説明

光学異方性材料及びその製造方法

【課題】光学材料として用いる優れた光学的異方性材料及びその製造方法を提供し、詳しくは目的の光学的性質と表面の親水性とを両立した光学異方性材料及びその製造方法を提供する。さらには、光学特性に優れ、フッ素化処理による各特性を表面に付与し、表面を親水化して無機材料との付着性を高め、その経時劣化を抑制した光学異方性材料を提供する。
【解決手段】支持体上に重合性液晶化合物より形成された光学異方性層を設ける工程と、該光学異方性層の少なくとも表面をフッ素ガスを含むガスによって表面改質処理する工程とを含む光学異方性材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学異方性材料及びその製造方法に関し、さらに詳しくは光学異方性材料の表面改質方法及びそれにより得られる光学異方性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
光学異方性材料を各種液晶表示装置などに使用する場合において、反射防止層を設け、反射光による局部的な画質の劣化を抑止することにより、視野角やコントラストを改善することが行われている。また、そこに保護層を設け、酸化反応を抑止することにより、表示品質の経時劣化を抑制することが行われている。
これら反射防止層や保護層は、耐久性の観点から無機材料から形成されることが望ましい。しかし、有機材料から形成された層上に無機材料から形成された層を形成すると、両者の付着力が弱いため、経時使用により、膜剥れやクラックが生じてしまう。そのため無機材料から形成された層の持つ所望の機能が低下してしまう。そこで、これを改善するため、有機材料の表面を親水化することで無機材料との付着力を向上させることが試みられている(特許文献1、2参照)。
材料表面を親水化する方法としては、プラズマ処理やオゾン処理が挙げられる。しかし、この処理方法では時間の経過につれてその親水性が低下してしまう(非特許文献1、2参照)。そのため、表面親水化処理操作をおこなってから次の操作までを速やかにおこなう必要があった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−49444号公報
【特許文献2】特開2005−94510号公報
【非特許文献1】「有機,無機材料における表面処理・改質の上手な方法とその評価」技術情報協会(2004年)234ページ
【非特許文献2】日本接着学会編「表面解析・改質の化学」日本工業新聞社(2003年)116ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面改質方法としてフッ素ガスを用いる処理が挙げられる。これにより、フッ素化合物が有する各種性能(撥水性、撥油性、非粘着性、離型性、防汚性、耐薬品性、低摩擦、絶縁性、低誘電率、低ガス透過性、生体適合性など)を表面に付与できる。また、親水性を付与することもできる。これに関し、光学的に異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(熱可塑性液晶ポリマー)において、フッ素ガスによりその表層部をフッ素化処理することが試みられている(特開2002−293963号公報参照)。また、フッ素と酸素の混合ガスによりフッ素化処理して親水性を付与することが試みられている(特開2002−293959号公報)。しかしながら、フッ素化処理が光学的異方性に与える影響はこれまで全く知られていない。
【0005】
そこで本発明は、光学材料用途(例えば光学補償素子など、光学的異方性を利用する用途)として用いる優れた光学的異方性材料(例えば光学異方性層が液晶分子を含む重合性液晶化合物から形成され、該重合性液晶化合物が配向した状態で重合により固定化されたもの)及びその製造方法の提供を目的とし、詳しくは目的の光学的性質(例えばレターデーション)と表面の親水性とを両立した光学異方性材料及びその製造方法の提供を目的とする。さらには、光学特性に優れ、フッ素化処理による各特性を表面に付与し、表面を親水化して無機材料との付着性を高め、経時劣化を抑制した光学異方性材料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、下記の手段によって達成された。
(1)支持体上に重合性液晶化合物より形成された光学異方性層を設ける工程と、該光学異方性層の少なくとも表面をフッ素ガスを含むガスによって表面改質処理する工程とを含むことを特徴とする光学異方性材料の製造方法。
(2)前記光学異方性層表面を、酸素、塩素、臭素、及び二酸化硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1種の反応ガスと、フッ素ガスとにより表面改質することを特徴とする(1)に記載の光学異方性材料の製造方法。
(3)前記光学異方性層表面を、フッ素ガスと二酸化硫黄ガスとにより表面改質処理することを特徴とする(1)または(2)に記載の光学異方性材料の製造方法。
(4)前記表面改質処理によって、光学異方性層表面の水との接触角を、処理前の前記表面に対して10゜以上低下させることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光学異方性材料の製造方法。
(5)前記表面改質処理によるレターデーションの変化の絶対値を3nm以下に抑えることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の光学異方性材料の製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された光学異方性材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、優れた光学的性質を有し、表面を親水化した光学異方性材料を製造することができ、また目的に応じて、フッ素ガスと併用する反応性ガスの種類や量を調節することで撥水性、撥油性、非粘着性、離型性、防汚性、耐薬品性、低摩擦、絶縁性、低誘電率、低ガス透過性、生体適合性などを表面に付与することもできるという優れた効果を奏する。
また、本発明の製造方法によれば、有機材料の表面を親水化することで無機材料との付着力を向上させることができる。本発明の光学異方性材料が有する表面親水化効果は長時間にわたって持続するため、表面親水化処理から次工程までを短時間に連続しておこなう必要がなく、時間が変動したときの次工程での影響が抑えられ、光学異方性材料を製品化する際の製造品質を安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
<光学異方性層>
本発明の製造方法により得られる光学異方性材料は、重合性液晶化合物より形成された光学異方性層を支持体上に設けたものである。前記重合性液晶化合物で形成される光学異方性層は、少なくとも重合性液晶化合物により形成されたものであれば特に限定されず、目的に応じてその他の化合物を適宜選択して含有させて形成することができる。
【0009】
前記重合性液晶化合物は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、配向状態を固定可能とした液晶構造を含む重合性液晶化合物を用いることが好ましく、棒状液晶構造、円盤状液晶構造、バナナ状液晶構造などの液晶構造を含む重合性液晶化合物がより好ましく、円盤状の液晶構造を含む重合性液晶化合物が特に好ましい。
また前記重合性液晶化合物には、必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有させてもよい。
【0010】
