説明

光学用樹脂組成物及びこの組成物を用いた画像表示用装置の製造方法並びに画像表示用装置

【課題】 常温での取扱が容易な液状で表示装置の空間(保護板と液晶表示装置との間、保護板とタッチパネルとの間、タッチパネルと液晶表示装置との間)に樹脂組成物を充填した後に硬化させる画像表示用装置の製造工程において、遮光部が設けられた基板の場合でも、65℃以下の熱硬化条件でも硬化を十分に進行させることができる光学樹脂組成物を提供すると共に、耐衝撃性を有し、二重写りがなく鮮明でコントラストの高い画像が得られる画像表示用装置を提供する。
【解決手段】(A)(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマー、(B)分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマー、(C)分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマー、(D)光重合開始剤、及び(E)10時間半減期温度が40〜70℃であり、且つ理論活性酸素量が8%以下である有機過酸化物、を含む光学用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示用装置の割れ防止、応力および衝撃の緩和に有用で透明性に優れた光学用樹脂組成物及びこの組成を用いた画像表示用装置の製造方法並びに画像表示用装置に関するものであり、特に遮光部を有する基板間に充填した樹脂組成物の硬化方法の改良に関する。
代表的な画像表示用装置(パネル)として液晶表示用装置が例示される。液晶表示用装置は、透明電極、画素パターン等を表面に形成した厚さ約1mm程度のガラス基板の間に数ミクロン程度のギャップを介して液晶を充填、シールしてなる液晶セルとその外側両面に貼り付けた偏光板などの光学フィルム等からなる薄くて傷付きやすい表示用部品である。
このため、特に、携帯電話、ゲーム機、デジカメ、車載用途等では、液晶表示用装置の前面に一定の空間を置いて透明な前面板(保護パネル)を設けた構造の液晶表示用装置が一般的に用いられている。
【0002】
さらに、近年、携帯電話、ゲーム機、デジカメ、車載部品、さらには、ノートパソコン、デスクトップパソコン、パソコン用モニター等に、タッチパネルが搭載されるようになってきた。このような表示装置の場合には、前面板、タッチパネル、液晶画像表示装置の積層構造となっており、前面板とタッチパネルとの間、タッチパネルと液晶画像表示装置との間に空気が介在する。これらの空間は、光の散乱を起こす原因となり、それに起因してコントラストや輝度が低下する。
また、現在の大型液晶ディスプレイは、液晶パネルの前面偏光板表面を反射低減のためにアンチグレア(AG)処理したものが一般的である。この構成の場合、特に衝撃吸収性に関する手立ては講じられておらず、パネル全体及びセットとしての構造で衝撃耐性を持たせている。
この構成の課題はAG処理により画像が滲んで見えること、表面に触るとパネルがたわみ画像が乱れること、AG処理のため汚れが落ちにくく強くこすると傷になりやすいことに加え、今後のパネルの大型化に伴い、パネルの衝撃耐性が低下し、衝撃耐性に問題が発生することが考えられる。
そこで、液晶パネルの前にアンチリフレクション(AR)処理を施した前面板を置いてAG処理に由来する欠点の解消を図ることが考えられる。
しかし前面板と液晶パネルとの間が空気の場合には透過率の低下、二重映りによる画質の低下などが考えられ、空間を樹脂等で埋めることが提案されてきている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
ガラス製ブラウン管(CRT)は、テレビ用、ディスプレイ用としてUL規格や電波取締法などで鋼球落下による耐衝撃試験により飛散防止性や貫通しないことが決められている。この規格を満たすためCRTのガラスを厚く設計する必要がありCRTの重量を重くしていた。
そこで、ガラスを厚くすることなく飛散防止性を持たせる手段として自己修復性を有する合成樹脂保護フィルムをガラスに積層する方法が提案されている(例えば、特許文献5及び6参照)。
しかし、この提案は、飛散防止性を特徴としているが、ガラスの割れ防止機能は兼ね備えていない。
一方、フラットパネルディスプレイ(FPD)の一つであるPDPは、PDPの割れを防止するため、PDPから1〜5mm程度の空間を設け、厚さ3mm程度のガラスなどの前面板を前面(視認面側)に設けている。そのため、PDPの大型化に伴い、前面板の面積も大きくなるため、PDPの重量が重くなってしまう。
そこで、ディスプレイの割れ防止のために、特定の樹脂をディスプレイ表面に積層すること又は特定の樹脂を積層した光学フィルターをディスプレイ表面に積層することが提案されている(例えば、特許文献7〜10参照)。
しかし、特許文献1で使用されているオイルは、漏れを防ぐためのシールが難しく、また液晶パネルに使用されている材料を侵す可能性があり、前面板が割れた場合にオイルが漏れ出すという問題がある。
また特許文献2の不飽和ポリエステルは、黄色に着色しやすくディスプレイ装置への適用は望ましくない。
特許文献3のシリコーンは、密着力が小さく固定のために別途粘着剤が必要になるためプロセスが煩雑になり、さらに粘着剤との接着力もあまり大きくないことから衝撃が加わった際に剥離して気泡が入ってしまうという問題がある。
特許文献4のアクリルモノマの重合物は、接着力が小さく、小型の機器であれば別途粘着剤を必要としないが、大型ディスプレイの前面板を支えるためには別途粘着剤が必要となり、プロセスが煩雑になる。また原料がモノマーのみからなるため粘度が低く、硬化収縮が大きいため大面積のフィルムを均一に作製することが難しいという問題も発生する。
また、特許文献7及び8では、使用する樹脂材料の組成に関する考察が特になく、接着性や透明性を発現させる手段が不明瞭である。特に、特許文献7では、樹脂の耐湿信頼性に関する考察がなく、実施例に具体的に示される組成の樹脂材料ではディスプレイに適用後、短時間の耐湿試験において白濁してしまう。
また、特許文献8でも、実施例で具体的に示される樹脂の一部にアクリル酸を使用しており、長時間の耐湿試験において、樹脂が白濁してしまい、耐湿試験時に接触している金属を腐食させてしまうという問題が発生する。
さらに、特許文献7及び8では、より優れた衝撃吸収性を得るという観点からは、検討が不十分であると考えられる。
