも、低価格で製造することができる。この特長は、特にスペーサ30の長さや厚みが大きくなった場合により顕著になる。さらに、長さ規定部材91が、熱膨張率が低く耐圧性が高い材質であるサファイアによって構成されているので、ホルダ90が熱により膨張したり、押圧に耐えられない材質によって構成されていたりする場合であっても、一対の透光部材20、21の対向面20a、21a間の距離を確実に定めることができる。
【0053】
また、位置決め凹部は一対の透光部材の対向面の一方に設けられるものとしたが、対向面の両方に設けられるものとしてもよい。さらに、セルはフローセルであるとしたが、バッチ処理での測定に用いるためのバッチセルであってもよい。参照用セル(リファレンスセル)は被検液が流れる流路(サンプルセル)と一体で設けるものとしたが、別体で設けてもよい。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
100・・・フローセル
10・・・フローセル本体
11・・・収容凹部
11a・・・収容凹部の貫通孔
13・・・液導出部
14・・・液導入部
20・・・第1透光部材
21・・・第2透光部材
22・・・位置決め凹部
23・・・光学窓
30・・・スペーサ
80・・・押圧機構
90・・・ホルダ
L・・・配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検液が収容される流路を挟む一対の光学窓を有する光学測定用セルであって、
底面の一部に貫通孔が設けられた収容凹部、並びに当該収容凹部の内側周面に連通する液導入部及び液導出部が設けられたセル本体と、
前記収容凹部に収容され、前記一対の光学窓を形成する一対の透光部材と、
前記一対の透光部材同士の対向面それぞれに接触し、当該対向面間の距離を定めるスペーサと、
前記一対の透光部材及び前記スペーサを、前記収容凹部の底面に向かって押圧して密着させ、前記一対の透光部材間に前記液導入部及び前記液導出部に繋がる流路を形成する押圧機構とを具備し、
前記一対の透光部材同士の対向面の少なくとも一方に、前記スペーサに対応する形状の位置決め凹部が設けられており、当該位置決め凹部に前記スペーサがはまって略位置決めされる光学測定用セル。
【請求項2】
前記位置決め凹部が、前記対向面の外縁部に設けられるとともに、前記位置決め凹部の底面が、前記透光部材の側面に繋がる段形状として形成されており、
前記スペーサが、前記収容凹部の内側周面及び当該内側周面に対向する位置決め凹部の側面の間に挟まれて位置決めされる請求項1記載の光学測定用セル。
【請求項3】
前記位置決め凹部が、前記収容凹部の底面側に配置された透光部材の対向面に設けられている請求項1又は2記載の光学測定用セル。
【請求項4】
前記収容凹部が、平面視において略円形状をなし、
前記一対の透光部材それぞれが、平面視において前記収容凹部にはまる略円形状であり、
前記スペーサが、平面視において前記一対の透光部材と略同一円の部分円弧形状をなす側面を有する一対の部分円弧板であり、
前記位置決め凹部が、平面視において、前記スペーサとそれぞれ略同一形状で設けられているとともに、前記液導入部及び前記液導出部を挟んで、前記対向面における外縁部に形成されている請求項1、2又は3に記載の光学測定用セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−257146(P2011−257146A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129147(P2010−129147)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】