本発明の製造方法においては、重合性液晶化合物を光学異方性層中で配向させることが好ましい。ここで配向させるとは、液晶を構成する分子の形状に起因する固有軸(例えば、棒状分子であれば長軸、板状分子であれば板の法線軸)において、注目した微少領域に含まれるその固有軸の平均方向をほぼ揃えることをいう(本発明において、この配向状態にあるとき、注目した微少領域の液晶構造の固有軸の平均方向と、光学補償素子の積層方向(光学異方性層と支持体との界面における法線方向)とのなす角を配向角といい、固有軸の平均方向を前記界面へ投影した成分を配向方向という。)。
本発明の製造方法により得られる光学異方性材料の配向状態としては、前記液晶構造の配向角が傾斜する状態を有しているもの(すなわち、配向角が光学異方性層の厚み方向に平行又は垂直状態にないもの)が好ましく、前記配向角が光学異方性層の上面と下面との間で厚み方向に連続的に変化するハイブリッド配向を有しているものがより好ましい。ハイブリッド配向における配向角度としては、配向膜側から空気界面側に向かって連続的に20°±20°〜65°±25°の範囲で変化するように調整されることが好ましい。
【0011】
前記重合性液晶化合物の前記配向角度及び配向方向により決定される前記配向状態としては、黒表示状態の液晶層と鏡面対象となるように前記配向角及び配向方法が調整されることが好ましい。
ここで、前記光学異方性層における前記液晶分子の配向膜側近傍の配向角、空気界面側の配向角及び平均配向角は、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)社製)を用いて、多方向からのレターデーションを測定し、測定されたレターデーションから屈折率楕円体モデルを想定し、該屈折率楕円体モデルから算出された値である。
また、前記レターデーションから配向角を算出する方法としては、「デザインコンセプト・オブ・ザ・ディスコティック・ネガティブ・バイアフリンジェンス・コンペンセーション・フィルムス エスアイディ98 ダイジェスト(Design Concepts of Discotic Negative Birefringence Compensation Films SID98 DIGEST)」,1998年,LP−Jに記載された手法で算出することも可能である。前記配向角を算出する場合における前記レターデーションの測定方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光学異方性層の法線方向のレターデーション(Re0)、該法線方向に対して−40°方向のレターデーション(Re−40)及び+40°方向のレターデーション(Re40)が挙げられる(ここで、前記Re0、Re−40、Re40の測定値は、それぞれ前記エリプソメーターを用いて、前記各測定方向に観察角度を変えて測定した値である。)。
【0012】
前記棒状液晶構造を含む重合性液晶化合物は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリマーバインダーを用いて前記棒状液晶構造の配向状態を固定可能とした重合性液晶化合物、重合により液晶構造の配向状態を固定可能とした重合性基を有する重合性液晶化合物などが挙げられ、この中でも重合性基を有する前記重合性液晶化合物が好ましい。
前記棒状液晶構造部をその構造を有する化合物として示せば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾメチン化合物、アゾキシ化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル化合物、安息香酸エステル化合物、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル化合物、シアノフェニルシクロヘキサン化合物、シアノ置換フェニルピリミジン化合物、アルコキシ置換フェニルピリミジン化合物、フェニルジオキサン化合物、トラン化合物、又はアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル化合物が挙げられる。
【0013】
前記棒状液晶構造を含む重合性液晶化合物としては、下記一般式(1)で表される重合性基を有する棒状液晶化合物が挙げられる。
【0014】
【化1】

但し、前記一般式(1)において、Q及びQはそれぞれ重合性基を表し(Q及びQとしては 後述する重合性基Pの例が挙げられ、好ましい場合も同じである。)、L、L、L及びLはそれぞれ単結合又は二価の連結基を表わす(L、L、L及びLとしては後述する二価の連結基Lの例が挙げられ、好ましい場合も同じである。)。ただしL及びLの少なくとも一方は、−O−CO−O−を表す。また、A及びAはそれぞれ独立に炭素原子数2〜20のスペーサー基を表す(A及びAとしては炭素原子数2〜20のアルキレン基、炭素原子数2〜20のアルケニレン基、炭素原子数6〜20のアリーレン基などが挙げられ、炭素原子数2〜20のアルキレン基、炭素原子数6〜20のアリーレン基が好ましい。)。また、Mはメソゲン基を表す。
【0015】
前記円盤状液晶構造を含む重合性液晶化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリマーバインダーを用いて前記円盤状液晶構造の配向状態を固定可能とした重合性液晶化合物、重合により前記円盤状液晶構造の配向状態を固定可能とした重合性基を有する重合性液晶化合物などが挙げられ、この中でも重合性基を有する前記重合性液晶化合物が好ましい。
【0016】
前記重合性基を有する重合性液晶化合物としては、例えば、円盤状コアと重合性基との間に連結基を導入した構造のものが挙げられる。前記重合性液晶化合物の具体的としては、特開平8−050206号公報に記載されているような下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0017】
【化2】

一般式(2)において、Dは円盤状コアを表し、Lは二価の連結基を表し、Pは重合性基を表す。また、nは4〜12の整数である。また、複数の二価の連結基Lと重合性基Pとの組み合わせとしては、異なる二価の連結基と重合性基との組み合わせでもよいが、同一の組み合わせが好ましい。前記円盤状コアDとしては、2種以上を併用することも可能である。
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、下記構造式(D1)〜(D15)のいずれかで表されるものが挙げられる(下記式中のP及びLは、一般式(2)におけるP及びLと同じである。)。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

前記一般式(2)において、二価の連結基Lとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、これらの組み合わせなどが好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、これらの中から選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基がより好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−O−、これらの中から選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基が特に好ましい。
前記アルキレン基の炭素原子数としては1〜12が好ましい。前記アルケニレン基の炭素原子数としては2〜12が好ましい。前記アリーレン基の炭素原子数としては6〜10が好ましい。また、前記アルキレン基、前記アルケニレン基、前記アリーレン基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基、アシルオキシ基などの置換基を有していてもよい。