特許文献8では、樹脂を用いた耐衝撃層の厚みが0.2〜1mmとされるが、厚さを大きくしてより衝撃吸収性を向上させるという観点での開示はない。
特許文献9では、耐湿熱性に関する考察がなされているが、本特許文献に記載の樹脂原料組成では、耐衝撃性の大幅な向上は望めない。
また、実施例おける樹脂層の厚みは1mmであり、より優れた衝撃吸収性を得るという観点からは、検討が不十分であると考えられる。
また、特許文献9の実施例に記載されるような、どちらかというと硬化後に柔らかい樹脂は、厚く使用した場合、前面フィルターの表面硬度が低下し、耐擦傷性に問題が出てくることが考えられる。
また、ディスプレイの加熱上限温度が65℃以下を要求される場合、特許文献10の実施例に記載されるような組成では、遮光部周辺の樹脂組成物の硬化が十分に進行しないという問題が出てくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−011239号公報
【特許文献2】特開平03−204616号公報
【特許文献3】特開平06−059253号公報
【特許文献4】特開2004−125868号公報
【特許文献5】特開平06−333515号公報
【特許文献6】特開平06−333517号公報
【特許文献7】特開2004−058376号公報
【特許文献8】特開2005−107199号公報
【特許文献9】特開2004−263084号公報
【特許文献10】特開2009−186960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示用装置において、表示画像のコントラスト向上、及び表示パネルの不要光の遮断を目的として、枠上の遮光部が設けられることがある。
この遮光部を設けられた基板間に光学用樹脂組成物を充填した場合、光が十分に到達せず、硬化の妨げとなる問題が発生する。
遮光部周辺を熱により硬化させる場合において、耐熱性の低い偏光板などでは、熱硬化条件の制約が発生し、一般には65℃以下での条件が必須となる。
熱硬化型の樹脂組成物に含まれる重合開始剤で、低温で重合開始するものは数多く知られているが、重合開始温度が室温以下の場合、樹脂組成物の製造工程及び樹脂組成物の取扱に温度管理が必要となる。
本発明は、常温での取扱が容易な液状で表示装置の空間(保護板と液晶表示装置との間、保護板とタッチパネルとの間、タッチパネルと液晶表示装置との間)に樹脂組成物を充填した後に硬化させる画像表示用装置の製造工程において、遮光部が設けられた基板の場合でも、65℃以下の熱硬化条件でも硬化を十分に進行させることができる光学用樹脂組成物を提供することを第1の目的とするものである。
また、本発明は、耐衝撃性を有し、二重写りがなく鮮明でコントラストの高い画像が得られる画像表示用装置の製造方法とそれにより得られる画像表示用装置を提供することを第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による光学用樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマー、(B)分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマー、(C)分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマー、(D)光重合開始剤、及び(E)10時間半減期温度が40〜70℃であり、且つ理論活性酸素量が8%以下である有機過酸化物、を含むことを特徴とする。
また、前記光学用樹脂組成物は、前記(E)成分の有機過酸化物の含有量が、(A)〜(E)成分の総量100質量部に対して、0.5〜5質量部であるこが好ましい。これにより、硬化性、及び耐湿熱信頼性をより優れたものにすることができる。
また、前記光学用樹脂組成物は、(A)成分の(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマーが、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルアクリレートと下記一般式(I)
【0007】
【化1】

(ただし、一般式(I)中、mは2、3又は4、nは1〜10の整数を示す。)で表されるヒドロキシル基含有アクリレートの共重合体であることが好ましい。これにより、硬化収縮率をより低減できる。
また、前記光学用樹脂組成物は、(B)成分の分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマーが、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマーであることが好ましい。これにより、硬化性、密着性及び伸び率をより優れたものにすることができる。
また、本発明による画像表示用装置の製造方法は、画像表示部を有する画像表示ユニットと保護パネルとを対向配置し、これらの間に前記光学用樹脂組成物を介在させて、該光学用樹脂組成物を硬化させる画像表示用装置の製造方法であって、前記保護パネルが外周縁に沿って遮光部が形成されており、前記画像表示ユニットと保護パネル間の光学用樹脂組成物に対して、(1)少なくとも前記保護パネル面側から光照射を行う工程、(2)画像表示用装置を65℃以下で加熱する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明による画像表示装置は、前記製造方法により製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、常温での取扱が容易な液状で画像表示用装置の空間(保護板と液晶表示装置との間、保護板とタッチパネルとの間、タッチパネルと液晶表示装置との間)に前記液状の樹脂組成物を充填した後に硬化させる画像表示用装置の製造工程において、遮光部が設けられた基板の場合でも、65℃以下の熱硬化条件において硬化を十分に進行させることができる光学用樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、耐衝撃性を有し、二重写りがなく鮮明でコントラストの高い画像が得られる画像表示用装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による光学用樹脂組成物、これを用いた画像表示用装置の製造方法、並びに画像表示用装置を、実施の形態により詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
本発明による光学用樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマー、(B)分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマー、(C)分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマー、(D)光重合開始剤、及び(E)10時間半減期温度が40〜70℃であり、且つ理論活性酸素量が8%以下である有機過酸化物を含有する。
【0010】
以下、各成分について説明する。
<(A)成分;(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマー>
本発明における(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマーは、エチレン性不飽和結合を分子内に1個有する(メタ)アクリル酸系誘導体(以下、単に(メタ)アクリル酸系誘導体と言う場合もある)を重合させて得られるものであり、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーを併用してもよい。その重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したもの)が5,000〜40,000であるものが好ましく、7,000〜30,000がより好ましく、10,000〜25,000が特に好ましい。
重量平均分子量を5,000以上とすることで、高温高湿環境下で剥がれの発生しない粘着力を得ることができる。
また、40,000未満にすることで、光学用樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、基板へのディスペンスが容易になり、さらに後述の(C)分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーの添加量を低くすることにより、硬化収縮率を小さくすることができる。
【0011】
(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマーは、(メタ)アクリル酸系誘導体以外のモノマーを併用して重合させて得られるポリマーであってもよい。
上記の(メタ)アクリル酸系誘導体として、アクリル酸又はメタクリル酸、それらの誘導体等がある。具体的には、エチレン性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーとしては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、n−オクチルアクリレート等のアルキルアクリレート、ベンジルメタクリレート等のアラルキルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルのメタクリル酸エステル、トリエチレングリコールブチルエーテルのメタクリル酸エステル、ジプロピレングリコールメチルエーテルのメタクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのメタクリル酸エステル、ジエチレングリコールエチルエーテルのアクリル酸エステル、トリエチレングリコールブチルエーテルのアクリル酸エステル、ジプロピレングリコールメチルエーテルのアクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのアクリル酸エステル、ヘキサエチレングリコールフェニルエーテルのメタクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルのメタクリル酸エステル、ヘキサエチレングリコールフェニルエーテルのアクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルのアクリル酸エステル、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシ化シクロデカトリエンメタクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシ化シクロデカトリエンアクリレート等の脂環式基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、ヘプタデカフロロデシルメタクリレート等のフッ素化アルキルメタクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート等のフッ素化アルキルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、グリセロールアクリレート等の水酸基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等のグリシジル基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、アクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上を併用することができる。
これらのエチレン性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーは、1種で又は2種以上併用して用いることができる。
【0012】
上記の(メタ)アクリル酸系誘導体以外に、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等の重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーを使用することができる。また、上記のアクリル酸系誘導体以外のモノマーであって、重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマー(ジビニルベンゼン等)を使用することもできる。
【0013】