前記二価の連結基Lの具体例としては、*−AL−CO−O−AL−、*−AL−CO−O−AL−O−、*−AL−CO−O−AL−O−AL−、*−AL−CO−O−AL−O−CO−、*−CO−AR−O−AL−、*−CO−AR−O−AL−O−、*−CO−AR−O−AL−O−CO−、*−CO−NH−AL−、*−NH−AL−O−、*−NH−AL−O−CO−、*−O−AL−、*−O−AL−O−、*−O−AL−O−CO−、*−O−AL−O−CO−NH−AL−、*−O−AL−S−AL−、*−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−、*−O−CO−AR−O−AL−CO−、*−O−CO−AR−O−AL−O−CO−、*−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−、*−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−、*−S−AL−、*−S−AL−O−、*−S−AL−O−CO−、*−S−AL−S−AL−、*−S−AR−AL−、などが挙げられる。
但し、前記二価の連結基Lの具体例において、左側(*で示した結合位置)が前記円盤状コアDに結合し、右側(*で示していない結合位置)が重合性基Pに結合する。また、ALはアルキレン基又はアルケニレン基を表し、ARはアリーレン基を表す。
【0021】
前記一般式(2)において、前記重合性基Pとしては、特に制限はなく、重合反応の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、不飽和重合性基、エポキシ基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基がより好ましい。前記重合性基Pの具体例としては、下記構造式(P1)〜(P18)のいずれかで表される重合性基が挙げられる。
【0022】
【化6】

【0023】
その他、重合性液晶化合物については、例えば特開平9−104656号公報、特開平11−92420号公報、特開2000−34251号公報、特開2000−44507号公報、特開2000−44517号公報、特開2000−86589号公報などに記載のものが挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法において、重合性液晶化合物の光学異方性層中の含有量は特に限定されないが、光学異方性層の形成に用いる重合性液晶化合物を含有する塗布液(以下、重合性液晶化合物の塗布液ともいう。)でいうと、その固形成分の60〜95質量%が好ましい。
【0025】
前記重合性液晶化合物とともに光学異方性層に含有させるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記重合性化合物の重合反応を開始する重合開始剤などが挙げられる。
【0026】
前記重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合反応を開始する熱重合開始剤、光重合反応を開始する光重合開始剤が挙げられる。こられの中でも、前記光重合開始剤が好ましい。
前記光重合開始剤の具体例としては、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号明細書、同2367670号明細書に記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書に記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書に記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号明細書、同2951758号明細書に記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書に記載)、アクリジン及びフェナジンの化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書に記載)、オキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書に記載)が挙げられる。
前記光重合開始剤の前記重合性液晶化合物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記重合性液晶化合物の塗布液における固形分の0.01〜20質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0027】
<光学異方性層の作製>
前記重合性液晶化合物で形成された光学異方性層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶剤に前記液晶構造を含む前記重合性液晶化合物、前記重合開始剤などを含有した塗布液を、後述の配向膜の上に塗布して積層し、次に、積層された該重合性液晶化合物で形成された光学異方性層を熱処理して配向を均一にし、次いで、該重合性液晶化合物を重合硬化させて、一定の配向方向を有する該重合性液晶化合物で形成された光学異方性層を作製する方法が好ましい。
【0028】
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機溶剤が好ましい。前記有機溶剤の具体例としては、アミド、スルホキシド、ヘテロ環化合物、炭化水素、アルキルハライド、エステル、ケトン、エーテルなどが好ましい。該アミドとしては、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、該スルホキシドとしては、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、該ヘテロ環化合物としては、ピリジンなどが挙げられ、該炭化水素としては、ベンゼン、ヘキサンなどが挙げられ、該アルキルハイドライドとしては、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられ、該エステルとしては、酢酸メチル、酢酸ブチルなどが挙げられ、該ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられ、該エーテルとしては、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどが挙げられる。
これらの中でもアルキルハライド、ケトンがより好ましい。前記有機溶剤としては、これらの二種類以上を併用してもよい。有機溶剤の含有量は特に限定されないが、例えば重合性液晶化合物の塗布液において、重合性液晶化合物の質量に対して、1.1〜7倍の質量を用いることが好ましい。
塗布液の前記配向膜上への塗布方法としては、特に制限はなく、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スピンコート法などの通常の方法が挙げられる。
【0029】
前記熱処理工程は、重合性液晶化合物で形成された光学異方性層を加熱して配向を均一にし、熟成させ、それを維持するために行われる。熱処理としては、特に制限はなく、前記塗工層を60〜120℃で加熱して溶媒を揮発、乾燥させた後に、液晶構造を含む重合化合物の配向を熟成させるために加熱温度を85〜180℃の範囲若しくは液晶がND層を示すまで制御すればよい。
【0030】
前記重合性液晶化合物の重合方法としては、該液晶層の配向を固定化できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開平8−27284号公報、特開平10−278123号公報に記載の方法を用いることも可能である。
具体的には、光重合用の活性線を照射することにより硬化反応を行うものが挙げられる。光重合用の活性線としては、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)、などを必要に応じて適宜選択して用いることができ、一般的には、紫外線が好ましい。