本発明において、(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマーは、硬化収縮率を低減できる観点から、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルアクリレートと下記一般式(I)
【0014】
【化2】

(ただし、一般式(I)中、mは2、3又は4、nは1〜10の整数を示す。)で表されるヒドロキシル基含有アクリレートの共重合体であることが好ましい。
アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルアクリレートの共重合割合は、(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマー中、30〜80モル%が好ましく、40〜70モル%がより好ましく、45〜60モル%が特に好ましい。
一般式(I)の共重合割合は、(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマー中、20〜70モル%が好ましく、30〜60モル%がより好ましく、40〜55モル%が特に好ましい。
本発明に用いる(A)(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマーの含有量は、硬化性、密着性及び硬化収縮率の観点から、光学用樹脂組成物の総量100質量部に対して、10〜50質量部が好ましく、15〜40質量部であることがより好ましく、20〜30質量部であることが特に好ましい。
【0015】
<(B)成分:分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマー>
分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタンオリゴマー、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも特に、種々の特性のバランスの観点から、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタンオリゴマーが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタンオリゴマーは、例えば、(a1)ジオール化合物と、(a2)イソシアネート基を有する化合物とを反応させて得られた化合物(以下、ウレタンオリゴマーと呼ぶ場合もある)に、(a3)モノヒドロキシ(メタ)アクリレート、又は(a4)(メタ)アクリロイル基を有するモノカルボン酸、若しくは(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート化合物、とを反応させることで得ることができる。
【0016】
(a1)ジオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルジオール、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、水添ポリブタジエンジオール、水添ポリイソプレンジオール等のポリオレフィンジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、シリコーンジオール等が挙げられる。これらの中でも特に、応力・衝撃の緩和、透明性、及び接着性の観点からポリエーテルジオールが好ましい。
【0017】
上記(a2)イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(II)で表されるジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0018】
【化3】

(一般式(II)中、Xは2価の有機基を示す。)
上記一般式(II)中のXで示される2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、未置換若しくはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基で置換されているフェニレン基及びナフチレン基等のアリーレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、より好ましくは1〜18である。また、上記Xで示される2価の有機基としては、フェニレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイル基等の芳香環を有する基が好ましいものとして挙げられる。また、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基も好ましいものとして挙げられる。
【0019】
また、上記一般式(II)で表されるジイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート化合物及びこれらの水添物;ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート;トリレン−2,6−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート;4,4’−〔2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;水添m−キシリレンジイソシアネート;リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート類は、一般式(II)中のXが脂肪族基を有する基である脂肪族ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、イソシアネート基を有する化合物として、一般式(II)で表されるジイソシアネート類と共に、三官能以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
また、上記一般式(II)で表されるジイソシアネート類は、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、ヒドロキシアクリレート、メタノールを代表とするアルコール、フェノール、オキシム等が挙げられるが、特に制限はない。
【0020】
上記(a1)ジオール化合物と、上記一般式(II)で表されるジイソシアネート類とを反応させる際の配合割合は、生成するウレタンオリゴマーの数平均分子量、及び生成するウレタンオリゴマーの末端を水酸基にするかイソシアネート基にするかで適宜調整される。
ウレタンオリゴマーの末端をイソシアネート基にする場合、イソシアネート基数と水酸基数との比率(イソシアネート基数/水酸基数)が、1.01以上になるように調整することが好ましく、数平均分子量を大きくする観点からは2未満に調整することが好ましい。このような比率にすることにより、末端がイソシアネート基であるウレタンオリゴマーができる。
【0021】
(メタ)アクリロイル骨格を導入するための化合物としては、例えば、(a3)モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
上記(a3)モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、上記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、2−アクリロキシエタノール等が挙げられる。これらのモノヒドロキシ化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
一方、ウレタンオリゴマーの末端を水酸基にする場合、水酸基数とイソシアネート基数との比率(水酸基数/イソシアネート基数)が、1.01以上になるように配合割合を調整することが好ましく、数平均分子量を大きくする観点からは2未満に調整することが好ましい。
ウレタンオリゴマーの末端が水酸基である場合、(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリロイル基を有するモノカルボン酸類、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート化合物等の水酸基と反応可能な化合物と、ウレタンオリゴマーの末端の水酸基とを反応させることで、(メタ)アクリロイル基を2つ有するウレタンオリゴマーを得ることができる。
【0023】
本発明において、(B)成分である分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマーの重量平均分子量は、硬化性、可とう性、及び作業性の観点から、1,000〜40,000であることが好ましく、3,000〜30,000であることがより好ましく、5,000〜20,000であることが特に好ましい。
本発明に用いる(B)分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマーの含有量は、硬化性、密着性及び硬化収縮率の観点から、光学用樹脂組成物の総量100質量部に対して、10〜50質量部が好ましく、15〜45質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることが特に好ましい。
【0024】
<(C)成分;分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマー>
本発明における(C)分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を分子内に1個有する化合物が好ましく、(c1)アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、(c2)水酸基、モルホリン基等の極性基を含有する(メタ)アクリレート等を含むことが好ましい。
(c2)水酸基、モルホリン基等の極性基は、ガラスなどの被着体の界面と水素結合を形成するため、これらを混合することにより、耐湿熱信頼性に優れた粘着力を得ることができる。
【0025】
上記の(c1)アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、n−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられるが、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレートが好ましく、エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。またこれらのアクリレートは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
上記の(c2)水酸基、モルホリン基等の極性基を有するアクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の水酸基含有アクリレート、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール等のポリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールやトリプロピレングリコール等のポリプロピレングリコールモノアクリレート、ジブチレングリコールやトリブチレングリコール等のポリブチレングリコールモノアクリレート、アクリロイルモルホリン等のモルホリン基含有アクリレートなどが挙げられるが、塗工時の作業性の観点から、皮膚刺激性の低い4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリレートがより好ましい。これらのアクリレートは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。水酸基、モルホリン基等の極性基を有するメタクリレートとしては、上記のアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。
【0027】
本発明に用いる(C)分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーの含有量は、密着性、作業性及び硬化収縮率の観点から、光学用樹脂組成物の総量100質量部に対して、10〜50質量部が好ましく、15〜45質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることが特に好ましい。
【0028】
<(D)成分:光重合開始剤>