前記光照射手段の照射エネルギーとしては、20〜50,000mJ/cmが好ましく、100〜800mJ/cmがより好ましい。また、前記光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)及びショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)を挙げることができる。
【0031】
エチレン性不飽和基の重合反応のためのラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビス化合物、パーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、レドックス触媒など、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルパーオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロピルパーカーボネート、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーキサイド、ジクミルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド或いはベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、チオキサントン類などを挙げることができる。これらの詳細については「紫外線硬化システム」(総合技術センター、1989年)の63頁〜147頁などに記載されている。
【0032】
また、エポキシ基を有する化合物の重合には、紫外線活性化カチオン触媒として、例えば、アリルジアゾニウム塩(ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボラート等)、ジアリルヨードニウム塩、VIa族アリロニウム塩(PF、AsF、SbFのようなアニオンをもつアリルスルホニウム塩等)が一般的に用いられる。
また、ラジカル反応を用いて硬化反応を行う場合、空気中の酸素の存在による重合反応の遅れをさけるために、窒素雰囲気下で上記活性線を照射することが、反応時間の短縮化と少ない光量で硬化できる点で好ましい。
【0033】
前記重合性液晶化合物で形成された光学異方性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ0.1〜5.0μmが好ましく、0.5〜2.5μmがより好ましい。
【0034】
<配向膜>
本発明の製造方法により製造される光学異方性材料には光学異方性層以外に目的に応じてその他の層を設けることができ、例えば、前記重合性液晶化合物に含まれる前記液晶構造を配向させるための配向膜を設けることが好ましい。前記配向膜上に前記重合性液晶化合物が塗布等により積層されることが好ましい。
前記配向膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラビング処理された有機化合物(ポリマー)からなる配向膜、マイクログループを有する配向膜、ラングミュア・ブロジェット法(LB膜)によりω−トリコ酸、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリル酸メチルなどの有機化合物が累積された配向膜、無機化合物が斜方蒸着された配向膜、電場、磁場、光照射などにより配向機能が生じる配向膜などが挙げられ、前記ラビング処理された有機化合物からなる配向膜が好ましい。
【0035】
前記ラビング処理された有機化合物からなる配向膜における、前記ラビング処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記有機化合物からなる膜の表面を紙や布で一定方向に数回こする処理が挙げられる。
前記有機化合物の種類としては、特に制限はなく、前記液晶構造の配向状態(特に配向角)に応じて決定することができ、例えば、前記液晶構造を水平に配向させるために配向膜の表面エネルギーを低下させない配向膜用ポリマーが挙げられる。
前記配向膜用ポリマーの具体例としては、ラビング処理の方向に対して直交する方向に前記液晶構造を配向する場合には、変性ポリビニルアルコール(特開2002−62427号公報に記載)、アクリル酸系コポリマー(特開2002−98836号公報に記載)ポリイミド、ポリアミック酸(特開2002−268068号公報に記載)が好ましい。これらの中でも、配向性に優れたポリイミドがより好ましい。
前記配向膜は、前記重合性液晶化合物、前記支持体に対する密着性を向上させることを目的として、反応性基を有することが好ましい。前記反応性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記配向膜用ポリマーの繰り返し単位の側鎖に反応性基を導入したもの、前記配向膜用ポリマーに環状基の置換基を導入したものなどが挙げられる。
前記反応性基により前記重合性液晶化合物、前記支持体に対して化学結合を形成する配向膜としては、特開平9−152509号公報に記載の配向膜を用いることも可能である。
前記配向膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01〜5μmが好ましく、0.02〜2μmがより好ましい。
【0036】
<支持体>
本発明の光学異方性材料の製造方法においては支持体上に光学異方性層を設ける。その支持体としては特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、透明性に優れ、80%以上の光透過率を示して均一な光学特性を与えるものを用いることが好ましい。例えば、白板ガラス、青板ガラス、石英ガラス、サファイアガラス、有機高分子フィルムなどが挙げられる。
前記有機高分子フィルムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリオレフィン系、ポリエーテル系、ポリスルフィン系、ポリスルホン系及びポリエーテルスルホン系、セルロースエステル系、などの重合体群から選ばれる1種類、又は2種類以上の組み合わせが挙げられる。
前記有機高分子フィルムの具体例としては、ポリカーボネート共重合体、ポリエステル共重合体、ポリエステルカーボネート共重合体、ポリアリレート共重合体が好ましく、ポリカーボネート共重合体がより好ましい。
前記ポリカーボネート共重合体としては、フルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体が好ましく、透明性、耐熱性、生産性の観点から、ビスフェノール類とホスゲンあるいは炭酸ジフェニルなどの炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるポリカーボネート共重合体が特に好ましい。
前記ポリカーボネート共重合体が有するフルオレン骨格の含有量としては、1〜99モル%が好ましい。前記ポリカーボネート共重合体としては、国際公開第00/26705号パンフレットに記載の、繰り返し単位を用いることも可能である。
具体的には、例えば、トリアセチルセルロースやポリビニルアルコール、ポリイミドやポリアリレート、ポリエステルやポリカーボネート、ポリスルホンやポリエーテルスルホン、エポキシ系樹脂のようなプラスチックからなるフィルムなどが挙げられる。
これらの中でも、前記支持体としては、面の平滑性などの観点から、前記の各種無機材料よりなるガラス又はトリアセチルセルロースフィルムを好適に用いることができる。
【0037】