本発明における光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等の芳香族ケトン化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、β−(アクリジン−9−イル)アクリル酸のエステル化合物、9−フェニルアクリジン、9−ピリジルアクリジン、1,7−ジアクリジノヘプタン等のアクリジン化合物、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メチルメルカプトフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられる。
【0029】
特に、樹脂組成物を着色させないものとしては1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)及びこれらを組み合わせたものが好ましい。
また、特に厚いシートを作製するためには、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物を含む光重合開始剤が好ましい。
また、シートの臭気を減らすためにはオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)が好ましい。これらの光重合開始剤は複数を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いる(C)光重合開始剤の含有量は、硬化性の観点から光学用樹脂組成物の総量100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.3〜3重量部であることがより好ましく、0.5〜2重量部であることが特に好ましい。
【0030】
<(E)成分;10時間半減期温度が40〜70℃であり、且つ理論活性酸素量が8%以下である有機過酸化物>
本発明において、表示用装置のパネルの少なくとも1方に偏光板が設けられている場合は、偏光板の耐熱温度が65℃程度であることから、10時間半減期温度が70℃以下である有機過酸化物が好ましい。ここで10時間半減期温度とは有機過酸化物の濃度が10時間後に初期値の半分に減少する温度である。また、粘度安定性の観点からは、10時間半減期温度が40℃以上であり、且つ理論活性酸素量が8%以下であることが好ましい。
有機過酸化物は分子内に過酸化結合を持っており、この過酸化結合の分子中の濃度を表すものとして、活性酸素量が用いられ、活性酸素量は、下式で表される。
【0031】
【数1】

特に純度100%の場合の活性酸素量のことを理論活性酸素量とよんでいる。
このような有機過酸化物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−ヘキサノエート(例えば、日本油脂株式会社製、商品名パーオクタO、10時間半減期温度が65.3℃、理論活性酸素量が5.87%)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日本油脂株式会社製、商品名パーロイルTCP、10時間半減期温度が40.8℃、理論活性酸素量が4.01%)、ジラウロイルパーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーロイルL、10時間半減期温度が61.6℃、理論活性酸素量が4.01%)、ジコハク酸パーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーロイルSA)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂株式会社製、商品名パーヘキサ25O、10時間半減期温度が66℃、理論活性酸素量が7.43%)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂株式会社製、商品名パーヘキシルO、10時間半減期温度が70℃、理論活性酸素量が6.55%)等が挙げられ、これらの有機過酸化物は複数を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いる(E)10時間半減期温度が40〜70℃であり、且つ理論活性酸素量が8%以下である有機過酸化物の含有量は、遮光部の硬化性、粘度安定性、及び耐湿熱信頼性の観点から、光学用樹脂組成物の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.3〜8質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましい。
【0032】
また、本発明においては、耐湿熱信頼性、及び硬化物中の気泡発生を抑制する観点から、有機溶媒(溶剤)は実質的に含まない方が好ましい。
「実質的に」とは、本発明の光学用樹脂組成物の光硬化後の特性を著しく低下させない程度で、有機溶媒が光学用樹脂組成物中に微量(1質量%以下)に存在してもよいことを意味するが、好ましくは含有しないことである。
【0033】
本発明の光学用樹脂組成物の粘度(25℃)は、500〜5000mPa・sであり、ブリードアウト及び作業性の観点から、1,000〜5,000mPa・sであることが好ましく、2,000〜4,000mPa・sであることがより好ましい。粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製RE−80L)より、3°コーン ローター(cone rotor)を用いて0.5rpmで測定した値とする。
【0034】
本発明の画像表示用装置の製造方法は、画像表示部を有する画像表示ユニットと保護パネルとを対向配置し、これらの間に上記の光学用樹脂組成物を介在させて該光学用樹脂組成物を硬化させる画像表示用装置の製造方法であり、前記保護パネルが外周縁に沿って遮光部が形成されており、前記画像表示ユニットと保護パネル間の光学用樹脂組成物に対して、少なくとも保護パネル面側から光照射を行う工程と、画像表示用装置を65℃以下で加熱する工程とを有するものである。
保護パネルに遮光部を設けた場合、画像表示ユニットと保護パネルの間に充填された樹脂に十分な光が到達せず、硬化の妨げになり、遮光部周辺の樹脂組成物の硬化が十分に進行しなくなり、画像表示用装置の品質を大きく損ない信頼性の低下を招いてしまう。
このため、本発明では、外方側面側から光照射を行い、(A)〜(E)成分を含む光学用樹脂組成物と組み合わせて硬化を行う。保護パネル面側から光照射を行うには、例えば紫外線照射装置を用いて、画像表示ユニットと保護パネルの間に充填された樹脂組成物に対し、樹脂組成物層にほぼ垂直となるように保護パネル面側から紫外線を照射する。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが本発明は以下の実施例に制限するものではない。
まず、本発明を適用した画像表示用装置に使用し得る樹脂組成物の作製例について以下に説明する。
合成例1(アクリル酸系誘導体ポリマーの合成)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下装置及び窒素注入管の付いた反応容器にメチルエチルケトン575.0質量部をとり、150ml/分で窒素置換しながら、50分間で常温(25℃)から100℃まで加熱した。
その後、この温度に保ちながら、モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート805.0質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート345.0質量部を使用し、これらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート17.25質量部を溶解した溶液を準備し、この溶液を150分間かけて滴下し、滴下終了後さらに1時間反応させた。
続いて、アゾビスイソブチロニトリル2.5質量部をメチルエチルケトン253.0質量部に溶解した溶液を準備し、この溶液を30分間かけて滴下し、滴下終了後30分間で120℃まで昇温し、さらに2時間反応させた。
最後に、メチルエチルケトンを溜去することにより、2−エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートのコポリマー(重量平均分子量20,000)を得た。
【0036】
合成例2(ポリウレタンアクリレートの合成)
冷却管、温度計、攪拌装置、滴下漏斗及び空気注入管のついた反応容器にポリプロピレングリコール(分子量2,000)180質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.33質量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.5質量部及び触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05質量部をとり、空気を流しながら70℃に昇温後、70〜75℃で攪拌しつつイソホロンジイソシアネート22.2質量部を2時間かけて均一滴下し、反応を行った。
滴下終了後、5時間反応させたところで、IR測定の結果、イソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアネートを繰り返し単位として有し、両末端に重合性不飽和結合を有するポリウレタンアクリレート(重量平均分子量20,000)を得た。
【0037】
(実施例1)
合成例1で得たアクリル酸系誘導体ポリマー50質量部、合成例2で得たポリウレタンアクリレート75質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート50質量部、アクリロイルモルホリン6質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート8質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤)1質量部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−ヘキサノエート(有機過酸化物)(日本油脂株式会社製、商品名パーオクタO、10時間半減期温度65.3℃、理論活性酸素量5.87%)4質量部を秤量し、撹拌混合して、光学用樹脂組成物を調整した。この樹脂組成物の評価結果を表1に示した。
【0038】
(実施例2)
合成例1で得たアクリル酸系誘導体ポリマー50質量部、合成例2で得たポリウレタンアクリレート75質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート50質量部、アクリロイルモルホリン6質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート8質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤)1質量部、ジ(4−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(有機過酸化物) (日本油脂株式会社製、商品名パーロイルTCP、10時間半減期温度40.8℃、理論活性酸素量4.01%)1質量部を秤量し、撹拌混合して、光学用樹脂組成物を調整した。この樹脂組成物の評価結果を表1に示した。
【0039】
(実施例3)
合成例1で得たアクリル酸系誘導体ポリマー50質量部、合成例2で得たポリウレタンアクリレート75質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート50質量部、アクリロイルモルホリン6質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート8質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤)1質量部、ジラウロイルパーオキサイド(有機過酸化物)(日本油脂株式会社製、商品名パーロイルL、10時間半減期温度61.6℃、理論活性酸素量4.01%)10質量部を秤量し、撹拌混合して、光学用樹脂組成物を調整した。この樹脂組成物の評価結果を表1に示した。
【0040】
(比較例1)
合成例1で得たアクリル酸系誘導体ポリマー50質量部、合成例2で得たポリウレタンアクリレート75質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート50質量部、アクリロイルモルホリン6質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート8質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤)1重量部、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(有機過酸化物)(日本油脂株式会社製、商品名パーヘキサC、10時間半減期温度90.7℃、自己分解温度60℃、理論活性酸素量12.29%)4質量部を秤量し、撹拌混合して、光学用樹脂組成物を調整した。この樹脂組成物の評価結果を表1に示した。