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1μm以上が好ましく、組込みのハンドリング性や機械的強度の観点から、0.3mm〜3mmが好ましく、0.5mm〜1.5mmがより好ましい。
【0038】
次に、本発明の製造方法における表面改質処理について説明する。
重合体をフッ素ガスと反応させてフッ素化をおこなうことは、プログレス・オブ・インオーガニック・ケミストリー(Prog.Inorg.Chem.),1979年,Vol.26,162頁に初期の報告がまとめられており、ジャーナル・オブ・フルオリン・ケミストリー(J.Fluorine Chem.),2005年,Vol.126,251頁には最近の報告を含めた総説が書かれている。
【0039】
フッ素ガスは、フッ素ガスボンベから供給してもよいし、KF・nHF共融混合物を電解したりフッ素を吸蔵している固体(例えばKNiF)を加熱したりするフッ素ガス発生装置を使用して発生させたフッ素ガスを用いてもよい。
フッ素ガスは不活性ガスによって任意の濃度に希釈したものを用いることが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、パーフルオロ化合物などが挙げられる(以下、この不活性ガスによって希釈されたフッ素ガスのことをフッ素混合ガスともいう。)。
【0040】
フッ素混合ガス中のフッ素ガス混合ガス濃度は、フッ素化反応を制御する上で重要な要因の一つである。フッ素混合ガス濃度としては0.01〜20%が好ましく、0.1〜10%がより好ましく、0.5〜5%が特に好ましい。なお、本発明において、フッ素混合ガス等における気体の濃度について「%」というとき、特に断らない限り体積%をいう。
【0041】
フッ素化反応の反応温度に特に制限はないが、−78〜200℃が好ましく、−30〜100℃がより好ましく、0〜50℃がさらに好ましく、15〜30℃が特に好ましい。フッ素化反応中に反応温度を変化させておこなってもよい。フッ素化反応をおこなう光学異方性材料の大きさやフッ素混合ガスの濃度などの条件によっては、特に温度制御をおこなわないで室温で反応を行ってもよい。
【0042】
フッ素化反応の反応時間は任意に設定できるが、1秒〜10日が好ましく、10秒〜1時間がより好ましく、1分〜15分がさらに好ましく、1分〜10分が特に好ましい(なお、本発明におけるフッ素化反応の反応時間は、反応容器にフッ素混合ガス導入を開始した時からフッ素混合ガスを取り除く操作を開始した時までの時間をいう。これは、フッ素混合ガスの導入中や除去中にもフッ素ガスと光学異方性材料の反応が起こり得るので、厳密に反応時間を決めることが難しいためにこのように定義する。)。
【0043】
フッ素混合ガス中のフッ素ガス濃度およびフッ素化反応の反応時間の組み合わせとしては、0.01〜5%で1秒〜30分が好ましく、0.1〜1%で1〜15分がより好ましく、0.5〜1%で3〜10分がさらに好ましく、0.5〜1%で5〜10分が特に好ましい。
【0044】
フッ素化反応をおこなう反応装置としてはどのようなものを用いてもよい。例えば、プログレス・オブ・インオーガニック・ケミストリー(Prog.Inorg.Chem.),1979年,Vol.26,172頁や、アール・イー・バンクス(R.E.Banks)、ビー・イー・スマート(B.E.Smart)編「オーガノフルオリン・ケミストリー:プリンシプルズ・アンド・コマーシャル・アプリケーションズ(Organofluorine Chemistry: Principles and Commercial Applications)」(プレナム・プレス(Plenum Press)、1994年刊)475〜478ページに記載されているような反応装置の概略図を参考にできる。
【0045】
反応容器の材質としては、モネル、インコネルやステンレスなどの金属や合金、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素不活性素材などを用いることができる。これらを組み合わせて成るものでもよい。
【0046】
フッ素混合ガスとの反応は、上述の反応装置を参考にして、容器中に光学異方性材料を入れてフッ素混合ガスを流通させながら反応させる流通式でおこなってもよいし、密閉容器中に光学異方性材料を入れてフッ素混合ガスを充填して反応させるバッチ式でおこなってもよいし、光学異方性材料を連続的に反応容器に搬入・搬出しながら反応させる連続式でおこなってもよい。
【0047】
流通式でおこなう場合、フッ素混合ガスの流速は任意に設定できるが、反応容器の内容量が数秒〜数分で置き換わる程度の流速で流通させるのが好ましい。例えば、内容量100mlの反応容器を用いる場合には、1〜1000ml/minが好ましく、10〜500ml/minがより好ましく、50〜300ml/minが特に好ましい。フッ素化反応中にフッ素混合ガスの流速を変化させておこなうこともできる。反応容器から出てきたフッ素混合ガスを再度反応容器に還流させながらおこなうこともできる。
【0048】
バッチ式でおこなう場合、フッ素混合ガスの圧力は任意に設定できるが、10kPa〜10MPaが好ましく、50kPa〜1MPaがより好ましく、80〜500kPaがさらに好ましい。フッ素化反応中にフッ素混合ガスを追加あるいは放出することで圧力を変化させておこなうこともできる。
【0049】
連続式でおこなう場合、光学異方性材料の搬入・搬出速度は、材料の性質として許容できる範囲内であれば任意に設定できる。フッ素混合ガスを流通させている反応容器の中に光学異方性材料を搬入する形式の場合、フッ素混合ガスの流速は流通式でおこなう場合に準じる。フッ素混合ガスが充填された反応容器の中に光学異方性材料を搬入する形式の場合、フッ素混合ガスの圧力はバッチ式でおこなう場合に準じる。
【0050】
本発明の製造方法においては、フッ素ガスとの反応による表面改質処理と、別の反応性ガスによる表面改質処理とを行ってもよい。例えば、フッ素ガスと別の反応ガスとを共存させて同時に供給して、あるいは別の反応ガスを逐次供給して、フッ素化反応と合わせて別の反応を起させてもよい。別の反応ガスを逐次供給して反応させる場合には、フッ素ガスとの反応をおこなう前に反応容器中を不活性雰囲気にしてからフッ素ガスとの反応をおこなうことが好ましい。不活性雰囲気にする方法としては、反応容器を減圧にした後に不活性ガスで置換する方法や、不活性ガスを流通させて置換する方法などが挙げられる。
フッ素以外の反応性ガスを共存させて、あるいは逐次供給して、フッ素化反応と合わせて別の反応をさせる場合、別の反応性ガスとしては、酸素、塩素、臭素、二酸化硫黄が挙げられる。反応性ガスはフッ素ガスとあらかじめ混合して反応容器に供給してもよいし、別々に導入して反応容器中で混合してもよいし、重合体と共に反応容器中に導入してもよい。中でも、フッ素ガスとともに反応させる別の反応ガスとして二酸化硫黄ガスが好ましい。
【0051】
フッ素と酸素を併用して表面改質をおこなった例として、特開平2−170801号公報、特開平2−269134号公報、特開平6−116436号公報などが挙げられる。ここで用いられている反応条件などを参考にすることができる。
フッ素と酸素を併用する場合、フッ素と酸素と不活性ガスの混合気体を反応容器に導入してもよいし、フッ素と酸素いずれか一方のみを先に用いて他方を後から用いてもよい。中でも、フッ素と酸素の混合ガスを導入するか、あらかじめ酸素のみを用いてからフッ素を導入する場合がより好ましい。
フッ素と酸素を併用する場合には、フッ素濃度は0〜20%、酸素濃度は0〜100%の範囲から任意の割合で併用できる。反応中に割合を変化させてもよい。併用するフッ素の割合は0.01〜20%が好ましく、0.1〜10%がより好ましく、0.5〜5%が特に好ましい。併用する酸素の割合は0.01〜100%が好ましく、10〜100%がより好ましく、50〜100%が特に好ましい。
【0052】
フッ素と酸素の混合ガスを用いる場合、フッ素濃度0.01〜20%、酸素濃度0.01〜100%、不活性ガス0〜99%の任意の割合からなる混合ガスが使用できる。好ましくはフッ素濃度0.1〜20%、酸素濃度0.01〜99.99%、不活性ガス0〜90%の混合ガスであり、より好ましくはフッ素濃度0.1〜10%、酸素濃度0.01〜99.99%、不活性ガス1〜90%の混合ガスであり、特に好ましくはフッ素濃度0.1〜10%、酸素濃度10〜80%、不活性ガス1〜50%の混合ガスである。
あらかじめ酸素のみを用いてからフッ素を導入する場合、最初の酸素濃度は0.01〜100%が好ましく、50〜100%がより好ましく、90〜100%が特に好ましい。後から導入するフッ素ガスの濃度は任意の値で構わないが、反応容器中のフッ素濃度は0.01〜20%であることが好ましく、0.1〜10%がより好ましく、0.5〜5%が特に好ましい。
フッ素と酸素の混合ガスを用いる場合の反応温度に特に制限はないが、−78〜200℃が好ましく、−30〜100℃がより好ましく、0〜50℃がさらに好ましく、15〜30℃が特に好ましい。フッ素化反応中に反応温度を変化させておこなっても良い。
フッ素と酸素の混合ガスを用いる場合の反応時間は任意に設定できるが、1秒〜10日が好ましく、10秒〜1時間がより好ましく、1分〜15分がさらに好ましく、1分〜10分が特に好ましい。
【0053】
フッ素と塩素あるいは臭素を併用して表面改質をおこなった例として、特開平7−236822号公報、特開平7−251045号公報などが挙げられる。ここで用いられている反応条件などを参考にすることができる。
フッ素と塩素あるいは臭素の混合ガスを用いる場合、混合気体の導入方法、混合気体の濃度、反応温度、反応時間はそれぞれ酸素を併用する場合に準じ、好ましい場合も同じである。
【0054】
フッ素と二酸化硫黄を併用して表面改質をおこなった例として、特開昭59−5601、特開昭60−86132号公報、特開平4−59838号公報、特開平10−101830号公報、特開2003−128820号公報などが挙げられる。ここで用いられている反応条件などを参考にすることができる。
フッ素と二酸化硫黄を併用する場合、フッ素と二酸化硫黄と不活性ガスの混合気体を反応容器に導入してもよいし、フッ素と二酸化硫黄いずれか一方のみを先に用いて他方を後から用いてもよい。中でも、あらかじめ二酸化硫黄のみを用いてからフッ素を導入する場合がより好ましい。
【0055】
フッ素と二酸化硫黄を併用する場合には、フッ素濃度は0〜20%、二酸化硫黄濃度は0〜100%の範囲から任意の割合で併用できる。反応中に割合を変化させてもよい。併用するフッ素の割合は0.01〜20%が好ましく、0.1〜10%がより好ましく、0.5〜5%が特に好ましい。併用する二酸化硫黄の割合は0.01〜100%が好ましく、10〜100%がより好ましく、50〜100%が特に好ましい。
フッ素と二酸化硫黄の混合ガスを用いる場合、フッ素濃度0.01〜20%、二酸化硫黄濃度0.01〜100%、不活性ガス0〜99.98%の任意の割合からなる混合ガスが使用できる。好ましくはフッ素濃度0.1〜20%、二酸化硫黄濃度0.01〜20%、不活性ガス10〜99.98%の混合ガスであり、より好ましくはフッ素濃度0.1〜10%、二酸化硫黄濃度0.1〜10%、不活性ガス50〜99.98%の混合ガスであり、特に好ましくはフッ素濃度0.1〜5%、二酸化硫黄濃度0.1〜5%、不活性ガス50〜99.98%の混合ガスである。
【0056】
あらかじめ二酸化硫黄のみを用いてからフッ素を導入する場合、最初の二酸化硫黄濃度は0.01〜20%が好ましく、0.01〜10%がより好ましく、0.01〜5%が特に好ましい。二酸化硫黄を反応容器に充填してから不活性ガスを短時間流すことで反応容器内に残留している二酸化硫黄を濃度不明のまま用いることもできる。フッ素ガスを導入する前に二酸化硫黄と光学異方性材料が接している時間は短いほうが望ましく、好ましくは1秒〜30分であり、より好ましくは1秒〜10分であり、特に好ましくは1秒〜5分である。後から導入するフッ素ガスの濃度は任意の値で構わないが、反応容器中のフッ素濃度は0.01〜20%であることが好ましく、0.1〜10%がより好ましく、0.5〜5%が特に好ましい。
フッ素と二酸化硫黄の混合ガスを用いる場合の反応温度に特に制限はないが、−78〜200℃が好ましく、−30〜100℃がより好ましく、0〜50℃がさらに好ましく、15〜30℃が特に好ましい。フッ素化反応中に反応温度を変化させておこなってもよい。フッ素と二硫化炭素の混合によって発熱するので、気体混合装置および反応容器を冷却しながら操作してもよい。
フッ素と二酸化硫黄の混合ガスを用いる場合の反応時間は任意に設定できるが、1秒〜10日が好ましく、10秒〜1時間がより好ましく、1分〜15分がさらに好ましく、1分〜10分が特に好ましい。
【0057】
フッ素ガスとの反応終了後すぐに反応容器を開封することは、容器中に残存しているフッ素ガスが処理されないまま大気中に放出されるため好ましくない。また光学異方性材料がフッ素ガスと空気に同時に触れることになり、不活性雰囲気での反応ではなくなるため好ましくない。フッ素化反応後は反応容器中からフッ素混合ガスを取り除いてから開封することが好ましい。フッ素混合ガスを取り除く方法としては、反応容器を減圧脱気して不活性ガスで置換する方法や、不活性ガスを流通させて置換する方法などが挙げられる。
【0058】
有機化合物の直接フッ素化反応においては、副生成物としてフッ化水素(HF)が生成する。フッ化水素が共存したままでフッ素化反応をおこなってもよいし、取り除く操作をして反応をおこなってもよい。フッ化水素を反応系から取り除く方法としては、フッ化カリウム(KF)やフッ化ナトリウム(NaF)などのアルカリ金属フッ化物やトリアルキルアミンなどの有機塩基をフッ化水素捕捉剤として反応系中に共存させておく方法や、フッ素混合ガスと共にフッ化水素を流し去る方法などが挙げられる。フッ化水素を流し去る方法においては反応容器ガス出口でフッ化水素捕捉剤と出口ガスを接触させることが好ましい。流通式で反応をおこなう場合にはフッ化水素を流し去る方法が適しており、バッチ式でおこなう場合にはフッ化水素捕捉剤を共存させる方法が適している。
【0059】
フッ素ガス処理をおこなった後に、十分に取り除けなかったフッ素ガスおよびフッ化水素などの副生成物を除去するために、水洗などによる洗浄操作をおこなうこともできる。
【0060】
フッ素ガス処理をおこなった後に、引き続き別の反応をおこなってもよい。例えば、特開平6−329822号公報に記載の重合性モノマーと反応させて光学異方性材料表面に新たなポリマー層を形成させることが挙げられる。
また、フッ素ガス処理をおこなって得られた材料表面に新たな被覆層を設ける操作をおこなってもよい。例えば、特開平10−120809号公報に記載のシランコーティング剤で被覆することや、特開平11−124681号公報に記載のメッキを施すことなどが挙げられる。中でも、無機材料層を作製することが好ましい。
無機材料層の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、同一材料の単層又は積層でもよく、2以上の異なる材料の積層でもよい。保護層や反射防止層又はそれらの組み合わせなどとしての目的が挙げられる。
【0061】
保護層の材料、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、サファイアガラス、アルミナ、シリカ、などの素材を好適に用いることができる。これらの中でも、酸素ガスなどの透過性がほとんどなく、積層の容易なアルミナが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