【0041】
(比較例2)
合成例1で得たアクリル酸系誘導体ポリマー50質量部、合成例2で得たポリウレタンアクリレート75質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート50質量部、アクリロイルモルホリン6質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート8質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤)1質量部、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(有機過酸化物)(日本油脂株式会社製、商品名パーヘキシルPV、10時間半減期温度54.6℃、自己分解温度25℃、理論活性酸素量7.91%)4質量部を秤量し、撹拌混合して、光学用樹脂組成物を調整した。この樹脂組成物の評価結果を表1に示した。
【0042】
各実施例及び各比較例で得られた各樹脂組成物及びそれを硬化した透明シートについての試験方法を以下に示す。
(粘度安定性)
E型粘度計(東機産業株式会社製RE−80L)を用いて樹脂組成物の25℃における粘度を測定した。粘度測定に供する樹脂組成物は遮光型ポリプロピレン製容器に入れて密封した後、密封で25℃に保持した状態で5日間保管した。そして、所定期間経過後にE型粘度計で25℃の粘度を測定し、測定した値を基に密封前の粘度を100とした場合の25℃/5日経過後の粘度の変化率を算出した。このとき変化率が10%以下の場合は粘度安定性が高く良好である(○)とし、変化率が10%を超える場合を粘度安定性が低く悪い(×)と評価した。
【0043】
(硬化性)
PETフィルムに樹脂組成物を滴下し、膜厚175μmとなるようにもう一枚のPETフィルムを貼り合わせ、紫外線照射装置を用いて紫外線を2,000mJ/cm 照射し、コンベクションオーブンにて65℃、30分間加熱して樹脂組成物が硬化した透明シートを作製した。このとき紫外線照射側のPETフィルム外周に幅10mm遮光部を形成した。得られた硬化物の硬化性は触指により評価した。
【0044】
(耐湿熱信頼性)
作製した樹脂組成物を2インチのガラス基板に滴下し、175μmのスペーサを介してもう一枚のガラス基板を貼合し、紫外線照射装置を用いて紫外線を2,000mJ/cm 照射し、コンベクションオーブンにて65℃、30分間加熱して試験片を得た。このとき紫外線照射側のガラス基板外周に幅10mm遮光部を形成した。この基板を85℃、85%RHの試験槽に50時間投入し、剥がれ、気泡発生の有無を目視評価した。
各実施例及び比較例の試験結果をまとめて表1、2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1から本発明による光学用樹脂組成物(実施例1〜3)を用いると、本発明の範囲外の樹脂組成を用いた場合(比較例1〜2)に比べて、25℃における粘度安定性が向上し、遮光部を有する基板間に充填した場合においても硬化が十分に進行することが分かる。また、このとき得られた硬化物の耐湿熱信頼性試験においても問題ないことを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマー、(B)分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマー、(C)分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマー、(D)光重合開始剤、及び(E)10時間半減期温度が40〜70℃であり、且つ理論活性酸素量が8%以下である有機過酸化物、を含む光学用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(E)成分の有機過酸化物の含有量が、(A)〜(E)成分の総量100質量部に対して、0.5〜5質量部である請求項1に記載の光学用樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分の(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマーが、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルアクリレートと下記一般式(I)
【化1】

(ただし、一般式(I)中、mは2、3又は4、nは1〜10の整数を示す。)で表されるヒドロキシル基含有アクリレートの共重合体である請求項1又は請求項2に記載の光学用樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分の分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するオリゴマーが、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマーである請求項1〜3のいずれかに記載の光学用樹脂組成物。
【請求項5】
画像表示部を有する画像表示ユニットと保護パネルとを対向配置し、これらの間に請求項1〜4のいずれかに記載の光学用樹脂組成物を介在させて該光学用樹脂組成物を硬化させる画像表示用装置の製造方法であって、前記保護パネルが外周縁に沿って遮光部が形成されており、前記画像表示ユニットと保護パネル間の光学用樹脂組成物に対して、
(1)少なくとも前記保護パネル面側から光照射を行う工程、
(2)画像表示用装置を65℃以下で加熱する工程と、
を含む画像表示用装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載される製造方法により製造される画像表示用装置。

【公開番号】特開2012−155264(P2012−155264A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16378(P2011−16378)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】