反射防止層の材料、構造としては、反射率を低減し、透過率を増加させるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
無機材料層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、材料を蒸着することにより作製する蒸着方法が好適に挙げられる。
前記蒸着方法としては、特に制限はなく、例えば、試料を気体原料の雰囲気内におき、化学反応によって、試料表面に薄膜を形成する化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や蒸発やスパッタによって、粒子になった原料を試料に付着させて形成する物理気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)などが挙げられる。
【0063】
前記無機材料層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ0.05〜1.0μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。
【0064】
本発明の製造方法において、フッ素ガス処理によって得られる改質された表面は、どのような性質を有するものに改質された表面であってもよい。例えば、フッ素原子を導入することによって期待される、撥水性、撥油性、非粘着性、離型性、防汚性、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性、低摩擦性、絶縁性、低誘電率、低屈折率、低ガス透過性、気体分離性、生体適合性などが挙げられる。また、特開平8−72158号公報、特開平8−302039号公報、特開平10−204195号公報、特開平11−124681号公報、特開2001−294692号公報のようにフッ素化によって親水化されてもよい。フッ素ガスと共に反応性ガスを併用する場合には、上述した表面の性質に改質される。フッ素と塩素あるいは臭素を併用した場合には、特開平7−236822号公報や特開平7−251045号公報に記載されているような気体透過性などが挙げられる。フッ素と酸素あるいは二酸化硫黄を併用した場合には、特開平7−272710号公報、特開平4−59838号公報、特開平6−116436号公報に記載されているような親水性、接着性、染色性、印刷性などが挙げられる。
本発明においては、フッ素ガス処理をおこなうことによって、少なくとも親水化することが好ましい。
【0065】
水と接触面との接触角については、日本化学会編「新実験化学講座 18−界面とコロイド」(丸善、1977年刊)93〜106ページに記載されている。接触角の測定法のうち、本発明においては、この資料の97ページ記載の液滴法に準じて測定した値を用いる。すなわち、本発明において接触角の値は、特に断らない限り、1μlの水滴を針先に作り、これを光学異方性材料の表面に触れさせて液滴を作り、その1分後に協和界面科学(株)社製 DropMaster500を用いて接触角を測定した値をいう。このとき、水の接触角は親水性の程度を表わすものであり、水の接触角が小さくなると親水性が高くなることを示す。
本発明においては、フッ素化処理等の表面処理により、親水化の程度として水の接触角を未処理のものより10゜以上低下させることが好ましい。15゜以上低下させることがより好ましく、20゜以上低下させることが特に好ましい。
【0066】
本発明の製造方法においては、表面改質をおこなう材料は光学異方性材料であるため、表面改質処理によって光学異方性を損なわないことが好ましい。本発明においては、光学異方性の尺度としてレターデーションを採用し、表面改質処理前後における同一測定方向でのレターデーションの差((処理前のレターデーション値)−(処理後のレターデーション値))を求めることで光学異方性の変化を全方向について把握し、変化の最大値をもって処理におけるレターデーション変化(ΔRe)と定義した。このレターデーション変化の絶対値(|ΔRe|)が小さいほうが、表面改質処理によって光学異方性を損なわない処理方法であると言える。レターデーション(位相差)については、日本化学会編「新実験化学講座 4−基礎技術3 光I」(丸善、1976年刊)27〜28ページに記載されている。本発明においてレターデーションの変化の絶対値(|ΔRe|)は、特に断らない限り、エリプソメーター(日本分光(株)社製 M−150)を用いて、光学異方性層の法線方向に対して0°から80°までの10゜毎の観測方向についてレターデーションを測定し、光学異方性層の面方向に対して0°から360°まで10゜毎にレターデーションを測定する。その全方向について((処理後のレターデーション)−(処理前のレターデーション))の絶対値を算出し、異常値を除いたすべての値の中における最大値をいう。
本発明において、レターデーション変化の絶対値(|ΔRe|)は3nm以下であることが好ましい。2nm以下がより好ましく、1.0nm以下が特に好ましい。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
光学異方性材料の作製
(配向膜の作製)
下記構造式(3)の変性ポリビニルアルコール20g、水(溶剤)360g、メタノール120g、グルタルアルデヒド(架橋剤)1.0gからなる配向膜塗布液を調製した。
【0069】
【化7】

【0070】
次に、ガラス基板の面上に配向膜塗布液100ml/mを滴下し、1,000rpmの条件でスピンコートする。その後、該配向膜塗布液を100℃の温風で3分間乾燥して、厚み600nmの配向膜を作製した。次いで、形成された前記配向膜の表面上にラビング処理を施して、所定の配向方向に配向する配向膜14Aを作製した。
【0071】
(重合性液晶化合物の塗布液の調製)
下記構造式(4)の円盤状液晶化合物4.27g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.42g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.09g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.02g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.14g、増感剤(カヤキュアーDETX−S、日本化薬(株)社製)0.05gを溶剤としてのメチルエチルケトン15.0gに溶解し、重合性液晶化合物の塗布液を調製した。
【0072】
【化8】

【0073】
重合性液晶化合物塗布液100ml/mを配向膜14Aの表面上に滴下し、1,500rpmの条件でスピンコートする。その後、130℃の恒温ゾーンで5分間加熱し、前記重合性液晶化合物を配向させた。その後、高圧水銀灯を用いて照射エネルギー300mJ/cmでUV照射して、前記重合性液晶化合物を重合させ、液晶分子の配向状態を固定した。その後、室温まで放冷し、重合性液晶化合物で形成された光学異方性層13Aを作製した。作製された該重合性液晶化合物で形成された光学異方性層13Aの厚みは1.3μmであった。
作製された重合性液晶化合物で形成された光学異方性層13Aにおいて、前記円盤状液晶化合物は、円盤面の垂直軸法線と前記ガラス基板の法線とのなす角度(配向角)が、10°から62°に前記ガラス基板側から空気界面側に向かって増加し、前記円盤状液晶化合物がハイブリッド配向していた。前記円盤状液晶化合物の配向角は、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)社製)を用いて、観察角度を変えてレターデーションを測定し、得られた測定値から屈折率楕円体モデルを仮想し、「デザインコンセプト・オブ・ザ・ディスコティック・ネガティブ・バイアフリンジェンス・コンペンセーション・フィルムス エスアイディ98 ダイジェスト(Design Concepts of the Discotic Negative Birefringence Compensation Films SID98 DIGEST」1998年、LP−Jに記載されている手法により算出した。
【0074】
作成した光学異方性層を有するガラス基板を、約3×3cmに分割し、それぞれの試料について中心部分におけるレターデーションの測定をおこなった。
【0075】
レターデーションを測定した光学異方性層を有するガラス基板を、フッ素およびヘリウムガス供給口と排気口を備えたポリテトラフルオロエチレン製500ml容器に入れ、ヘリウムガスを流速100ml/minで吹き込んで1時間パージした後、20%フッ素/80%窒素混合ガスを流速10ml/minで、ヘリウムガスを流速190ml/minでそれぞれ吹き込み(1%フッ素混合ガスに相当)5分間反応させた。引き続きヘリウムガスを流速100ml/minで吹き込んで1時間パージしてから容器を開封し、試料1を得た。
【0076】
液滴法により接触角を測定した。接触角の測定は、協和界面科学(株)社製 DropMaster500を用いておこなった。1μlの水滴を針先に作り、これを光学異方性材料の表面に触れさせて液滴を作った。1分後に接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
また、フッ素置換後の光学異方性材料表面の組成を、島津製作所(株)社製 ESCA−3400を用い、X線光電子分光法(ESCA)によって測定した。積分強度比と感度係数から、表面における炭素とフッ素の相対存在比(F/C)を求めた。結果を表1に示す。
【0078】
光学異方性材料のレターデーションは、エリプソメーター(日本分光(株)社製 M−150)を用いて、光学異方性層の法線方向に対して0°から80°までの10゜毎の観測方向についてレターデーションを測定し、光学異方性層の面方向に対して0°から360°まで10゜毎にレターデーションを測定した。全方向について((処理後のレターデーション)−(処理前のレターデーション))を算出し、すべての値の中で最大値を処理前後のレターデーション変化(ΔRe)として求めた。結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2]
実施例1と同様に作成した光学異方性層を有するガラス基板を、実施例1と同様の反応装置に入れ、ヘリウムガスを流速100ml/minで吹き込んで1時間パージした後、20%フッ素/80%窒素混合ガスを流速10ml/minで、ヘリウムガスを流速190ml/minでそれぞれ吹き込み(1%フッ素混合ガスに相当)5分間反応させた。20%フッ素/80%窒素混合ガスとヘリウムガスの供給を止めると共に酸素を流速200ml/minで10分間吹き込み、引き続きヘリウムガスを流速100ml/minで吹き込んで1時間パージしてから容器を開封し、試料2を得た。得られた試料について実施例1と同様にしてF/C、ΔRe、接触角を測定した結果を表1に示す。
【0080】
[実施例3]
実施例1と同様に作成した光学異方性層を有するガラス基板を、実施例1と同様の反応装置に入れ、ヘリウムガスを流速100ml/minで吹き込んで1時間パージした後、酸素を流速300ml/minで30分間吹き込むことで反応容器内を酸素で置換し、さらに20%フッ素/80%窒素混合ガスを流速100ml/minを合わせて吹き込み(5%フッ素混合ガスに相当)5分間反応させた。20%フッ素/80%窒素混合ガスの供給を止めると共に、酸素とヘリウムをそれぞれ流速300ml/minで5分間吹き込み、引き続きヘリウムガスを流速100ml/minで吹き込んで1時間パージしてから容器を開封し、試料3を得た。得られた試料について実施例1と同様にしてF/C、ΔRe、接触角を測定した結果を表1に示す。
【0081】
[実施例4]
実施例1と同様に作成した光学異方性層を有するガラス基板を、実施例1と同様の反応装置に入れ、ヘリウムガスを流速100ml/minで吹き込んで1時間パージした後、二酸化硫黄を流速200ml/minで2分間吹き込み、二酸化硫黄の供給を止めてからヘリウムガスを流速300ml/minで5分間吹き込むことで、反応容器中に二酸化硫黄が微量残存している状態にし、20%フッ素/80%窒素混合ガスを流速10ml/minで、ヘリウムガスを流速190ml/minでそれぞれ吹き込み(1%フッ素混合ガスに相当)5分間反応させた。引き続きヘリウムガスを流速300ml/minで5分間、100ml/minで1時間吹き込んでパージしてから容器を開封し、試料4を得た。得られた試料について実施例1と同様にしてF/C、ΔRe、接触角を測定した結果を表1に示す。
【0082】
[比較例]
実施例1と同様に作成した光学異方性層を有するガラス基板を、プラズマ照射器(キーエンス(株)社製 ST−7000、ST−7010)を用いて、プラズマ照射器の放電電極とサンプル表面間の距離を6mmに保ち、プラズマ強度設定を“HIGH”にし、大気雰囲気下にて20秒間プラズマ照射し、比較試料を得た。得られた試料について実施例1と同様にしてΔRe、接触角を測定した結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
フッ素ガスを用いることによって、材料表面にフッ素原子が導入されていることがわかる。また、水の接触角が未処理サンプルと比較して10゜以上低下しており、材料表面が親水化していることがわかる。さらに、プラズマ処理をおこなった場合と比較してレターデーション変化が極めて小さいことがわかる。
【0085】
実施例1〜4で作成したサンプルについて、水の接触角を7日後、14日後に測定した。結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
表が示すように、本発明の方法で親水化した光学異方性材料は、プラズマ処理によって親水性を付与した場合と異なり、長時間にわたってその効果を維持していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に重合性液晶化合物より形成された光学異方性層を設ける工程と、該光学異方性層の少なくとも表面をフッ素ガスを含むガスによって表面改質処理する工程とを含むことを特徴とする光学異方性材料の製造方法。
【請求項2】
前記光学異方性層表面を、酸素、塩素、臭素、及び二酸化硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1種の反応ガスと、フッ素ガスとにより表面改質処理することを特徴とする請求項1に記載の光学異方性材料の製造方法。
【請求項3】
前記光学異方性層表面を、フッ素ガスと二酸化硫黄ガスとにより表面改質処理することを特徴とする請求項1または2に記載の光学異方性材料の製造方法。
【請求項4】
前記表面改質処理によって、光学異方性層表面の水との接触角を、処理前の前記表面に対して10゜以上低下させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学異方性材料の製造方法。
【請求項5】
前記表面改質処理によるレターデーションの変化の絶対値を3nm以下に抑えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学異方性材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された光学異方性材料。

【公開番号】特開2007−328124(P2007−328124A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159096(P2006−159096)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】